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第62話 苦難 ❶

兵藤はイギリスへ渡り、再び大学生活を始める事となった 生活の心配は今回はない、オブライエン家の全面支援でメイドが兵藤が大学へ行っている時間に来て洗濯や掃除、食事の世話をしてくれる事となった 快適な生活は約束されていた 今回の留学は桃太郎は留守番となった 最近 桃太郎はパパになったから我が子を優先せねばならないから、ご主人貴史を送り出したのだった 美緒は飛鳥井の虎之助とガルを番わせ子を成す手伝いをしてくれた ならば桃太郎も、と思い番わせ子を成したのだった 5匹出産した中から毛艶がイオリに似ている子を2匹引き取った やはり桃太郎の子の一匹は飛鳥井へ渡したのだった その変わりかは定かではないが、美緒は虎之助の子を一匹欲しいと言った 虎之助の子は6匹出産した 翼にワンかニャンか?を聞いたらニャンと言ったから、翼に一匹が渡した 美緒に一匹渡し、何と三木が欲しいと言ったから一匹渡した 善之助に一匹渡し、母猫の飼い主が一匹引取り、烈も一匹貰い受けた そして烈の部屋に虎之助親子が住み、烈は部屋が狭くなったとボヤいていた ガルの子は5匹、番わせた先の母親の飼い主が2匹、飛鳥井が3匹渡されたから善之助の所へ一匹渡した 善之助の所は二人共動物が大好きだからワンとニャンを一匹ずつ渡した ガルはお父さんになったから、頑張って育児に精を出していた 春先にシナモンが天に召されガルは落ち込んでいたから、良いタイミングでもあった やはり虐待された体は年々悲鳴を上げて、最後の方はずっと入院して過ごすしかなかった ガルは毎日お見舞いに行ってシナモンを舐めていたが………眠る様にシナモンは息を引き取り天に召された その顔は安らかで悔いなどない程に幸せそうだった ガルの子は【ガブ】と【ルシ】と烈が呼んていたから、家族は皆そう呼んでいた 一生はおいおい………それで良いのか?と想ったが、康太がダメ出ししなかったから通っちゃっていた 子犬の世話を焼いてるガルを寝かせてやりたいからと、見兼ねて子犬と一緒に寝てくれているのは清隆と玲香だった 夜は清隆と玲香に抱っこされて眠り、朝にガルの元へ戻る そんな生活リズムが出来つつあった そのおかけでガルは夜は眠れて喜んでいた 最近めっきりじぃさんになったコオは寝てばかりいた イオリはそんなコオの傍に寄り添いガルの子犬の面倒を見るのだった 桃太郎の子は烈が金太郎と名付け、面倒は流生が見ていた ちなみに虎之助の子は小虎と名付けられていた 飛鳥井は子犬や子猫の家族が増えて、少しだけ平和な日常に家族は癒やされていた そんなある日、烈は真っ白な猫?と謂うにはその身は研ぎ澄まされすぎて猫には見えない子猫みたいな猫を何処からか拾って来てレイの部屋に住まわせた 普段は烈と過ごし夜はレイの部屋で寝る レイはそんな猫を傍に置き可愛がっていた 唯………応接間にいるワン達はその白い猫?の存在を怖がって近づく事もしなかった 応接間で烈がPCを叩いていると、白い猫は烈の横に座り動きもしない 虎之助と小虎は烈の背中と頭に乗り威嚇する そして負けていじけて頭と背中にしがみついていた そんな光景を目にして康太は「ソイツ何処で拾ったんだよ?」と問い掛けた 「えっとねガブたんに呼ばれたから、屋上へ行ったらねガブたんが姿を現して【約束のものです】と手渡してくれたにょよ!」とニカッと笑った 「やっぱそうだよな、ソイツ猫じゃねぇよな?」 「イベントは何とか出来たわ でもそんなに大人しくいる奴じゃにゃいからね 此方も仕掛けなきゃにゃのよ!」 「仕掛ける?それはどんな話なのよ?」 烈は瞳を輝かせ母に、カクカクシカジカ、ゴニョゴニョと話した 康太も瞳を輝かせ、それ良いな!ならカクカクシカジカ、ゴニョゴニョにしちまえよ!と話し 意気投合して何時までもゴニョゴニョとPCを使い話していた 小虎が烈の頭から滑り落ちそうになり、康太はそれを受け止め胸に抱いた 小虎はミャーミャー康太に甘えて鳴いていた 虎之助はズルいと榊原に撫でて貰おうと擦り寄った 榊原は虎之助の顎を撫でながら「その白い子の名前は?」と問い掛けた 「ホワイトクーガのクーたんよ!」 「ホワイトクーガ、まぁ奴等は猫で通るからな」 榊原は、えー!通るの?通っちゃうの!!と想った にゃーと鳴きもせず烈の傍にいるから、烈は学校にも肩に乗せて行ったりしていた 最初の頃は撫でようと近付いて来たが……撫でさせてくれそうもない雰囲気の猫に皆離れて行った 授業中は机の中で過ごし、帰る時はまた肩に乗せてケントの車に乗り会社へと向かう 会社でも烈が肩に乗せている白い猫は話題となっていた だが近寄らせてもくれそうにない猫に、社員も遠巻きに見送るしか出来なかった そんな不穏な空気を孕んた8月初め、兵藤は大学の編入試験を突破して9月から晴れてオックスフォード大学の生徒になる事が決定した 8月初め、烈と竜馬はイギリスの地にいた オックスフォード大学、政治・経済学科 教授 アレックス・ペンバートン 彼に逢う為だった 彼は公爵(Duke)の称号を持つ正当な血筋にて教授をやっている変わり者だった 領地を持ち爵位や家督を継いだ今も教授として大学に残り、次代の政治家を育てていた 生徒は彼の事をロード・ペンバートンと呼んでいた ロードを名乗れる数少ない教授の一人だった 烈は兵藤を連れてロード・ペンバートンの教室を尋ねた 授業が終わり講堂を出て行こうとするタイミングを狙い、烈は教授の前に姿を現したのだった ロード・ペンバートンは烈の姿に満面の笑顔で近寄って行った 講堂を出ようとしていた生徒は足を止め、その光景を唖然として見ていた 偏屈で気難しい教授の満面の笑顔なんて………天変地異の前触れか…… 烈を抱き上げて頬にキスの雨を降らせ、スリスリしまくり横の男に目を向けた ロード・ペンバートンは「彼が?」と問い掛けた 「そーよ、どう?血が滾らない?」 「あぁ、彼は良いなアーネスト・スミスやリルガー・クィーンの様に表に出るべき存在なのは解る あぁ〜磨いてみたいな私の手で!! エクスカリバー並の鋭さと、どれだけ叩かれようとも弾き返す強さを秘めている!」 「頼める?」 「あぁ、私に任せてくれ!」 「半年で何とかなる?」 「半年で何とかなるが、私は半年では返さないよ!最低でも1年エドワルド・オブライエンの下で叩き込まれイギリスの上院議員の在り方を見て、教育して貰う事にするつもりだからね!」 「エドワルドは了承したの?」 「クリスが言っている事を誰が覆せると言うのだい?」 クリストファー・オブライエンは全面協力を約束してくれた その中には今現在 上院議員として第一線を走る弟 エドワルドも借し出して磨く為の協力をしてくれると謂うのも入っていたのだ 烈はニャッと嗤った 帰国した兵藤貴史が楽しみだから! ロード・ペンバートンは竜馬を見て 「この機会に竜馬もライバルとして壇上に上がるかい?」と問い掛けた 竜馬は答えられなかった 竜馬の事は烈が決めると誓ったあの日から烈に導かれ行くと決めているから! 烈は「だね、この機会にライバルを知る機会を持つと良いのよ!」と嗤った 「では、腕によりをかけて磨き上げるとするよ!」 ロード・ペンバートンが謂うと烈は立ち上がり 「宜しく頼みます!」と深々と頭を下げた そして颯爽と背を向けて歩いて出て行ってしまった ロード・ペンバートンはそんな烈の背中を見送って 「一番磨きたかったのは君なのに………君の行く先は既に決まっていると謂う………」と寂しそうに呟いた ロード・ペンバートンは【飛鳥井宗右衛門】と謂う存在が祖父の恩人だと聞かされて育った まだ倭の国は閉鎖的で外国人は敬遠されがちだった頃、体調が悪くなり蹲る祖父は意識が遠くなり、もう駄目かと想い倒れ込んだ事があった 人々は無慈悲に通り過ぎ………自分の状況さえ訴えられない……… 異国の地にいる謂う事が重く伸し掛かる そんな時、英語がペラペラ話せる男性か駆け付けてくれ、どんな状況なのか聞かれた 彼が通訳してくれ、彼の知り合いの病院へ連れて行ってくれ処置を受けられ助けられた その男性が病院へ連れて行ってくれたからこそ適切な処置を受けられた その人がいたからこそ助かった命だった  祖父はその命の恩人の名を常に口にしていた 命の恩人の名は飛鳥井宗右衛門と謂う 彼は倭の国に滞在する間、祖父の世話を焼いてくれたと謂う あの時、放って置かれたら確実に命を落としていただろう……と、本国に帰国して掛かり付けの医師に話した時に謂われた 祖父は命の恩人だと幾度も幾度も倭の国を尋ね、交流を深めた この世を去る瞬間まで祖父は飛鳥井宗右衛門へ感謝の言葉を述べて………何時か私の代わりに恩を返しておくれ、と孫に託した そんな祖父の言葉を胸に抱き過ごしていた 祖父が死した後、相次いで家族が他界し家督と称号を受け継がねばならなくなり、忙しさに恩人を探す事さえ出来てはいなかった 多分祖父の恩人は他界してしまっているだろう…… 祖父を助けてくれた時、かなりの高齢いだと聞いた だがそれならば墓でも教えてもらい参りたいと想っていた そろそろ倭の国へ渡り、飛鳥井宗右衛門を探そうか?と思案していた頃 倭の国から来た留学生がスキップしまくっている、と噂に聞いた 生徒を呼び止めて、スキップしまっくている生徒の名前を聞いた そしたら飛鳥井烈だと教えてくれた 【飛鳥井】と謂れロード・ペンバートンは烈に逢いに行った 逢いに行った子は小さくて………まだ子供だった 嘘…………こんな子供がオックスフォード大学へ入り、スキップしまくっていると謂うのか?? 物凄く興味を抱いた その日からお茶に誘ったり、話しかけたりしたが、なんせ相手は忙しくて中々時間が取れないお子様だった 大学構内ではSPが必ず着いていた その他では心理学の教授の鼻っ柱を圧し折った元生徒がいて中々話しかけられずにいた それでもへこたれず、お茶に誘った そして何度目かで「で、要件は?」と綺麗なクィーンイングリッシュで話し掛けられた 「飛鳥井宗右衛門と謂う御人を知らないだろうか?祖父の恩人なんだ……君が飛鳥井だから聞きたかったんです!」 すると烈は嗄れた老人の様な声で 「飛鳥井宗右衛門は儂じゃが?  あぁ、そうかエリオン・ペンバートンは主の祖父であったか……」と言った え??嘘…………何が起こってるんだ? 確かに………祖父の名はエリオン・ペンバートンだが……… ロード・ペンバートンは「reincarnation?」と呟いた 宗右衛門は静かに話し出した 「飛鳥井と謂う一族は転生者を何人も持つ家でな 転生者は眼を女神に授けられておる一族なのじゃよ!儂は女神になどに眼は貰っておらぬがな、家の為に何度も何度も転生を繰り返しているのじゃよ!主の祖父 エリオン・ペンバートンと出逢ったのは前世の事じゃよ! 儂は理由在って真贋の半分で転生をした それも総ては家の為、明日へ繋ぐ為!」 何とも重い言葉なんだ……とロード・ペンバートンは想った 「ならば祖父を助けてくれたのは貴方なのですか?」 「前世の儂じゃな!」 「祖父は貴方に助けられねば死んでいたと常々口にしていました」 「主の祖父が倭の国に来られた頃はそんなに外国人がいない時代であったからな………偏見や差別はゴロゴロと凝り固まった高度成長期の時代の少し前であったからな!」 「私は祖父の代わりに貴方に恩を返します!」 「恩など不要じゃよ!儂はエリオンと友となった 友に返される恩など在りはせぬのじゃよ!」 「ならば貴方は祖父の友人です! 最大限の協力を惜しまずに約束します! 君を育ててみたい野望もあります、どうです? 私の教室に入りませんか?」 「ならば三木竜馬を育てて貰いたい!」 「……彼はとっくの昔に卒業してるでしょ? しかも心理学教授の鼻っ柱をベキベキに折って戦意喪失させて退職に追いやった! 今更何を教えろと謂うんです?」 「ならばそれは今じゃないと謂う事じゃな! ならば主には何時か儂が連れて来る男を育てて貰うとする! なぁに、一目見れば血が滾る男だ その時、竜馬を見てワンセットで育てたいと思った時、主の教室に入れてくれればそれでよい!」 「解りました、時が来たらお引き受け致しましょう!」 そう約束してくれた その約束の時が今来たと謂う理由だった 竜馬と兵藤はその日から、イギリスに残りロード・ペンバートンの教えを請う日々を送る事となった 9月からの入学に備え、ゼミの受講試験を受けて、晴れてゼミ生になる準備を整えつつ クリストファー・オブライエンが開くパーティーに顔を出して名も顔も売っていた クリストファー・オブライエンが連れ歩く東洋人はロード・ペンバートンのゼミのバッチを着けている…と騒がれ注目を浴びていた 【R&R】のメンバーも竜馬が倭の国に帰国するまでイギリスに残り、本業に力を入れて社員教育をしていくと決めた 其れによりヨニー©イギリスも社員教育を施し、社員の質を今一度見直す事にする オリヴァーかヨニー©イギリスの経営に力を入れる ヘンリーが父の会社の後継者教育の練度を上げて教育を受ける事に決めた ダニエルはウォール街へ戻りこの不景気な時代に合った金融対策を打ち出す事を決めた フレディとイーサンは脇田誠一と共に【R&R】の本拠地となるべくマンモス校跡地に建つビルの設計図を引くのに余念がなかった 烈が震度6強にも耐えられる耐震構造、そして津波の被害も想定したビル設計、避難経路、セキュリティを想定した設計 それらを考慮してアメリカのツインタワービルに近いビルを目指してくれ!と言われたから、メンバーがバラバラで活動する1年をそれらの制作に費やすと決めた ダニエルはトンプソンの仕事の傍ら、ひと月の半分をイギリスで本業に力を入れ、残りの半分は桜林の英語教師として不定期に教えに行く意外は神威の法律事務所で国際問題に当たる問題を片付けていた 【R&R】のメンバーは竜馬が烈の元へ還るその日まで、それぞれのスキルアップを図り、それさられの生活の中に想いを刻もうと想っていた この日々はきっとこの先、大切な自分達の糧となる そう想い日々を過ごしていた 倭の国へ帰国した烈は本格的に飛鳥井建設のビルのリフォームへ踏み切った 現在階段として使っている部分に上りと下りのエスカレータを着け、その横に階段でも上がれる様にする ギリギリそれが可能だと謂れ、烈はエスカレータ上にプレートを作成を始めた 「上り」「下り」「ダイエット階段」と邪魔にならない様に天井にプレートを着けるつもりだった 階段横の壁には此処まで上がると○○カロリー消費と書いた 遊び心満載の階段だった エスカレータは人感センサー付きで利用のない時は止まるシステムだった この日烈は夏休み中だが忙しく動き回っていた 社務所が出来上がり、事務員達は新社屋で仕事を始めていた 保養施設も出来上がり、今度は鉄筋3階建てとなった 2階から上は宿泊施設にもなっていた 一階は夏海らが主軸となり、道場や墓参りに来てくれた人達の為に格安で飲み物等を提供していた 道場もそろそろ出来上がり、生徒が通い始められる事となる その奥に建つ寺の関係者の家族向けマンションも完成した 城之内達家族は本殿横の住職用の住居で暮らすが、巫女や僧侶で家族持ちは家族向けマンションへと移れる事となった 単身者用のマンションも同時期に建設に入り、龍太郎が魔界へと帰還する事が決まったのも、そんな頃だった 朝早く応接間でPCをポチポチしていると、康太と榊原が応接間に姿を現した 烈は母に「この後菩提寺に行き、金ちゃんを魔界に還すわね!」と伝えると、康太は覚悟を決めた様な瞳を烈に向け 「時が来たのかよ?」と問い掛けた 「そーね、金ちゃんは魔界へと還り誓約の地を開拓しないと駄目だからね……」 「黒いのはどうするよ?」 「黒ちゃんも還るわよ!」 「天は?」 「まだ小学校が残ってるから無理ね! 何せ無知で1年から始めたから、まだまだ帰れ無いのよ!」 「金龍は受け入れられると想うのか?」 「受け入れられるんじゃないわよ!母しゃん! 受け入れさせるにょよ!」 「どうやって?」 「まぁ魔界へ還れば嫌でも解るにょよ!」 「なら何時還るよ?」 「この後 直ぐに菩提に行き魔界へ行くわ! 夏休みの残りは魔界で暮らすから、それで夏休みはなくなるわ!」 「え?お盆も還らねぇつもりかよ?」 「……仕方ないのよ、ボクね9月になったらニューヨークに行くからね」 「あぁ【R&R】の配信が想ったより凄くて、ニューヨークの市長に呼ばれてるんだっけ?」  「そーなのよ!行かないと駄目らしくてね、りゅーまもメンバーも今勉強中でしょ? だからボクが行くのよ!」 「兄弟は寂しがるな…………」 「……ボクの方が淋しいにょよ………本当なら魔界にも行きたくないわ、ダダこいて良いにゃらダダ言いたいわよ!」 「それは困るから……止めといてくれ!」 「何か………もぉ………病気になろうかしら?」 「烈ぅ〜済まなかったって!」 康太が謝る 烈は色々とスケジュールを考えると、本当に何か面倒になって、何処へも行きたくなって来た 榊原はそんな我が子を黙って抱き締めていた 「虎之助と小虎、ガブとルシと金太郎の面倒は家族全員で見るので、君はレイと共に魔界とニューヨークへ行きなさい!」と譲歩して言った 「なら金ちゃんに説明した後直ぐに魔界へと行くとするわ! ある程度じぃさんに煽っておいて貰ったからね 誓約の地に金龍が還らなきゃ話にならないのよ」 「うし!気を付けて行って来い! 菩提寺までは送ってやるからな!」 烈は両親に乗せられ菩提寺へと向かった 金龍と黒龍に話をせねばならないから、菩提寺へ向かった レイ達ちっこいのは夏休みに入るなり、菩提寺に泊まり込みで鍛錬に明け暮れていた 烈は榊原の車から降りると、榊原は会社に向かって車を走らせた 烈は朝のお勤めをしている龍太郎と仁を呼んで貰った 二人が呼び出されたのは、菩提寺の人間でも滅多と出入りは出来ない応接室だった 何の話かと不安な面持ちで応接室へ来た龍太郎と仁だが、応接室のソファーに烈が白い猫を肩に乗せて座っていて驚いていた 宗右衛門は「まずは座られよ!」とボーッと立っている二人に声をかけた 龍太郎と仁は慌ててソファーに座った 宗右衛門は二人に「魔界へ還る時が来た!」と告げた 龍太郎と仁は息を飲んだ 宗右衛門はそんな二人の心境なんて知ってか知らずか?話を続けた 「時が来たのじゃよ!金龍! 主は魔界へと帰還して直ぐに創造神と誓約を交わした誓約の地の開拓を始めねばならぬ! 今後は指導者として魔界総てを見渡すのじゃ! そして黒龍よ、主は指導者となる金龍を支え、速やかに龍族の長に収まるのじゃ! 雅龍や他の龍族を上手く動かし、主はすべての動向を把握して動く事なく指示を出す 金龍しか見えて来なかった龍族はあの日、あの時、終焉を迎えた 終わらせたくないのならば、主は手となり足となり動く駒を育てるのじゃ! そして信頼出来る同胞を増やすのじゃ! さすれば自ずと主が龍族の族長となり果てへと繋がるじゃろうて!」 二人は烈の前に傅くと「「解り申した!」」と総てを了承した 烈は二人の前に黒い柔道着と赤帯を渡した 「魔界へ帰還した後、主等は此れを着るのじゃ! この件は閻魔の了承も得ている!」 二人は柔道着を手にすると、レイが応接室に入って来た 「いきゅ?れちゅ?」 「行くわよ!レイたん!」 「くーたんもいっちょ?」 「そーよ!」 「にゃら、ちれんのま、ね!」 「そうね、其処から神の道を開くわ!」 と謂うとレイは金龍に手を伸ばした 金龍は柔道着をレイに手渡すと、レイを抱き抱え烈と共に試練の間へと向かった 試練の間の襖をスパンっと開けると皆で部屋に入った すると部屋に入って直ぐに電気は切れて真っ暗になった 烈は呪文を唱えると、真っ暗の中歩き出した 烈は黒龍の手を取り歩き出す 「黒ちゃん 長の資質って何か解る?」 黒龍は「長の資質?何だろ?」と考えながら歩き出す 「きっと黒ちゃんは答えは出せないわよ! 長はね、人と周りを見極める力がいるのよ そしてね、その中に腐ったのがいたら、即座に切れるか?どうか?なのよ!」 そう言われ言葉に詰まる 「日頃 族長の顔なんて見えなくても大丈夫にゃのよ!でもねいざと謂う時、族長が出て的確な判断を下せるか?どうかなのよ!」 簡単に言うか中々それが出来る奴なんていないだろう 「頑張るよ!」黒龍はそう言った 「頑張らなくて良いのよ! 赤いのみたいに自堕落になれとは言わないけどね 神経質になる必要はないのよ 四龍の兄弟って性格が両極端にゃのよね 突き抜けて両極端なのね………」 「面目ない!」 「黒ちゃん、困った時は必ずボクに相談すると約束して!」 「あぁ、約束するよ!」 「破ったら………好きでもない女の人と結婚しちゃう呪文を唱えちゃうわよ!」 それはどんな不幸より不幸じゃないか!! 「約束するよ!どんな事でも烈に相談する!」 ニャッと嗤われ黒龍は焦った 「黒ちゃんはね赤いのと同じでね、時々空回りしちゃうにょよ! そんな時程誰の言葉も聞きゃあしやがらないのよ!」 「耳が痛いよ………」 烈は笑って神の道を閻魔の執務室の建物の前に繋げた 神の道を抜けると閻魔の邸宅の前の執務室の前に出た 烈は執務室のドアを開けて受付の鬼に、閻魔に逢いに来た、と伝えると応接室と通された 応接室へとやって来た閻魔は金龍と黒龍の姿を見て 「約束の時が来ましたか?」と呟いた 「そうよ、今日 この時より金龍は誓約の地の開拓者となり、龍族を率いて誓約の地へ移り住む事になる!だがそれは龍族が優れているからではない! 龍族を開拓の地へ追いやる為でもない! それは必要であって必然だと申そう! それを今夜 魔族に大々的に広めるわ! そして龍族にはより一層、魔界への協力をお願いするわ!それが引いては魔族の未来へ繋がる第一歩だからね!」 「解りました!素戔嗚殿から大体の話は伺っております! なので準備は万端です!」 閻魔はそう謂うと金龍と黒龍に向き直った 「お帰りなさい、金龍、黒龍!」 閻魔に謂れ金龍と黒龍は魔界へ本当に還って来たのだと実感した 閻魔もソファーに座ると烈に「今宵 金龍と黒龍の帰還を伝えます! その他に伝える事はありますか?」と問い掛けた 宗右衛門は「龍族 指導者 金龍、龍族 族長 黒龍!それを龍族、魔界全土に告知するのじゃよ!そして武術の教育に力を入れる! 近い将来 必ずやって来る災厄の為に、魔界中が団結して力をつけて乗り切らねばならぬ事なのじゃよ!閻魔!甘い事など言ってはおられぬ!」と言い切った 「総て了承させて戴きます! それより烈……肩に乗せてる御方は? 紹介はして下さらないのですか?」 只者ではない雰囲気の白い猫 猫に見えない事もないが、格の違いが分かり過ぎる猫なのだ それにただの猫ならば魔界へはやっては来られないだろう…… 宗右衛門は白い猫を肩から下ろし「姿を現せられよ!クー殿!」と言った 白い猫は大きく欠伸をして伸びると、靭やかな体は長く伸びて………まるでピューマかジャガーの様だった 二本立ちで立ったならば下手したら閻魔より大きいんじゃないか?って謂うサイズだった 「あちらには漆黒の闇に溶けるジャガーが悪さをして、飛鳥井の球技場にミサイルを撃ち込みやがったのじゃよ! だから儂は創造神へ頼みジャガーに匹敵する存在を頼んだのじゃよ! そしたらガブリエルを通して下賜されたのがクー殿なのじゃよ!」 と説明した 閻魔は「ならば聖神も反撃に出ると申されるのか?」と問うた 「炎帝もかなり乗り気でな、我等はやられっ放しは性には合わぬのじゃよ!」 と豪快にガハハハハハッと笑い飛ばした そんな所は素戔嗚尊にソックリで、閻魔は苦笑するしかなった しかも烈と康太は何故か似たもの親子で、あの二人が意気投合すると手が付けられません……と榊原がボヤく程なのだ 烈は立ち上がると「ボクはじぃさんちに行くわ! 金ちゃんと黒ちゃんは正装に着替えて龍族を集めて正装させておくのよ!」と言った 黒龍は「え?龍族の正装??そんなの無いってば!」とボヤいた 烈はジト〜っとした目を向け 「あるわよ、黒ちゃん」と言った 青龍とか役職のある者には正装は許されていた 黒龍も次代の長と謂う事で正装は持っていた だが他の龍族に正装なんてのはない! 閻魔が黒龍に「お前達が人の世に行った時から龍族と話し合い神事に着る衣装を作ったんですよ 神族は皆 神としての衣装をそれぞれ持っている だが龍族はどうです?長と次代以外は衣装すらない現状に烈はどう考えても差付けてるでしょ!と怒り狂い龍族を全員集めて【話し合い】を始めたのです!無論今更話す事なんて………と物申す者には龍族を追放されたいのか?と問い掛けた そうでないと謂うならば、話し合いに参加して意見を述べろ!と説教しまくり………皆で考えた龍族の正装を決めました! そしてそれを一人ずつ自分で縫わせ作らせたのです!衣装の費用も徴収し働かせ捻出させ、ついでに鍛えあげたのです もう龍族の中で聖神に逆らう者などおりません! 皆が納得して聖神を信用して果てへと逝くと約束を交わしたのですから!」と説明した あのゴロツキ同然の龍族もいたのに? 皆が聖神に従ったと謂うのか? 信じられない想いだった 烈は「銀ちゃんが頑張って縫製の仕方を教えたからね、皆が銀ちゃんに着いて習って作ったにょよ!本当に金ちゃんは良い奥さんを持ったわよ! もぉね銀ちゃん、皆と同じ事をして作り出すのが楽しいって謂うから若返ったわよ! 逢ったら再度妻に惚れちゃうわね!金ちゃん!」と笑って応接室を出て行った 閻魔は烈とレイと白い猫に変わって烈の背中に乗っている猫を見送り 「龍族は変わりました 一部の存在は………受け入れる事さえ拒否したので地獄界へ研修に出したりしました! 向こうが良いなら永遠に帰らぬともよい!と宗右衛門が送り出し地獄界で一番厳しい場へ【教育】を頼んだので、それはもぉ羅刹天殿は腕によりをかけて教育されたと聞く そんな者もやはり泣きついて来て、魔界へ還らせてくれと頼み込んで来た 烈はそんな者も受け入れ違えれば死ぬ呪文を施した、死にたくなきゃ違えねば良いだけであろう!と謂れ死物狂いで生まれ変わった者もいる ゴタゴタも文句も一切合切、烈が引き受けてくれたので、今が時だと踏み切ったのでしょう!」 金龍は「言葉もない……長であった儂がやらねばならぬ事であったのに……」と悔いた 閻魔は「貴方はもぉ長ではないので悔やむのは止めなさい!これからは龍族の指導者として、魔界の指導者として教えて鍛え上げ戦える戦士を一人でも多く増やして行って下さい!」との言葉を贈った 金龍は「はい!儂はもう違えばせぬ!」と言った 黒龍は「俺が長になるって今夜発表するのか?」と問い掛けた 「その予定です!まぁ長としての気心や構え等は烈が教育してくれるので心配しなくて大丈夫ですよ!その変わり烈が魔界にいられる時間は短いので寝れると思わない方が良いでしょう!」 元々が容赦のない奴だったが、烈の教えに耳を貸す様になってから更に容赦のない奴になった気がする まぁ閻魔ならばそうでなくてはならないのであろ……… 黒龍は「長か………」と呟いた 閻魔は「赤いのみたいには空回りはしないで下さいよ!」と言った 赤いの……お前どんだけ空回りしてるのよ?と兄は想った 「頑張るよ!」 「頑張らなくて良いと烈が言ってました 頑張るんじゃなく、周りを見て判断する長になって下さいね!」 「烈と同じ事謂うんじゃねぇよ!」 閻魔は笑って「やはり烈は我が弟の子なんだと私も痛感させられる事が多々とありますからね…」とボヤいた 其処へ建御雷神がやって来て 「何を悠長に話しているのじゃ! 我の電気ばかり取られておるのに、さぁお前も放送鳥に電気を送らんかい! 今宵は集会なんだぞ!今回から魔界全土へ放送を巡らせる事となるから、放送鳥も増やす事になったのじゃからな!」とボヤいて言った 「解ってますよ父者! 金龍と黒龍は自宅へ還り正装に着替えなさい!」 と言い閻魔は建御雷神と慌ただしく応接室を出て行った その頃烈はアルくんに乗り祖父の家へと向かって飛んていた 白い猫 クーは「あれが閻魔か?」と問い掛けた 「そーよ、どうかした?」 「神の目では良くは判らないだろが、彼は魂の半分を既に次代に渡しているのか? 全体的な魂が薄いからな、言葉にした」 クーは突拍子もない事を言った 烈はレイに振り向いた 「レイたん!」 「れちゅ!」 二人は引き返し閻魔の元へ向かった 「ボクの眼で解らなかったにょよ!」 と烈はボヤく レイも「れいも、わからにゃかった!」とボヤいた クーは「俺はお前等で見えぬモノを見る眼を与えられているからな!」と謂う それで納得した 烈は「ほーちゃん!お願いがあるにょよ!」と大声を出して鳳凰を呼んだ すると直ぐに烈の声を聞き届けてくれ、鳳凰が飛んて来てくれた 「烈、何か用か?」 「あのね、ボクじゃ背が足らにゃいのよ!」 「おっ、良いぞ!何でも取ってやるさ!」 「取るんじゃにゃいのよ、殴るのよ!」 「え?殴る?誰を??」 物騒な話しになって来て鳳凰は「誰を?」と問い掛けた 「えんちゃん!」と軽く言われて飛んで逃げ帰りたい気分だった だが有無を言わせぬ烈の迫力に鳳凰は逃げ帰るのも許されなかった だって烈を怒らせたらデカニン貰えないし、子の事で心配しなくても大丈夫だ!と言ってくれた恩もあるのだ 神々にまで鳳凰は別の存在からしか出ぬ!と告知してくれた それで煩かった跡継ぎの催促もなくなった 恩もあるし、デカニンも欲しい 苦悩を突き抜け鳳凰は、殴ってやるさ!烈の変わりに殴ってやるさ!と腹を括った 閻魔の星を詠み、閻魔の居場所を探す 閻魔は建御雷神と共に放送鳥の停留所にいた 烈は放送鳥の停留所へ飛んで行き閻魔の姿を見付けると 宗右衛門の声で「閻魔大魔王!」と名を呼んだ 閻魔は咄嗟に名を呼ばれ「はい?」と返事をした するとその身が金縛りになった様に固まった 烈はアルくんに「閻魔の顔の高さまで飛んで!」と頼むと、閻魔の顔の高さまで飛んでくれた 烈は閻魔の額に印字を切ると呪文を唱えた そして仕上げにクーが額に前足を置いた 「どう?クーたん?」 「まぁまぁだな!」 そう謂うと烈は地上に降りて、呪縛を解いた そして「ほーちゃん!お仕事よ!」と謂うと鳳凰は握り拳に力を入れて閻魔を殴り飛ばした 鳳凰に殴られた閻魔の体は吹き飛び、建御雷神が慌てて受け止めた 烈は歯を食いしばり泣いていた レイは閻魔を睨み付けていた 烈は「この魔界を途中で放り出すつもりだった?」と問い掛けた 閻魔は口から血を流して俯いていた 何も話す気はない頑固さに建御雷神は、何と言っても良いのか?困っていた そんな沈黙を破るかの様に閻魔の妻の蓮華が烈の前に傅いた 「お許しを!聖神様!」 深々と頭を下げる蓮華の頭を上げる様に 「ほーちゃん、起こして!」と頼んだ 鳳凰は土下座する蓮華を起こして立たせた レイはニブルヘイムの声で 「全て話しなさい!貴方がたの軽率な行いで総てが崩壊の道を辿るしかないのですよ?」と言った 冷たい声だった 容赦のない声だった 建御雷神は「場を変えよう!我が家へお越し下さい!」と言った 烈は「ほーちゃん助かったわ!」とお礼を言った 「俺は烈の為ならば何だってするさ!」と言った 「後でデカニン届けるわ その時、奥さんに八仙に頼んどいた漢方も届けるわね!」と言い鳳凰と別れた 鳳凰は名残惜しくも飛んで行った 烈とレイは愛馬に乗って建御雷神の家へと飛んで行った 家の前に逝くと天照大御神がいて烈の姿に気付くと笑顔で「烈ではないか!」と抱き締めた そしてレイを抱き締めて猫も撫で無でした クーは嬉しそうに天照大御神に撫でられていた 其処へ建御雷神が閻魔と蓮華を連れてやって来て、家へと入り応接室へと向かった 天照大御神も何かを察して烈とレイを応接室へと連れて行った 烈は「この猫はね漆黒のジャガーと敵対出来る様に作られた子なのよ!  この子はねボクでは視えにゃいモノを眼に映すのよ………クーたんは言ったわ 『神の目では良くは判らないだろが、彼は魂の半分を既に次代に渡しているのか? 全体的な魂が薄いからな、言葉にした』と言ったにょよ! ボクは視えなかった、だけどクーたんは視えた! 何故にゃの?閻魔……何故そんな事をしたの?」と問い掛けた 天照大御神は唖然とした顔で我が息子を見た 建御雷神も信じられない想いで閻魔を見た 蓮華は「我が子が………死にそうな病に掛かり……八仙に見せても釈迦に見せても……治りはしなかった そしたら閻魔様が自分の命を半分削って我が子に与えて下さったのです! そんな事をしたら………自分の命を縮める事になるのに………」と泣きながら話した 烈は「たけちゃん紙と書くものある?」と話した そして蓮華に「その子を連れて来て!」と頼んだ 建御雷神は即座に紙と書くものを用意して烈に渡した クーは立ち上がると、体を元の姿に戻して結界を張った そして「早くしないと1年しないうちに閻魔は消滅するぞ!」と言った 白い猫が話せるのは驚きならば、言ってる言葉にも驚きを隠せなかった 天照大御神は「倅が消滅すると申すのか?炎帝が還る前に消滅すると申すのか…………」と信じられずに呟いた 宗右衛門は「次代の閻魔では足りぬ、そして炎帝は閻魔の跡など継ぎはせぬ………魔界は終焉へ向かい滅ぶしかなくなる……軽率であったな閻魔! 何故そうなる前に儂に言わなんだ!」と計算しながら呟いた 炎帝は元々は冥府の者 だから絶対に表舞台には出はしない! 閻魔の変わりなんて絶対にしない! 魔界の為ならば、兄の為ならば惜しみなく協力するだろうが………閻魔が次代へ変われば…… 魔界の為に動きはしないだろう 青龍の妻に収まり、ひっそりと関与など一切せず過ごすに決まっている 烈は閻魔の星を詠んだ 閻魔の置かれている立場、状況、総てを詠んだ 春先に閻魔の果てを、魔界の果てを、詠んだ時にはこんなに終焉へ向けて転がってはいなかった筈 何処でどうなった? 烈は必死で打開策を詠んでいた 閻魔が終焉へ向かうならば………何かないか? なにか絶対にある筈…… あぁ、役職に着く神には神名が必ず在るのだ 青龍の神名が『蒼龍』と呼ばれている様に…… 烈は閻魔の神名を探った そして神名を目にして筆記を止めた 閻魔………神名は『炎雷大神』別名八雷神!! 「えんちゃんは伊邪那美の体に宿した8柱の雷神の転生者なのね……あれ?母しゃんが法廷に呼び出した八雷神は8柱いたわよね?」 転生しているならば八雷神は一柱欠けているんじゃないか? 烈は何故?こんなミスが???と何度も何度も計算し直す クーが「多分 法廷にいるのは歹から呼ばれた魂の残像で、八雷神の一柱は転生して閻魔の中にいる 魂と歹は元は一つだったモノ その力は同等であり、そのモノと何ら変わりはない! 其処の天照大御神は始祖の血を継いでおられるから血を呼び起こせば………繋がる可能性がある!」と言った 「なら黄泉がえりの儀をやらないとね その前に次代の閻魔を見せてくれにゃいかしら? あのさ病は適切な処置、適切は対応をしないと手遅れになるのよ! 八仙や釈迦が病を治せるの?治せないならば誰に見せるべきか?星詠みの婆婆にでも聞くべきだったのよ!」 とキツい一言を放った 蓮華は部屋へと向かい我が子を連れて来た その子は………痩せ細り……弱っていた クーは「閻魔の命の半分を削ってこの消耗ならば先に治療しかないぞ! 俺が炎帝の所へひとっ飛びしてこの子を届ける事にする!さすれば炎帝は医者に見せ適切な処置をしてくれる筈だろ?」と言った 「クーたん………お願いね!」 「俺は炎帝に託すだけさ、後は炎帝か連れて行くだろ?」 「なら頼むわね!あまちゃんその子をクーたんの背中に括り付けて!」と言った クーは体を大きくすると、天照大御神は背中に閻魔の子を乗せて紐で縛った 「気を付けて連れて行くのよ!」 「俺は一瞬で空を駆けていける、強めに縛っておいてくれ!」 天照大御神は「承知した!」と強めに縛った 準備が整うと烈はクーと共に外に出た クーは一瞬にて空へ駆け上がり走って行った 烈は建御雷神の家へと戻り応接室に入りソファーに座った 「何故こうなったのか?話してもらえる?」と問い掛けた レイが「もぉねいっちょ、やっちゃう?」と謂う レイがこんな風に謂うなんて相当に煮詰まっているからだった 何で金龍と黒龍を配置しに来たら、こんな問題が起きているのよ? 烈も話が進まないと想うと 「とぅしゃん!じぃしゃん!」と大きな声で叫んだ すると暫くすると素戔嗚尊と大歳神が建御雷神の家にやって来て応接室へと入って来た 「孫に呼ばれたから参った!」と素戔嗚尊は言った 大歳神は「どうした倅よ!」と我が子を抱き締めた そしてレイの頭を撫でた 素戔嗚尊と大歳神はドサッとソファーに座ると 「で、話してもらえぬのか?」と言った 建御雷神は話をした 「だが我等も何が起こっているのかは………解らぬのじゃよ!」 天照大御神も「横に住んでいても生活は別……それ故良くは解らぬのじゃよ!」と謂う 蓮華はポツポツと話を始めた 「外で雷帝と遊んでいた時、雷帝は黒いぬいぐるみを拾いました そのぬいぐるみが相当気に入ったのか?拾って持ち帰ってしまい以来肌見放さず一緒に寝ていたのですが………まるでぬいぐるみに魂を吸い取られているみたいに……息子は弱って行きました そして虫の息になり………閻魔様が魂を削って息子に分け与えました………」と話した 烈は「そのぬいぐるみ、今は何処にある?」と問い掛けた 「息子が持っています!」 それこそが狙いだったのか? クーが雷帝を背負い人の世に逝く時にそのぬいぐるみが爆発したりする気なのだろう……… クーの存在が邪魔だから……… もしやクーの存在が知らないとしたら? それは雷帝を助けようとした炎帝か青龍に向けられた敵意なのだと烈は想った 天照大御神が「ぬいぐるみってこれか?」と縛るのに邪魔なぬいぐるみを離していた事を忘れていた 烈は「あ!それ外に放っ……ぎゃー!!!」と悲鳴を上げた ぬいぐるみは爆音を立てて爆発した 建御雷神の家は吹き飛び……跡形もなくなった 烈はその場に倒れていた 天照大御神も手を吹き飛ばし……倒れていた 素戔嗚尊も大歳神も建御雷神も閻魔もレイも皆、爆破の被害を受けていた レイは頭から血を流し………怒り狂って呪文を唱えていた 烈がその口を押さえて「レイたん、痛い?」と聞いた 「れちゅ……れちゅ………れちゅがちんだら……れいもちぬ!」と泣いた クーがひとっ飛びして雷帝を炎帝に預けてやって来ると、悲惨な状況に目を疑った程だった クーは怪我をしている皆に癒やしの呪文を唱えた そして次は破壊された屋敷に反射となる再生の呪文を唱えた 破壊された屋敷は一瞬に元の形になり、壊れる前に戻っていた 天照大御神の吹き飛んだ腕も元に戻っていた 「この爆破は仕掛けた本人に還る様に弾き返した 今頃人の世の何処かで爆破が起きてる頃だろ! それと雷帝、暫く入院する事になった 烈、お前も帰ったら病院へ来いと、あの怖い医者が言っていた!」 「ありがとうクーたん、助かったわ こんな魔界の中心に仕掛けられていたなんて………ね、黙っていられないわ!」 「多分、漆黒のヤツの仕業だろ? この魔界に漆黒のヤツの手下がいる でなきゃぬいぐるみは雷帝が拾う様に仕組まれてなんかいなかった筈だ!」 「電磁波と超音波流してるのに?」 「それは頭にチップ入れてるヤツの対策だろ? 漆黒のヤツには効かねぇよ!」 「漆黒のヤツは動向読めないし、お手上げにゃのよ!」 「ならサクサク夜までに復活の儀をやるとするぜ!」 「クーたんは何故ボクらの異変に気付いたにょ?」 「屋敷に結界張ったからな、何かあれば即座に解るんだよ!」 とサラッと言った、そして 「呪いの掛かったぬいぐるみだったからな、呪いを跳ね返して再生の呪文を唱えられたんだ  でなきゃ屋敷も吹き飛んだ手も元通りになんかならなかった! あのぬいぐるみの仕掛けに気付いて、他の奴が手にしたら爆発する仕掛けだったんだろ? それよりも復活の儀を早くやるぞ! これ以上の横槍は避けたいからな!」 と言った 烈は「儀式は何処でやれば良い?」と問い掛けた 「総結界が張れる地!」 クーが言うと天照大御神は 「ならば天高原ならばどうじゃ?」と問い掛けた クーは「ならば其処で!」と言った 天照大御神は八咫の鏡を取り出すと呪文を唱えた 応接室にいた者は眩い光りに包まれ……目が開けていられなかった 烈は「光の速さってこれね!」の嬉しそうに話していた レイは「ひかりふぁいばぁー?」と聞いた 「それより早いにょよ!」と謂う レイは「ちゅごい!」と喜んでいた 閻魔は今にも死にそうだった 閻魔の魂は垂れ流しの状態で黒いぬいぐるみに吸い込まれていた それを烈が封印しクーが封印を完璧なモノにしてくれた 魂が留まっている今 閻魔は人間で謂わば仮死状態みたいなモノだった 天高原へ到着するとクーはその場に総結界を張った 烈は魔法陣を書いて復活の儀を行う準備をする 呪文を書いた上に水銀を流し魔法陣を完成させる 烈は建御雷神に「この魔法陣の上に水銀を流して!少しでもはみ出たら効果を無くすから気を付けてやるにょよ!」と言った 建御雷神はそんな繊細な事……と不安になる 天照大御神が水銀を手にするとサクサクとはみ出る事なく魔法陣の上に流して行った 「えんちゃんはね今、人で言ったら仮死状態だからね、このままだとジワジワ弱って1年しないうちに衰弱して死ぬしかないのよ! まぁ神だから死ぬと謂う言葉は当てはまらないけどね、消滅して冥土を渡るしかにゃいのよ!」 それは嫌です…と閻魔は言った 「なら復活の儀を行うしか道はないのよ! うかくかしてたら消えるわよ!」 閻魔は気を引き締めて歯を食いしばった 蓮華は心細そうに見守るしか出来なかった 素戔嗚尊は「儂らを呼んだ本当の理由を話すがよい!」謂う 烈は「魔界に黒いジャガーの手下がいるわ!」と単刀直入に話した 大歳神は「電磁波や超音波流してるんじゃねえのかよ?」と言った 「クーたんが謂うには超音波と電磁波は頭にチップ入れたのにしか効かないのよ! 普通の人間や魔族に紛れて暮らしているなら解らないのよ………まさに雷帝はそんな輩に狙われたのよ……普通ね落ちてるのは絶対に拾っちゃ駄目だと教えないと駄目なのよ! そんな事さえ守れにゃいから狙われちゃうのよ!」 蓮華は「本当にすみませんでした、捨てようとしたけど既に拾って離さなかったので………」と弁明した 「奪っても殴っても捨ててれば、こうはならなかった!今後は殴り倒してでも謂う事を聞かせないと駄目みたいね!  甘やかすだけが教育じゃない! 雷帝も菩提寺に住まわせて教育させようかしら? 本当に常識がない子だと先が心配にゃのよ!」 烈の言葉を聞き天照大御神は 「それがよい!次代の天龍や金龍も今 人の世で一般常識から学んでおるのじゃろ? ならば蓮華、主は人の世に渡り一般常識から学ぶがよい!主も子も常識がないのかも知れぬな!」と言った 水銀を魔法陣の中へはみ出す事なくなぞり流して逝くと魔法陣が完成した クーは空を飛びながら閻魔を掴むと、魔法陣の真ん中へ連れて行き下ろした 「東西南北、東を儂が、西をレイが、南をじぃさんが、北をとぅしゃんが立ってボクの詠唱に合わせて気を送り込んで下さい! そしてあまちゃん…………原始の血を閻魔へお願いね、たけちゃんはあまちゃんを支えていて! では行くわよ!」 クーは閻魔の頭上に留まっていた 烈は長い詠唱を始めた 皆 身動き一つせずに閻魔に気を送った 長い詠唱を終わると烈は「あまちゃん血を!」と言った 天照大御神は髪留めを手にすると、手にぶっ刺した 流れる血が魔法陣の呪文の中を這いずり回る様にして動いて逝くと、閻魔は呻き始めた 天照大御神の血が呪文を書き換えると、天照大御神の血は止まり、貧血を起こす天照大御神を建御雷神は支えた 「レイたん、クーたん!」 と謂うとレイは「原始の血よ!伊邪那美 伊邪那岐の血を与し炎雷大神!今こそ、その血を蘇る時が来た!」とニブルヘイムの声で告げた クーは「原始から始まる血を持つ者よ!その受け継がれし生命を持つ者よ! 今こそ本来の生の意味を知り、役目を果たす時が来た!さぁ覚醒めよ!原始の血よ!」と呪文を唱えた 閻魔は俯いて壊れた人形の様に、項垂れ時折ピクピク動くだけになっていた だが魔法陣を這う様にして、天照大御神の血が閻魔に吸い込まれる様に流れて逝くと、確りと生気に満ち溢れた顔で前を向いた 宗右衛門は「名は?」と問い掛けた 閻魔は「神名を炎雷大神、通り名を閻魔と申します!」と答えた 「原始の血は蘇ったか?」 「はい、私は確かに母者と父者の子として生を成しましたが、本来の生まれて来た意味を知りました!」 「主は魔界の王として指導者として、此れからも魔界で生きるが良い じゃが今後はどんな小さな事でもすぐに報告されよ!でなくばこの手は二度と使えばせぬ! そして……小さな体の烈とレイではこの負荷に耐えられぬのじゃよ!」 と言い烈はぶっ倒れた レイも気絶する様にぶっ倒れた クーは「この二人は人の世の医者に見せる! 主等は魔界へ帰るがいい!」 と言い烈とレイを口に咥えると姿を消した

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