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第32話 勇往邁進 ❶

烈は蔵之介を連れて花菱百貨店へやって来ていた 蔵之介はスーツと下着類をカードで購入した 竜馬もついでにスーツと下着類を購入 そして烈の下着類とスーツを買った 「本当ならばアルマーニしか着せたくないけど……」とボヤきお揃いのスーツを買った 烈はSPのケントに「蕪村建設で待っててね!」とラインを送った 即座に『了解!』と返信が来て烈は携帯をサコッシュにしまった そして皆が着替えて駐車場へと向かう 烈は車に乗り込む前に花菱を見上げて 「母しゃんが描いた果てが………悉く妨害しゃれてるにょね…」と呟いた 烈の瞳に栄華の翳りを視てしまっていた そこへ車が入って来て駐車場に車を停めると、車から降りて来て「烈君?」と名を呼んだ 烈は振り返ると、そこには道明寺達也が立っていた 「運にょいい男ね………」と烈は嗤い宗右衛門を出した 「此処で声を掛けずに逝くなれば、主の道は………終焉へ向かうしかなかった 何故に儂が解った?主に逢ったのは幼稚舎の時以来の筈じゃが?」と問い掛けた 「君の姿はテレビで見てましたから直ぐに解りました!」 「主が儂に声を掛けねば花菱は終わっておった」 「え?それはどう謂う事ですか?」 烈はニャッと嗤うと呪文を唱えた そして「少し屈むにょよ!」と謂うと、道明寺は烈の目線の高さまで屈んだ 烈は道明寺の目の前に手を翳すと更に呪文を唱え 「儂の言葉の意味を解らぬのならば、主の目で視て見るがよい!」と言った 道明寺は自分の百貨店を見た すると百貨店には影が覆い………まるで今の花菱の現状を物語っていた 「え!!これは?」 道明寺が呟く 烈は「この百貨店の現状にゃのよ!」と伝えた 「え?………花菱は終わりますか………」 「終わらせたくにゃい?」 「………終わらせたくはありません………」 「にゃら今の現状では無理らから、少ししたら動いても良いにょよ!」 「本当ですか?」 「対価をくれるにゃら、だけど」 「対価……ですか?」 「ボクねタダではやらにゃいのよ」 「対価、私で払えるモノならば………でも資産を全て処分してもお出し出来るか………」 今までが甘え過ぎていたのだ 本来対価を取って当たり前なのだ 「ボクね、タダより高いのは、にゃいと想うにょよ!」 「ですね!」 「だからね、花菱だけにしかにゃい宝寿堂のガラスのような和菓子を毎月、一年ボクに食べさせて!」 「え?それは対価になりませんよ? 今でも持って来ますよ?」 「ボクがそれが欲しいにゃら、それが対価にゃのよ!」 「解りました、それを毎月1年間ですね」 「にゃら契約ね!明日にでもレイたんのお水、母しゃんに持って来て貰うにょよ! 正式にゃ書類は近い内に持って行くにょよ!」 と言い烈は車に乗り込み去って行ってしまった 何か夢のような感じで、これが現実なのか解らないが……… 道明寺の瞳には烈が掛けた呪文がまだ残っていて、百貨店を覆う翳りを目にして現実なのだと実感していた 烈は車に乗り込むと竜馬は車を走らせた 竜馬は「何処へ行くのよ?」と問い掛けた 「蔵ちゃんにょ会社よ!」と言い不敵な嗤いをして宗右衛門の声で 「神威からラインで鑑識が来るから会社に行け!と来ておったのじゃよ! まぁ殺した筈の社長が来たら驚くし、残念がるじゃろうて!」と愉快そうに謂う 竜馬は「会社にどうやって消えた事にするのよう?打ち合わせをしないと駄目じゃんか!」と言った 「蕪村には隠し通路があるのじゃよ! そこへ通って外に出た!それで通すしかなかろうて!」と謂う 「え?そんなのあるの?」 「飛鳥井にもそれはある どの会社にも設計上に乗らぬ脱出経路は必ずやあるのじゃよ! まぁ蕪村は地下に行かねば出られぬ故、早々に地下にいた、それで通すしかあるまいて!」 「何かさ壮大過ぎて………」 「クリストファーが建てた家にも、三木の家にもあるのに知らぬのか?」 「知らないよ!」 「まぁ三木の家は知らずとも他は追々教えてやる事にするかのぉ〜!」と笑った 竜馬は蕪村建設に到着すると、蔵之介に「宮瀬那智を呼べ!」と告げた 蔵之介は即座に宮瀬那智に連絡を入れ蕪村まで来て貰う事にした 烈と竜馬は蕪村建設の正面玄関に立つと 「どうやって入るんだよ?宗右衛門!」と問い掛けた 「鑑識が来るじゃろ?そしたら何とかなるじゃろ!」と呑気に言いウィダーインゼリーをチューチュー吸った 暫くすると鑑識と宮瀬那智が同時に到着した 鑑識が正面玄関の自動ドアを無理矢理開けて、中へと突入する 宮瀬那智は蔵之介の傍に近寄り「何か用ですか?」と問い掛けた 烈は何も謂わず那智を視ていた その視線に気付き那智は「この子は?」と尋ねた 蔵之介は「康太の6番目のお子さんで、飛鳥井宗右衛門を継いだ烈君です!」と紹介した 那智は父 蓮二から飛鳥井の家の事は良く聞いていた 飛鳥井には真贋と同列扱いの宗右衛門と謂う存在がいて、今年役職に付かれたと謂われていたのだった 那智は烈の前に深々と頭を下げると 「宮瀬那智に御座居ます! 以後お見知り置きを!」と自己紹介した 宗右衛門は「飛鳥井宗右衛門を継いだ飛鳥井烈じゃ、以後お見知り置きを!」と返した その声は嗄れた老人のようで、それでいて貫禄もあり威厳もあった 那智は「私をお呼びした御用は、なんですか?」と尋ねた 「宮瀬も蕪村も今一度己の会社の在り方を振り返り、目を向けねば蕪村の様に内部の者に腸を食い荒らされ、気が付いたら手の打ち様がない、なんて事になりかねぬからな、呼んだのじゃよ! 宮瀬那智、この会社を見てみろ! 蕪村は菩提寺の道場の工事を古材を使い安く上げた挙げ句工事が大幅に遅れて事態が明るみに出たのじゃよ! それで全てを暴き罪を下そうとしたら、焼き殺されそうになった これは他人事ではない、己の身にも降りかかる事だと自覚させようと呼んだのじゃよ」 那智は言葉もなかった 鑑識が入り一人一人事情調書を受ける 烈は事情調書はされなかった 烈は那智に「下まで目を向けにゃいと、そのうち痛い目を見るにょよ! れんじはそう教えてにゃかった?」と問い掛けた その声は何処から聞いても子供の声だった 「父からはそう聞いております! なのでその様にしております……まぁ若輩者ですから至らぬ点も有りますが、何とか日々努力しております!」 「母しゃんの描いた果てが狂ってるにょよ…… あの日、あの時、軌道に乗せた筈の果てが……狂って来てるにょよ………歪んだ果てに翳りが視えるにょよ……ボクの瞳はそんな翳りを視える眼だから………」 「翳りが視えるのですか?」 「ボクの眼は人の真髄を見抜く そしてその人の闇の部分を見抜く それと同じに闇に染まった会社の建物も視えちゃうにょよ………」 「蕪村は………貴方の眼にはどう視えたのですか?」 「丁度可視化の呪文唱えてたからね、視せるのは簡単にゃのよ、しゃがむにょよ那っちゃん」 烈に言われ那智は烈の目の高さまでしゃがんだ すると瞳に手を翳した 「外に出て蕪村を見上げると解るにょよ!」 謂われ那智は外に出て蕪村建設を見上げて視た するよ会社を覆う様に翳りが在り、那智は腰を抜かしそうに成る程に驚いていた ヨロッと那智がやって来ると烈は 「視えた?」と問い掛けた 那智は「はい、視えました………あれは何なんですか?」と問う 「あれはね、蓄積された闇にゃのよ 人には必ず負の感情があるにょよ その負の感情が蓄積され勝手に動き出し負の感情が連鎖する様に……にゃるのよ」 人が生み出した闇だと謂うのか? 「あれは…人が生み出したのですか?」 「あれはね一種の呪物に近くなってるにょよ 人は辛い時悲しい時絶えられない時、毒を吐いているのよ 心の澱と謂うか、言葉って本来意味を持ち動き出すのよ、だから言霊と謂われるにょよ」 謂われてみれば言葉には魂が宿ると謂われている 烈は宗右衛門を出し 「遥か昔、人は一般の人が呼ぶ【名】とは別に【真名】を着けてそれを本来その子が持つ名として隠した それは【名】を呼ばれる事により、呪縛されてしまい力を半減させられてしまうから隠したのじゃよ!それと同様に言葉と謂うモノは人に危害も加えられるし追い詰められる そして死に追い込む事だって出来る呪詛の一つなのじゃ! 平和で和気あいあいとしていたとしても、いざこざは必ずやあるであろう そんな時人は心の澱を下ろす為に毒を吐く それらが積み重なり塵も積もれば的になった時 タイミングさえ合えば、それは発動される そしてその中で生活をする者達を少しずつ病ませ弱らせて行くであろう 蕪村はまさにそのケースに当てはまるのじゃよ!」 「ならば私の会社も………」 「なくはないじゃろ!」 那智は言葉もなく………途方に暮れた 眼の前の烈の瞳は蒼く時々光りを放つ 康太の紅い眼とはまた違ったその眼には人の闇が映し出されるのだと理解する まだ小さい子供なのに……… 烈は手に怪我をして包帯がグルグル巻きにされていた 見てるだけで痛々しい傷なのに、立っている姿は凛として毅然と構え果てを見ていた 那智は覚悟を決めると宗右衛門に 「宗右衛門殿、私の会社も一度視て貰えませんか?」と問い掛けた 宗右衛門は嗤って 「儂はタダでは仕事はせぬよ!」と答えた それが当たり前なのだ 康太の無償の愛に甘えていただけで、対価を求められるのは至極当然の事だった 「お幾ら払えば動いて貰えます?」と那智は問い掛けた 「それは烈が答えるしかなかろうて!」と笑い宗右衛門は消えた 「宮瀬建設は社員教育どうしてるにょ?」 「社員教育ですか? うちは資格持ち優先で雇用しているので、建築法が変わった時とかに講習会とかやってます」 「それだとね、次が出れにゃいの解ってる?」 「え?それは?どう謂う事なんですか?」 「次の者を育てるにょが、上に立つ者の死命にゃのよ! なのにそれしてにゃいとか………論外にゃのよ 宮瀬に研修に出しても、得られるにょなさそうね!」 「うちはトップを誇る建築会社ですよ?」 「今の資格持ちが定年したら? 宮瀬の土台を支えるにょは誰? また資格持ち探して雇用するの?」 今の資格持ちが定年したら……そんな事は考えた事すらなかった 今トップを張ってる人材が辞めたり定年を迎えたら…………人材不足になるのは目に見えて明らかだった 宮瀬は「あ!………そうなったら土台を支えられません!」と呆然と呟いた 父から常日頃から社員教育をしろ!と煩く謂われていた うちには国内で賞を取りまくった建築家がいるから大丈夫!と謂うと父は「何時か頭打ちされる日を願っている」と言った言葉の意味を知った 「飛鳥井もね、社員教育してにゃいから若手は育たなくてね大幅な改革をしたにょよ! で、南雲建設に話を付けて研修に出したりしてたにょよ! その研修先に宮瀬も視野に入れてたけど、駄目そうだから……先に断っておくにょよ!」 と先手を打たれた 本当に食えない存在だった 下手したら父親よりも遣り手で食えない存在なのだと知る そんな那智の想いも知らず烈は 「子供のれんじと逢ってるにょよボク ボクはね、真贋の半分で転生して土台を作る為に奔走したにょよ! 南雲詩と交流を築いて宮瀬詠一郎とで、何時か切磋琢磨して助け合うシステムを作ろう!と話してたにょよ! その時詠一郎が連れて来た子がれんじだったにょよ!ボクも年でねぇそんなに長くはいられにゃかったけど、れんじとはね仲良くしてたにょよ」 「そんな話、初めて聞きます!」 「れんじとこの後逢うにょよ! 那っちゃんも来るにょよ!」 「解りました、では御一緒させて下さい!」 そんな事を話してたら竜馬が調書を終えてやって来た 竜馬は「烈、この後どうするんだよ?」と問い掛けた 「蔵ちゃんは?」 「今日は1日犯人の自供を別室で聞くとか言っていたから、この後刑事と共に出るって言ってた」 「なられんじと逢うとするにょよ」 「連絡してある?」 「これからにゃのよ」 「なら俺がするから、怪我してるんだから動き回るなよ! 久遠先生に怒られるの俺なんだからな!」 「解ってるにょよ、ケントも要るし大丈びよ!」 影の様にSPのケントは烈を護る様に距離を取り立っていた 蓮司に連絡すると大歓迎され何時でもOKだと謂われ、この後逢う時間を作って貰ったのだ 「にゃら行くにょよ 那っちゃんは車置いて竜馬の車に乗るにょよ!」 烈が言うと那智は竜馬の車の後部座席に乗り込んだ ケントは竜馬の車の後ろを走って着いて行くと謂う 烈は竜馬の車の助手席に乗り込むとお口を開いた 竜馬は仕方なくダッシュボードから烈の薬の袋を取り出すと、鎮痛剤を中から探り見付けると錠剤を押して取り出すと烈のお口にポイッと放り込んだ そしてウィダーインゼリーを封を開けて渡した 「還り久遠先生の所へ行きますからね!」と謂う 烈は答えずに椅子に凭れて寝ていた 宮瀬蓮司は蕪村近くの馬の訓練所にいて、馬の仕上がりを確かめに来ていた その近くのカフェで待ち合わせをして、蓮司は人数分の席を頼み待ってくれていた 暫く待つと烈がやって来て「れんじ!」と謂うと蓮司は駆け寄り烈を抱き上げた そして怪我をした手を見つけ、眉を顰めると 「また怪我をしたのですか?」と尋ねた 「ん、想った以上に腐っててねぇ危うく殺されそうになったにょよ!」 「貴方は宗右衛門ですから、消したい輩は五万といるでしょうが、気を付けて下さいね! あ、それよりお連れの方がいたのですね!」 と言い蓮司は烈を下ろすと椅子に座らせた 那智と竜馬と烈は蓮司が用意した席に付き、ケントは後ろの席に座った 蓮司は息子に目を遣り 「倅が何かしたましたか?」と尋ねた 「対価を取ろうとしたけど、対価ににゃるのがなかったにょよ!」 「対価……ですか? 烈は倅に何の対価を求めたのですか?」 烈はニャッと嗤い宗右衛門を出した 「それは詠一郎と詩と決めたシステムの発動じゃよ!」 「あ………あぁ……やっとその時が来たと謂うのですね!」 と感慨深く蓮司は呟いた が、宗右衛門は 「じゃが今の宮瀬に行っても得れるのは一つもないから止めたのじゃよ!」と吐き捨てた 「得れるのは一つもない? それは何故なのですか?」 「今の宮瀬は国内有数な建築家がいて回っておる じゃが教育システムが構築されてはおらぬ じゃからな飛鳥井が行っても学べるシステムはないから、行くだけ無駄と謂うモノじゃろ!」 下を育てねば何時か頭打ちされるとあれ程口煩く言っていたのに……… だが蓮司は目を瞑り何も謂わなかった 宗右衛門はそんな蓮司を視て 「蓮司、儂はタダでは仕事はせぬ事を主が一番良く知っておろう!」 と問い質した 「知っております! 子供の頃数年しか御一緒は出来ませんでしたが、貴方は儂に人の上に立つ存在のなんたるやを教えて下さった!」 「儂が要求した対価は主の父親と詩と共に約束した互いの社員を教育し合う教育システムなのじゃよ、じゃが今の宮瀬で何を教えを乞えるのじゃ? 詩の南雲建設とは既に互いの社員を教育し合う様に、送り出しておる 主の所は…………飛鳥井に何を齎す? それが視えぬからな……話を進められぬのじゃよ! 蓮司、少し会社に戻り教育してやる事は無理か?」 「私が戻り教育するのは容易いですが、それだと那智の意識は変わらぬので………」 「ならば先に蔵之介と那智の意識改革をやらねばら話は進まぬと謂う事か……… でも他を出すならば高いぞ?どうする蓮司?」 「…………それは那智が毎日貴方の好きなキラキラ葛餅を差し入れしたら……対価になりませんか?」 「それはもう他で手を打ってあるからな あまり必要ないのじゃよ!蓮司 真贋があまりにも儂に仕事をフルからな、儂は当分仕事ばかりの日々じゃよ 飛鳥井記念病院、飛鳥井家菩提寺、蕪村建設、花菱百貨店ともう既にこんなに入るっておるからな」 「そこを何とか、ならば烈の好きなヘルシーな豆乳プリンとカニパンを毎日儂が飛鳥井まて届ける故引き受けて貰えぬかな?」 烈は豆乳プリンとカニパンを思い浮かべて、ヨドを出しそうになっていた 竜馬は「烈、順序良く蕪村、病院、菩提寺とやらねぇとならねぇの忘れるなよ!」と釘を刺す 烈は笑って「母しゃんは多分宮瀬まで込みで蕪村と言ったにょよ! 蔵ちゃんと那ちゃん二人並べて意識改革をやりゅのよ!そしたら一石二鳥にゃのよ!」と言った 竜馬はニャッと嗤い「ならば腕によりをかけねばならないが、蓮司さん俺のは? 俺と烈でやらなきゃならない事なんだよ?」と対価を強請った 蓮司は「ならば竜馬には芋羊羹を差し入れする! それで手を打たないか?」と賄賂を口にする 竜馬は瞳を輝かせ「それってこの前食べさせてくれた亀屋本店の芋羊羹?」と問い掛けた 「そう、それで手を打ってくれぬか?」 「喜んで手を打つ事にする!」 と竜馬は言い那智に向き直った 「明日から蔵之介さんと時間を合わせて来てくれませんか? 毎日宿題を出します、それに答えて持って来て下さい! それを1週間続けたら貴方達の欠損部分が解るので、そしたらどの様に意識改革したら良いか方向も解ります!出来ますか?」 那智はグッと拳を握り締めて 「お願いします!」と答えた 那智が答えると烈が「場所は飛鳥井の保養施設でね!夜5時にそこに来て1時間ミッチリ勉強よ!」と言った 那智は「了解しました!土日はどうなりますか?」と問い質した 「土日も関係にゃいのよ そんな悠長な時間あると想うにょ?」 「ないですね、解りました! 明日からお願いします!」 那智は深々と頭を下げた 烈は携帯が震え誰からだろ?と携帯を見た するとラインが入ってて『烈、これからそこに行くから終わったら少しオレと話をしよう!』と入っていた 烈は了解のスタンプを送信して携帯をサコッシュに入れた 暫くすると康太と榊原が姿を現した 「どうよ?烈」 「もぉね、嫌になるにょよ! 母しゃんは順序付けてくれたけど、病院の人選終わらねぇ!って兵藤きゅんから怒り爆発のラインあったにょよ」 「それは貴史には堪えてもらうしかねぇな…… 兎に角、一つずつ片付けて行こうぜ! それしかねぇからな、それより傷は?」 康太が問い掛けると竜馬が 「痛み止め飲みまくってて、これ以上は飲めない数まで飲んでる! それだけ痛みが在るって事なんだと思う」 と説明した 烈は「でもね那っちゃん終わったら病院に行くにょよ!面接の日取り決めにゃいと、だからね」と時間が足らないと謂う 「うしうし!オレも伊織に会社を任せたから、一緒に動いてやる! それでサクサク片付けて行こうぜ!」 「母しゃん………」 「蔵之介は?一緒じゃねぇのかよ?」 竜馬が「蔵之介さんは犯人の供述を隣の部屋から聞いて間違いがないか確かめる為に警察にいなきゃ駄目だとかで行ってます!」と説明した 康太は「蔵之介一人か?」と問い質した 烈が「ボクらは帰されちゃったから解らにゃいのよ!神威に警察署に行かせる?」と聞く 「だな、罠かも知れねぇからな………まぁ考え過ぎなら良いけど………」 烈は慌てて神威に連絡を取り警察署に蔵之介の所に出向いてくれ!と頼んだ 神威からは直ぐ様連絡が入り 『儂は丁度警察署にいて連れて来られた蔵之介を見かけたからな、調書立会と聞いたから儂も立ち会う事にしたから一緒にいる!』と返信が来た 烈は携帯を母に渡した 康太は安堵の息をついた そして烈を視て「花菱………闇に覆われていたのか?」と呟いた 「母しゃんの果てが狂って来てるにょよ! まぁ狂ったなら蹴り飛ばして軌道修正すれば良いだけの事にゃのよ! 蔵ちゃんと那ちゃんはレイのお水飲んだ方が良いわね……」 「だな、蓮司、この甘ちゃん扱いても大丈夫か?」 蓮司は笑い飛ばして 「扱いてやってくれ! 儂はずっと言っておった 継ぎを育てねばならない状況を解らせてやってくれ!それしかこのバカ息子の明日はない………と儂は想っている」 と我が子を愛しているからそ言える言葉だった 「なら明日の5時に保養施設に来るにょよ!」と言い蓮司には 「差し入れ楽しみにゃのよ!」と言い席を立った そして那智に「蕪村まで送ってく?」と問い掛けた 蓮司が「倅は儂が送る故帰られて構わない! こんな風に顔を合わせる機会はないからな、暫し倅と話をしようと想う!」と言った 「にゃら車の所まで送ってやってね!」 「承知した!」 蓮司の言葉を聞き烈は、康太と榊原と共にその場を後にした 外に出ると烈は「りゅーまの車で行くにょよ!何処で話すにょ?」と問い掛けた 「なら崑崙山の八仙の屋敷の裏のお前んちで!」 「そこにはりゅーまの車で行けにゃいのよ」 と烈がボヤく 康太は笑ってさっさと榊原の車に乗って行ってしまった 烈は竜馬の車に乗り込み 「飛鳥井の家まで行くにょよ!」と言った 竜馬は「了解!」と言い飛鳥井の家まで走った 飛鳥井の家に着くと烈は「りゅーまはどうする?」と問い掛けた どうせ骸骨だらけの道を通って逝くのだと想い 「俺は明日の為のテキスト作っておく!」と答えた 烈は自分の部屋に行って、其処から神の道を通り崑崙山へと出た そして八仙の屋敷の裏にある自分の家へと向かった 康太と榊原は既に来ていた 烈が部屋に上がると、榊原は烈の傷のを見る為に包帯を解いた すると血が滲み傷は治ってすらいなかった 康太は「八仙に烈に合った薬を作ってくれって頼みに行くわ!」と謂うと榊原は烈の包帯を新しいのに変えて「僕が逝くので君は烈と話をなさい!」と言った そして包帯を巻き終えると榊原は屋敷を出て行った 康太は「天宮、どうしたら良い?」と聞いて来た 烈は「母しゃん、天宮の事務所の状況知ってる?」も問い掛けた 「お前に謂われるまで知らなかった あの後調べてビックリした………そりゃオレの用ばかりで呼んでたら事務所として回らなくなるわな そんな事にも気付けなかった自分が情けねぇ……」 「あれはね天宮も悪いにょよ 母しゃんに重きを置くにゃら他会社と専属を結ぶんじゃなく、地道にやれば良かったにょよ 専属を結んだら、その会社の利益になる仕事をしなきゃならにゃいのよ そこが甘いから破たんが来たにょよ!」 「で、宗右衛門に相談がある もう今日は出ないか?」 「少し無理にゃのよ 出れるにゃらとうの昔に出してるにょよ!」 「なら烈、オレはどう動いたら良い? オレの果てが狂いっぱなしだからな、もう打つ手は考えられねぇんだよ!」 康太が悲壮な顔をして問い掛ける 烈はサコッシュの中に入れておいたウィダーインゼリーをチューチュー吸いながら 「少し待つにょよ!」と言った そこへ榊原が八仙を連れてやって来た 八仙は烈の傷を見る為に包帯を解いて傷を見た 「魔獣にやられたのかえ?」と八仙は問い掛けた 「頭が八つで鋭い尾を持ってる大蛇が出て来たにょよ! でね、その蛇の一匹が襲って来たにょよ! 大きな口を開いた蛇の牙が手に突き刺さり引き裂いて止まったにょよ! まぁ蛇さんはボクの剣を見て逃げて行こうとしたから、輪切りにして斬ったにょよ!」 康太は「嘘、ヤマタノオロチ?でもアレ伯父貴に倒されたんじゃ………」と何がどうなってるんだ?と混乱して言った 「式神使いが放り込んだにょよ!母しゃん じぃさんが倒したの本当にがいたなら、また頑張って倒しに逝くにょよ!」 「だよな……」 不安そうな康太の顔に宗右衛門は 「太陽の翳りが影響しておるのか?」と呟いた 八仙は「なれば聖神、方陣を引いて太陽の強い光を炎帝に注ぎ込めば良いじゃろ?」と提案した 「…………それを外でやって大丈夫なのか?」 「まぁ何かあっても異常に察知すれば素戔鳴殿が来るであろうて!」 「にゃらやりゅのよ!」 烈はそう言い外に出て行った 烈が引いた方陣に八仙総出で水銀でなぞるように線を引く 方陣が出来上がると「八仙、よぶにょよ!」と言った すると空を飛ぶ八仙が飛んで行って、康太を浮かして連れて来て方陣の真ん中に置いた 烈は呪文を唱えた 榊原は心配そうにその光景を見守っていた 烈の呪文を謂う言葉に他の言葉が重なり一つの呪文を唱える 榊原はその声がヘルメースの声だと解っていた すると宇宙の大空から大きな火急が天界を通り抜け、人の世の空を騒がし、崑崙山に落ちて来た その火急は方陣の上に落ちると、瞬く間に方陣を炎で包んだ 生命の紅、神秘の紅、昇華の紅、浄化の紅………それらが康太を包み込み燃えた 烈は「疲れたにょよ!」と謂うと八仙の屋敷に向かいお茶を淹れて貰い飲んでいた 榊原は「烈、何時頃鎮火しますか?」と叫んで問い掛けた 「少し無理にゃのよ 父しゃんもこっちに来てお茶飲むにょよ!」 榊原は「僕は妻の側にいます!」と答え、燃え上がる康太を見ていた その間に烈は八仙に手当を受けて、薬湯を飲んでいた 魔界の上空から火急が落ちて来て、その異変に火急が何処へ落ちたのか?と追って来た素戔鳴尊と建御雷神が燃えてる康太を目にして駆け付けて来た 「炎帝!どうしたのじゃ!」と息子が燃えてて心配する建御雷神に榊原が事情を話した 素戔鳴尊は孫の姿を発見すると烈の傍へと近寄った そして怪我した手を目にすると「どうしたのじゃ?烈!」と心配して問い掛けた 「じぃさん大丈びにゃのよ!」 「その傷は魔獣にやられたのか? だとしたら毒素を抜かないと何時まで経っても傷は治りはせぬであろうて!」と八仙に言う 八仙は「ヤマタノオロチの一頭にやられたそうじゃよ!」と説明した 「あれは儂がまだ人の世にいた頃に倒したぞ? なのにヤマタノオロチにやられたと申すのか?」 素戔鳴尊は唖然となり問い掛けた 烈は「式神使いの仕業にゃのよ、じぃさんの剣を見て怯んだから輪切りにしたにょよ!」とガハハハハハハッと笑い飛ばした それは笑えぬぞ烈………と素戔鳴尊は想った 八仙は魔獣の毒素を抜く薬を塗った その上に薬草を貼り付け包帯を巻いた 手当が終わると八仙は「そろそろじゃぞ、烈」と言った 烈は外に出ると母の傍へと近寄り 「じぃさん、強い風吹かせられるのいにゃい?」と問い掛けた 素戔鳴尊は「待っておれ!」と謂うと息を肺一杯に吸い込み 「鳳凰、今直ぐ崑崙山へ来るのじゃ!」と大声で叫んだ 素戔鳴尊は鳳凰がミネルヴァの森辺りをパトロールに出ている頃だと踏んで大声で叫んだのだった 直ぐ様鳳凰が崑崙山へ飛んで来て 「素戔鳴殿、何か御用ですか?」と問い掛けた 素戔鳴尊は「あの焔を吹き飛ばすのじゃ!」と意図も簡単に言った 「……………解りました、やってみます!」 鳳凰は肺一杯に息を吸い込み、一度に吐き出した 物凄い風があたりを巻き起こし、火は鎮火した 榊原は物凄い風だから八仙の家と烈の家を護る為に龍になり風から護った そして火が鎮火するのを確認して、人になり妻の側へ駆け寄った 「康太、大丈夫ですか?」 康太はメラメラと生命の輝きを露わにして嗤っていた 「何か体が軽くなったぜ烈! うし!この調子で話し合いの続きをするぜ!」 八仙は「儂の家を吹き飛ばしていたらタダでは済まさぬ所じゃったわ!」と怒っていた 鳳凰はトホホな気分で「用は終わったようじゃから帰るとするわ!またな炎帝、青龍、聖神!」と言い還って行った 烈は「母しゃん、ボクんちで話すにょよ!」と謂うと皆を八仙の裏の家へと連れて行った 八仙は「後で薬湯を届ける故飲むのじゃぞ!」と言った 「八仙ありがとう!」と礼を言い烈は家へと入って行った ソファーに皆が座ると烈はお茶を淹れに向かった 榊原がそれを止めて変わりにお茶を淹れた 崑崙山は火山が近くにあり、地脈の水源があり湯が湧き出ていて、何時でも暖かいお茶を挿れられていた カモミールのティーパックを見付けると、それでお茶を淹れ皆に運んだ 烈はお茶を手渡されそれを飲んていた 康太が素戔鳴尊と建御雷神に事の詳細を話して聞かせた 今人の世が大変な事になっている事 そして康太が描いた果てが悉く狂って来ている事 そして太陽と月が重なり火が翳る周期に来ている事など話した そして烈の手の怪我の事、ヤマタノオロチを出て来て襲われた事などを話した 素戔鳴尊と建御雷神は黙ってその事を聞いていて、顔を見合わせた 素戔鳴尊は「ニブルヘイムの雨で5年の猶予が出来た筈なのではないのか?」と問い質した それに答えたのは烈だった 「相手はニブルヘイムの転生を視野に入れて布石を打ってたにゃよ だからタイムロスなく、周到に嫌がらせしてくれているにょよ! 多分、自分が動けにゃい分は動かせれるモノがいるんだと想うにょよ! そしてソイツは母しゃんの力が弱る周期を待っていたにょよ!」 烈の話を聞いて建御雷神はハッとした顔になり 「だから火急を落とし炎帝に太陽の焔を分けたのか?だとしたらアレは大気圏で燃えた火急ではなく太陽の一部とかなのか?」と呟いた 「そうね、アレは太陽神から分け与えられた焔にゃのよ! でにきゃ、母しゃんの力は蘇らにゃいのよ!」 「太陽神にコンタクトが取れるのですか?聖神は?」 建御雷神は訝しんで問い掛けた 烈は「そんな呪文を聞き知ったからやっただけよ!成功して良かったにょよ!」と笑った 素戔鳴尊は孫の頭を撫でて嬉しそうだった 成功して良かったレベルの話ではないから建御雷神は黙るしかなかった 康太は「オレは烈と話があるからな還ってくれねぇか?」とにべもなく言った 建御雷神は「金龍はどうなりました?黒龍から話が上がって来ないので………」と丁度良いからと問い掛けた 榊原が「我が父は修練の旅に出ました! 未熟故に周りを見えぬ行動を取ったツケは支払わせると宗右衛門が申されたので、まだ還れません そして黒いのと天も今は絶賛修練中です 黒いのは宗右衛門の前で巫山戯た事を抜かしたので、人の世の2ヶ月の期間を与えテストして合格出来たら還れます 天は何も出来なくて丸くなるだけだったので烈を怪我させてしまったツケを支払う為に修練中です どの道、あの3人は宗右衛門が許さねば還れませんね、だから金龍と黒龍が不在をカバーすべく地龍が頑張っている筈です! 赤いのも時々手伝いに来ている筈です! なので当分龍族は地龍を扱き使い何とか回して逝くでしょう!」 と、しれっと謂うから建御雷神は言葉もなかった 素戔鳴尊は「まぁ地龍で足らぬならば他の尻を蹴り上げて働かせてやるわ!」と言いガハハハハハハッと笑い飛ばした 建御雷神は「その真意はお聞かせ出来ませんか?」と問い掛けた 烈は仕方なく宗右衛門を出した 「金龍は他の話を聞き入れはせなかんだ その結果、どうなった?あやつは子を殺す運命しかなかった その前に儂が出て殴り飛ばされて死にそうになったから、そのツケは取らねばならぬのじゃよ! 金龍はどの様な事でもすると、儂の謂う事を聞いて絶えて日々鍛錬と修練の日々を送っておる それは布いては魔界の為になる筈だから、今は絶えて堪えて耐え忍んで貰うしかない 金龍が魔界に還ったらならば、その時は指導者として教えられるであろう! その教えは次代だけではなく龍族に技を教え闘う指南をする為のモノじゃ! そして何も持たぬ者達を護身術を教え、誰もが闘える魔界にせねばならぬじゃよ! 次代だけが力をてけても乗り越えられはせぬ! 皆が力を合わせて、この局面を乗り越える事に意味があるのだからな! 閻魔が武道場を建てるのが早いか? 金龍が武闘を叩き込まれて還るのが早いか? 主等は其の日の為に動いて道を整えられよ! そしたら金龍を還した時に儂がレールの上に乗せてやる!」 建御雷神は深々と頭を下げ「ならば、その日の為に我等は武道場建設の重きを置き過ごさねばならぬな!それが………烈殿が下した金龍への裁きとなろうとは………本当に貴方は諍いが嫌いな方だ 己が殺されそうになろうとも………魔界の明日を糺す為に動いておられる……」と言い姿勢を正すと、素戔鳴尊と共に還って行った それを見送り康太はキラキラの瞳をして 「さぁ邪魔者はいなくなったぜ!烈」と言った 烈はカモミールの紅茶を飲みながら頷いた 「で、オレはどうしたら良い?」 「母しゃんが天宮をどうしたいか?だと想うにょよ!」 「それは天宮の使い方って事か?」 「そーね、専属にして他の仕事はさせにゃいか? それとも弁護士の仕事を優先させるか?」 康太は考え込んだ どれが一番良く天宮の弁護士人生を永らえさせられるのか?を。 「烈は?どうしたら一番最適だと想う?」 「それはね、弁護士事務所を大きくするにょよ!」 「大きく………って、事務所を大きくするのか?」 「違うにょよ、神威の事務所と合併して他の弁護士も雇い入れるにょよ! もぉね神威の弁護士事務所を大きくする話は出てるにょよ! 【R&R】の名で企業向け調査事務所と探偵事務所と警備会社、そして弁護士事務所を同じ【R&R】で統一してより的確に動ける様にって考えてて実行したにょよ! 中古のビルを買ったからね そこをリフォームしてビルごと【R&R】で統一しちゃうの でね、それに共にゃい規模を拡大するのね いっその事天宮の事務所と合併して動きやすくしちゃうのも手にゃのよ」 「それ良いな、天宮にその話、フッても大丈夫か?」 「構わにゃいのよ、その方が天宮も動きやすくにゃるのよ チームで動くからね、全部勝手は困るけど、天宮が動けにゃいなら他を行かせられるし、考えてみるのも手かもね!」 「オレ………らしくもなく考え込んでた どうしようって……らしくなく落ち込んでた」 「それはね母しゃんが受ける太陽の翳りの所為にゃのよ! 母しゃんだってずっと前向きでいられにゃいのよ たまには立ち止まらにゃいと、息切れしちゃうにょよ!」 「だな、今世本当にお前がいてくれて良かった そして魔界に戻ってもお前がいてくれるから、本当に助かっている」 「母しゃんは飛来クラゲや魔獣は食べられにゃいもんね」 「………そう謂う事じゃねぇんだけど………」 康太はたらーんとなったが、烈がニカッと笑って 「解ってるにょよ!」と言った 「なら人の世に帰るとするか!」 「だね、兵藤きゅん求人ファイル持って怒ってるからね帰らにゃいと!」 「え?何でそれが解るのよ?」 烈は神の道を通っていた時に届いたラインを母に見せた 康太と榊原がそれを見ると……… 『烈、てめぇ何処へ行きやがった! 何度も求人のファイルの見直ししやがれ!とラインしたじゃねぇかよ! 早くしねぇと病院のリニューアルが遅れるって解ってる?』と怒りに満ちたラインで言葉もなかった 榊原は「ならば大至急飛びます!捕まってなさい!」と言い外に出ると龍に姿を変えた 康太と烈は青龍の頭に乗り込むと、青龍は勢い良く飛び上がり気流に乗った まるでジェットコースター並みの迫力に烈は 「父しゃんカッコイイ!」と言った 我が子にカッコイイと謂われ青龍は嬉しくて堪らなかった 崑崙山から人の世はあまり時間をかける事なく、飛鳥井の屋上に到着し青龍から下りると、康太は兵藤に「何処にいるのよ?」とラインした 『俺は飛鳥井の応接間で久遠とレイとで面接のファイルを選別してるんだよ!』と返って来た 「オレは今飛鳥井の屋上だからな直ぐに行く!」と送信して屋上から中へ入り階段で一階まで下りた そして応接間の部屋に入って来ると、兵藤は 「何処へ行ってたのよ? お前……力が翳ってたのにウソみてぇに燃えてますがな………」とボヤいた 「烈がな崑崙山で方陣描いて太陽の焔を貰い受けてくれたんだよ! で、今のオレは無敵だぜ!」 兵藤は今人の世を騒がせていた火急のニュースを見せて 「烈の仕業だったのかよ?」とボヤいた ニュースには今世紀最大の火急と銘打たれ騒がれていた 結構な範囲の人が火急を目撃していて、火急の大きさの割合を測った学者の話も出ていた どんな方陣を引いて火急を呼んだのか?解らないが、計り知れぬ力を秘めて要る烈ならば可能だろうと想った 久遠は烈の手を取ると包帯を外して怪我の具合を見た 薬草が貼られた手を見て「八仙の手当か?」と問い掛けた 烈は「痛みが引かにゃくてね」と話した 久遠は康太に「これ、外して消毒しても大丈夫なのか?」と問い掛けた 「あぁ、ヤマタノオロチに襲われたから毒素を抜く為の薬草だからな、もう大丈夫だぜ!」 ヤマタノオロチ………久遠も兵藤も言葉がなかった レイは烈に抱き着き撫で撫でしていた 久遠に消毒して貰い新しい包帯に変えて貰うと、榊原は軽い食事をデリバリーで注文した 皆でそれを食べてると慎一が戻って来て、夕飯の準備を始めた 「慎一も何か取るか?」と康太が問い掛けると 「もう直ぐ聡一郎と隼人も還って来るので、あ、竜馬が部屋にいると想うので4人分お願いします!」と言った デリバリーが届くまで夕飯の準備をしに慎一が逝くと、聡一郎と隼人が還って来た 源右衛門の部屋から竜馬が出て来て「烈、還ってるなら言ってよ!」と言った デリバリーが届き皆で食べていると、烈の携帯が鳴り響いた 烈はハンズフリーにして電話に出た 「はい、にゃんですか?」 『手を引け!でなくば殺す!』と言い電話が切れた 康太と榊原は驚愕の瞳で烈を見た 烈は慣れたモノなのか、ふうっーと溜息を着いて食べ始めた 康太は「何時もこんな電話在るのかよ?」と尋ねると兵藤が「あるな、此処最近は、んとにうんざりする程にある」と答えた 「え?烈は脅迫されていたのか?」 「だな、だから烈が今手に持ってるのは警察が着信が入ったら即座に掛けた人間を追えるヤツだ それとは別にプライベート用と【R&R】用を持ってるんだろ?」 そう言われてみれば、榊原が作った携帯とは少し違っているような気が……… レイが怒りの炎を滲ませると、兵藤は「ほれ食え!レイ」と言った 「レイたん、レイたんが犯人を追うにゃらボクはレイたんよりも早く動いてトドメ刺しちゃうにょね!」 「れちゅ、それいや……」 「なら手を出しちゃ駄目にゃのよ! 約束したよね?破ったらお口聞かにゃいわよ!」 レイは泣きながら「ごめんにゃしゃい」と謝った 兵藤は「ならほら食え!レイ!烈は大丈夫だからな!………やっぱ利益還元祭中だったから恨まれてるのかもな?」と着信がありハンズフリーにして電話に出ると 『手を引け!でなくば殺す!』と脅迫の声が聞こえて来た 竜馬も「俺の所にも煩い位に来ますよ!」と、うんざりして言った 榊原は「烈と貴史と竜馬にその脅迫は来てるのですか?」と問い掛けた 「だな、あの日、あの時、そこに立っていたのは俺等だったからな!」と言った 兵藤はさっさとご飯を食べ終えると、レイの食事を手にしてレイに強制的に食べさせ始めた 食べ終えるとウェットティッシュを手にしてレイのお口や顔を拭いてやった 「れい ぴきゃぴきゃ?」 「おー!ピカピカだぞ!」 頭を撫でてやると嬉しそうにレイは笑った 康太はそんな仲の良い親子を横目に「どうするのよ?」と問い掛けた 烈は母を抱き締めて「大好きにゃのよ母しゃん!」の言った 榊原は「父は要りませんか?」と母だけなのが淋しくて問い掛けると、烈は笑って 「大好きにゃのよ父しゃん!」と言った 康太と榊原は嬉しくてニコニコしていた ………が、脅迫されているのなら何か手を打たねば、と気を取り直した 「脅迫されているのですよ?烈」 「兵藤きゅんが動いているにょよ! それに緑翠に兵藤きゅん預かってりゅのよね」 「え?それ緑翠自らお前に頼んだのか?」 「そーにゃのよ、病院が再始動したらローカルで記者会見するにょよ! そこに兵藤きゅん出るにょね! これからバンバン出るのね!」 どうやら鷹司緑翠は顔を売る相手に飛鳥井宗右衛門に白羽の矢を立てた様だった 康太は「まぁ顔売るのなら宗右衛門ならば最適だわな………」とボヤいた 「って事で、母しゃん大々的な求人出したし、これからも集まるにょよ! 期限が3日後だから、そしたら総合的に選別して決めるにょよ! 菩提寺の方は飛鳥井を省くにょよ もう大きな顔されたくにゃいからね!」 「それで良いとオレは想う!」 「にゃら動くわよ母しゃん!」 「おー!乗り切ろうな!烈!」 生命の紅のオーラを漲らせ、康太が謂う こんな康太ならば最強だな!と兵藤は想った 歪んだ歯車が軌道修正され正常に噛み合う、その日まで! 康太と烈は互いを視て嗤った

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