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第50話 前程万里 ❶

康太と榊󠄀原は翌朝、武道場を見学しに行った 閻魔に案内され行った場所は、閻魔庁からほど近い場所に建てられていた 立派な鉄筋コンクリート造り?と聞きたくなる建物だった 閻魔は「何か閻魔庁よりも立派な建物じゃないですか?」とボヤきつつ言う 康太は「だな、こんなに立派な建物だなんて思わなかったぜ!」と言った 閻魔は「閻魔庁も負けない位に立派な建物にする予定です!烈が魔界のシンボルにするにょよ!と言ってくれてるので、建て替えします!」と言った 閻魔庁の近くにあるから余計に武道場の方が立派に見えちゃうのかも知れない 閻魔は「魂の管理庁が出来て閻魔庁負けてねぇ?と謂われていたのに、武道場出来ちゃったので更に負けてねぇ?と謂われちゃいます!」と更にボヤく 康太は「兄者………」と慰めの言葉を掛けようとするが………言葉が見つからなかった 武道場の中へと入ると、そこにはまだ畳はなくガラーンとしていたが、金龍が還るまでには全てが完成しているのだろう 天井は高く、窓ガラスは大きく取ってあり広々としていた 康太は「此処3階建てだろ?2階と3階は何が有るんだよ?」と問い掛けた 「2階は半分が更衣室です!所持品や着替えを入れます そして半分が自主練のスペースです」 「更衣室もあるのか、此処で汗をかき着替えて帰るって訳か、すげぇな!」 康太は感心して呟いた 「3階は太極拳や護身術とかを習うので畳じゃありません! 烈が滑らない素材で床を作っていました 屋上は弓道が出来る様になっています!」 まさに武道場に相応しい面構えだった 閻魔は「この道場に入る畳は採寸して、基盤となる木を入れて完成させてあるので、後は編むだけです!でもアレは複雑なので苦戦してます」と現状を報告した 康太は「慣れちまえば宗右衛門みたいに出来るだろ?」と言った 「慣れるまでが大変ですけどね でも針を手にして指に針を指しまくっていた者も今ではチクチク立派に縫えるので慣れですかね?」 閻魔の言葉に榊󠄀原は想わず 「縫製工場の社員って……鬼の主婦ですか?」と尋ねた 鬼の手に針なんて金棒みたいに見えちゃうじゃないですか! 「縫製工場の社員は何も持たない者から鬼の妻まで様々です!神の妻も働きに出始めてるので、本当様々なんですよ! まぁ青龍は鬼の手に金棒なんて思ったんでしょうけど、針です持ってるのは! まぁ針のサイズも様々に作り上げました 人サイズ、鬼サイズ、色んなサイズを作り持たせて縫わせました! 今はプロ並みに縫っています! 後で案内しますよ、工場地区を!」 閻魔はそう言い、武道場を出ると外に出て馬に乗った その横をバスみたいな馬車が走って行く 榊󠄀原は「アレは?」と尋ねた 「この魔界に愛馬を持っているのは神と謂う存在だけです、なので工場地区で働いて貰う為に送迎馬車を出しているのです!  一度に30人は乗れるのてすが、今は工場が増えたので、送迎馬車を増やして運行しています」 送迎馬車………烈が考えそうな分野だった 「烈かよ?考案者?」 「そうです、今は50人は乗れるのを考案中だそうです!送迎馬車が通る道は煉瓦造りの道ではなく、何か黒いドロドロので舗装してしました その方が走りやすいと言ってました!」 康太と榊󠄀原は、だからこの地区は煉瓦造りの道じゃないのか?と納得した 閻魔は康太と榊󠄀原に工場地区を案内した 味噌工場、醤油工場、酒蔵、ワイナリー、縫製工場、機織り工場、そしてかなり走った禁止区域に塩工場があった そしてその工場で働いてくれる者優先に住まわせてる団地のマンションを案内した 団地に住んてる者は、歩きで工場に来て、そうでない者は、送迎馬車で通勤する そして閻魔はそこで一番大きな学校を案内した 「此れは学校です、この学校で文字を教え、魔界の歴史や計算、処世術、武闘、卒業間近の子は職場を見据えて就職訓練をします どの職場に行くか?それに合った勉強をして就職する、黒龍が作った学校を合併させて親のいない子は寮に入り勉強しています!」 康太は「学費取っているのかよ?」と聞いた 「取ってますよ、親のいない子は工場で働きに出ています、そこから学費と寮費を引いた分を給金として出しています!」 「こんなに静かに授業を受けてる風景を見れるなんて思ってもいなかったぜ!」と言った 「今の魔界はある程度の秩序は浸透しています 素戔嗚殿や我が父達が各地区の神々と協力して、小さな諍いも見逃す事なく正していますからね 力のない子を山に捨てる……なんてのも今は出来ません!住民達は正しく生活する為に秩序を守り生活していますからね それを乱す者は非難の目を向けられるので……やる者はいなくはなりました ですが、今だって小さな諍いはあるし、わざわざ嫌がらせしようとする者もいます 秩序をわざわざ乱す者も少なくはない……… 残念ではありますが………ね!」 「そんなのは人の世にも腐る程いるし、いなくはならねぇもんなんだよ 法律があっても人を殺す者もいる………不景気になれば強盗も増える………そんなニュースで毎日毎日埋め尽くされてるぜ人の世は………」 「それでも人の世に影響を感染させない為にも、我等は明日を信じて行かねばならないのです 天界もかなり厳しく秩序を植え付けて正している最中だと聞きますし、今は結構いい風が吹いている時だと想います!」 魔界もいい風が吹き始めているのか……… 康太はそれを聞き嬉しくなり笑った 閻魔は「所で炎帝、無間地獄の奥の奥って何があるのですか?」と問い質した 「無間地獄の奥の奥?んなの異空間じゃねぇのかよ?オレも行った事ねぇし、逝ったの消えて還らねぇって聞くやんか!」 それを聞いて閻魔はやはりか……と痛感した 「あんで、そんな事を聞くんだよ?」 閻魔は烈が電磁波で気絶したのは無間地獄の奥の奥に捨てれば良いと言った事を伝えた 榊󠄀原は何て事してますの!と想った なのに康太は「なら今度オレが見に行こうか?」と言い出した 榊󠄀原は「還って来た者はいないんでしょ?止めときなさい!」と止めた 「異空間………異空間って何処へ繋がっているんだ?烈とレイに聞いてみるしかねぇな………」 聞くの止めときなさい!とは言えなかった 一通り案内が終わると閻魔は 「私は閻魔庁の方に仕事に出ます!」と言い仕事場へ向かって行ってしまった 康太と榊󠄀原は愛馬に乗って素戔嗚尊の屋敷に出向いた やはり烈は縁側にデローンと寝そべって 「にゃんで大根じゃないにょよ!」とボヤいていた レイが「れちゅ にゃがいにょ しゃがす?」と言う 「長いの?にゃんだろ?」 トキが烈を突っ突く 「うだうだうるせぇんだよ! 仕事しろよ!」 と発破をかける クロスが「それよりバクテリアって何処に行けば探せます?」と聞く 「無間地獄にょ奥にないかしら?」 「あそこ、変な声聞こえて来るから怖いんですよ」 「沢山放り込んだからね………」 「取りに行くの?」 「行くわよ!奥の奥には行けにゃいけど、手前にゃら大丈びよ!」 そんな話をしてるから、康太は 「おい、烈、無間地獄の奥の奥って何があるんだよ?」と問い質した 「無間地獄の奥の奥はね、時空が歪んで異世界へ繋がっているにょよ! この前ね、アスファルトみたいにゃの探しに行った時、迷い込んだにょよ! トキちゃんが引っ張って戻してくれたにょね だから戻れにゃいなら入れて送っちゃえって想ったにょよ!」 康太も榊󠄀原も唖然となった レイもニブルヘイムの声で「奥の奥は何処かの星に繋がっている気がします………だってあの先にいたの………触角あったんですから!」と言う 烈が迷って入り込んだ時、トキが慌てて烈とレイを引っ張って戻してくれた だが確かに触角のあるナメクジみたいな人型を、その目で見たのだった レイはその話しをする 触角があって、二足歩行してるけど触角があって、手もあるけど触角があって、何か話していたけど触角があって………… と兎に角………触角があったと話す トキも「あの触角 何だか動いていたぞ!」と気持ち悪そうに言う 触角……康太は想像する 「それって大でんでん虫みたいな?」 トキが「あ〜似てるかもな……」と身震いした 烈は「グリーン色だったらピッコロさんみたいで良いにょにね」と残念そう レイは「ねんどみたいにゃ……へんにゃいろらったね!」と言う 康太と榊󠄀原は、それってどんなんよ?と想う 烈は携帯を取り出してカメラを起動させると 額に押し付けて「う〜ん う〜ん」と唸った レイは「れちゅ ぎゃんびゃ!」と応援する 烈は念写を終わらせると、母にその映像を見せた 康太はそれを目にして「うわぁ〜気持ち悪い!!」と叫んだ 榊󠄀原は言葉もなく、こんな気色悪い空間の中へと放り込んだのですか?……………と想った 烈は「母しゃん、あの奥の奥は異世界にゃのかしら?それとも……あの種族が住んでるにょかしら?」と問い掛けた 「あんで今まで誰も気づかなかったのよ?」と康太は唸る 榊󠄀原が「無間地獄だから近寄ろうとする存在なんかいないんですよ 魔族は鬼以外は絶対に近寄りませんし、鬼だって奥には行きませんからね」と言った それを好んで奥へ行くのは烈位だろう……と思った 烈は「あのね無間地獄の奥の奥ってね、色んな物質の宝庫にゃのね、アスファルトみたいにゃのも、あそこで見つけたにょよ! 今度はねバクテリア探しているにょよ!」と話す 「バクテリア?それは何を食べさせるのよ?」 「あのね無間地獄の奥の奥には腐敗したのでも食べるゲル状のがいるって鬼達が教えてくれにょね それを使ってトイレに放り込んだら、臭いの取れにゃいかしらって…………」 神もトイレには行く 天界の天使はどうだか知らんが 魔界の神や龍族は人と対して変わらない ただ気が遠くなる年月を生きているってだけだった まぁ多少の力はあるから神なのだけど、全知全能の神みたいな力は持たされてはいなかった 今度はトイレ事情を解決しようかと思っているのかと………何となく察する 康太は「トイレのって畑の肥料とかにしてねぇのかよ?」と問い掛けた すると即座に冷たい瞳が向けられた 「母しゃん………それするにゃらボク……二度と畑に出たくにゃいわ………」とボヤいた クロスも「あれは虫が湧くから本当に嫌です! 後 臭いしアレを撒くなら僕も畑には出ません!」と言った 「れいもいにゃ!」 と、レイも嫌だと言った 康太はもう何も言えなくなった 榊󠄀原は「僕達は今夜で帰ります、なので絶対に危険な所へは行かない、近付かない!を徹底して下さい!」と言った 烈は「にゃら母しゃん、父しゃん、今ゲルを取りに行くにょよ!」と謂う 康太は榊󠄀原を見た、榊󠄀原はしまった……と謂う顔をして諦めた 「ならば行きますか?」と言う クロスは榊󠄀原のポケットにinすると楽をしようとしていた 康太と榊󠄀原は愛馬に跨り無間地獄へと向かう 烈とレイも愛馬に跨りその後を着いて行く 流石と無間地獄の方は魔界の中心から大分離れているから、砂利道だったから空を飛んで向かった 無間地獄の前で馬から降りると、奥へと入って行った その場で仕事していた鬼達が烈とレイを見掛けると話し掛けてきた 「ゲル状の取りに来たのかい? 明日の朝持って行こうと集めといたよ!」 と籠に入れたのを見せて来た 烈は笑顔で「ありがとう、オニちゃん達!」と礼を言った レイもペコッとお辞儀をした 烈は「デカブってのが出来たからね、食堂のおばオニちゃんにレシピ教える様にじぃさんに言っとくから食べてね 食べれそうにゃら差し入れするから!」と言った 「ありがとう烈、妻から手に入らないの沢山貰って来てくれてありがとうって喜ばれてるんだよ! デカブか、レシピを教えてもらったら作れそうか聞いてみるよ!」 「その前にデメロンを明日持って来るわ! 皆で切り分けて持って行くのよ!」 鬼達は喜んだ ゲルの入った籠をアルくんとタカシに括り付けると鬼達は「また溜まったら集めとくな!」と言ってくれた 鬼達に礼を言い無間地獄から出ると、また馬を飛ばして素戔嗚尊の屋敷へ帰った 家に着くと烈は「母しゃん、父上しゃん、来てくれてありがとう!」と礼を言った 榊󠄀原は烈とレイの頭を撫で 「君達が魔界にいられるのも半分を切りました!残り半分が終わる頃、迎えに来ます!」と言った 「それまでに畳、伝授出来ると良いな!」 と言い康太も烈とレイの頭を撫でた そして二人は人の世に還って行った その日から烈は畳を鬼や何も持たない者に教えた 鬼達は繊細な仕事は早々にギブアップして、畳の板に柔らかい緩衝材の様なのを作っていた 「聖神、この畳の下に敷くの、こんな感じのにしたらどうだ?」と案を出し合い作って行く 「弾力だけあってもね、その上で一時間以上動いて凹んだり、分離しないのじゃにゃいとダメにゃのね!」 「なら行動あるのみであるな!」 と鬼達はその緩衝材の上で動きまくりの、飛びまくりをするのだった それに耐えられないのは、早々に凹む、ばらばらになる、を繰り返して何度も何度も素材を変えて実験していた 道場になるのだ 動いたり、飛んだり、なげとばされたり、を想定して作らねばならない! 烈は畳を織る作業をさせつつ、緩衝材も考えていた そして畑に出て状況を見つつ、新しいのに挑戦するのだ 毎日時間が足らなくて、人の世に還るまでにはある程度やりたかった 素戔嗚尊の屋敷に試験的にトイレにゲルを加工して投入した それで様子を見る為に籠の中にあるゲルを加工して行った そのゲルを手に閻魔の執務室や建御雷神の自宅、閻魔の自宅、それぞれのトイレに放り込んだ 天照大御神はトイレから放たれる独特の匂いが嫌いだったから、匂いがなくなるかも……と聞き嬉しそうだった この日も烈は畳の仕上がりを見に道場に来ていた すると、珍しい客が来ているので今直ぐに来て下さい!と烈を呼びに閻魔が直々にやって来た そして仕事を中断させ烈とレイとトキを閻魔の邸宅の前に在る執務室まで連れて行った 閻魔は執務室へ行くまでの道中で 「烈、レイ、トキ、これから来賓室に行きます!君達に逢いに遠路遥々来客が来ているのです!」 と説明した 「誰?お客って?」 烈が聞くと閻魔は「逝けば解ります!」と言った 閻魔の執務室まで閻魔と共に向かう 執務室の前に止まると、馬を降りた 閻魔の愛馬はアルくんとタカシと共に厩舎へ向かった そして執務室のドアを開けて、中へと向かう 閻魔は来賓室のドアを開けて、烈とレイとトキを部屋へと入れた 部屋には既に先客がいて、彼等はソファーに座っていた 烈は大天使ガブリエルの顔は知っているが、その横に座る立派な髭を生やした厳ついサンタみたいな男性には面識がなかった 白髪で白い長い髭を生やしている存在………そんなのXmasの頃にお目に掛かる存在しか知らない 烈は「サンタさん?」と問い掛けると、ガブリエルは爆笑した レイは「オーディーン………」と呟いた オーディーンと呼ばれた男は立ち上がると烈を抱き上げて 「儂は残念じゃが、サンタではない オーディーンと謂う北欧の守護神、そして天界の守り神をしておる!」と自己紹介をした そして聖鳥 トキを目にして 「懐かしい聖鳥を従えておるな!」と烈をソファーに座らせてトキに向かって「聖鳥 朱鷺が生存しておるとは聞いてはおらぬぞ!」とボヤいた トキは「我はヘルメースに仕えし聖鳥! ヘルメースの魂を持つ者の傍いる!」と答えた 艶々の毛並みに相当手入れさせれて過ごしているのが解る オーディーンはソファーに座ると 「聖神は7賢人、8賢者の弟子だとお聞き致した!その力は己の身を護れる程であるか? お聞きしようと想い魔界へと参った所存なのだ!」 「己の身を護れるか?と聞かれれば護れるけどね、向こうは常に飛び道具、呪具、武器、ありとあらゆるモノでボクを狙って来てるにょよ! だからね360度全方向から同時に狙われたらひとたまりもにゃいわ!」 「それを向こうは狙っている?と……」 「そうね、レイたんが神聖剥奪に尽力してくれたけどね、向こうは更に先を狙っているにょよ だから360度全方向から来る可能性はあるにょよ!」 「聖鳥 朱鷺殿は聖神の側に控えてはおらぬのか?」 「…………ボクの部屋ね7畳位にゃいのよ そこにね、猫もいるのにトキたんは入れにゃいのよ………ボク寝る場を失しにゃうわ!」 何ともな言い分にオーディーンは言葉を失った トキは「烈の中のヘルメースが呼べば我は光の速度で駆け付ける事が出来る!」と言った だが烈は「それは昼間だけね、夜はじぃさんと飲むから無理にゃのよ!また真っ赤な嘴で来たにゃらレイたんに飛び蹴りがまされるわよ!」 と言った ガブリエルは「オーディーン、烈の護衛に着いても聖鳥 朱鷺殿と同じでは困りますよ!」と注意した オーディーンは「……儂は酒が入ってても動けるから大丈夫だ!」と言ってのけた 烈は「それね、じぃさんと同じ台詞にゃのよ!」と呆れて呟いた オーディーンは「じぃさんとは?」と問い掛けた 閻魔が「素戔嗚尊と申す神です!聖神は大歳神が息子に御座います!」と説明した そして「大歳神はまだいましたか?」と問い掛けた 「この前還ってまた昨夜から来てるわよ!」 「今いますか?」 「じぃさんと猪野ワンの捕獲に出てるかしら?」 「ならば呼びに行き来て貰います!」と言い閻魔は部下に命令して素戔嗚尊と大歳神をお連れする様に言った 部下は直ちに呼んできます!と言い出て行った 暫くして部下が素戔嗚尊と大歳神を連れて来賓室に連れて来た 部屋に入って来た素戔嗚尊と大歳神はコピーと言っても良い程に様に似ていた 烈がその横に立てば親子、孫って直ぐに解った それ程にこの3人は良く似ていた 烈が大人になれば確実に大歳神の様になる 大歳神は歳を重ねれば素戔嗚尊の様になる なんともまぁ、な遺伝だと想った 素戔嗚尊は烈とレイに「烈、レイどうしたのじゃ?」と心配して声を掛けた 大歳神はドサッとソファーに座ると 「そこの御人はオーディーンであられる方であろう?」と言った 素戔嗚尊は「倅よ、知っているのか?」と問い掛けた 「妖精達がオーディーンが来たと喜んでいたから、その人であろう?」 大歳神が言うとガブリエルは 「そうです、此方の方がオーディーンです!」と紹介した オーディーンは「創造神から此れより更に熾烈な削り合いをする事になると謂われた そして真っ先に狙われるのは烈、お前だと謂われた………テスカトリポカの大敵オリンポスの十二神が一柱ヘルメースと同化した存在は邪魔だと狙って来ると宣言された で、我等は天界を守護する者等も、烈を護り通しすと事を決めた じゃが天界におる天使は非力故……儂に白羽の矢が立ったと謂う訳じゃ!」と説明した 烈は「ボクの部屋7畳だから………」と言う オーディーンは「別に何処でも構わんさ!何処でも寝れる特技を持っておるからな!」と笑い飛ばした 「にゃらお願いします!」と烈は言った 話が決まるとオーディーンは 「今宵は魔界に泊まる事にする! そして烈が人の世に帰る時、やって来るからその時からは共に行動する事となる!」と告げた 素戔嗚尊は笑顔で「ならば宴会を開くので烈の作る酒を飲んで行かれたらどうじゃ?」と言った オーディーンは喜んで「おぉ!それは良いわな! ならば行くとしようぞ!素戔嗚殿!」と言って出て行ってしまった 親父殿を見送った大歳神は閻魔に向き直り 「そんなに倅が置かれた状況は悪いのか?」と問い質した 「創造神が此れよりは熾烈な削り合いとなるので、狙われ続ける事を見越してオーディーンを遣わされたのです!」と伝えた 聖鳥 朱鷺は来賓室に結界を張ると 「ヘルメースは何時かそんな日が来るんじゃないかって………危惧していた だから創造神にオリンポス十二神の魂は分散した瞬間 一つにして眠らせてくれと約束した そして自分は冥府の闇の中生きながらえ、見届ける為にだけ存在していた 気の遠くなる時間を冥府の闇の中で過ごした………何の変化もない冥府の闇の中にキラキラ光る宗右衛門の魂の輝きを見付け、ヘルメースは助けてやりたい!と想い助けようとした だが………既にその時、ヘルメースにはそんな力は残ってなかった だから同化したんだよ、自分はオリンポス十二神の中に還れはしないと解っていて同化する道を選んだんだよ! 俺はそんなヘルメースを傍で見守るしか出来なかった……だがヘルメースが烈の中に生きていてくれば………それで良かったんだよ!」 と苦しい胸の内を話した ガブリエルは「オリンポス十二神が揃う可能性があると言うのですか?」と信じられない思いで問い掛けた 「ヘルメースを除いたオリンポスの神々は限界する、そしてそれこそが創造神の駒の一つとなる!」 トキは告げた 告げねばならぬ死命を背負い、やっと今、総てを告げる事が出来たのだ 「彼等は一度きりテスカトリポカを消滅させる為に限界し共に消えるつもりだ………」 その時の為に今も眠っていると言う トキは泣いていた 「我等の神聖はどの神でも剥奪は出来はしない ヘルメースは………先を見据えて果てを見据えて、何時だってそう言っていた」 大歳神はトキを優しく抱き締めた ニブルヘイムは「だから我等は最終決戦でケリを着けるつもりです! 我らが滅んだとしても、人々の明日が続くならば…………我等はその為にいるのですから!」と言った 閻魔は「その事は炎帝も………?」と尋ねた 「あの方は創造神の駒であられるから知っておいででしょう! 私は駒になった事は一度もないのに、ワンセットで闘わねばならぬのです!」 不本意だとニブルヘイムはボヤく 大歳神は立ち上がると烈とレイに 「今宵は宴会じゃ!畑に寄ってフルーツと野菜を持って帰るぞ!」と言った レイは「やったぁ~!」と喜んでいた ガブリエルは天界へ還り、今宵は宴会となった 大歳神は「閻魔殿も建御雷神ご夫妻も今宵は父の家に来られるとよい! 猪野ワン鍋で一杯飲もうではないか!」と言い二人とトキを連れて出て行った 畑に寄って逝くとクロスがいて「烈、レイ!」と飛んで来た 烈は「クロス、大トンガラ出来た?」と問い掛けた するとクロスは畑を指さした 畑には康太位のサイズの赤い外見は唐辛子風の野菜が幾つも畑に突き刺さっていた クロスは「実の方が育ち過ぎて畑にinしてます!」とボヤいた 大歳神は大トンガラの茎をハサミで切り、畑から引っこ抜き籠の中に突っ込んだ そして同じ様に今晩の鍋になりそうなのを突っ込んで行った 烈はフルーツを籠に入れて 「クロス、今夜は宴会よ!妖精達にも声掛けてね!」と言った クロスは喜び「解りました!声掛けときます!」と言って飛んで行ってしまった ある程度籠の中に入れるとクロウがレイの籠を手にしてタカシの背に括り付けてくれた そして烈の籠も括り付けて貰うと 「クロウ、今夜は宴会よ!クロウ達兄弟も来るのよ!お酒を持って来てもらいたいしね!」と言い馬を走らせ素戔嗚の屋敷へと向かった 大歳神にアルくんやタカシに括り付けた籠を外して貰うと、自分から厩舎に戻った! 大歳神は荷物をせっせと屋敷の中へと運び込む 庭にいた宇迦之御魂神も手伝い炊事場に籠を運び込んだ そして狩って来た猪野ワンを捌いて行く その毛皮は剥いで再利用するから、ザルの中に毛皮を入れて処理して行く 宇迦之御魂神がその毛皮の皮脂を削って綺麗に洗って、肉の部分に腐らない様に人の世で言うミョウバンの様な成分を抽出したモノで加工して干して行き洗って行く そして何枚も何枚も庭に作った物干しに干して行った 素戔嗚尊は大土鍋を竈の上に乗せて猪野ワン鍋を作る 臭みを塩とレイの水で取り切り刻み野菜を放り込み仕上げは臭みを取るハーブに近い野菜を放り込む このハーブに近い野菜は素戔嗚尊の庭で育てられていた そんなに大量生産出来ないから、こうして臭みを取る為に育てて作っていた 鍋が出来上がると皆が集まって来た いい匂いに釣られて来た者にも鍋を振る舞い酒を飲ませた 妖精達には冷ました鍋の汁を丼に入れ縁側に置く そして皿にお酒を注ぎ、それも縁側に置く すると妖精達が集まり楽しげに鍋の汁やお酒を飲んていく オーディーンは「此処は楽園か?」と言う程の光景だった 素戔嗚尊は「ここは魔界じゃが、我が孫聖神が作った酒を飲みに皆がやって来るのじゃよ 妖精達もクロスが呼ぶからやって来て楽しんでいるのじゃよ!」と説明した そしてクロスを手にすると「此の方は小妖精界の王子であられる、妖精の世界も多種多様であるからな、見聞を広げる為に魔界へ来られて、孫と共に魔界の為に尽力なさってくれているのじゃ!」と紹介した オーディーンは魔界酒に舌鼓打ちつつ、鍋を食べ上機嫌だったが、素朴な疑問を口にする  「妖精は魔界だけに存在しておるのか?」と。 それに答えたのは閻魔だった 「いえ、人の世にも妖精達は存在して、人の世の災害で怪我を負った時、炎帝と青龍が妖精達を回収して治療をしていましまから、多分人の世にも存在しています!」 「人の世にも存在しておるのか……… 妖精は遥か昔には天界にも存在しておった筈じゃ じゃが天魔戦争の後に天界から妖精は消えた……… クロス殿はそれが何故か解るか?」と問い掛けた クロスは「天界に羽を持つ存在は天使だけで良い!と追放されので妖精は天界で存在できなくなり妖精国へ還ったと聞いております! この事は………妖精王達と我ら王族だけが伝え聞いた事に御座います!」と伝えた オーディーンは「何ともな話であるな………腐った天界の話などしたくはないが……炎帝が何度も何度も天界の膿を出したが、腐った体質は変わらなかった………そのプライドの高さと………傲慢さに反吐が出るわ!」とボヤいた ニブルヘイムは「創世記の雨に打たれても変化はなしですか?」と問い掛けた 「多少は変わったが、天使の持つプライドの高さは変わらぬだろ?」 とオーディーンがボヤくと、ニブルヘイムは天を仰ぎ 「貴方さ、木偶の坊を作るの辞めたらどうです? 誰の為の存在か理解出来ない天使ならいなくて良いでしょ? 何故それが出来ないんです? もぉいっそ天使要らないし、天界の存続終わらせたら?」 と辛辣な言葉を吐き捨てた "やはりそう来るか………ならば主が天界に行き正してみたらどうじゃ" 「冗談じゃない!プライドしかないバカの前に立てと?嫌ですよ毒殺されそうしゃないですか! そうしたら創世記の滅び放ちますよ? 私はそんなに気が長くはない! 況してや烈と離れる気は皆無です! あ、烈と共に天界へ、ってのはなしてすよ! 天使が烈を傷付けたらならば、即座に鏖殺呪法放ちますよ?」 "…………それでも時が来たならば、主等は天界へ行かねばならぬ、その時に主が総てを滅ぼすと決めたならば、それは定めじゃろ? 時が来たならば……総てを正せニブルヘイム! それが主の務めであろうて!" 「私は貴方の駒ではないのに、ニブルヘイム使いが荒すぎやしませんか?」 "ワンセット転生とはそう言う意味を持つのじゃよ 諦めて炎帝と共にお掃除をするのじゃよ!" 創造神はガハハハハハッと高笑いして消えた オーディーンは「儂は創造神の高笑いなんぞ、聞いた事はないぞ!」と信じられない顔をして言った ニブルヘイムは「あの人は何時もあんな感じです!」と吐き捨てた そして「私は駒ではないのに!」とボヤいた レイは自棄酒ならぬ、やけ猪野ワン鍋だと言わんばかりにグビグビ汁を飲んでいた 烈は「レイたん」と言うと「れちゅ」と抱き着いた オーディーンはニブルヘイムと言う孤独な神の事ならば知っていた 冥府の地下で闇を浄化して来た、その程度だが……… 創造神の信頼も高く、誰よりも煙たがられる存在 それしか知らなかった 創造神に喧嘩を売る存在…………いないと想っていた だかいたんだな………と思った オーディーンは気を良くして、すっかり素戔嗚尊と大歳神と意気投合して飲んていた 縁側で烈とレイが仲良く話しながら畳を編んでいた ニコニコ笑って烈と話すレイを目にして、二人の信頼や絆を感じ取る トキが嘴で徳利を咥えてオーディーンに酒を注ぐ コップに顔を突っ込んで飲む聖鳥………言葉もなかった そして早々に烈とレイは部屋に行き眠りに着いた オーディーンは朝方 天界へ帰って行った 烈とレイが魔界にいられる時間も残り少なくなって来た時 武道場の畳が仕上がった 烈は閻魔に「金ちゃんと黒ちゃん魔界に呼んで貰えにゃい?」と頼んだ 素戔嗚尊が直々に迎えに行くと言い、大歳神と共に人の世に向かった 武道場には真新しい藺草に似た香りがしていた 暫くして素戔嗚尊と大歳神が金龍と黒龍を連れて武道場へ戻って来た 金龍は「これは………何なんじゃ?」と唖然としていた 烈はニコニコ笑って「金ちゃん、此処はね金ちゃんが教える場になる武道場よ!」と言った 金龍は烈の目線までしがむと 「儂は………そんな立場に立って良いのじゃろうか?」と気弱に問い掛けた 「何言ってるにょよ!金ちゃん 金ちゃんは魔界の何も持たない者達や、教えを請う総ての者に教える為に日々鍛錬してるんじゃにゃいの?」 「そうじゃが………儂は主を殺しかけた……」 「金ちゃん、後ろは振り返っちゃダメにゃのよ! 前を向いて進まなきゃ、魔界は滅んじゃうにょよ!其の為の布石であり、存在にゃのよ!」 「解っておる………少し気弱になったが、烈が逝けと謂うならば、儂は何処までも逝くと決めている!しかし……立派な建物じゃな!」 「金ちゃん、黒ちゃんとお手合わせしたら? ボク達が苦心を重ねて作った畳にゃのよ! 鬼達もさ、大丈びか?知りたがっているにょよ! ほらほら、柔道着に着替えてさ、組手やるにょよ!」 烈がそういうが黒龍は「大歳神が早く来い!と連れて来たからね、柔道着なんてないよ!」と言った 「ならそのままで良いわよ! 金ちゃんと黒ちゃんの武道場にゃのよ! こけら落としにゃのよ!」 そう言うと金龍は黒龍と共に、稽古をつけた 鬼達は力任せじゃなく軽々と投げ飛ばされる黒龍に言葉を失っていた 黒龍も金龍を投げ飛ばす それに力なんて入ってなくて、技なのだと知る 武道場近くで働く者も見学に来ていた、その騒ぎに皆が集まり…… 誰もが言葉をなくし、その光景を見ていた 閻魔は烈に「あれが武術ですか?」と問い掛けた 「そーね、金ちゃんは後幾つも習ってるから、護身術も力のない者達に教えてくれるわよ! この武道場に通う者には受講料を取るのよ! それが金ちゃんと黒ちゃんの給料ににゃるからね 教えてばかりだと、給料の心配しにゃいとダメだからね、受講料が二人の給料になるにょよ!」 「それは良いですね、受講料払っても習いたいと謂う者は多いでしょう!」 「えんちゃん、人の世から金ちゃん達が戻ったら雅龍と地龍も出して習わせて欲しいにょよ! 特に弓道と槍に力を入れて教えて行かにゃいと、闘いに突入した時に真っ先に狙われるのは弱い者だからね………非力は弓か槍を使わせる その槍も実践は竹じゃにゃく鉄ね!」  「それは作らせてますがどれだけ軽量にするか? それを今度時間がある時に来て見て下さい! 後 弓も作らせたのですが、難しいので………」 「解ったわ、今度長期で来る時は武器に力を注ぐ事にするわ! そんなに猶予はにゃいかもだけど、やらにゃいよりマシだからね!」 「猶予……本当に最終決戦へ突入して逝くのですね 私も次代がいるので、この命擲ってでも闘い抜くと誓います!」 「えんちゃん、命は大切にゃのよ! 悪足掻きして生き残る位でいにゃいとね! ボクはね、レイたん遺して死ねにゃいからね 悪足掻きして色々と思案して策を練るにょよ!」 「それは良いですね、ならば私も死なない為に色々と策を練らねばなりませんね!」 「そーにゃのよ、明日は来るにょよ! ボク達が守り通した先に明日は来るにょよ! 人々は明日が来ない………にゃんて考えてもいない だからね、ボク等は明日を繋げて行かにゃいとダメにゃのよ!」 重い言葉だった 覚悟を決めた言葉だった 烈は笑うと「えんちゃんも金ちゃん還ったら習ったら?武器を持って突進して来る者からの技も教えて貰えるわよ! その為に金ちゃんは人の世に行き、修練の日々を送っているんだからね!」と言った まるでそうなる為に自分の命を擲って…………道を開いたみたいな言葉だった 閻魔は「そうですね、己の命位己で守り通さねばならない、と言う事ですね? ならば私も習おうと想います! 閻魔が足を引っ張っていては示しが付きませんからね!」と言い笑った 金龍と黒龍は一通り、組手を終えて互いに挨拶して終えると、それを見学していた者から歓声が上がり拍手が巻き起こった 武道場、こけら落としが成功した瞬間だった 鬼達は二人が闘った後の畳を確認しに行った そして金龍に「どうであった?闘いづらくはなかったか?」と問い掛けた 金龍は「凄いな、この魔界に畳があるなんて想いもしなかった!」と感激して答えた 「聖神がこの日の為に造ったんだ! 良かった、畳もヘタったり寄ったりしてない! 成功であるな!聖神!」 と鬼達は喜んだ 場を三階の格闘技場へ移動して、酒樽を用意した その酒樽には豪華なリボンが成されていた 見学者も三階へ移動して事の成り行きを見守っていた 閻魔は金龍と黒龍に木槌を持たせると 「溢れない様にポコンってお願いします!」と言った 烈は「拍手よ!」と言うと皆が拍手を贈った 金龍と黒龍は酒樽を軽く叩いた すると蓋が真っ二つに割れて、鬼達はその蓋を酒樽に落ちる前に回収して素戔嗚尊を呼んだ 素戔嗚尊は「金龍、黒龍、魔界の為に修練お疲れ様じゃった!」と言い木尺を手にすると酒をついで皆に配った 皆に配ったコップは大きな葉っぱで形を取り、干して乾かして漏れない様に加工した、人の世で言う紙コップみたいなモノだった そんなに沢山のコップは用意出来ないから、葉っぱで型取り漏れない様に加工して100近く造ったモノだった それにお酒を淹れて貰い祝い酒を頂戴する 見学者にもお酒が振る舞われるとは想ってもいなくて、皆珍しい酒を嬉しそうに飲んでいた 始めてお酒を飲んだ者はクラクラになり、何時も魔界酒を飲んでる者は喜んで飲み 賑やかにこけら落としは終了した 烈はお酒を飲んだ事のない魔族に何で飲んでないのか?聞いた 新卒者の自分には少し高いので………と答えると、安価な酒も必要だと考えていた 酒樽一本は早々になくなり、ゴロウとシロウは酒樽を台車に乗せて持ち帰った 閻魔が「此れにて武道場のこけら落としは終了となります!」と宣言すると再び拍手が送られた 「金龍と黒龍が修練を終えて魔界へ戻って来た暁には、武道場は開始されます! この武道場は習う者には多少の月謝が掛かります ですが、力のない者達も神々も魔族も種族を超えて最終決戦までには力を付けて挑まねばなりません!なので己の命は己で護る! それを徹底して貰いたくて聖神がこの武道場を建てて金龍と黒龍を人の世に修練に出したのです! 後少しで金龍は護身術を習い太極拳を習得して還るでしょう! そしたら雅龍と地龍が人の世に行き弓道と槍の性能を上げる為に修練に出る予定です! 明日の魔界の為に、明日の人の世の為に、我等は先を見据えて、己を鍛えねばならない! 皆の心に私の言葉を刻みつけ、覚悟を決めておいて貰わねばないので、此処で告知しました! 此れにて終了です!さぁ解散して下さい!」 閻魔が言うと皆唖然として解散して行った 閻魔は金龍と黒龍に「お疲れ様でした!」と声を掛けた 金龍は閻魔に深々と頭を下げた そんな金龍と黒龍に「この近くに聖神肝入の温泉が出来たので行きましょう! このこけら落としを見越して作られていたのですよ!ほらほら素戔嗚殿も大歳神も行きましょう!」と言い温泉へ向かった 烈は皆を見送ると「畑に行く?レイたん」と聞いた だがこの日の準備に夜遅くまで頑張って疲れ果てていたのだった 「れい ちゅかれた」 「なら家に還り休もうね!」と言いお付きの鬼達と共に素戔嗚尊の屋敷に還った そして二人は部屋に行くとお布団を敷いて眠った 起きると既に部屋の中は真っ暗で、烈とレイは部屋から出ると一階へ向かった するとそこは…………酔っ払いの巣窟だった 宇迦之御魂神が起きて来た烈とレイに夕餉の準備をして「沢山食べなさい!」と言いまるでお母さんみたいに世話を焼く 烈とレイはご飯を食べつつ酔っ払いの巣窟を見ると何時の間に来たのか康太と榊󠄀原もいた もぉすっかり酔っ払いの仲間入りしていた 康太は烈が起きて来たのを知ると、近寄り 「武道場のこけら落とし成功おめでとう!」と声を掛けた 「母しゃん、もう期限来たにょ?」 「だな、もう少しでお前が魔界に来て人の世の時間で2ヶ月になるからな迎えに来た! 会社もこれ以上、宗右衛門を欠けば社員達の指揮も下がるかんな!」 「畳も完成したし、後は閻魔庁の建設の為に、チョコチョコ来るけど、長期じゃにゃいからね 母しゃん、ありがとう 会社もこれからって時に魔界に送り出してくれて、本当にありがとうにゃのよ!」 「閻魔庁もだけど、どうやら近い内に天界へ行かねぇとならねぇみてぇだからな……」 「…………ボクね天使嫌いにゃのよ!」 「え?それはどうしてよ? お前、ガブリエルとはお茶飲み友達じゃなかったか?」 「カブたんは良いにょよ! ボクが魔界へ来る少し前に天界もボクを護るとガブたんが言ってたでしょ?」 「だな、天界も足並み揃えて護ると言ったな」 「だからね、人の世にも天使が舞い降りてボクを護るフリを始めたんだけどね 人の世に来ている天使が………何かと難癖付けて来て見下す事を言うにょよ! おい!バカチビ!それが天使がボクを呼ぶ時に使う言葉よ バカチビ仕事作るなよ!バカチビいっそ死ねよ! 毎日が面倒なんだよ! ってね、挙げ句買い物に出た時、信号待ちをしていたボクを突き飛ばしたにょよ! だからね、天界に行ったら間違いなくボクは消されるわよ………」 「え?…………それ本当に天使だったのか?」 「レイたんが天使って言ってたにょよ!」 康太はレイを見た ニブルヘイムは「天使でしたよ!天界も烈を護るとガブリエルが申し出て、天使は烈を護る為に来てるのに、護るどころか?殺そうとするので、その場で消し去ってやりました! その魂輪廻など出来ぬ様に消し去りましたよ! 勿論、創造神にはその後に文句は言いましたけどね!」と吐き捨てた 康太は天を仰ぐと「本当なのか?」と問い掛けた ”本当じゃよ炎帝よ………じゃから天界の大掃除が必要じゃと申しているのじゃ!” 「ならば人の世に存在する【天使】を天界に返せ!それでも後に残っている天使は総てその場で消し去ってやんよ!話はそれからだ!」 ”承知した、今直ぐにガブリエルを寄越す故、ガブリエルと話すがよい!” 創造神の声が途絶えると同時にガブリエルが姿を現した 康太はガブリエルを睨み付け 「天界は烈を護ると決めたんじゃねぇのかよ?」と問い質した ガブリエルは康太と榊󠄀原に深々と頭を下げ、謝罪した そして顔を開けると覚悟の瞳をして話を始めた 「天界は一度綺麗サッパリと無くなった方が懸命かも知れません……… 炎帝が何度も何度も昇華してくれたのに………そのプライドの高さは直らない そればかりか、人の世に降りての警護すべき存在を蔑視して殺しかけたと聞く 更地にするべきです………その上で天使が必要ならばまずは天使を管理すべき神を作らねばなりません!でなくば天使が最上位だと勘違いして、常軌を逸脱して行く馬鹿が後を絶たない………」 ガブリエルがそう言うと康太は瞳を輝かせ 「オレは更地にするのは得意だぜ!」 と言った 烈は「レイたん!」と謂うとレイは「れちゅ!」と言い顔を見合わせた そして互いの顔を見て頷ずくと 「やる?」と烈が聞いた レイは「うん!やるにょー!」と言った 二人は向き合うと、両手を伸ばして両手を重ねた そして呪文を唱え始めた 長い長い詠唱を二人は息を乱す事なく続ける 榊󠄀原が二人を止めようと動こうとすると康太は 「動くな!伊織!…………ガブリエルも動くな」と言った その顔は青褪めて引き攣っていた 康太は「この子供………んとに恐ろしい………」 とだけ呟いた こんな所でこんな詠唱を始めるなよ……とつくづく思った 座敷には酔っ払いが楽しげに飲んでるのに……始めるか? 流石に妖精は危機感を抱き避難して座敷の方へ飛んで行ったが………酔っ払いの巣窟の横で始めるか? 素戔嗚尊や大歳神は詠唱を始めた烈とレイを目にして扉を締めその中に妖精を避難させていた 康太はこの二人の底しれぬ力に脅威を感じていた 自分はこんな場所で詠唱なんてしねぇ!絶対に!! そんな康太の胸の内など笙らぬ榊󠄀原は 「何をしているんですか?二人は?」と問い掛けた 「多分、オーディーンは今魔界に向かって愛馬を走らせているんだろ? ガブリエルもオーディーンもいないならば、グッド・タイミングだとばかりに、天界を更地にしてるんだよ 二人は同じ呪文を詠唱をしてるように聞こえるが、全く違う呪文を詠唱をしてるんだよ! ニブルヘイムは天界のありとあらゆらる存在を消し去る鏖殺滅法を、烈は聖約の地の契約の呪文を唱えているんだよ!」 耳を凝らして聞いても同じ詠唱を唱えている様にしか聞こえはしない だが二人は全く違う詠唱をしていると言うのだ 信じ難かった ガブリエルは「鏖殺滅法とは?」と問い掛けた 榊󠄀原は「聖約の地の契約の呪文とは?」と問い掛けた 「ニブルヘイムは今、天界にいる総てを消し去る呪文を詠唱してるんだよ! 鏖殺滅法と謂う呪法は、創世記の神だけが知る謂わばリセットボタンみたいな呪法なんだよ! ニブルヘイムは今、この魔界にいて天界総てを消し去っているんだよ!」 ガブリエルは言葉もなく康太の言葉を聞いていた 「魔界にいるのに?天界を?………嘘ではなく?」 想わず呟きたく現実だった そして榊󠄀原の問いに答える 「聖約の地の契約の呪文は、金龍が広げる筈の地に契約して聖印を刻んだ、あれを天界でやってるんだよ! 面倒臭がり屋の烈らしく、鏖殺滅法と共に唱えて聖約の地の契約もする そしたら天界へ行く時は、総てリセットされた大地となった天界へ行けるからな! 天界へ行けと謂われた時から考えていたんだろ? 聖約の地に住む者は、創造神との聖約を交わしたも同然となり、違えれば即座に消滅する呪文なんだよ! 聖約の地に住む者は知らず知らずの内に創造神と聖約したも同然となり、違えた瞬間に滅び消える 天使は天界に生を成した瞬間、創造神と聖約を交わした事になる だから違えれば消えても仕方ない……それを今やってるいるんだよ!」 ガブリエルは「………ならば天界は今……総ての天使が消滅した状況になっているのですか?」と尋ねた 「だろ?天使だけじゃねぇぞ……天界総てがリセットされたんだ! 建物だって綺麗サッパリ消えてなくなってるだろ?」 それを聞き………ガブリエルはヨロっとよろけた 信じられない事だが…………現実として起きていると言うのだから…… だが康太は更に続ける 「ニブルヘイムの最終奥義はこんな生易しいモノじゃねぇ…………烈の為にこの程度で終わらせてるって感謝しろよ!ガブリエル!」と言った ガブリエルは「最終奥義とは?」と問い掛けた 「オレもニブルヘイムも創世記の一柱だかんな、幾つもの呪法を授けられているんだよ その中でニブルヘイムは幾つも最終奥義を持っている神なんだよ! オレや皇帝閻魔よりその奥義は数多く所持している………まぁ段階式になっているって事だ その中のラストを放たれたら…………それを考えたら鏖殺程度で終わらせてくれてるって想わねぇとな」 かなり長い時間を掛けて烈とレイは詠唱を続けていた だが息切れしている訳もなく、普通に見えた 烈は詠唱を終わらせると母を見上げ 「母しゃん、これで仕事が楽になるにょよ!」と言った 本当に親孝行な息子だった 母の為に骨身を惜しまず尽くしてくれるのだ 康太は笑って「なら天界へ行ったら、まず何から始めるよ?」と問い掛けた 「天使を管理する神を誕生させ、システム化を図る、それが天界の第一歩となるにょよ!」 烈が言うとニブルヘイムは 「そして天使を誕生させる 天使は創世記の泉で作られた水槽を作りその中で誕生させて行きましょう!」 と壮大な計画を口にする が、二人は見つめ合い 「その前に人の世にいる天使狩りにゃのよ!」 「みんにゃ、けしゃにゃきゃ!」 と言い頷いた 康太は「って事で明日の昼には人の世に還るかんな、人の世に還ったら天使は総て天界へ帰還しろ!と告げろよ!ガブリエル」と言った ガブリエルは「解りました、そう告げます! でも天界へ還れるのですか?天使達は………」と問い掛けた 康太は嗤い「おっ!良い線突くな!天界へ還ったら消滅するだろうな、それこそが烈とレイの狙いだかんな!あ、ガブリエルおめぇとオーディーンは消滅なんてしねぇよ! 見届人として天界へは自由に出入り出来るだろうさ!」と言った 「見届人?それは何なんです?」 「おめぇは創造神と誓約したも同然の存在だからな、見届人としたんだよ! 創造神 自ら造った天使はルシファーとガブリエル、二人だけだからな…………烈とレイはそれを知っていたんだな 知っていたから、リセットさせ聖約の呪文を詠唱して聖印を刻んだ! 聖印を刻んだ地は聖約の地として、違える事なく逝かねばならない! それを見届させる存在は天界の忌日を遺すべき存在…………だからお前は総ての天界の忌日を遺して戒めを結べ!」 とても重い言葉だった 暫くするとオーディーンが魔界へ到着した

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