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第68話 不穏な空気 ❶

烈は久遠の処置により眠らされていた クーが傷付いた事がショックで泣いちゃったから、レイが飛んで来てしまった 処置中に湧いて出たレイを久遠は捕獲して、処置を終え烈を個室に入れた後、カンファレンスルールへとレイを連れて康太達を待ったのだった その後、烈のベッドに入れられたレイは、ずっと烈を抱き締めてくれていた レイの温もりに烈は何とか正気に戻れた こんな事で挫けていたら1000年続く果てなんて築けない だけど眼の前で誰かが傷付くのは見たくはないのだ………… 傷付いて欲しくないのだ 自分が未熟だから誰かが傷付くのだ もっと賢く立ち回ねば………と烈は想う 「それは違うぞ!倅よ! お前が想う程、世の中は上手くは回ってはくれねぇんだよ!不自由な世界なんだよ!この世の中は!」と声が響いた 「とぅしゃん………」 「お前は遥か昔から頭で考え過ぎなんだよ!」 「でも考えにゃいと……」 「幾ら考えても何も出ねぇ時もある! お前は気難しく考えるばかりだからな、世の中が不自由に感じるんだよ! 考える前に自分を信じてやれ! 自分は絶対に裏切らねぇって事を知りやがれ!」 父の声が胸に響いて来る 「とぅしゃん………」 「まずは寝ろ!そして起きたならば踏ん張れ! 己の足を大地に着けて確り踏ん張れ! そしたら歩き出せ! 父は何時だってお前の為にいる! 歩けないならば背中を押してやろう! 蹲っているならば抱き上げて助けてやろう! 儂の愛する倅よ!父はお前の為にいる! それを忘れてはくれるな!」 烈は泣きながら頷いた そして意識は遠くなり眠りに着いた 夜遅く烈の病室に隼人が来ると神威がいて、隼人は驚いた そして聞くのだ「神威、何時からいるのだ?お腹減っていないか?今日は何か食べたのか?」と。 「儂か?儂は忙しくて食う暇なんかねぇ程に忙しくてな………気付けば食ってねぇ事はザラだ! そして今朝から何も食ってねぇな!」とボヤいた 隼人は「神威が烈の病室にいる、そして何も食べない!!何か持って来てくれ!」と康太にラインした 康太はラインを受け取り、それを榊原に見せた 榊原はキッチンに向かい重箱を並べると、慎一に「おにぎりをお願いします!」と言った 慎一は即座におにぎりを握り始めた 「一段をおにぎりでお願いします!」 二段を唐揚げや卵焼きを作り埋めて行く 三段目をフルーツを入れ彩り、作って行く 完成するとそれを慎一に託した するとそこへ面倒臭い烈命の竜馬がやって来て 「ひょっとして烈………入院してるのか?」と問い掛けた 烈が出掛けて還って来なかった 何度も連絡しても連絡はつかない 何かあったのか?と想っていたら、烈は今夜は急用で来られない!と謂われた 不思議に思っていたのだ 榊原は「黙りなさい!他の人に絶対に謂うのは許しませんよ!」とキツい口調で口止めした 「解ってます………でも心配で………」 「メンバーは?どうしました?」 「客間で雑魚寝してます!酔って幸せそうに寝てます!」 「ならば君だけ来なさい!」と言い榊原は竜馬に重箱を持たせた 「慎一には全て話してあります! なので慎一と共に病院に行きなさい!」と言った 竜馬は慎一と共に病院へ向かった 榊原は片付けをして、寝室へと引き上げた 慎一は歩いて病院へと向かった 病院へ行くまでに慎一は今日あった事を竜馬に話した それを聞いた竜馬は「烈………そんな大変な目に合ってたの?」と呟いた 病院の救急搬送の出入り口から警備員に烈の所へ行くと告げると、警備員は即座に二人を病院の中へと招き入れた エレベーターに乗り個室病棟へ向かう 一番の奥の個室が飛鳥井専用の個室になっていた オーナー権限で良く入院するお子様達の為にリニューアルする時に決めたのだった 病室のドアをノックして入ると神威はソファーで寝ていた 慎一は「神威、ご飯ですよ!」と謂うが起きない トキが嘴で突っ突くと「トリ臭くなるじゃろうが!」と怒った トキはムスッとした顔で「起こしてやってるんだろうが!ご飯だってよ!」と言う 慎一は重箱の一段と二段を神威の前に置き、三段目をトキの前に置いた トキは瞳を輝かせ「良いのか?」と謂うと、羽根の中から妖精を出してフルーツを食べ始めた 慎一はそのちっこい妖精を目にして 「クロスですか?」と問い掛けた クロスは大きな葡萄に齧りつき「そうです!お久しぶりです!慎一さん!」とご挨拶した 少し前に飛鳥井の家にやって来た時に、烈の兄達にお饗しを受けて、その時慎一はフルーツを用意して食べさせてくれたのだった 慎一は「どうしてクロスが?」と問い掛けると、クロスは「ボクは胸騒ぎが止まらなくて、烈の所へ行くと謂うトキと共に人の世に来たのです! トキの羽根に入れさせて貰っていたのです だからトキは羽根で吹き飛ばせず、嘴で車を咥えて放るしかなかったのです!」と説明した クロスとトキは仲良くフルーツを食べていた 神威は重箱の中のご飯を全部綺麗に食べると 「仕事が残ってるから帰るとするわ!」と言った 慎一は「忙しいのですか?」と問い掛けた 「烈を殺そうとした女!…………タダで済ますかよ! それでなくても目が回る程に忙しいんだよ! 飛鳥井から生コン屋への賠償請求やらも検討してくれ!と謂れ案件抱えたからな、一日が48時間は欲しいぞ!」 と神威はボヤいた 神威は眠い目を擦りつつ還って行った 慎一は重箱のフルーツを紙皿の上に乗せて、食べやすくして重箱を片付けていた 静まり返った病室に目映い光が包むと、慎一は想わず目を瞑った 病室に大天使ガブリエルが姿を現すと、手には白い猫を抱いていた トキは「治ったのか?それとも全く同じの別物か?」と問い質した ガブリエルは「別物ではありません!烈のクーです!創造神がボキボキに折れたクーを癒やして最強の肉体を与えたそうです! 創造神も車に突っ込まれた程度でボキボキに全身の骨を折ってしまうとは想ってらっしゃらなかった様です………なのでクーには辛くて痛い目に遭わせてしまった事を悔いてらっしゃいました! なので創造神は全精力を注いでクーの再生をなさいました!天空神も協力なさって最強の肉体を創られたのです!なので烈のクーのままです!」と答えた トキは安心して「良かった!本当に良かった!」と泣きながら答えた ガブリエルは竜馬にクーを手渡した 竜馬はクーを渡して貰い安堵して抱き締めた 「それでは私は此れで!」と言い姿を消した 竜馬は「俺がクーと共に烈に着いてます!」と謂うと慎一は重箱を回収して還って行った トキは「クーが戻った事だし俺もクロスと魔界へ還るとするわ!」と言った 竜馬は「トキ、クロス、気を付けて還るんだよ!」と謂うとクロスは「また魔界へ来て音楽を奏でて下さい!」と言った 「あぁ、また音楽を奏でに行かせて貰うよ!」 竜馬は残ったフルーツをハンカチに包むと、クロスを落ちない様に一緒に包みトキの嘴に結んだ 「素戔嗚殿に宜しく!」と謂うとトキは頷き、病室の窓を開けると外へと飛び立って行った 竜馬は窓を閉めて、烈の傍に行き手を握った 「烈……俺を置いて逝かないで………」と握った手に顔を埋めて呟いた 「りゅーま、泣かないのよ」と烈は言った 「烈?」と竜馬は顔を上げたが、烈は寝ていた だが竜馬の声を聞き慰めてくれたのだ 竜馬は烈の手を握ったまま……ずっと顔を埋めていた そして知らないうちに眠りに落ちていた 烈が目を醒ますと竜馬がギュッと握り締めているから、竜馬を起こした 「りゅーま、起きるのよ!」 烈の声に竜馬は目を醒ました 「烈、大丈夫なの?何処か痛い所ない?」 と竜馬は心配して問い掛ける 「大丈夫よ、昨日は自分の不甲斐なさに打ちのめされただけよ………」 「烈…………」 「眼の前で………誰かが傷付くのは見たくはないわね………」 「烈、クーは還って来たから!」と言いソファーで寝かせていたクーを持ち上げると烈の所へ連れて来た 烈は瞳を潤ませて「クーたん!!もう大丈夫なの?」と問い掛けた クーは怠そうに「あぁ大丈夫だ!創造神に治して貰い、前よりも頑丈に補強されて還って来たからな!烈………心配させてごめんな!」と言いクーは肉球で烈の頭を撫でた 竜馬は安堵していた だが廊下を台車が来る音を聞き、クーを烈のベッドに押し込み隠した そして朝食のテーブルをスライドして出してやる すると泰地が「烈、朝だよ!」と言い朝食を運んで来てくれた 烈は「たいちゃん ありがとう!」と言い朝食を乗せて貰った 泰地は烈の頭を撫でて、個室を出て行った 一生が病室にやって来て「隼人、竜馬、飛鳥井へ還って朝食食って来いよ!」と言った ソファーで寝ている隼人は「お腹減ったのだ!」とボヤいた 「ほらほら、竜馬を連れて飛鳥井へ行って食って来いよ!」と謂うと隼人は竜馬の手を取ると 「還るのだ!お腹減ったのだ!」と竜馬を急がせた 竜馬は「ご飯食べて来るからね!待っててね!」と言い病室を出て行った 一生は「烈、大丈夫か?」と心配して声を掛けた 烈は朝食を食べながら、一生にベッドの横のモッコリした塊を取り出して見せた 一生は驚いて「クー!!治ったのか?それとも似た別物なのか?」と問い掛けた クーは眠そうな目を開き 「烈のクーだよ、んな簡単に別物と入れ替えられて堪るかよ!」とボヤいた その口の悪さに「おー!クー!もう大丈夫なのか?」と問い掛けた 「あぁ今は前よりも頑丈になったらしくてな 何処が変わったかは解らねぇが、頑丈になったらしいからな、もう大丈夫だろ?」 其処へ久遠が診察の前の時間を使いやって来たから、クーは一生の背中にへばり付いて隠れた だが久遠は病室を見渡して 「トリがいなくなったら、今度は猫か! 個室は、と謂うか病室はペット禁止だぜ!」 クーは「済まない久遠………キーホルダーサイズになるから許せ!」と謂う 久遠は一生の背中にへばり付いているクーをバリッと剥がすと撫でて 「お前は抜け毛とかあるのか?」と問い掛けた 「俺は姿形は黒いジャガーに対抗する様にこのカタチだが、猫とは違うから毛は抜けねぇよ! 俺の毛は抜けたとしても、即座に消滅する この世に何一つ遺さない様に作られているからな!」 「ならばお前は烈を護る為に存在するんだな! ならば個室だしいても構わねぇぞ! だけどお前が傍にいるなら大丈夫だろうし退院して良いぞ!やる事がめちゃくそあるんだろ?」 「ありがとう!せんせー!」 「でも無茶はするなよ! 命を狙われているならば尚更だ! まぁあの薬局の噂は俺も聞いていた 態度が悪いのがいるから、別の薬局に行くとまで言ってたしな!正されるなら皆も其処へ行くだろうさ!」 烈は久遠にまで噂が轟いている事に驚いていた 「んとにね、不在だったり子供だったりすると、ロクな事をしないのよね!」とボヤいた 「年明けたらまた検査するからな! その前に何かあったらすぐに来い!」 「はい!せんせー!」 烈を撫でて久遠は病室を出て行った 一生は食器を廊下に片しに行って戻ると、烈は入院した時に着ていたスーツに着替えていた 一生は「なら飛鳥井の家へ帰るとするか!」と言い個室を後にした 一生は病院まで歩いて来ていて、二人で歩いて飛鳥井の家に戻った 飛鳥井の家に還ると烈は何時ものように掃除してお風呂に入った そして着替えをネットに入れ洗濯籠に入れておく 新しいスーツに着替えると、応接室へと向かった クーは朝食を用意して貰い食べていた 何時もの光景に家族はホッコリと癒やされるのだった 仕事納めの日 烈は朝から会社へと顔を出していた 社員達は大掃除の為、マイお掃除道具を手にして戦闘準備に入っていた 皆で会社を磨き上げ今年最後を飾るのだ! 社員達は闘志を燃やしていた 「飛鳥井建設 仕事納め大掃除!始まります!」 と榊原の号令の元、皆は配置について掃除を始めた 烈は宗右衛門の部屋で【R&R】が出したテストを見ていた そしてそれを並べ始めた その作業を黙々とやる 不平不満が出るのは承知だった 退職者も大量に出さねばならないかも知れない それでもやらねばならない事だった ヨニー©イギリスでもそれをやった 事務仕事だけしてれば良いと高を括った社員達を現場に放り込み、実践で【ヨニー©イギリス】と謂うモノを解らせた そしてローテションで部者を移動させ【仕事】をさせた それは何時しか恒例行事になり、皆必死に食らいついて会社を更により良くして行こうと団結して今に至る だからやらねばならない事だと烈は思っていた 施工では既にやらせていた 昨年事務で入った者には、ますは現場を知らせる為に現場に配属した 入社前の説明会でそれは伝えておいたから、自分の入社した会社を知る機会となっていた 飛鳥井はそれに比べたら、かなり劣る 自分の会社はどんな事をしているか?知らない やはり新入社員を取るならば、まずは現場を体験させねばならない、と考えていた 烈は竜馬が作ったテストで、巫山戯ている回答をした者は現場を知らせる事にした 製図課の者も数人、現場に出す それを大掃除が終わった後に伝えるつもりだった その作業を昨夜せねばならなかったのだが、衝撃が強過ぎて……出来なかったのだった 烈は父に「大掃除が終わったら講堂に集めて下さい!」とラインした 直ぐ様『承知しました!』と返信があり、烈は竜馬と兵藤を呼び出した 二人は兄達と共に掃除のチェックに回っていた 連絡を受けて直ぐに駆け付けて来た 烈は竜馬に「講堂のプロジェクターに投影するのを作るのよ!」と言った 竜馬はPCを取り出すと、直ぐ様仕事に取り掛かった 兵藤は「烈、最近少しだけ滑舌よくないか?」と問い掛けた 「崑崙山で神髄師がくれる漢方飲んでるからね! 滑舌が良くなる成分混ぜて作ってくれねるのよね!でもまだ………完全じゃにゃいからね」 「そうなんだ、嫌…前に比べたら格段に治ってるから、成長したからなんだと想ったんだよ!」 「でもね……りゅーまの発音は難しいのよ 竜みゃとなっちやうからね、ゆっくりとりゅーまと呼ばないとね………」 「漢方飲んでればその内もっと滑舌良くなるさ!」 兵藤は烈の頭を撫でて謂う 「あ、ロードから二人の活躍は送られて来るのよ 頑張ってるわね!二人共! きっとイギリスで過ごした日々は政治家人生の土台になるからね、頑張ってね!」 「おー!お前や康太に誇れる自分でいたいからな!頑張るさ!」 兵藤も手伝いPCに【現場】【他部署】等と打っていく 打ち込みが終わると烈は竜馬と兵藤と共に講堂へと向かった そして準備をする プロジェクターに映し出す画面を確認すると、そのまま大掃除が終わるまで講堂で待機する事にした 昼になり榊原は烈と兵藤と竜馬の分のお弁当を持ってやって来た 清隆、瑛太、玲香も翔達と共に講堂へやって来て、一緒にお昼を食べる事にした 烈の背中から白い猫が顔を出すと「俺の分はあるのか?」と問い掛けた 翔は「あるよ!クーちゃん!だから手を拭こうね!足は?今日は床とか歩いた?」と問い掛けた クーは「今日はずっと烈の背中に隠れてたから歩いてねぇ!」と答えると手だけ消毒してやる そして皆で楽しくお昼を食べた 康太は烈を見ていた 烈の髪は風もないのに揺れていた まだ揺れてますがな……と康太は想う 烈は「母しゃん!」とそんな康太の思いとは裏腹に元気にニコッと呼び掛けた 「あんだよ?」 「骨、明日にでも菩提寺に持って来れないかしら?」と尋ねた 康太は「………出来ねぇ事はねぇがどうするのよ?」と尋ねた 「依代に霊を下ろしボクの目に映し出す 紫雲が手伝ってやると言ってくれてるので、それをやるのよ! そしてレイが視覚を共用してくれると謂うので、皆にもそれは見られる様にするにょ!」 「お前体力持つのかよ?」 康太は心配して問い掛ける 「母しゃんや、かなにー、おとにーには視えるんじゃないかしら? ボクの傍に………訴えて来ている者達の姿が………」 大空は「視えてるよ………僕の目には腐乱した【今】の姿が………」と答えた 音弥は「僕の目には【生前】の姿が視えてるよ!」と言い 康太は「あぁ、悪鬼になりたくなくて、意識をやっと止めている霊達が視えるな!」と謂う 「この人達と新年は迎えたくはないのよ!」 「…………だな…」 ならば然るべき訴えを聞き、黄泉の旅路をさせるしかない だがその旅路は自ら命を断った者達には果てしなく苦しい修練の旅路となる だが彷徨い悪鬼となるよりはマシなのかも知れない 康太は覚悟を決め「ならば唐沢に言い骨を持って越させるとする!」と言った 榊原は「取り敢えず大掃除が終わったら、講堂へ社員を越させるので、それを先に片付けねばなりません!」と現実に引き戻し謂う 宗右衛門は「退職者が大幅に出るやも知れぬ、それでもやらねばならぬ事じゃから………」と言葉にした 清隆は「それでも逝かねばならぬならば、我等は逝くしかないのです!」と烈の背を押す 烈は「ボクね飛鳥井建設 相談役の肩書なしにするから!」と突然謂う 瑛太は「え?飛鳥井建設は宗右衛門なくしてどうしろと謂うのですか!」と慌てて止めに入った 「えーちゃん、飛鳥井建設 相談役はじぃしゃんがなるのよ! それに伴い一つずつ繰り上がるのよ!」と謂う 清隆はまだまだ楽になれない現実を突き付けられ 「相談役……隠居は出来ませんか……」と残念そうに言う 「楽になった途端ボケるわよ!じぃしゃん! 年寄りは頼られ慕われ残るに限るのよ!」 と無碍に言われる 瑛太は「一つずつ繰り上がるならば副社長の席はどうします?」と問い掛けた 「飛鳥井綺麗を一年間招集するわ! その次は志津子を、その次は……栗栖を! もう話しは付いてるのよ! 綺麗が会社に来るのは……実験も兼ねてだから だがらボクの部屋はやたら大きくしてあるのよ ボクと綺麗とで共同の事業もやってるからね その大詰めでもあるのよ、だから一年間招集するのよ!それと、しづちゃんは本当に出来る女なのよ!だから違う目線で会社を見て貰うのよ! そして栗栖は表舞台に出さなきゃ……翁の跡を継ぐ者に負けちゃうからね、顔を売りたいのよ! その時期だと母しゃんならば解るわよね?」 とサラッと言った 康太は「あぁ、良くもまぁこんな適材適所配置されましたね宗右衛門!流石です! 綺麗の頭はコンピューター並みの天才、会社の抜け穴を調べる機会と見ましたか? それと志津子は盲点だったな、違う目線で見れる最適だとオレも想う そして栗栖………やはり負けますか………翁の器を持つ子には栗栖も負けますか……そりゃ兄としての自信も尊厳も無くすやも知れない 暦也は二人の子を手放さねばならなくなるか…… 有栖を手放した事、未だに後悔してるんだろ? ならば栗栖を潰す事態になったら、あの男は正気を保てねぇんじゃねぇか?」 と、適材適所配置された存在を口にする 「…………アレは負けて当たり前にゃのよ…… あんな化け物に勝てる奴なんてそうそういないわよ!」 「化け物じゃねぇと翁は継げねぇかんな………」 「まぁ化け物に対抗する方が疲れるからね! その前の布石にゃのよ!行く行くは栗栖は【R&R】の支社長にする予定なのよ! その実践の場に飛鳥井を選ばせて貰ったわ! にーにや瑛智が高等部へ上がって正式に仕事に携わるまでの時間稼ぎにはなるわよ!」と星を詠み、運命を詠み、果てへと繋いだ世界を口にする 康太は深々と頭を下げると 「総ては宗右衛門の想いのままに!」と従った 烈はニコッと笑ってサコッシュの中からプレートを取り出すと 「父しゃん、4月になったら付け替えお願いにゃのよ!」と頼んだ 榊原は「部屋は移動はないのですか?」と問い掛けた 「ないわよ!だからのプレートなのよ! 部屋の移動はない、でも一つずつ繰り上がって後30年はこのまま頑張って貰うつもりなのよ! まぁじぃしゃんは70になったら、ばぁしゃんと隠居しても良いけどね! でもやる事は沢山あるから完全隠居にはなれないけどね!」と謂う 清隆は「私の華麗なる楽隠居の老後が………」とボヤいた 玲香は「忙しい方が日々の楽しみも増えるではないか!」と夫を慰めた 家族は笑っていた 昼を食べ終わると社員達は講堂へと集まり、部署ごとに座った 清隆は1年間の労を労い、来年も宜しくと謂う 瑛太も今年は此れで終わりですが、来年も宜しくと言い終わる 烈が竜馬と兵藤と共に壇上に上がると、プロジェクターが下がった 「このプロジェクターに名前が乗った者は、仕事始めから移動となる!」と告げた どよめく社員達を他所に烈は続ける 「現場に逝く者と他部署で働く者は、次の者となる?!」 と謂うと現場に逝く者、他部署へ移動の名前が投影された 現場の方に名前が載っていた一人の女性社員が「何故!私は事務職で入ったのに!何故現場に行かねばならないのですか!」と叫んだ 宗右衛門は「貴殿の答案はまるでなってなかった このテストは心理学の本を何冊も出されているサー・ウッズスタンに依頼して作成して貰った 所々に心理描写を織り込ませ作って戴いた! 主はこのテストで舐め腐った答えを書いた 辞めるならば退職されても構わぬと申しておるではないか! 主が一人辞めた所で、また補充すればよいだけの事じゃ!痛くも痒くもない!」と吐き捨てた 女性社員は戦慄いて黙った 男性社員も「それは強要ですか?」と問い掛けた 「嫌ならば辞めればよいと、幾度も申しておるではないか! 強要などはしておらぬよ! だが我が社で仕事をするならば、建設会社の社員として働いて貰う為の、努力はしてもらわねばならぬ! 現場から還った社員に臭くて汚くて本当に近寄らないで貰いたいわ!と抜かす社員など、我が社には不要なのじゃよ! 現場で働く者がいてこその建設会社なのに、それを理解しておらぬ者が多過ぎて呆れた 我が社は労働基準法に則ったホワイトな企業として、現場の社員達には働いて貰っておる! 現場の作業員は底辺の中卒しかいない、とか抜かした者もおるが、言っておこう! 我が社で働いている者は中卒の者などおらぬ! 中卒で飛鳥井に入社したとしても、其の者には必ずや通信制だったり高卒認定試験を受けさせている!そしてその者達は、幾多の資格を保有する者もいたりする! 建築の試験は勉強が出来たからとて取れはせぬ! じゃが近年資格保有者が増えて来ている それは其の者の努力と血と汗の結晶だと申そう! 資格持ちが半数を占めるこの現状に底辺の馬鹿などおりはせぬ! また資格は取れずとも、日々努力して現場で働く者がいてこそ、我が社は成り立っているのじゃ! それを現場も知らずにほざくなと申そう! 今後、飛鳥井建設の社員は必ずや現場を経験した後に配置する事にする それが嫌ならば仕事は山程あるのじゃ!去るがよい!そんな社員など我が社には不要じゃ!」 圧倒的な言葉の威力に、社員達は何も言えなかった だが「あんなガキに謂われても誰が従うんだよ!」と罵声が飛ぶ それを皮切りに社員達は不平不満を口にする 竜馬はカメラを操作して騒いでる者達のIDを読み取り、其の者の名前をプロジェクターに投影すると、騒いでいた者が一気に黙った 宗右衛門は「感情の起伏、心拍数の上がりを感知して、即座に異変のあった社員のIDを読み取るシステムとなっている! 誰の声か解らぬだろうと申しているのであろうが、カメラの【眼】からは逃れは出来ぬ!」と吐き捨てた 康太は「この名前が載ってる奴、何時でも退職届を出してくれて構わねぇ! ガキだからどうした?宗右衛門は幾度も幾度も転生され飛鳥井を正して来られた方だ! 強行に出ねば100年もしないうちに飛鳥井は滅ぶと予言され、今こうして篩いにかけている! 飛鳥井烈はヨニー©イギリスの副社長でもあられる!ヨニー©イギリスは既にこの体制で指導教育を実践していると社長のオリヴァー・オブライエンに聞いた 我が社は遅い程だと申された だから今回の宗右衛門の強行はなるべくしてなったとオレは想う だから不平不満を誰かが言ったからと同調するならば、辞められよ! これは強制ではないと講義が始まる前から申しているだろうが! 何時でも退職届を受け付けるし、解雇処分を下す用意も出来ている………と申されなかったか? 統括本部長、自分の部署の社員の名前をメモして退職の意思を確認されよ!」と吐き捨てた 各部署の統括本部長は直ぐ様、プロジェクターに載った社員達の名をメモした 陣内が「部署に戻りましたら、退職の意思はあるのか?と問い質したいと想います!」と返した 蒼太も栗田も「「我等も部署に戻りましたら確認致します!」」と言った 皆……言葉もなく………黙った 辞めれば来年からの仕事はなくなる そしたらコロナ禍過ぎて幾多の企業が倒産し、不景気になった今 就活が出来るのか? 困難な現状しか浮かばない…… 飛鳥井は結構手当が付き高給が保証されている その日々を手放して、次の仕事を探せるのか? 色々と脳裏に想いが巡る、そんなに簡単に答えなんか出なかった 宗右衛門はニャッと嗤った 見ている社員は背筋に冷たいモノが流れるのを感じていた 「不平不満を述べるならば退職の覚悟はしておけ!覚悟がないのにほざくな! 儂はまだ子供じゃが、この世には幾度も幾度も転生し飛鳥井を繋いで参った! 今は、子供の姿じゃが、それがどうした? 儂は役目を持って正す為にこの場におるのじゃ! 生半可な想いで主等の前には立ってはおらぬ! この命……盗られようともな、儂の道は誰にも邪魔などはさせぬ! 儂は飛鳥井宗右衛門! 一族の秩序を守り統制を取る者! それを頭に叩き込んでおくがよい!」 マイクもないのに宗右衛門の声は講堂の響き渡った 静まり返った講堂に重々しい空気が流れた 康太は仕方なく口を開いた 「宗右衛門、どうなさいますか?」 「決め事は覆りはせぬ! 仕事始めから現場へ行く者は出社したら現場へ行かせるがよい! そして他部署で仕事する者は、直ぐ他部署へ行く!その経験は必ずや主等の中の答えへ導き出してくれるじゃろ! 決め事に異論がある者は統括本部長、退職届を受け付けるがよい!以上じゃ!」と言い烈はさっさと講堂を出て行ってしまった 兵藤は「会長、社長、副社長、何か有りますか?なければ解散って事で構いませんか?」と康太に問い掛けた   「あぁ解散で構わない!」 康太が言うと会長、社長、副社長は頷いた 兵藤は「お疲れ様でした!来年も働かれる方は仕事始めにお逢いしましょう! 辞められる方は就活頑張って下さい!」と言い竜馬と共に講堂を後にした 康太と榊原は社員を講堂から出して、施錠をするとエレベーターで最上階まで上がった 榊原は「宗右衛門らしくない強引な態度には、其れ程に余裕などないと謂う事ですか?」と問い掛けた 「【今】土台を固めねば、明日へとは続かない 危うい動線の上を走り………何時かは終焉を迎えるしかねぇからな! レイや竜胆、恵方、次代の源右衛門、次代の宗右衛門が受け継ぐ家が終わる……… それをさせねぇ為の布石だかんな、強引にもなるだろうさ ヨニー©イギリスではそのシステムを組み込み上手く回している 親父に聞いたら施工も既に着手していて、飛鳥井は全てにおいて遅れていると言われたんだよ!」 「我等も腹を括らねばなりませんね! 烈の髪は未だに揺れていましたからね 衝戟に備えねばなりませんね!」 「それよりも伊織、今夜はお疲れ様会を開こうぜ!最近の飛鳥井は少し静か過ぎだからな! パァーッと行こうぜ!」 「そうですね!ならば此の後買い物に出ます!」 最近の飛鳥井は竜馬と兵藤がイギリスに行っているって事もあり、【R&R】のメンバーも本国へ渡った事もあり、宴会から遠ざかっていた この前【R&R】のメンバーが講習会の対価に宴会を所望してくれたから、賑やかな時間は持てたが…………前のような喧騒はなかった 烈が神野や相賀や須賀と距離を持っているのってもあった 神野は『烈、忙しいのか?最近全然ラインしてくれねぇんだよ…』と寂しそうに謂う程だった 【R&R】のメンバーは新年は本国で過ごす事になっていて、一旦帰国して行った 年が明けたら竜馬と兵藤がイギリスへ向かうまではいる事に決めていた 仕事納めも無事終わり、後は警備会社の者に頼み駐車場へ出ると、榊原は康太を自宅に送り届けると慎一を拾って市場へと向かう事になった 康太は榊原の車から降り、自宅へと入って行った 飛鳥井の家に還って、応接間に烈の姿がなくて、康太は「あれ?烈は?」と問い掛けた 音弥が「烈?まだ還ってないのよ」と会社の大掃除に参加していた兄達は、家に還っても姿のなかった弟を想い心配していた 康太は「え?まだ還ってねぇのかよ?」と心配になり烈にラインした 「烈、お前今何処にいるのよ?」 とラインしたら直ぐに返信があった 『きょーちゃん達とカフェにいるのよ! 今 連絡入れようと思っていたの!』と謂う 康太は「きょーちゃんって誰よ?」と問い掛けた すると『康太さんお久し振りです柘植恭二です!今 烈君とお茶してます! 勿論 神野や相賀や須賀も一緒です!』と返って来た 康太は「烈、飛鳥井へ連れて来いよ! 皆で楽しく飲もうぜ!」と送った 『しづちゃんも良いかしら?』 「おー!好きなの連れて来いよ!」と送ると 『解ったわ!ありがとう母しゃん!』と笑顔のスタンプと共に送られた 康太は「烈は柘植とお茶してたみてぇだ!」と謂うと兄達はホッと安堵した 暫くすると烈は柘植と相賀と須賀と神野を連れて飛鳥井へ還って来た 応接間にいる母を見付けると 「母しゃん、しづちゃんと義泰と神威来るからね!後 ばぁたんとじぃたんと笙たん一家!」 「めちゃくそ大勢呼んだな………」 「大丈夫よ!父しゃんにはもう連絡済みだから! 後ねきょーちゃん達もお酒とかおつまみとか持って来てくれたから!」 「おっ!それはありがてぇな!」 「カズに渡して来るって言ってたわ!」 「一生いるのかよ?牧場忙しくねぇのか?」 横浜牧場は今お引越しの真っ只中だった 事務系統は【R&R】のビルの中に置いてあるが、牧場は事故の保証金として貰い受けた地に建てられ、最近完成した 「お引越しは年内には終わると言ってるわよ まぁ事務系統を先に移したからね、素人が馬の後ろに立つなんて事はにゃいのよ!」 「だよな、あれは酷かったな……… なら今 一生はキッチンか、手伝って来ねぇとな」 「にーにー達が手伝ってるわよ! あ!!じぃしゃん!お帰りなのよ!」と烈は走った 康太は本当にこのセンサーすげぇなって思った 暫くすると烈はニコニコと笑って清隆と瑛太と玲香と京香と共に家へと入って来た 康太は「皆一緒とか珍しいな?」と呟いた 瑛太は「烈からラインが来ましたからね! 最近は宴会も人数少なくて寂しかったけど、年末だし皆で宴会やるわよ! だから仕事納めの後に皆で大根と玉子と御餅買って来てね!って言われたら皆で買い物に行くしかないじゃないですか!」と謂う めちゃくそ楽しそうだった その後に榊原が慎一と共に還って来て、買い出しの荷物を下ろしていた 康太も手伝い荷物をキッチンへと運び込み、宴会の準備を始める 真矢と清四郎も仕事を終えて飛鳥井にやって来た 志津子と義泰と神威もやって来て宴会に加わる 玲香は美緒を呼び出して女子会だと喜んでいた 笙家族もその後に飛鳥井へやって来て、久しぶりに皆との宴会に今にも泣きそうになっていた 明日菜はドアを開けてくれた慎一に、新鮮な蟹をドサッと渡した 蟹を受け取り慎一は「こんなに沢山の蟹、良いのですか?」と驚いて言った 明日菜は「夫がロケで蟹を買って来てくれました!これを持って飛鳥井へ行くと言ったので、持って来ました!」と笑顔で言う 康太は玄関に顔を出すと「良いのかよ?こんなに沢山の蟹?」と言った 笙は「烈に福井でロケだとラインしたんですよ! その時『なら笙たん帰りのお土産は蟹ね!』と言ったので買って来ました!」と言う 榊原も玄関にやって来て「………今夜は食べれません!」と残念がった 烈は「父しゃん、年末よ?宴会三昧してもバチは当たらにゃいのよ!」と笑った 榊原は「ならばこれは冷凍して明日はカニ鍋します!」と蟹を受け取り冷凍庫にしまった 客間ではテーブルを並べ座布団を並べ宴会準備をして行く 大土鍋でちゃんこ鍋を作り、ツマミをサクサクと作りテーブルの上に並べる またお土産のツマミもお皿に盛って並べると、宴会に突入した 久しぶりの楽しい時間に皆は心から喜び楽しんだ 榊原が「明日はカニ鍋ですので皆さんお越し下さい!」と言うと皆喜んだ 真矢は柘植とお酒を飲んでいた 柘植は「真矢さん新居の住心地はどうですか?」と問い掛けた 「もぉね、最高よ、孫に建てて貰った家ですもの!本当にね、高齢化を意識して全てにおいてバリアフリーとセキュリティーに特化した家でね 住みやすいわよ!」とニコニコてして答えた 「一度 清四郎さんと真矢さんの家、撮影しても宜しいですか? 結構な所でお二人は孫に家を建てて貰ったと仰られてますよね? テレビ局のデレクターの耳に止まったのでお聞きしたいと思っておりました!」 と柘植は問い掛けた 真矢と清四郎は困った顔をして烈を見た 烈は「きょーちゃん、今は駄目なのよ………少し不穏な空気が流れてるから、新居の撮影はもう少し待って欲しいにょよ!」と言う 「解りました、烈君がOKを出してくれるまで撮影は入れさせません!」 「悪いわね、ボクの方の事情で…………」 「構いません!我等三社共同事務所は君の味方だと、解ってて下されば、それで良いです!」 烈は頷くと「ボクは退院したばかりだから、寝るわね!」と言うと客間を出て行った 兵藤は康太に「何かやる気か?烈?」と問い掛けた 康太は「あんでそんな事想うのよ?」と聞く 「だって烈の髪、ずっと揺れてるやんか! 風がなくても靡く髪なんかお前しか見た事はねぇからな………」 康太は「貴史、視えねぇか?烈の背後?」と問い掛けた 「あ!!やっぱしいるよな?」 「真矢さんや匠には視えるからな、自分の部屋に行ったんだよ! あれを明日には祓うと言ってるから、体力温存してるんだろ?」と説明した そんな深刻な話をしている横でちっこいのが頑張って踏ん張っていた レイは「りん、たにょむわよ!」と謂うと  凜は「わかっちぇるってれいたん!」と言う 椋も「ぼきゅ、がんびゃる!」と頑張るポーズをした ちっこいの3人は榊原の前に行くとペコッとお辞儀をして レイは大きな声で「ことちも!」と言うと 凜が「ちゅきたてにょおもち!」と言い 椋が「たべちゃいれす!」としめた 榊原はちっこいの達に頼まれ困っていると、翔達も協力して【僕達も食べたいです!】と言った 榊原は「神威、今年も頼めますか?」と問い掛けた 神威は「金色の呼んでも良いか?」と言うと 康太は「おー!呼んで来てやんよ!そしたら戦力になってくれるのかよ?」と問い掛けた 「うし!ならば全力で搗きまくるぜ!」 神威は御機嫌で答えた 聡一郎は「ならば僕は今年も補佐やります!」とやる気になり 一生も「俺も頑張るから黒いの込みで連れて来てくれ!」と言う 「良いぜ!ならば31日に搗くとする! 皆も搗きたての餅食べに来いよ! そしたらそのまま大晦日は此処で過ごせばええやんか!」 康太が言うと神野が「良いのかよ?新年早々!」と問い掛ける 「飛鳥井は3日の一族詣では必ずや参加しねぇとならねぇからな、その日は駄目だがそれ以外は別に構わねぇよ!父ちゃんや瑛兄は飲み友達いた方が楽しいよな?」 康太が言うと瑛太は「飛鳥井は楽しく飲めるなら別に構いませんからね!」と言うと皆は喜んだ 真矢は「烈、入院していたの?」と心配して問い掛けた 「………宗右衛門の事業の方で大変な事が起きていたりして……逆恨みされ嫌がらせの様な事をされていたんだよ!そして衝撃を受ける様な事態かあって烈は昨日は久遠が落ち着かせる為に入院させた まぁ………匠とか真矢さんなら烈を視たならば解ると想うけど、憑いてるのもあり早目に部屋へ行ったんですよ!」と説明した 真矢は「やっぱりそうよね……」と呟いた 匠も「だよね………でも何であんな腐乱したのが?」と呟く 神威は「菩提寺に富士の樹海から拾って来た骨をバラ撒きやがったからな! 儂が根っこで剥がしてやろうかと想った程じゃわ!」とボヤく 義泰は「それは嫌がらせか?」と神威に聞く 「だろ?宗右衛門の事業の一つ、薬局を私物化してたからな、長年に渡り店長は横領し続けたから、横領した金額は一億を超えてやがる 一億横領したら懲役5年前後の罪になる 資産を総て差し押さえて返済に当てたとしても、足らねぇからな出てからも返済が待ってるから地獄だろうけどな! で、その店長の娘が骨をバラ撒いたり、烈を轢き殺そうとしたり嫌がらせしてたんだよ!」 轢き殺そうとして………!!! 皆はそれを聞いて言葉をなくしていた 神威は「しみったれ臭くなるなよ!烈は賑やかな宴会が好きなんだよ!大好きな人達が笑っているのが好きなんだよ!」と言いグビッとお酒を飲み干した 志津子は神威の頭をスパンッと叩いた 「いきなり聞かされれば驚くでしょうか! 本当にお前は前振りがない!本題をズバッと言うのは止めなさいと言っていたでしょうが!」と怒った 「姉さん痛いって!どうして口より先に手が出が出るかな?義泰、お前さ自分の妻なら止めてくれよ!」 神威はボヤいたが、義泰は「それは無理じゃろ?神威!志津子の気っぷの良さに惚れたんじゃから、惚れた弱みじゃからな!」と笑っていう 「なら仕方ないか!愛したおなごには敵わんからな!」 「神威は………嫁は娶らぬのか?」 「儂は愛したおなごがいた 儂の妻は其奴だけじゃから、他など要らぬよ!」 神威は遠くを見詰めて謂う 今も愛して、愛して過ごしているのだ 義泰は「どんなおなごじゃった?」と問い掛けた 「豪快で芯の強いおなごじゃった……… 最高の笑顔を浮かべて人を殴り倒せるおなごじゃった」 康太は「お前ら親子は似た者親子だな………アイツも……豪快な女を妻に娶った、笑って最期まで夫の為に身を擲った強い女だったよ!」と謂う 神威は「儂は………それは知らぬ………儂は見ておらなかったからな……そうか、豪快なおなごを娶っておったのか………」としみじみ謂う 兵藤は「飲もうぜ神威!」としんみりした空気を払拭した ちっこいのは、つきちゃておもち♪と歌っていた 夜9時を回ると兄達は「今日のお風呂当番は?」と謂う 太陽と翔が手を上げた 大空と音弥が「僕達は拭いて服を着せるわ!」と謂う 流生が「僕はドライヤーで乾かすわ!」と役割分担を口にして 太陽が「さぁ寝る前にお風呂よ!」と謂うと 翔が「今日はおねしょシーツ敷かないと、ジュースかなり飲んでるわよ!」と言った 太陽が「なら部屋に連れて行く時皆で敷くと良いわね!」と言い、ちっこいのを3人連れて客間を出て行った 北斗と和真と和希がサポートに入り 「僕達がおねしょシーツ敷いて来るから大丈夫よ!」と手伝いに行った 神野は「飛鳥井の子供達は働き者が多いな!」と呟いた 榊原は「烈の宝物を兄達や北斗達が全力でサポートしてくれてますから!」と嬉しそうに言う それからは皆楽しげにお酒を飲み、盛り上がって過ごせた 12月30日 朝早く烈はケントを呼び出して、菩提寺へと出掛けて行った 康太達が来る前に禊をして儀式の準備に入る 紫雲は「依代に下ろした時………違う何かが出たら………それは仕組まれていたとなってもやるのか?」と問い掛けた 烈は禊を終えて宗右衛門の儀式の着物に着替えながらも宗右衛門の声で 「やるしかなかろうて! やらねば何時までも後ろに漂い何とかしろ!と訴えるじゃろうて!」 「何かあった時に動いて貰える様に弥勒を呼んだ、別物が動いた瞬間………対処するとする!」 烈は「クーたん、何か出たらお願いね!」と言う クーは体を大きくして「了解だぜ!」と言った 暫くして康太と榊原がレイを連れて菩提寺にやって来た それと同時に唐沢も骨を届けに来て、儀式の一部始終を見届けるつもりでいた 烈は禊を終えると魔法陣を描いていた 弥勒が魔法陣の上を辿るように水銀を流して行く レイは器用に幼稚園児が使う先が丸くなったハサミで依り代を切っていた 依り代は全部で7枚 康太はそれを見て「7体!!そんなに憑いてるのかよ!!」と驚いて叫んだ 烈は唐沢が持って来た骨を魔法陣の中央に置いた 準備が整うと紫雲が「始めるか?」と問い掛けた 「東西南北 東を父しゃん 西を母しゃん 南をレイたん 北を弥勒、クーたんは横に立っていて!では位置について下さい!」と言う 名を呼ばれた者は東西南北の軸の前に立った 烈は呪文を唱えた 紫雲も弥勒も聞いた事のない詠唱だった かなり長い間 詠唱は続き、詠唱が止まると烈は 「依代に宿れ!」と言った その瞬間 地面に置かれた依代が震え、次の瞬間……起き上がり意思を持っているかの様に動いた そして依代は生前の姿へと姿を変えて………立っていた 烈は一体ずつ前に導くと視界を共用して其の者の前世の記憶を読み解く 名前、職業、住所等を聞く 康太は唐沢を横に立たせ視界を共用させた 唐沢は即座にそれをメモした 死した場所にまだ身分が解るモノが有るし骨の一部も其処にあると話す 唐沢は「ならば骨を全て回収して、遺族にそれを知らせる事にする!」と言った 順調に一体ずつ身元と骨の場所を知らせて行っていた が、やはり一筋縄ではいかない 最後の一体が…………まるで鬼の様な姿に変貌を遂げ 烈を襲おうとした クーは呪縛の呪文を唱えた だがそんな呪縛を弾き飛ばし、式神を依代とした霊が暴れる 烈は草薙剣を取り出して式神を真っ二つに斬り裂いた だが斬ったら2つに増え………更に厄介になった 烈は「え?分離しちゃうの?」と嘆いた すると何処からともなくマサカリが飛んで来て、鬼の様な依り代を真っ二つに刻んだ 烈は「とぅしゃん、増えるから斬っちゃ駄目よ!」と叫んだ 神威は姿を現すと何と四鬼を引き連れていた そしてどう言う訳か司命 司録も台帳片手に立っていた 司命は唐沢のメモを盗み見して台帳を開く 四鬼は増殖した依り代以外を避難させ瓢箪を取り出した 「閻魔大魔王様に託された、その昔金角が所持してたと謂う羊脂玉浄瓶と申す神器だ! この前地獄界へ行かれた時に手土産として頂戴した品物である!」と前説をして瓢箪を増殖した依代に向けた すると増殖した依代は瓢箪に吸い込まれて行った レイは依代を早急に切り始め、出来上がると烈に渡した 細工をされこの世から消えたままじゃあまりにも哀れだったから、死者を依代に呼び寄せた 依代は起き上がり生前の死者の姿になると泣きながら「何かに乗っ取られ………自分の意識はなくなっていました………」と言った 依代に宿った魂は美しい女性の姿となり、自身の名と住所を告げ、何処で死んだかを告げた 「私は………彼に呼び出されたハイキングに行いました!ですが休憩中に彼に渡された珈琲を飲んだ瞬間意識を失い……意識が戻ってから彼を探しましたが……彼は何処にもいませんでしま 私は樹海を彷徨い………帰り道を探しましたが、焦れば焦る程、道はわからなくなり、体力をなくした私は帰る道を失い……衰弱してこの世を去りました」 と依代に呼び出された霊は泣きながら話していた 康太は「それ犯罪やないか!」と怒った 唐沢は「貴方を樹海に置き去りにした恋人の名前、解りますか?」と問い掛けた 「彼の名は大仏と書いておさらぎと呼びます 大仏武士 名は武士と書いてたけしと呼ばせます、仕事は蕪村建設に勤めていました」 と霊は恋人だった男の名を口にした 唐沢は「俺は骨の所有者の名前を確認し、示した富士の樹海で遺体の回収をして死亡証明書の発行をして家族に死亡を告げます! そして恋人を樹海に置き去りにして見殺しにした男は探して罪を償わせてやる!」と言った 「蕪村建設の社員は今何処に勤めてるか? 其処から調べねぇとならねぇ………でも建設会社にいたなら、何処かの建設会社にいるんじゃねぇか?」 康太が言うと烈が「あ!蔵ちゃんが持ってい書類はボクが管理してしているわ! その中に社員名簿あったと想うのよ!」と言った 唐沢は「その名簿お貸し願えせんか?」と問い掛けた 「…………人の世にはないのよ、それは………蔵ちゃんは狙われていたからね 何かの役に立つと想って部屋の私物やら社長室の書類やらボクが引き取り保管しているのよ!」 「正月明け辺りに何とかなりませんか?」 「ならば年が明けて4日に飛鳥井の菩提寺に来てよ!ボクは朝から菩提寺にいるから、何時でも来てくれれば良いから!」 「解りました!では4日に菩提寺の方へ尋ねさせて貰います! では俺はこの死者の死亡証明書の用意とかあるので、この辺で!」と言い骨を箱に入れて引き上げて行った 康太はそれを見送り神威に向いて 「何故に四鬼と司命 司録が来てるのよ?」と問い掛けた 「死者の事ならば閻魔大魔王に相談するのが一番じゃねぇかよ! だから俺は魔界へ行き閻魔大魔王と逢って話をしたんだよ! そしたら行方不明者の魂の管理も魔界の管轄だから、四鬼と司命 司命を遣わすので仕事をさせてくれ!と頼まれたんだよ! だから四鬼は地獄界から戴いた神器を四鬼に持たせて越させてくれたんだよ! あ、来てるのはこの者だけじゃねぇぞ! 輪廻転生は朱雀が務めって事で、菩提寺の上で朱雀が旋回している!」と内情を話してくれた 康太は榊原に「取り敢えず朱雀呼んでくれよ!」と頼むと、榊原は即座に外に出て朱雀を呼んだ 「儀式は取り敢えず終わりました!」と叫ぶと朱雀は地面に降り立ち人の姿に姿を変えた 兵藤は「何か途中で禍々しい気が菩提寺を包んでいたやんか!」とボヤいた 「ええ、何やら細工がしてあり鬼のようなモノに姿を変えましたからね………」 「え、それで烈は?無事なのかよ?」と兵藤は心配して問い掛けた 「最初は斬ると増殖して行ったので、僕は烈の身に危険が迫ったら龍に姿を変えて凍らせてやろうかと思っていたんですがね………四鬼が地獄界から戴いた瓢箪で吸ったので……見守るしか出来ませんでした!」 と至極残念そうに言うから兵藤は言葉もなかった

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