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第71話 不穏な空気 ❹

飛鳥井の家族は仕事納めを無事に終える事となった 現場から戻った社員や部署異動した社員を集めて榊原は 「皆 明日から働く場をその目で確かめられた事と想います! 飛鳥井建設は此れより2年に渡り、ローテーション部署異動を開始致します! 今年からは全社員どの部署でも仕事が出来る様に色んな仕事を理解し、自分がどんな会社に勤めているか?理解され仕事をされる様に現場へは全員行って貰う事になります 今 行ってない社員も行く行くは現場へと行く事になります!それを念頭に入れて今後はより一層仕事に励んで下さる事を期待しています!」 と話をした 烈は黙って立っているだけだった その横に【覇気】を纏った兵藤と【闘気】を纏った竜馬がいたりするから、その圧倒的な存在感に社員達は言葉もなかった 康太は「現場へと配置になられた社員は、明日からは作業着を着て現場へと出向いて仕事をして下さい!その作業着は貴方達の制服となります くれぐれも汚いまま着続ける事だけは止めて貰いたい!」と言った 社長の瑛太が前に出ると 「4月から役員達も大々的な移動があります! 4月になったら正式に皆様の前で挨拶いたしますが、その前に概要だけお伝え致します! 現会長は相談役になられ、私が会長となります 社長は榊原伊織、副社長を飛鳥井綺麗がなります 宗右衛門は最高顧問として社に在籍される事となります!真贋はそのまま会社に目を向けられ次代へ引き継ぐ作業される! 此れよりは次代の真贋も名を売り皆様の前に出て来る機会も増えると想います! この乱世の世を乗り越えられるのは真贋と宗右衛門の存在があればこそ! 真贋と宗右衛門を軽視する事は許されません! 飛鳥井建設で働く社員なればこそ、それを忘れる事なき様にお願い致します! では仕事始めは終わります 皆様 明日から宜しくお願い致します!」 と言い話を終えた 此れで仕事始めは終わりを迎えた 社員は皆 各部署へ戻り帰り支度を始めた 烈はケントを呼び寄せて一旦飛鳥井へと還った 瑛太や清隆や玲香も会社を後にして飛鳥井へ還った 竜馬は兵藤を乗せて飛鳥井へ還った 兵藤は美緒に「なぁアットホームな感じで食べられる料亭知らねぇか?」と電話をしていた 美緒は息子に頼られてご機嫌だった 『料亭かえ?ならば我が懇意にしておる料亭を教えるとしようぞ! 誰がその料亭を使うのじゃ?烈かえ?』 「飛鳥井の家族で逝くんだよ! 仕事始めも終わったし明日への鋭気を養う為に料亭で、美味しいのを食べるって烈が言ってるんだよ!」 『我が愛しの烈が謂うならば、料亭の方に美味しいのを用意する様に行っておこうぞ!』 最近の美緒は康太命は相変わらずだが、烈命になりつつあった 烈を溺愛し我が子に何があっても烈を護れ!と謂う程に烈を特別に想っていた 「人数は還ったら正式に伝える 烈が真矢さん達呼ぶなら増えるし、まだ解らねぇからな!」 『ならば我と愛する夫も数に入れて貰おうとするかな?』 「その様に烈に言っとく!」と言い兵藤は電話を切った 飛鳥井の家に到着するとダニエルが「竜馬!貴史!」と言い出迎えてくれた 兵藤は「メンバー全員いるのかよ?」と問い掛けた ダニエルは「当たり前ですがな!リーダーが今世紀最大の喧嘩を売ると謂うのに黙ってられますかいな!」と謂う 兵藤は「ならば増えるな」と言いつつ応接間へと向かった 応接間には真矢と清四郎もいた 烈は母と父に「ボク10出すわよ!」と謂うと榊原は「ならば僕と康太で20出しましょう!」と言った 「それは駄目よ、父しゃんは10で良いのよ ヘンリー皆で10よ!」と謂うと ヘンリーは「僕が全部払います!」と言った 「それは駄目よ!ヘンリー!」 と烈が謂うがヘンリーは 「我が父から軍資金を得ているのです!」と帯封のしたのを一本出した 烈は「あ~金持ちって嫌だわ!」とボヤく イーサンは「ならばメンバー全員二万ずつで12出します!」と言った 烈は「それで良いにょよ!」と謂う 烈は竜馬に「頼むわねりゅーま!二人で10よ!」と謂う 竜馬は「了解っす!お金が余ったら家で宴会っすか?」と問い掛けた 「そうよ、料亭だけじゃ足りにゃいわよ!」 「なら慎一に頼んで料亭でお持ち帰り頼むっす!」 「余ったら」と烈が言おうとするとヘンリーは 「ねぇ、父さんから飛鳥井の皆の為に使いなさい!と言われてるのよ 此処で引っ込められないわよ!」と頑張って主張した 烈は「ならこのお金は父しゃんに預かって貰うしか無いのよ! 今後【R&R】のメンバーが泊まり込む事も増えて来るのよ! 足らなくなったらまたメンバーが出すから、今後の費用として収めて欲しいのよ!」と言った 榊原は帯封の一本を受け取ると 「今世紀最大の喧嘩を売るでしたね! ならば我が家は最大限のバックアップを約束します!足らなくなったとしても烈は我が子ですから、我が子の大切な存在を饗すのは当たり前の事なので、今後は烈が提示するお金以外は必要ありません!」と言い、そのお金を慎一へ持って行った 「慎一、【R&R】からの軍資金です! 烈は今後、今世紀最大の喧嘩を売るそうなので、何かとメンバーが飛鳥井にいる事も増えるので頼みますね!」 慎一は帯封一本を受け取り 「もぉ竜馬は飛鳥井の家族も同然ですし、メンバーも居心地良さげに飛鳥井にいるじゃないですか!そりゃ食費は受け取りますが、こんな大金は今後は持って来ない様にお願いしますね!」とボヤいた 「銀行に明日行き食費用の口座に入れて……」と予定を立てる ヘンリーは父さんの馬鹿!と心の中で叫んだ 烈はヘンリーをソファーに座らせると 「クリスはヘンリーが肩身が狭い想いをしない様に案じて皆で楽しい時間を作れる様にしたかったのよ!だから『ありがとう父さん!飛鳥井の皆は喜んでいたわ!』と伝えるのよ! そして必ず『今後の費用は自分達で調達するから心配しないでね!』と伝えとくのよ!」と言った それが一番波風立てない一番の言葉だった ヘンリーは「解ったよリーダー!伝えとくね!」と言った 「ヘンリー、料亭には自分達が出したお金で行くのよ!だから心置きなく食べられるのよ! 誰かの奢りじゃ遠慮しちゃうでしょ?」 と解りやすく謂う ヘンリーはハッとして烈を見て「そうだね!ごめんリーダー」と謝った 「さぁ兵藤きゅん、ボクとりゅーまと【R&R】のメンバーと飛鳥井の家族とじぃたんとばぁたんを数に入れて予約よ!」 「美緒と親父も良いか?」 と謂うと康太は「構わねぇよ!母ちゃん喜ぶな!なら志津子達呼ぶか?」と笑顔で言う 「そうねしづちゃん呼ぶなら義泰と神威と数に入れなきゃ!」 兵藤は数を数えメモする そして「笙家族は?」と問い掛けた 「数に入れなくて良いわ! 仕事始めで此れから毎日顔を見る相手の所へ、好き好んで来たいとは思わないからね!」と謂う それもそうだな、と納得した 兵藤は人数の確認すると美緒にラインで伝えた 美緒は『大人数じゃな、ならばバスでお迎えに行かせるとしょうぞ!』と言ってくれた 烈は志津子に「宴会よ!来るのよしづちゃん!」とラインした 志津子は『夫も良い?最近は拓美達は塾で遅くてね、淋しいみたいなのよ!』と返す 「良いわよ神威も来ると思って人数に入れてくれてるから!」と返す 『何処へ逝けば良いの?』 「飛鳥井の家に来て、そしたらバスが来るからそれに乗るのよ!」 『すぐに行きます!』 ラインを終えると烈は真矢に「女子会よ!ばぁたん!」と言った 真矢は喜び「楽しみだわ」と言った バスのお迎えが知らされる頃、美緒と昭一郎も志津子も義泰と神威も飛鳥井にやって来て、皆でバスに乗り大移動した 連れて逝かれた料亭は山の奥にあり静かで落ち着く雰囲気の料亭だった 料亭の女将はバスを降りた家族に深々と頭を下げ迎え入れた そして皆を部屋へと案内した 「部屋は当料亭一の大広間となっております!」 と言い皆を部屋へと招き入れた 康太は「皆適当に座れよ!誰がどの席になんて決まってねぇかんな好きに座れよ どうせ酒を飲み始めたら席なんてねぇようなモノだろ?」と言うと康太は適当な所へ座った 烈はレイや凜、椋達と席に座っていた 烈は最近元気のない凜に「どうしたのよ?凜!凜が元気ないとボクに家族やにーに達が凜大丈夫?って心配して聞きに来るのよ!」と言った 凜は暫く考え込み竜胆の声で 「俺………自分の魂の欠片が何処へ行ったのか? 思い付いたんだよ…………」と答えた 烈はあ~そう言う事なのね!と納得した 烈は竜胆を料亭の廊下に連れて行くと 「今それ以上言うのは許さいわよ!」と言った 「宗右衛門………俺はどうしたら良いんだ?」 宗右衛門は竜胆の肩を叩くと 「それは今夜話す故、主は何も考えずともよい! 主がそんな風に元気がない方が家族を不安がらせていると気づかぬのか?」と叱咤した 「宗右衛門………でも……」 「それ以上は申すな! それ以上申すならば……儂は主を黙らせるしかない!」 「…………解ったよ宗右衛門 済まなかった………」 「美味しい料理を食す前に家族に謝っておくがいい!」 「解ったよ!」 烈は凜を連れて部屋に戻った 兄達は優しく凜を席に着かせた 烈は何も言わず料理を食べ始めた 不機嫌オーラ全開で烈が食事をする するとレイが烈に飛び蹴りをかました 「痛いにょよ!レイたん……」 「みんにゃ ちんぱいしてるにょよ!」 とレイに怒られる 「ごめんね、レイたん」 「えぎゃお わすれちゃら らめらってちってる?」 「知ってる!」 「にゃら わらうにょ!」 烈はニーッと嗤った 流生は慌ててレイを止めた 「レイ、その笑顔の方が怖いってば!」 烈は「失礼なぁー!」と怒った 音弥はレイを撫でて「あの笑顔は凶器だから笑わせちゃ駄目よ!」と謂れ手を上げて「あい!」と返事をした 凜はそんな家族の温もりに触れて泣きながら御膳を食べていた 翔が「塩っ辛くなっちゃうよ!凜!」と涙を拭う 凜は服を脱いで、その服で顔を拭いた 太陽が「直ぐに服を脱いじゃ駄目だって言ってるじゃない!」と怒る 大空が「ほらほら、服を着ないと風引いちゃうわよ!」と世話を焼かれていた 康太と榊原はそんな楽しげな家族を見ながらお酒を飲み、美味しい御膳を食べていた 場もかなり盛り上がり、そろそろお開きにして飛鳥井の家へ持ち帰りの料理を頼み帰ろうかと想っていた頃 廊下に正座した女将が襖を開いた 女将は三つ指を付き「楽しく過ごされましたでしょうか?」と問い掛けた 榊原は「はい!楽しくい時間過ごせました!」と答えた 「あの今度もで宜しいので、少しだけお時間を頂戴しても宜しいでしょうか? 勿論 その分は今日のお料理はサービスと謂う事にさせて戴きます!」 と深々と頭を下げと頼み込んだ 康太は「別にサービスにして貰わなくても大丈夫だが?」と問い掛けた 「清和和実は我が兄で御座います 兄は良く料亭に顔を見せに来てくれるのです 今日、兄が料亭に来た時に、私は玄関に張り出すご予約者様の名を紙に書いておりました そしたら、飛鳥井の御一家がお越しだと解ると、兄は私に頼みをして参りました 我が兄が引き継いだ会社が青色吐息なのは私も良く存じております! 兄の娘が真贋様と宗右衛門様を怒らせたとか……… 飛鳥井を敵に回せば兄の会社など一溜まりもない なので誠心誠意謝罪の場を………と申しております!なのでどうかお願い致します!」 と女将はその場で土下座した 宗右衛門は「時間は取ってやろう!が、一家団欒のこの場に相応しくない事を良くもしてくれたな 今日は家族で明日から始まる怒涛の忙しさの前に鋭気を養いに来たと謂うのに台無しじゃ!」と怒った 康太も「話があるならば正式に飛鳥井へ電話して秘書に取り継いて貰えよ」とボヤいた 榊原は「女将、我等は正規の値段を払い、食事を楽しみに来たのです!慎一、精算をして頼んでおいた料理を受け取って来て下さい!」と言った 女将は「申し訳ありませんでした!ならば持ち帰りのお料理はお詫びと謂う形でお願い致します!」と言った 宗右衛門は「それならばその詫びは受け取るとしよう! 秘書に清和和実からの電話は受け継ぐ様に申しておくので、電話をして来る様に伝えておいてくれ!その時に話し合いの場に上がれる状況か聞いて、駄目ならば御帰り戴く事になるかもと、とお伝えくだされ!」と言った 女将は「解りました!必ずや伝えます! 本当にありがとう御座いました!」と深々と頭を下げた 美緒は「我がこの料亭を紹介したのがいけなかった………許してたもれ!」と謝罪した 烈はニコッ笑って「美緒たん、とても素敵な料亭ね!今度また来たいわね!りゅーま!」と言った 竜馬は「父さんにも教えたい程に素敵だよ!」と謂うと美緒は「繁雄ならば知っているぞ!」とサラッと言った 竜馬は「あのクソ親父!こんな素敵な場所ならば教えやがれ!」と怒った 美緒は笑って「だって此処は智美にプロポーズした場じゃから教えたくないのであろうて!」と笑った 康太は「繁雄の癖にロマンチストやんけ!」とボヤいた 玲香は「康太、そんな事は申すでない!」と窘めた 「還ったら宴会の続きだぜ!」と康太が言うと皆嬉しそうに笑っていた 慎一が精算を済ませて一生にも持ち帰りの料理をもたせるとやって来た 物凄く沢山の持ち帰りの料理に女将は 「心ばかりのお詫びを致しました!」と言った 烈は「ありがとう女将しゃん!また来るわね! メンバーも気に入ったから来たいわよね!」と謂うとメンバーは【勿論でーす!】と答えた 女将は美緒に「本当に可愛い子を紹介してくれてありがとう!」と礼を言った 玲香も「また女子会開くわいな!」と謂う 名残惜しくもバスに乗り飛鳥井の家に帰り、宴会へ突入させた 榊原は烈に「明日は皆を呼びなさい!料理が沢山無駄になるので皆を呼びなさい!」と言った 烈は笑顔で「了解したにょよ!」と答えた 即座に神野と須賀と柘植と相賀のグループラインに「明日は宴会よ!」と送った 神野達は喜んだ そして『明日行ったならば話がある!』と言った 「解ったわ!なら明日来てね!」 とラインを終わらせた 客間では家族達は楽しげに飲んでいた 烈は凜を連れて自室へと向かった 烈は座布団を出すと凜はその座布団の上に座った 宗右衛門は「主の欠片は律の中にあると申すのじゃろ?」と単刀直入に切り出した 凜は驚いた顔を宗右衛門に向け竜胆の声で 「知っていたのかよ?宗右衛門!」と問い掛けた 「可能性の問題を考えたら……無縁な律をわざわざ蔵の中に入れておく必要などないとの結論しか出ては来ない! ならば何故そうしたのか? そう考えたら竜胆の魂を何分割かに分け、年格好の似た子の中に竜胆の魂の欠片を入れて竜胆の気配を纏わせ暮らさせた 何時か来る我等を想定し、蔵の中から助け出した時にコピーを助け本物を死なせたとしたら? それはもう儂と真贋への最大限の嫌がらせになるからな  そう考えた方が妥当だと想ったのじゃよ!」 竜胆は「だとしたら律は………何の為に……」と言葉を詰まらせた 宗右衛門の声は怒気を含み 「それ以上は申すな!竜胆! 律には律の人生がある!主には主の人生がある! 二人の魂は交りはせぬ! 各々の道を逝くだけじゃ! 律は賢い………この前逢って来た時に 『何時でも宗右衛門、ボクの中にある欠片を竜胆にお返しください!」と申した……… その言葉の意味が解るか?竜胆? 律は何時だって死ぬ気でいるのじゃよ! 例え短い生涯だとて己の痕跡を残す為に今 役者としての道を歩き始めた それは総ては凜、主に返す時が来る日の為に恥じぬ日々を送ると決めたからじゃと申しておった 主には蔵の中で命を救われ、日々救われたからだと申しておった 主の為ならば己の命など何時でも捨て去りましょう!と申した!覚悟ならば出来てるのじゃよ!」 竜胆は宗右衛門の言葉に泣いていた 「俺は生きているのがこんなに辛いとは想った事はない…………」 「それでもな竜胆、我等は立ち止まるのは許されぬのじゃよ!解るな?竜胆!」 「解ってるよ宗右衛門! 立ち止まったりはしねぇよ………」 「竜胆、主はまだまだ成長の過程で謂うなれば小童じゃからな、魂は成長を遂げられるのじゃよ 真贋とも話したが、主の奥深くに眠る初代竜胆の魂を呼び起こす! そしてその魂が定着したら、魔界へ行き恵方、源右衛門の血を、そして今世いる我らの血で魔法陣を描き完全覚醒の儀を執り行う! それで主が欠けた魂は完全に覚醒をし剣も主だと認め使える様になるじゃろ!」 「その儀式は聞いた事がない…… 相当練度の高い儀式なんだろう……」 烈は巻物を開いた時に出て来た恵方の手紙を竜胆に見せた 竜胆はそれを受け取り静かに手紙を読み…… 「え!!!恵方の未来視が今世で途絶えていると謂うのか?」と唖然となった 「だから申しているではないか! 1000年続く果てへと繋げる今が分岐点になると!【今】を繋げねば100年しないうちに飛鳥井は終焉を迎えるしか無い……… この蒼い地球(ほし)が生き残ったとしても、今を正して逝かねば飛鳥井は終焉を迎えるしか無い…………と謂う事じゃ!」 「そんな事は絶対にさせねぇ! 現世の顔合わせは来世へ繋ぐ絆となる礎じゃねぇのかよ! レイや俺や椋が継ぐべき飛鳥井を終焉へなんて向かわせはしない!絶対にな!」 「ならば落ち込むのはもう辞められよ! 我等は落ち込む暇などないのじゃ! 1000年続く果てへと繋げる為に我等は今を生きねばならないのだからな!」 「済まねぇ宗右衛門! 律の事を思えば俺はどうしたら良いか………解らなかったんだよ!」 「律は主がなれなかった明日を生きる 我等は飛鳥井の轍から抜けれは出来ぬ存在! だから見守ってやるがいい! もう一人の自分の人生が安寧なモノである様に願ってやるがいい!」 「もう大丈夫だ!宗右衛門! 俺はもうブレねぇ!絶対に明日の飛鳥井の礎となり果てへと結ぶ!」 「それでよい!主を生かす為に儂らも命を張る事となる!完全覚醒の儀はまだ誰もやった事のない儀式だからな!」 「どんなに苦しくても俺は耐える! 耐えて耐えて耐え抜いてやる!」 「それでよい!儂は少し疲れたから寝るとする 主はどうするのじゃ?」 「俺も寝るとする! 明日からは何時もの凜に戻るから………今夜は泣かせてくれ!」 「思い切り泣くが良い!」 烈はそう言い凜を抱き締めた そして体を離すと凜は烈の部屋を出て行った 烈を心配して様子を見に来た兄達はその話を聞いてしまい………唖然としていた だが走って凜が烈の部屋から出ると、音弥が凜に寄り添って部屋へと連れて行った そしてパジャマに着替えさせ、添い寝をしてやった 凜は布団を被って泣いていた 泣いて、泣いて、泣き疲れて眠るまで、音弥は添い寝してやった そして腫れた目を見て「明日は朝早くから目を冷やさなきゃ!」と呟いた 律は何時だって冷めた目で人を見ていた 諦めた様な目をして寂しそうな雰囲気を背負っていた 榊原の家を出て、養成所の寮に入り、そのまま正式なタレントとして契約して自分の身は自分で立て始めた律の頑なな想いを心配していた まさか………そんな思いを抱いていたなんて…… 凜でなくとも聞けば泣けてくるのだった 大空は烈の傍にいた パジャマに着替えて眠る弟の手を握り締めていた 烈は兄の優しい温もりに時折鼻を啜っていた 朝早く烈は掃除を始め、掃除を終えると風呂に入り着替えを洗濯ネットに入れると、洗濯機前の籠の中へ入れておいた そしてスーツに着替えると応接間へ行き新聞を読んでいた そして新聞を読み終えるとデローンと腹這いに寝そべり考え事をしていた クーは烈の上に乗り「朝食いに行くぞ!」と謂う 「何か御飯食べるのも最近は面倒にゃのよ………」とボヤいた 「おめぇ幾つのジジィだよ!」と怒った 「だってやる事が次から次へと湧いて来てさ 本当に面倒にゃのよ、もぉ動きたくにゃいから!」 「てめぇ!早く飯食いに行くぞ!」 「ご飯が歩いて来てくれにゃいかしら?」 「来るかよ!」 「デローンとしてたら服も着せてくれにゃいかしら?」 とついつい烈がクー相手に寝そべってボヤいていたら 「ならば僕が此れからは着せてあげましょうか?」と父の声がした それはそれは怖い父の声に烈は飛び起きた 「父しゃん!」 「こんな朝早くから応接間で声がするかと来てみれば、駄々を捏ねている烈がいるので驚きました 良いてすよ、ご飯も食べさせて着替えもさせてあげますとも!総てやりましょう!」 目が座ってて怖い……… 烈は「父しゃん………忙し過ぎて駄々をこきました!」と早々に謝った 榊原は烈を抱き締めて 「君が初等科に上がり宗右衛門として動き出し、竜馬を表に出してからは、気が抜ける日はありませんでしたからね……仕方ありません! ですが今後は更に熾烈な闘いが待っていて、どんな状況になるか解らない時期ですからね油断は禁物なのは解ります だから多少の駄々ならば許してあげます! 昨夜………竜胆と話をしたのでしょ? そんな辛い時はやはり康太でも二人で何処かへ行こうかと弱音を吐く程でしたからね……… 君の荷物は我等も持ちます、一人で無理して背負わなくても大丈夫です!」と安心させる 「父しゃん……」 烈は涙を流すと榊原はその涙を拭い 「ほらほら、それ以上泣くと目が腫れちゃちますよ?」と謂う そしてクスッと笑うと 「朝から凜は兄達に目を冷やされている程です 今夜は皆が集まるのに………凜も烈も目がパンパンでは心配されちゃうじゃないですか!」と言い起こして背中をポンッと押してやった 「ほら朝を食べてらっしゃい! クーは腹減りさんですから早くしなさい!」 烈はクーと共に走ってキッチンへと向かう そこへ康太がやって来て 「あれはオレだって耐えられねぇ程に、辛い現実だろうからな……… 竜胆も、支える宗右衛門も辛いだろうなって思うさ!」と謂う 応接間のソファーで寝そべっていた兵藤は 「あんで飛鳥井はちっこいのに試練ばかり与えるかな?」とボヤいた 康太は「あれは試練なんかじゃねぇよ! 人間を弄んだ果ての現実なんだよ!」と吐き捨てた 本当に人間を弄ぶ遣り方は反吐が出る程許せない! 「俺2月になったらまたイギリスへ行かねぇとならねぇのに……」と兵藤はボヤいた 「イギリス行く前には竜胆の件は目処が付く! そして烈は今世紀最大の喧嘩を売るつもりだからな、寝る暇もない程に忙しくなるだろうさ!」と言いガハハハハハッと笑った 兵藤は嫌な顔をして「今世紀最大の喧嘩を売るって誰に売るのよ?」と問い掛けた 康太は果てを視て……… 「【R&R】は既成概念に囚われた猿芸しか出来ないパフォーマンス集団だ! とか抜かした奴に喧嘩を売るんだよ! それは世界を巻き込み、ちょっとした騒ぎになるな………運命が烈を中心に回り始めているから、少しずつ烈の描く未来へと近付いて行ってるんだよ」と説明した 兵藤はかなり辛辣な【R&R】の話なら聞いた事はあった 「【R&R】は倭の国のしかも同じ人間しか使わない猿芸うんぬんの話ならば聞いた事があるな 竜馬がそれを聞いて怒り狂って空回りして暴走していたからな!」 「そんな馬鹿にしていた奴等に【R&R】此処に在り!って大きな足跡を遺す気なんだよ! 今までは会社のリフォームの為や祖父母の為に行っていたイベントみてぇなモノだったからな それを今回は喧嘩を売る為だけにやるんだ かなり忙しくなるのは目に見えてるだろ?」 「まぁ俺は宗右衛門預かりの身だからな 扱き使われて働きますがな!」 と兵藤はボヤいた 康太は兵藤を見た 兵藤の顔付きが変わった ロードに叩き込まれ教え込まれた日々が兵藤を鍛え研磨されて行ったのだろう 堂嶋が見たならば悔しがり、警戒するであろうレベルまで、顔付きが変わり、立っている姿まで洗練されていた 何もかもが倭の国にいた頃よりも段違いに違うのだ 流石人を活かし、人を鍛え、人と人とを繋げ果てへと結ぶ宗右衛門の力量だと今更ながらに想うのだった そんな今の兵藤に竜ヶ崎の娘では約不足なのは否めなかった 婚約は解消された 竜ヶ崎斎王は喜んで婚約解消を飲んだのだった 兵藤はまぢまぢと康太に顔を見られて 「あんだよ?」と問い掛けた 康太は「嫌……流石宗右衛門だなって感心していたんだよ!」と言った 「それは何を指すんだよ!」 兵藤が聞くが康太は笑って答えなかった 榊原が「朝を食べないと遅刻ですよ!」と謂うと慌てて康太はキッチンへ走って行った 兵藤もキッチンへ行くとクーが美味しそうに朝食を食べていた 「慎一が淹れてくれる珈琲はやはり美味しいな!」と言い食後の珈琲を飲んていた 慎一は笑って「ありがとうクー!」とグルメな猫の評価を喜んでいた 兄達がキッチンに来るとクーの顔を拭いてやったり、と世話をする 翔は烈に「そろそろ登校しないかと、長瀬先生が言っていたよ、烈」と問い掛けた 烈は「にーに達が中等部に上がる頃に出ると言っといてね!」とサラッと返す 「えー!そこまで登校しない気?」 「ボクが学校に通うリスクを考えたら、まだ辞めた方が懸命なのよ! 何時またクラスメートを標的にするか解らないからね、まだ無理にゃのよ!」 翔は烈を抱き締めた 流生も音弥も太陽も大空も烈を抱き締めた 慎一が「遅刻しますよ!」と謂うと兄達は初等科へと通学して行った 烈は飛鳥井建設へと顔を出す為にケントを呼び出して会社へと向かった その日は何時ものように会社で仕事して、お昼を食べて施工へ向かい顔を出すと早めに飛鳥井の家へと還った 神野達とのグループラインに「何時来ても良いわよ!」と送る 部屋に行き私服に着替えると自分の部屋の勉強机に向き直りPCをポチポチしていた 秘書の西村から『清和和実さんからお電話ありました!どうします?』と電話が入り烈は 「この携帯の番号教えて掛けて貰って!」と謂う 『了解!ならば教えるとする!』と言い電話を切ると、直ぐ様 清和和実から携帯に電話が掛かって来た 『飛鳥井烈様のお電話で間違いがないですか?』 と言われて「間違いない!それで話は簡潔に要領をよく話すかよい!」と宗右衛門の声で言われ、清和和実は話し始めた 『妻とは………弁護士を挟み………離婚協議に入りました!娘も………甘やかすばかりで何も教えてはいませんでした……あんな子に育てた責任は取ります』 「それで?何をどうしたとしても、総てが遅いと理解しているか?」 『はい!理解しています! ですが私は社員を守る義務があります! なので精一杯の謝罪を致します! ですので………お許し下さいませんか?』 「………飛鳥井は一切の手は出さぬ! まぁ出さぬとも時間の問題なのは否めない! それを敢えてトドメを刺す趣味は持たぬ!」 『有難う御座います!』 「所で清和和実、主の会社はこのままでは倒産まっしぐらへの道を進むしかない が、総て儂の条件を飲むならば、主が守りたい社員達や主の会社を立て直せるかも知れぬ条件を出してもよいが、どうする?」 『………我等には選択肢は御座いません! このままならば、必ずや廃業の道を辿るしか御座いません! 社員達に少しで渡せる様に資産を整理し始めている所で御座います! 立て直せるかも知れぬ条件があるのでしたら、何を差し置いても飲まさせて戴きます!』 「幾つか条件はある まずは資産状況の確認じゃな 一度会社の保有する資産を整理する前に儂の所へ総ての書類を持って来るがよい! それが一つ、2つ目は【R&R】企業向け調査会社に主の妻の素行調査を依頼されるがよい! 使い込みの証拠、妻と弟やその親族が会社の経営を狂わせ、好き勝手に会社の経営を私物化し悪化させた証拠 其れ等をすぐに集め責任を負わせる 其れ等が出来てこそ、やっと盤上に上がる許可を出してやろう! それが儂の出す条件じゃよ! 聞くか?聞かぬか?は主が決めればよい! 儂は盤上へ上がれる駒を駆使して戦略を練る 盤上へ上がれぬ者などは要らぬのじゃよ! 儂も暇な訳では無い、そして決断が遅い奴は今後は生き残れぬと思っている故、そう言う輩は切る事にしておるのじゃよ!」 メモを取っていた清和和実は『直ぐ様動きます!』と返答した 「ならば其れが出来たならば、秘書に電話をして来るがよい!」 『解りました!それでは失礼致します!』と電話が切られた 電話を終えると流生が「神野達が来てるわよ!何でも烈と話があると早く来たみたいよ!」と呼びに来た 烈は流生を見て「ガス欠にゃのよ……」と謂う 流生は「ならば慎一に頼んで何か作って貰うわね!」と言い烈を連れて応接間へと向かった 応接間へ行くと神野、須賀、柘植、相賀がソファーに座っていた 烈がソファーに座ると柘植が「烈君、君は今世紀最大の喧嘩を売られるとか?」と切り出した 烈は驚いた瞳を柘植に向け 「それ、誰に聞いたの?」と問い掛けた 神野はタブレットを烈に渡した すると其処には【R&R】公式ページが表示されていた 【R&R】公式ページには 【皆様に【R&R】からお知らせがあります! 我等がリーダーが今世紀最大の喧嘩を売る予定なので、我等メンバーもリーダーに売れられた喧嘩を買う予定です! かなり規模の大きなイベントになるとの事なので、今からどんなイベントになるのか? 考えるだけでワクワクして楽しみで仕方がない! 今回のイベントに伴い、我等【R&R】は大々的なオーディションを敢行する事にしました! 世界の中の有名人も、名も無き者達も全ての者にチャンスがあります! メンバーのイメージに合えば起用するチャンスでもある 大々的なオーディションは、アメリカ・イギリス・香港・倭の国でやる事が決まりました! それに伴い書類選考一次予選を受け付けます 書類選考は自己アピールする動画と経歴、其れ等を【R&R】のホームページからダウンロードして、それに記入して送信して下さい! 既存のタレントの起用は今の所考えてはいない 我等のイメージに合い、世界を納得させられる才能があるのならば起用するかも知れぬが、条件は総て同じでオーディションで決定するつもりです! 我等は1000年続く果てへと逝かねばならぬリーダーの想いを受け継ぎ、此処で大きな足跡を遺す為にイベントをするつもりです! 【R&R】此処に在り!と大きな足跡を遺す為に我等は始動する         【R&R】メンバー 一同 】 と書かれていた 神野は「これに間違いはないのか?」と問い掛けた 烈は「間違いないわよ!りゅーまに夏に合わせてオーディションを告知する様に言っておいたからね、今から書類選考をしたりしないとアメリカで行うイベントの予想日も立てられないからね!」とサラッと言った 須賀は「今回のイベントは我が社のタレントは起用される気はないと?」と問い掛けた 烈は渡されてるタブレットを駆使して検索し、目当てのモノが出て来ると須賀に渡した タブレットを受け取り画面を目にして須賀は固まった タブレットを覗き込んだ神野や柘植、相賀も驚愕の想いでそれを見ていた 烈は「此処まで馬鹿にされたならば、三社共同事務所のタレントを使う方が逆境なのよ!」と言った タブレットの記事には【猿芸】【バカの一つ覚え】【無能】【同じ事をやるならBlu-rayで構わない】【仲良し小好しを映像で垂れ流す集団】、等と書かれていた 神野は悔しくて泣いていた 須賀も柘植も相賀も泣いていた 「あきましゃ、直くん、きょーちゃん おーくん 皆には本当に全面協力して貰い支えて貰ったわ でもね此処まで馬鹿にされたら、売られた喧嘩は買わないと男が廃るにょよ! 廃れたままでいるならば、我が両親は絶対に許してはくれにゃいからね! だから今世紀最大の喧嘩を売るのよ! 【R&R】此処に在り!って大きな足跡を遺すにょよ!だから我等の目は世界に向いているのよ!」 神野は「悔しいな………」と唇を噛み締めた 相賀は「我等のタレントを使わずとも良いので、我等は【R&R】のプロモーター的存在として支えるのは無理なのですか?」と相談役として問い掛けた 烈は「それはボク一人で決められにゃいわ!」と謂うと翔が「ならばメンバーを呼ぶね!」と言い源右衛門の部屋へ呼びに行った 翔に呼ばれたメンバーが応接間にやって来て事情を聞く イーサンは相賀達の優しさに「オーガ!」と抱き着いた 竜馬はメンバーと話をし、満場一致で 「プロモーターではなく協力者として協力をお願いします!」と謂う事になった だが竜馬は「三社共同事務所のタレントは誰一人使わない方が互いの為ですから、使いません! なのに我等に協力して下さるのですか?」と念を押した 神野は「今の事務所があるのは烈のお陰だ! 阿賀屋蒼佑氏の協力を得られたのも烈がいればこそだ!我等は一度は【R&R】を見捨てる事をしたのに……なのに烈は俺等に手を差し伸べのてくれた!だから俺はどんな事になろうとも烈が望んでくれるならば協力して行くと誓ったんだ!」と謂う 須賀も「私も同じ想いです!」と謂うと柘植も口を開いた 「烈君は俺の悔いを消化させくれた……華々しい花道を飾ってくれ社長業をやりやすくしてくれた 今は芸能事務所の社長としてTVに呼ばれるようになったり、取材を受けたりする 顔も名も売れたからこそ、我が事務所ならば、と来てくれるタレントの卵も増えた そんな恩人に恩を返さなくてどうします!」と言った 竜馬は「ならば協力お願いします! 俺はまだイギリスから帰国は出来ません! 政治家になるべく烈が敷いたレールの上を直走らねばなりませんから! でもその合間を縫って書類選考には参加します なので俺の留守の間、烈をサポートして下さい お願いします!」と頼んだ 神野は「我等の力は微々たるモノでも、協力し合えば大きな力となる! それを教えてくれたのは康太と烈だからな! 俺は康太親子には本当に頭が上がらねぇんだよ!」と笑った 烈はガス欠で慎一が作ってくれたサンドイッチを食べていた 兵藤は「烈はガス欠か?」と問い掛けた 翔が「ずっと宗右衛門だしていたからね、ガス欠なのよ!」と訴えた 兵藤は「なぁ烈、昨日は悪かったと美緒が謝罪していた………あの料亭を紹介したから………って悔やんでるんだよ!」と謂う 烈は兵藤に「美緒たん呼ぶのよ!」と言った 兵藤は美緒にラインして「烈が美緒を呼べって言ってる!直ぐに来てくれ!」と送ると美緒は即座に飛鳥井へとやって来た 応接間に入り烈を見ると美緒は烈を抱き締めて 「済まなかった烈……」と謝罪した 「気にしないでね美緒たん」 「烈……」 「人の運命は半分は決まっていて、後の半分は自分で引き寄せる力や努力で成り立っているにょよ 清和和実はどう仕様も無い運命を持っていたが、彼処で奮起するならば変われるやも知れぬ運命の分岐点にいたのよ まぁ母しゃんならば、運命の分岐点なんてのは無理矢理でも立たせて蹴り飛ばせば同じとか謂うけどね……… ボクはまだその領域まで達してにゃいからね…」 美緒はたらーんとなった 流生は「その領域に達するのは僕達だって無理だから!」と弟を励ます 兵藤も「俺もその領域には達するのは無理だな あれは康太ならではやり方で、烈は烈の遣り方で正して逝けば良いんだよ!」と言い烈の頭を撫でた 美緒は我が子を久し振りにまじまじと見た 我が子はスマートに品性を備え変わっていた 烈の頭を撫でるその姿でさえ、高貴に満ちて………物凄くスマートで卒がない 「主は………何処でその洗練された身の熟しを習って参ったのじゃ?」と想わず問い掛けた 兵藤は「え?なにそれ?んなの知るかよ!」とボヤいた 烈は「りゅーま、兵藤きゅん立つのよ!」と謂うと二人は烈の前に並んで立った 美緒は二人を目にして、その変わり様に恐るべし宗右衛門!と想った 烈は唇の端を吊り上げて嗤っていた 兵藤は「その康太の様に笑うの止めろよ!烈!あくどく見える!」と謂う その後ろで「悪かったな!あくどくて!」と声がして振り向くと康太が立っていた 兵藤は「康太!帰ったのかよ!」と慌てて謂う 「悪かったな!あくどい笑みで!」と嫌味炸裂な康太に「お前等親子は似過ぎなんだよ!」とボヤいた 烈は天使のような笑顔を浮かべると「お帰り母しゃん、父しゃん!」と言った 榊原は「さぁ着換えて来るのでお手伝いを頼みます!」と言い康太と共に着替えに行った 玲香も帰宅して美緒を見ると「おぉ!美緒ではないか!待っててたもれ!」と言い着替えに行った 翔が「皆は客間にどうぞ!」と神野達や美緒を客間に連れて行った 清隆達が還って来るのを待っていたら………清隆は何と堂嶋正義を連れて帰宅して来た 清隆は「家の前で立っておられたのでお連れしました!」と謂う 烈は横目で堂嶋を視て兵藤の後ろに隠れた 堂嶋は兵藤をその目に映し……その洗練された姿に脅威を抱いた あまりにも変わり過ぎていて……別人かと最初は想った程だった 堂嶋は「貴史か?」と問い掛けた 兵藤は「お久し振りです!」とご挨拶した 兵藤の横に立つ竜馬の姿にも目を留め…… あまりの変わり様に羨望と悔しさと脅威を抱く こんなのが政治家になったら存在感なくなるやんか!と堂嶋は思っていた そしてそれはそれで楽しい事になる!と嗤う 堂嶋は応接間に通されソファーに座ると、私服に着替えた康太が応接間にやって来た 「何の用だよ正義?」と問い掛けた 「飛鳥井施工は飛鳥井の会社と何の関わりがあるのか?聞きに来ました! 社長は飛鳥井ではなかったので………」 康太は竜馬に隠れてコッソリと応接間を出て行こうとする烈に目を止めると 「烈、座れよ!」と言った 烈は嫌々ソファーに座った その横に兵藤と竜馬が座る 康太は「飛鳥井施工は烈が最高顧問を務める烈が作った会社だ!」と答えた 堂嶋は「烈君の会社なんですか?」と驚いて問い掛けた 康太は「施工がどうしたのよ?政治屋に目を付けられる事なんてしてねぇだろ?」と訝しんで問い掛けた 堂嶋は「元旦に起こった震災を知っていますよね?施工はどの企業よりよりも早く、どの行政よりも早く現地に入り被災者の救助に辺り、配給がされない中炊出しや地元の住民達のサポートに当たったと聞きます! 今は無償で瓦礫の撤去や家屋の危険度を建築士と共に回り地元の住民達からは感謝されているそうです!」と説明した 康太はそれを聞き、あ~!と納得した 「オレも宗右衛門も100年前に起きた震災では死ぬ目に遭ったもんな! 飛鳥井建設はそんな思いをしたから災害救助に力を入れて来たが、源右衛門が高齢でそんな事さえ廃れてしまっていた 宗右衛門は施工でそれをやったと謂うのか! でもよぉ、あんで建築の方には声を掛けてくれなかったんだよ?」と問い掛けた 宗右衛門は「ボランティアで無償で貢献したい社員なんて城田と愛染と瀬能しかおらぬではないか!無論、この三人は施工と共に現地に出向いて協力してサポートに当たった だが他の社員に声を掛けたとして動く社員はおると想うか?」とボヤいた ボランティア精神に溢れた社員などいないだろう……… 康太は「嘆かわしいな………」と嘆いた 宗右衛門は「行く行くは災害時に動ける社員を育てるつもりじゃよ!」と長い目で視て今はその下地を作っている最中だと謂う 堂嶋は「飛鳥井施工株式会社の方には貢献に感謝して感謝状を渡すつもりです!」と謂う が、宗右衛門は「そんなのは要らぬよ!」と一蹴した 堂嶋は「え?………」と言葉をなくした 兵藤は「飛鳥井施工は宗右衛門の思いを汲んで作られた会社だからな そんな感謝状なんて貰っても仕方がねぇんだよ 政治屋に感謝されたくしてやってる訳じゃねぇんだよ!その場に立たされた者達を想い救いの手を差し伸べた!それに感謝などされたくもない、と謂う事だ!」と謂う 感謝状は会社の泊にもなるから欲しがる会社は多いのに………そんなものは要らぬよ!と断られるとは………想定もしてなくて堂嶋は困っていた そしてやはり目は堂々とソファーに座る兵藤と竜馬に向けられる 堂嶋は「何を学んだら………こんなに変わるのですか?康太?」と問い掛けた 康太は「それはオレに聞くなよ!貴史は鷹司から宗右衛門へ託され今はお育て中なんだよ!」と答える 飛鳥井宗右衛門…………恐るべし存在…… 堂嶋は心底そう想った 堂嶋は「ならば今は宗右衛門殿がお育て中なのですか?」と問い掛けた 烈は「りゅーま!」と謂うと竜馬が 「我等はイギリスに滞在してロード・ペンバートン教授の元 日々学び、クリストファー・オブライエン氏の開く社交界にて日々顔を売り、品性と貴賓に溢れた所作が出来る様に特訓を受けている最中なのです、それと並行してイギリスの上院議員に教えを請う為に行動を共にしたりと、とにかく毎日勉強している日々を送っています!」と説明した 烈は「まだまだ研磨途中の作品なのよね!」とサラッと謂う 此れでまだまだだと謂うのか? 堂嶋は言葉を失った 宗右衛門は嗤うと「主も好敵手がそれなりでなくば、やり甲斐もなくすと謂うものじゃろ?」と謂う 竜馬は「烈、ガス欠なんだから無理しないでよ!」と心配していた 烈の肩に乗っていたクーが 「其の者 魂に翳りがあるぞ!」と言った 烈は顔色一つ変えず母を見た 康太は「それはどう言う事よ?クー?」と問い掛けた クーは康太の膝に飛び乗ると肉球を康太の額に当てた 「少し性能良くなったからな、些末な事さえ視えるようになっているんだよ!」とボヤく 康太はクーの視界を共有して貰うと「成る程!確かに魂に翳りがあるな!」と納得した 堂嶋は猫が喋った……と驚いていた 猫って喋る生き物なのか? 俺が知らないだけなのか? 飛鳥井の猫が特別なのか? もぉ気絶してしまいたい想いだった 康太はクーに「どうしたら良い?」と問い掛けた 「原因が解らねば何度も魂は穢されるし、翳るしかねぇからな、俺のアドバイスは役には立たん! そもそも烈とその御仁は知り合い程度なのだろ? ならば俺からアドバイスしたとしても聞き入れられる事なんかねぇだろ?」 烈は能面の様な表情をしていた 康太は「お前、正義の事嫌いなのかよ?」と問い掛けた ド直球過ぎて烈は苦笑した 「嫌いじゃないわよ! でもね………好きでもないわ! 母しゃんの知り合い程度の付き合いしかしてないからね、答えようがないわ!」 堂嶋はショックを受けた様な顔をしていた そして誤解を解く為に口を開いた 「俺は子供を持たないから………どう接して良いか解らないだけなんだよ! おっさんの俺に声を掛けられたら怖がられないかな?困らないか?と考えるとついつい距離を取ってしまっていただけだ!」 堂嶋が弁解すると兵藤は「正義は不器用な男なんだよ!大人なら対等に話せるが、子供が相手となると傷付けちゃわないか心配になる そんな男なんだよ正義と言う奴は!」と言った 烈は考え込んで…… 「今 堂嶋正義が此処に来た理由 それを考えて、タイミングが良過ぎるのもあって様子を見ていたのよ 竜胆の件を抱えた今警戒して当たり前よね!」 と謂う 康太も「あぁ………年末に仕掛けられしな、警戒して当たり前だわな……」と想い堂嶋に年末大変な思いをした事を話した 堂嶋は「唐沢から捜索隊が編成されて遺体の回収に行った件は聞いている!」と話した クーは堂嶋の膝の上に飛び乗ると、クンクンと匂いを嗅いだ 「最近誰かの葬儀に逝ったりした?」と猫に話し掛けられ 「同じ党の議員が先の震災で犠牲に遭い入院していたが、看病の甲斐なく亡くなられたので葬儀に行ったけど?」 「ならばその時、お前は死の翳りを受けたんだよ!」 「え!…………」堂嶋は言葉を失った 烈は「死の翳り?それって………どんな呪言を施したら影響受けるのかしら?」と呟いた 康太は顔色を変えて烈を視た 「それってあの震災事態……故意だったとか言うんじゃねぇだろうな?」 地脈さえ操れるのならば、人間なんて勝ち目なんて鼻っからないも同然なのだ 烈は嫌な顔をして母を見た 何と言う事を謂うのよ!母しゃん! 烈はコレ以上の思考を拒否しそうだった

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