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第41話 現状 ❷
康太は烈が書き記す善之助の進むべき道を、善之助に説明する
善之助は改めて自分の星、自分の運命、そして進むべき道を示されて覚悟した
善之助は「この寺の中の生活は快適です、人は優しいし互いを気遣うって事が今更ながらに理解出来たよ、なので苦も無く記者会見の日までこの部屋にいましょう!」と言った
康太は鑑識や実況見分もある今、何があるか解らないから思案する
「寺も安全とは言い難いからな、ウロウロ歩かなきゃ崑崙山の方が良いんだよな」と。
烈も「そーね、結界張っても火をつけられちゃうからね……母しゃん崑崙山のボクの家で生活して貰えば?」とやはり言った
「だな、それが一番安心だわな!
それか伯父貴に頼んで面倒見てもらうか?」
「それ!良いわね!それだと安心ね
しかもじぃさんちは特別だからね!」
「ならこれから試練の間に入り連れて行く事にするわ!お前は一生に家まで乗せて行って貰ってくれ!」
そう言い康太と榊󠄀原は善之助を連れて試練の間に入り、魔界へと向かった
烈は一生に竜馬と共に送って貰い還る事にした
龍太郎が烈のトートバッグを駐車場まで持って行く
「烈、無理するんじゃないぞ、鼻水が出ているではないか!」と心配しつつトートバッグを後部座席に乗せてドアを閉めた
「金ちゃんありがとう!」
一生は黙って車を走らせた
一生は少し車を走らせた所で烈に
「烈は親父を恨んでいないのか?」と尋ねた
殺されかけたのだ
自分ならば許しはしない
烈は「恨んでなんかいないわよ!」と答えた
「どうでもいい…………からか?」
「違うわよ、必死に生きてる存在に追い打ち掛けて……踏み躙る行為にゃら嫌と言う程にね、知ってるから頑張る金ちゃんは応援してやりたいにょよ!
実際、今後の金ちゃんは変えの効かない立場になるにょよ!
揺るぎない責任を背負わせる事ににゃる、大変な事を押し付ける事ににゃるからね、ボクは金ちゃんに酷い事をしてるにょよ、だから恨まれるにょはボクの方かもね…………」
まるで康太だ………
傷付き血反吐を吐いても立ち止まらず
軌道修正して正してるのに、オレは酷い事をしている………と悩み苦しむ康太だと想った
「お前を恨む奴なんかいねぇよ!
もしいたら俺がやっつけてやるさ!」
「カズありがとうにゃのよ!」
嬉しそうに笑う烈を目にして、お礼を謂われる事なんてしてないのにって想う
自分はどうしてこんなに康太に似ている存在を邪険に出来たのか?
悔しくて堪らなかった
飛鳥井の地下駐車場に車を停めると一生は後部座席のドアを開けて烈を下ろした
そしてトートバッグを持ってやると………重かった
「これ何が入っているんだよ?」
想わず一生は問い掛けた
「これね太陽石と星石が入っているにょよ
量産出来る雷は人の世にはにゃいからね」
「これでゲートを作るのかよ?」
「そーにゃのよ!応接間に置いてね重いけど……」
「大丈夫だ、一つは竜馬に持たせるからな!」と一生は笑って竜馬にトートバッグを一つ持たせた
階段を上がって家へ続くドアを開けて応接間に行きトートバッグを置いた
烈はワン達の方に星石を置き、ワン達から離れた壁の向こう側に太陽石を置いて貰った
これでワン達の影響はないだろう
烈はサコッシュから携帯を取り出すと、真矢からラインが来ていた
『何時井の頭公園に行くの?』
『私は年内は暇よ何時でも良いわよ!』
『あら?烈、いないのかしら?』
『寝込んでないでしょうね?』
『烈ったら返信してくれないかしら?』
と号泣するスタンプを添えて送られていて、烈は慌てて「ばぁたん ごめん!」と返信した
「来週、行きたいのね
Xmasも近いからイルミネーションも見たいにょよ!」
『あら烈、大丈夫なの?
ばぁたん飛鳥井に行って話を聞きたいわ!』
「なら来てよ!ボクいるし、にーに達もあと少しで還って来るにょのよ!」
『なら今から行くからね!』
烈はワン達を撫でながら待っていると真矢達が飛鳥井の家にやって来た
インターフォンを鳴らすと一生が玄関のドアを開けに行った
応接間に入ると一生は真矢と清四郎のコートを掛けた
「烈、元気だった?
お仕事の話ポシャったから心配していたのよ」
「ばぁたん、もぉね壊滅的で手が着けられなくにゃったから、総て白紙に戻したにょよ
飛鳥井建設のリフォームもそれどころじゃにゃくてね………一つずつ片付けている所にゃのよ!」
「そうなのね、痩せたわね烈……」
その窶れた顔を見れば如何に大変な想いをして来たか伺えられた
烈は「昨日は寝てにゃいのよ、ボクね昨夜は菩提寺で泊まっていたにょよ!
にゃのに菩提寺火事になってね……本当に落ち落ち寝てられにゃいのよ」とボヤいた
真矢も清四郎も菩提寺の火事はニュースで見て知っていた
烈は「ばぁたん、3日後に記者会見を開くにょよ
そしたら少し時間が出来るから井の頭公園へ行って欲しいにょよ
でも先に言っておくね、それ仕事にゃのよ
だから嫌なら断ってね…………」と謝った
真矢は烈を抱き締めて
「仕事でも散歩したり楽しめる時間はあるんでしょ?」
「そーにゃの、レイたんも楽しみにしているにょよ!」
「なら良いわ、それが仕事でも一緒にいられる方が良いわ!」
「ばぁたん、Xmasイベントだけでもやりたいわね
そして毎年恒例にしちゃいたいわね!」
「それ良いじゃない!
真矢は喜んだ
清四郎も「私も出してくれるなら、嬉しいんだけど?」と少しだけ弱気で言う
「じぃたんも一緒よ!
一緒に楽しみたいわね!」
と烈が言うと竜馬は烈がそう言って来るのを解ってて動いていたから、それを告げる
「烈なら絶対にそれを言うと想っていたからな、メンバーはそれを見越してイメージ膨らませてアイデアを出し合ってるから、リーダーがそれを纏め上げて映像にしてくれれば良いから!」
「りゅーま………」
「烈は祖父母大好きだからな
欠かせないイベントだと想ってメンバーは動いていたんだよ!
だから烈がやると謂えば相賀さん達も直ぐに動いてくれる手筈は整えてあるんだよ!」
烈は皆の想いが嬉し過ぎて……泣いていた
真矢の清四郎が烈を優しく抱き締めた
そこへレイが還って来て「れちゅ だれにいじめられたにょ?」と走って来た
その後を「おい!レイって走ると転ぶぞ!」と兵藤の声が聞こえた
兵藤は「烈、お前昨夜還って来て菩提寺で寝てて火事に遭ったんだって?」と聞いて来た
烈は「寝てる時にトラック突っ込んで来て、次は火事よ……もぉねボク寝にゃい方が良いのかもね……」と遠〜い目をして呟いた
兵藤は「たまたまだ、大丈夫だ烈!お前には最強の母ちゃん着いてるだろうが!」と言った
「母しゃんは最強でもボク最弱だもんね………」
兵藤はたらーんとなった
真矢は「烈、大丈夫よ貴方に何かあったら、この祖母が護ってあげますから!」と烈を抱き締めた
「ばぁたん……」
清四郎はレイを抱き締めて、頭を撫でていた
「レイ甘い匂いしますね?」
レイからは甘い匂いが漂っていた
レイは「ぱっくん たべたにょ!」と清四郎に教えた
清四郎が???となるから
兵藤は「パフェです!」と訂正した
「良かったですね!」
レイは頷いた
烈は「兵藤きゅん戻ったにゃら、ボクぜんちゃんの記者会見を母しゃん達の前にやる事を告げにゃいと!」と言った
「善之助の記者会見やるのかよ?」
「そうにゃのよ!盗られたら盗り返さなきゃ男が廃るからね!」
「なら秘書と元妻の不貞に不正の証拠を上げねぇとな!」
「それはね、死した後に晒してやる気でぜんちゃんが肌見離さず持っていたにょよ
ぜんちゃんが部屋に仕掛けたカメラに行為中のもあったにょよ!それはエグいから画像だけ取り出して証拠として記者会見の時に出すにょよ!」
兵藤は「見たのかよ?その行為中の動画?」と問い掛けた
「見たにょよ、しいて謂えば…調教系で妻を籠絡したって感じね
まぁ調教にしても素人臭い下手くそだったわよ!
あの程度で夢中ににゃれるにゃら薬を使ったにょかもね
そんなに立派にゃモノでもなかったし!」
兵藤はもう何も聞くまいと想った
竜馬は烈の口を塞いだ
ついでに鼻も塞いで………烈はクターっとなったから兵藤は慌てて烈を離した
「りゅーま、ボクを殺す気?」
「んとに下ネタは止めろよな!」
「下ネタじゃにゃいのよ?」
「でも祖父母の前で言う事じゃないでしょ!」
「そーね、ごめんね、りゅーま」
「ならば皆で協力してその作業をするっす!
保養施設は使えないから何処でやるかが問題なんだよね?」
「志津子にどれか部屋を貸して貰うにょよ!」
「なら電話してくるっす!」と竜馬は電話を掛けに行った
烈は真矢に「3日後に記者会見を開くにょよ、そしたら井の頭公園を散歩に行くにょよ、レイたん今から楽しみにしてるにょよ!」と告げた
レイは真矢を見上げて嬉しそうに笑った
「今夜は宴会よ!ばぁたん、じぃたん!
だから夜まで待ってて下しゃい!
ボクねやる事があるからね夜までいにゃくなるけど、帰らにゃいでね!」
「帰らないわよ!烈を待ってるわよ!」
その言葉を聞き烈は慌ただしく部屋を飛び出してPCを取りに向かった
そして応接間に戻って来ると一生に
「あのトートバッグ、ボクの部屋に置いて来て欲しいにょよ!その時は必ず別々に離して置いてね
でないと雷が一気に放出しちゃう危険性もあるからね!」
と頼んだ
「あぁ離して置いてやる
が、めちゃくそ危険ですがな、これ!」
「明日には嵌め込まにゃいと駄目だからね!
まずは証拠だわ、またあのエッチ見にゃいと駄目かしら?」
兵藤が慌てて「ベッドの中の少し軽いのとか、チュー写真程度じゃねぇとモザイク入れられっぞ!」と注意した
「それにゃら腐る程にあるにょよ!」
「ならそれ使おうぜ!もう見なくて良い!」
「良かった、ボクね調教とか好きじゃにゃいのよ」
「…………そうか……」
「にゃら記者会見の資料揃えにゃいと!」
「それ、俺も一生も手伝ってやる!」
「良いにょ?」
「おう!こっちも記者会見の資料揃えねぇとだからな!」
流生達が学校から還って来ると烈は兄達に
「ボク少しやる事あるから、にーに達、ばぁたん達宜しく出来るかしら?」に頼んだ
翔は「年明けまで習い事も修行も休みだから大丈夫だよ、烈は何をやりに行くの?」と問い掛けた
「記者会見、開くから資料を揃えにゃいと駄目にゃのよ!
そしてね【蔵持】を始動させにゃいと明日が狂うにょよ!」
大変な事をしている弟に兄達は「行っておいで!」と送り出してやる
烈は竜馬にお財布を手渡して
「りゅーまは慎一きゅんと宴会のご馳走を買っておいてね!」と頼んだ
竜馬は「了解っす!ならば真矢さんと清四郎さんと一緒に買い物に出るとするかな!」と楽しげに言った
「あ、烈の好きな干物買っておくからね!」
「りゅーま…」
「だから頑張って来るんだよ!烈」
「頑張るにょよ!」
まるで新婚かよ!と謂う会話に兵藤も一生もクラクラして烈を引き摺って一生の車に乗り飛鳥井記念病院の駐車場に車を停めた
飛鳥井記念病院の前に着くと志津子が待っていた
烈達を空いてる部屋に案内して志津子は病院へ行きます、と言い出て行った
莫大な資料の山の中から使える資料を報道関係者に配る様に作成する
そして草稿を作り上げる作業に入り、烈は手を止め「記者会見まで生きてるかしら?」と呟いた
兵藤と一生はギョッとして「「誰が!」」と問い掛けた
「あのね、ブルームーンダイヤってのはね、奪われたくにゃい女性の怨念が染み付いたダイヤにゃのよ、そのダイヤ………母しゃん……ぜんちゃんの元妻と秘書の所へ送っちゃったにょよ!」
烈は底抜けに明るく言った
兵藤と一生は唖然として口から魂が出んばかりに、何って事するのよ!と想った
なのに烈はそんな兵藤と一生の想いも知らずに
「所持者は皆、発狂 取り降り自殺 焼身自殺
一家皆殺し………と沢山の人の血を吸っているにょよ、あのダイヤは……だからね持つ人は必ず百発百中不幸ににゃるのよ!」
一生は気を取り直して「それを送ったのかよ?」と聞き返した
「そう、母しゃんが!
でもね父しゃんが家に持って来ちゃったから………災厄が起こる前に人に押し付けなきゃならなかったにょよ!」
兵藤は「蔵持の家にはずっと有ったんだろ?
ならば、何故その時は発動しなかったんだよ!」と問い質した
「蔵持の先代が骨董を集める趣味を持っていたにょよ、でね宝物庫には封印が施してあったにょよ
だから眠った様に静かに暮らしていたけど、出したでしょ?そりゃ怨念や災厄発動しちゃうにゃよ!」
成る程…………何てモノ持ってますの?
金持ちって意味解らねぇ………と思った
「獅童が言ってたでしょ?古いのには魂が宿るって、だから飛鳥井の家には年季の入った骨董品とかにゃいでしょ?」
兵藤と一生は成る程と納得した
だが一生はその人物を知らなくて「その獅童って誰よ?」と問い掛けた
それには兵藤が答えた
「鷹司緑翠、前世の名を獅童と言うらしい
あの家も前世の記憶を持って生まれて来る一族なんだな…………」
それを聞いて一生は納得した
ある程度の【家】はそれぞれ死命を持って生まれて来る子供がいると言う訳か
まぁ飛鳥井も金持ちの部類に入る家だけど、調度品や、生活ぶりは庶民的で質素とまでは行かないか、普通の家庭だと想っていた
調度品には魂が宿るからなのか………と一生が納得しかけた時、烈は
「まぁ飛鳥井のばぁしゃんは調度品とか興味にゃいのよね、でも榊󠄀原のばぁたんちにはヤバくはにゃいけどにゃんかいるのあるのよね………ばぁたん調度品好きだもんにゃ」とボヤいた
兵藤は「教えてやらねぇのか?それ?」と聞いた
「ヤバいにゃら母しゃんが即座に祓うにょよ
祓えにゃいなら屁理屈捏ねまくって持ち去るにょよ
だから言わにゃくても大丈びにゃのよ!」
そんなモノなのか………と何か納得した
休憩中にはそんな雑談をして、始めると音もなく作業を続ける
そして揃え終わる頃、竜馬が烈を呼びに来た
烈は竜馬に「良いの買えた?」と問い掛けた
「何かさ、アレもコレも値上げしててさ
え〜こんな高かったっけ?って思っちゃったよ!」
「仕方にゃいのよ、値上げラッシュ止まらにゃいからね、しかも今天災でお野菜高いでしょ?」
「そうなんだよ!烈!
玉ねぎがまた値上げしてた、小さいの4個100円ちょいが、今は170円だよぉ〜、上がり過ぎだよな」
「そーにゃのよ!だからね毎日大変だって慎一きゅんが言ってるにょよ!」
主婦ばりの会話は続く…………
兵藤は「お前等何処ぞの主婦かよ?」とボヤいた
一生は「これに流生が加わると、何処ぞの井戸端話してるおばちゃんよ?になってるぞ!」と付け加えた
烈は「お財布に優しくにゃい時代ににゃったわね!」と竜馬に手渡されたお財布をしまった
一生は「お前がお金出したのかよ?」と問い掛けた
兵藤も「一声かけろよ!」とボヤいた
烈は笑って「ボクねお金にゃいから、そんなに入ってにゃいから大丈びよ!」と言った
そう言う事じゃないんだが……
何処か烈とは話が噛み合わない時がある
だが竜馬は「さぁ帰るよ烈ぅ〜 烈の干物は俺のお財布から買ったっすよ!」と言いさっさと烈を連れて還ってしまった
一生と兵藤は唖然として「「何あれ?何処の新婚よ!!」」とボヤき、仕方がないから片付けて一生の車で還って行った
飛鳥井の家に帰ると客間で皆の楽しそうな声が響いていた
康太は「お疲れ!」と二人に声を掛けた
兵藤は「何時戻ったのよ?」と問い掛けた
「今さっきだよ、今夜は烈の奢りで鍋だって!
さぁ手を洗って客間に来いよ!」
そう言い康太は客間に戻って行った
客間に行くと竜馬が烈の為に買った干物を前に置いてやっていた
テーブルの上には土鍋が3つカセットコンロの上でグツグツ煮えていた
大人が一つずつ味が変えてある土鍋を食べる
一つは普通のだがもう一つはチゲと謂うか火鍋に近いチゲだった
子供達は一つの土鍋を皆で食べていた
北斗と和真がちっこいのの世話を焼きながら、お鍋に具材を入れて行く
子供達はお肉と謂うより野菜とお豆腐がホクホクで大好きだった
烈もお豆腐を食べつつ干物を食べる
兄達の分も竜馬は買って来ていた
ちっこいのには骨のないお魚を慎一が調理していた
レイは烈の横で熱々のお鍋を取り分けて貰ってレンゲで掬って少しずつ食べていた
相賀達に買わせたお酒は今も納戸に積み上がっていて、日本酒も何本かありそれを熱燗にしていた
真矢も清四郎もニコニコでお鍋を食べつつ、熱燗を注いでもらい、とても嬉しそうに笑っていた
そして「皆で食べると美味しいわね!」と言った
烈は「ばぁたんは今家族でご飯食べてにゃいの?」とド直球な質問を投げ掛けた
真矢は顔を曇らせ「そうね、皆忙しくてバラバラね……」と答えた
「にゃらさ、ばぁたん達は引っ越したら?
一緒にいてバラバラは辛いにょよ!
にゃらばぁたん達は二人で住めば良いにょよ!
それか完全二世帯住宅を建てるか、それにゃら適度な距離を持てるにょよ!」
「烈………その話は、私が少し前に清四郎に話しました、清四郎もその方が気楽かも……と言ってました」
康太は顔色を変えて「それはどうしてだよ?」と問い掛けた
真矢は下を向いて涙を流していた
そんな妻を抱き締めつつ清四郎は話を始めた
「キッカケは律が我が家に来た事でした
皆最初は気を使っていましたが、次第にギスギスした感じになり………丁度その頃律がスカウトされ養成所に入る事が決まりました
律はその養成所に入り……連絡を断ちました
何故なの?と聞くと『僕がいると何もかも上手く行かないから」だと謂われました
律がいなくなった後もギスギスが消えず………何とか笙が頑張って明日菜との仲を頑張って取り戻しはしました
ですが一度出来た溝と言うのは中々埋めれなくて……
私と真矢は最近この近くのマンションに移り住んで生活をしています………」
初めて聞く出来事だった
烈は「しょーたん焚き付けて夫婦仲取り持ったにょに……駄目だったにょね……」とがっくし肩を落とした
康太はそれを視て知っていた
それは総て祖父母の為だったのかと……今更ながらに想う
烈は清四郎に「じぃたん、そのマンションって2年契約とかにょ?」と問い掛けた
「いいえ、知り合いの不動産屋に取り敢えずと謂う事で1ヶ月単位で借りれるウィクリーマンションみたいな感じにして貰って借りているんだよ……
何時家に戻らなければならなくなるか解らないからね………」
「にゃら取り敢えず住む所は母しゃんに用意して貰うと良いにょよ!
そして新しく薬局を病院の横に作るから、その上に住むと良いにょよ!
それなら遊びに行きやすし、泊まれるにょよ!
ばぁたん、じぃたん、お泊りしたいにゃ!」と言うと真矢は瞳を輝かせ
「ならそこを買いましょう!清四郎!」と言った
烈は笑って「大丈びよ!薬局を建てる時にばぁたん達の住居も建てちゃえば一石二鳥よね!母しゃん!」と言う
何ともちゃっかりしたヤツなんだよ、と想ったがそれが最善策と想ったからそれに乗った
康太は「それが一番良い、時として時間と距離が必要となる時も有りますからね!」と言った
「母しゃん、視てくれにゃい?ばぁたん達の家!」
「………オレの果てが悉く狂って来てるからな
視ない方が良いのかも知れないぜ?」
「大丈びよ!母しゃん
狂った運命の軸は軌道修正したから!
だからボク死にかけて母しゃん怒ったの忘れたにょ?」
「忘れてねぇよ!んとにオレの子は無茶ばかりしやがるかんな!
ならば視てやるさ!最上級に運気の上がる家にしてやんよ!」
そう聞き烈は「ばぁたん、じぃたん、あの家のモノは総て処分するにょよ!
そして新しい家には調度品じゃにゃくて、新品を置くの!
気分一新して自分の家具を持ち、自分達の生活を始めるにょよ!」と言った
真矢は「ええ、新しく始めるならば総て捨て去り、新品の家具や家電を揃えて清四郎と1からスタートを切る、そんな気持ちです!」と言った
真矢の運命のズレがガチャッと正しい軌道に収まる音を聞いた
康太と烈は顔を見合わせた
康太は「ズレてたんだ………」と呟いた
「母しゃん、後ろは振り返らにゃいのよ!
唯の道が出来てるだけらから!
眼の前の道こそが、母しゃんの逝く道にゃのよ!」
「解ってんよ!烈!んなに厳しく謂わなくても良いじゃんかよ!」
「母しゃん、ズレたにゃら蹴飛ばして直せば良い
それだけにゃのよ、ボクね手は今無理出来なゃいけど足は自信あるにょよ!」
「うし!ならば蹴り飛ばす!
真矢さん清四郎さん、オレは飛鳥井記念病院の上に幾つか部屋を持っているので、そこへ移られては如何ですか?
その方があの近くに住むならば、先に慣れておく事も出来るし、そうしたらどうです?」
康太が言うと真矢と清四郎は頷いた
清四郎は「ならばお言葉に甘えさせて貰うよ
今の部屋はテレビも何もないんだよ、買えば良いんだけどね、思案して動けずにいたんだよ!」と内情を吐露した
烈は「しづちゃんが貸してくれる部屋はテレビも洗濯機も着いてて助かったわよね?兵藤きゅん」と兵藤に話を振った
兵藤は苦笑して「だな、過ごしやすい部屋なので安心して下さい!」と言う
真矢は嬉しそうな弾ける笑顔で「何だかとても嬉しいわ!」と泣いた
玲香は優しく真矢を抱き締めた
康太は烈に「知っていたのかよ?」と問い掛けた
「ボクは母しゃんみたいに果てが視える眼は持ってにゃいのよ!でもねしょーたんがね、妻とはイギリスから還って来て以来ギスギスしてって言ってたからね
奥義を教えて夫婦仲良くさせたら、にゃんかこぉ、変化がにゃいかなって想ったにょよ
でも一度出来たギスギスは中々直らにゃかったのね……難しいわね!」
としみじみ呟いた
一生は少し前の自分の身に起きた事を考えた
不協和音はそんなに簡単には収まらないって事なのだと………痛感する
許されて果てへと繋がれねば進めない領域なのだ
清四郎は「あの家はゆくゆくは笙に渡すつもりでしたから、笙に譲渡します!」と言った
康太は「それ決めるなら年が明けて、オレ等の目の回る程に忙しい周期を抜けたら時間を作るから、その時に話そうぜ!」と言った
真矢と清四郎は頷いた
其の後は楽しい宴会に時を忘れて飲みまくった
此処でもまた問題出来るのね……………
康太はヤケクソになり熱燗をグビグビ飲んでいた
兵藤が「止めとけ、その時になれば俺等も話し合いには参加して正常に行くように見届けてやるから、ヤケを起こすな!」と言った
烈は何時の間にか寝てしまい竜馬が
「風邪気味なのに!」と烈を抱っこして部屋へと連れて行った
康太は「新婚か!」と叫んだ
そしたら一生がさっきの出来事を話した
「井戸端会議してる主婦ばりに話してたぜ!
其の後、烈の好きな干物買ったから!って連れ帰ったから新婚か!ってボヤいていたんだよ」と言う
レイは「たかち ねむい」と言うと慌ててレイを抱き上げて源右衛門の部屋に行き布団を敷いて眠る事にした
それを見送った康太は「クソ仲の良い親子じゃねぇかよ!」とボヤいた
榊󠄀原はどうどう、と康太を宥めた
真矢と清四郎は笑っていた
飛鳥井の家族も笑って飲みまくっていた
皆の思いを飲み込み……夜は更けて行った
翌朝 烈は応接間に座ってPCを叩いていた
一生はカタカタと音がするから応接間を覗いたら烈がいて驚いて「どうしたんだよ?こんな朝早く!」と声を掛けた
烈は宗右衛門を出して一生に
「丁度よい、少し話をせぬか?一生!」と言った
何の話だろう?一生は少し緊張してソファーに座った
「近々真贋から話があると想うが、馬関係を一つの会社を作りそこで纏めて管理、運営して軌道に乗せる話が出ておるのじゃ!
元々は馬関係は別にしてあったのに源右衛門が高齢じゃったから一つ纏めたのじゃろう!
じゃから正常な状態に正す事を考えている
今あるファームは捨てて、新しい場に調教施設を持つ事を考えている!
会社として運営する以上は成果をあげねばならぬ、故にチームを作りそれに当たる事となる
その方が主もアレもコレもやらねば!と想わなくても済む、横浜の本店の会社の社長は主と慎一がなるのじゃ!
会長を真贋がなり回して行くつもりじゃ!
まぁ年内は無理じゃから年が明けたら正式に話がある、その前に考える時間を………と想い話をした」
そう聞き一生は緊張を解いて話をした
「俺等もこの数年牧場経営、管理、調教、育成に関わって来て雑務の多さに辟易していた所だ
ど素人が来て馬の後ろに立つから、俺は庇って蹴り飛ばされた事もある
先が見えないジレンマに自棄になった時もある
白馬に行き正式に調教師として勉強して来て想うんだ………このままで本当に良いのかって?
馬を育てているのが苦痛だった
だがお前に名馬が出来るか聞いて教えてくれた調教通りにやったら手応えを感じで夢中にはって育てて入るが、この不景気に光熱費の値上がりとか色んな事情を踏まえて……事務員は切るしかなかった、そうすると慎一が大変でな
ずっと俺も慎一も悩んでいたんだよ
だからチームを作り育てられるならば………その方が良いと想うんだ」
「じゃが会社になれば採算は取らねば成り立ちはせぬ!
その分主等は大変になると解っておるか?」
「解ってるよ!宗右衛門!
それでも役割分担出来るってのは、その分気が楽になるんだよ………俺と慎一が背負わなきゃならねぇのは解ってるよ!
だけど助けてくれる人がいるのと、何もかもやらなきゃならねぇ責務に追われるのとでは違うんだよ!」
「会社は働く者がいるから成り立つ
育てると言う事は、信念を持って育てるからこそ、成果を得られる!
それらを正しい道に繋げて果てへと送り出す!
それが1000年続く果てへと必ずや繋がって行くじゃろう!
取り敢えず会社を立ち上げる迄にレップーサンダーを名馬に育てるのじゃよ!」
「何だよ?それは?」
烈は笑って「母しゃんが次の馬は烈で行くとするか!と言ったにょよ!」と言った
一生は「うし!ならばレップーサンダーを名馬に育てると約束する!」と約束を口にした
「レップーサンダーはね馬の鼻緒に雷マーク着いてるにょよ!」
「あ!今俺が調教してる子じゃんか!」
「そーにゃのよ!」
烈は悪戯っ子みたいに笑った
そこへ康太がやって来て「楽しそうやんか!」と言った
「母しゃん、カズには会社として運営して行くって話したにょよ!」
「おー!心構えいるもんな!
突然聞かされるのは嫌だもんな!」
「そーにゃのよ!」
「って事で馬関係の事務処理は関係は【R&R】のビルに移す、牧場は移転か?」
「クリスのビルの土地貰ったでしょ?
だから海の見える、あの土地に建てちゃう?」
「あぁ、申し分ねぇな!
ならば大和の土地はどうする?」
「そこはね、会社の収入源にするにょよ!
触れ合い牧場みたいにね、大人しい老馬とか引退した馬とか乗せて楽しませたら?
引退して皆が種馬になれる訳じゃにゃいもんね…
まだ走れるにゃらお仕事させにゃきゃ!」
「おっ!それオレがずっと考えていた事やんか!
馬の老人ホームじゃねぇけど、引退した馬の扱いが悪いからな、安住の地が出来るなら馬も幸せに生涯を終われるってもんだな!
うし!その様に考えて少し落ち着いたらお前も兄弟達も踏まえて話し合うとするか!」
「だね、ぜんちゃんにょ記者会見の資料、手伝って貰ったから出来たわよ!
今日は凛太郎とゲートを完成させて来るわ!」
「誰と行くのよ?」
「ケントにお迎えお願いしてるにょよ!」
「なら気を付けて行って来い!」
「母しゃんはばぁたん達を病院の上の部屋に移してあげてね!お願いね!」
「おー!解ってる!
なぁ烈、律が原因の不協和音って何なんだろ?」
「それはね、ボクには解らにゃいのよ
ボクは人の果ても視えにゃいし、おおよその予想で言うにゃら……祖父母をやはり盗られるみたいな感じだったのかにゃ?
そしてやはり何故内孫である美知留達ではなく他人を可愛がろうとするのか?が理解出来にゃかったのかもね
頭では解ってても………人はそんなに強くにゃいし、寛容にはなれにゃいからね………」
「ならば真矢さんと明日菜の間に……ギスギスが生まれちまったって事か?」
「明日菜はね、何につけても我が強いにょいのよ
だからしょーたん焚き付けて他の事は考えられにゃくなる程にテクで抱き潰せって教え込んだけど、人ってやはり感情では割り切れにゃい部分があるのかしら?」
「だな、飛鳥井じゃ到底考えられねぇけどな」
「そーにゃのよ!
レイたんも凛も椋も愛されて育っているにょよ
ボクもね愛されているにょよ!」
「当たり前やんか!お前はオレの子だからな、
んでもって、ちっこいのも大切な飛鳥井の果てへと続く存在だからな、大切にするさ!」
「その違い、にゃのね………多分」
「その違いか………ならば難しいな……
人の感情は千差万別だからな………」
「………皆仲良くにゃんて夢だけどね、それでも大好きな人は………泣いて欲しくにゃいのよ」
康太は烈の頭を撫でて
「それはオレだって常日頃から想っている
明日菜と話すか?……お前はどう思う?」
「…………多分……話しても明日菜には理解は出来にゃいわよ
笙だけが明日菜の唯一無二の存在だからね
今こうしてばぁたん達が出て行ってしまって後悔してるだろうしね
少し………様子見しかにゃいのよ
多分明日菜は母ちゃんの顔、見れにゃいわよ
だってボクがジーッと視てると逃げるもん
するとね、榮倉に怒られるにょよ!めっ!って!」
「なら当分は捨てておくわ!」
「Xmasイベント、しょーたんは誘わにゃいわよ」
「お前の好きにすれば良い!」
「年始、強引にお仕掛けて来るわよ!」
「年始から話し合いは御免だから、オレが費用出すから旅行でも行くとするか?」
「寒いとじぃしゃんもばぁしゃんも出にゃいわよ
きっとハワイなら行くわいな!だもん」
「……あ〜言いそうだな………
でもちっこいのもいるし大移動は避けたいんだよ」
「にゃら菩提寺火事だし、今年は正月どころじゃにゃい!と広めにゃいと!
にゃらボクが明日菜を遠ざける算段を取るわ
そして相賀達に逢うから、その時に笙は使わにゃいって話しするわ!」
「…………お前……めちゃくそ炎を炙って炙って燃え上がらさせるからな……」
「まぁ燃え上がったら、鎮火を待つしかにゃいのよ……」
「烈ぅ〜母ちゃんはそんな大事は嫌だぞ!」
「にゃんとかにゃるわよ!」
「なる気がしねぇって!」
「にゃら不戦を張って来にゃいと!
徹底的に叩き潰して、そのプライドへし折ってやるにょよ!」
「おい!烈!オレの話を聞きやがれ!」
「あ〜忙しいにょよ!」
烈は忙しそうに応接間を出て行った
一生は康太の肩に手を置いて慰めた
「あまり大事になるなら俺が止めてやる!」
「……多分、それ無理だな!」
「え?それはどう言う事よ?」
「烈は既に家から出て行っちまった」
「え〜!!嘘!んとに読めねぇな!あの爺さん!」
「一生、オレは覚悟する事にした……」
一生は心の中で康太頑張れ!とエールを送っておいた
そして一生はボヤく
「烈も暦也程じゃねぇが台風巻き起こすよな?」と。
「あぁ、転生した時には優しいままの宗右衛門だったが、それだと何も守れない!と少しずつ今の原型になったんだよ
でな、100年前逢った時には左之助が一目置く存在だったからな……どんたけ破天荒なんだよ?ってそれだけでも解るだろ?
暦也もそうだが、宗右衛門は特大級のハリケーンを何度もぶっ放すんだよ………
んでもって死にそうになってベッドの上で嗤ってやがるんだよ!」
「あ〜何となく解る気する………」
烈が初等科1年に上がった年にぶっ放したハリケーンも凄かったからだ
「しかし……明日菜はそんなに頑なだったのか?」
と康太は呟いた
一生は「俺はあまり明日菜とは話さねぇからな……それは解らねぇな
会社に行ったとしても明日菜は知らん顔だからな
わざとなのか?それとも忙しいのか?
解らないけど、話ししたのなんて何年前よ?って感じだぜ!」と言った
康太は驚いた顔をして
「お前を蔑ろにしているのか?」と問い質した
「そんなのとは違う、何と言うかトゲがあるんだよ、何をやるにしてもトゲトゲだからな
だから西村が目を光らせているんだよ!」
「ならば烈が何とかしてくれるのを待つしかねぇな、今更話をしたとしても聞かねぇだろ?アイツは………なら聞く様に嫌でもする気だろ?
1枚も2枚も宗右衛門の方が上手だからな、明日菜程度の女じゃ勝てねぇだろ?」
「だな、明日菜じゃ宗右衛門には勝てねぇな!
また口答えした時点で明日菜は社長の怒りを買うだけだろ?」
「…………まぁ何にしても烈の巻き起こすハリケーンの衝撃に備えねぇとな!
烈は祖父母が大好きなんだ!
その祖母を泣かしたんだ、明日菜は手痛い竹箆返しされるしかねぇわな!
宗右衛門はやられたら倍返しじゃねぇんだよ
やられたら数万倍返しなんだよ!
あ、詠めて来たかも……不戦は大分前に打ってあったわ!」
「どう言う事よ?」
「まぁそれは見てれば解る」
「ならば宗右衛門のお手並み拝見だわな!」
「………吹き飛ばされんなよ!」
「え!!それは何よ!」
康太は笑って応接間を出て行った
烈は飛鳥井の家を出て迎えに来たケントの車に乗り、飛鳥井建設へとやって来た
烈は受付嬢と話をして、上がって来たエレベーターに乗り、3階で降りて社内を見て回って社員と話をする
皆 烈に話し掛けて来る
最近は毎朝見廻りに来てくれないから、余計心配されていた
皆に挨拶をした後、烈は最上階へと上がった
そして会長室のドアをノックすると、下の方でノックされた音に清隆はドアを開けに向かった
ドアを開けると烈が立っていて、清隆は部屋の中へ招き入れた
烈はソファーに座ると「社長を呼んで下しゃい!」と言った
清隆は社長に内線で「会長室に来て下さい!」と告げた
社長は「直ぐに!」と言い電話を切った
瑛太が会長室にやって来ると烈は「佐伯にジュースを運ばせて下しゃい!」と言った
佐伯が来る前に烈は会長と社長に
「秘書を増やそうと想うにょよ!」と告げた
清隆は「秘書を増やすのですか?」と問い質した
その時、佐伯が会長のドアをノックして珈琲とジュースを持って来た
瑛太は「何故増やすのですか?」と聞いた
「それはね真贋の仕事を管理する人間が必要だからにゃのよ!
素直でギスギスシしてにゃくて、ツンツンしてにゃい子をね、入れようと思っているにょよ!」
烈がそう言うと佐伯は振り返り烈を見た
烈は知らん顔して続ける
「でね、軋轢を生まにゃい存在じゃにゃいと駄目ね!」
佐伯は「それは私に対しての当て付けですか?」と想わず問い質した
すると宗右衛門の声で
「主は誰に口を利いておる?
儂は飛鳥井宗右衛門を継ぐ者!
それを解ってて口を利いておるのか?」と明日菜を視て嗤った
その顔は子供の顔ではなかった
佐伯は深々と頭を下げ「お許しを!」と言い退出した
直ぐ様、西村がやって来て「何かありましたか?」と問い質した
宗右衛門は「儂にタメ口など聞いたから正しただけじゃ!儂は軽んじられる存在ではない!
飛鳥井の1000年続く果てへと繋げる為だけに今世は転生した宗右衛門を継ぐ者である!」と毅然と吐き捨てた
西村は深々と頭を下げ「お許しを!宗右衛門!私の教育が行き届きませんでした!」と謝罪した
宗右衛門はニャッと嗤うと
「主が言ったとて聞かぬであろう!あの者は!
自分が一番の最古参だと思っているからな、主等の言葉なぞ聞く訳などない!
しかもツンツン、トゲトゲしておると聞く
秘書はそんなに偉いのか?
話し掛けても無視されると社員達の間では有名な話じゃ!
儂は会社中を回って社員の話を聞いておるからな
最近の話は佐伯明日菜は社員を見下している!
そんな噂ばかりじゃな、西村、主もそんな噂の一つや二つ聞いておらぬのか?」
西村は表情を強張らせ「聞いております!」と答えた
「特に施工はクソだとばかりに目を顰めて見ていたと聞く、じゃから施工は別会社に移した
佐伯があんな態度を取っていたから、秘書からも嫌われている施工!と揶揄されやる気を無くしておったのじゃよ!
やる気なんか起きる訳ないわな!」
西村は「………我等は………彼女よりも遅くに入ったのもあり……注意は出来ても彼女のプライドを傷付けてしまうから強くは言えませんでした!」と弁明を口にした
「秘書を増やす、今はリフォームが頓挫してしまったが、将来的に真贋関係の部屋は7階に移す
それに伴い秘書も増やす、これは既に真贋の了承も得て決定事項じゃよ!
翼も………濁しているが、邪険に扱われたのも一度や二度ではないではないか!
宗右衛門の秘書であるぞ!
飛鳥井の中で真贋と宗右衛門は同列扱いじゃった筈だが………」
「……………」
「一度だけ猶予をやる
答えを導き出すまでは、儂の近くに寄る事を禁ず!年末年始にしれっと笙と共に来るのも止めて戴きたい!
何だって飛鳥井は菩提寺を火事で半分消失したから、対策が大変なのと色々と多忙なスケジュールが入っているからな
答え出すまで近寄るな!と申しておけ!
夫に泣き付いて飛鳥井の家に来たとしても、家には入れぬよ!
儂は逢わぬと決めているからな、解るな西村!
しかと言い付けて置くように!
もし来たら………その時は佐伯明日菜はクビとする!」
と宣言した
西村は頑固一徹な存在ならば知っていた
良く似てるから知っていた
西村は深々と頭を下げ「しかと申し付けておきます!」と言い会長室を出て行った
烈は「ごめんね、じぃしゃんとえーちゃん巻き込んで!」と言うと清隆は
「良いんです、佐伯の噂は私も耳にした事がありますからね…………」と言い烈の頭を撫でた
瑛太も「やはり………社員にも失礼な態度なのですね……」と言った
烈は「えーちゃんにもにゃの?」と問い質した
「そうですね、時々無視されます」
「そんにゃ秘書要らにゃいわね!」
清隆は「烈?………彼女は真贋の……」と執り成そうとしたが烈は
「思い知らせる前に解るにゃら真贋は護るにょよ
でも度を越したら、誰よりも冷徹にゃのは真贋にゃのよ!真贋に見切りされたにゃら………飛鳥井から切り離されるにょよ!」
誰よりも冷徹に人を切れる存在だと烈は言った
「まぁボクにゃら絶対に許さにゃいけどね
ボクね飛鳥井も榊󠄀原もどっちの家族も大好きにゃのよ!
それを泣かしたら許せにゃいのよ
ばぁしゃんにしたら、即刻不幸になる様に呪文唱えちゃうもん!」
「烈、そんな事したら駄目ですよ………」
やりそうだから釘を差しておく
「にゃらボクは帰るね、やる事沢山あるにょよ!」
と言い会長室を出て行った
瑛太は「康太は……どう出ますかね?」と呟いた
清隆は「康太ならば………誰よりも冷徹に判断を下すでしょうね………それが真贋としての務めですからね」と言った
瑛太は会長室を出て、社長室に戻った
何にしても宗右衛門が動いているならば、止まらないからだ
全ての膿を出し切るまで、その動きは止まらないのだろう……
烈が会長室を出ると、佐伯が待ち構えていた
烈は無視してその横を通り過ぎて行く
「烈、話を聞いてよ!」と佐伯は叫んだ
宗右衛門は「此処は会社じゃぞ佐伯!しかも西村から答えを出すまで眼の前に現れるなと申さなかったか?
主の態度は目に余るのじゃよ!
何様じゃ?真贋の秘書だからと己は特別だとでも思っているのか?
ならば申しておこう!
儂は飛鳥井宗右衛門を継ぐ者、その宗右衛門の秘書は真贋と同等じゃよ!
なのに主は翼を邪険にしたり無視したりしたそうではないか!
社員達にも無視したりすると聞く
秘書はそんなに偉いのか?
そんな考えなら価値もないクズにしかなれぬよ!
もう二度と儂に声を掛けるな!不愉快じゃ!
儂は軽んじられる存在ではない!
それが解らぬのなら近寄るな!
次はないぞ!佐伯!」と言い捨ててら後は見向きもせず去って行った
ズタボロに傷付けられ明日菜は言葉もなかった
解っていた
宗右衛門と謂う御人が甘くない事なんて………
下手したら康太よりも厳しく辛辣だ
秩序を正し礼節を重んじる
その時、康太と榊󠄀原が会社にやって来て、一部始終その光景を見ていた
康太は此処で出したと謂う事は相当に社員達に対して態度が悪く烈はそんな社員達の【言葉】を拾ってチャンスとばかりに切り出したのだろう
康太は佐伯の横を声も掛けずに通り過ぎた
佐伯は唖然とした顔をして康太を見送った………
康太は榊󠄀原と共に副社長室に入って、ソファーに座ると「一度社員にアンケート取らないとな……
多分烈は佐伯を視界に入れる事はしねぇだろう
仕方がねぇよな?自分の秘書が邪剣されたり無視されたりして気分が良い訳がねぇよな?」とボヤいた
榊󠄀原は「元々佐伯はガサツでしたが、何時からツンツン、トゲトゲした態度を取り始めたのですかね?」と問い掛けた
「そこな、オレも解らねぇんだよ………
翔達を招集してアンケート取らせるか………それには佐伯が邪魔だな」
「ならば年内は自宅謹慎させますか?」
「いや良い、佐伯のアンケートを目の前でやるしかねぇ………これからもっと大きい季節外れのハリケーンが到来予定だからな………」
「進路、それてくれませんかね?」
「それは無理だろ?」
榊󠄀原は姿勢を正して「ならば我等はその衝戟に備えねばなりませんね!」と言った
どうあっても来るのならば、準備万端少しでもその衝戟に堪えられる体制を取らねばならないのだ
康太と榊󠄀原が話していると、副社長室のドアがノックされた
榊󠄀原が「どうぞ、入って下さい!」と言うと西村が立っていた
西村は深々と頭を下げると部屋の中へ入り
「佐伯は今日は仕事にはなりませんが、どうしますか?」
と問い掛けた
「宗右衛門が視界に入るな!と言ったんだろ?
なのにそれを無視して【烈】呼びで見下して話をしようとした佐伯が悪いに決まってる
烈は飛鳥井の会社に来ている時は宗右衛門として来ている
名刺も宗右衛門として作らせたからな、【仕事】をしに来てるのに【烈】呼びはねぇわな!
烈ならば思い通りに出来ると思ったか?
見下し過ぎなんだよ、今 宗右衛門が出たと言う事は佐伯の態度に問題があるから看過できないと言う事なんだよ!
誰よりも社員の言葉を組み上げ、規律と秩序を重んじる宗右衛門だからな
これは佐伯が引き起こした自業自得だ!
オレは不要だと判断したならば即座に切る!
それが宗右衛門が敷いてくれた1000年続く果てへと繋がると信じているからな!」
西村は言葉もなかった
何も言えなかった
本当にこの親子はタチが悪いのだ
似た者親子なのだ
榊󠄀原は何も言わなかった
この男は何処までも愛する者を護り、その動きは止めはしない
それは我が子にも同じなのだ
宗右衛門の動きは絶対に止めはしないだろう
康太は「佐伯明日菜と言う秘書がどれだけ社員の評判が悪いか?アンケートを実施する!
今日、この後にオレの子が会社に来てそれらを実施する事になる!
オレも宗右衛門も今目が回る程に忙しいんだよ!」とボヤいた
西村は「烈は……宗右衛門の部屋に?」と問い掛けた
「もういねぇよ、ケントの車の中に石を置いて来てるからな、即座に戻って施工でゲートの作業に専念してる頃だろ?
と、想うけどな、烈の果なんてオレの眼でも視えねぇからな聞くんじゃねぇってばよぉ〜」
西村は驚いた顔をして「貴方の瞳でもあの子の動きは解らないのですか?」と問い掛けた
「視るだろ、オレが知るやんか、すると微妙にズラして果てを狂わせるんだよ!
何せ今のアイツは賢者ラルゴや他の賢者に教えられ弟子と認定された程の実力者だからな
だからオレは滅多と烈は視たりしねぇんだよ
無駄な労力になるかんな!」
「そうですか………」
「この前、運命の軸の軌道修正しやがって死ぬ所だった…………って後から聞かされてみ?
んとにアイツは無茶しやがる!
あ〜もぉ、大人しくしててくれねぇかな!」
康太はボヤく
西村は笑って「それだと、何処かの飲兵衛と同じ台詞になりますよ!」と言った
「お前まで同じ事言うなよ」
康太はトホホホな気分で言う
西村は「ならば、なるようにしかなりませんね!
風雲児の上を行くヤツが出て来たならば、それはもぉ誰にも止まりませんよ!
でも副社長、貴方がお尻ペンペンだぞ!と謂えば止まりますよ?」と笑って言う
榊󠄀原は「それはしたくはないのですよ!
頑張ってる烈を精一杯応援するのが父の務めですからね!」と笑い飛ばした
西村は笑って副社長室を後にした
昼過ぎに翔達が会社にやって来ると、康太から佐伯のアンケートを取れ!と仕事を言い使った
次代の真贋達の部屋に行き、PCの前に座ると
流生が「ならばこの際だから秘書全員のアンケート取っちゃう?」と問い掛けた
音弥が「それ良いね!ならば役職の人気投票させちゃう?」とかなり話が大きなイベントになりつつあった
大空が「それ良いね、烈が断トツで1位だよね!
烈は社員に大人気だもんね!」と兄バカ発言をする
太陽も「だよね、烈が断トツ1位か、母さんが1位だよね、僕達もさ烈ばなりに負担かけない様に社内見回ろうか?
そして小さな綻びも即座に知らせて行けば、烈………少しは楽にならないかな……」と弟の心配をする
翔が「それは良いね、僕達が出来る事をして烈を助けて行こうよ!烈………記者会見開くって言うから怪我しないで欲しいね……」と怪我ばかりしている弟の心配をする
流生が「ならこのアンケート、何が何でも成功させるよ!そして来週頭に実施する!
ならさ役割分担しようよ、アンケートを作るのは全員で、だけど広報に知らせるのは誰か?
社内報を作るのは誰か?
2チームに分かれて取り掛かろうよ!」と檄を飛ばす
音弥が「なら僕は広報に行くよ!広報でアンケートの実施を社員全員に知らしめる!」と言った
大空も「僕も広報に行くよ!一色は手強いから僕も行き【真贋】肝入だと言う事を聞かせるよ!」と一色を警戒して行くと告げた
流生は「ならば翔、太陽、僕が社内報を作ってホームページめ知らしめるね!」と言うと翔と太陽は頷いた
そして円陣を組んで【やるぞ!】【おー!】をやり気合を入れる!
その手の上にちっこい手が重なり兄達は笑いながらも【おー!】をやり遂げた
流生はレイと凛と椋に「何時来たのさ?」と問い掛けた
竜胆は「さっきからいたぜ!俺達は!」と言った
椋とレイはウンウン!と頷いた
大空は「手伝ってくれるの?」と問い掛けた
竜胆が「俺等は竜馬に心理的に本音を聞き出す操作しろ!と謂われて来たんだよ!
竜馬は今、烈の為のイベントに集中したいって事で俺達に極意を伝授しやがったんだ!
だから先に来て待ってたのに、あんで気付かねぇんだよ!」とボヤいた
流生は「ごめん、僕達は大役仰せつかったからさ、完遂せねばって気が張っていたんだよ!
それにさやっぱり僕達は弟を蔑ろにされるのは許せないんだよ!
僕達は飛鳥井の男だから、此処で見過ごしたら男が廃るって宗右衛門に蹴り飛ばされちゃうからね!」と嗤った
竜胆は「だから俺達が来たんだよ!竜馬にても相棒が軽んじられるのは良い気がしねぇんだよ!
俺もな幾度も転生して人生を教えてくれた宗右衛門が軽んじられるのは許せねぇからな、来たんだよ!」と言った
そしてやらり皆で【ならば最高の作ろうぜ!】と拳を掲げて誓うのだった
そんなこんなで皆でアンケート作り上げる事になった
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