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第59話 愛は深く 想いは強く ❺

「うし!ならばそのレッスンしてる奴を呼べよ! 俺が特製のレッスンメニューを伝えてやるからよ!」 と鳳城優花里は嗤って言った 即答過酷なレッスンメニューをやらせる事間違いなし!なんだろう! 優花里は「嫁姑問題か………俺の息子の嫁は本当に優しくて大人しくて俺と正反対で嫁姑争いなんてねぇからな………婿姑争いも葵は結婚してねぇからな理解しがたい問題だわ!」と言った 「そーね、飛鳥井では嫁姑争いにゃんて皆無だもんな………ママとばぁしゃん仲良しだし………」 「飛鳥井は互いが互いを思い遣る心を持っているからな、でねぇと大家族で生活なんて出来ねぇだろ?自分勝手な想いをしてる奴がいたら即座に瓦解する、思い遣りと己の立ち位置を知って動ける人間だって事だな!その違いは結構大きいからな」 「そうね、それって会社でも出て来てる問題にゃのよね………己の立ち位置を知らにゃい奴は浮いて弾かれてしまうからね……」 「主役の後ろで踊れる者達にもそれは言える事なんだぜ! 主役よりも目立ってはいけない だけど己の立ち位置は誰よりも強くアピールしなければ眼には止まらない それを知った者だけがその場で光る力を発揮する 俺等はその為に研磨しまくって光らせねばならねぇんだよ!」 「優花里のお仕事も大変にゃのよね………」 「まぁ俺は芸能界と言う柵が嫌いで抜け出た そのクセに芸能界を捨てきれず………しがみついてその場で生きれる者を研磨する仕事に着いた まぁ俺の場合そっちの方が天職だったんだけどな!」 「でも相賀は一生に一度の花を芸能界で咲かせて去って貰いたかった悔いは残っているにょよ? 海外に出さず引き止めていたら優花里は芸能界を去る事はなかったんじゃないかって…… だからさ生涯最高の花、咲かせて花道を終えて欲しい気はあるにょよね!」 「烈………相賀………」 相賀は「優花里はうちではピカ一の女優だった ………海外に出したのはうちよりも輝ける地位を確実に手に入れられると願って出したのです だが優花里は夢半ばで消えた……最後の花道を通り引退して欲しかった気持は大きい その気持は今も変わってなどいない………… 儂が社長を引退するのも後少し………儂が社長の間に………出来なくてそれだけが後悔じゃったなと想うんですよ!」と本音を吐露した 優花里はそんな育ての親の本音を聞いて 「ならば相賀、俺の花道……飾ってくれよ! そしたら俺も心残りなく去れるってモノじゃないかよ!そしなら烈にタレント養成所を倭の国で作る手助けして貰うとするよ! イギリスと倭の国で養成所を作るのが夢なんだからな!」と言った 相賀は「ならばその花道、必ずや作らせてもらうよ!」と約束した 神野は「ならば俺達も手伝うと約束しよう!」と言った 須賀も「私も力にならさせて貰うよ!」と約束した 優花里は涙を拭いてスケジュールを立てるべき仕事モードに入った 着々とレッスンの日程を入れイメージ通りに動かせる メンバーのイメージも着々と出来上がりつつあり、イベントの日程も決まりつつあった 【R&R】至上初の同時配信の日程が決まるのも近かった 一ヶ月という長丁場をどう乗り切るか?が問題だった 烈はこの日から【R&R】のイベントの調整に力を入れて動き出すつもりでいた 会社に戻った康太と榊原の耳に、昼に起こった社員食堂の一件が秘書の西村の口から伝えられた 「その社員どうするよ?」 西村は問い掛けた 「二度目はねぇからな、今度同じ事を引き起こしたら即解雇しかねぇわな! どの道試用期間にんな事する奴は先はねぇよ! 1時間に一回、社内放送は掛かってるんだろ? 気絶してねぇならば……アイツの回し者だとは考えにくいかんな、様子見するしかねぇな!」 康太がそう謂うと榊原も 「ただのミーハーだとしたらあまりにも愚かすぎですね、問題行動が続くならば考えねばなりませんが、試用期間と言えども今直ぐに解雇にするのは難しいですしね」と言った 西村は「ならば様子見で良いんだな?」と問い掛けた 康太は「それしかねぇ、調和を乱すならば烈が何とかするだろ?」と言った 「宗右衛門は忙しいから会社に来る暇あるのかよ?」 「来るだろ?それがアイツの役務だかんな!」 あまりにも重い言葉に西村は息を飲み、一礼をして副社長室を後にした この件は社内中に噂として広まった お掃除に派遣されているおばちゃん達の耳に入る程に広まり………社内は少しだけピリピリしていた 【R&R】のメンバーは皆 自分のイメージに合った映像を表現しカタチにしつつあった 優花里の話を耳にしたメンバーは最終日 優花里の花道作っちゃう?と相賀に話をすると相賀は凄く喜んだ 最終日だけ違うカタチにするならば、とメンバーは更なるイメージを膨らませ燃えていた 連日 日付が変わるまで作業して映像を創って行く 竜馬もイメージをプロジェクションマッピングに投影出来る様に緻密に作業を進めて行った レッスンに出してるタレントも何とか所作の訓練が生かされ藤島流の師範代からは 「やっと着物の裾が直せる程度ではありますが、着付けから居住まいまでを徹底的に叩き込みました!所作は完璧になりましたよ!」とお言葉を頂戴したから、所作の訓練は一段落させ優花里のレッスンのみとなった 体力のなかった子らは朝早くからジョギングしたりして自主練を欠かさず続けていた 咲楽我空は菩提寺の独身寮で生活し、早朝からお努めをして朝餉を食べてから藤島流に通い所作を習っていた その後優花里のレッスンを受け、帰宅して龍太郎の武術の訓練を受けていた 毎日クタクタでヘロヘロで何も考えられなかった だが菩提寺で一ヶ月暮らすうちに、体力も着いて来て少し自分を見詰める時間を持てる様になって来た 愚かだったと想う あまりにも浅はかで未熟で………性の虜にされ食い尽くされ滅ぼされる所だった 優しい男だった………最初は…… だが段々と嫉妬で酷く抱かれ心も体も傷付き擦り減って行ったかの様に……何も考えられなくなった また何も考えさせように、あの男は………調教するかの様に……我空を支配しようと洗脳に近いセックスをした 抜け出せず蟻地獄に陥った様に朽ち果てて行くんだと想っていた だが救われた 自分の命と引き換えに救ってくれた烈に報いる為に、我空は必死に体が悲鳴を上げても食らいついていた こっそり我空のレッスンを見に来た烈に優花里は 「咲楽我空の果ては繋がったな!」と言った 「なら苦労した甲斐があったにょよ!」 烈は、願わくば………このまま横槍など絶対に入るな!と想っていた だが順調な時程 警戒は怠ってはならぬ!と気を引き締め日々を過ごしていた 時は5月に移り変わろうとしていた 5月に入ると烈は須賀と相賀と神野を連れて、芸能界の裏のドンと謂われる阿賀屋蒼佑氏を尋ねる事にした 事前に連絡を入れアポを取り 『阿賀屋はお逢いになるそうです!』とのお言葉を頂戴し、待ち合わせの場所の指定、時間の指定をされた 指定時間に余裕を持って待ち合わせの場所である明翠館と言う料亭へとやって来たのだった 烈は宗右衛門の着物に身を包み座敷に座っていた その横に須賀、相賀、神野が座していた 阿賀屋氏の御付きの者が「阿賀屋が参ります!」と言い廊下に正座して襖を開けた その開けられた襖から威風堂々とした和装姿の、年の頃ならば兵藤位の青年が顔を出した 青年は上座に座ると座している者に目を向けた そして笑って「やぁ宗右衛門!」と声を掛けた 「お久しぶりじゃな阿賀屋!」 「お久しぶりって程じゃないだろ? 少し前にお茶したじゃないか!」 「面会の代価だって申して主は小さな儂に奢らせたったではないか!」 「だからこうして時間を作ってやったじゃないか!」 阿賀屋は笑っていたが、顔を引き締め須賀を見て 「須賀直人、お主は一度親族から命を狙われたと謂うのに結構甘い采配をしておったのじゃな! 儂ならば一度謀られたのじゃったら、警戒して社員だとて信用などせぬのにな!」 痛い一撃をかました 須賀は言葉もなかった 宗右衛門は「過ぎた事を言っても始まらぬ!」と阿賀屋を止めた 「お人好しになったか?宗右衛門?」 「この者の命は我が母 飛鳥井家真贋が握っておからな、母に対して礼節を抱いて儂はこの場にいると申そう!」 「飛鳥井家 真贋!!真贋がお命を握っておられるのならば………母上に敬意の念を抱いて動かねばならぬな!解り申した! この阿賀屋蒼佑、真贋と宗右衛門の意向に則り動く事を此処に約束致そう! で、要件を申すがよい!」 宗右衛門は居住まいを正すと 「三社共同事務所に経営のエキスパート、事務のエキスパートと呼べる人材を貸して貰いたい! そしてその者に教育的指導して育てて行って貰いたいのじゃよ!」 阿賀屋蒼佑は着物の袂から書類を取り出すと 「これに相違は御座らぬか?」と問い質した 烈はその書類を受け取り目を通して唖然となった その書類には三社共同事務所の弱点とも謂うべき点がズバッと明記されていた  須賀は良く此処まで調べ上げられたものだ……と言葉もなかったが何とか気力を振り絞り 「相違ありません!」と言った 神野と相賀の事務所の弱点もこの機会だとばかりに書かれていて相賀と神野も「「相違御座いません!!」」と返答した 「ならば三社共同事務所には阿賀屋家が誇るエキスパート軍団に行って貰いプロの仕事が出来る様に教育的指導をせねばなりませんね! 今いる人材は総て解雇とさせ社員は入れ替えます!社員の公募は烈から連絡が来ると星が指し示してくれたので用意してありますとも! そして徹底した訓練の元教育を施し、事務所に入れて更なる教育を施して行くつもりです! 三社共同事務所の社長である御三方はそれに同意なさって此処に来ていらっしゃるのですよね?」 「無論じゃ!総ては阿賀屋蒼佑氏の意向のまま行動すると約束してこの場に座しておるのじゃよ!」 「ならば総ては宗右衛門の意向のまま我等は動く事にする!」 阿賀屋蒼佑氏がそう謂うと相賀が「費用は一体どれ程出せば宜しいのですか?」と問い質した 「阿賀屋家は芸能界に古くから携わり裏から支える使命を持っている家じゃから、主等が何時も利用してるコンサート会場やテレビ局などその土地は阿賀屋が貸し出しておるだけじゃから、金には困ってはおらぬ! しかも芸能界と言う特殊な世界での仕事であるからな、ヘルプ要請が来たらプロを派遣して更なる向上へも導くのも阿賀屋の家の死命であるから、費用など気にせずともよい! まぁ数年は烈が俺に奢ってくれればチャラにしてやるとも!」と言った 「まおたん……ちっこいボクに奢らせるにょ止めてよぉ〜!」 「【R&R】の仕事の話が上がると優先的にテレビ局で取り扱う様に根回ししてやってるんだぜ!」 「にゃら奢るわよ!」 阿賀屋蒼佑は笑っていた 年相応の顔で笑っていた 烈は「阿賀屋真生と謂うにょが今世の名前にゃのよ!」と3人に説明した 御付きの者が時計を見て「御時間になります!」と告げる 阿賀屋蒼佑は「では話し合いは以上と謂う事で!近い内に事務所にプロを連れて参ります!」と言ってその場を出て行った 3人は阿賀屋氏が部屋から出て行くと息を吐き出した 烈は「これでプロから経営の指南を受けられ、弱体化を改善出来第一線の芸能界を直走れる事が決まったわね!」と言った 須賀は「果てへと繋げる為ならば………何だってするさ!」と言った 相賀も「儂はそろそろ引退じゃからな、柘植に付き添い実践を叩き込むつもりじゃよ!」と言った 神野も「俺の事務所も此処で息絶えさせる訳には逝かねぇからな、頑張るさ! そして相賀、烈がんなに簡単に引退させると想うか?」と言った 烈は「あきましゃ!解ってるじゃにゃい!」と笑って言った 相賀は「え?儂は楽にはなれませんか?」とボヤいた 「三社共同事務所 相談役 相賀和成!」 と書かれた名刺の箱を、烈はサコッシュから出すと相賀に渡した 相賀はその名刺の箱を受け取り、よーくその名刺を見た 「儂は………三社共同事務所の相談役になるのですか?」と呟いた 「そーよ、おーちゃんはボクと綺麗サッパリお別れしちゃう気だったにょ?」とうるうるの瞳で聞かれれば…………グッと踏ん張り覚悟を決めるしかなかった 「そんな訳ないじゃないか! 残れるなら残りたいよ……でも次代に道を明け渡すのも役目だと想っていたんだよ………」  「ダメよ!おーちゃん、引退して気が楽になったら呆けが始まっちゃう事もあるんだからね! 飛鳥井のじぃしゃんは会長辞めても相談役で遺るにょよ!ボクは相談役ではなく宗右衛門になるのよ!そんな簡単に楽にさせる気なんてにゃいのよ!」 と呆けが始まるから働けと謂うのだ 飛鳥井清隆もまだまだ老体に鞭打ち働かせると謂うのだ 神野は「それ良いな、利益の何割か相談役に支払うからさ、相賀はずっと三社共同事務所の顔になっててくれよ! 楽になった途端 ボケ老人だなんて目も当てられねぇからな!」と笑って謂う 須賀も「和成さん貴方の骨は私達が拾いますから、三社共同事務所の顔として遺るんです! そしたら我等がお金を出し合ってマンション買うので、この近くのマンションで暮らすと良いです!」と言った 皆の優しい言葉に相賀は目頭を押さえて泣いた 定年を超えた年なのだ 後継者として柘植がいるのだから、継がせたら身を引く気でいた そしたら淋しくなるだろうが……しがみついていては後継者として身を置く柘植の邪魔になる そう考えていた 烈はボソっと「そんなに簡単に逝けるにゃんて想っていたらダメにゃのよ! 老後は囲碁仲間とゆったり過ごし現役時代を懐かしむ………なんて時間与える訳ないじゃない! おーちゃんは死ぬ瞬間まで相賀和成として往生しにゃいとダメにゃのよ! 勿論 あきましゃと直くんもね、死ぬ瞬間まで仕事してましたって行くと想うにょよ!」と謂う 神野も須賀も既に後継者はいる! その子が事務所を受け継いで行く事はもう決定なのだ! なのに死ぬ瞬間まで働けと謂うのか………… 「せいぞーじぃさんもね、市長引退したらボランティアの団体立ち上げて孤独死する老人を減らす運動するにょよ、おーちゃんもさ手伝ってあげるにょよ!」 何処までも楽な老後は想像すら出来ないが、相賀は笑っていた それこそが自分が望んだ終末だと笑っていた 三社共同事務所は阿賀屋蒼佑氏から派遣されたプロ集団が事務所の管理体制から営業のノウハウまで叩き込み、生まれ変わろうとしていた 時を同じくして【R&R】のイベントも具体的なイメージが完成しつつあった 近々 飛鳥井の球技場にどの様にプロジェクションマッピングを配置するか?具体的な案を出すまでに話は進んでいた だがネックは6月が梅雨時という事だった 「雨に濡れたら器具に影響はにゃいかしら?」と機械だから天気は左右されるのだ 「だけど梅雨明けたら猛暑だろ? 熱中症気を付けねぇと駄目だろ?」 兵藤は真夏のフェスでぶっ倒れる観客を何度も見たから思案して謂う 竜馬は「そこなんだよな………野外フェスは……」とボヤいた だけど烈は「飛鳥井の球技場はかなり僻地にあるからね夜空は綺麗でプロジェクターに投影した世界は美しいにょよ!きっと!」と呟いた メンバーは思い描いて俄然やる気になっていた 映像配信の方は1ヶ月やるし、演目も1週間ごとに違うし、最終日はもっと違う!と話すと生の配信は諦め1週間ずつ録りためて一番良い日を配信する事になった 生配信は出来なくなったが、其の方が断然伝わるだろう、と判断したのだった ただ最終日は極秘だが鳳城優花里のラストランならぬ最後の花道を飾る映像となる事を告げると、それはリアルタイムで放送したいと申し入れがあった メンバーは快く快諾し、鳳城優花里の引退セレモニーは生で配信される事となった そんな頃イギリスのオリヴァー・オブライエンから連絡が入った 丁度 烈はその連絡が入った時メンバーといたからZoomに切り替えての話となった 「オリヴァー元気だった?」 烈が聞くとオリヴァーは『リーダー、今日はね話があって電話したんだよ!」と興奮気味で話し始めた 烈は「楽しみね!」と謂うと竜馬は「だね!どんな話だろ?」と嬉しそうに問い掛けた 『来月イベントするなら倭の国は梅雨と謂う毎日毎日雨の日に突入するんだろ?』 「そーなのよ!今ね打開策考えてる所にゃのよ!」 『防水の機材作ったから! それを使えばバッチリだと想うよ!』 「…………でもね観客が雨に濡ちゃうにょよ…………」 しかも僻地ならばわざわざ来てくれるか解らないのだ……… 『ドームなら見ていて安全なんだけど、天気に左右されそうならば、対策は打ち出して逝かないと何も決まらないね!』 「それはね色々と考えてるにょよ!」 烈が言うと竜馬が「やっぱ先に球技場を確かめに行くしかないっすね!」と言った 「そーね、後でメンバーと球技場を確かめに行くわ!」 『ならさ、それ、1日待ってよ! そしたら僕も球技場を確かめに行くからさ!』 「なら倭の国へ来る事が決まったら、連絡するにょよ!  竜馬がお迎えに逝くからね!」 『了解!』 烈はオリヴァーと電話を切って 「良いタイミングで電話があったわね! ヘンリー、タイミングとか計っていたにょ?」と問い掛けた ヘンリーは「まさか、兄は今開発が忙しいって音信不通だったから連絡なんて取ってないよ!」とボヤいた ダニエルは「なら雨の日でも大丈夫な機材を作っていてくれたのか?」と思案して謂う 話の流れだと………どうもそれだろ?と皆は想った 烈は「明日来てくれれば、全部解るわね!なんか楽しみにゃのよ!」と言った メンバーもそりゃそうだ!と頷いた 翌日、オリブァーが来日して来た 国際空港の方でやって来て、オブライエン家の貨物飛行機も飛ばして機材と共にやって来てくれたのだった こうして着々とイベントに向けて具体的に走り出す事となった 来日したオリヴァーと共に球技場を見に行く日、流石と朝から出て打ち合わせとかあるから、会社の方は休むと両親に連絡を入れた 榊原は烈からのラインを見て 「やはり球技場で梅雨時という事がネックなんでしょうね……7月からだと熱中症の心配ありますからね……」と現状を憂いて口にした 「アマリーグが使用する様になり座席の椅子とかは結構良いのに取り替えたらしけどな………梅雨に野外は無謀としか言えねぇか……… まぁ梅雨時にやるなら対策は必要となるわな……」 と思案して呟いた 「8月にズラすともっと熱中症の恐れ増しますからね……6月7月でやるのがベストだと想います」 「だな、まぁオレ等はサポートなら出来るが、イベントそのものに口は出せねぇからな!」 「ですね、莫大なお金掛かりますからね 飛鳥井は不景気ではないですが、そんなお金を投入したら息切れしちゃいますからね…………」 「まぁコロナ後の会社なんて似たり寄ったりだろうが…………どんだけの企業が倒産したと思ってるのよ?今生き残ってる会社だって堅実に着実に事を進めて行くだけでやっとだろ? 飛鳥井だとて同じだよ……宗右衛門がいてくれるからこそ、やっとこそ乗り越えられるってもんだろ?」 「………我が子が無茶しないか心配なんですがね………」 「だな………」 康太と榊原は我が子を想い…果てへと繋がねばならぬ現実を重く受け止めて言葉もなかった 烈と竜馬は来日して来たオリブァーやスタッフ等と共に飛鳥井の球技場に来ていた オリヴァーは球技場を見渡し 「何かこう、市民球場だからさ、椅子もガタガタで座ってるとケツが痛くなる様なオンボロさを想像して来たんだけどな…………」とボヤいた 烈は「アマリーグが使用しているからね今、横浜スタジアムと同列位の設備はしてあるみたいにゃのよ、椅子も結構良いのに変えたらしいわよ!」と説明した オリヴァーは「雨の日は簡易の雨合羽を【R&R】のロゴ入れて入場チケット切る時に手渡して着させたら?って我が父クリストファーが言ってました! どうです?良い案ではないですか?」と嬉しそうに謂う クリストファーとオリヴァーの仲は最近かなり良好らしい その昔、赤毛でそばかすと謂う両親に似ない容姿をネタに同級生からは熾烈なイジメに合っていた それが原因でオリヴァーは引き籠もりになり、部屋に引きこもり何十年と両親とは逢わずに来た過去があった 今でこそ両親譲りのプラチナブロンドだが、当時は拾われた子なんじゃないかって悩んだものだ オブライエン一族の方からも、引き籠もりになってる子が一族を継ぐのは先が心配だと謂われ、家督はヘンリーが継ぐ事になった経緯があった オリヴァーは別に家督を弟に譲ろうが別に構わなかった 家を出て行けと謂うならば、出て逝けるだけの資産はハッカーで稼いでいた それを元手に会社も起こした そしてその会社は今 ヨニー©イギリスに吸収合併してヨニー©イギリスの社長に収まっている オリヴァーは社長に収まってから大学に進学し大学院まで出て名実共に文句のない経歴を手に入れ社長に躍り出たのだった だから今になったら家督は邪魔だとオリヴァーは思っていた クリストファーは長男であるオリヴァーを蔑ろにして申し訳ないとずっと悔いて来た だが今はヨニー©イギリスの社長をしているオリヴァーの事を一族も認め、ヘンリーが家督を継いだ暁には相談役として一族に残り貢献して貰いたい!と申し出されている程だった 【R&R】のリーダーとサブリーダーは女王自ら貴族の称号を与えられた………と噂になれば 認めざるを得ない、黙ってなどいられなかった ジェイコブ・オブライエンの事業はトナミ運輸と提携を結び亜細亜圏の輸送を着実にモノとし成長を遂げた 一族に更なる利益を齎す【R&R】と謂う存在を黙って見ている訳にはいかなくなり、必然としてオリヴァーの存在も認められたのだった クリストファーはそれが嬉しくて堪らなくて、更に烈を大切に大切に想う様になったのだ 烈は「雨合羽……雨の日特定でも一ヶ月の間にどれだけ雨か?解らにゃいからね、それにお金をかけるにょは無理なのよ!」と断った 「あ………父さん………雨合羽を大量注文して値切って値切って、まずは1億個作っちゃったわよ…… このスタジアムの入場者数3000千位あるでしょ?それで様子を見てさらなる注文が必要なら作るって言っちゃってるわよ………」 「え!!!クリス……雨合羽の提供してくれるにょ?」 「倭の国でもオブライエン家は事業を展開するつもりなんで提供 オブライエン事業団©Japanのロゴを【R&R】の横にいれるって張り切っていたんだよね………それは一足早くトナミ海運の倉庫に来てるって聞いたよ!」 「なら雨の日は入場の時に雨合羽配れるわね! 本当に助かるにょよ!お礼謂わなくっちゃ!」 「で、雨の日は雨合羽で乗り切り、機材は防水加工して更に機械ごとケースに入れて管理しようと想ってね、来たんだよ!」 「それだと雨の日でも大丈び?」 「うん!雨の日でも変わらずに投影出来るよ! イギリスでテストは何度も何度もやったんだ 設置したら雨降らしてテストするつもりだよ!」 「にゃら準備万端なのね、なら日程決めちゃう?」 烈が聞くと竜馬が「だね、相賀達と日程決めるするか!」と言った 「日程決めたら後戻り出来にゃいからね、それまでに最終チェックして納得出来る仕上がり目指さにゃいとね! 明日から本番見据えたミーティング重ねにゃいとね!」 「了解っす!ならばこれから相賀達と逢うっす! オリヴァーはどうするんすか?」 竜馬はオリヴァーに予定を尋ねた 「僕は明日から動き出すつもりだよ 明日からスタッフと共にプロジェクトマッピングを設置する場を確かめ幾重とチェックをするつもりだよ! 今夜はおもてなしされようかなって想っているんだ!」 烈は「スタッフはどうするにょ?飛鳥井の家にそんなに入れにゃいのよ!」とゴロゴロといるスタッフを目にして言った 「設置最終日に皆を持て成してよ! それまではスタッフはトナミが用意してくれた宿舎に行くつもりだよ!」 「トナミ?若旦にゃ?どうして?」 「機材とスタッフをジェイコブ叔父さんの船で来る事が決まった時、叔父さんがカイリに倭の国へ行ったら寝泊まり出来る施設ないかな?と聞いたのがキッカケでカイリが宿舎ならばトナミが御用意致します!と言ってくれたんだよ!」 烈は皆の想いに支えられ動き出している現実が嬉しくて堪らなかった 涙が出そうになり、天を仰ぎ 「ならりゅーま、プールしてるお金で……えっ……にゃに?…………ぁ……」 烈は平和な国に生きてる筈だと想っていた 普通の日常を送っていた 此処は平和の国で、欠伸が出る程に平和でなくてはならないのに…… 烈が何かが自分に向かって飛んて来るのが解った 信じられない想いで見上げた次の瞬間、頭上で物凄い爆音が轟き、ピカッと物凄い閃光が走った メンバーも竜馬も兵藤も烈もオリヴァーと共に来たスタッフも誰一人何が起こったのか?理解出来ないでいた……… 兵藤は光と共に烈を抱えて動いた そして唖然としてるメンバーやスタッフに「今直ぐ伏せろ!」と怒声を上げて伏せさせた 爆風に飛ばされない様に伏せるしかなかった 兵藤の声で我に返った皆はその場でしゃがみ込み伏せた キーンと耳を劈く金属と爆破の音が響き、烈達は動く事も出来ずにいた 爆音と共に瓦礫が吹き飛んて来て、黒煙と粉塵で眼の前が何も見えなくなった 皆 何が起こったのか?解らずにいた 身動きできずにいる中、一番早く動いたのは兵藤だった 携帯を取り出すと堂嶋正義に「正義、何かが撃ち込みやがった!今は爆音が轟き、視界が悪くて確かめられねぇが何かが撃ち込まれたのは確かだ!」と叫んだ 堂嶋は息を飲み『今何処にいる!』と聞いた 「飛鳥井の球技場だ!」 『直ぐに駆け付けさせる!』 「此処にはオブライエン家の息子が二人もいる!」 『………!!!他は?』 「【R&R】のメンバーに烈だ!」 『烈!大丈夫なのか?』 「確かめてぇけど見えねぇ程に視界が悪いんだよ!」 『自衛隊を出す、少し待っててくれ!』 堂嶋はそう言い携帯を切った 兵藤は「烈!竜馬!ヘンリー!オリヴァー!皆!大丈夫か?意識があるなら声を出してくれ!」と叫んだ 烈は「兵藤きゅん………上視て………」と言った 兵藤が見上げると視界が少しだけハッキリとし始めていた 天空には少し前に崑崙山で見掛けた地獄界の神が宙に浮いていた 羅刹天は「大丈夫ですか?」と烈に声を掛けた! 「羅刹天、大丈びよ、ありがとう あのまま空中で叩き斬って貰わねば、ボク達の体は吹き飛んでいたにょよ!」 と烈は深々と頭を下げ礼を言った 「元始天尊が崑崙山にいる時、星詠みの婆婆から烈殿の危険を察知したからと急ぎで使い魔を出され知らされたので、私がひとっ走り来た次第です!」 「まさかね………ミサイル撃ち込まれるとは想ってなかったにょよ!」 少し遅れて元始天尊が「烈!!大丈夫か!」とやって来た 「天ちゃん、ありがとう 助かったにょよ!」 羅刹天が空中で爆発物を叩き落としたが、残骸は地上に落ちても仕事したらしくて球技場は跡形もなく瓦礫と化していた 元始天尊はそこにいた皆が怪我していないか?確かめた 皆 羅刹天が瓦礫を弾き飛ばしてくれていたから、怪我はしていなかった …………が、真っ黒の顔になっているのは全員だった そこへ堂嶋が自衛隊と共にやって来て、被害状況を把握するために動いていた 堂嶋は「烈!」と叫び近寄って来た 烈の無事を確かめて、ふと前を見ると………如何にも中国の位の高い映画がなにか見た様な衣装を着ている殿方が二人いて、堂嶋は「何方なのですか?」と尋ねた 烈は宗右衛門の声で「この方は地獄界の神であられる羅刹天殿と元始天尊殿であられる!」と紹介した 堂嶋は「え??地獄界??それって閣下に聞けば解りますかね?」と問い掛けた 「どうだろ?でもねこの方達はボクの危機に駆け付けて下さったにょよ!」と嬉しそうに謂う 羅刹天は「ならば我等は逝くとする!近い内に崑崙山で少し話しは出来ませぬか?」と烈に言う 「日付指定してくれたら逝くにょよ!」 「では!」 羅刹天は姿を消した 元始天尊は「烈、我等で出来る限りの事なればしてやると決めたのじゃよ!」と説明し漢方を手渡して、烈が受け取ると姿を消した 堂嶋は即座に閣下の元へ電話を入れに行った 烈は壊れた球技場を見て「………修理に1ヶ月以上掛かりそうね………イベントはもう出来にゃいわね!」と総てが目の前で一瞬で崩れる光景に唖然となり泣いた 竜馬は烈を抱き締めた メンバーは滅多と烈が泣いた姿を目にした事がないから………こんな風に泣く烈に心を痛めていた 烈は泣いて泣いて………泣き疲れて竜馬の腕の中で眠ってしまった 兵藤は康太に電話を入れた ワンコールで出た康太に兵藤は  「飛鳥井の球技場にミサイル撃ち込まれた!」と告げた 『え?………もう一回言ってくれねぇか?』 康太はあまりにもな言葉に脳が許容範囲を超えて聞き取るのを拒否してしまっていた 「だから飛鳥井の球技場にミサイルが撃ち込まれたんだよ!」 『烈は?お前は大丈夫なのかよ?』 「羅刹天と元始天尊が姿を現してミサイルをぶった斬って烈を護ったけど、ぶった斬ったミサイルは仕事を完遂しちまったから球技場はズタボロになっちまったんだよ! で、烈がもうイベントは無理だって泣いて泣き疲れて寝ちゃったんだよ! オリヴァーも来たと謂うのに、このままじゃイベントはポシャるしかねぇ!」 『…………これから球技場へ伊織と共に逝くわ!』 「烈を寝かせてやりてぇから俺等は移動してるかも知れねぇ、それだけ伝えとく!」 『了解した!』 康太は電話を切ると、榊原にミサイルが撃ち込まれた事を話した 「羅刹天と元始天尊が烈を助けに来てくれたから助かったらしいが、球技場が壊滅的だって謂れたからな見に行かねぇとならねぇんだ!」 烈を想えば榊原は言葉もなかった 「ならば行きましょう!」 この目で確かめに行かねば……… 康太と榊原は慌てて副社長室を出て行った 堂嶋は自衛隊の隊員と共に現場の状況を確認していた 自衛隊員は爆発物の残骸を集めてカタチを復元するつもりだった それに伴い、防犯カメラに爆発物が映ってないか?警察官を動員して確認作業を始めた 烈を始めとする【R&R】のメンバーも何処も怪我をしていないか?病院へ移る様に話したが……… 烈は「くどーせんせーにしか見せにゃい!」と頑として他の病院へ逝く事を拒んだ 堂嶋は久遠に連絡を取り「烈と【R&R】のメンバーを診察してくれないか?」と事情を話し頼んだ 久遠は『今直ぐに連れて来い!』と言ったから、自衛隊の救護班用の車に乗せて飛鳥井記念病院へと向かった 兵藤は「康太と伊織が来るから説明してやってくれ!」と堂嶋に頼んで病院へ向かったのだった 途中 康太に「正義が説明してくれるから!俺は病院へ逝くわ!」とラインした 兵藤と入れ替わる様に康太と榊原が飛鳥井球技場へ到着すると 無惨な姿に言葉もなかった 車から降りてグランドへと向かって逝くと堂嶋が待っていた 「烈君は泣き疲れて眠ってしまったので、そのまま病院へ向かいました!」と説明した 「ミサイルって貴史が言ってたけど?」 「それは詳しくは解りません 今残骸を集めているので復元したら何か解ります!」 榊原は「羅刹天殿と元始天尊殿が烈を助けたと貴史は言ってましたが?」と問い掛けた 「閣下に聞かねばと想っておます そもそも地獄界とは何なんですか? 地獄の沙汰も何とやらの地獄なのですか?」 「それは今度、閣下の所に行った時に一度に説明してやんよ!」 「ならば詳しくお願いします!」 「で、お前は羅刹天と元始天尊を見たのかよ?」 「…………ええ、中国の映画とかに出てた身分の高い漢服と辮髪(べんぱつ)に贅の限りを尽くした宝石をあしらった髪飾りをしておりました…… もう一人の老人も見るからに高価な漢服に身を包んでいましたから、只者ではないと想っていました……神であられたのですね……」 「それも今度な、オレは烈達の様子を見に行くわ!」 「ならば俺も逝くから、一緒に行くとしよう!」 堂嶋は後を自衛隊の隊員と警察に任せて、球技場を後にした 康太は悔しそうに唇を噛み締め 「とうとうミサイル撃ち込みやがった………」と悔しげに呟いた 「羅刹天殿と元始天尊殿が来てくれて助かりました………でなくばミサイルですから確実に吹き飛んでいましたからね………」 榊原は悔しくて堪らなかった 泣き疲れて寝てしまった烈の想いを考えれば……… 悔しくない筈などないのだ 飛鳥井記念病院へ到着すると緊急用の駐車場に車を停めて病院へと入って行った 康太と榊原の姿を見掛けた看護師が、即座に近寄りカンファレンスルームへと案内した 少し待つと久遠がやって来て 「烈は入院させた!衝撃が強すぎて魘されて泣いている!そして何処からともなくレイ、湧いて来やがったぜ!仕方がねぇから二人まとめて点滴中だ!」と説明した 「竜馬と【R&R】のメンバーは?怪我なんてしねぇか?」 「無傷だが、瓦礫の粉塵や爆破の煙吸ってるから取敢えず検査してる!」 「貴史は?」 「アイツも無傷だ、だが少し寝させといた! 気丈に烈を庇って動いていたけど、限界超えてるのが伺えられたからな、点滴打って烈の横のベッドで寝させておいた!」 「今日は朝から烈はイベントの事で球技場へ出かけていたんだよ! そしたらその球技場へミサイルが撃ち込まれたんだよ!」 「この平和な国にミサイルが撃ち込まれたなんて、俺も信じ難い話だが………」 「助けが入らなければ………確実に烈の体は吹き飛んでバラバラの肉片になっていた………」 康太の怒りが伝わる…………久遠は言葉もなく康太の肩を掴み 「烈は生きている! たから有り得ねぇ事を謂うのは辞めろ! でねぇとおめぇも点滴仲間にしちまうぞ!」 「久遠………」 「やっぱおめぇも伴侶殿も点滴打っとこうぜ! 疲れた顔してっと倒れちまうからな!」 久遠は康太と榊原を烈が入院してる個室へ連れて行くと、ソファーに座らせ首から下げた携帯を取り出すと「疲労用の点滴2つ持って来い!」と指示を出した ガラガラと処置台を押して個室に鈴木泰知がやって来た 患者を目にすると即座に腕をまくり、消毒しやすい様にサクサク動く 点滴をソファーの上に吊るすと、あっという間に点滴をしていた 康太と榊原の点滴をサクサク済ませると、泰知は処置台を押して出て行った その手際の良さに康太と榊原は唖然としていた 久遠は「本当に使える男を烈は配置してくれて助かってるんだよ!」と嗤っていた 康太と榊原は仕方なく点滴をされていた そして病室を見ると烈とレイがベッドで寝かされ点滴をされていた その横のベッドで兵藤が点滴されていた 烈のベッドで心配そうにしている竜馬も点滴されていた 点滴仲間の意味を………何となく理解する 久遠は「【R&R】のメンバーは検査を終えたら帰宅させるが、どうするよ?」と問い掛けた 康太は「この個室に呼んでくれ、烈の姿見たいだろうし、オレが飛鳥井の家に連れて帰るとするわ!」と言った 「なら個室に連れて来るわ!」 久遠はそう言い堂嶋を連れて個室を出た 堂嶋は久遠を追い個室を出ると久遠に 「【R&R】のメンバーは無事なのですか?」と尋ねた 「無事だぜ!怪我一つねぇが、取敢えず検査は一通りしておいた!問題はアイツ等保険証を持ってるか?だな!」 「彼等の医療費は此方で負担します!」 「…………医療費は本人に支払わせる! 取敢えず無事なんだから帰られよ!」 久遠は政治屋にそう言った 堂嶋は「無事ならば……俺は帰るとする!また話を聞かねばならない時はお願いします!」と言い堂嶋は還って行った 久遠は検査の控室に逝くと【R&R】のメンバーとオリヴァーがいた ヘンリーは「烈は?大丈夫なの?」と心配そうに問い掛けた 久遠は「お前等保険証どうしてる?」と問い掛けた ダニエルが「我等は飛鳥井施工の役員として倭の国にいる間は社会保険を使用しています!」と言った オリヴァーが「スタッフは渡航医療保険に入っているので保険で何とかなります!」と言った デービッドが「我等は何時何時どんな事態が起きるか解らないので備えはしておかねばならない! と謂うリーダーの元、来日して来てますから準備は万端なんですよ!」と胸を張って言った 久遠は苦笑して「なら精算窓口で精算して還ってくれ!」と言った イーサンが「精算なら倭の国にいる会計スタッフが済ませていると想います!」と言った その為に【R&R】のビルを作って会計の処理を一手に引き受けさせて動かしているのだ オリヴァーは「スタッフの方の医療費は少し手続きが面倒だから専門スタッフを呼んで対処させます!」と言った 「なら大丈夫だな、スタッフは検査が終わると還って貰って構わない! お前等も烈の個室へ行って烈を見たならば、飛鳥井へ還って安静にして寝てろ!」と言い久遠は個室までメンバーを連れて行った 個室に入ると烈は点滴されて寝ていた 兵藤も点滴され、竜馬も点滴されていた そして康太と榊原も点滴されていて、メンバーは言葉もなかった 康太と榊原はメンバーを見ると深々と頭を下げ 「巻き込んで申し訳なかった!」と謝罪した メンバーは慌てて康太と榊原の頭を上げさせた ヘンリーは「謝らないで!僕達は巻き込まれたなんて想ってないんだから!」と言った 榊原は「君達と行動を共にしなかったのは烈は狙われているからなんです………でもまさかメンバー諸共狙われるなんて………烈も想定外だったのでしょう……イベントも球技場があぁでは別の場所を探さねばなりませんね………」と残念そうに言った オリヴァーは「あの球技場直して下さい!突貫工事でも良いので直して下さい! 他の球技場を借りたら使用料取られるじゃないですか!それこそリーダーが望む結果じゃないです!」と謂う 康太は「流石と………んな簡単には直らねぇって!」と言った デービッドは「ならば【R&R】は記者会見開いて無料で球技場貸してくれる所を探すしかない あくまでも使用料【無料】やないとリーダーの構想が狂ってしまう! リフォーム代捻出して、貴史をイギリスの最高峰の教授に預けるの頓挫しますねん!」と訴えた ダニエルも「貴史を半年で院まで卒業させるリーダーのリソースが狂ってしまうじゃないですか! 教授は今か今かと待ち構えているのに……」と呟いた 康太は兵藤の苦難の道が待ち構えていたのか………と今更ながらに痛感していた 完璧な兵藤貴史を作り出す それは鷹司緑翠から託された瞬間から始まっていたのだ ヘンリーは「父に謂えば貴史の学費を出す事は容易いが、それは烈がせねばならない事だから…… 我等はリーダーと共にイベントが出来るなら利益なんて考えていない………総てリーダーの思い通りに捻出できるならば協力する! 悔しいな………こんな所で頓挫なんてしたくない……」と悔しげに呟いた デービッドは「今度のイベントでトンプソンが全面バックアップして衣装は総てトンプソンから提供する予定だったのに………」と悔しげに呟いた 康太は「烈が、んな所で止まるかよ!烈だぜ? きっと寝て次に闘う鋭気を付けたら動き出すに決まってる!倒れても挫けても何度でも立ち上がる それが飛鳥井宗右衛門と謂う漢なんだよ! んな所で躓いたからもう立てない!なんて立ち止まるかよ!」とメンバーに発破を掛けるように言った メンバーは康太の言葉に、明日を信じて、今日を生きる!が口癖の烈の想いを思い出す オリヴァーは「リーダーが立ち上がったら忙しくなるから、それに備えないとね!」と言った 榊原はメンバーに「飛鳥井へお越し下さい!今宵は暑いだろうけど大土鍋で鍋にしましょう! さぁ、明日の為に鋭気を養い支度をしますよ!」と言った イーサンは「まだ点滴中ですよ!」と謂うと皆が笑った 烈は皆が笑う中寝ていた むにゃむにゃ「レイたん」と寝言 むにゃむにゃ「れちゅ」とレイも寝言 二人は寝言でも互いを確かめているかの様だった 点滴が終わると康太と榊原は【R&R】のメンバーを連れて還って行った 竜馬は烈の傍にいる気満々だったが、榊原が強引に引き連れて帰った 病室には兵藤もいる 後で誰かを付き添いに出す気でいたが、今は静かに寝かせてやろうと思っての事だった 烈は寝ながらミサイルの弾道を計算していた あのミサイルは何処から放たれて、何処へ到達する予定だったのか? 弾道を計算して手を打たねば、またやられると想っていた だが何時 何処で 何を している時に 放たれるか? そんな予測など立てるのは皆無だった ならば何をしたら良い? 寝ている頭をフル回転させ思考する そんな烈の耳元に「今は眠れ!倅よ!」と謂う声が響き、烈は深い眠りに堕ちて行った……… 考えねばならないのに……… レイは目を開けると神威が横に立っていた 神威は「お前も寝ろ!レイ!」と謂うとレイは意識をなくし眠りに落ちた 神威は今は眠れ!と願った 今は眠って鋭気を養え! そして立ち上がれる様になったならば、闘え倅よ! お前一人で無理ならば、儂が傍にいてやろう! お前を誰よりも愛して、誰より心配している親父殿と共にお前を護り通すと決めているんだ! 「だからさ……少しは俺達も頼れ!倅よ!」と言い烈の頭を撫でた 静かに夜は更け……病室は静まり返っていた

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