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第69話 不穏な空気 ❷

烈は取り敢えず魔法陣を壊して、魔法陣の外に出た そして依代に宿ったままの霊に 「自分の死した場所へ行き、その場を示すが良い!」と命令すると、スーッと依り代は飛んで行き消えた 烈は「母しゃん、現場の方に依り代を飛ばしたから、依り代がいる場が骨のあり場所だと唐沢に伝えといてね!」と言った 康太は「うし!後で伝えといてやる!」と約束してくれた 烈は「クーたん、もういない?」と問い掛けた クーは烈を視て「いないけど呪詛の匂いがするぞ!やっぱラストの依り代には呪いが組み込まれていたんだな!」と言った 烈は「蒟蒻で取れる?」と問い掛けた 「蒟蒻じゃ無理だな……でもお前、反射鏡持っておるやんか?呪いが掛かる筈はねぇのに?」 とクーは不思議がり、そして続けた 「天照大御神の八咫鏡から創られた欠片を頂戴しているのに、前回呪われたから不思議だったんだよ!あの鏡は呪いなんて跳ね返してしまえる力が備わっているのに?ってな!」 康太も「だよな?オレも母者の鏡の欠片を持っているのに?って驚いたかんな! その欠片を持っていればお前の身は護られるのに?ってオレも不思議だったんだよ!」 と不思議がった そんな話をしていると大天使ガブリエルが姿を現して 「烈君 私と来ては下さいませんか?」と言った 「天界?」 「天界の入り口までは私が連れて行きます! その後はオーディンが創造神の元まで貴方を導き連れて行きます! その呪い、その闇に染まった魂を一度確りと調べなくては、と仰られているのです!」 「良いわよ、でも今日中に送り届けてね! でないと明日の大晦日の餅搗きが楽しめなくなるからね!」 「総て承知しておいでです!」 「なら母しゃん、父しゃん、とぅしゃん、オニちゃん達!司命と司録!ちょっと行ってくるわね! レイたんは良い子で待っててね、搗きたてお餅食べられなくなっちゃうからね!」 レイは何度も頷いた ガブリエルは白い猫を烈に持たせると、ヒョイッと抱っこした 烈はガブリエルと共に外に出ると、ガブリエルに抱っこされ天高く飛び立って行った 四鬼達は「今度 お酒にしてる御米を改良したのでお餅ってのを作ってくれる約束したんだよ! 烈………還って来るよな?」と不安そうに呟いた 康太は「天界の水は合わないと言ってたからな還って来るに決まってるやんか! 四鬼も司命 司録も来てくれてありがとうな!」と労いの言葉を言った 司命は「僕はそこにいる大歳神に、お前早くキラキラの姿になれよ!司録連れて来たんだから、早くなりやがれ!と謂われ司命の仕事を全うしただけです!」とボヤく 司録は「我が主、お会いで来て最高に嬉しいです!」と主を抱き締め喜んでいた 四鬼が「さてと還るとするぞ司録!」と謂うと四鬼と司録は神の道を開き還って行った 榊原は弥勒と神威に「飛鳥井に来て寛いで下さい!夜は宴会ですから!」と謂う 神威は「儂は戻らねぇとならねぇから夜に飛鳥井に行くとする!」と言い還って行った 弥勒は「俺は少し魔界へ顔を出すとする こんな細工されてるんだ、異変はないか確かめねぇとならねぇからな素戔嗚に逢って来るとする! 建御雷神呼んで、素戔嗚んちで宴会に突入する予定だからまた今度にさせて貰う!」と言い弥勒も神の道を開き姿を消した 康太は聡一郎を見ると「飛鳥井へ還るかよ?」と問い掛けた 聡一郎は「この髪が戻らねば還れませんので、保養施設で夏海と華絵といるからさ、ちっこいの達の修行が終わったら一緒に乗せて行って貰う事にするよ!」と言った 榊原はレイを抱き上げると 「レイは飛鳥井へ還りますか?」と問い掛けた レイは「ごとーやにょ ちゅぎょーありゅ!」と謂うと鍛錬場までレイを送って行った 鍛錬場には凜も椋もいて、レイは走って二人の傍に行き鍛錬を始めた 康太と榊原は兵藤と共に飛鳥井の家へと還って行った その頃 烈はガブリエルに抱かれ天界へと連れて行かれた 天界の入り口へ来るとガブリエルは烈を下ろした すると今度はオーディンの場所に乗せられ、更に高い天空を目指して飛んで行った 光の道に先導されオーディンは上昇を続け飛んでいた かなり長い間飛んだからオーディンは気を使い 「気持ち悪くはなってはおらぬか?」と問い掛けた 「ボクね飛行機とか電車は気持ち悪くなるからね、乗ったら寝ちゃう事にしてるにょよ! でもねこの馬車は大丈夫よ」 と笑顔で返されオーディンはホッと安堵した 光の道は蒼い層の出来た所まで到達し、それを抜けて走って行く 蒼い層を抜けると………其処には暗闇が広がっていた 漆黒の暗闇に光り輝く星々が光り輝いていた 烈は「クーたん綺麗ね!」と言った クーは「だな、お前の傍で暮らすまでは綺麗だとは思わなかったけど、今は綺麗だと想うぞ!」と言った クーは烈の元へ逝かされるまでは姿もない暗闇の中を蠢き、創造神の意思のまま各地を見張る【眼】の様な存在として生きて来た だから烈と一緒にいられる今は、毎日が新鮮で、毎日が楽しくて仕方がなかった オーディンは何も無い空間で止まると、其処は明るい目映い光りに包まれた空間となった まるでガラス細工の様な空間は、オーディンの馬車から降りて立つのが怖い位に透き通る世界だった "さぁ降りて私の前に来るがよい!”と姿はなく創造神の声だけが響き渡った だが烈は「底………抜けて落ちにゃい?」と謂う 創造神は"抜けはせぬが怖いならば、此れでどうじゃ?”と言いガラス張りの床を花で満たして問い掛けた 烈はペコッとお辞儀をして「ありがとうございました!」と礼を言い馬車から降りた そして導かれるまま創造神の前に立つと烈は球体の中へ入れられた クーが心配そうに烈を見守る 烈の元へ行きクーとなり過ごした日々に、感情が芽生えた事に創造神は驚きつつも、喜んでいた 烈の体が調べられ "お前の体の半分以上が冥府の闇に染まっている…… だがこの闇を除去したらヘルメースとの共存は出来なくなる………か” と謂われた 烈は「ヘルメースはボクの魂を救ってくれた だからこの先もボクはヘルメースと共に生きて行くと誓った それは人の世の生を終えても、ずっと生ある限り共に逝くと決めたのよ!」と言った "ならばお前の体を闇に特化した体に作り変えよう このままだとお前は微弱な呪いだとしても、ダメージを受け………その生を終わらせかねない ならば共存出来る体になり、共に逝くがよい” と創造神は言った 烈は心から別々にならずに済んで喜んだ そんな姿に心優しい愛しき子の姿とダブる この子は愛しき子の魂を受け継ぎ生きているのだと痛感する 創造神はかなり長い時間をかけて烈の体を強化して行った 呪詛と長い転生で魂に蓄積された毒素を抜き、毒にも呪いにも耐性を持たせ、呪いで死にはしない様に弾き飛ばす精神力を注ぎ込み 再びヘルメースの魂と烈の魂を織り成して創り上げた そして総てが終わると創造神は烈をクーの元へ戻した "これで呪いは弾き飛ばす事が出来るであろう! だがより完璧にする為にアイテムを授ける事にした、お前の耳に銀河系最強のアイテムを入れた そのアイテムは絶対に外れないだろう! それで黒いのに操られた者など弾き飛ばせるであろう! 此れより更なる熾烈な闘いが繰り広げられるであろうが、どうかお前の母を助けて行ってやってくれ!” 「ボクは母しゃんと父しゃんが大好きだから、そしてレイたんが護るこの蒼い地球(ほし)が大好きだから護ると決めてるのよ!」 "お前は本当に優しい子じゃ………そして炎帝と良く似ている………炎帝の魂を受け継ぎし子よ クーは此れより先、お前と人生を共にする運命を授けよう!だから仲良くしてやってくれ!” 「え?良いにょ?ありがとう創造神! ボクの我が儘を沢山聞いてくれてありがとう!」 何一つ 我が儘な事など聞いてはいない だがその台詞を謂うのか…… 青龍をオレにくれてありがとう! オレの我が儘を聞いてくれてありがとうな! 過酷な運命ばかり与えたのに、あやつは笑ってその台詞を言った 創造神は刹那くて………愛しき子に此処まで似ておったのか………と思った 処置が終わると創造神は "多少の誤差は出る故 飛鳥井の家まで送り届けてなろう” と言った オーディンは天界の入り口まで送ると謂れ 「それは助かるわ!あの大気圏を超えて来るのはしんどいからな!」とボヤいた 烈がクーと立つと、一足早く烈とクーを飛鳥井の家まで送り届けて、その後にオーディンを天界の入り口まで送り届けた 総てを送り届けて創造神は蒼い地球(ほし)を眺めて、愛しき子を想う そして蒼い地球(ほし)で生きる総ての者を想う 烈は飛鳥井の自分の部屋に戻され、ホッと息を吐き出した 烈はクーに「ボク何処か変わったかしら?」と問い掛けた クーは「パット見では、何一つ解らねぇよ!」とボヤいた 「超合金とかになってにゃい?」 「なってねぇよ!」 どんな事聞くんだよ!とクーは思った 烈は全身をくまなく触れた そして頭部に残った傷がなくなってる事に気づいた 「クーたん!クーたん!ボクの頭の傷なくなってるにょよ!」 烈は興奮して訴えた クーは創造神が烈其の者を真っ更にしてヘルメースとの魂を織り成して作り上げた総てを見ていたから知っていた クーは「サービスだろ!その年で何度も何度も頭怪我していたら、歳を重ねたらハゲまっしぐらで間違いねぇからな!」と謂う 烈はその台詞を信じて 「それ嬉しいのよ、ありがとう創造神!」 と祈りを捧げた クーはそんな祈りを捧げられたら創造神驚くだろうな………と想いつつ笑っていた 烈は私服に着替えると応接間に行き、家族が帰宅して来るのを待っていた 榊原は帰宅して応接間を覗いて烈がいて驚いていた 「烈!帰っていたんですね!」と駆け寄り抱き締めた 「父しゃん お帰りなのよ!」 康太も烈を抱き締めて「ロスタイムなく帰してくれたんだな!」と謂う 「帰るのに誤差は出るからね、菩提寺じゃなく飛鳥井へ送り届けてくれたにょよ! ねぇ母しゃん、クーたんにも聞いたけど、ボク本当に超合金になってにゃい?」 康太と榊原は顔を見合わせ「何!!!」と驚いた クーは「烈は下手な呪い位は弾き飛ばる様にしたって謂われたから、何か凄いのにされたんじゃないかって……で、超合金になってねぇか心配してるんだよ!」と説明した 康太は爆笑して「超合金になんてなってねぇ! もし超合金にされたら元に戻せって怒鳴り込みに行ってやるよ!」と烈の頭を撫でて言った そして烈の頬をムニュ〜っと摘むと 「どれ?痛いだろ?めちゃくそ伸びるぜ!ほっぺ!」と言った 烈は涙目で「痛い!」と訴えた 榊原は康太の手を退けて、烈の頬を撫でてやった 康太は笑っていた が、真面目な顔をになると「ちょっとオレ等の部屋に来い!」と言い烈を連れて行った クーは小さな猫になると烈の背中に飛び乗った 康太はリビングのソファーに座らせPCを開くと 「少し前に唐沢から連絡が入った 明日の朝、富士の樹海へ捜索へ入るそうだ! 地元の消防隊員や自衛隊の協力の元大々的な捜索を開始するそうだ!」と烈に唐沢からの連絡を見せた 烈はPCを覗き込むと 「富士の樹海は地場が安定しないのよね」と思案していた 「オレ等は捜索とかには関われねぇからな 唐沢達に任せるしかねぇ!」 烈はマップをストリートビューにすると、待機場所に相応しい場所を確認し、その近くから樹海の入り口を目指すだろうと予想し 「ならば依代は樹海の入り口に集結させておくわ!そしたらチームに分かれて依代の捜索もスムーズに行くだろうし………」と言った 「ならば唐沢の方にそう伝えておいて大丈夫か? その方が捜索も早いし、迷う事もねぇだろうからな!」と言い唐沢に連絡を入れた 唐沢に連絡を入れた康太は烈の耳に輝く光に目を向け 「それよりおめぇ、その耳の、何と言って着けて貰ったのよ?」と問い掛けた 「何かね銀河系最強のアイテムって言ってたわよ!でね外れにゃいんだって!」 「それの説明はそれだけかよ?」 「そうよ!え?これしてると超合金になっちゃうとか?」 と心配して問い掛ける 康太は笑って烈の頭を撫でると 「それは魔を祓うアイテムだから安心しろ! 着けてても超合金になんかならねぇかんな!」 「なら安心ね!あっ!母しゃん……ボクの頭にあった傷がなくなってたにょよ! クーたんはこのままだと年取ったらハゲまっしぐらだから、サービスだって言ってくれたわ! だからボクねお礼の祈りを捧げたのよ!」 とニコニコと笑って謂う 康太はクーを見た クーはバツの悪い顔をしていた 康太は「今夜はカニ鍋だぞ!昨夜はあんまし食べてなかったんだろ?今夜は沢山食うんだぜ!」と言いリビングを出て行った 烈は走ってクーと共に応接間へと向かう 榊原は「烈の耳のって何で出来てるんですか?」と問い掛けた 「あれはな多分、真っ暗な宇宙に流れる天の川の星々の光の帯を紡いで球体に閉じ込めて出来てるんだと想う! 天の川ってギリシャ神話ではミルキー・ウェイと謂われる程に眩い光を放つ光の帯と謂われてる 邪を祓い 魔を祓い 寄せ付けず跳ね飛ばす まさに銀河系最強のアイテムなんだよ!」と説明した 榊原にはサッパリ想像すら付かなかった 「何にせよ、烈が護られるならば僕はそれだけで安心です!」と言った そしてキッチンに向かいカニ鍋の用意を始めた 慎一が昼に蟹を常温に出しておいてくれたから、処理が捗り、榊原は頑張って蟹鍋を作っていた 子供達はテーブルを並べて貰うと、せっせとテーブルを拭いて箸と取り皿と鍋用の小鉢とレンゲと箸を並べて置いた その夜は約束のカニ鍋だった 前日来た相賀、須賀、柘植、神野と小鳥遊、真矢と清四郎と笙家族がやって来て和やかな宴会へと突入した 途中で義泰と志津子と神威がやって来て宴会に加わる 烈は兄達やちっこいの達と仲良くカニ鍋を食べていた 竜胆が「なぁ宗右衛門、年が明けたらで良いから真剣の使い方教えてくれねぇか?」と問い掛けた 宗右衛門は「主の剣は確か……主が鬼切(髭切)で、恵方が蜘蛛切(膝切)であったな 癖のある剣じゃからな………今世もやはり鍛錬せねば使いこなせはせぬか………」と呟いた 「今世の俺は命が何度も途絶えたってのもあったからな……剣が持ち主かを定めてくれてねぇってのも有るんだよ!」 「ならば竜胆事態の覚醒の儀をやらねばならぬか………年が明けて少ししたら覚醒の儀を執り行うとするか!」 「……俺の魂は混ぜ物を入れられたかも知れねぇ……前世とは明らかに違う体力と能力に俺自身躊躇する事がある………」 烈は康太を見た 康太は兵藤に手招きして呼び寄せた 「あんだよ?康太!」 兵藤が来ると康太はズバッと単刀直入に 「貴史、お前の眼から見て、竜胆の魂に何か混じり物をされてるって解るか?」と問い掛けた 兵藤は顔色を変えて「それはどう言う事なのよ?」と問い掛けた 康太は兵藤に竜胆が感じてる違和感を話した 兵藤は「パット見じゃ解らねえな ならば凜を連れて俺は魔界へ行き釈迦や星詠みの婆婆にも竜胆の運命を聞きに行くとする そして魂の管理庁で竜胆の魂の精査をする それで良いか?」と自分に出来る最大限の事を口にした 康太は「カニ鍋食い終わってからで良いかんな!」と言った 「ならば夜にでも立つ事にするよ!」 と約束し兵藤は宴会へと戻った その夜 兵藤は朱雀となり凜を魔界へと連れて行った まだ不穏な空気は漂い消えてはくれれない状況だった そして今も尚 烈の髪は風もないのに揺れていた まだ何一つ、烈の巻き起こした台風は終わっていないと謂う事だった 大晦日 榊原は朝から御節の作製に余念がなかった 子供達は朝から掃除をしていた お昼少し前に餅米を蒸し餅搗きの準備をする 康太は朝早くから魔界へと向かい金龍と黒龍に 「今年も飛鳥井の餅搗きに来てくれねぇか?」と問い掛けた 金龍は「閻魔の許可が出たならば、即座に餅つきに行くとする!」と約束してくれた 黒龍も「おっ!烈に逢いたかったし行くとするわ!」と言い閻魔の許可が下りて直ぐに、金運の上がる龍に乗って人の世にやって来た 飛鳥井の屋上に到着すると金龍は康太と黒龍を先に下ろして人の姿を変えた そして飛鳥井の家の中へ入ると地下駐車場へと下りて餅搗きを始める事にした 昨年同様、金龍が搗く、聡一郎が絶妙な返しをして餅を搗き始めた 榊原は忙しそうに餅米を蒸し準備する 烈は兄達は、御餅が搗き上がると、直ぐに御餅をクルクル丸めていた 金龍と聡一郎が搗き終わると、次は黒龍が搗き一生が返して息のあった搗きをしていた 黒龍と一生が終わると次は神威が搗き始め、慎一が返して軽快にリズムを取り搗いて行く 兄達は餡ころ餅ときな粉餅を重箱に詰めて、今年も菩提寺へ持って行く準備をした 3時を少し回る頃、総ての餅搗きは終わりを迎えた そのまま宴会へと突入し、清隆や瑛太は餅搗きの功労者と共に酒を酌み交わし飲み始めた 皆が部屋へ戻る中、子供達は片付けをしていた 片付けが終わり兄達と共に客間に行こうとてして、烈は突然動きを止めた そして力無く床に崩れ落ちると吐血をした 翔は急に吐血した弟を心配して傍に近寄ると、抱き締めた 「どうしたの?烈!」 兄達は泣きながら弟を心配した 烈はゲホッと口から血を吹き飛ばしながら 「やってくれたわね!」と悔しそうに謂った 流生は慌てて母を呼びに向かった 「母さん……誰にも気づかせずに来て!」と訴えられ、康太は「地下の片付けして来るわ!」と言い 翔と共に地下駐車場へと向かった 駐車場へ向かうと吐血してる烈を見付け、康太は慌てて烈へ駆け寄った 「烈!どうしたんだよ?」 「唐沢達……危ないわよ………依り代に攻撃受けたからボクに跳ね返って来たのよ!」 「え?霊を宿した依り代を攻撃されたって謂うのか?」 「そうよ、依り代だけなら良いけど、捜索に当たった人間巻き込んでたら被害は拡大にゃのよ!」 康太はまさかそんな事になってるとは想いもしなかったから驚いていた 康太は「お前……呪いなら弾き返せる様になったんじゃねぇのか?」と問い掛けた 「呪いなら弾き返せるわよ でも此れは依り代に宿したボクの気ごと叩き斬ったから、自分に返るしかにゃいのよ」と説明した 自分が作った依り代ならば、その総ては自分に返るしかない 呪いならば弾き飛ばせても、己が気を入れた依り代ならば己に返るしかないからだ 康太は「向こうの方が………」と呟くと、烈が「上手だったにょね!」と続けた 大空は部屋から戻りウェットティッシュを取って来ると、それで烈の血を拭いてやった 太陽は洗面所に向かい雑巾を取って来ると、烈が血を流した床を綺麗に拭いた 康太は「烈、どうするよ?」と問い掛けた 「神威……呼んで来てくれにゃい?」と謂う 康太は「待ってろ!」と言い客間に向かい神威を呼んだ 「あ、神威、少し聞きたい事があるんだよ! 少し来てくれねぇか!そのかわし極上酒後で飲ませてやるかんな!」と言い神威を呼び出した 神威は「ひょっとして生コン屋の訴訟の件か? あれはな、難儀しておるのじゃよ!」と言いつつ客間を出て行った 神威は客間を出ると「何があった?」と問い掛けた 「烈がお前を呼んで来てくれって言ってる!」 神威は康太と共に地下駐車場へと向かった 蹲る烈に神威は駆け寄って行った 烈は神威を見ると「富士の樹海まで共に行って欲しいにょよ!」と謂う 「おー!良いぞ!倅よ!極上の酒を飲ませてくれるって言ってくれてるからな!一働きしてやるさ!何処までも共に逝ってやろう!」と嗤った 康太は「極上の吟醸あるかんな!仕事を終えたら飲ませると約束する!」と謂う 「ならば倅よ、儂を案内するがいい!」 「母しゃん、此の儘だと唐沢達の命が危ないから行って来るわ! そして何よりボクの息の掛かってる依り代に危害をこれ以上加えられたら………吐血じゃ済まないから………行くしかにゃいのよ!」 「久遠に烈が吐血した事伝えとくから、帰ったら診察に逝けよ!」 康太は我が子を案じて謂う 「ボク、超合金じゃにゃかったのね 少しだけ安心したかも!」 烈は笑って、神威と共に神の道を開いて………消えた 烈と神威が神の道を辿り、富士の樹海へ向かう頃 唐沢達は大変な目に遭っていた 午前中から始めた遺体の回収作業は、結構順調に行き回収が出来ていた 依り代が自分の遺体の場所を伝えてくれるから、遺品や遺体の回収が出来ていた だが昼を過ぎてから風が出て来て、作業をしている者達は不穏な空気を肌で感じつつも、作業をしていた そしてそれは突然襲かかり、最後の一体となった時 その様相は一変して変わって逝った 木々がざわめき、強風が吹き荒み…………道が変わって行っていた まるで木が動いているかの様に蠢き変貌を遂げて逝くのだった 帰り道が解る様に木に結んでいたロープが目の前で切れて風に靡いているのを目にして絶望に囚われる 唐沢の部署の部下達は「班長!どうなっているんですか!」と叫んだ 「そんな事俺が聞きたいぜ!」と唐沢はボヤいた 木々が総てを閉じて逝く様に閉ざし明かりを遮断し、暗闇に閉じ込められてしまった 直ぐ様緊急要請の連絡を着けようと想ったが、連絡が着くモノは何一つ、奪われてしまっていた 自衛隊の隊員が「幾度も遺体の回収には来てますが、こんな事態には突入した事はない!」と無線を駆使しても駄目で、狼煙を上げようにも木々が閉じてしまっては上げられるかさえ解らなかった 地元の警察も「こんな事は初めてだ!」と命の危険を感じずにはいられなかった 自衛隊の隊員達は皆の集まる中央に一つのランタンを置いた 何時救助が来るか?解らないから辺りをを照らせる道具の消費は極力避ける為に一つだけ置いた 動くにも動けない………… 揺ら揺ら揺れていた依り代が突然切り裂かれ…… ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ〜!!!と謂う断末魔が響く 皆 恐怖でパニックを起こし叫びそうになるのを、必死に抑えているかの様だった こんな時 パニックになるのが一番良くないのだと、自分に言い聞かせ自分を落ち着かせる この闇から出られる日なんて来ないんじゃないか?………底知れぬ絶望に襲われる そんな想いに心が折れそうになるを必死に拳を握り締め耐えていた 誰も何も喋ろうとはしなかった そんな時、静けさを吹き飛ばす様な声が響いた 「全員地面に伏せろ! でねぇと首チョンパされちまうぜ!」 と叫び声が響くと、皆一斉に地面に突っ伏した するとビュンビュンビュン!と重い何かが飛んで来る音が響き…… 閉じた木々を真っ二つにしてマサカリが飛んで行った マサカリが木々をぶった斬ると、バサバサと音を立てて枝や木が落ちて来た だがその場に光が差し込み、辺りは既に夕暮れに染まり………全員 闇から抜けられた事に涙していた 神威は飛んで来たマサカリを手にして肩に担ぐと「皆 生きてるか?」と問い掛けた 唐沢は「神威さん!どうして此処が?」と信じられない想いで問い掛けた 神威は「儂か?儂は倅に頼まれてお前達を助けに来たんだよ!」と言った 唐沢は神威の横を見ると、烈が立っていて驚いていた 烈の服は血で赤く染まり、怪我をしたのかと想った 「烈君!怪我したのかい?」と唐沢は問い掛けた 「依り代が壊されたでしょ? あれでボクは吐血したにょよ! それで唐沢達のピンチを知ったから神威に頼んで来て貰ったにょよ!」と説明した 烈は呪文を唱えると、依り代を総て燃やして消滅させた 神威は「おい、烈、どうするのよ?」と問い掛けた 「神の道を開いて待機所近くの道路まで出るとするわ!」 「まぁそれしかねぇわな! こんな大人数……どうしようも出来ねぇからな! ウロウロ歩けば迷子になる事間違いなしだし、陽は暮れるのは早いしな! ならばお前は道路側の神の道を開いておけ! 儂は此処から皆を避難させよう! 直ぐ側だから出口が見えてた方が安心だろ?」 「解ったわ、待機所近くの道路へ道を繋ぐわ!」 と言い烈は神の道を開いて待機所近くの道路へ道を繋いだ 神威は「さぁこの道を通って出口にいる烈の方まで走って行きやがれ!」と言った 自衛隊の隊員は救助に来ていた者の人数を確認して機材を手にすると、直ぐ様神の道へ入り走って抜け出た 次は地元の警察も救助に来ていた人数を確認すると、遺品を入れた鞄や機材を持って神の道へ入ると走って抜け出た 次は唐沢達の番で唐沢の部下は人数を確認すると 「班長!全員います!」と謂うと神の道に入り走って抜け出た! 一番最後に神威が通り出口へ向かう 神威が神の道を出ると、烈は神の道を閉じた 神威は「皆無傷か?」と問い掛けた 唐沢は「神威さん、烈君、本当に助かりました!ありがとう御座いました!」と礼を述べた 自衛隊員や地元の警察官達も神威と烈に礼を言った 自衛隊の隊員はジープに乗り込むと任務を終えて、駐屯地へ還って行った 地元の警察の署員達は回収した遺体を鑑識の車に乗せて、任務を終えて還って行った 唐沢も部下達と共に車に乗り込むと還って行った 神威と烈は神の道を通って飛鳥井の家へと還って行った 神威は烈を背中におぶって歩いていた 「疲れてにゃい?とぅしゃん?」 「大丈夫じゃ!お前一人背負ったとて何て事はない!」と笑って歩く 烈は何時の間にか眠ってしまっていた 飛鳥井の家の駐車場へ到着すると神威はドアを開けて飛鳥井の家へと入って行った 一生はお酒を取りに来て、物音が聞こえ玄関まで来て神威と烈の姿に「どうしたのよ?」と問い掛けた 神威は「全身木屑だらけだから風呂を借りたい! そして烈、久遠に見せてくれ!」と言った 一生は神威の背中にいる烈を離す為に抱き上げると、服に着いた血に一瞬ギョッとした そこへ康太と榊原がやって来て、一生から烈を受け取ると「久遠に見せに逝くとする!神威に風呂を案内してやってくれ、風呂から出たら極上の酒を飲ませてくれ!」と謂うと駐車場へ向かった 一生は神威を源右衛門の部屋に連れて逝くと、風呂の場所を教えた 「何か着替えを探して来るとするわ!」 と一生が謂うと、神威はバサバサ服を脱ぎ風呂へと入って行った 一生は源右衛門のジャージを取り出すと、真新しい下着を用意して「着替え置いておくぞ!洗濯物洗っとくか?」と問い掛けると 「おー!助かるわ!木屑だらけで還ったら有栖に怒られるからな!」と笑った 一生は神威が着て来た衣類を洗濯ネットに入れて洗濯から乾燥までセットして回した そして客間に逝くと皆が心配した瞳を一生に向けた 今日は大晦日って事もあり客間の壁に掛けられた大型テレビには紅白が映し出されていた 真矢は「烈はどうしたのですか?」と問い掛けた 清四郎は「康太と伊織も何処かへ出掛けてしまった…………」と寂しそうに言う 一生は説明しようと口を開くと神威が風呂から出て来て 「烈は薬局関係で何かと忙しいんだよ! それは昨夜も話したやんか! 康太と伴侶殿も訴訟の書類とかに目を通して貰わねぇと年が明けたら直ぐに対策が打てねぇからな 今後の対策も視野に入れて膨大な書類のチェックをして貰ってる!」 と言う 翔は「神威、髪の毛ちゃんと乾かさなきゃ風邪引くってば!」とタオルで拭き拭きしていた 音弥はドライヤーを持って来て神威の髪を乾かしてくれた 神威は「儂は風邪など気合で吹き飛ばす!」と言うと、流生が「それ烈だよ!いっつも言ってるもん!」と言うと皆が笑った レイは「れちゅ………」と呟くとしくしく泣き出した 烈に絶対に後を追い掛けるな!と謂れていたのだった どんなピンチになろうとも来たら【絶交しちゃうわよ!】と言われたら飛ぶ事さえ叶わなかった 真矢はレイを優しく抱き締めた その頃烈は康太と榊原に連れられて久遠に診察されていた 血で赤く染まった烈を見て久遠は慌てて駆け寄った 久遠は「烈、どうした?」と心配して怪我を確かめた 康太は「烈の気を込めた依り代が破壊され、烈の体にその衝撃が返されたんだよ!」と説明した 久遠は取り敢えず出来る検査をしに向かった その間 康太と榊原は院長室へと通され、ソファーに座って待つ事にした 院長室は暖房が入って暖かった 暫く待つと久遠が戻って来た 「衝撃で吐血したけど内臓とかに損傷はないから、年明けてから様子を見てでも構わないだろ!」と説明した 康太と榊原はホッと安堵の息を吐き出した そして「久遠は当直なのかよ?」と問い掛けた 「俺か?俺は烈が吐血したと聞いたから待っていただけだ!」と答えた 榊原は「ならば飛鳥井までお越し下さい! 義泰と志津子と神威が来てます!」と言うと久遠は「なら逝くとするか!」と言いスタッフに 「今夜は還るとする!」と連絡を入れた そして飛鳥井の家まで逝くと、烈は自分の部屋へ行き、着替えを持ってお風呂へと駆け込んだ 久遠と共に康太と榊原は客間へと顔を出した 康太は家族に「こんな大晦日に久遠が病院の外に出て煙草ふかしていたから連れて来た!」と言った 家族は久遠を招き入れると、料理を取り分けてお酒を注いだ 流生は久遠に搗きたての御餅をお皿に乗せると前に置いた 暫くして烈が客間にやって来るとレイは、走って烈に抱き着いた 兄達は烈をテーブルに着かせると料理を取り分けて烈の前に置いた 久遠は「熱々のお茶は駄目だぞ!」と釘を刺すと薄めたジュースを飲んで搗きたての御餅を食べ始めた 海鮮鍋を取り分けて烈の前に置く 刺し身に手を伸ばすと久遠は「生物も駄目だな!」と言った 志津子は「年末くらい……」好きなのを食べさせてあげて………と言いたかったが、義泰がそれを止めた 流生は烈の服を捲り怪我がないか?確かめた 依り代が破壊された場所は、やはり衝撃を受けたのか?痣みたいになっていた 流生はそっとその痣みたいになってる場所を撫でた 烈は「流にー、お腹冷えたら下痢しちゃうわ!」と笑って言うと流生は烈の服を下ろした 「痛くない?烈?」 「大丈夫よ、それよりにーに、この搗きたての御餅美味しいわね!」と笑って言う 烈の隣では少し前に魔界から帰還した凜が刺し身を食べる為にわさびをドバーッと入れてお醤油で溶かし食べていた 久遠は流石とわさびの入れすぎに 「凜、お子様が食べて良い色じゃない!」と注意した 玲香は「竜胆は前世からかなりの辛党と言われているからな………」と止めて良いのやら解らずに呟いた 志津子も「竜胆は口から火を吹く程に辛いのを食べていた、と菩提寺の文献でもありますからね」と諦めの境地で言う そんな外野の声など聞こえないのか?凜はほぼグリーン色のわさび醤油にマクロを潜らせてパクっと食べた 久遠は「病院が開いたら一応検査入れとくか!」と呟いた 椋は最近はニコニコと楽しそうに食事をしていた 久遠は「烈はあんまし背が伸びねぇよな? 椋も歳の割にはちっこいよな………栄養状態が悪い条件は同じなのに、凜は何故にこんなに大っきくなってるのよ?」と不思議がった 烈はきな粉餅をボロっとお皿に落とした 背が伸びねぇ………今 背が伸びねぇって言った? ボク……ちっこいの? 烈はフラッと倒れた 慌てて流生が烈を受け止めた 「ボク……凜に抜かれるぅ〜」と魘される様に言う 椋も「ぼきゅ……ちっこい………」とショックでフラッと倒れた 音弥が慌てて椋を受け止めた 志津子は「譲、貴方デリカシーがなさすぎるわよ!」と怒った だが義泰もそれは気になってはいた 烈と椋は年よりも成長の度合いが悪い 超未熟児で生まれた音弥よりも、その成長の度合いが明らかに悪いのだ 義泰は「一度成長に合ってるのか?骨の強度や骨密度を測らねばならぬな!」と呟いた 真矢は烈と椋を抱き締めて 「男の子はね、育ち始めたらスクスク育つから大丈夫よ!」と慰めた 烈は「押さえつけて伸びなくしてやるのよ!」とボヤいた 椋も「ぼきゅも、それやる!」と言う 「凜のクセに!」 「りんにょ くちぇに!」  完璧な逆恨みだった 凜は笑って刺し身を美味しそうに食べていた レイがベシベシ凜を叩くが、凜は気にも止めずに食べていた 音弥がレイの手を取ると「ほらほら、それ逆恨みだから!」と一蹴した わいわいと騒がしい年末の風景に家族も、神野達も安堵していた 真矢と清四郎は笙と楽しくお酒を飲んでいた 烈とちっこいのは10時を過ぎる頃、眠りに落ちていた 流生は「また今年も年越し出来なかったね烈」と弟を抱っこすると部屋まで連れて行った 音弥はレイを抱っこして、大空は椋を抱っこして 翔が凜を抱っこして部屋まで寝かせに行った そして烈とちっこいのを寝かせた後に兄達は客間へと戻って行った 烈は起き上がると凜の部屋を訪ねた 「凜、どうだった?何か解った?」と問い掛けた 凜は烈が来るのを察して起きていた 竜胆は「宗右衛門、俺の魂は何分割かに分けられた事があるそうなんだよ 傷付いた想いを魂が覚えていて、本来の力を封印させていた……ってのが釈迦の見解で 星詠みの婆婆は何分割かに分けられた時に、魂の一部分が誰かに埋め込まれた所為かも知れないと謂われた……」と説明した 「何分割かに分けられた?? それは魂の管理庁の時にやられたのか? それとも蔵に閉じ込められていた時にやられたのか?解らぬのか?」 も宗右衛門は問い掛けた 「俺を形成せねばならない時に細工された……と朱雀が導き出した結果だ!」 「その朱雀、寝てるの?」 姿を見ないから問い掛けた 「俺を置いて魔界へと舞い戻り調べをして来ると言っていた、もし本当に魂の欠片が他の誰かに移植されたとしたら?それは朱雀の管轄だと怒って、調べて来てやる!と言ってくれた!」 「それ、母しゃんには?」 「還って直ぐに伝えた!」 「欠片って……?誰かに移植された?って誰か解らにゃいかしら?」 「皆目検討は付かないみてぇだ……」 「まぁ足りないなら補えば良い! 傷付いた魂の記憶も塗り替えれば良い それで本来の力が封印されているならば、蘇らせてやれば良いだけの事にゃのよ!」 「補う?そんな事出来るのかよ?」 「出来るわよ、魂は成長を続けるのよ 多少欠けていたとしても、余りある成長が出来る筈だから心配は要らにゃいわよ! 飛鳥井の果てが狂うなんて……絶対に在ってはならないのだから!」 竜胆は泣いていた 押しつぶされそうな不安との闘いだったからだ 何が?と言う訳がじゃないが、自分自身に違和感を感じていた 力が前程に使えていない現実に、動揺していた 烈は凜を抱き締めた 「多分これ以上の事は出ては来ないから、年が明けたらボクが覚醒の儀をやって、その後に魂の完全覚醒の儀をやり定着させるわ そしたら前の様に力が使えるし、違和感なんて吹き飛ばせるわよ!」 「俺は竜胆でいて良いのか?」 「良いに決まってるじゃない! これからはもっと早く相談するにょよ! 対策が遅くなると打つ手がなくなる時もあるからね!」 「解った………ごめん、俺も不安で………」 烈は凜を布団に入れた 「さぁ寝ちゃうにょよ! 年が明けたわよ、新しい年が明けるのよ!」 凜は烈の声を聞きながら眠りに落ちた それを見届け、烈は自分の部屋へも向かいパジャマに着替えてベッドに入った 布団に入り烈は深い眠りに堕ちた お正月の朝 少し遅めに起きて両親や祖父母に新年の挨拶をした 穏やかな時間の流れる元旦は、夕方にはまた皆が集まり宴会となった 烈は両親の傍に行くと「少し話があるのよ」と声を掛けた 康太は「うし、応接間で待っててくれ!」と言うから烈は先に応接間へと向かった ソファーに座って待ってると康太と榊原が飲み物を持ってやって来た 康太はソファーに座ると「話は竜胆の事か?」と問い掛けた 榊原は烈の前に飲み物を起き、自分たちの前にも置くと康太の横に座った 烈は「そう、竜胆の事で話とかなきゃって……」と切り出した 康太は「今朱雀が調べているんだろ?」と安心させるように言う 「多分これ以上の事は出ては来ないわよ 朱雀は必死に調べてくれているけど、分割された魂の欠片が何処の誰に移植されたのか? それは星詠みの婆婆だって詠めはしないわ ならば多少欠けていたとしても、魂は成長を遂げるから、今の柔軟な時ならば覚醒の儀を行い竜胆の奥底に眠る本心を覚醒させられると想うのよ だから覚醒の儀を執り行い、魂を定着させた後に完全覚醒の儀を執り行うのが懸命だと、ボクは想うのよ!」 康太は烈の言葉を聞き、目を閉じ考えていた その儀式は長い転生の中、数度しかやった事のない練度の高い術式だった しかも完全覚醒の儀など一度もやった事などないのだ 「完全覚醒の儀………誰も知らねぇぜ?」 康太でさえそれは知らない 「ボクも知らないけど、菩提寺の墓所の移転の時、地下へ逝く道が見つかったのよ、その中に古来より伝わる禁忌とされた術式が記された巻物が発見されたにょよ! その中に完全覚醒覚醒の儀が書かれていたのよ その他にも禁忌とされた書物や呪術が山程見つかったから、崑崙山のボクの家に運び込ませたのよ うっかり手にして見るだけでも呪いに掛かりそうなのまであるからね 総ての建築が終わった後、納骨堂の地下に戻す事にしているのよ! この忌日は菩提寺の忌日として遺すと決めているのよ 何時か…………必要とするならば………遣わねばならない日も出て来るからね」 康太は「それオレ知らねぇんだけど?」とボヤいた 烈は「え?母しゃんのラインに禁忌の書物見付かったから崑崙山へ運んで貰う事にしたのよ!ってライン送ったわよ?」と言う 康太は思い出し「あれ、菩提寺の事だったのか?」と納得した 烈は驚き「え?何だったと想ったにょ?」と問い掛けた 「お前少し前に古い薬局の解体やってたやんか? だからオレはその薬局の屋根裏に禁忌の書物があったのか?と想ったんだよ!」 「あー!何軒か古い薬局を解体したわ、その時に隠し財産や金の延べ棒や何か解らにゃい書物は見つかったわよ! 其れ等も崑崙山のボクの屋敷に入れてあるわ 四鬼が荷物だらけのボクの屋敷を見て、今度倉庫を建てておいてやる!って言ってくれる程にね 何だか沢山の荷物放り込んであるにょよ!」 と烈はボヤいた 康太は話を本題に戻した 「その書物オレにも見せてくれ! お前一人では荷が重い、多分だけど……完全覚醒の儀って能力者の【血】が必要になるんじゃねぇか?それに似た呪術ならオレの知ってる呪術ならば、欠けた部分を補う為に能力者の【血】が必要となる筈だからな!」 烈は覚悟を決めた目を母に向けた 「そうよ、転生者全員の【血】が必要となるのよ 恵方と源右衛門は魔界の管理だから頼めば手に入ると想うのよ 後は今いる転生者で何とかなるのよ 母しゃん………竜胆の為に協力してくれせんか?」 と頼んだ 康太は烈を抱き締めて 「当たり前やんか! そんな荷が重い事をお前一人に押し付ける訳がねぇだろうが!」と励ますように言う 「3日の一族詣での後、魔界へと逝くわ 恵方と源右衛門と逢って【血】を貰える手筈を整えないと本番に困るからね!」 「ならば、その時はオレと伊織も共に逝く!」 康太が言うと榊原も烈を抱き締めて  「君には父もいます!忘れないで下さいね!」と言った 烈は泣きそうになり「父しゃん」と大きな胸に顔を埋めた やはり我が子は父の優しさに触れると泣いてしまうのだ 母には少しだけ格好つけて頑張るが、父の大きな胸に抱かれると泣いてしまうのだ 榊原は「お正月です!せめて一族詣での時までは何もかも忘れて過ごしなさい!」と言うと烈は頷いた 榊原は烈を離すと「さぁお雑煮の準備するのでお手伝いして下さいね!」と言う 烈は顔を上げると少しだけ赤い目をして頷き、走って客間へと向かった 客間には兄達がいてお布団を畳みテーブルを並べていた 烈はふきんを手にするとテーブルを拭いた 烈の姿を見付けるとレイとクーが烈に飛び付いた 朝の準備をしていると音弥はホカホカのタオルを手にしてクーの顔を拭いていた 最近では週の終わりにお風呂に入れて貰って洗って貰っているのだ そしてブラッシングして貰いツヤツヤになるのだった 飛鳥井の家の中にコオとイオリはいなかった コオが一ノ瀬動物病院に入院しているからイオリも共に一ノ瀬の所にいるからだ ガルはコオとイオリの不在に寂しそうにしていたが、ガブとルシと言う我が子の世話に手を焼き暮らしていた 玲香と京香はそんなガルを気遣い、気を紛らわす様にドッグランへ連れて行ったりしていた 雑煮を皆で食べ初詣に出かける 神野達は一旦帰って夕方には来ると言う 竜馬も今は三木の家に帰っていた 烈がまたイギリスに逝くんだから、親孝行して来なきゃ駄目よ!と言ったから、家族を連れて温泉へと出掛けて逝ったのだ 勿論 竜馬の奢りで出掛けて楽しい時を過ごしていた だが烈も一緒に来れば良いのに………と想いは烈へと飛んで逝く でついついラインをしてしまうのだった 家族はそんな竜馬を暖かく見守っていた 元旦の夜は楽しい宴会となった そんな感じで正月2日をやり過ごし、皆は帰って逝ったのだった 正月3日、一族詣での日 朝から飛鳥井は客間を総て片付けて和服を所狭しと出して着付けをしていた 烈は自分で宗右衛門の着物を着ていた 人に着せられるとギューギュー締められるから、一人で着ていた が、父は見過ごしてはくれなかった 「そんなに緩めだと着崩れします!」と言い締めるのだった  烈は「ぐへっ!」と変な声を上げて締められていた 椋はまたもやタオルを入れて締められていた 竜胆は「着物ってスカスカで好きじゃねぇんだがよぉ!」とボヤきつつ着せられていた レイは………ニコッと笑う顔に優しく着せられていた 着付けしていたのが一生だから、その顔にどうしてもギューギュー締める事が出来なかった 玲香が「そんな緩くては着崩れするではないか!」とギューギューやり笑顔の効果はあんましなかった 全員が着物を着てレンタルしたバスに乗り出掛ける 烈とレイはケントの車に乗り菩提寺へと向かった 飛鳥井の一族は一時期半分まで減ったが、今は元通りに増えていた 宗右衛門が才能のある者達に飛鳥井を名乗らせ継がせたからだ 後継者の絶えた者達の後継者として据え継がせて一族の者として生きて行くと定めた そうして増やして逝った一族は、元通りの人数まで増えていた だから今更飛鳥井の者を何人か切ったとて痛くも痒くもない状態だった 血でなく才能ある者を果てへと繋ぎ生かすのだ 血が濃くなり過ぎると中が膿んで来る 膿んだならその膿を出して入れ替える そうして飛鳥井の一族は果てへと繋いで生きて来たのだった 飛鳥井の一族の轍から出た者は【今】は家業を畳み、結局働きに出るしかなかった 殆どの飛鳥井を出た者達が、自分達の力で事業をやって来たが、日に日に経営状態は苦しくなり、その時になってやっと真贋が導く果てへ繋いだから繁盛していたのだと痛感した また一族に戻りたい!そう訴えたが宗右衛門は断固として許さなかった そうして迎える一族詣での日 この年は何の波乱もなく無事に終える事が出来ていた 康太は飛鳥井の一族が果てへと繋がれたのだと想った 従順な下僕が欲しい訳では無い だが飛鳥井の果てへと逝かぬ者は斬るしか、飛鳥井の統制が取れなくなると判断し斬って来た 飛鳥井の一族の誇りと信頼、そうしてレールに乗った者達が必要なのだ 真贋のアドバイス通りに導かれ果てへと逝くか? 総てが己の実力だと過信して破滅の果てへ逝くか? その分かれ道に遺り果てへと逝く者達とで逝けば良い 乱世の世は今も続いているのだから……… 滞りなく一族詣でが終わり、着物を脱ぎ捨てると烈は私服に着替えてクーを肩に乗せていた お腹へったなと想っていたら、クーが耳元で何かを告げ、烈は「え!!」と叫び声を上げた 烈の着物を畳んていた一生が「どうしたのよ?」と問い掛けた 烈は皆に聞こえぬ様に一生の耳元までま顔を寄せると小声で 「クーたんがね、今コオたんとイオリが息を引き取ったと教えてくれたにょよ!」と言った 烈にはコオが衰弱して入院しているのは伝えてはいなかった 烈は母の元へ行き「母しゃん頼みがあります!」と言った 康太は烈を視て総てを悟ると 「………それは許可取っているのかよ?」と問い掛けた 「はい!大丈夫だって!」 「ならば連れて逝け……って本体ごとかよ?」 「本体にゃいとふべんじゃにゃい?」 康太は考えた 別に魂だけでも構わないだろうが………本体があったに越した事はない だが家族に別れを言わないまま………は駄目だと想い 「家族に別れをさせる! それからで良いだろ?」と言った 烈は頷いた 康太は一生を呼び出した 「一ノ瀬に明日まで保管しておいてくれる様に頼む!」と言った 一生は「着物畳終えたら連絡入れて来るわ!」と言った 一生と慎一はせっせと家族の着物を畳んで畳紙の中へ入れて逝った 玲香と京香も協力して畳紙の中へと入れて風呂敷で包む ちっこいのも増えて、その作業は結構大変だったが、北斗や和希達も手伝い作業をする 最近は一族詣での時、北斗や和希、和真、永遠は一族席に座っていた 壇上には上がって座れないが、京香の子供達と共に座っていた 無論 飛鳥井の家紋の入った着物を着せて貰い座る事になっていた 最近は宗右衛門に着付けを教わって、着物の着付けのみならず畳み方も覚えていた 皆で協力して着物を畳むと畳紙に入れて風呂敷で包み完成した 畳紙には持ち主の名が書かれていた 家に帰り其々の着物を渡せば良い事になっていた 家族は真矢と清四郎と合流して料亭で食事を取った その流れで飛鳥井の家に帰り、応接間で宴会になり楽しく正月の夜は更けて逝った 1月4日の朝早く、コオとイオリの遺体がレンタルした部屋に運び込まれた事を母に告げた 康太は家族に「コオとイオリが……逝ったわ、悪いんだけどレンタルした部屋まで逝って別れを告げて見送ってくれねぇか? 正月と言う事で、宗右衛門が飛鳥井の家には入れられねぇって言うから、レンタルしておいた部屋に寝かせてあるって烈が言っていた!」と告げた 瑛太は「……共に逝ったのですか?」と問い掛けた 康太は「イオリのたっての願いで魂を結んでやったからな……コオが息を引き取った瞬間……イオリもこの世を去ったんだと想う………」と告げた 宗右衛門は「礼服は着ずともよい!黒系の軽装でよいから送ってやってはくれぬか?」と言う 玲香は涙して「我が家に住んでいた子です…確り見送らせて戴きます!」と言った 清隆も静かに泣いていた 京香は堪えきれずに嗚咽を漏らし泣いていた 瑛太は涙を堪えながら妻を抱き締めた 聡一郎、隼人、慎一は覚悟はしていたが……やはり家族の死は遣る瀬無くて仕方がなかった 家族は黒系のシックな服に着替えるとレンタルした部屋まで行きコオとイオリに別れを告げる事にした レンタルした部屋の中央には祭壇があり遺影が飾ってあった 二匹仲良く写ってる遺影に家族は耐えきれず泣いた 棺には二匹仲良く眠るように寝かせられていた 少し前に烈はクーから「コオから死の匂いがする………長くは無いな………あの様子なら……」と謂われた日からレンタルスペースを借りた 部屋の大きさは大会議室位の大きさだった 【R&R】の従業員に祭壇を作らせ最高の別れの場を演出出来る準備をしていた そして死したとクーが告げた日に生花を買わせ棺や祭壇を花で満たした 康太は「用意していたのかよ?」と問い掛けた 此れだけの祭壇や遺影が直ぐには出来ないのは解るから問い掛けたのだった 「クーたんが………コオたんから死の匂いがするぞって言ったのよ そしてそんなに長くはないって言ったのよ…… だから【R&R】のスタッフと竜馬が準備していてくれたのよ!」と説明した 家族だから思いの丈を込めて送り出してやりたい 宗右衛門は「この遺影は応接間の上に飾っておくから、水や餌を供えて………成仏出来る様に送ってやってくれ!」と言った 玲香は冷たくなったコオとイオリを撫でていた 兄達もコオとイオリの棺の傍に行き撫でる 竜馬は烈を抱き締めて泣いていた 魔界へ行っていた兵藤も朝早く烈に呼び戻され見送りに来ていた 兵藤はコオを撫で「コオ………お前も逝っちまうのかよ………」と泣いた 部屋に啜り泣く声が充満していた 皆悲しみに涙を流し家族の別れを惜しんでいた 家族に愛され過ごした日々が在った 家族の一員だった 犬の年齢にしては早いかも知れない死だった コオは飛鳥井の家に来て10年近くで、イオリはもっと若い……… 数年前に幻のキノコを探しに行き狸が出て来て車が横転した時、コオは怪我を負った 骨を折ってからコオは衰えた 歩くと痛いからあまり歩かなくなり、更に衰えて………最後の方はもう歩けなくなっていた イオリは何時だってそんな妻の心配をしていた 年が超せないかも………と謂われていたのに、少しでも長生きしようと頑張ったのだろう…… 二匹は眠るように安らかな顔をしていた 家族はコオとイオリとお別れをした 別れを終えると烈は母に岩塩を渡した 「不浄は入れてはならないのよ! 家に入る前に振り掛けまくるにょよ!」と念を押した 康太は「うし!風呂へ直行したくなる程に振り掛けておくわ!お前は魔界へ逝くのかよ?」と問い掛けた 「そうね、少し朱雀と話してから逝って来るわ!」 「あんまし遅くなるなよ! 6日には会社は仕事始めを迎える!」 「解ってるわよ母しゃん! 荒れるわよ、多分………それでもね我等は逝かねばならにゃいのよ!」 「解ってんよ!お前の髪の毛……まだ揺れてるもんな………特大級のハリケーンでも呼んだのかよ?」 「そうね、我等【R&R】も変革期なのよ!母しゃん!新しい道を逝かねば………誰にも見向きもされなくなるしかにゃいのよ! 其れ等を引っ括めてボクはね、嵐を呼んだのよ! 会社が落ち着いたらボクは喧嘩を売ってやるのよ!世界へ向けてね喧嘩売るのよ!」 「……烈、母ちゃんは何も言わねぇが………何時もお前を愛して見守っている事だけは忘れないでくれ!」 「母しゃん!」 烈は康太に抱き着いた そして離れると兵藤の傍に行った 「兵藤きゅん 竜胆の話をするにょよ!」と言った 「おー!お前に話さなきゃと想っていたんだよ!」 「なら神の道で魔界へ行くまでに聞くわ! 母しゃん、コオとイオリをクーたんの背中に縛って下しゃい!」 榊原はコオとイオリをクーの背中に縛ると 「コオとイオリが黄泉の旅路へ旅立つのならば、我等は魔界へ行き見届けさせて貰います!」と言った 烈は竜馬に「この部屋は元に戻して引き払ってくれる様にスタッフに言っといてね!」と告げた 竜馬は「了解した!必ず還って来るよな?烈!」と心配して問い掛けた

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