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第56話 愛は深く 想いは強く ❷

神の道に入りメンバーは訳の解らない道を歩いた 薄暗い道は何処へ繋がっているか解らないし……… 何より周りには骸骨だらけの元人間みたいなのがウヨウヨと彷徨っているのだ 骸骨みたいなのは、此方を伺っていた 襲っては来ないが、そんなのが周りにいたら……それはそれで恐怖怖だってば……とメンバーは想っていた 骸骨は「あれ?人間だよな?」「人間が何故この道を?」「責任者に知らせねば!」と騒いでいた 烈は只管崑崙山を思い描き一歩ずつ踏み出して道を作って行った 暫く歩いていると、眼の前に黒いフードを被った死神みたいな風体の骸骨が立ちはだかった 烈はその骸骨に 「何故儂の前を遮るのじゃ!」と宗右衛門の声で威嚇した 『主こそ誰の許可を得てこの道を通る!』 「儂は素戔嗚尊が孫 聖神で在る! それを知っての狼藉か?」 『素戔嗚尊……伊弉諾……伊弉冉………子孫じゃと?』 フードを被った骸骨はまじまじと烈を見た そして一歩下がって傅いた 『失礼を………確かにその血は………紛う事なき子孫であられる!そしてその首に吊るしてある勾玉は天照大御神の八尺瓊勾玉から作られている一つ……お許しを!』と謝罪した 「別に咎めはせぬよ、儂の仲間を傷つけた瞬間消し去ってやるが、そうでないならのなら捨てておいてやる! もし止めて悪いと想うならば崑崙山まで即座に送り出してくれればチャラにしても良いぞ!」 『ならば即座に!』 そう謂うとフードを被った骸骨は呪文を唱えた すると数歩歩くだけで崑崙山へと出られた 崑崙山に出ると烈は深呼吸した メンバーは怖くて………チビリそうだった 骸骨よ?………平静でいられる筈なんてないのだ あんなフードを被った骸骨が出て来たのに、兵藤と烈は平気な顔をしていた 竜馬は少し引き気味だったが、メンバーより魔界に一度来た分だけ冷静でいられた 兵藤は「引かねぇなら燃やしてやろうかと想っていたわ!」と笑った メンバーは、そこ笑えないって……と想った 烈は息を一杯吸い込むと、大きな声で  「アルくん!」と叫んだ すると暫くするとアルくんと素戔嗚尊がやって来た 「烈、魔界へ来るなんて言ってなかったのに、どうしたのじゃ?」と烈を抱き上げて問い掛けた 「じぃさん仲間を連れて来たにょよ!」 素戔嗚尊は烈を下ろすと仲間に向き直り 「素戔嗚尊だ、以後お見知りおきを!」と言った メンバーは素戔嗚尊の姿を見て、えええええ!!飛鳥井神威ですがな…と全員想った 素戔嗚尊は竜馬を見付けると「ほら後ろに乗るが良い!」と言った 「屋敷で待っておるからな!」と謂うと走って行ってしまった 烈はアルくんの背に乗ると、兵藤は朱雀に姿を変えた メンバーは【え??ええええええ???】と叫んだ 朱雀は「早く背中に乗りやがれ!」と言った メンバーは何とか頑張って朱雀の背中に乗ると、朱雀は天高く飛び上がった 烈はアルくんに乗りその横に並ぶと「捕まってないと落ちるわよ!」と言った メンバーは朱雀の羽根に必死に捕まった 「兵藤きゅんはね、朱雀と謂う神にゃのよ!」と教えた 朱雀は「烈はさっき来た素戔嗚殿の孫に当たる聖神と謂う神だ、因みに見て解るだろうが神威は素戔嗚殿の息子になる! 大歳神と謂う神なんだよ神威は!」と教えた メンバーは言葉もなかった 烈は「兵藤きゅん、ボクね…えんちゃんにお礼言って来るから、メンバーをじぃさんの所へお願いね!」と言い飛んで行った 朱雀は素戔嗚尊の屋敷まで飛んで行った 素戔嗚尊の庭に降りると、竜馬は既に来ていて 「どうだった?朱雀の乗り心地は?」と問い掛けた ヘンリーは「何か怖かった」と呟いた デービッドは「飛ばされそうで羽根握り締めていたから感想は解らないがな!」とボヤいた 兵藤は「乗せて来てやったんだ!礼を言いやがれ!」と怒っていた メンバーは口々に「ありがとう!」と礼を言った 素戔嗚尊は「皆は馬には乗れるのか?」と問い掛けた メンバーは全員【はい、乗れます!】と返事した 「ならば人数分の馬を借りて来よう!」と言った そして馬に乗り何処かへ行くとメンバーの分の馬を調達して来た その時 閻魔が烈と共に素戔嗚尊の屋敷にやっ来た 閻魔は礼装を着ていて、どこかの国の王樣の様な容姿と威厳を兼ね備えていた 閻魔は「此方が魔界に滞在する方々ですか?」と問い掛けた 烈は「そうよ、よしなに頼むのよ!」と言った 「ならば死した後魔界で働きたいと想える位のもてなしを致しましょう!」と閻魔は言った そして烈に「烈、大とんがらは辛過ぎな気がしますが………魔界で大人気な野菜になりつつあります………で、その収益金でミネルヴァの森の奥を開拓して妖精の住む団地を建てたいと想っています!世界樹から妖精が行き来出来る様になって魔界に棲む妖精が増えたのです! なので検討するのに力を貸して下さいね!」と言った 烈は「妖精増えたにょね……ならば木を植樹して増やしてそれを加工しまくって揃えて欲しいにょよ 妖精王がくれた木の中に材木に近い木があったでしょ?それを植樹しまくるにょよ まだ金ちゃん帰らにゃいから約束の地を借りて植樹しまくるにょよ!」と提案した 「地崩れ起きたりしませんか?」 「妖精が植樹してくれるにゃら地崩れは起きないにょよ!」 「ならばクロスに頼んで植樹して貰います!」 「夏に一ヶ月掛けて来るから、その時までに木を乾かして置いて欲しいにょね!」 「鬼達に頼んでおきます!」 話がつくと閻魔は還って行った 烈はメンバーに「魔界を案内するにょよ!」と言った 素戔嗚尊は「因みに何処らへんを案内するのじゃ?」と問い掛けた 「魔界は広いからね、1日じゃ全部は無理だからこの近場を走って案内するにょよ!」 「ならばそれは儂がしてやろう、だから主は時間がないのだから畑と閻魔庁の建設を見て来るがよい!今宵は宴会じゃからな!」 祖父に謂われ烈は遣る事は山程あるから、取り敢えずメンバーと竜馬は祖父に任せてアルくんで出掛ける事にした 素戔嗚尊はメンバーに「それでは儂が魔界をあないする事にする、で朱雀はどうするのじゃ?」とと声をかけた 兵藤は「俺は烈に頼まれてるからな同行するさ!」と言った 素戔嗚尊は【R&R】のメンバーを連れて魔界を案内した 少し走ると………人とは違う種族が素戔嗚尊に声を掛ける 素戔嗚は「孫の仲間なのじゃよ!」と謂うと皆は【楽しい日々をお過ごし下さい!」と言葉を掛けた 妖精も人に近い種族も、そうでない種族も素戔嗚尊を見掛けると声を掛けて来る そんなコミュニケーションが存在する事さえ忘れてしまった世界で過ごして来たから新鮮に映った 素戔嗚尊と魔界を走る、この人……人気あるんだなってそれだけで解った 魔界と聞くと物語か何かの世界みたいでワクワクしたが、いざ魔界へ来てみると、そこは何も無い世界だった 車がなく馬が交通の手段だと謂う だが馬を走らせられるのは神だけだと素戔嗚尊は言った 身分の低い者は馬さえなく徒歩の生活だった だが買い物へ出たい者の為に、乗合馬車を走らせてくれる様になったから乗合馬車で買い物に出る様になり、買い物に出た者達で市場は常に賑わっているのだと教えてくれた 兵藤は「その乗合馬車を作ったのは聖神、謂わば烈なんだよ」と教えた 市場に出て買い物をしていると神威が親父を見つけて声を掛けた 「おぉぉ!親父殿も買い物か? 儂は烈が魔界に行っていると炎帝に聞いたからやって来たんだよ! 屋敷に行く前に今夜の宴会の買い出しに来てるんだよ!」 と魔界に来た理由を話す 素戔嗚尊は嬉しそうに顔を緩めて 「倅よ、儂は今 烈の仲間をあないしておる最中なのじゃよ!」と言った 「今夜は人数多そうだな、って事は鍋か?」 「後で猪野ワンを狩りに出るつもりじゃよ!」 「おぉぉ!なら猪野ワンじゃなく熊獣(クマケモ)でも狩ろうぜ!」 「そうじゃな!ならば熊獣(クマケモ)を狩るとするか!」 すっかり意気投合する親子の会話を遮る様に兵藤は「ちょっと!熊獣(クマケモ)って何なんだよ?」とボヤきながら聞いた 「え?熊の様な外見だけど、熊より゙もやたらと大きい獣だからクマケモと烈が呼んでるから皆知らぬうちにクマケモと呼んでおるのじゃよ まぁ猪野ワンと同じじゃよ、猪みたいなワンコみたいな獣を猪野ワンと呼んでおったからな!」 改めて聞くと烈のネーミングセンスのなさに頭痛を覚えた 素戔嗚尊は「朱雀、儂は今夜の肉を確保して参る、それ故この先のあないを頼めるか?」と謂う 兵藤は「了解しました、今夜の鍋の具材を豊富にお願いします!」と言い送り出した 良く似た親子は仲良く狩りに出る算段をつけて屋敷に還って行った 兵藤は新しく出来た武道場を案内し、魂の管理庁を案内した 魂の管理庁の職員は皆 朱雀に深々と頭を下げ声を掛ける そして魂は此処で管理され輪廻の輪に加わり人の世の母体の腹の中へ転生されるのだと教えた そして工場地区を案内し少し外れの市場と工場地区が一望出来る高台まで来て馬を止めた 「ここから見える工場地区は聖神肝入の工場が集まっているんだよ! 烈は妖精が集めた種を品種改良して何度も何度も失敗しつつも品種改良して幾つもの野菜やフルーツを生み出して来た そして出来たのが味噌や醤油 酒にワイン、挙げ句は機織り工場から繊維工場 縫製工場等も作った、んとにな魔界は何も無い世界だった 荒れて獣を乱獲して食べ尽くし、食べ物は底をつく一方だった 打開策の一環になれと、炎帝が物凄いスピードで育つ野菜を作って乱獲しなくても良い社会を作り始めた 烈はそんな母を助ける為に野菜を育てフルーツを作ったりした 今じゃ聖神なくして魔界の繁栄は否めはしない 何も無い魔界に色を付け、魔界で生きる者の貧富の差をなくした 力のない子供は山に捨てられ獣に食われても、それを罰する法律さえなかった 何処かかしこで殺人は横行し、それを取り締まる法律さえ無いも同然だった そこへ秩序と礼儀を叩き込み、少しずつ魔界を改革して来たのが烈なんだよ 烈は魔界をこよなく愛して……こよなく憎んていた 素戔嗚尊、祖父に誰よりも憧れ………一族の事を誰よりも憎んでいた………」 と思いも掛けない事を謂われ……メンバーは兵藤を見た だが兵藤は静かに続けた 「この魔界で素戔嗚尊は天魔戦争を戦った覇者として、名を馳せ英雄として君臨した 魔界で権力者として名のある絶大な一族だった 絶対的な存在、絶対的な英雄、それが素戔嗚尊が手にした栄華だった だがその栄誉と富を好き放題に使い、職権乱用し続けた素戔嗚尊の一族の奴等は、クソだった 大きな顔をして甘い蜜を貪り一族をかさに着て好き放題している奴等ばかりだった 生まれは立派な聖神だったが、血筋が立派過ぎて聖神は一族から弾かれ壮絶なイジメや嫌がらせを日々受けていたそうだ そんな聖神を支えたのがニブルヘイムだけだった日々絶望しかない世界にいた聖神だったが、唯一無二の愛する人を手にして過ごした時期もあった だがその愛する妻と子は………嫌がらせの為だけに略奪され弄ばれた…… 聖神の眼の前で妻は犯され続け、子は鎖に繋がれ飼われていた 聖神は復讐する事を心に決め、復讐の鬼と化した……… 辛かった日々に終わりを告げたかったのかも知れない 聖神の復讐は失敗して聖神は人の世に堕とされた 俺は烈が聖神だと知らなかった 聖神が人の世に堕とされたのは知っていたが………それが烈だと知ったのは烈が草薙剣を出したと聞いた時だった……… 妻と子を開放する為だけに復讐の鬼と化した聖神だったから、俺は今世も傍にいるのかと想った だから………康太に妻と子はどうしたんだ?と聞いたんだ そしたら飛鳥井にいる以上は妻と子は必ずや危険な目に遭う事だっであるから手放したと………康太は言った 以来 人の世に幾度転生しようとも宗右衛門は生涯独身を貫いた それが飛鳥井烈なんだよ、そんな生き方をしたのがお前達のリーダーなんだよ!」 兵藤の言葉にメンバーは言葉もなかった 竜馬は「この何も無い魔界で俺はギターを試行錯誤して作って演奏をしたんだ 音楽を知らない魔界の者達は、涙を流して喜んでくれたよ………… 俺も魔界へ来た時はTVもない車もない、馬で移動なんてとんでもない、と想っていた けど何の力も権力も持たない者は徒歩で移動しているのを見て、馬がある……それって許された事なんだと痛感した 俺は神とかは不死だと想っていた、けど大怪我したら助からない者も出るらしいし、人より長生き出来て少しだけ力があるだけよ、と言った烈の言葉が信じられなかった 娯楽なんて何も無いんだ……この魔界には…… でも皆必死に生きている姿には感動さえした だから皆も此処にいられる日々に何かを感じてくれたら嬉しい…………」と想いを述べた ダニエルは「で、我らがリーダーは何処にいるんだい?」と問い掛けた 兵藤は「畑か、閻魔庁の建築現場かな? 此処から近いのは閻魔庁の建築現場だから、そこを見ていなかったら畑だな!んじゃ行くとするか!」と言い走り出した 兵藤はレイモンドを走らせた レイモンドは「今回はレイは来ないのかよ?」と問い掛けた 「今回はそんなにいられねぇからな、留守番だよ!」 「ならタカシも呼んでやれよ、淋しがってるじゃねぇかよ!」 と馬がボヤいた 喋る馬………空だって飛んでたな……… でも烈のはアルパカみたいで馬じゃないんだよな? とメンバーは各々想った 兵藤は「タカシ!散歩行こうぜ!」と叫んだ するとパカパカとポニーみたいな馬が嬉しそうに走って来た 「朱雀、久し振り! 今回はレイはお留守番なの?」 「熱があったからな魔界への強行軍は無理だと踏んだんだろ?」 「そっか……でも皆と散歩出来るなら嬉しいよ!」 そう言い、一緒に走る 兵藤は閻魔庁の建築現場で止まると鬼達に 「聖神来なかった?」と尋ねた 鬼達は「さっき来ました!差し入れにデメロン貰いました! きっと畑にいます!」と嬉しそうに言った 「ありがとうな!」 と言い兵藤は畑へと馬を走らせた 畑に行くと烈はいた クロスと何やら難しい顔して話をしていた 兵藤は空き地に馬を止め烈の傍へと走った 「どうしたよ?」 兵藤が問い掛けると烈は 「新しい作物を根こそぎ盗られたにょよ!」と訴えた 兵藤は「泥棒って最近良く出るのか?」と問い掛けた クロスは「新作が出ると根こそぎやられます」と言った 烈はクロスの耳にゴニョゴニョと話すとクロスは 「え………」と言葉をなくした 「ボク、作って来るから!」 そう言い烈は奥へと入って行った 兵藤は「犯人の目星とか着いてるのかよ?」とクロスに聞いた 「さっぱり解りません………そもそもこの地区は立入禁止で閻魔樣の結界張ってありますから…」 「それを超えて来られるってどんな奴だよ」 「飛べる馬さえあれば不可能じゃないです 結界は歩いて来る獣や盗人を視野に入れてましたから…………」 「市場は閻魔庁の許可なく売れねぇんだよな? なら闇で売りさばいている奴か、自分達で食ってる奴だな………何とかしねぇとな」 とクロスと話してると烈が戻って来てクロスに種を渡した 「これを植えさせて! これを盗まれた後に全体的に結界張るから!」 「解りました………でも悔しい……」 クロスは種を妖精達に渡して植えるように言う 妖精達は種を手にして、新作スペースに種を植えた それを確認して烈は 「クロス盗まれたのは諦めるにょよ ボクらはこんな所で立ち止まっていられにゃいんだよ?」と言った 「解ってます………だけど………悔しい……」 クロスは泣いていた 兵藤はクロスを優しく手の上に置くと、涙を拭ってやった 「クロス、烈の仲間が来てくれてるんだ ほらほら、自己紹介して!」 兵藤に言われクロスは気を取り直してパタパタと羽を動かし飛ぶと 「小妖精界の王子をしてるクロスです!」と自己紹介した メンバーは妖精を目にして感激していた 畑の空を飛ぶ妖精達は虹色に輝き、とても美しかった そして眼の前の妖精はとても可愛かった ヘンリーはクロスに「宜しく王子様!僕はヘンリーだよ!」と言った メンバーはそれぞれ自己紹介した そして可愛いクロスを気に入り、撫で回していた 烈は妖精が植えた細工をした種に話し掛けていた 「早く大きくにゃるのよ! どんどん大きくにゃるのよ! ズンズン大きくにゃるのよ! ドシドシ大きくにゃるのよ!」 と囁いていた メンバーはそんな光景を見て「怖いって!!」とドン引きしていた 烈は立ち上がると傍にいたクロウとタロウにデカニンを抜かせた 烈は「ほーちゃん、デカニンあげるわ!」と叫んだ すると直ぐ様 鳳凰がやって来た 「烈、デカニンくれるの?あれ?そこにいるのは我が甥 朱雀じゃないか!」と兵藤を見付けると地に降りて甥っ子の頭をグリグリ撫でて 「元気にしてたか?ちびっ子!」と可愛がっていた が、兵藤は迷惑そうな顔をしてシッシッと手で追い払っていた 烈は「盗人が出たにょよ、ほーちゃん!新作を根こそぎよ!」と訴えた 「盗人?此処は閻魔の結界張ってあるのに?」 「空からなら入れるにょよ 天馬持ってるにゃら犯人は神かもね………嫌がらせねきっと………」 「んとにな、愚かな奴は後を絶たねぇな…… テカニンを守る為に空からの警護してやるよ!」 「頼める?ほーちゃん」 「任せとけ、でも俺は何時もこの上空を飛ぶの知ってる奴だよな? 定期的に飛ぶ時間を知られてるならズラして飛んでみるわ!」 烈はクロウとタロウに抜かせたテカニンを鳳凰に渡した 鳳凰は姿を変えると背中に乗せて貰い飛んで行った 兵藤は「ったくあの人は何時までちびっ子扱いなんだよ!」とボヤいた 「ほーちゃんに取ったら朱雀はまだ嘴の黄色い雛みたいなものにゃのよ!」 「クソジジイが!」 と兵藤がボヤくと頭上からゴツンと何かが落ちて来た 「痛てぇな!」 兵藤は頭を押さえて上を見上げると、鳳凰が旋回していた 烈は鳳凰が落とした石を拾って見た 「あ、此れカタカタ鶏の卵!」と喜んだ 鳳凰はそれを幾つも落下させた 総て兵藤に直撃する様に落としていた 「痛てぇって!クソジジイ!!」 「わっぱが!烈、それ素戔嗚殿に渡してくれ!」と言い残し今度こそ何処かへ飛んで行った 烈はクロウとタロウとでカタカタ鶏の卵を拾い籠に入れた 「んとに年寄りは態度が年々横柄になりやがる!」 「ほーちゃんはね、奥さんとの間に子供がいないからね、朱雀を我が子の様に可愛がってるにょよ 次代の朱雀を今育ててるにょほーちゃんよ! ほーちゃんの次代は………他では作りたくないって謂うから考えにゃいとなのよ………」 鳳凰は妻を愛していた 妻だけを愛していた そして我が子の様に愛馬を大切にしていた 総ては妻が気を病まない様にと妻を想っての事だった 鳳凰の妻は体が弱く子を成せば生きていられる確率は低く……… 他で作れと謂われても頑として拒み続けている鳳凰だった 「鳳凰か……俺で作れるなら番って来るんだけどな……」 「兵藤きゅん!それは母しゃんが悲しむにょよ!」 「それでもな次代は必要不可欠なれば、やるしかねぇんだよ」 「ボクの脳がもう少し安定したら鳳凰の果てを詠むわ、そしたら動いてね兵藤きゅん 犯れば終わりな訳じゃにゃいのよ 次代を育てて逝く存在は必要で子はそんな手を必要とするにょよ! まぁそれもまだ先の話だから、さぁ兵藤きゅんはデナス3つ、りゅーまとメンバーはデカブと大とんがら一つずつ持つのよ!」 烈が言うとクロウとタロウはデナスを兵藤の馬に結んだ クロウが「3つは厳しい!レイモンドが可哀相だよ!」と謂うからメンバーの馬に一つずつ括り付けた 烈はデメロンをアルくんに括り付け 「クロウとタロウは天馬下賜されたんだよね? ならその馬にデカチゴと大とんがら括り付けて、じぃさんの家に持って来てね!」と謂うとアルくんに乗った アルくんは重そうに空を飛び素戔嗚尊の屋敷に向かった 兵藤は「なら俺等も行くぞ!」と謂うとサムエルが「これ何ですか?野菜にしては大き過ぎやしませんか?」とボヤいた 「これは烈とクロスが作ってる野菜とフルーツなんだよ、多少大きいのは仕方がないんだよ 魔界の、って謂うか二人が作る野菜はデカいんだよ、だが何度も何度も味見して甘さが旅に出たフルーツを食べて改良して作られたモノなんだよ」 そんな事謂われれば大きいからって文句は言えなくなった 皆で何とか素戔嗚尊の屋敷まで飛んで、更に馬から野菜を離す時がまた一苦労だった 重いのだ、とてつもなく重くて野菜の重さじゃなかった クロウとタロウが手伝い馬から下ろして運び込み庭から縁側に座る ヘロヘロなメンバーは皆 縁側で伸びていた 素戔嗚尊はデメロンを切り分けて、お盆の上に乗せて持って行くとメンバーの前に置いた 甘い美味しい匂いにメンバーは起き上がった メンバーは木で作られたフルーツを刺すモノを手にすると切り分けられたデメロンをお口に放り込んだ メンバーは口の中に入れたデメロンの美味しさに 「甘くて美味しい!」と感激して言った 烈は素戔嗚尊に「猪野ワンで作った敷布どう?」と問い掛けた 烈は猪野ワンの皮を処理して干して乾かしたモノをパッチワークみたいに組み合わせ縫って行ったモノを祖父の布団の敷布にしたのだった 宇迦之御魂神にも同じくプレゼントして喜んで貰った 「烈、ぬくぬくで布団から出たくない程じゃよ! ありがとうな烈、儂は祖父孝行してくれる烈の想いが嬉しくて堪らぬのじゃよ!」 と烈を抱き締めていた そんな感動的な光景だが大歳神が「親父、早く動きやがれ!」と邪魔をした 「解っておるわい!んとに倅は……」 「おい、烈!この皮はどうするのよ?」 「頭を切り離さにゃいでね えんちゃんとこのソファーの敷物にするからね!」 「なら2匹いるから儂の部屋にも欲しい! 親父殿の部屋だけ猪野ワンの敷布だなんてズルい!」 「ならとぅしゃんの部屋の敷物にするわね」 大歳神は「やったー!」と喜ぶと、慣れた手つきで熊獣を全部切り離さない様に解体を始めた 宇迦之御魂神が毛皮の処理をして行く 宇迦之御魂神は「私の部屋にも猪野ワンの敷物があるのですよ!」と笑って謂う 大歳神は「あ!ズルい!」と怒っていた 楽しくワイワイと話をしながら夕餉を作っていく メンバーは縁側に座り「何か1日が長いな………」と呟いた 烈は「当たり前じゃない、魔界の一日は人の世の2日に相当するにょよ 僕が半月魔界にいたなら人の世のボクは一ヶ月留守にしちゃうにょよ!」と説明した 竜馬はギターを素戔嗚尊に渡して貰うと、ポロンと音源を調節して弾き始めた 適当に演奏を始めると、アルくんとタカシとアレクとレイモンドが曲に合わせて歌を歌っていた メンバーは歌を歌う馬に驚きつつも、楽しそうにしていた 西陽か縁側を染めると、あっちこっちから夕餉の匂いが漂って来る 懐かしい光景だった ヘンリー程大きな屋敷に住んでないメンバーは、遥か昔を思い浮かべて懐かしがっていた 何処かイギリスの田舎町にも似たガス灯の明るさに………センチな気分になる 夕餉の前に閻魔がやって来て烈に 「畑の件、聞きました!」と深刻な顔をして言って来た 「えんちゃん………変わりゆく魔界に神として独占して権力を握れないから不満を抱いている奴等は多いにょよ!」 「…………どう手を打ちますか?」 「それね困ってるにょよ、取り敢えずトラップ張っておいたから食べた奴等は死ぬ程お腹痛くにゃるかもね………」 「え………それは?」 「まぁ食べなきゃ良いにょよ! 早く育つ様に言い聞かせておいたから、今夜には大きくにゃるのよ!」 メンバーはそれを聞き、あの呪文は…………効果あるの?と驚いていた 閻魔は「だけど食べたら…………死ぬ程お腹が痛くなると謂うのですか?その仕組みは?教えては下さらないのですか?」と問い掛けた 「えんちゃんは体内に寄生する寄生虫って知ってる?」 「え!!!そんなのあるのですか?」 「あるにょよ!人の世で謂えば冬虫夏草に良く似た菌類とか動物とか他の食物に寄生して育つ そんな虫と言うか、菌類と言うか、植物と言うか、良く解らないけど、猪野ワンのお腹の中にもいたにょよ! それをうーちゃんが捕獲してくれててたから植物に近付けたら寄生を始めたにょよ それをね森の奥深くで土に結界張って集めて生態を研究しているにょよ! で頭に来たから種に仕込ませて育つ様に言ったにょよ、多分今夜大きくなったのも盗まれるからね そしたらどんな風になるか?調べようと想っているにょよ! あ、腹痛くてえんちゃんに訴えた奴が犯人だから、そしたらじいさん呼んでね 腹かっさばいて取り出してくれるから!」 「…………ええええええ!腹かっさばかないと出ないのですか?」 「そうよ、じいさんは慣れてるから、やってくれるわ! うーちゃんは縫うの慣れてるから縫ってくれるわ で捕獲した寄生虫はクロウが森の奥深くの土の中に戻してくれるからね!」 何かそれを想像して閻魔は気分が悪くなって来た 「聖神………結構エグい事しますね………」 「え?エグい??どうしよう、母しゃんに、いや父しゃんに怒られるかしら?」 と烈は心配した 両親に怒られるのは嫌なお子様だった 「お尻ペンペンするからな父しゃん………」 の烈は泣きそうになり言う 兵藤は「大丈夫だ、烈!相手が盗むから悪いんだ、少し位お仕置きしても怒らねぇって!」と慰めた 「そうかにゃ……」 不安げに言う烈を大歳神は抱き上げて 「倅よ、どうしたよ?さぁ夕飯だ!食うぞ!」 「クロウ、タロウ、酒蔵でお酒持って来てね!」 烈が言うとクロウとタロウは天馬に乗り酒蔵と急いだ そこへ建御雷神と天照大御神がやって来た ニコニコと烈を抱き締めて可愛がり………メンバーに気付き「どなたじゃ?」と問い掛けた 閻魔は「烈と竜馬の仲間達に御座います!」と紹介した メンバーは美しい天照大御神に微笑まれドキドキしていた 一人一人自己紹介をして天照大御神は一人一人の頭を無てて歓迎した 宴会が始まると烈は鍋の汁物を縁側に置いた そしてクロウとタロウが持って来たお酒をお皿に入れ縁側に置くと、妖精が集まって来ていた 寝ていたクロスも起き上がり宴会に加わった 竜馬はギターを弾いてメンバーと歌を歌った 竜馬が適当に弾く曲に合わせて歌う時もあれば、メンバーがリクエストして弾いて貰う時もあった 楽しくお酒を飲み歌を歌う 楽しい一時だった 宴会を終え片付けると、布団を敷いた メンバーはそこで雑魚寝する事にするになった 烈と竜馬は烈の部屋で寝る事にした 大歳神も自分の部屋で寝る事にして部屋に引き上げた メンバーは疲れていたのか?布団に横になると眠りに落ちていた 朝早く 烈はメンバーを湯殿に誘った 温泉が湧き出て冷たい水が注がれ、丁度良い温度になっている温泉に入る 旅館の大浴場ばりの大きな風呂にメンバーは喜び、体を流すと湯船に入った 烈は「どうだった?魔界は?何も無い所でしょ?」と問い掛けた フレディは「魔界って聞いた時、物凄い異世界なんだと僕は想像したんだ………だけどいざ此処へ来たら何もなくて驚いた 移動手段が馬だなんて………と想っていたら貴史が馬にも乗れない存在もいると教えてくれた 夢の様な世界じゃなく現実で生きている世界なんだと想った でもリーダーが死した後 この世界に来るならば………僕も閻魔様に売り込んでこの地に来たいなと想った!」 ヘンリーも「だね、描いていた世界とは大幅に違うけど……忘れていた世界があったよ 皆が声を掛けてくれ………こんな優しい世界もあったんだと今更ながらに想った 僕も閻魔様に売り込んで、死した後は此処でリーダーと共に行きたいと想った」 サムエルは「人型も鬼型もそうでない型の者達も一緒に過ごしている所は凄くびっくりしたよ でも懐かしい想いが心占めた……僕も閻魔様に売り込む事にするよ! 取り敢えず今夜 皆を広めに集めて演奏会するよ」 ダニエルも「僕の祖父母の田舎に似てて何だか涙が出ちゃったよ………そして死した後を考えるなら、僕もリーダーの傍にいたい それを今夜売り込むから待っててね烈!」 イーサンも「人の思いは種族を超えて感じられるって……想ったら僕等はどこへ行ってもリーダーや仲間さえいれば大丈夫だって想えたよ!  僕も頑張って売り込むから見ててねリーダー!」 デービッドも「僕は弁護士資格あるし死した後も役に立てると売り込むつもりだよ! リーダー、死しても共に新しい事にチャレンジしてこの魔界の住民を楽しませようじゃないの! って事で売り込んで売り込んで売り込みまくる!それしかないねん!」 とメンバーは各々の思いを語った 烈は「明日の昼には帰るわよ、人の世は4日半過ぎてるからね、還ったら大忙しにゃのよ!」と発破をかけた 皆で洗い場に一列に腰を掛け体を洗いあい、朝から楽しげな声が響いていた 竜馬はクロスをお風呂に入れて洗ってやっていた 洗った後にお湯に浸かるクロスにメンバーはメロメロだった 「ズルい竜馬だけ洗うなんて」とボヤいたが、竜馬は知らん顔して烈を洗っていた 泡をお湯で流してお風呂に入り浸かる 何だか優雅な時間を送れてメンバーも烈も竜馬も満足だった お風呂から出ると朝が出来ていて、朝を食べる 食べ終わると片付けを手伝う 此処は湯沸かし器もないから、洗い場に食器を持って行って洗う スポンジも洗剤もないから、スポンジの変わりに毛糸に近いモクモク玉から糸を紡いで編んでスポンジ代わりのモノで洗う すすぎはまたお水を汲んですすぐ お手伝いして片付けてくれるメンバーを素戔嗚尊は頭を撫で「ありがとう!」と礼を言った メンバーはすっかり素戔嗚尊が大好きになった しかしよく見ると大歳神に良く似ていた 烈が並べば確かに遺伝が良く解る容姿だった 大歳神はメンバーに「楽器になりそうなの探すんだろ?午前中にやらねぇと夜までにマスター出来ねぇからな!手伝ってやるから探すぞ!」と言った メンバーは大歳神と共に出掛ける事にした 兵藤と竜馬は心配して着いて行く事にした 烈はクロスと共に畑へ出掛けた アルくんに乗って畑に行くと、クロスは慌てて畑に飛んて行った そして昨夜植えたのが根こそぎ盗られているのを見つけて慌てて 「烈!昨日植えたのが根こそぎ盗られています!」と訴えた 烈は「クロス、結界張るからね、今度からは入口一つに成るから不便だけど辛抱してね! 空を飛ぶ妖精達も影響出るかもだから連絡しといてね!」と言った 「大丈夫です烈、盗まれるならば出入り口一つになったとしても………その方が良い…… 皆にも連絡しておきます!」と泣きながら訴えた そして傍にいる妖精に畑近くの空は飛ばない様に!と注意を伝えた 伝えられた妖精は皆に知らせる為に飛んて行った 烈はアルくんに乗ると天高く駆け上がった そしてサコッシュの中から釘を取り出すと呪文を唱えた その釘は閻魔庁の建設が邪魔されない様に結界を張ろうと作っていたモノだが、畑の結界を優先にした 帰るまでに閻魔庁の方の結界を強化する為に釘を作らねばならないが、今は畑を最優先させようと想った 烈は【R&R】のマンションの時に張った結界の様に呪文を唱え手にした釘を天高く放り投げた 釘はピシッと投げられた所で静止しビリビリと稲妻を纏って光っていた 烈はかなり長い間呪文を詠唱していたが、詠唱を終えると空を仰いだ 「創造神よ、今此処に誓約の地の絆を結ぶ事を約束する!」 そう謂うと烈は右手の人差し指を噛み切り、流れ出す血を大地に垂らした 「素戔嗚尊が孫 聖神の名において此地は約束された以外の者の侵入を阻み、不法に侵入してくる者の排除を此処にお願い致します!」 "聖神よ、その約束しかと聞き届けよう! その地は聖約の地なれば許可なく侵入を試みようとする者は無間地獄へ落としてやる事にする それでよいか?聖神よ" 「はい、それで良いです! 私の願いを聞き届けて下さり有り難き幸せに御座います!」 "魔界の更なる発展を見守ろう お前は引き続き魔界の発展に尽力するかよい" そう言い、創造神の声は消えた 結界を張り終えると烈はクロスの所へと降りた 「もう大丈びよ!クロス!」 「烈!手の傷、血が酷いよ!なにか縛るのないかしら?」 クロスは慌てるがアルくんが「素戔嗚殿の所へ連れて行く!」と言い走り出した その間も烈の血はポタポタと滴り落ち、アルくんは泣きながら走った 「アレク、レイモンド助けて!」 とアルくんは泣きながら兄弟馬に助けを求めた アルくんの声を聞きレイモンドとアレクは兵藤と竜馬を乗せたまま走って来た 兵藤と竜馬は鼻水と涙を垂らしながら走るアルくんを見付けると駆け寄った そして血を流して意識も朦朧としている烈を見付けると、慌てて駆け寄った 兵藤は「おい烈!どうしたんだよ!」と言うと、ハンカチを取り出すと血を流している手を取り縛った 烈は「大丈びよ兵藤きゅん……」と言った 竜馬は烈を抱き上げると素戔嗚尊の屋敷まで走った たまたま屋敷にいた素戔嗚尊は烈の姿を見ると慌てて近寄り 「どうしたのじゃ?烈!」と慌てた 「じぃさん大丈びよ、聖約の地の契約に血を使ったにょよ、そしたら止まらにゃくて………」 庭に植えてあるハーブを手にすると素戔嗚尊は烈の手にその葉っぱを貼った 「押さえておるのじゃ! それは烈が品種改良して植えた止血草じゃから血は止まるじゃろ! 血を流したから増血剤に相当する実があるから、それを取って参る!」 「それって何処にあるのよ?」と兵藤は問い掛けた 「わしの敷地にある故待っておれ!」 そう言い素戔嗚尊は庭になってる果実を手にすると、擦り下ろして種を取り除くと烈に飲ませた 「これは大量生産が出来ぬ果実なのじゃよ 大量生産が出来ぬ果実やハーブは儂の庭や敷地に植えて管理しているのじゃよ この果実は栄養価が高くて増血剤に匹敵するらしいからな烈に飲ませるのじゃよ!」 味は相当悪いのか………烈は不味そうにそれを飲んでいた 「品種改良は必要ね………これは美味しくなさ過ぎにゃのよ!」とボヤいた 少し顔色が戻ると烈は「あ!!」と思い出した様に叫んだ 「釘………宙に静止させていたわ………」 と言うと慌てて行こうとした 素戔嗚尊は「それは遠隔では落とせぬのか?」と問い掛けた 「妖精いたにゃら巻き込まれちゃうにょよ」 烈がそう謂うと兵藤が 「なら俺が朱雀になってひとっ飛びして退避させてやるよ!」と言った 庭に出ると兵藤は朱雀になり飛び立って行った 暫く経つとクロウが「朱雀様が大丈夫との事です!」と伝言を仰せ付かって飛んで来た 烈は天空に静止させ他ままの釘を畑の特異点に落とした 朱雀は畑が結界を張られるのをその目で見届けて素戔嗚尊の敷地に戻った その背にはクロスを乗せていた クロスは烈を見付けると飛んで来た 「大丈夫なのですか?烈!」と泣いていた 「大丈びよクロス あのねクロス、やはりじぃさんの裏庭に植えた実の改良するわよ! 血を沢山流した者も今後出るかもだからその実を保管する保管庫も必要にゃのよ 多少血を流したとしても、あの実を食べれば何とかなるなら改良は必要ね!」 「解りました、なら横に出た新芽を摘んで畑で増やして改良する事にします!」 今後の話をしているとメンバーがやって来て、それぞれの楽器を手にして音を奏でられるられる様に改良をしていた 素戔嗚尊は止血草を外し血か止まったのを確認すると、包帯の様な布を烈の手に巻き付けた 大歳神は「どうしたのじゃ?手?」と問い掛けた 烈は畑に泥棒が入ったから警戒の為に念には念を押して自分の血を使って呪文を唱えたと話した 勢いよく犬歯で肉を裂いてしまったのが原因だった 大歳神は「本当に何度も何度も篩に掛けて選別しても腐った奴はいなくならねぇな! だから儂は神なんて大嫌いなのじゃよ!」とボヤいた 兵藤は「そう謂う大歳神も神ですがな……」と言う 「儂は豊穣の神故、己の利益など求めてはおらぬ 私利私欲に走るは愚か者のやる事じゃからな! まぁ儂も神じゃが儂は親父殿と倅が元気でいてくれるならば、それでよいのじゃ! それが…………今は………冥土へ渡ってしまった妻への愛だと信じておるからな!」 大歳神の妻が冥土へ渡った…………事なんて知らなかった兵藤は驚いた顔で大歳神を見た そして「済まなかった………それは俺は知らなかったから…………」と謝罪した 大歳神は笑い飛ばし 「妻は倭の国を護る為に……その命と引き換えに冥土へ渡る事となったが、儂も妻も悔いてなどおらぬ!儂だとて倭の国の為ならばその命と引き換えになろうとも完遂するであろうからな! この命は己の為だけに非ず、妻が愛した我が子を護り、妻が愛した倭の国の為に在ると想っておるからな 妻は生前ずっと親父殿の魔界へ行けばいいのに………と申しておった………妻の願いは親父殿と倅の無事だけじゃった だから儂は今………親父殿と倅を護る為におるのじゃよ!」 皆 言葉もなかった が大歳神はそれを笑い飛ばし 「盗人が腹が痛くなって閻魔の元へ行ったならば、親父殿が腹を掻っ捌く、儂は寄生虫を掴んで籠に入れてやるさ! そしたら宇迦之御魂神が縫うんだろ? 何か最強じゃねぇかよ! それ皆が見てる前でやろうじゃねぇかよ!」 悪代官バリに嗤う大歳神に兵藤は、何も言っちゃいけない気になった 願わくば………明日の昼まで腹が痛くならないでくれ………と想った メンバーは恐ろしい会話がなされる中、必死に自分の楽器を調整していた そしてある程度音が整うと皆で音を合わせた 初めて音が奏でる響きに、メンバーは自分達が一から作り出した音だと感動していた 閻魔がやって来て 「伝令鳥に今夜 演奏会かあると放送を流しました、今夜広間に魔族の者が集まります!」と知らせに来た 「えんちゃん ありがとうね!」 「烈、手を怪我したんですって? 血を流した烈を乗せてアルくんが飛んでるのを目撃した者達が心配して私の所に様子を聞きに来ました、大丈夫なのですか?」 「大丈びよ、腕に縒りをかけて聖約の地の契約を自分の血で二重結界とを掛け聖約を交わしたからね、血が少し足らにゃくなっただけよ!」 「魔界は変革期に突入しました………そんな時必ずや私利私欲を主張する者が現れ己の権利を主張するのです………今回もそれでしょう……」 烈は嗤うと宗右衛門の声で 「何時の世も己の利権を主張する者は後は断たぬ 飛鳥井も幾度も幾度も篩に掛けて、正しても百年経てば前の転生の時よりも悪くなっていたりした 魔界だとてそれと変わりはせぬよ! 幾度も幾度も篩に掛けて、選別しても変わりはせぬ!だが我等には残された時間は多くはない 飛鳥井だとて100年経つ前には途絶えると出ておる……我らは無力で………我らは全知全能の力を手に入れた神ではない! そんな我等はちまちまと日々正して行くしかないのじゃよ! たが今は……時間が足らぬ故強行手段取るしかない 閻魔よ近い内に魔界は今後更に荒れると想われよ 近い内に金龍を魔界に戻す事にする だから………儂が授けたプログラムを始動されよ 今後はノンストップで叩き上げラグナロクの戦士に匹敵すべき戦士を育てられよ!」 閻魔は深々と頭を下げると 「解りました、直ちにプログラムを始動致します!」と言った アジア圏の魔界は倭の国よりも広く広大な敷地を要す その半分が地獄として死した後に罪人に罪を償わせ矯正させる為に使われていた そして後の半分を魔界として閻魔庁で働く役人や雑務を行う一般の者と区分し神々が管理していた 神々は特権階級ばりの待遇で魔界に住み着き今に至る 何処から神々の特権階級が出来たのかは?定かではないが…………… 神と言うだけで胡座をかいていた神々が多過ぎたのだ それもこれも………この蒼い地球(ほし)が無くなったら………全てが終わる話となる タイムリミットは5年……… 5年の後に変わらねば………この地球(ほし)は跡形もなく消えてしまうのだ……… 人類は滅亡して……地球(ほし)も消える そうさせない為に日々努力する 前を見据えて 決して違えず逝くしかないのだ……… 烈は笑って閻魔の手を取ると 「今宵は総てを忘れて歌に酔うにょよ!」と言った 閻魔も笑って「それは楽しみです!」と果てを見て言葉にした

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