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第61話 愛は強く ❷

烈は翌日 竜馬に借りさせた体育館に早朝から施工のスタッフと来ていた 施工のスタッフはテキパキ動いていた 兵藤は「何をするんだよ?」と問い掛けた 「スタッフを篩に掛けるわ! マイクロ波を混ぜて流したらどうなるか? その実験も兼ねてにゃのよ!」 「マイクロ波?それは何だよ?」 「マイクロ波は電場と磁場の変化を伝搬する波の電磁波の一種にゃのよ 電波の中でも、300MHzから300GHzの電磁波をマイクロ波と言うにょよ!」 「理屈は解るがサッパリ解らん!」 「マイクロ波を用いると誘電体に直接エネルギーを伝える事が出来るのね、まぁ簡単に言えば電子レンジに使ってるのがマイクロ波的なモノにゃのよ!ボクも実験成果は出してにゃいから……どう反応があるかは解らにゃいのよ! 2歩も3歩も行くヤツだから手を打つ必要があったからね、綺麗と共に研究していたのを使う時が来ただけの事にゃのよ!」 それでもミサイルは想定外だった 烈の悔しさが解るだけに、兵藤は何も言えなかった 設置が完了すると施工のスタッフは還って行った 其処へヨニー©イギリスの精鋭を投入! 一応、体力強化訓練と銘打ったから、インストラクターは用意し訓練させる 体育館の至る所に消火器が用意してあり、その中で訓練を受けるスタッフ達がいた 兵藤は何故かレイのお子様のバケツを借り水を入れて待機していた 激しい訓練で動けなく者も出て来て、一人が蹲る すると指輪が発火して兵藤は即座に動きレイのバケツの水を指輪にぶっ掛けた すると指輪の火は鎮火してスタッフは気絶した 烈は「指輪?指輪が燃えたにょ………」と呟いた まさか指輪が燃えるとは想ってもいなかった 竜馬はスタッフに駆け寄り、指輪を指から抜いて烈に渡した 烈はその指輪をハンカチの上に置いて貰うと、サコッシュの中に仕舞った あたふたとしているスタッフを他所に、もう一人のスタッフの髪留めが発火した 竜馬は即座に火の着いた髪留めを素手で外すと、兵藤が消火器で鎮火させた スタッフの荷物が置かれたバックが発火し、スタッフは慌ててバックへと駆け寄った 烈は「緯度と経度と位置か………」と呟いた 兵藤はギョッとして「其れ等を知らないうちに仕込まれていたと言うのか?」と問い掛けた 烈は「りゅーま、イギリスの女王へ伝えておいてくれた?」と問い掛けた 「今日、何処かで秘密裏に映像を映していると想うっすよ!全部がリアルタイムで伝えていてスタッフを連れ帰ってくれるそうです!」 「それなら人手不足確実になるわよね?」 「その分確かな人材をレンタルして貰えるそうっす!」 「なら軌道に乗せるわね! もう動かし様のない盤上に上がったわ!」 ヨニー©イギリスのスタッフは何が何だか解らなくてパニックになっていた オリヴァーも何が起きたのか?解らなくてパニックになっていた ヘンリーが兄に説明する オリヴァーはその話を静かに聞いていた 烈はインカムを通して「綺麗、他に不安な子いた?」と問い掛けた 特殊なカメラには体内が映し出されていた 入れ替えられた者は即座に解る仕組みとなっていた 『今 うちの研究者に間引かせるわ!』 と言い白衣を着た研究者が何人か間引いて、唐沢にお届けする予定だ! 『後は大丈夫だ!毎回会場に入る前にこのカメラの前を通らせ間引くしか今は手はない!』 「ならそうするわ! さてと、床を掃除したらレッスンの続きやるわよ!」 と言うとスタッフは慌てて床を掃除した その間に間引かれた人がいなくなり、緯度と経度と位置を知らせた者も研究者により連れられて出て行っていた 残りのスタッフは何が起きているのか?理解は出来なかったが………… それでも世界に誇るヨニー©イギリスの社員である誇りの為に動いていた こうして全ての駒が盤上に上がり、動き始めた 【R&R】のイベントは設置予定日と撤収予定日を計算し、日付を打ち出した 5日間連続で公演し、中二日開けてステージを作り替えリセットされ改めて次の公演をやる 設置と撤収の日程を省いて、余った日数はメンバーで出し合ってお祭り騒ぎ的なイベントを作り出して、メンバーは血気盛んに盛り上がっていた 一ヶ月半のイベントは正式に相賀達に告げられ、相賀達はイベント告知を、やっと出来る事となって歓喜極まり泣き出す程だった 【R&R】のイベントが大々的に公表され、チケットが売りに出され、夏の大イベントとしてCMとかでもイベントの宣伝が流れ始めた そんなある日、烈は何時もの様に社内を見回る為に会社に来ていた 【R&R】のスーツではなく、宗右衛門のスーツをビシッと着て、社内を見回るつもりだった 社内を見回る為に3階へ上がると、少し前に社員食堂で絡んで来た中途採用された女性の社員が烈に近寄って来た 「烈さぁ〜ん、【R&R】のイベントの日程が発表されましたね! 私は一条隼人の出る日程のチケットが欲しいですぅ〜!何とかなりませんか? 友人も誘っているので7枚、融通して貰えませんか?」 と何ともな事を社内で堂々と言って退けるのだった! 護衛のケントが烈を護る様に前に出て、烈を隠した 女は「何よ!あんたには関係ないでしょ! もう友人に融通して貰えるって言っちゃったのよ!何としてでも融通して貰いますからね!」と頑として訴えた ちょっとした騒ぎになり、3階フロア統括本部長の陣内が駆け付けて来た 陣内は「何事だ!」と割って入った たまたま社外から還って来た城田が、その光景を目撃し康太へラインを送信した 「康太さん、烈が絡まれてます!」 『何階?』 「3階です!」 『直ぐに行く!』 こんなやり取りがあり、直ぐに康太と榊原がやって来て、女は息を飲んだ だが友人に自慢した以上は引けれないのだ! 榊原が烈に「此処はもう良いです!」と言った 烈は後は両親に任せてその場を離れた 康太は「陣内、その女を連れて来い!」と言うと陣内は女性社員の肩に手を置いた 榊原が「飛鳥井建設と【R&R】は一切関係がありません!今後【R&R】関係の話はなさらない様にお願いします!さぁ仕事に戻りなさい!」と言い、その場を離れた 康太は地下一階に作られた会議室に陣内と女性社員を連れてエレベーターで降りた 会議室の椅子に女性社員を座らせると、自分達も座り 「何故、烈に粘着するのですか?」と問い掛けた 女性社員は居直り「あの子は【R&R】のリーダーならば、我等社員は少し位の融通があって当然なんじゃありませんか?」と言った 榊原は「我が社と【R&R】は無関係です!」と言う だが「【R&R】のリーダーなのは、ニュースを見ていた者ならば誰だって知っているわよ! サブも時々会社に出ているのに、無関係は無いんじゃなくて?」と引き下がらなかった 康太は「飛鳥井烈が趣味で【R&R】として活動している、それは会社の預かり知らぬ事となんだよ!烈は宗右衛門の転生者としてやらねぇとならねぇ事がある! だがそれ以外で好きに生きる事にまで関与はしねぇ!だから【R&R】関係で烈を引き合いに出すんじゃねぇよ! しかもお前はまだ試用期間だと前にも言った筈だ!試用期間に問題を起こすならば解雇もあると言った筈だが?」と吐き捨てた 陣内も「前回も警告した筈だ!それが二度目となれば放っておく訳にもいくまい!」と言った 榊原が「前回烈と話をしていて宗右衛門が 『今度問題を起こしたならば、次はない! だが最後に情けをかけねば人は救われぬであろう!情けとして施工で働かせよ!』との事なので君は施工へ移動なさい! 施工から飛鳥井凛太郎が来るので、そしたら施工で試用期間を過ごしなさい! 今度は間違える事はない様になさい! 君の荷物は陣内に持って逝かせるので、凛太郎が来たら即に施工へ行きなさい!」と言った 陣内は「ロッカーの鍵を渡してくれ!そしたら秘書の西村に頼んでお前の私服や私物は運ばせる事にする!」と言った 女性社員はガタッと崩れ落ち……… 「辞めます………友人に自慢したのに………それさえ用意出来ないなんて………友人も失った今……横浜で過ごす意味なんて無い………」 榊原は「試用期間中の勝手な辞職は許しませんよ!友人を失う?そんなの生きていれば新しい友人だって出来るでしょう!」と一蹴した 康太も「お前さ見栄で固めた自分が虚しくならねぇか?もぉ自分でも本当の自分はどんなだったか?思い出せねぇんじゃぇのか?」と諭す様に言う すると女性社員は泣き出した 榊原も「携帯を変え、マンションを解約して身の丈に合った場所へ引っ越しなさい! そしたら貴方は自分を取り戻し、自分の身の丈に合った人生を送れます 虚栄に満ちた道を捨てるのも、虚栄に満ちて潰れるのも君次第です!選ぶのは自分ですからね!」と言った 女性社員の顔からは見栄や偽りの虚栄に満ちたかの様な憑き物が落ちた顔をしていた 「総て捨てます………」 帰ったら皆に謝り罵られたならば、携帯を変えに行き、安いアパートへ引っ越そう! 長年付き合ってた彼が自分を捨て、金持ちの女性を選んだ日から………自分は彼を見返そうと見栄を張るだけの為に生きて来た気がする 今考えれば愚かな事だった だけど自分には必要な虚栄だった 一生…………その虚栄の中で生きて行けないのは知っていた だから転職を機に馬鹿げた自分を……終わらせたかったのかも知れない……… 康太はそんな女性社員の心の中を知ってか 「終わらせたならば、己を見ろ! それが宗右衛門からの言葉だ!」 と言った その声が心に響き、女性社員は泣いた 心の中の醜い虚栄を流し出すかの様に泣いた そして涙を拭いたら、気分は落ち着き腹が座った 女性社員は凛太郎が呼びに来て施工へと移った 女性社員の私物や私服は西村が段ボール箱に入れて、遼太郎へ渡し「施工へ持って行けよ!」と言った 遼太郎は即座に施工へ荷物を持って行った その日消えた女性社員の事は話題となったが、陣内が「彼女は施工へ移った!きっと向こうで上手くやって行くだろうさ!」と言った 皆 彼女が心穏やかに過ごせる様に祈った そしてまた社員達は切磋琢磨して頑張っていた ちらほら小さいトラブルは中途入社の社員との間に有ったが、その都度話し合い解決して来た 解決しても納得が行かない社員は退職の道を辿った 社員達は篩いにかけられ、ドッシリ根を下ろし仕事に邁進した 飛鳥井建設の社員である事を誇りに想い、日々を過ごしていた 【R&R】のイベントのチケットは飛ぶように売れた だがチケットの売れにやはりムラが生じ、竜馬はムラのある日に大学時代の友人に出演依頼を掛けた イギリスで大人気のロックグループ【RODEOÑ】に出てくれないか?と打診すると、【R&R】の配信の話は伝わっていて倭の国で名を売りアメリカでも名を売りたいから、丁度良かった、ノーギャラで出てやるよ!と快諾してくれた RODEOÑのリーダー アーネスト・ワインズはトンプソンの服を愛用していて、メンバーにトンプソン創業者がいると聞けば、ノーギャラでも大満足だと買って出てくれた 【RODEOÑ】の生ライブを打ち出されチケットは飛ぶように売れすべての日程完売となった 相賀と須賀と神野には今回ノーギャラでの協力だったから、RODEOÑ×一条隼人、咲楽我空、市橋蒼也(相賀の事務所の売出し中の歌手)とでコラボ曲を(詩を竜馬が曲を烈が担当して)作り出した 烈は知られてはいないが【R&R】の曲の選曲をしていた どうしても思い通りの曲がない時は作っちゃったりしていたのだった 竜馬は作家と謂うだけあって詩はお手の物だった 編曲はオリヴァーがやり、烈のじじくさい曲をロック調に変えてくれるのだった そして出来上がった曲は今回のイベントのテーマ曲となり、前宣伝は十分な走り出しとなった ダンスを担当する者達は、更に過酷なレッスンを積み重ねさせられ当日へ向けて走り出すのだった 【R&R】のイベントは6月10日から7月26日までの約一ヶ月半の大イベントだった そして特別に7月26日は鳳城優花里引退セレモニーと銘打ち、特別イベントをやるつもりだった その日のチケットも完売となった 撤去作業はイベントが終わり4日感で全てを終わらせるつもりだった 6月10日から20日までを咲楽我空と須賀の事務所の子等でやる事になった 6月21日から30日を一条隼人と神野の事務所で 7月1日から10日まで三社共同事務所のタレントと【RODEOÑ】とで曲とダンスのイベントとなり 7月11日から20日までを榊原真矢、榊清四郎 其の為 相賀の事務所でやる 7月21日から23日は篁、咲楽、隼人、五十嵐美怜が主体となってのイベントとなり 中一日休みを取り、舞台設定を総て変えて 7月25日は柘植恭二がラストセレモニーを飾る 8月1日から柘植は相賀の事務所の社長を引き継ぐ事になっていた その前に俳優として最後の花道を歩く事を打ち出したのだった 打診を受けた日から柘植は優花里のレッスンを受けて扱かれていた 昔の血が蘇る 有頂天で天狗だった為に総てを無くした………… そんな日々に違う人生を与えられ血溜まりの花を咲かせ生きて来た スポットライトを浴びれる最後の日を作って貰い柘植は泣いた 思い残した事は多々とある だが今は後悔はしてはない だが最後にケジメを付けられるのならば………… 完璧にこの俳優として生きた花を散らすつもりだった 7月26日は鳳城優花里のラストセレモニー これを打ち出した日から、話題となりテレビで取り上げられ続けていた 鳳城優花里と謂う女優がどれだけ凄い女優だったのか? 柘植恭二と謂う役者がどれだけ凄い役者だったのか? 連日 当時の映像を使い放送されていた それこそが烈の狙いで三者共同事務所の名を更に轟かせる狙いと、優花里の倭の国で開くレッスン教室の話題も宣伝しなくても流してくれるのだ 一石二鳥を狙ったのは言うまでもなかった 【R&R】は体育館を貸し切り各々のイメージ通りに動かせ映像と動きを合わせるのリハーサルに余念がなかった そして迎える6月10日 宣伝は万全、チケットは完売、当日券は一切ないと告知して始まる役一ヶ月半の長丁場のイベントだった 花火一発 ぶち上げて始まる【R&R】のイベントの滑り出しは好調だった RODEOÑはスケジュールを調整し一ヶ月半、イベントの初日からラスト公演まで演奏すると発表した 取材や歌番組は倭の国からの中継にして総て片付ける予定だった 【R&R】のイベントに参戦すると発表した日から、取材やインタビューがわんさか入っていた 如何に【R&R】が名を売っているか、解る事態に突入していた 6月10日から始まったイベントは、すっかり様変わりして引き締まって大人になった咲楽我空の姿に話題は騒然となった 体は引き締まり、高身長なだけにその引き締まった体が精悍さを研ぎ澄まし、窶れて大人びた顔が別人の様にスポットライトを浴びて映し出された イベント中、我空は歌い踊り、時には格闘技じみたファイティングポーズを取りながらステージ中を駆け回った 五十嵐美怜も連日の優花里からのレッスンで、体は引き締まり別人の様に美しく、それでいて強かで強く映し出されていた 美怜が笑う、我空が微笑む 心のままに今を絞り出し総てを出し切る! 二人はもう国際大会のイベントの時に付けられたイメージは払拭され、新しく殻を破り己を主張していた 6月20日、我空のイベントの最終日 我空は泣きながら叫んでいた 荒れ狂う踊りに叫びに近い歌 観客はその我空の姿に言葉もなく見ていた 自分を出し切る 認められ順調に来た日々、食べるのに困らなくなった日々、潰れて消えるしか無かった恐怖の日々を、そして血反吐を吐いても立ち上がれと謂われた再生の日々を、総て出し切る様に表現していた 【R&R】のプロジェクションマッピングはそんな我空の想いを映し出す様に荒れ狂っていた 【R&R】の創り出す世界に咲楽我空がいた 最終日、我空は清々しく笑っていた 指先まで軽やかに踊り続け、ガラッとイメージは変わった 美怜も長い髪を靡かせて美しく笑う 辛かった日々を抜け出せた者だけが浮かべられる笑みだった 美怜も歌った 我空と最終日は絆を歌おう、と決めていたからラスト数十分間に二人で絆を歌った しなやかに踊りながら、クルクル回りながら、二人は絆を歌った そこへ国際大会で出ていた北川壮吾、月城椋真、藤原夏連が加わり踊りながら歌い始めた 北川も月城も藤原も厳しいレッスンを受けて、それぞれが個性が出ていた もう借り物の服を着ているだけじゃない 己の言葉で己の態度で己の責任を持って、仕事をしているタレントだった 別に打ち合わせをしていた訳では無い 出たいと謂うからならばラストに出れば良い!と烈が許可したから出ただけだった だが息の合った踊りはやはり5人はライバルとして同じ盤上に生きている者なのだろう 切磋琢磨して生きて行けば良い……… 5人は思い残す事もない程に踊り、そして輪になり抱き合った 咲楽我空と五十嵐美怜 須賀の事務所の最終日と謂う事で【R&R】は区切りとしてラストに 【何者に囚われない    何者にも干渉しない       我等の世界     それが【R&R】で在る】 と言葉を流した スタンディングオベーションと惜しみない拍手と歓声が送られる 【演奏協力 RODEOÑ】 とプロジェクションマッピングに映し出されると歓声が再び上がった イベントに合わせて売り出したRODEOÑ×一条隼人×咲楽我空×市橋蒼也の配信楽曲は飛ぶように売れた この楽曲配信に合わせて市橋蒼也の名を【蒼也】だけにして売出しを掛ける事にした 蒼也の名がRODEOÑや一条隼人と共に周知され、その歌声に一躍トップに躍り出た 6月21日からは神野の事務所のイベントになる イベント初日 一条隼人はRODEOÑと歌いまくり初日を終わらせた 【R&R】は基本 出演者の好きにやらせる その時の状況に合わせてプロジェクションマッピングが創り出されていた この日 隼人は歌いまくるのだ!と宣言したから映像は幾つかを用意して、全てが曲目に合わせてマッチした 総て英語で静かな歌からロックまで歌いまくる一条隼人 そしてノリノリのRODEOÑが創り出したステージは大盛りあがりだった 熱気冷めやらぬ興奮を残し初日は終了した 2日目 この日は隼人はスーツを着ていた 【R&R】のスーツを着て、どう謂う訳か烈と共に立っていた 烈も【R&R】のスーツを着て立っていた この日はタップダンス 二人して楽しくタップダンスをしていた それに竜馬と兵藤が加わりタップダンスを披露する 隼人の要望で兵藤と竜馬は優花里に扱かれ何とかタップダンスを踊れるまでになっていた 隼人は歌いながらタップダンスを楽しげに踊っていた 観客は隼人の学園生活のライブをYouTubeで見た事があった その為か、学園生活を送っていた時の様な幼い顔で一条隼人が笑っていた 烈が一人タップを見事に成功させると、隼人も負けずと一人タップを披露した タップの音と楽しげな歌声 隼人はバク転も披露した 竜馬はバク転をして上、宙返りもやってのけ その身の熟しの軽さに観客は「おー!!」と声を上げた そんな凄い披露合戦を烈が止めた 「ストーップ!ボク、それやると骨が折れるにょよ!」と文句を謂うと観客は笑い声を上げた 隼人は烈を抱き上げると、何と竜馬に放った 竜馬は兵藤に放り、烈は笑っていた そして烈を地面に下ろすと隼人はタップを踊った それに合わせて烈、竜馬、兵藤がタップの音を重ねる 隼人はずっと笑っていた そんな楽しい時間を残して、その日のイベントは終了した 残りの日には神野の事務所の子らが出て、隼人と共演をして踊って歌ってと楽しいイベントは終了となった 7月1日から10日までは三社共同事務所のタレントとRODEOÑの共演となった RODEOÑは今でこそ人気が出て来たが、竜馬が大学で知り合う頃には既にアマチュアとして活動していた 中学の頃には幼馴染のメンバーで歌を作り演奏していた 何時かBIGになろうぜ!と夢見て活動をして来たのだった 大学では【R&R】として活動している竜馬達と、バンドとして活動しているRODEOÑはライバルとして切磋琢磨して来たのだった だからこそ今回の要請を快く引き受けてくれたのだった 初日はRODEOÑの奏でる曲を聞き、歌える奴がマイクを取り歌うみたいな形式が出来ていて 皆平等に歌った 意外だったのが、篁が英語でRODEOÑの歌を歌って、その旨さに聞き入る程だった 北川壮吾も熱い歌声を披露して、意外だったのが藤原夏連がハードロックを英語で熱唱した そしてラスト、隼人がRODEOÑのボーカルのアーネストとのハモリに、アーネストが息を飲む程にしっくり来て感動していた そんな興奮を残してイベント初日は終わりを告げた 残りも趣向を凝らしてイベントは行われた そしてRODEOÑ×三社共同事務所タレントとのイベント最終日 RODEOÑは本国イギリスでは未発表曲をやると宣言 そして烈が贈った曲 「想」を掲げて演奏した 未発表曲に三社共同事務所のタレントは合わせる様に踊り盛り上げた そしてラストに今回のイベントの為に作られた曲 【想】をRODEOÑ×一条隼人×咲楽我空×蒼也で歌った 高音パートから低音パートまで声が出る蒼也のソロパートにその実力を知らせる事となった そしてイベント終了にRODEOÑのボーカルはマイクを取り 「何時かまたイベントに呼んでくれよ! そしたらノーギャラで来てやるよ! あ、ノーギャラと謂うのは烏滸がましいか……… トンプソンの新作スーツを着せて貰ってるんだから!」と笑って謂う 【また逢おうぜ!みんな!】 アーネスト・ワインズの言葉に観客は泣きながら歓声を贈った イベントも順調に後半戦へ突入した プロジェクションマッピングはガラッと様変わりして、和の風景が映し出された プロジェクションマッピングが竹藪を映し出すと、着物を着た女性が背筋をピーンと伸ばし歩いて来た その美しい歩き方に言葉もなく息を飲む 髪を結い歩く姿は【熱き想い】の内儀そのモノだった ライトがその先に当てられ………… 立っていたのは………熱き想いの周防玄武そのモノだった 観客は………熱き想いを脳裏に描く 清四郎は妻を見た だがその衣装に身を包む清四郎は身も心も周防玄武だった だから身動取れずに……歩いてくる女性を見るしか出来なかった 真矢は嫣然と笑った 内儀の衣装を身に着け、真矢も身も心も内儀になっていた 熱き想いの映像がプロジェクションマッピングに映し出される 一歩近づく度に映像が切り替わる 主を想い、浪人に身を窶し隠密に生きる男を支えた内儀の想いは……一つだけ 観客はまるで映画を見ている様だった 真矢は夫に近寄り、手を差し出した 清四郎はその手を取るのに躊躇した 私にその手を取る資格があるのか? 妻が笑う 苦しかった日々を支えてくれた妻が笑う 清四郎は耐えられなくなり泣いた 「あなた、私の手を取って下さらないの?」 妻が言う 清四郎は妻の手を取った 「あなたを愛した日々に後悔などありませんのよ!」 榊原真矢が言う 内儀ではなく、榊原真矢が言う 二人の愛の絆を見せ付けられ……観客は言葉もなく咽び泣いていた 清四郎は「想いは巡る、その沢山の想いの中、君がずっといてくれました!」と言葉にした 真矢は夫を見上げた 清四郎は妻を見詰めた 幾多の苦しみや困難を乗り越えて来た夫婦の絆があった 芸能界の夫婦なんかお金もあるし苦労なんてないんだろう………そう思って来たが、二人の愛には確かに苦難や苦労が滲み出ていた そんな幾多の日々を乗り越えて、それでも寄り添う夫婦の姿が其処に在った ひらひらと花びらが散る……… クルクルとタレントが花弁と共に舞う この日のイベントはしっとりと終了した こんな風に連日二人は夫婦の絆を強く確かに築き上げた最終日 この日は烈から「二人は最初から中央に立ってて欲しいにょよ!」と指示が出て最初から中央に立っていた ライトは消され暗い中、真矢は清四郎に寄り添い立っていた 暗い道を誰かが歩いて来る姿が見えた だが誰なのか?暗くて解らなかった だが親なれば、幾ら暗くても誰なのかは?解るのだ 若い武士の格好をした青年将校が歩いて来る キリッと歯を食いしばり、青年将校は歩いて近付く ライトがパッと当てられ、観客はそれが榊原笙だと知る あの映画では青年将校と内儀が玄武の前に現れたのだが……… 真矢と清四郎は息を飲む 青年将校は二人の前に近付くと深々と頭を下げた 真矢は笙を抱き締めた 清四郎も笙を抱き締めた 言葉もなく………抱き合う3人に贈る様にスローバージョンで【想】が生で歌われる 抱き合う3人の情景に熱き想いのラストシーンが映し出される 和解し合う3人の姿と映画の姿が重なり…… 観客も号泣となった 強く強く抱き合う3人は姿勢を正すと四方にいる観客に深々と頭を下げた 真矢は「もう大丈夫よ!烈!」と言った 清四郎も「烈、ありがとう!」と言った 笙は「本当にありがとう烈!」と嗚咽を漏らしながら言った この日家族席には笙には内緒で明日菜と美知留と匠と結子が招かれて来ていた 四人は観客席からその光景を見守るように見ていた その日烈は施工へ移動させた女性社員にもチケットを凛太郎から渡して貰ったのだった 7枚ではなく1枚、本人が見ろ!と言う事だった 女性社員は一人で見に来て、【想】のタイトルの意味を重く受け止め涙していた 真矢と清四郎、相賀の事務所のイベント終了した イベント終了後、笙は控室に戻った両親に深々と頭を下げた 真矢は笑顔で「久し振りですね笙、元気でしたか?」と問い掛けた 「はい!変わりなく頑張ってます!」 清四郎は「お前が幸せで、お前の家族が仲良く過ごせる日々を何時だって願っているよ!」と伝えた 笙は泣きながら「はい!はい!」と何度も答えた 辛かった日々もギスギスして過ごした日々も…… 総て水に流して、家族だと痛感させられた 笙は自分はこの人達の息子なのだと咽び泣いた 真矢はやはり我が子なのだと姿を見て涙が出た 清四郎も真矢と同じ気持ちだった 出来る事なら前みたいに仲良く過ごせる時間を持ちたい…………… 清四郎は烈と竜馬に「隼人とやったタップ、私もやりたいよ、烈と隼人と笙と竜馬と貴史とでやりたいよ!」と申し出た 竜馬は「21日から23日のイベントはまだ決まっていないから、皆で出ちゃう?」と笑って言った 真矢は「出たいわ、私も!」と申し出て、ならば、とタップの練習をプロに教示して貰おう!とその日は朝までタップの練習に明け暮れた 予定通り我空と篁と隼人も参戦して練習をした 21日と22日は隼人と篁と我空とでこれがタップだ!と謂う真髄を見せ付けた そして23日、真矢と清四郎と烈と竜馬と兵藤と隼人とで、タップを開催 清四郎の華麗なタップの音に、隼人は燃えて対応する様に踊っていた それを「ストップ!」と烈が中断し、真矢と竜馬と貴史とでタップを披露した タップの音のハーモニーが奏でる音の饗宴に観客は酔いしれた そこへ笙も出て来てタップを披露 何処となく清四郎のタップの音に似ていて、烈は「しょーたん、じぃたんとタップを披露するによまよ!」と言うと二人は前に出てタップを披露した 顔は真矢に似ているが、その容姿は間違いなく清四郎にも似ていたのだった 踊りながらタップを踏む それに合わせて隼人と真矢もタップを踏んでいた 烈は「ボク達の底力も見せてやるにょよ!皆!助けて!」と叫ぶとスーツを着た兄達が出て来た 烈の横に並びタップを披露すると、清四郎は祖父の顔で嬉しそうに笑っていた 兄達は訓練の成果を見せるべく頑張ってタップを踏んでいた RODEOÑの演奏に合わせてタップを披露する 兄達と烈が奮闘して、タップを終えると、どうよ?と言う顔をする 隼人は「100年早いのだ!」とRODEOÑの曲に合わせて清四郎、真矢、笙、竜馬、兵藤と共に大人の迫力のタップを披露! そして仲良く入れ混じりタップを披露し続け 烈が隼人に「楽しい?隼人ぉ?」と聞いた 隼人は「楽しいよ!烈!最高だよ!ありがとう!」と礼を言った RODEOÑは【絆】を演奏した それに合わせて歌を口ずさむ 観客も絆を口ずさみ、一つになりイベントは終了した イベントが終わると真矢と清四郎は孫達を抱き締めた そして我が子を抱き締め、竜馬と貴史も抱き締めた 「私の大切な子達!愛してるわよ!」 そのマイクは帰ろうとしていた観客に聞こえた 観客は惜しみない拍手を贈った 【何者に囚われない    何者にも干渉しない       我等の世界     それが【R&R】で在る】 と出てイベントはラストセレモニーだけとなった 中、一日会場を作り替えラストセレモニーに相応しい花道を作る 25日 柘植恭二のラストセレモニー 柘植はこの日 ステージ中央に立っていた 真っ暗な中、柘植はドキドキしながらステージ中央に立っていた ライトが照らされ柘植恭二は最後に一度だけスポットライトを浴びた 真っ白なタキシードを着て耳が痛くなる程の静けさの中にいた が、スポットライトが照らされるとRODEOÑの曲が流れ始めた RODEOÑはこの日、柘植が出ていたドラマの曲や柘植が出していた歌を奏でた 柘植は持てる限りの力を振り絞り、踊って歌っていた プロジェクションマッピングは柘植の現役時代の顔を映し出していた 思い出が巡る、心がやっとケジメが付けられたと泣き叫んでいた このステージを降りたくない………そんな想いと、これからは社長として生きて行かねばならない重責がせめぎ合う ラスト10分となった時 柘植は設置されたマイクの前に立った そして深々と頭を下げた 「この場を作って下さった【R&R】のメンバー、そして相賀、須賀、神野………本当にありがとうございました! 私は志半ばで芸能界を引退して相賀の事務所で社長を継ぐ為に日々努力をして参りました! 8月1日、私は相賀芸能事務所の社長になります 烈君、私の最後の花道を用意してくれて……本当に有り難う……心残りは多々とあるけど、これで社長業に精を出せます! 今日の佳き日を私は生涯忘れません!」 そう言う柘植の所へ烈は大きな花束を持って行った それを柘植に渡し「柘植恭二ラスセレモニー御苦労でした!今後は社長としてメディアに露出して行って下さい!そして柘植社長の元で花を咲かせたいと願う子達を磨いて行って下さい!」と言った 柘植は泣いていた 「烈君…………」 其処へ相賀、須賀、神野が花束を持って柘植を抱き締めた 柘植は花束を手渡して貰い、腕の中は花束で一杯になった 相賀はマイクの前に立つと 「相賀芸能事務所は今後【Effort芸能事務所】と名を変え三社共同事務所の中で、より多くの光る原石を見つけて行きたいと想っています! 私は今後は三社共同事務所の相談役として、切磋琢磨して行く三人を支えたいと想います! 今日は本当に有り難うございました!」と言い深々と頭を下げた 柘植恭二のラストセレモニーは大成功を収め、Effort芸能事務所の社長として名も顔も売った事となった そして迎える7月26日、鳳城優花里の引退セレモニーを迎えた 花火一発、ぶち上げて【R&R】のイベントは始まった 優花里は真っ赤な真紅のドレスを着て花道を歩いて来た そしてRODEOÑの演奏に合わせて優花里は踊り出す プロジェクションマッピングは鳳城優花里の現役時代の映像を流しながら、画面をコロコロ変えて行く 激しい踊りにドレスは捲れ上がり綺麗な足がスッと伸びて美しさを一際引き立てる! タキシード姿の咲楽我空が出て来て優花里とスローダンスを始めると、タキシード姿の一条隼人が出て来てパートナーを変えつつクルクル回りながらダンスをする タキシード姿の榊原笙と榊原清四郎が姿を現すと、二人は優花里に手を差し出した 優花里は清四郎の手を取り踊り、笙の手を取ると振り回す様に踊った 優花里は楽しそうに笑っていた 現役時代はとても窮屈で、イメージを崩さない様に……と笑顔一つまで決められた笑いしか出来なかった 奔放に自由を求めてアメリカに渡ったが……アメリカンドリームを掴めるのは、ほんの一握りの天才だけだと知りイギリスへ渡りダンス教室を開いた 娘の葵から友人 三木竜馬を紹介された時【R&R】の存在を知った 【R&R】のリーダーである烈を知ったのは、その頃だった とてもプリチーな烈に娘はメロメロだった 可愛いだけの子かと思っていたら……とんでもない食わせ物のじぃさんだった その頃は何をするにも上手くは行かなくて、でも愛する夫と我が子の為に頑張っていた そんな頃、愛する夫は事故で他界した 嘘だと信じたくなくて………自分の総てを無くしたと思ってダンス教室を潰して酒浸りの自暴自棄の日々に身を窶していた 烈はアル中一歩手前の優花里を見て「地に落ちるか?」と宗右衛門の声で言った その言葉の意味が解らなかった だが鏡に映る自分は………見る影もない程に窶れて錆び付いていた そんな自分の為に烈はダンス教室を用意してくれた 「潰すも活かすも主次第じゃ! 地獄に堕ちるのが嫌ならば踏ん張るしかなかろうて!」 とケツを蹴り上げられ只管生きて来た 何とかダンス教室も生徒を増やせられ生活が出来る程になって来た そんな頃、デービッド・トンプソンの創業者が【R&R】の中にいるのを知った トンプソン創業者がいるのにアルマーニのスーツが制服かよ?と笑った事があった その時、デービッドの右腕となっている従兄弟のエリック・トンプソンと出逢い、一目惚れされ求愛されまくり恋人になった 葵は「ヤケクソになって後を追うより良いんじゃねぇか?」とシビアな言葉で祝福してくれた そんな想いが走馬灯の様に駆け巡る 音楽が終わると優花里は動きを止めた すると目の前に花束を持った……【R&R】のメンバーがいた、烈がいた メンバーは変装して素が判らない様にしていた メンバーは「優花里 美しかったよ!」と賛辞を述べた 優花里はメンバーを抱き締め………烈を抱き締めた 烈は「お疲れ様でした!」と労を労った そして「りゅーま!」と言うと 竜馬はマイクを持ち 「鳳城優花里は幾多の生徒を持ち育てて来た 其処の咲楽我空も生徒の一人だ! その優花里はイギリスでダンス教室を持っていますが、この度倭の国でも教室を開く事となりました! 皆様、今後ともご贔屓に宜しくお願い致します!」 と口上を述べマイクを優花里に渡した 優花里はマイクを受け取り「有り難うございました!最後の花道を作ってくれた【R&R】のメンバー、烈、須賀、神野、そして相賀、本当に有り難う、心残りなんか残さない位に走りきれた、そんな想いで一杯です!本当に有り難うございました!」とマイクを戻した 【何者に囚われない    何者にも干渉しない       我等の世界     それが【R&R】で在る】 楽曲提供 RODEOÑ 協賛 トンプソン、オブライエン事業団©Japan のロゴが出て報道はざわついた オブライエン事業団©Japan?そんな告知聞いた事もない……… クリストファー・オブライエンが作ってくれた雨合羽はグッズとして低価格でグッズと共に売り出した 500円と言う安さもあって完売したと聞く グッズの売上も好調でオブライエン事業団©Japanのロゴも広がり一石二鳥だった 総てのイベントは終了した 皆余韻を噛み締めながら帰路に着く 清四郎と真矢はマイクを持つと 【皆様 お気を付けてお帰りください】と声を揃えて言った そして手を振り………その場を去った 会場に誰もいなくなり、観客はやっと席を立って帰宅の途に着いた 【R&R】夏の大イベント全日程終了となった 後は撤去作業に入りヨニー©イギリスの精鋭達が撤去作業を2日で終わらせた 予定を前倒しで総てが終わりを告げた イベントが終了して一週間後 兵藤貴史はイギリスへと旅立って行った イギリス滞在中の住居は竜馬の部屋を貸し出しする事となった 兵藤かイギリスへ行く時、烈と竜馬とメンバーも共にイギリスへと向かい、クリストファーに礼を伝えた クリストファーは烈の横に立つ青年に目を向け笑った そして「君がイギリス滞在中の生活は我が家からメイドを派遣して世話をさせよう!」と約束してくれた クリストファーは更に続け 「そして君がイギリスに滞在している間は、私が開く幾つものパーティーに招待するので顔を売りなさい! 外交と社交を学びなさい!その教育の一環を担えるならば私は惜しみない協力をさせてもらうよ!」と約束された 一般人がクリストファー・オブライエンに逢える事なんて生涯無いだろう それがお世話され顔を売る協力までされちゃう 烈………お前恐ろしいってば! そんな兵藤の心中など知らない烈は、ウキウキで兵藤をイギリスに残し、竜馬と共に倭の国へ帰国した 飛鳥井建設の大々的なリフォームが始まった そんな頃 【R&R】のイベントの配信が イギリス・アメリカ同時に配信される事となった 1週間ずつのイベントの出来の良い日を選りすぐり、配信する 配信は大成功でその映像をブルーレイで販売したらどうだ?との話まで出ていた 配信もブルーレイも烈はどうでも良くて、イギリスに残ったメンバーと竜馬で決めれば良いと思っていた 烈は連日学校に通い、久々の学園生活を送りつつ、会社のリフォームに力を入れてチェックしていた 菩提寺の社務所と保養施設が出来上がりつつあった 道場はまだまだ時間が掛かるが、出来は最高のモノだと宮瀬那智が断言してくれたから、烈は安心していた 社務所が出来上がると次は納骨堂を建て参拝殿を建てる予定だった 墓石は魂抜きして連絡の取れない者の墓は、墓仕舞いして合碑塔の中へ納める事になる 菩提寺の住職達は怠らず経を読む、菩提寺は僧侶も増やし教育しつつ回りつつ有った そんな忙しいある日、烈は真矢と清四郎と笙とお茶をしていた 今は普通にこうしてお茶が出来るまでになっていた あれからマンションの方にもお邪魔して、両親の生活振りを垣間見たりしていた マンションの家具は備え付けなのだと聞いた あれ程アンティーク家具に拘った母が今は………テレビと洗濯機とベッドしかない部屋に住んでて驚いた クローゼットに服を掛けて入り切らない服は衣装ケースに入れてあると言う 「烈がね家を建ててくれるのね その時の家具はね、烈が見立ててくれるのよ!」 と母は笑って言った まだ両親に明日菜や美知留、匠、結子を逢わせてはいなかった 笙は怖かったのだ………… 今度何かあれば二度とその視界に入る事さえ許されない現実を知っているから…… 身動出来ないでいた 烈はファミレスのテーブルを予約していた そこへ呼ばれて笙が行くと両親がいた……と言う事だった 笙は10人掛けのテーブルに両親と烈とで座っていたから「誰か来るの?」と問い掛けた 烈はヘルシーな雑穀米定食を食べていて答えてはくれなかった 真矢と清四郎も定食を食べて関係ない話し……しかしてくれなかった そこへ「烈!」と言い美知留が走って来た 「みっくん!何食べる?」と聞く 「僕ねハンバーグセット、匠も一緒だよ! 結子はお子様ランチ!」と答えた 笙は美知留と匠が何故此処にいるのか? 訳が解らなかった 振り返ると明日菜も結子の手を引っ張って座席の方へとやって来て真矢と清四郎を見ると深々と頭を下げた 烈は「明日菜、ゆいちゃんのメニュー決めて、みっくんとたっくんのハンバーグセット頼むわね!」と言った 明日菜は笑って「解りました!」と美知留と匠に確認してメニューを決めた 結子はお子様ランチを頼み、明日菜もハンバーグセットを頼んだ そして笙を見て「貴方は何を頼みますか?」と問い掛けた 「あ………なら僕もハンバーグセットで!」 明日菜はテキパキ手元のタブレットで注文して行った 笙は「………あの………」と話し掛けた 烈は「あの日あの時チャンスはあげたにょよ! なのにしょーたんは妻子を逢わせてやらないから、ボクが強硬手段に出たにょよ!」と答えた 「すみませんでした………怖くて………」 「時間が経つと隔たりが出来て前の様に話す事さえ難しくなるにょよ! ボクはそんな友人………何人も見て来たし、二度と会えなくなる友人もいた……… 時間は必要な時はあるわよ! でも今を逃せばチャンスは来ないわよ!」 烈が言うと明日菜は真矢と清四郎に頭を下げ 「もう謝罪はしません! でも………こうしてお茶飲む機会は下さい! お願いします!」 と言った 真矢は笑って「ならばそんな時間を増やして行こうじゃありませんか! お茶したり食事したりの付き合いまで否定はしてないわ!だけど私は烈が建ててくれる家に住むからね、同居は無理なのよ! 烈が拘って建ててくれる家で生活したいもの」とやんわり傷付けない様に言う 烈は「生活のスタイルは変わったって親子の縁までは切れにゃいのよ! ならば型を変え付き合う方法を模索して行くしかにゃいのよ! ばぁたん、明日菜はね今 血反吐を吐いて何とか家事と仕事を両立して頑張っているにょよ! 職場では0からのスタートを切らせたのよ 家族ではして来なかった事をさせているにょよ! 蹴り落とし自分を見直させたから、付き合いは出来る様に柔和になったのよ! だからね、こうして場を設けたにょよ! 何故ファミレスかと言うとね、ボクね此処の雑穀定食好きにゃのよ!」と言った 清四郎は「顔を見れば解るよ、苦悩を乗り越えた者だけがする顔をしているからね!」と言った 真矢は「たまには昔みたいにお茶しましょうね!明日菜!」と言った 許されはしないが、側に行く事は許されたのだと………明日菜は泣いた 「明日菜、ご飯塩っ辛くにゃるわよ!」 「おー!そうであったな!」 明日菜は涙を拭きながらガハハっと笑った 真矢は「昔に戻ってるわね………」と呟いた 「あー!烈に扱かれたからな、下手したら真贋より容赦がねぇのが宗右衛門だからな!」 烈は笑っていた 明日菜も笑っていた そんな二人見て真矢も清四郎も笑っていた 烈は「ばぁたん達の家、後5ヶ月切ったから、家具をカズと見に行かなきゃね!」と言った 「そうね、今度はアンティークは駄目なんでしょ?」 「ばぁたん、アンティークって大切にされた魂が宿ってるにょよ!ボクね近付くのも嫌だったわ! まぁヤバいのいたら母しゃんが即座に祓っただろうけどね、もう新居にアンティークは禁止にゃのよ!」 「なら便利な家電が良いわ!ねぇ清四郎!」 清四郎は妻から話を振られ「そうだね、ルンバ買おうね真矢!」と言った 「ばぁたんとじぃたんの運気の上がる色を詠むから、買うならその後にゃのよ!」 「烈も買うの手伝ってね!」 「良いわよ!にーに達は家電詳しいからね にーに達も一緒だと嬉しいわ!あ、みっくんとたっくんも一緒に見に行こうね!」 烈が言うと美知留と匠は頷いた 明日菜は「ならば私が値切ってやるわ!後 梱包とか配送の手配も出来るぞ!」と言う 「明日菜、値切るのは駄目よ! 榊原真矢と榊清四郎が値切ったなんてニュースになったら恥ずかしいにょよ! なら明日菜は配送の手配と梱包の仕方をチェックしてね!」 「ガッテンだぜ!そうか値切るのは無理だな! 気が付きませんですみませんでした!」 真矢は笑って「良いのよ、手伝ってくれるだけで嬉しいわ!」と言った 楽しい話は弾み、蟠りはもうなかった その日はファミレスで笙家族とは別れた 真矢と清四郎は明日は仕事が早くに入っているから、とマンションへ帰って行った 家族のカタチが出来上がりつつ在った 愛は強く………家族の絆を深めるのだった

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