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第57話 愛は深く 想いは強く ❸
日が沈むと当たりは暗くなり街頭が辺りを照らした
広間には沢山の魔族が集まっていた
その場に来れない者の為に伝令鳥が音楽を伝える事になっていた
時間になり【R&R】のメンバーは演奏を始めた
慣れない楽器を一生懸命に鳴らし音を奏でる
メンバーは新鮮な想いで音を奏でていた
烈はクロスと共に前で歌を聞いていた
アルくんとタカシとアレクとレイモンドも端っこの方で音楽を聞いていた
演奏する曲は決めてはいなかった
だが竜馬が奏でるギターの音に、メンバーは色を付け奏でた
どんな風に彩りを付けたいか
メンバーだから、それが解る
一緒に過ごした日々が自分達を強くして、絆を深めたのだ
どう奏でたいか?
この先はどうしたいか?
メンバーは自分達の音を重ねて逝く
メンバーは楽しくて仕方がなかった
初めて【R&R】として演奏をした日を思い浮かべる
自分達の映像に音を付けてイメージを膨らませ、皆に伝えるメッセージだった
あぁ……今……この想いを伝えたい
こんなに幸せで楽しくて一つになれる絆を感じて
メンバーは泣いていた
泣きながら演奏していた
10曲演奏して、その日の演奏は終わった
皆 盛大な拍手を贈った
泣きながら「ありがとう!」と言って貰った
この日を絶対に忘れない
種族を超えて…………泣いてくれた者達を忘れない
メンバーは烈に抱き着いて泣いた
竜馬も泣いていた
メンバーは閻魔を見付けると「死した後は魔界に来たい、絶対に役に立つから越させてくれ!」と頼んだ
閻魔は「死した後も気が変わらないのならば、魔界へお越し下さい、そしたら定期的に演奏会を開いて貰えるし、音楽の先生になって貰えます!
デービッドは弁護士資格もあるそうなので、青龍と大歳神と共に切磋琢磨して貰えそうですね!」と嬉しそうに好意的な言葉を紡いだ
感動冷めやらぬ想いで素戔嗚尊の屋敷に行く
竜馬は歌を歌う馬達の為にギターを奏でた
それに合わせてメンバーも歌を歌っていた
夕飯を食べてお風呂に入り、雑魚寝して魔界の最後の夜を満喫して眠りに落ちた
とても幸せな想いに包まれメンバー達はまだ眠っていた
烈は起き上がるとキッチンに向かった
「じぃさん おはようにゃのよ」
素戔嗚尊は振り返ると目尻を下げて
「烈、まだ寝ててよいのだぞ?」と言った
「じぃさん 耐えきれず倒れた神がそろそろ来るから対処お願いね!」
「あぁ解っておる、心配せずとも全てはお前の思いの儘に完遂してやるから安心するのじゃ!」
「じぃさん………そろそろ創造神から閻魔と炎帝に粛清が必要うんぬんの話があると謂う話をすると想うにょよ………
魔界も天界同様………更地にして、天地創造 開闢の書……とまでは逝かなくともそれに近いテコ入れをせねばならないって話があるにょよ………」
「それは……それ程に魔界は腐り切ってしまったと謂う事なのか?」
「乱世の世に待った無しで突入するにゃら…………神々が不平不満を謂う時間すらないのよ
正しき道に逝けにゃい神ならば粛清されて【無】に還される………
そしてそれをせねばならないのは………えんちゃんとなるのよ………
だから炎帝は閻魔の傍に来てそれを支えねばならなくにゃるのよ………
それ程に魔界は変わらねばならない【時】が来てるって事にゃのよ!」
素戔嗚尊は黙って孫の話を聞いていた
そして一言「承知した……」と言った
変わりゆく魔界
活気付いて行く魔界
正しき道にと行こうとする者達に溢れ
ルールが出来つつある世界に一石を投じ様と荒事を招き続ける愚か者がいる事は確かな現実だった
宗右衛門は祖父に思いの丈を話した
「何時の世も愚か者は愚かな事しかせぬ
愚か過ぎてこっちは何故此処まで莫迦な事をするのか?想像すら出来ぬ事もある
幼稚で稚拙で嫌がらせの範疇を超えた愚か者ならば腐る程に見て参った……
まさか魔界で【神】と名乗るべき者の所業でそんな愚か者の行為を見るとは夢にも想いはせなんだがな!」
と皮肉を込めて謂う
素戔嗚尊はそんな辛い道を敢えて逝く孫を抱き締めて
「主が逝くべき道が曲がらぬ様に儂が照らし続けよう………だから主は信じた道を逝くのじゃ!」と言った
「じぃさん………」
烈は祖父に抱き着いた
そこへ大歳神が起きて来て「倅よ、父もいる事を忘れるでないぞ!」と言った
「とぅしゃん………」
「ほらほら、昼前には帰らねぇとならねぇんだ!
儂は後一晩遺る事にした、腹を掻っ捌かねぇとならねぇからな!
それよりも……お前……宇迦之御魂神にオペ用の針を渡したのかよ?
アイツ………それを研ぎながら嗤っていやがったぜ!渡すなよ、んな危険なのを、よぉ!」
素戔嗚尊は笑って烈を離すと、朝の準備の続きをした
朝が出来上がる頃 皆は起きて来て朝食を食べた
そしてラストに皆で風呂に入り身支度を整えると
「それじゃ還るわね!
とぅしゃん、腹痛くなって来たのを頼むわね!」と言った
大歳神は「任せとけ!シュミレーションは立ててあるから、サクサク片付けて儂も帰還する事にするぜ!」と言った
素戔嗚尊は「閻魔殿には逢わずに還るのか?」と問い掛けた
「えんちゃんにはもう話がしてあるから、このまま還るにょよ!」
「そうか、気を付けて還るのじゃぞ!」
「解ってるにょよ!
此処から神の道を開いて還る事にするわ!」
何時も崑崙山の方に出るのは畑を先に見るつもりで崑崙山の方に出ていた
還るだけなら磁場の安定した素戔嗚尊の庭からの方が帰還には適していた
だから烈はメンバーや竜馬や兵藤と共に庭に出ると神の道を開き還る事にしたのだった
「ならね、じぃさん、とぅしゃん!」
烈は神の道を開き、皆と共に還って行った
素戔嗚尊は孫の姿が消えると、包丁を研ぎに向かった
大歳神は寄生虫を閉じ込めれる程に頑丈な籠を作ったから、その確認に行き
宇迦之御魂神は手術針を研いで嗤っていた
「糸は錦糸の最高級を使いましょうか!」
と、思案して呟いた
宇迦之御魂神はつい最近まで密かに久遠の所へ修行に行き、応急処置程度の技術を教えて貰いに行っていたのだった
特別に軽い傷ならば縫える様に伝授して貰い帰還して来たのだった
準備は万端!
さぁ何時でも来るか良い!
素戔嗚尊と子息二人は迎え撃つ………嫌、治療する為に待ち構えていた
大歳神は「腕が鳴るぜ!」とポキポキ指を鳴らしていた
素戔嗚尊は「久々の小刀故、手元が狂わぬ様にせねばな!」と怪しい発言をしていた
宇迦之御魂神は「うっかりは我等の責任ではありまぬよ!父者!」と嗤っていた
似た者親子は今日も快調で烈の想いを完遂すべく動くのだった
神の道へ入った烈達は、神の道に入るなりフードを被った骸骨に真摯に謝罪された
「心底無礼を働いた
朱雀神までいたのに見落として……即座に消し去られても仕方ない事をした!
本当に申し訳なかった!
我等は聖神にしか謝罪すらしてなかった
朱雀殿への謝罪はなかった
本当に済まなかった、許して下され朱雀殿!」
そう言い骸骨達は整列して深々と頭を下げた
朱雀は「まぁ還る時間をサービスしてくれるならば、大事にするつもりはねぇよ!」と言った
フードを被った骸骨は
「我等の謝罪の想いを受け入れてくださり本当に感謝する!」と姿勢を正し
「それでは半日はロスタイムが出るが最大限のサービスをさせて戴く!」と言い呪文を唱えた
神の道を護るべき守護達に、詫びを入れられ今回だけの出血大サービスを受けたのだった
メンバーは礼儀正しい骸骨に……もぉ気を失っても良いレベルだよな?と想っていた
そんな想いをしてやっとの想いでメンバー達は【R&R】のマンションの庭に出た
メンバー達は「え??何でマンションの中庭に?」と驚いた
兵藤は「飛鳥井の屋上は施錠されてるからな
それを開けてくれと頼む方が迷惑だから烈が願ったんだろ?」と説明した
烈は「半日のロスタイムって言ってたからね……昼が夜になってると想ったにょよ!」と言った
魔界へ行ったのは昼近く
出血大サービスを受けて戻った時、辺りは暗かった
マンションの中に入り日付入りの時計を見ると
日付は魔界へ行った日の翌日
時計は午前2時だった
ロスタイムは半日
物凄い出血大サービスだと想った
竜馬は「取り敢えず寝ようぜ!烈も今夜は泊まって逝くしかねぇだろ?」と言った
「そうね、なら寝るのよ!りゅーま!」
そう言い烈の部屋に行き竜馬と共にベッドにダイブした
「烈、歯磨きは?」
「眠いにょよ…明日でも良くにゃい?」
「ならこのまま寝るか!」
烈と竜馬は一緒の部屋に寝て入るが、ベッドはツインでそれぞれ別々のベッドで寝ていた
寝相の悪い烈の寝相を警戒しての事だが、それでも時々真横に寝る時があるから被害は出るのだ
その日の烈は相当疲れているのか?
寝返りする事なく眠りに落ちていた
烈の想いはイベントの成功、それだけだった
朝 起きると烈はケントを呼んで飛鳥井の家に帰った
竜馬はまだ寝ていた
兵藤もゲストルームで寝ていた筈だ
起きているのか?さえ解らない
それでも烈はやらねばならない事があるから、起きてケントを呼び出して飛鳥井の家に帰ったのだった
飛鳥井の家に還ると烈はまずは自分の部屋に向かった
すると自分のベッドに虎之助と共にレイが寝ていて、烈は寝ているレイに「ただいまレイたん!」と声を掛けた
するとレイはパチッと目を開けてニコッと笑って烈に飛び付いた
「おかえり れちゅ!」
「いい子にしてた?」
「してた!」
烈はレイの頭を撫でた
そして一緒に洗面所に行き歯を磨き顔を洗うと、屋上へ向かった
屋上には流生がいて花に水をやっていた
流生は烈の姿を見て「お帰り烈!」と抱き締めた
「ただいま りゅーにー!」
「長く留守になるかと想っていたよ!」
「何かね出血大サービスして貰ったからね
早く帰れたにょよ!」
「ならば本格的に動くの?」
「そうね、半日会社へ行き、半日は【R&R】になるわね!」
「なら大変になるわね
僕達は烈のサポートするからね!」
「新入社員入って来たからね、目を光らせてにゃいとね
施工の方も逝かないとにゃのよ!」
花に水をやりながら、そんな他愛もない事を話す
朝の大切な時間だった
花に水をやると烈とレイはそれぞれの部屋に戻り、掃除を始める
洗濯ネットに洗濯物を入れ、洗濯室に持って行き掃除道具を持って部屋へと向かう
烈の部屋は畳だから埃を取る為に掃除機は使うが基本拭き掃除だった
虎之助も雑巾をキュキュと前足で動かし掃除をする
綺麗好きな猫だった
掃除が終わると朝食を食べに向かう
烈が朝食を食べていると榊原が掃除の為にキッチンに来て「え?烈???もぉ戻って来たのですか?」と呟いた
「父しゃん おはようにゃのよ!」
「早く還ったのですか?」
烈は出血大サービスされて半日ロスタイムだけで帰れた事を伝えた
榊原は烈の帰還に忙しくなる日々を想像していた
総てが動き出すのだ
「母しゃんは?」
「呼び出しがあったので……出かけています」
榊原はそれだけ言った
烈は呼び出したのが誰なのか何処へ行ったのか?解っていて………何も言わなかった
動き出すのだ
運命の歯車が加速して動き出すのだ
早めた時間が軋み悲鳴を上げて動き回る
総てが正しい道に矯正され………この地球(ほし)が果てへと繋がれる為に篩に掛けるのだ
この日烈は朝から精力的に動いていた
会社に何時もの様に出勤して社内を見回り社員と話をしながら様子を伺う
不穏分子は早々に間引かねば、移るからだ
特に中途入社の社員はプライドが高く、トラブルの種になりやすいからだ
社内を視察しながら上へと上がる
社員食堂へ行き蔵持和華子と話をして、今度ゆっくりお茶しようね、と約束を取り付け宗右衛門の部屋へと向かう
宗右衛門の部屋に入るとイギリスの鳳城優花里に電話を入れた
優花里は電話を取るなり『飛行機飛ばねぇなら倭の国行くからな!部屋を用意しろ!私をもてなせ!』と早口で要求を突き付けた
「優花里、来てくれるにょ?
部屋なら幾らでも母しゃんが用意してくれるにょよ!もてなすのも何時でももてなすにょよ!
そしてレッスン場所も何時でも大丈びにゃのよ!」
『ならば即座にチケット取ってくれ!すぐにでも出国する!
羽田に着いたら電話するから迎えに来いよ!』
そう言い優花里は電話を切った
烈はオリヴァーにラインして
「優花里が倭の国に来ると謂うにょよ!
出来るだけ早い倭の国へ行く飛行機のチケットをお願いね
チケットはオリヴァーが取るからとラインしておくからね!」と頼んだ
オリヴァーは『了解、優花里に連絡して出来るだけ早くチケット取って渡せる様にするね!』と約束してラインを返してくれた
烈は優花里にオリヴァーに頼んだからね、とラインを送ると立ち上がり宗右衛門の部屋を出て、副社長室へ向かった
かなり低い位置でノックされ榊原はドアを開けた
「烈、どうしました?」
「母しゃんは?」
「ソファーで寝てます
昨夜 閻魔から呼び出しがあり魔界へ行っていたので寝てないのです!
僕は一足先に還りましたが、康太は先程帰還したばかりですからね……」
「なら出直すわね………」
「出直さなくて大丈夫です!
父が聞きますから!」
と榊原は烈を真贋の部屋に連れて行きソファーに座らせた
そして自分もソファーに座ると
「では話を聞きます!」と言った
烈は鳳城優花里が来日して来る事を伝えた
チケットさえ取れれば即座に来てレッスンする事を伝えた
「康太から聞いてるので大丈夫です!
何時来られても大丈夫な様に康太は手配してくれてますからね!
そしてスタジアムも6月と7月はスケジュールを入れずに確保してくれてます!
準備が整い次第烈の思い通りに動かせる様にしてあります、なので心配は無用です!」
烈は父を見上げ言いにくそうに
「ねぇ父しゃん………」と言った
榊原は何だろ?と想いつつ
「なんですか?烈?」と問い返すが烈は
「………良いわ……」と何かを言いかけて止めて、立ち上がろうとした
榊原はそんな烈を止めて「父には話せませんか?」と問い掛けた
「そうじゃにゃいの………総てが動き出すにょは………聖鳥朱鷺が戻らにゃいと不可能だと言いたかったにょよ………」
「朱鷺?素戔嗚殿の所にいるのですよね?
戻らないとって………何処かへ行ってるのですか?」
「朱鷺は冥府に逝っているにょよ!
ボクが天界へ逝く少し前から冥府に渡り皇帝閻魔と共に時空軸の歪みを直しているにょよ
それが直らにゃいと、動き出せにゃいのよ!
ボクの魂が漂っていた冥府の闇は………本来在ってはならない場所なのよ
闇が漏れ出して歪な異次元を創っちゃっているからね………それを今正して異次元を消す為に動いているにょよ!
総てはトキたんが戻らにゃいと動き出せにゃいのよ!」
「それは………我等は関与出来ない事なのてすか?」
皇帝閻魔と聖鳥 朱鷺だけが熟すには骨が折れそうな事だから聞いてみた
「冥府の闇に触れた者は………闇に消え同化してしまう………生ある者が触れて良いモノじゃにゃいのよ………ボクの半分は冥府の闇と同化しているけど、そうでない者は触れさえ出来ない………
皇帝炎帝とニブルヘイムなれば闇を使役する事は楽勝かもだけど………骨が折れるし時空の間の仕事は目眩がするからオススメしにゃいのよ!」
「ならばそれを正して朱鷺が戻らねば………総ては動きは出さないと?」
「そうなのよ、何時頃還るかは解らにゃいのよ
ボクが【R&R】のイベントを終わらせても帰らにゃいなら………ボクとレイたんが逝って強制的に正して来るしかにゃいのよ」
榊原は我が子とちっこいのに、そんな大変な事をさせたくはない………と思った
それでなくても大変な想いをしているのに……出来るならばそうならない様に祈るばかりだった
話を終え烈は真贋の部屋を出て逝った
榊原が副社長室に戻ると康太は起きていた
「聖鳥 朱鷺、冥府に行ってやがったのか………
確かに世界軸を正すならば、烈の魂が漂っていた冥府から漏れ出し異世界と化した闇の存在は正されるべきだな………
タダの冥府の闇ならば正されるだろうが、そうでねぇなら………親父殿では手に余るだろうな
創造神が直ぐに動きやがれ!って謂わなかった意図が解ったぜ!
"魔界は此れより変革期を迎える………想いもせぬ予測のつかぬ事態が引き起こされる前に、魔界を正せ、今はそれしか正しい道へは行けれぬ!
その果てに必ずや未来に繋がる礎に繋がるであろう!その手始めに………盗人した神の粛清をするがよい"
なんて言ってやがったのは、何か含みがあるかと想ったが……世界軸関連だったのかよ」
とボヤいた
榊原は「盗人は正さねばなりません………でも閻魔か謂うにはかなりエグいやり方で誘き出したのですね」と苦笑した
康太は「お前にお尻ペンペンされるんじゃないかって泣いていたって兄者言ってたな」と笑って謂う
「今回はお尻ペンペンはしません
しかし………世界樹の木から恵みの光が届いて様々な生き物が生まれ成長した様ですね………寄生虫も生息していたとは………」
寄生虫………想像するだけでもゾワゾワとして来る……
康太は「伯父貴が腹を掻っ捌いて、大歳神がうなぎ大の寄生虫を捕まえ籠に閉じ込め、宇迦之御魂神が見事に縫った………と話していたな」と遠い目をして続けた
それを3回見事に遣り終えたと謂うのだ
康太が閻魔の呼び出しで魔界へ逝った時には、腹を縫われ気絶した後だった
まぁそれより早く呼び出されたなら、拷問してでも問い詰めてもっと酷い事をしただろう………
閻魔の所に創造神から神託とも言える声があり
"今直ぐ炎帝を呼び出し事の次第を話し神々を矯正に当たらせるのじゃ!
近い内に魔界は大きな難局を迎える事となる
その前に正しき情報を見極めて、正しき道へと進ませねばならぬ
それは第一歩じゃと想うと良い、気を抜くでなくぞ!極めそこねたら全てが終わる事となるのじゃ"
と言われたから閻魔が夜中に康太を呼びを向かい行き、即座に魔界へ来て貰ったのだった
康太は魔界に行くと、腹から寄生虫を取り出され、息も絶え絶えの神達に目をやった
腹を掻っ捌かれ寄生虫を取り出され、縫われた神々の胸倉を掴み
「何故この様な事をした!」と迫ったのだった
榊原は頭にチップが入れられてないか?烈がくれた雷石を頭に当てて用心した
神達は康太に殴られ締め上げられ、術後の腹を押さえて苦しみながら言った
「聖神はこの魔界の転覆を図る為に食で魔界の住民を謀ろうとしている
だから新作など出させてはならぬ!
畑を壊滅させて焼き払うのだと謂われた
だから畑を壊滅させて焼き払らおうとしたが………術式は作動はせずに壊滅的なダメージも与えられないばかりか、雷に撃たれて何軆かは消滅した……」
その話を聞き康太は「誰がお前達に指示したんだ?」と問い質した
神々は口を閉ざし黙ったままだった
康太が炎帝の姿となり焔を燃え上がらせると、やっと口を開いた
「羅刹天樣に御座います」…………と。
康太は閻魔に「羅刹天って中国大陸の方の地獄界の神だよな?」と訪ねた
アジア圏の魔界と言えども幅広く種族も誓えば、神々の方針も違う
皆が魔界へ下った訳では無い
金龍達、龍族は天龍の意向に沿うカタチで魔界へ下り、天龍亡き後は金龍が兄の意志を受け継ぎ魔界に根を下ろし今に至る訳だ
無論 中国大陸の神々は地獄界と名付け魔界同様に死者を管理して転生させる役目を持っている
地獄界と魔界は暗黙のルールとばかりに、互いを関せずに来ていた
それが関与して来るならば話は別となる
康太は神々に「お前達は地獄界の神なのかよ?」と問い質した
「いいえ、我等は魔界の神に御座います!」
「ならば地獄界の神の謂う事に何故耳を貸した?」
「…………」
「答えられねぇなら消し去るしかねぇな!」
炎帝は残酷な笑みを浮かべ始祖の御剣を手に出した
燃え上がる紅蓮の焔に神々は怯えた瞳で炎帝を見ていた
一人の神が「魔界は炎帝の私物化となっている……と、誠密かに囁かれていた………
我等はその言葉に耳を貸してしまった………
魔界転覆を謀る為に聖神を使い食や産業で魔界の住民を操り………と謂れ我等は動いた………
それも此れも羅刹天様の言葉が正しいと想ったからだ!」と訴えた
素戔嗚尊は哀しい顔をして
「我が孫 聖神は魔界の転覆など望んではおらぬ
野菜やフルーツや色々なモノを生み出し産業を活性化させても………収益を1円たりとも受け取ってなどおらぬ!
それもこれも魔界の発展の為、魔界の未来の為……
もし本当に羅刹天が魔界に介入したとしたら……魔界と地獄界は戦となるしかない
それを解っていて羅刹天が引き起こすとは……考えられぬ
この者達を更に締め上げる必要がありそうじゃな
それと並行して地獄界へ特使を遣わさねばならぬな!この件は各国にも通達して共有する必要がありそうじゃ!」と言った
鵜呑みにして地獄界に喧嘩など売れば……それは諍いの火蓋が切って落とされる事となるのだ
慎重に協議して進めねばならぬと素戔嗚尊は言った
此処は一旦冷静にならねば、と皆が想い神々は一旦牢獄に投獄した
榊原と神威は一旦還る事にして、還って来たのだった
康太は閻魔と今後の話をして少し遅れて還って来て会社へと来たのだった
康太は「取り敢えずオレは今夜にでも崑崙山でガブリエルと話をする事になった
オーディンや他の国の神ともその場で話をするつもりだ!で、その場に烈を参加させるつもりだ!」と言った
榊原は「烈はそれでなくても大変なんです……それをもっと大変な事に巻き込みたくはないんですがね………」と呟いた
「オレも想いは一緒だ!
オレだって飛鳥井の家を1000年続く果てへと繋ぐ為に足掻きまくるつもりだかんな!
さっさと片付けねぇとな、イベントに集中出来ねぇだろうが!
鳳城優花里が来日して来るって謂うかんな、その準備をしねぇとな!」
「あの強烈な方が来るんですね……本当に君の周りにも烈の周りにも………大和撫子ばりの淑女はいませんね………男前ばかりですね!」
「仕方ねぇやんか、聖神の愛した女性はめちゃくそ男前だったんだ………
人の世に堕ちた後は剣豪を持つ巴御前となった存在だかんな
そりゃお淑やかな女性など近寄って来ねぇだろうが!」
「その話……僕は知らなーずですが?」
「斯波の家に生まれ堕ちて直ぐに初代宗右衛門には許嫁がいたんだよ
その他の妻など認めぬ………と謂れこの世から消されかけ妻を苦しめる位ならば………と手を離した
以来関わりなき所へ転生する様に願い出て今に至る訳だよ!
あの頃の飛鳥井には暗殺部隊もいたし闇から闇へ葬るのはお得意だったからな……手放すしか道はなかったんだよ」
「今は……もう飛鳥井に関わらぬ存在なのですか?」
何時か………愛する人をその手で捕まえて欲しいと願わずにはいられない
「もう何も関わりも持たぬ存在となったからな
宗右衛門の周りには姿も現さねぇだろ……
それが宗右衛門の願いだからな………出逢うことはねぇだろな……」
「そうですか………でも魔界へ行ったとしても竜馬や【R&R】のメンバー達も魔界を希望してくれたので寂しくはないでしょうね」
「だな……オレは聖神を幸せにしてやりたくて人の世に堕としたのに………苦しい茨の道を歩ませてしまったと悔いた時もある………」
「聖神は魔界へ還ったとしても僕達を両親だと想い過ごしたいと言ってくれました
この縁は未来永劫途絶える事はないでしょう……
其の為にも……この蒼い地球(ほし)を護り続けねばなりません!」
「だな、今夜は早めに帰って飯食って崑崙山だ!」
「丁度真髄師に漢方も貰いたいので崑崙山へ行くなら一石二鳥じゃないですか!」
「烈の脳、大分戻ったんだな
その時の症状に合わせて漢方を処方してくれてるお陰だな……」
「ですね、でもまだ完璧じゃないんでしょ?」
「真髄師が言うには後3年は漢方を続けた方が良いと謂われてるからな」
「3年で烈が完治するならば続けねばなりませんね!」
「だな、本当にお前は良い父ちゃんだよ」
「愛してますからね、君も我が子も家族もちっこいのも他の子も!」
二人は抱き合い互いの温もり確かめあった
愛した存在だった
自分の命よりも大切な存在だった
此処が会社じゃなきゃ押し倒して愛を語り合い、弄り合い縺れ合い一つになりたかった
若い頃なら、確実に犯っていた………が、今は見境が付かない年頃ではない
愛は深く、想いは強く………二人を結び付けていた
康太は榊原の胸に抱かれ
「きっと想いは元通りになれる筈だ………」と呟いた
榊原はその言葉の意味を知り強く康太を抱き締めた
秘書の西村がやって来るまで二人は抱き合っていたが……
「仕事しねぇと今夜は還さねぇぞ?」の言葉に榊原は康太を離し仕事を始めた
現在、飛鳥井建設には施工の社員が来ていて、7階の工事を着工していた
神野達はイベントの告知を本格的に始め宣伝して行っていた
烈は会社で遣る事を済ませると須賀に電話を入れた
「須賀、我空との面談この後に入れられるかしら?」
『烈、はい、入れます!
その後で良いので私と少し話をしてくれませんか?忙しいのは重々承知しておりますが………』
「良いわよ、部屋を取ってくれるにゃら、話をするわよ!」
『それでは部屋が取れましたらホテル名と部屋番をラインでお知らせ致します』
そう言い、電話は切れた
直ぐ様予約を取ったホテルの名と部屋番がラインで知らされ烈は会社を出てホテルへと向かった
母には「須賀の事務所の子と面談して来ます!」とラインで送り何処で何をしているか?ちゃんと連絡を取り動いていた
ケントの車でホテルへ到着すると、ロビーに須賀と咲楽我空が待ち構えていた
須賀は烈を見るとペコッと挨拶をして歩き出した
烈はその後ろに着いて歩き出した
エレベーターに乗り部屋へと向かう
その間 誰も話す事もなく部屋へと向かった
須賀はホテルの一室に入り烈をソファーに座らせると深々と頭を下げた
烈は「それではガッくん、話をするにょよ!」と言った
我空は何だかとっても窶れていた
「烈さん……俺は………自分の総てが嫌になりました
どれだけ辛い事が有っても好きな事を続けられる環境に耐えて来ました……ですが………この先の道が見えなくなってしまいました………」
烈はケントに手を伸ばすと、ケントは鞄の中から咲楽我空の運命のホロスコープを取り出し烈に渡した
烈は我空のホロスコープをテーブルの上に並べた
「これはねガッくんの運命にゃのよ
これが基本ベースね、そして様々な運命を重ねて行くにょよ!」
烈はそう言いセロファンみたいな透明の紙を重ねて我空に見せた
すると今 現在の時に✗印が打ってあった
「どの道ガッくんの運命は分岐点にゃのよ
今 血反吐はいて踏ん張らにゃきゃ明日は途絶えてタダの人よ!
どうしたいかは?ガッくん次第にゃのよ!
後……今の恋人とは別れるべきね
所有権を主張する男は別に良いけどね、それを撮影があるのに一目で分かる場所に付けるにょは恋人の足を引っ張っているだけにゃのよ!
束縛 嫉妬 調教 ストーカー そのスキャンダルはガッくんを簡単に潰す程の威力を持ってるわ
恋人は選ばなきゃ!
自分がどれだけのステータスを持って、どれだけの人の羨望の上に立っているか、知らないと駄目にゃのよ!責任ある行動をするのもスター街道を走る者の務めにゃのよ?」
「………貴方は俺がゲイだと何時知りました?」
「多分メンバーもボクも最初の面接の時には知っていたわよ!
でもそれがどうしたにょ?
ガッくんが演じる上でマイナスににゃる要素あるのかしら?」
我空は驚愕の瞳を烈に向けた
最初から知っていたと謂うのか?………
「恋人とは別れます
俺も……独占欲が強くて嫉妬深いアイツとはこの先上手くやって行くつもりはありません……
でも別れてくれるか………」
「その心配はしにゃくて大丈びよ!
今 連絡はにゃいでしょ?」
「……………はい……」
「少し手こずったけど邪魔になる障害は排除済みにゃのよ!
スキャンダルもね、出される一歩手前だった!
あんなセックスしてる最中の痴態を出されればガッくんは一発アウトにゃのよ?
解る?自分が如何に軽率な事をしているか?」
「済みませんでした」
「まぁガッくんが挿れられる方が好きだったにょは意外だったけどね、近い内にイギリスで恋人紹介するわよ!身元の確りした恋人を持つにょよ!
ガッくんの痴態で金儲けしようなんて恋人は………未練するら残しちゃ駄目にゃのよ」
「アイツ………別れを良く了承しましたね」
「死ぬか?別れるか?二択で選択させたにょよ!
まぁ死ぬ程追いやってやったから、死んだ方が楽かも知れないけどね!」
烈はそう言い冷酷に嗤った
その顔は子供の顔ではなかった
海千山千 どんな障害も乗り越えた者だけが浮かべられる笑みだった
我空は聞くのはよそう……と心に決めた
「ガッくんもこれ以上須賀を苦しめるにゃら………追い込むわよ!」
我空はゴクッと唾を飲み込んだ
「解っております……少し自分の立場と謂うモノを甘く見ておりました!お許しを!」
そう言い烈に深々と頭を下げた
「ガッくんは血反吐吐いて貰わなきゃね!
それまでは後腐れちゃい性の処理係かディルドでも用意してスキャンダルは出さにゃい様にしにゃいとね!」
須賀はそれに対して何と言って良いか?解らなかった
烈は須賀に「芸能界って結構男色多いにょよ………
ボクも真贋も結構付け狙われて来ているからね
一目見れば直ぐに解るにょよ!
メンバーもねあの容姿でしょ?
色んな人に愛されちゃうからね……そう謂うのは直ぐに解るにょよ
ガッくんの事もゲイだとメンバーもボクも、直ぐに解ったわ、多分相賀と神野も知っていたわよ」と言った
須賀は「え?私だけがゲイだと知らなかったのですか?」と呟いた
「直くんはノーマルだからね、そう謂うの解らにゃくても大丈びにゃのよ!
ボクもねノーマルだけどね、ボクの周りはそう謂う人が多く居着いちゃうにょよ!
まぁ本当に愛しているにゃら、相手の性別なんて些末な事にゃのよ!」
烈は宗右衛門を出して我空に
「主は自分が同じ姓を持つ恋人を持つ事を恥じておるのじゃよ!
だから隠そうと躍起になって本来の自分を見失っているのじゃよ………
あの日オーディションにいたお主は自然体でリラックスしておった
なのに今の主は何じゃ?隠そうと躍起になり……
今の主には魅力など一つもありはせぬよ!
主は今分岐点に来ている、どうするのじゃ?
潰れるも踏ん張るも果てへは己で繋いで、己の手で掴まねばならぬのじゃよ!」と言った
我空は烈を真摯な瞳で見つめ
「俺はこんな所で終わりたくはない!
社長や烈さんを裏切ったカタチで終わりたくはない!なので頑張らせてください!」と言った
「ガッくん、スキャンダルのもみ消しに直くんはかなり吹っ掛けられたから、先にその借金の返済してやってね!
ボクが出て片付けるまでにかなり使っていたから
事務所潰したとしたら、それはガッくんの所為よ」
そんな責任重大な事を今言いますか?と我空は思った
我空は「社長、本当に申し訳御座いませんでした!」と謝罪した
須賀は「烈が出てくれなかったら……会社は倒産していたよ」と言った
それ程に強請られ集られ食い尽くされそうになっていた
烈は「懐事情はかなり悪いからね!性欲もわかない位にレッスンさせまくらせるから覚悟しといてね!
次は直くんね、どう?倒産しそうな会社の経営状況は?」と言った
「烈ぅ………辛すぎて泣きそうだよ!」
と言い、本当に須賀は泣いていた
「事務所の一斉掃除、にーに達が行ってやってくれなかったの?」
「やって貰いました!
やって貰ったから我空のスキャンダルを潰すのにマネージャーが事務所の資産を投入したのがバレたんですから!」
「にーに達が言ってたわよ
直くんの事務所の社員はクソだって!」
「烈……あのヤクザモノの男をどうやって黙らせたのですか?」
「まぁボクも詳しい事は知らにゃいけど………蛇の道は蛇と言うじゃない!
ボクもね、かなり追い詰める呪文は唱えておいたから死ぬ程の想いはさせておいたわよ!
でなきゃ悩んで苦しんだ直くんが報われにゃいからね!後は…………知らない方が良い事もあるにょよ!飛鳥井最強の風雲児が処理ししてくれたからね!」
「営業と事務員は入れ替えます!
烈、お願いしますね、手助けして下さい!
今は相賀と神野の事務所でサポートして貰っているのです!」
「にゃら芸能界のドンと謂われる阿賀屋蒼佑氏に頼み、営業のプロを紹介して貰うしかにゃいわね」
須賀は暫し思考を止めてしまって唖然として想わず嚥下しきれなかった澱が垂れて正気になった程だった
「烈………その御方………本当に存在するのですか?
明治大正前からドンだった方が……今もいるとは想えませんが…………」
「あの家も受け継がれ名を継がれ生きている家にゃのよ!芸道を築いたにょは阿賀屋家が始まりで、以来相談役として名を置き受け継がれて来た訳にゃのよ!存在するに決まっているじゃにゃい!」
「そんな凄い方が………こんなチンケな事務所の為に動いてくれる理由がありませんって!」
「何を謂うにょよ!三者共同事務所はかなり有名にゃのよ!それを潰したら飛鳥井宗右衛門の名折れにゃのよ!」
フンフン!と興奮しながら烈は謂う
須賀は飛鳥井家と言う膨大なコネクションを持つ家の古さと偉大な立場を今更ながらに痛感していた
「ガッくんは今から菩提寺に行き煩悩を払拭した後、優花里が来日して来たらレッスンで扱きまくるにょよ!そしたら優花里が身元のちゃんとした御相手を探してくれるにょよ!
恋をするにょよ、ガッくん!
人を愛するにょよ、優しい想いに胸が一杯になり、その愛を育てる為に、その愛を護る為に人は強くにゃるのだからね!」
「はい………俺は愛を知らない愚か者でした
烈君……ごめん………君の期待を裏切ってごめん……」
と我空は泣いていた
「取り敢えず向こう2年はタダ働きするにょよ!
直くんの事務所が建て直されるまでは許さにゃいからね!」
「はい………死のうと想っていたよ
死ぬしか………逃げる術はないと覚悟していたんだ」
「二度目はにゃいから!
直くんを裏切るにゃら次は死んだ方が楽な世界に突き落とすからね!
ボクは呪文一つ唱えればガッくんを追い詰めるのは容易いにょよ、それを忘れにゃいで!」
「はい………」
烈はブツブツ呪文を唱え始めた
須賀と我空は顔を青褪めさせて、覚悟を決めていた
かなり長い間、烈は呪文を唱えていた
そして突然、須賀と我空の背後でバキッと大きな軋む音がして、何かが崩れ落ちる音がしてパリンっと何かが割れる音がした
呪文を唱え終わると烈は気絶した様に崩れ落ちた
ケントは即座に動き烈を抱き止めた
ソファーに寝かせるとケントは久遠に電話を入れた
「久遠先生、烈が気絶してしまいました!」
『何かやっていたのかよ?』
ワンコールで出た久遠は状況を問い掛けた
ケントは呪文を唱えていて、唱え終わったら気絶したと言った
久遠は『即座に迎えに来い!』と言った
ケントは「お願い致します、すぐに迎えに行きます!」と言い電話を切った
ケントは須賀に「今直ぐに久遠先生をお連れして下さい!」と言った
須賀は「解った、今連れて来るよ!」と言い部屋を飛び出して行った
暫くすると須賀は久遠を連れて部屋にやって来た
久遠はソファーで寝ている烈を目にして
「また限界超えて力を使ったのかよ?」とボヤいた
取り敢えず診察して点滴を打ち
「一度詳しい検査しねぇとな………」とボヤいた
点滴が終わる頃 烈は意識を取り戻した
目を醒ました烈に久遠はガミガミと力加減をしやがれ!と怒った
「ごめんね、せんせー!」
「何をしていたか吐きやがれ!」
「負のラビリンスが須賀とガッくんとを取り巻いて渦巻いて絡め取っていたにょよ!
このままだとね何をやっても上手く行く訳なんてにゃいのよ!
負のラビリンスの中に閉じ込められていたにょよ、そして二人の頭上にも暗雲立ち込めていたにょよ
だから負のラビリンスを破ったにょよ!
パリンっと言う音、聞こえにゃかった?」
烈が言うと須賀は「聞こえました!何か割れた様な音がしたから音の方を探ったけど、何も割れてはいませんでした!」と話した
久遠は点滴後終えるのを待ち、終わると烈を抱き上げ「検査するからな病院へ行くぞ!」と言いケントと共に出て行ってしまった
須賀は烈が気絶する程の大変さを強いてしまった………と康太に謝罪を込めて電話をした
電話に出るなり須賀は
「申し訳なかった、君の子を気絶させてしまった
何かあったら私はどうやって君に謝れば良いのかさえ解らないよ」と泣きながら電話をした
康太は『烈?何が有ったのよ?』と問い掛けた
すると須賀は一部始終話をした
『烈………負のラビリンスぶった斬ったって謂うのか?下手したら自分が死ぬかも知れねぇ呪法を使ったと謂うのかよ!』と信じられないとばかりに呟いた
「そんなに大変な呪法なのですか?」
『多分お前は誰かに負のラビリンスを掛けられたんだよ
負のラビリンスに陥る人間はそんなにはいない
誰かに掛けられねぇ限り陥りはしねぇかんな
負の気で覆われた出口のない無限ループみたいな轍を断ち切るには、それなりの力が要るんだよ
そしてそれを遣るのは、烈の様なちっこいのじゃ気絶して当然なんだよ!
大の大人でさえ死ぬかも知れねぇ術式だかんな
烈は病院にいるのか?
今入院されると困ったな……スケジュールが目白押しだかんな総てが狂っちまうな………』
「私はこれから久遠先生の所へ向かいます!」
『オレも仕事片付けて向かうから少し烈を頼む!』
そう言い康太は電話を切った
榊原は心配そうな顔をして電話の内容を聞いていた
榊原は「負のラビリンス?僕はそんなの聞いた事がありませんけど?」と問い掛けた
「滅多と使う奴はいねぇかんな……前に烈が笙に不幸のラビリンス掛けたやんか?
約束を破ると不幸になる、あれと同じで負のラビリンスは何時まで経っても負の連鎖から抜け出せない無限ループに閉じ込められてしまう呪法なんだよ……須賀は最近誰かに逢ったか?
聞かねえとならねぇな……こんな身近な奴にやられるとはな!」
と康太は怒り狂っていた
榊原は仕事を片付けると病院へと向かった
病院へ行くと烈は検査を終えて、待合室に来ていた
ケントは康太と榊原を見ると「久遠医師が説明があるとの事です!」と言った
康太と榊原は久遠の所へ向かった
烈は一生にラインを入れた
「カズ今暇?忙しいにゃらごめんね!」
『今は暇だから大丈夫だ、烈!
何だ?俺に用があるだろ?』
「咲楽我空を菩提寺に連れて行って欲しいにょよ
菩提寺に行き下働きさせて武術を習わせて欲しいにょよ!」
『おー!お安い御用だ!
で今 お前は何処にいるのよ?』
「ボクは飛鳥井記念病院よ
我空もね、そこにいるにょよ!」
『病院?どうしたんだ?烈!!』と一生は心配してラインを返した
「少し倒れたにょよ、でも今は大丈びにゃのよ」
『取り敢えず直ぐに行くからな!待ってろ!』
そうしてラインは終えた
烈は我空に「これから菩提寺へ行くにょよ!その弱い精神を鍛え上げて少しは武術を使える様にするにょよ!
夜明けと共に、寺の下働きをして昼には藤間流に行き所作を習うにょよ!還ったら寺で龍太郎が武術を教えてくれるわ!
ガッくんを【R&R】のイベントで使うかとうかは?
1ヶ月後何処まで苦悩して鍛え上げられているか?で決めるわ!」とこれからを指示した
我空は「はい!絶対に使いたいと想われる様に日々努力します!」と言った
一生が兵藤と竜馬を連れて病院にやって来ると、竜馬は烈に近寄り抱き締めた
「烈、大丈夫なの?
病院にいるなんて………どうしたの?」
心配しまくり問い掛けて来る
兵藤は「飛鳥井の家に相賀と神野が来てるぜ!
須賀と連絡がつかないと心配して飛鳥井に来たんだよ!」と問い掛けた
そこへ久遠の説明を聞いていた康太と榊原が戻って来て
「烈、還るぞ!須賀、お前は話を聞かせてくれ!」と言った
一生は「ならば俺は我空を菩提寺に連れて行くとするわ!」と言い我空を連れてその場を離れた
烈は榊原の車で飛鳥井の家まで帰宅した
竜馬は須賀を連れて兵藤と共に帰宅する事にした
ケントは役目を終えて自宅へと還って行った
飛鳥井の家に到着して、応接間に行くと神野と相賀が心配して待ち構えていた
憔悴した須賀を兵藤はソファーに座らせた
榊原も烈をソファーに座らせた
康太は「何があったのか?話してくれねぇか?」と改めて問い掛けた
すると須賀は話し合いの為にホテルに部屋を取り、自分も咲楽我空と烈と護衛のケントとで部屋に向かい話し合いをした経緯を話した
須賀が話し終えると烈は
「直くんの後ろに負のラビリンスを視たにょよ
その負のラビリンスはガッくんまで飲み込んで渦巻いていたにょよ!
そこまで行くとね、周りを巻き込んで負の連鎖を広めるにょよ!
無傷な相賀と神野も巻き込まれちゃうし、やっと軌道に乗せたにょに………こんな事をするにょはアイツの息が掛かっている奴だからね早く手を打つ必要があったにょよ!」と話した
康太は驚いた顔をして「そこまで巨大な負のラビリンスだったのか?」と問い掛けた
烈は携帯を取り出すと、その時の情景を思い浮かべて念写した
そしてそして念写したモノを康太に見せた
烈が見せたのは須賀の背後に渦巻く負のラビリンスだった
その負のラビリンスは我空にまで飛び火して渦巻いていた
康太は「これが負のラビリンスかよ?」と想わず謂う程に大きな無限ループの輪が戸愚呂巻いて蠢いていた
榊原も兵藤も竜馬も覗き込んでいた
相賀も神野も須賀自身も覗き込んでいた
そして言葉もなく唖然となっていた
「有り得ねぇだろ?こんな大きいのは!」と康太は拳を握りしめた
こんなのは想像すらしていない
「ならば何処で須賀は負のラビリンスを背負わされたのよ?」
問題はそこになる
康太は「これの背後にはラスボス(テスカトリポカ)がいたりするのかよ?」と烈に問い掛けた
烈は「間接的には息の掛かってる奴が動いてやった事になるわね!
こんな術を発動させられるにょは、多分だけど道士か方士が噛んでるのは否めにゃいわね」と言った
榊原は「ほうし?それは何なんですか?」と問い質した
「紀元前3世紀頃から中国に置いて瞑想 気功 錬丹術 静坐などの方術不老長寿 尸解(しかい)を成し遂げようとした修行者の事を謂うにょよ!異術を修め鬼神に通じ死生の道を築いた礎の者をそう呼ぶにょよ!
中でも尸解は中国の神仙思想や道教で人が一旦死んだ後生き返り他の離れた土地で仙人になる事を尸解仙と呼ばれるのね
尸解には死体を残して霊魂のみが抜け去るモノと、死体が生き返って棺より抜け出るモノとかあるらしいにょよ!
そんなゾンビみたいな人間を使えば、出来ない事もにゃいのよ!
直くんに負のラビリンスを掛けたのは多分、人間だけど人間じゃにゃい何かだと想うにょよ」
と烈はサラッと言ってのけた
榊原も須賀も神野も相賀も………兵藤でさえ言葉もなかった
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