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第37話 嚆矢濫觴 ❸
閻魔は執務室に入って来た顔ぶれに目を向け
「珍しい取り合わせですね!」と言った
炎帝が昔から伯父を苦手にしているのを、知っていたから不思議そうに問い掛けた
康太は「兄者は烈にどんな星を詠まれたのよ?」と単刀直入に問い掛けた
「私が逝くべき星の指し示す道を、烈は話して聞かせてくれました
私も直ぐには烈の謂う事が夢物語みたいで……聞き流していたのですが、これかラストチャンスだと申されれば聞くしかなかった
龍族の在り方と龍族の配置、そして神族の在り方と神族の配置、それをせねば……赤子の手を捻るよりも容易に踏み潰されると………申されました
そう聞けば動くしかなかった
私は連日烈とどうしたら良いか?話し合いをしアドバイスを貰いました
その中でやはり領地を広げねば回せはしないだろう………との結論になりました
魔界はずっと今の領地で来ました
領地が足らなくなる日など来ないと想っていました…………が、果てを詠まれれば領地は確実に足らなくなるのは理解出来た
実際工場地区は色んな工場を建設し、その上海水を加工する禁止区域などを作り出していますから、今後を踏まえれば確実に領地は足らなくなる
なります!
なのでその領地を広げるとしたら、どうしたら良いか?見直す所から始めました
そもそも………この魔界の領地など何処から何処まで在るのか?
私の理解の及ぶ範疇を超えていたので………
多国とかにも聞いたりしました
すると他の国は領地ギリギリまで使ってると謂われました
領地ギリギリまで使わねば、回していけないのは当然だと謂われた
なので許可の取り方を教わり、神の地の使用許可を取り、神と誓約しました………
ですから、もし違えれば………誓約違反としてその地ごと崩落させると謂われました
そしてあの地は金龍以外は切り拓けは出来ぬ誓約で烈は配置しました
今神々が必死にあの地を己のモノにせんとばかりに躍起になってますが、あの地は金龍以外は切り拓けは出来ない
そしてそれら総てを烈と共に配置いた………って話ですか?」
話を聞けば閻魔の苦悩が伺えられた
康太は「そーだよ、オレらは何故に聞かされていたかった?」と問い掛けた
「それは龍族の未来が掛かっていると謂われれば、秘密裏に動くしかないではないですか!
炎帝が歪んだ道を指し示してしまった道の矯正ですから………総て配置した後気付くまで捨てておけ!と宗右衛門殿にも言われましたからね
それよりも早く話せば配置された未来は変わるしかなかった
どの道龍族は滅ぶか?取り潰しの未来しかないと謂われましたから……
それを正して配置して貰わねば、魔界の果てが狂ってしまいます
私は閻魔ですから………私の代で創造神の怒りを買い【無】にされる訳にはいかなかった」
そこまで………魔界は歪んでしまっていたのか?
そこまで追い詰められて行ってしまったのか?
康太は「それってオレがゴリ押しして道を創ろうとしたからか?
龍族の道を無理矢理切り開いてしまったと謂う事なのか?」と問い掛けた
閻魔は烈が指し示したホロスコープを取り出して、見せた
康太と榊原はそれを目にして………固まった
総ての要因はあの日青龍と駆け落ちした日から始まっていたからだった
金龍達は青龍の離脱で龍族存続を断たれたと絶望の淵に突き落とされ………
そして青龍が炎帝と婚姻すると決めた日から、龍族存続に燃える金龍が躍起に魔界で生きる星と、それに逆行して冷めて逝く神々の在り方が✗印から伺う事が出来た
龍族の本懐が遂げられる
あの日、青龍が人の世に堕ちなければ描けた世界を夢見て空回りする金龍
康太は「オレが青龍と駆け落ちしたから未来が狂って来たのか?」と呟いた
閻魔は「違いますよ、良いタイミンで駆け落ちしたんです二人は、此処を見て下さい!」とホロスコープを爪でコンコンと叩いて見せた
「二人は共に逝くが定めの星、なので共に逝かねば果てはもっと狂うしかなかった」
そう言い閻魔はホロスコープに折れ線グラフを重ねて置いた
「これは魔界の運気をグラフに解りやすくしてくれた紙です
君達が人の世に堕ちた時の神族が青、龍族が赤としたグラフです
落ち込んだ龍族と反比例して神族は上昇してるでしょ?
君達は時を早めて駆け落ちした、それだけですが、君達の婚姻を伝えた後……神族、龍族は静観の目に対して、金龍の想いはどうです?
此処から金龍は本願を遂げる為に夢見て空回りを始めて逝くのです………金龍が道を外したとしたら此処だと言われました
そしてそれに誰も気付く事なく、金龍を押し上げて龍族を担わせてしまった
このまま行けばどの道空中分解は始まっていた
龍族は取り返しの付かない傷を負いバラバラになるしかない
黒龍が継ぐべき龍族はなくなり、青龍は孤立する未来しかないと謂われた………
今此処で踏ん張り導いて逝かねば、魔界も神族オンリーの腐った世界となり、どの道絶望した創造神に無に返されて創り替えられてしまうしかない
分岐点だったんです!
そしてその分岐点に、当事者は立てない!
違いますか?炎帝?」
「…………あぁ、当事者であるオレも青龍も冷静には見れねぇからな、その分岐点を目にしたら……
躍起になり滅ぶしかない道へ転がるしかなかった
そうか、だから金龍を指導者にすべき鍛え上げているのか………自分を殺そうとした奴を何故?
そう想っていたけど、それもこれも総て……オレ達の為だったのか…………」
康太はポロッと涙を溢した
榊原も言葉もなかった
「今 武道場を建設しています!
烈が週に何度かは見に来て工程を確かめて進めて行ってます!
勝手には作れないので、次に来るまで此処まで進めといて!と四鬼に依頼して還るので、四鬼はその指示通り進めて行ってます
まだまだ当分は完成は無理ですが、大歳神も手伝ってくれていますからね
武道場の下にもシェルターを創りつつ、建物を仕上げて行ってます
山を切り開いた場にもシェルターを創るそうなので、それは大変な工程となるでしょうが、聖神肝入の建物ですからね、完成したらどの建物よりも立派な建物になるでしょう!
今 魂の管理庁に入庁希望者が後を絶たない程に人気になってますからね
それ程にあの建物は魔界の常識を超えているのですよ!」
「その武道場を金龍が指導者になり立つのか?」
「そうです、それが魔界の発展の為に必要な通過儀礼となるそうです
この魔界には龍族、神族以外にも多様な種族が生活をしています
その大半が力を持たぬ存在なのに誰も目を向けないのも異常だと謂われました
力がないのは死ぬのが当たり前みたいな腐った考えだから滅ぶしかなくなるんだよ?
とまで言われましたからね
確かに力を持たぬ者は己の身さえ護れず死ぬしかない、それが現状です
役務に着く為だけに魔界で生かしている存在ですが、消滅して良い存在ではありません!
皆が一丸にならねば乗り切れぬ果てだと謂われました、私も此処最近、工場地区で働く人達を見ていて、正にそうだなと想うのです
一人一人が力を合わせてモノを創る
一人の力は小さくとも、皆が力を合わせれば大きなうねりが来て、活性化して魔界が回って逝くのだと痛感させられた
あんなに小さい烈には教わる事が沢山あります」
「兄者………オレもな、あんなちっこいのに日々教えられ見つめ直す機会を得ている
だけどな今はオレと伊織の子なんだよ兄者………
なのにさ、アイツは本当に何時だって無茶しやがって………本当にアイツは……」
康太の口ぶりがまるで大歳神みたいで閻魔は笑ってそれを言った
「君のその口ぶり………まるで大歳神と一緒ですね
倅が素直じゃないんじゃ………昔はあんな風な子じゃなかったのに…無茶しやがっているのじゃ…とボヤく大歳神ですよ、それだと……」
閻魔が謂うと素戔鳴尊は腹を抱えて大爆笑した
「それ儂も想った……」
と爆笑され康太は……たらーんとなった
榊原も肩をプルプル震わせて笑っていた
そこへラルゴと話をして教えを請いて還って来た烈が執務室のドアをノックした
閻魔が笑いながらドアを開ける
すると爆笑しまくる祖父がいた
そして肩をプルプル震わせて笑っている父がいた
「父しゃん、どうしたにょ?」
キリッと顔を引き締めて榊原は「どうもしません!それより烈、ラルゴ殿から教わって来たのですか?」と問い掛けた
「はい!殲滅の言霊を教えて貰いました!
それを唱えればゴキジェット並みにイチコロとなるそうです!」
烈はニコニコと誇らしげにそう言った
だが康太はブーッと吹き出した
殲滅の言霊…………何てのを教えるのよ?ラルゴ………
そりゃ……それを唱えればとイチコロだが………
そもそも【殲滅】を謳っているだけあって輪廻転生は出来ない程にケチョンケチョンに消されると謂う事となる
康太は「烈、ラルゴにどんな風に聞いたんだよ?」と一応問い質した
烈はニコニコと「うようよ、ゴロゴロ、いちゃいけにゃい場所に霊が湧きまくって、吹き溜まりになっているらしいにょよ!
それをね、母しゃんが消す呪文を聞いて来いよ!と言ったにょよ!だから聞きに来たにょよ!」と伝えた
そりゃその呪文しか教えてくれねぇだろさ………
「まっ、それしか聞いて来なかったら仕方ねぇわな!んじゃ逝くとするか!
予定を立てて視に行かねぇとな!」
康太らしい言葉に榊原は苦笑して
「ならば行きますか!」と言った
烈は「にゃらボクは神の道で還るにぇ!」と謂うのを、榊原は首根っこ捕まえて
「寄り道しそうですから、僕が乗せて行きます!」と言った
そして閻魔の執務室を後にすると庭に出て、龍になり妻と烈を乗せて還って行ってしまった
素戔鳴尊は「青龍殿も変わられたな」と呟いた
閻魔は「炎帝も変わりましたよ、人の親になりボヤく程に我が子を愛して止まないのでしょう!」と言った
閻魔と素戔鳴尊は「さてと、やる事を遣りに行くかのぉ!閻魔、不埒な輩は即座に無間地獄巡りツアーに行き修行と鍛錬の日々を送らせるとする!」と謂うと、閻魔も「そうして下さい、でなくば烈が指し示す方へは行けませんかられ」と言った
そして己のするべく事をしに行くのだった
榊原は飛鳥井の屋上に妻と子を下ろすと、人のカタチになり家の中へと入って行った
魔界へ向かったのは夜8時回った頃なのに、今はどう見ても昼近くの明るさだった
家に入り時計を見ると午前11時を軽く回っていた
烈は「お腹へったにゃ……」とキッチンに向かった
慎一の事だから【烈の分】と紙を貼って取っておいてくれているだろうから、先にキッチンに向かった
康太と榊原も腹減りには勝てなくて、烈と共にキッチンに向かった
すると一生と聡一郎がキッチンで待っててくれ、姿を見ると直ぐに準備をしてくれた
康太は席に着くと聡一郎に「井の頭公園の霊が吹き溜まりになってる件に着いて調べてくれねぇか?」と頼んだ
すると一生が「今貴史と竜馬が調べに行ってるから、全容が解ると想う!」と伝えた
烈は「兵藤きゅんだと……とても静かで見えにゃいわね、母しゃん」とボヤいた
康太も「だな、下手に行って欲しくなかったな……あんで行っちまうんだよ?」とボヤいた
聡一郎は「え?行っては駄目だったんですか?」と訳が解らずに問い掛けた
康太は「アイツは朱雀やんが、んなのが来たら大人しくやり過ごすに決まってますがな!」と謂う
あ!!謂われてみれば輪廻転生を司る神なんて、ウヨウヨ彷徨う霊には天敵なのだろう
暫くすると兵藤と竜馬が還って来て
「何もいなかったぜ!」と言った
竜馬も「期待していたのに何も感じなかったな………烈と花屋敷に遊びに行った時の方が背筋に冷や汗が流れて怖かったかも………」と謂う
康太は「そりゃ朱雀が行けば強制的に輪廻の道を辿らせるから、何処かへ隠れて朱雀が行くのを見計らっていたんだろ?」と言った
兵藤は嫌な顔をして「…………あそこの霊はそこまで狡賢いのかよ?」とボヤいた
康太は「だろ?だから吹き溜まりになっているんだから!」と言った
「悪かった………お前達の仕事を少しでも楽にさせてやる為に下見に行っちまったわ!」と謝った
康太は「烈、策を考えろ!」と謂うと烈は
「にゃらばぁたんと散歩にでも行こうかしら?」と言った
御子柴の血を持つ真矢が来たならば、その体を寄越せと躍起になり烈はウヨウヨと頑張って出て来るだろう!
「何時それをやるよ?烈?」
「ボクはこれから星を詠むから2日は寝るにょよ!起きたら実行して片付けて記者会見よ!
飛鳥井記念病院と菩提寺が増渕により崩壊した下りを知ら示めにゃいと!男が廃るにょよ!」
「ならば総ては3日後か、貴史、記者会見の場を竜馬と共に探せ、んでもって竜馬、烈が気絶している間は蔵之介と那智の勉強を頼む!
それも蔵之介と那智と善之助をサポートすると約束する!」
康太が言うと烈は「にゃら星を詠みに逝くにょよ!」と言い立ち上がった
康太は「気絶している間は入院させて1日でも早く目を醒まさせる様に久遠に体の管理はしてもらうからな!安心しろ!」と言った
それは安心出来にゃいのよ………と烈は想いつつ自分の部屋に行った
そして蕪村はどの地に行けば栄華が約束されるか?を詠んだ
今の場所は真贋が詠んだ時は最高の地だった筈だ
それが何故にこんなに早くに駄目になってしまったのかも星が指し示す道を詠み解いて逝く
その間、兄弟達は客間で寝起きさせ、出来るだけ音を立てず、集中させて星を詠ませた
虎之助は一ノ瀬動物病院に健康診断と称して、烈の邪魔にならない様にした
烈は意識を飛ばして星を詠む
そしてその星の周期や起動を星と同化して詠んで逝く
星は告げる、この星の定めを………
今いる地は蔵之介が愛した女によって引き起こした破滅の始まりを告げていた
愛する彼女が強請るから、副社長に彼女を据えた
彼女と共に会社を盛り上げると誓ったが………地位と名声を手にした彼女は、次第に会社の実権を握ろうと躍起になり、社員を洗脳するかの様に………
蔵之介が社長だけど、そのうち社長でなくなるから謂う事を聞かなくて良い
この会社は自分達のモノになるから!と経理の金を好き放題に使い始めた
資金繰りが行かなくなると、古材や破棄相当の鉄筋を繋ぎ合わせて使い始めた
資金が底を尽き始め彼女は会社を去った
その時、会社の資産の殆どを手に入れ、株を売り捌き好き放題新しく出来た恋人と共にして来た
蔵之介に遺ったのは負債と信用の暴落した会社だけだった
蕪村の名は地に落ちた
再び【蕪村】は使えはしない
そして蔵之介は総てをなくした………彼女も去ったって後には負債しか遺らないのも知っていた………
絶望と哀しみに星は染まった
そして死の影が忍び寄り……蔵之介は見えない場所を切って切って切りまくった
生きている実感は痛みだけが教えてくれた
そして絶望が蔵之介を飲み込み………
烈の知識はそこで途切れた
烈は寝る間も惜しんで星を詠んでいた
慎一は定期的に食事を部屋に持って行き、一段落するのを待って食事させる様にしていた
烈は飲まず食わずで2日間星を詠んでいた
流石と昼は食べてもらわなきゃ!と想い烈の部屋に向かい…………
気絶している烈を発見した
慎一は倒れている烈を見て、頬を叩いたり揺すったりして起こそうとしたが起きず
康太に「烈が気絶してます!頬を叩いたけど意識が戻りません!」と伝えた
康太は慌てて烈の部屋に行き、烈を抱き上げると
「久遠に烈を診てくれ!と連絡してくれ!」と言い階段を駆け下りた
応接間をの横をバタバタ走る騒がしさに兵藤が顔を出した
「どうしたのよ?」
「烈の意識が戻らねぇんだよ!」と言った
「どう謂う事よ?星を詠んでいたんだろ?」
「…………多分蔵之介の闇に囚われてしまったのかも知れねぇ…………」
「俺が背負うからお前はドアとか開けてくれ!」
兵藤がそう謂うと烈を兵藤の背におぶわせた
そしてドアを開けると門扉を開けて走った
病院へと向かうと久遠が待ち構えていて烈をストレッチに乗せて検査へと連れて行った
待合室の椅子に腰掛け「話せ康太!」と兵藤は言った
「烈は蕪村の新会社をどの地にすへきか、蔵之介の星と同化して星の指し示す方を詠んでいたんだと想う………慎一が昼を運んで烈の意識がないと気付いてオレを呼んだんだよ!」
「………お前は蔵之介を視たんだろ、お前の眼には蔵之介はどんな風に映ったんだよ?」
「久し振りに視た蔵之介は闇に染まっていた
烈ならば即座に蔵之介の闇を感じただろう……アイツの眼は人の真髄を視て闇を視る眼だからな!
だからオレは烈が最適だと想い頼んだのだから!
オレにも何故こんなに蔵之介が闇に染まっているのか?と想った…………細切れ見てぇに時折女が映り込み、その女は嗤っていた………」
「ならばその女に烈は囚われたとか?」
「それは解らねぇ………取り敢えず意識が戻るのを待つ、戻らないなら手を考える!」
「あのさ、その………蔵之介には女がいたのか?
まぁ蔵之介は独身だし別に良いんだけどさ、ならばその女はどうしたのよ?」
「烈の事だから調べているんだろうな……」
「なら烈の意識が戻らねぇと何も手が打てねぇって事だな!」
兵藤が問い掛けると康太は頷いた
暫く待合室で待ってると久遠がやって来て
「烈、今点滴打ってる、一応検査してる最中に意識は戻ったから、何故意識なくなったのか?聞いたら絶望に飲まれて意識が遠ざかった……とか言ってたな!
処置室で今点滴打ってる………そしたらな、レイが湧いて出て来やがったんだよ
今は烈に抱き着いて泣いていやがる!」と報告した
兵藤は「どんなセンサーかついているんだ?レイには?」と不思議がる程にレイは烈の危機的状況に敏感だった
康太は「あの二人は互いを支え合う絆を持つからな、互いの危機的状況には敏感になるんだよ!」と何か理由の分からない屁理屈を言った
兵藤は「烈が気絶する程の絶望って………考えるだけで怖いわ!」とボヤいた
康太は「あの女………何処かで視た顔何だよな?
ずっと考えているけど思い出せねぇんだよ!」と小骨が喉に刺さった様に誰か解らず必死に思い出していた
そしてレイの怒りが空気をピリピリさせているのを感じて康太は「貴史、レイを連れて来てくれ!」と言った
兵藤は「だよな、皮膚を焼きそうなピリピリ感はやっぱレイだよな」とボヤきレイを連れに行った
レイは兵藤に持ち上げられて暴れてい
兵藤は「大人しくするんだ!レイ」と言いレイを連れて逝く
その様子を見て烈は「レイたん、いい子にしにゃいと、ばぁたんと散歩逝く時誘わにゃいわよ!」と言った
「れちゅ………」
「レイたんはいい子だもんね
井の頭公園に遊びに逝くにょよ!一緒に!」
「うん!いきゅ!」
「ならいい子にしててね!」
レイは大人しくなり頷いた
兵藤はレイを連れて待合室に戻ると
「烈、意識戻ってたわ!」と伝えた
康太はホッと安堵の息を吐き出した
兵藤はレイに烈の好きなビスコを取り出して、渡した
レイはビスコを食べずに大切に持っていた
「食べろよ!レイ!」
「これ、れちゅ すきらから…」
「烈の分もあるから食べろ!レイ」
そう言われレイはビスコを食べ始めた
一生と聡一郎と隼人も病院に駆け付けて来た
どう謂う訳か神野と須賀と相賀も引き連れてやって来ていた
一生は「烈はどうなんだよ?
んでもって幼稚舎から電話があったんだよ!
レイが何処探してもいないって!
此処にいたら幼稚舎の方にはいねぇわな!」
とボヤきながら烈の心配をした
康太は「あ!上間美鈴や!あの女!」と叫んだ
一生は「上間?今 アイツは刑務所だろ!」と言った
「時系列で謂えば悦郎の次が蔵之介で、その後が一眞の息子だったんだ!」
と康太は納得していた
一生は「話してくれねぇ?」と言った
康太は烈が蔵之介の星を詠んでる最中に気絶した話をした
康太は烈を視た時に蔵之介の横にいた女を垣間見た、そんな女が何処かで視た顔だと想っていたら上間美鈴に思い至った経緯を話した
一生はその件で動いていたから、上間の悪質さは誰よりも知っていた
一生は「でも悦郎と琢磨の間が蔵之介だとして、何故に今までそれが露見しなかったのよ?」と疑問を口にした
「それは烈に聞くしかねぇわな!」
「何かまた気持ち悪いモヤモヤが湧き上がってくるのかよ!」
上間関係は本当に人を人として扱わないから、やってる事総てがモヤモヤして気持ち悪のだ
少しして烈が久遠に連れられてやって来た
「当分は通院させてくれ!
見た所、消化器系が弱ってるからな!
それと烈の脳は今はまだ完治してないからな、ちょっとの衝撃で耐えられないと判断して意識を失う事も出て来るだろう、だから注意してやってくれ!」と説明した
康太は烈を抱き締めた
一生は烈をおぶって飛鳥井の家まで還る事にした
「大丈夫か?烈
気持ち悪くとかないか?」
「大丈びよ、かず
ごめんね、心配させて」
「気絶する程の衝撃なら、もう星なんて詠まなくて良い!
康太と伊織もそんな事をお前にさせたい訳じゃねぇからな!」
「うん、解ってるにょよ、かず」
弱々しく答える烈を一生は心配していた
飛鳥井の家に還ると榊原が会社から還って来て烈を見るなり、抱き締めた
そしてソファーに座らせと「大丈夫ですか?寝ますか?」と問い掛けた
「母しゃんに頼まにゃいと駄目な事あるのね」
それを聞いて康太が「蔵之介の事か?」と問い掛けた
「蕪村の資産にゃいの当たり前よ
古材使わなきゃならにゃいの当たり前よ
上間が資産を奪ってドロンしちゃったんだもん!
しかも被ってるわよ、悦郎と琢磨との交際で被ってるにょよ!
悦郎が逃げた時は蔵之介掴まえて副社長に収まっていたにょよ!
で、蕪村の横領がバレる前にドロンして琢磨に行ったにょよ!
3億、返してくれにゃいかしら?」
烈が言うと康太はやはり上間の話は3億絡みが多いな……と想った
康太は「それは無理だろうな………って事は蕪村は負債しかねぇのかよ?」と問い掛けた
烈は蔵之介を視た星の映像を話した
蔵之介が愛して夢中になった女は副社長の座を与えられ会社を好き勝手にして資産が尽きたら資産や株を売り飛ばして姿を消した
蔵之介に遺ったのは、裏切られた傷跡と莫大な負債だけだった
それを巻き起こしたのは上間美鈴
兵藤は「ならば上間が奪った資産の証拠を上げて、罪を背負わせねぇとな!」と言った
「蕪村はもう使えにゃい………そして蕪村はもう回せるだけの体力もにゃい!
そして蔵ちゃん………見えにゃい所を切ってるわよ
蔵ちゃんに遺ったのは絶望だけにゃのよ」
「なら少し九鬼に預けるしかねぇか………」
「そうね……心は壊れてしまってるにょよ……
新しいビルを………と言っても今のビルを売却して幾ら残るか………解らにゃのよね」
「なら資産状況を調べねぇとな!」
「ぜんちゃんもね、死ぬんじゃにゃいかって………せいぞうじぃさんが言ってたにょよ
絶望して放っておいたら死んでしまうんじゃないかって言ってたにょよ
だからね、ぜんちゃんと蔵ちゃんは一度心のメンテ受けた方が良いにょよ!」
「だな、まずは心のメンテが最優先だな………」
兵藤は「検察にこの事も上げて上間の資産を凍結させて売れるのは全て売り払って賠償請求させる
3億だからな多少使ったとしてもまだ何処かに隠してねぇか?」と言った
一生は「多分ねぇだろ?【R】の美容室も食い尽くされる手前で負債しか遺ってなかったから琢磨に被せて切り離したんだから!
何処へ金が流れていっているか?なんだよな?」とボヤいた
康太は「んなに豪遊しても数年で3億使い切れるのか?」と問い掛けた
榊原は「エステに豪華な食事を毎日してたそうですし、ブランド物も湯水の様に買ってたら底は付くでしょうね、その為の【R】だったんですから
でも不明な点が多いので一度上間美鈴関係を洗わねばなりませんね!」と呟いた
烈も「悦郎の預金全てと蕪村の資産を根こそぎ、そして【R】の資産を食い潰す…………これって数年の出来事にゃのよね?
にゃらお金何処へ流れているにょって感じね!」と呟いた
康太は「善之助の妻と秘書も一度洗うか?」と烈に問い掛けた
烈は「それはね、ぜんちゃんの資産を整頓した時に払わせようかと、もう頼んであるにょよ!」とバツの悪い顔をして言った
兵藤は「何かさ気持ち悪い事が続いてるな
って事はお前の周りを潰しに掛かってねぇか?
それに蔵之介死の影有ったんだろ?
大丈夫なのかよ?」と問い掛けた
「それはね、あの日あの時ボクに逢ったから死の影は鳴りを潜めてレイたんの水で消えた………と想ったにょよ
でも………根深過ぎて此処からは詠めにゃいから、母しゃん蔵之介の星、この先どうにゃるのか?
星詠みの婆婆の所へ行って聞いて来てくれましぇんか?」
「だな、今夜にでも聞きに逝くわ!
それより今週の薬貰って来たのかよ?」
「それもね母しゃん仕事一杯入れるから行けてにゃいのよ……」
「ならオレが貰って来るから心配だから飲み続けてくれ!」
「ごめんね母しゃん………役に立たにゃくて……」
烈が弱気に言うと、康太は烈の頬を叩いた
榊原が想わず止めて烈を抱き締めた
「お前は宗右衛門として家の為に頑張ってる!
役に立たない?んな事、また言ってみやがれ、次は奥歯が吹っ飛ぶと想え!」
康太は悔しくて叫んだ
何が役に立たないだ!
こんなに傷付きながら、苦しみながらも正そうと立ち上がっているのに!
「母しゃん、ごめん
少し気弱ににった………脳がもう少し安定しにゃいと星詠もロクに出来にゃくなったかと…………」
「治してやるさ!だから心配するな!
それよりも九鬼の所に二人預ける余裕あるか聞かねぇとな」
「だね………」
二人がそう謂うと一生が「今俺が聞く!」と言い電話を入れた
烈は静かに一生を視ていた
一生は九鬼と話をしていた
「え?近くに来られる用があって近くにいらっしゃるんですか?
ならお願いします!」
一生は電話を切ると
「今近くにいるから、直ぐに駆け付けてくれると、言ってくれた」と伝えた
神野と相賀と須賀は言葉も発せずに、黙って置き物の様に座っていた
だが何とか気を振り絞って須賀は
「上間は一度でも我が事務所にいた者です
そしてまだ妹も我が事務所にいます!
此処に九鬼さんが来るならば………妹に逢われたらどうですか?
妹も上間にマインドコントロールされていたから、心のバラスが崩れ九鬼さんの病院に入ってます………」と伝えた
一生は「妹の金まで自分のモノにしてたんだよな?上間………なのに不平不満言う事無く従っていたから不思議に想っていたらマインドコントロールされていたのか?そりゃ上間が捕まった後心のバラスが崩れるわな!」と納得した
暫くすると九鬼がやって来た
「私の病院に入院させたい患者がおられるとか?
どんな状況なのですか?」と問い掛けた
康太は「佐々木蔵之介と謂う男だが、上間美鈴に資産を使い込まれて破産に追い込まれている
どうやら悦郎と琢磨の間に被っているそうだ」と告げた
九鬼は驚いた顔をして「それ何故解ったのですか?」と問い質した
「飛鳥井宗右衛門が星を詠み示された!」
九鬼は「宗右衛門が……ならば真実はそこにありますね………では何故そうなったのか?お話し下さい!」と問うた
元は飛鳥井の菩提寺の道場の遅延で話は始まった
そして蓋を開けたら蕪村は解体せねばならない程の大打撃を受けていて、宗右衛門が星を詠み蕪村の進むべき場所を探していた
そしたら宗右衛門は蔵之介の闇に飲まれて倒れてい病院へ運ばれた
意識を取り出した宗右衛門が告げた話だと康太は話した
そして今 飛鳥井も妨害を受けていて病院、菩提寺の解体中で宗右衛門は幾度となく怪我を負い、脳を損傷したのもあり衝撃に絶えられなかった事も話した
九鬼は宗右衛門の名を聞いて総て納得した
九鬼歯「ならばその宗右衛門殿に逢わせて下さい!」と言った
すると一生が「此方が宗右衛門だ!」と紹介した
とてもちっこい………子供だった
「え?この方が…………宗右衛門殿なのですか?」
「そーにゃのよ!」
ニコッと笑う顔は何処から見ても子供だった
一生は「近い内に上間の妹と話をさせてくれ!
金の流れが不透明過ぎて検察にも再び動いて貰うしかない状況になっているんだよ!」と言った
九鬼は「妹も金の流れまでは知りませんが………話せば打開策が出て来るやも知れません!」と言った
康太は「ならば明日の朝、逢わせてくれねぇか?
そして善之助と蔵之介をその時連れて逝くから、診て貰えねぇか?
蔵之介は見えねぇ場所を切って切って切りまくっているらしい………
烈が言うには蔵之介にはもう………絶望しかない生きる屍状態らしいんた!
心を一度リセットしてからしか何も始められねぇかんな!」と言った
九鬼は「ならばその二人お預かり致します!
切っているならば明日と言わず今………連れて行きます!」
九鬼が言うと康太は蔵之介に即座に電話した
ワンコールで電話に出た蔵之介に康太は
「保養施設に直ぐに来てくれねぇか?」と言った
蔵之介は「はい!直ちに行きます!」と言った
康太は「取り敢えずオレと伊織が九鬼を連れて善之助と蔵之介を入院させる事にするわ!」と言い九鬼を連れて家を出て行った
康太と榊原を見送った烈は宗右衛門の声で
「あの教団の信徒か?上間は………
そしたら3億の辻褄のピースはハマるのじゃが………」と呟いた
須賀は顔色を変えて「それって白の聖協会とか言う宗教団体ですか?それなら上間は布教活動してましたよ!」と言った
烈は「ヤバい!カズ、母しゃん止めて!」と叫んだ
一生は慌てて康太の携帯に電話を入れた
だが繋がる事はなかった
一生は「話してくれ!烈!」と叫んだ
烈は神の道を開いて「ボクを背負って走って!」と言った
一生は烈を背負うと神の道を走りまくった
烈は多分康太と榊原だけならば蔵之介は自爆すると一生に告げた
一生はめちゃくそ急いで走った
そして呪文を唱えた果てへと出ると、保養施設の前で慌てて部屋に入った
蔵之介は不敵に嗤い康太に触れようとしている所だった
烈はストックしていた雷を混ぜて【縛!】と叫んだ
蔵之介は痺れた様に痙攣して倒れた
烈は息を切らせて「カズ、お願い!」と言った
一生は上間が白の聖教団に入っていた事や、康太と榊原だけが逢いに来たら自爆するつもりなのを伝えた
康太は「自爆?なら蔵之介の脳にはチップか何か入っているって事か?」と唖然と問い質した
「捕縛するヤツで蔵之介を動けにゃくして久遠に見せてチップを抜いて!
その後九鬼に預けるしか今はにゃいのよ!
自爆テロと同じでチップだから、洗脳解けば再起も可能だと想うにょよ!」とはぁーばぁーしながら烈は伝えた
康太は怒り狂っていた
脳にチップ入れて使い捨ての駒にしやがったのだ
烈が来なければ眼の前で蔵之介は自爆して死んでいた
そして眼の前で自爆されたならば…………
康太達も無傷では済まなかったろう
「チップか……んとに人を弄びやがるな!」と康太は吐き捨てた
「多分ね、久遠せんせーに話して即座に摘出させるにょよ!」
「了解した、しかし何処までも巫山戯た事をしやがるな!」
一生は城之内を呼びに行き、蔵之介の捕縛を手伝って貰った
そして善之助を呼びに行き、二人は取り敢えず九鬼の病院で入院する事になった
九鬼が病院のスタッフに連絡して患者の強制入院の器具を持って来るように言った
スタッフは近くに待機していたのか?
即座に器具を持ってやって来た
九鬼は「取り敢えずこの二人は私が預かり久遠先生と連絡を取り調べて行きます!
頭のチップは即座に久遠先生に頼み摘出して様子を見ます!」と言い連れて行った
取り敢えず保養施設へと移りテーブルの前の椅子に座った
康太は「烈、大丈夫かよ?」と声を掛けた
「母しゃん……良かったにょよ!
カズが走ってくれたから間に合ったにょよ!」と言った
一生は康太に説明した
「烈があの教団の信徒か?上間は………と呟やいたんだよ!
そしたら3億の辻褄のピースはハマるのじゃが………と言い出したから、それを聞いた須賀が『それって白の聖協会とか言う宗教団体ですか?それなら上間は布教活動してましたよ!』って言ったから総てのピースが嵌まって烈が母しゃんが危ないったから飛んで来たんだよ!」と説明した
一生の話を聞いて康太は総てのピースがは嵌まって納得した
そして今後の事を話すべく口を開く
「なぁ烈、何故蔵之介が自爆すると想ったんだよ!」と問い質した
「蔵ちゃんは女の洗脳にあい、言うがままだったにょよ………その時頭にチップ入れられる映像も流れて来たにょよ!
悦郎も琢磨も蔵ちゃんも頭のチップ抜かにゃいと洗脳は解けてにゃいと思った方が良いわよ!
誰かにキーワードを囁かれたりしたら自爆するかもよ……」と言った
康太は即座に唐沢に電話をした
そして即座に悦郎、琢磨、蔵之介の頭のチップを抜きながれ!」と指示を出した
「母しゃん、抜く前に電気流して動きを止めにゃいと危ないわよ!」と伝えると、康太は唐沢に
「死なない程度の電気を流せって宗右衛門が言ってたからそうしてくれ!」と言った
「八重子と一眞は大丈びかしら?」
電話を切る前に言われ康太は更に
「家族だった奴も今一度調べてくれ!」と言った
唐沢は『了解した!直ぐに動く!』と言い電話を切った
康太はどっと疲れてテーブルを突っ伏し
「潰したと想ったのによぉ………」
とボヤいた
まさか上間が信徒だったなんて……
「気持ち悪い筈だわな………」もう人じゃないかも知れねぇんだから……
康太は気を取り直して烈に向き直り
「この前、天宮の話が出来ていなかったな
今話して大丈夫か?」
「紙持ってにゃいのよ
話し合いは紙持ってじぃさんちが良いにょよ」
「伯父貴の家って結界凄いのか?」
「そうね、前の家を燃やされたから閻魔、建御雷神、釈迦、転輪聖王があの地を護る結界、侵入が出来ない結界を張ってくれてるからね
トドメがレイが創世記の護りの誓いを立てて、じぃさんちに流れる川は創世記から続く水になってるにょよ!下手な場所で話し合うより完璧にゃのよ!」と伝えた
康太と榊原は成る程!それは完璧だわ!と納得した
「ならば片付けるの片付けて今夜伯父貴の家に向けて飛ぶか!」と言った
康太は一生に携帯を託して「一生、唐沢から連絡が来たら聞いておいてくれ!
そして他の奴のも聞いておいてくれ!」と言った
一生は「了解!」と言い帰ろうとした
が、「俺、足がないから帰れないわ!」とボヤいた
榊原が「乗せて逝くので待ってて下さい!」と言った
烈は「その前に結界よ!母しゃん!」と言った
康太も「だな!」と言った
これ以上の介入は本当に止めて貰いたいモノなのだ
康太と烈は外に出ると、菩提寺に他の者が入り込めない様に結界を張った
康太の焔が飛鳥井の土地を走る
烈が上空に衝覇を飛ばして結界を張る
すると上空を幾つもの流れ星が流れる様に結界を張られた
康太は「病院も貼っとくか?」と問い掛けた
烈は「そーね、本当に横槍は止めて欲しいにょよ!」と訴えた
康太は「一度閣下にも逢いに行かねぇとな、烈も一度共に逝くしかねぇか!」と言った
「だね、想ったより深刻にゃのよ、これは!」と言った
他の国も後始末に追われているんだろう
此処まで根深く嫌がらせされようとは!
既に布石は打たれた後だったとは………
余程ニブルヘイムの力を警戒したんだろう
榊原は康太と烈と一生を連れて病院へ向かった
そして車から下りると結界を張った
康太は地を這う焔を走らせ、烈は上空を幾つモノ流れ星を流して結界を張った
その後ろに「俺等も混ぜろよ!」と声が掛かった
振り返ると兵藤とレイが立っていた
レイは大きな両手を開くと呪文を唱えた
すると蒼い綺麗な光が病院を包んだ
兵藤も呪文を唱えると赤い焔に似た光が病院を包んだ
敷地ごと結界を張って病院を護る
空間に結界を張って病院を護る
蒼い綺麗な光はその上をなぞる様に病院の建物を包みこんだ
赤い焔は病院の敷地を護る様に赤く光った
「これだけ幾重にも掛けとけば安心だろ?」と兵藤は言った
康太は「助かったよ、でも何故ピンポイントで来たのよ?」と笑って問い掛けた
兵藤も笑って「そりゃあ烈センサーがいるやんか!」と言う
兵藤は「烈、歩いて家まで帰ろうぜ!」と言うと兵藤の傍に行きレイと手を繋いだ
康太は兵藤に「今夜魔界に立つけどお前は来る?」と問い掛けた
「おー!レイも行くんだろ?ならば俺が連れて行ってやるぜ!」と言って笑った
飛鳥井の家にいた相賀達は、色々と大変な事を察して帰宅していた
その夜、康太と榊原と烈とレイは朱雀の背に乗り魔界を目指した
魔界の素戔鳴尊の屋敷まで直通に向かい、到着すると皆を下ろして人の形になった
素戔鳴尊は「どうされたのじゃ?」と笑って建御雷神と酒を飲んでいた
烈は「じぃさん……用があったけど客人にゃら出直した方が良いかしら?」と言うと素戔鳴尊は
「気にするな、ささっ主等も食べろ!」と言った
烈は席に座って出ていたおかずを摘むんだ
「じぃさん、これデナスの漬物?」
「そうじょ!まだ試作品しゃが出来は良いと儂は想うのじゃ!」とガハハハッと笑った
兵藤は「デナスって何ぞよ?」と問うと、素戔鳴尊は縁側に転がってるデッかい茄子みたいな野菜を指さした
康太は「これって茄子かよ?」とボヤいた
素戔鳴尊は「メロンを作る気満々じゃったが出来たのがそれじゃよ!」と笑った
烈は「うるちゃいにゃー!」と怒った
兵藤は「メロンが茄子………どう謂うと結果よ?」と問い掛けた
「魔界には元になる野菜がにゃいのよ!
フルーツも元になるにょがないのよ!
だからね、妖精に種を集めて来て貰うにょよ
この魔界限定でね種を集めて来て貰ったのを改良して育てて行くにょよ!
掛け合わせしたり、受粉を変えたり………試行錯誤して植えて育つまで結果は解らにゃいのよ
葡萄みたいなのは大量生産にやっと成功したからね、ワインとにして市場に上がり始めたけたど、ジュースが魔界にはにゃいからね、メロンジュースを作りたかったにょよ!
でもね結果は………デナスにゃのよ!」
烈は嘆いた
苦労の日々なのだ
中々上手く行かない日の方が多いのだ
素戔鳴尊は烈の頭を撫でて「酒を作る時に出る糠と塩で漬物が作れると初めて知ったわい!
建御雷神に食べさせてみたら酒が進むと申すからな、成功じゃぞ!烈」と慰めた
兵藤はデナスの漬物を食べて「上手いなコレ!」と言った
康太も榊原もレイも食べて美味しいと言った
その夜は皆で素戔鳴尊が作る料理を堪能して酒を飲み酔っ払って眠りに着いた
翌朝 建御雷神は朝を食べて還って行った
素戔鳴尊は康太や榊原や兵藤に「地下の存在はあまり知らせたくはないのじゃよ!
しかもあんな飲兵衛に知らせたら飲み尽くされてしまうからの!」と言った
そして総ての扉を閉めると結果を張って家の奥へと行き、地下の扉を開けて下りて行った
地下の作業机の前の椅子に座ると、康太は話を始めた
「天宮に事務所の合併の話をしたんだよ
すると神威の事務所の規模はかなり大きくなると聞いた、んでもって天宮が入る余地などないとか言ってたけど、どうなんだ?」
「入る余地にゃい?それ本当に神威が言ったにょ?それはにゃいと想うにょよ!」
と烈は考え込んだ
素戔鳴尊は「倅呼ぶか?」と問い掛けた
康太は「呼んですぐに来るのかよ?」と問い掛けた
「来るじゃろ?なんせ上で寝てるのだから!」
と言い「大歳神、暫し来るのじゃ!」と大声で呼び付けた
すると暫くして神威が下りて来た
「何の用じゃ?親父殿!」
神威はお腹をポリポリ掻きながらやって来た
「用があるのは烈じゃ!」
素戔鳴尊がそう謂うとやっとその場に烈がいるのを知り笑って座った
「何じゃ?倅よ儂に用か?」
「神威にょ弁護士事務所、大きくにゃるにしても天宮が入れる余地あるわよね?」
「あ〜天宮か、儂の事務所には常時4人の弁護士が在住して案件に当たる様になるからな
それに伴いその弁護士をサポートするスタッフも入れる事にした
天宮が入るなれば、入った方がアイツもサクサク仕事が出来ると想うが……倅に継がせたいんだろ?事務所、だから今天宮は悩んでいる
儂の所は来るならばスタッフを増やしてサポートする体制は作るとは言ったけどな………後は本人次第だからな、答えは本人に聞いてくれ!」
康太はそこでやっと日々萎れる天宮の意図が理解出来た
「倅に継がせる為に苦悩して悩んでるのか?
今後俺の専属としてやるならば、それなりの金は出してやるのは容易いが……それって天宮の為になるか?悩んでるんだよ………」
神威は康太の話を聞き
「天宮の為にはならねぇだろな!
まぁ何であぁも己で己の首を絞めてるのか?
儂には理解出来ねぇがな……
だから真贋、言ってくれぬか?
儂の事務所も皆が出揃って始めれば、天宮が入る余地はなくなるしかねぇ!
今ならばまだ試運転の段階だからな、入る余地はある、だが走り出したらチームとして動くからな
難しくなるのじゃよ!
だから倅の事を考えたら此処で決断をしろ!と言ってやてくれ!」
「天宮も分岐点に来てるのか……烈、天宮に闇はねぇか視てくれねぇか?」
「良いにょよ!天宮の星を書いた紙は家にあるし、どの道分岐点に来てるにゃら指し示す星の果てが書いて在るにょよ!」
「なら一度視てくれ!
それと神威、上間美鈴、あの教団の人間だったわ」
神威は知っていたのか?顔色一つ変えなかった
「アイツに関わった奴総て頭の中見た方が良いぞ!」
「蔵之介、どうやらチップ入れられていたみたいだわ!」
「蕪村食い尽くしただけでは足らず、チャンスが有れば自爆させる気だったか
キーワードは飛鳥井家真贋か?」
「そうだった烈が助けてくれたから、自爆されずに済んだが、こんな身近な存在を食い荒らされていたのかと想うと腹が立つ!
そして3億はどうやら教団に流れて行ったんだと想う!」
神威は「ならば徹底的に追い込むか
じゃが上間が教団の信徒ならそれはもう傀儡か何かになってねぇのかよ?」とボヤいた
「その可能性あるかもな……これからは弁護団を作って対処しねぇと乗り越えられねぇ程に大きな話になってくるな……」
「だな、動かせる人がどれだけいるか?
それでどれだけの資料を手に入れられるか?
情報戦になれば人手不足は敗北を意味するからな
じゃから烈がビルを買って【R&R】で統一した会社を作ったんじゃよ!
動かせる量が乏しいと身動すら取れなくなるからな!」
正に真髄を突いた言葉だった
康太は「天宮の入る余地は今ならばあるのか?」と問い質した
「あぁ今スタッフを振り分けている最中だからな
じゃから真贋サクサク尻を蹴り上げて動かせ!
一瞬の判断の遅れで致命傷になる世界に儂らは身を置いておるのじゃからな!
しかも儂だって使われの身じゃ!オーナーはそこにいる【R&R】なのじゃからな!」
オーナーと謂われた烈は笑って
「ボクは片割れだからね、ボクに実権はにゃいのよ!」と言った
絶対に嘘だと想ったが康太はやる気になって来ていた
「ならば人の世に還ったら天宮を説得するわ!」
「そーしろ!あそこのスタッフはもうロクなのいねぇからは、続ければ情報戦でボロ負けじゃろうて!早目に目を醒まさせてやるがいい!」
「そうする、しかしもう蕪村は廃業しかないか……」
「一度資産を調べさせるしかねぇわな!
それで幾ら取れるかによるわな……と謂う事は道場の建設ポシャちまうって事か?
蕪村で損害賠償請求しても取れるのなかったら身動き取れなくなるな!」
「そこなんだよ!」
「まぁそれは追々やって行こうぜ!
今此処で総てを決めるには無理がある!」
「だな、取り敢えず天宮の事頼む!」
康太は深々と頭を下げた
神威は慌てて康太の頭を上げさせた
「やめてくれ!康太!
主に頭など下げさせたのが解かれば姉に蹴り飛ばされるって!
義泰にメス持って追い回されるから辞めてくれ!」と言った
康太は頭を上げて笑った
そして「病院、菩提寺、蕪村、上間関係………
こんな案件抱えていたらチームじゃねぇと捌ききれねぇわな………今ならば個人の抱える範疇外だと理解出来るわ!」と言った
神威は笑って「そう謂う事じゃ!それよりも烈、この魔界には唐辛子系統の植物はねぇのかよ?
デナスに唐辛子入れたら旨味が上がるぞい!」と言った
「今妖精がミネルバの森の中の雑草や花の種を集めているからね
今までのと違って色んな種類の種が手に入っているにょね、でもそれ植えてみにゃいと何が成るのか解らにゃいのよ
そしてそれをどの植物と掛け合わせたら、どんにゃの成るのか?未知の世界にゃのよ!」
「まぁ気の遠くなる作業を良くやってるわなと儂は何時も感心してるわい!」
「でもねとうしゃん、メロンがデカいナスよ……
何処で狂ったにょかしら? ジュースが遠退いたにょよ!」
「あぁ前からジュース作るって燃えてたもんな
まぁ倅よ、失敗は成功の第一歩じゃ!」
「とうしゃん、還るにゃらミネルバの森辺に、にゃんか沢山の花を咲かせて還ってよね
妖精がまたその花の種を集めて来てくれるにょよ!」
「解った、還る前に咲かせてやろう!
しかし儂は花咲かじぃさんじゃねぇぞ!」
と神威はボヤいた
素戔鳴尊は腹を抱えて笑っていた
康太と榊󠄀原と兵藤も爆笑していた
烈は真面目な顔をして康太に向き直ると
「人の世で地区を区切るので盛大な雷を鳴らして欲しいにょのよ」と言った
康太は「雷?あんで雷よ?」と問い掛けた
「あの教団の信徒にゃらチップ警戒しにゃいと、何時何処で盛大に爆発するか解らにゃいからね
唐沢とかと連携して雷に反応して動き止めてるのは即座にチップを警戒して捕縛してチップを抜く作業をしにゃいと怖いにょよ!
こんな間近に自爆要素いたからね………」
「あぁ、それは怖いから一度やらねぇとな」
康太が言うと神威が
「ならば儂が雷神の尻を蹴り上げて雷をバンバン鳴らさせるわ!」と言った
康太は「雷神、雷帝とどう違うのよ?」と素朴な疑問を口にした
神威は何て怖い事言うんだよ!コイツ!ばりに康太を見た
それに答えのは素戔鳴尊だった
「雷帝と謂う存在は魔界にしか存在せぬ御方なのじゃよ!歴代雷帝として生まれた者は閻魔となる!とされておるからな
じゃが古来から雷神は倭の国に存在して雷をもたらす神として存在しておる
同じ雷でも威力が違うのじゃよ!
烈、お主は幾つか建御雷神の雷ストックしておるじゃろ?じゃから解るじゃろ?」
烈は「雷帝のえんちゃんの雷も貰ったわよ!
雷の質も威力も各段に上にゃのよ
人の世の雷は威力落として鳴らしてあるにょね
じゃにゃいと丸焦げじゃなく消し炭よ!」と答えた
それでやっと納得した
神威は「雷神はええヤツなのじゃ!人の世に根付いた神じゃからな付き合いは長いのじゃよ!
夏と春しかシーズンはないからな、最近は存在忘れられない様に冬でもたまーに鳴らしておるわ!
なれば雷神を駆使して雷を鳴らしまくって、チップを入れた存在の動きを止めさせるとするか!
儂は後1日おるからな、ミネルバの爺さんに酒を渡して花を咲かせねばならぬしな!」と言った
烈は「にゃら区画の計算して順番を付けておくわね!」と言う
「おー、そうしとけ!兎に角動きやすく解りやすくだぜ!小難しいのは動く気もなくなるからな!」
「解ってるにょよ!」
見通しが立って実際にやる事が決まると康太も燃えてくる!
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