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第72話 不穏な空気 ❺

烈は「………母しゃん……事を大きくしないでよ 地脈に直接干渉出来るとは想いたくにゃいわ……… そして人の死にまたしても細工をしただなんて考えたくにゃいわよ!」と謂う 康太も「それはオレも考えたくねぇけどな…」と呟いた 何にしても頭が痛い問題が一つ増えた事だけは確かだった 其処へ榊原がやって来て 「お客様を待たせるんじゃありません! さぁ宴会を始めますよ!」と告げに来た 堂嶋は「近い内にお時間を作ってくれたせんか?」と烈に言った 烈は「良いわよ、日時さえ決めてくれたら、ゆっくり話しましょう!さぁ宴会よ!りゅーま、兵藤きゅん!わかってるわよね?」と謂うと走って客間に行った 兵藤は「正義、この後予定ある?」とニコッと問い掛けた 堂嶋は「夜まで俺を働かせるな!予定なんかねぇよ!」と謂うと堂嶋を立たせて竜馬と兵藤が左右をホールドすると客間へと連れて行った そして適当な所へ座らせると宴会へ突入した 客間にいた神威は「ゲッ正義!」と言った 「おっ!底なし神威じゃないか!」とボヤいた 正義はそう謂えば神威の苗字は飛鳥井だったな………と今更ながらに想う 康太は「二人はお知り合いか?」と尋ねた 神威は「ガード下の飲み仲間なんだよ!」と答えた 康太は神威……お前どんだけガード下の飲み仲間を増やしているのよ………と想った そんな康太の想いなど知らぬ神威は 「繁雄と一緒にやって来たのが出逢いで、それ以来のガード下の飲み仲間なんだよ!」と謂う 正義も「ザルの神威とは繁雄を介して親しくなって、今じゃガード下の飲み仲間なんだよ!」と説明した 庶民の暮らしに目を向けるならば、何処までも視線を落とさねばならない!と謂う康太の教えを実践して今に至るのだった 榊原は宴会へ来た皆に 「今日のお料理は昨夜料亭に行った時に頼んだ料理です、少し理由が有りまして料亭の方からお詫びと申されて沢山のお料理を提供されたので、ならば皆で楽しく飲もうとお越しいただいのです!」と説明した 皆 美味しい料理に舌鼓を打ちお酒も進んだ 康太と烈は部屋の隅に並んで深刻な顔をして話をしていた 康太は「あんで………こうも重なる?」とボヤいた 烈はヤケジュースを飲み 「それはボクが聞きたいわよ!」とボヤいた 「何から手を付ける?」 「一番早く着手すべきは竜胆なのよ」 「あ〜猶予ねぇのは解ってるわ! 清和はどうするのよ?このままか?」 「清和には2つ条件出したにょよ! それを飲んで盤上に上がったら綱渡りの今を乗り切れるけどね……盤上に上がれなきゃ見捨てるしかにゃいのよ!」 「ならば清和はそれで良い! で、正義は何番目になるのよ?」 「母しゃん、其の穢を何処で拾ったか直ぐ様調査して下しゃい!」 「ならばオレが直々に出て調べてやんよ!」 「あ〜それは止めた方が良いわよ! 母しゃん誘き出したいにゃら、鴨が葱を背負って来る状態だからね!」 康太はグッと詰まった 烈は「りゅーま、兵藤きゅん1日で調べて結果を教えて欲しいにょよ! なぁに予定表を見て本人連れて調べるだけだから1日あれば十分なのよ!」と謂う 兵藤は「了解!正義、覚悟して俺等に予定表を渡しやがれ!」と謂うと竜馬も 「誤魔化したら…許さないから!」と怒りを滲ませて謂う 正義はトホホな気分で言う事を聞くしかなかった 康太は「竜胆の覚醒の儀は何時やるよ?」と問い掛けた 「月が満ちなきゃ闇が手薬煉引いてる状態じゃ無理にゃのよ!」と言う 其れ等を聞いて康太は「うし!総てが盤上に上がった!」と言った 繋がった果ては決して変えられない現実となったのだ 烈は唇の端を吊り上げて嗤っていた 康太も唇の端を吊り上げて嗤っていた 一生は「もぉ似た者親子はぁ!」と烈を抱えると兄弟の席に座らせた レイが烈に抱き着くと仲良く食べ始めた 椋は東矢の声で「竜胆何かあったの?」と問い掛けた 此処最近の竜馬の元気の無さに何も感じない訳などないのだろう……… 烈は「そうね、椋も聞くべきね、明日話をするわ!」と言った 「レイは知ってるの?」 「知らないわよ、東矢に話してない事をレイに謂う事はない!」と謂う 「レイ………こんなに心配しているのに……知らせてないの?」と東矢は其の事に驚いていた 「心配されようが、話せない事は話さない! でも今回は………竜胆の想いを知らせる為に話そうかしら? 如何に狂った果てへ逝かねばならない現実があるか?知らせる為に話をする事にしたわ!」 東矢は言葉もなかった こんな物言いする烈は滅多とないからだ……… 烈は何時の間にか客間から姿を消していた 康太はそれを見送り「さてとオレはちっこいのを寝かせて来るとするわ!」と言い凜と椋とレイを連れて客間を後にした 康太はちっこいのを自分の部屋のリビングに連れて行った ソファーに座らせ康太は「烈はそれでなくても多忙なんだよ!だからオレが烈の変わりに話してやる!」と言い話を始めた 「竜胆が自分の魂に混ぜものがされているんじゃないかって言い出しのが発端だった それで調べたら、竜胆の魂は何分割かにされ、一部の欠片が不足している事が解った その影響により竜胆の剣が持ち主を認めない事が最近解ったんだよ!」 康太の言葉が椋には理解が出来ないでいた 凜は黙って座っていた レイは総て知ってるのか?冷たい目をして前を向いていた 康太は何故そんな事になったのか?詳細を話し始めた 「竜胆は烈が発見するまで戸籍もなく土蔵に閉じ込められて生活していたんだよ 竜胆は背格好が同じ律と共に土蔵に閉じ込められていた 今になって想えば………総てがイレギュラーな事の始まりだった 多分だが………律の体の中に竜胆の欠片を埋め込み、助けに来たオレか宗右衛門が………間違えれば良い!そんな悪意の下に………行われたんだと想う 大歳神は土蔵に二人いたから爆破の瞬間地下から根っこを伸ばして避難させ助ける事が出来た 烈は何故、あの場に律がいたのか? 可能性を考えていた……律のいた意味を考えていたんだよ 竜胆の魂が何分割かにされたと聞き、その可能性に辿り着いた 烈は律に逢いに行き話をしに逝ったんだよ 律は烈が自分の前に現れた意味を理解していた 覚悟を決めた律の話を聞いて誰よりも悩んだのは烈なんだよ! そしてその可能性を考えて苦しんだのは竜胆なんだよ! だから敢えて烈は誰にも話さなかった レイにもな……話せる訳なんてねぇんだよ!」 と康太は現実をちっこいのに話した 椋は言葉もなかった レイは烈の瞳を通して……烈の苦悩を知っていた だから傍に行きたいのを我慢して烈を見守っていたのだ 竜胆は「宗右衛門を苦しめた………それでなくても忙しいのに……俺が弱いから耐えきれなくなり宗右衛門に相談してしまったんだ!」と泣きながら話した 康太は竜胆を抱き締めて 「お前は弱くなんかねぇよ! 今世は本当にオレの真贋の果てが歪められたり………予想もつかない事がおきまくっている 飛鳥井は、と謂うかこの世の終わりを迎える危機だから、この際だから東矢にも総て教えるべきだと想い呼び寄せたんだよ!」と言い、この蒼い地球(ほし)が終わる可能性を秘めている事 そして嫌がらせの為に宗右衛門の魂が消滅しかけた件 魂の管理委員会なるモノの悪意で次代の存在を悉く歪められてしまったことを話した そして飛鳥井が1000年続く事なく終焉を迎える事を…………総て話した 東矢は「竜胆は知っているの?飛鳥井が100年もしないうちに終焉を迎える事を……」と問い掛けた 竜胆は「教えられたから知っている が、我等はそんな事で怯んだりはせぬ! 我等は宗右衛門が描く1000年続く果てへと逝くと決めているのだからな!」と告げた 東矢は覚悟を決めた瞳をして 「ならば僕も1000年続く果てへと逝かねばなりませんね!」と言った 康太は「その前に竜胆の覚醒の儀だな!絶対に成功させるから、お前等もそのつもりでいてくれ!」と謂うとちっこいのは頷いた 「さてと風呂は明日の朝で良いから寝るとするか!」と言い部屋まで送って逝くと、兄達が待ち構えていた 手分けして部屋に連れて行きパジャマに着替えさせる レイは「れちゅ……」と心配すると、流生はレイのベッドからお布団を持つとレイの手を引っ張り烈の部屋へと向かった 烈の部屋のドアを開けると、烈はもう寝ていた クーは「レイはこの部屋で寝るのか? ならば虎親子は別の部屋で寝かせてくれ!」と謂う にゃーにゃー抵抗する虎親子を四隅に押しやり畳の上にレイのお布団を敷いた そして虎親子を抱っこすると、連れて出て行った レイは烈の手を握り締めて「れちゅ……」と名を呼んだ 烈はレイの手をギュッと強く握り返した そして二人は互いの温もりを感じで深い眠りへ落ちるのだった 朝早く烈は起きるとレイも起きて屋上へ向かった 流生は二人が来るのを待ち構えていた 「おはよう!流にー!」 「おはようー!にーに!」 烈とレイから挨拶を受け流生は「おはよう、烈、レイ!」と笑顔で答えてやった ぞうさんのジョウロにお水を入れてやると、レイはチューリップの球根にお水をやる 烈は「ネギじゃ育てた感ないのよね!」とボヤいていた 冬は野菜は少なくなるのだ 流生は「春になったら青紫蘇とか買いに行こうね!」と謂うとレイは「やっちゃぁー!」と喜んでいた さいたぁ〜さいたぁ〜つーりっぷゅのはにゃが♪ とレイが歌いながらお水をやる それが最近の屋上の風景だった 流生は「レイのお布団部屋に持って行くから、待っててね!」と言いながら霧吹きで整える 其れ等の全てが終わると流生は烈の部屋へと向かった 烈の部屋のレイのお布団は既に部屋に運ばれたのか?其処にはなかった 「あれ?誰が片付けてくれたのかしら?」 流生が不思議そうに謂うと後ろから翔が 「レイのお布団は僕が持って行ったから!」と言った 流生は「ありがとうね翔!」と謂うと掃除を始めた レイも自分の部屋に行き着替えて掃除を始めた 何時もの光景だった 洗濯が終わるまでに朝食を食べに行く クーは烈の背に乗り楽をしてキッチンへと向かった キッチンへ逝くとクー専用の椅子に飛び乗る そして優雅に食事を始めると神野がキッチンに来て「猫が優雅に朝を食べてますがな!」とボヤいた 烈はその横で朝を食べていた 神野はその横に座り朝を食べる 烈は「あのさ、あきましゃ」と話し掛けた 「何だよ?烈、横に座るなって謂うなよ!」 「言わないわよ!あのさ年末に逢った時から想ったんだけど、小鳥遊調子悪いにょかしら?」 神野は驚いた瞳を烈に向けた 「あ、ボクじゃないわよ! ボクは母しゃんみたいに人の運命が視えないからね…… クーがね、あきましゃの魂が悲しみに暮れているって言ってたにょよ」 其処まで謂われたら神野も謂うしかなかった 「今……入院している……」 「せんせーんとこ?」 「違う………総合病院だ」 「なら、せんせーんとこに逝かないと!」 「え?何でだよ?」 烈は神野の目を射抜き 「飛鳥井に近い者ならば……何処に悪意が潜んでいるか?解らないからなのよ! やっぱし………まだ距離を取らにゃいと迷惑かけちゃうかしら?」と言った 神野にはサッパリ理由が解らなかった 烈は「兵藤きゅん、小鳥遊を久遠せんせーに託してくれるかしら?」と謂う 「了解!飯食ったら竜馬と共に正義の件を片付けるから、その前に小鳥遊を転院させるとするわ」 と約束してくれた 「あきましゃ、愛する人を護りたいならば、非情にならねばならない時もあるのよ! 自分や愛する人に害を成す存在がいたならば、ソイツを遠ざけないでどうするの!」 「烈…………」 「りゅーま、早く動いてね!」 烈はそう言うと食事を終えて自分の部屋へと戻って行った クーは食後の珈琲を慎一に淹れて貰い飲んでいた そして兵藤に「ぬいぐるみになるから鞄に入れて俺も連れて逝け!」と言った 兵藤は「了解!頼むぞクー!」と言い食事を終えると竜馬と共に堂嶋正義と神野晟雅を連れて飛鳥井の家を出て行った 康太はその光景をキッチンに来て、目撃し兵藤達が出て行くのを見送った 康太は椅子に座り朝を食べ始めると 「あんでこうも次から次へと湧き出て来るんだ?」とボヤいた しかも【この時期】を狙って次から次へと問題が湧き出て来るのだ 小鳥遊は偶然だと想いたいが………タイミングが良すぎるから、ついつい勘繰りたくなるのだ クーが共に逝くならば………多少の事が起きたとしても蹴散らしてくれるだろう そう想い康太は朝食を終えると、榊原と共に会社へと出勤して行った その日 烈は在宅で宗右衛門の仕事を一つ終える事にする!と秘書に連絡をして会社には出勤はしなかった 康太は午前中、真贋の仕事を終えて、昼過ぎに副社長室へ戻るとソファーにでろーんと寝そべった 「なぁ伊織……この異常さはお前も警戒レベルに感じているよな?」と問い掛けた 榊原は「当たり前じゃないですか!竜胆の覚醒の儀を目前にして難題が次から次へと湧き出て来るこの現状に警戒しない訳が無いじゃないですか!」と言った 「烈は今日は会社には来てねぇ……まさか家にミサイルなんて撃ち込まれねぇよな?」 と心配していた 榊原も「飛鳥井の家にミサイルはご遠慮願いたいです!」と辟易して謂う 二人は想像して身震いして、その考えを払拭すべく考えるのを止めた トラックが突っ込んだだけでも、かなり不自由したのだ ミサイルなんて冗談じゃない! 両親は末っ子を案じていた 「まずはお昼を食べに行きますか?」 「だな腹こしらえしねぇとな!」 そう言い康太と榊原は遅めの昼食を取りに食堂へ向かった その頃 烈は【R&R】のマンションにいた 午前中は自分の部屋に閉じ籠もりPCをポチポチやっていた 昼過ぎてそろそろ竜馬達が戻る頃になると、ケントを呼び出し【R&R】のマンションへとやって来たのだった 昼過ぎに竜馬と兵藤が仕事を終えて飛鳥井へ還ると、烈はいなかった 竜馬は烈に「今何処?」とラインを送ると『【R&R】のマンションにいるわよ!』と返ってきた 竜馬と兵藤は朝イチで小鳥遊の所へ行き、転院させ、堂嶋が何処で穢を受け魂が翳ったのかを調べ上げて、堂嶋と別れて戻って来たのだった 二人は直ぐ様【R&R】のマンションへと向かうのだった 烈は竜馬が戻って来たと謂う事で、メンバーを集め作戦会議を始めた 烈は「今日は【R&R】専門チャンネルを作るから、その相談をするわ! 近い内に撮影して編集して動画を上げ、【R&R】専門チャンネルを始動させるわ! 10月までの限定チャンネルとして立ち上げて我等は発信して行く予定なのよ! それに伴い【R&R】はスタイリスト、メイクアップアーティストと契約して今後は専属の者に我等を作らせ、定期的にYouTubeに発信して行く予定にゃのよ!」と今後の計画を話す 竜馬は「ならば撮影だね、何処でやるのさ?」と問い掛けた 「スタジオは由香里がレッスンしていた部屋を撮影用に使わせて貰うつもりなのよ 母しゃんと父しゃんには話をしたから、スタジオに施工の業者を入れて工事に入り作り変えてくれてる筈にゃのよ!」 総てが準備万端で話す所が烈だった 竜馬は「俺等がイギリスへ行った後は動画はどうするのさ?」と問い掛けた 「週に一度、メンバー持ち寄りで企画を上げて、動画を回して逝けば良いと想うのよ! 【R&R】をもっと身近に感じたい人だっている 神みたいに遠巻きに見ていた人だっている! だけど我等だって日々悩み傷付き生きているってのを知らしめる為にメンバーがどんな映像を出すか?考えれば良いのよ! 熱い思いを伝えるだけでも良い それは任せるわ! 勿論 ボクも動画を作るわよ! そして動画に流す時は【R&R】のスタッフの協力を得て編集して皆で流して良いか決めるのよ 我等が一歩ずつ一歩ずつ歩く姿をファンの人に見せる………それが足跡を遺す第一歩だと想うのよ」 メンバーは烈の言葉に感動していた ヘンリーが「ならば第一歩はメンバー全員で撮影して出さないとね!」と謂うと皆は同意した 直ぐ様 【R&R】の撮影とメイク、スタイリストを呼び出して撮影を始められる様に予定を入れて行く 「撮影は明日で良いかしら?」 PCをポチポチしながら問い掛ける メンバー全員「それで良い!」と謂うから予定を入れた 【R&R】の制服はトンプソンの新作のスーツになった 常に新作スーツを【R&R】が着る デービット・トンプソンは嬉しくて仕方がなかった 自分がイメージしたスーツを着て貰えるのだ 頑張ってスーツのデザインをしまくっていた 烈に着せたい服も沢山沢山デザインして、トンプソンは何時の間にか……廉価な子供服を売り出す様にもなっていた ブランド服はお高いメージがあるが、動きやすくて機能性を重視した服は人気があり、即完売となる程だった そんな服を沢山沢山デービットはプレゼントしていた 勿論 烈の兄達やちっこいの達や、北斗や和希や和真や永遠にもプレゼントしていた デービットは何時だって凜やレイや椋達に自分がデザインした服を着せて、動きまくるやんちゃな凜には活発な子なデザインで、物静かな椋には落ち着いた服を、飛び蹴りしまくるレイには飛び蹴りしても脱げないズボンをデザインしていたりした トンプソンはセレブ向けはパリコレで発表して絶大な人気を誇っていた だが小さい子を持つ親には丈夫で動きやすい服を作って売ったら人気に火がつき、売り出したら即完売の大人気になっていた 中々買えないらしいわよ、と烈から聞いたからデービットはスマムラで庶民向けの服を発売し始めた やはりトンプソンブランドの名は凄く転売ヤーが買い占め、それに怒ったデービットは一人一点限定を貫いたのだった 一人でも多くの人にトンプソンブランドを知ってもらえる為に! と打ち出し売り出したから、毎度長蛇の列になるのだった そんな喧騒はデービットの耳には届かなくて、今日もせっせとデザインを描きまくるのだった 竜馬は「明日は何時に集合するのよ?」と問い掛けた 「飛鳥井の家に泊まっちゃうのよ! そしたら朝を食べてスタジオへ行けるのよ スタッフには9時半にはスタジオで待機させておけば良いからね!」 メンバー全員はソレで納得して話し合いは終わりを告げた 「なら本格的に動くのは明日ね! 今日はこれで終わりで良いかしら?」 烈が謂うとフレディは「おでん食べたいです!」と謂う 烈は母に電話を掛けた ワンコールで電話が取られると烈は 「フレディがおでんが食べたいって言ってるわ!」と言った 康太は『それオレやなく伊織に言いやがれ!』とボヤいた 「でも一緒にいるんだから同じよ母しゃん!」 康太は榊原に『おでんを所望だぜ!』と謂うと 『解りました、おでんを作りましょう!』と約束してくれた 『所で小鳥遊、どうなったよ?』 そう聞かれ烈は携帯を兵藤に渡した 兵藤は「もしもし変わったぜ、あんだよ?」と問い掛けた 康太は烈ぅ〜事情位話してから電話は変わるもんだぜ!と心の中でボヤキつつ 『小鳥遊はどうなったよ?』と問い掛けた 「あ、烈に話してなかったわ! 【R&R】のマンションの方にいるって聞いて、そのままマンションへ逝ったからな、話してなかったわ! 小鳥遊は久遠の病院に転院したぜ! 何か無理難題言って来る医者がいて、ネチネチ何時間も拘束しやがって未動き取れずにいたら、クーが呪文を唱えてくれて、その医者より上に掛け合う事が出来て久遠の所へ転院させた 何でも小鳥遊は腹が痛くて事務所のスタッフが救急車を呼んじまったから、総合病院へ連れて行かれたらしいんだよ! 何か明日にはオペも入ってて、連れて還るならば二度と診ないから!とゴネられたぜ! で、久遠に明日オペだって言われたわ!って言ったら……何処を切るんだ?と言われちまったぜ! 手術なんて必要ねぇのに、オペする気満々だっぜ!あの医者! 久遠はその医者許せん!と総合病院の院長に文句言っうってカンカンだったぜ!」 とボヤきながら説明した 『正義はどうなった?』 「あー!正義はそんなに予定が満載じゃなかったからな、クーが謂うには2・3日の予定を遡れば良いって言ってくれたからな 結構早く突き止められたぜ! やはり葬儀場にその残滓が遺ってて、多分経を読む時に呪詛が混ぜられたか? 遺体に混ぜ物がしてあって、影響を受けたのか? それは解らねぇが………早く翳りを取らねぇとじわじわと魂にまで影響が出て来ちゃうってクーが言ってたぜ!」 『正義はどうしたのよ?』 「国会の審議が迫ってるから議員会館へ行くって言ってたぜ!」 『呪い………堂嶋正義に呪いを掛けたと謂うのか? それってオレへの挑戦状だよな? ならば買わねぇとな!』 「おい!康太、んなのは買わなくて良いからな!」 今世紀最大の喧嘩を売る烈と、直ぐに喧嘩を買うとする康太 似た者親子は、こんなにも似てて兵藤は困り果て 「康太、おめぇ母ちゃんなんだし……」とボヤいた 康太は笑って『今夜はおでんだ!烈に早めに帰りやがれ!と伝えといてくれ!』と言い電話を切った 烈は「呪詛………呪言……クーたんどっちかしら?」と引っ掛かっている部分を問い掛けた 「時を遡らねぇとそれは解らねぇ!」 「その葬儀、何日前にあったの?」 烈が聞くと竜馬が「3日前だって聞いたな、何でもずっと意識不明の状態でとうとう息を引き取ったとか言ってた」と堂嶋に聞いた事を伝える 「3日か………時を遡ろうかしら? クーたん出来る?」 「それは金運上がるヤツとか黒いのに頼んだらどうよ?幾ら俺でもお前を乗せて時を駆けては逝けねぇよ!」 時空を烈を背負って駆けて行くのと、時空を遡るのとでは、慣れてなきゃその日付に飛べるかは?解らないのだ 「なら頼みに行くしかないわね ラルゴにも死に逝く者にかける呪詛ってあるのか?聞かなきゃだし………」 と烈は考え込んでいた 兵藤は「烈、おでんだ!」と謂う 「そうね、皆 しみしみ大根は絶品だから!」と謂うとメンバーは安堵の息を吐き出した その夜は楽しい宴会に突入した 烈は兄達と楽しそうに過ごしていた が、頭にはなんだか釈然としないモヤモヤが遺っていた 烈は部屋に戻って来るとクーに 「ボク ラルゴに逢って来るわ! で、ラルゴで解らないからにゃら時を遡るしかないから、金ちゃんか黒ちゃんに頼むわ!」と謂う クーは「ならば俺は堂嶋正義に逢ってどんな類の影響を受けたのか詳しく調べるとする! そして対処法を探り出すとする! 放っとくと廃人まっしぐらだからな!」とモヤモヤの正体を暴かねばと口にする 「ならばボクは母しゃんにラインしたら逝くとするわ!」 「了解した!」 烈は母に「少し調べ物をして来ます! それと今持ってるばぁたん達が作ってくれた以外の携帯全部解約してボクの名で契約して下しゃい!お願いします!」とラインを送信した そしてメンバーには「明日の撮影、中止になるかも知れないわ!ごめん!」とだけ送信した 康太は風呂から出て寝ようとしている所に、ラインの通知で携帯を見て慌てて烈の部屋に走って逝ったが、烈の姿はなかった 「もぉ烈!問題山積してるて言ったじゃねぇかよ!」 と康太は怒った クーは「モヤモヤが取れねぇんだ!仕方ないだろ!」と謂う 眠そうに烈のベッドに入っているクーを見て康太は 「おめぇは何故逝かなかったのよ?」と問い掛けた 「俺は堂嶋正義に逢って魂まで食い尽くさんばかりの翳りを調べようと残ったんだよ!」 「あんでこうも、蛆のように後から後から湧き出て来るんだよ!」とボヤいた 「それは烈が一番感じてる事だろ? 気持ち悪い、後味が悪い、こんな感じのままじゃ嫌だから正体を探ろうとするのは当然だろ?」 「…………オレも正体知りてぇよ………あんで竜胆の覚醒の儀に併せて来るかな?」 「世界各地で混乱が起き、暴動が起き、災害が起きている 多分………八仙の所には地獄界から何らかの知らせが来てるだろう…… 各国で大量の犠牲者を出してて魔界だって手一杯なこの状況だからな 他の国だって何かしら起こり手一杯なんだよ! それに加えて直接的な嫌がらせ 地獄界では羅刹天の周りが標的に合ってるって閻魔が言ってたな!」 それは聞いたことがなくて康太は 「それは何時の頃の話よ?」と問い掛けた 「竜胆の覚醒の儀を行うから恵方と源右衛門の血が必要となると打診をしに行った時に閻魔が言ってたな!」 それは聞いてはいなかった………だが姑息な手を使い、息もつかせぬ連続技で国や人を弱らせる気なのは伺えられた 摩耗し消耗し人は考える事を止める…………破滅への一歩を踏み出させる様な手法に康太は眉を顰めた 「取り敢えず我等は竜胆の覚醒の儀を遣り遂げる!それだけの想いで烈はラルゴに逢いに行き知恵を授けて貰うつもりなんだよ!」 「……ならば烈の帰りを待つとする それよりクー携帯を変えてくれって事だけど何でだよ!」 康太はサッパリ見えなくて問い掛けた 「それは距離を取る為に決まってるじゃねぇかよ!烈は覚醒の儀を遣り遂げるまで皆と距離を取るつもりなんだよ! そしてその後も………状況が正常だと判断出来るまでは距離を取る気なんだよ!」 やはりそう来るか………と康太は想った 自分だってこんな事態になれば距離を取るだろうから……… 康太は悔しくて堪らなかった 祖父母や気の合う仲間達と過ごす時間さえ……烈は手放すと謂うのか……… だが巻き込まない為になら、そうするだろう 言葉もなく立ち竦む康太を、榊原はそっと肩を抱き締めて寝室へと連れて行った 烈は神の道を開き崑崙山を目指した 崑崙山に辿り着くと烈は八仙の屋敷を尋ねた 屋敷の中いる八仙に烈は 「ねぇ八仙、賢者ラルゴに逢いに行きたいのよ! いるかしら?」と尋ねた 八仙の一人が「七賢人八賢者は地獄界の桃源郷との境界線近くに居を構えて住み始めた 地図を書いてやるから訪ねればおるじゃろ!」と言った 「何で………世情が嫌いな人達なのに?」 「それはな烈、無関係を貫き通す気で離れ山に住んではいたが、お前と謂う弟子を持った今 無関係を貫き通す訳にはいくまい! 腹を括り奴等は山を降りたのじゃよ! 婆婆もその近くに越して来たからお前の用事は桃源郷近くで事足りるであろう!」 と八仙は、ほほほほっと笑っていた 他の八仙の一人が地図を描く もう一人の八仙が外に出ると 「黒龍来るのじゃ!」と大声で叫び黒龍を呼び寄せた 黒い漆黒の龍が物凄いスピードて飛んで来ると 「八仙、何の用だよ?」と問い掛けた 八仙は地図を渡し「烈をこの地図の場所にいるラルゴ達の所へ乗せて逝ってくれ!」と告げた 黒龍は外に出て来た烈を見ると「背中に乗れよ!烈」と喜んで背中に乗せてやった 「悪いわね黒ちゃん!」 「良いって事よ!」 烈は黒龍の背に乗りラルゴの所へ飛んで行った 黒龍は「最近は忙しいのか?閻魔庁の建設の指示だけして還るって閻魔が寂しがっていたぜ!」と話す 「何かね母しゃんが暴れ出す程に問題が山積しているからね………」と烈はボヤいた 「炎帝が暴れ出す程か………それは青龍は大変だな」 「父しゃんはどんな母しゃんでも愛してるから受け止めてるから構わにゃいのよ!」 青龍………お前どんだけ子供達の前で愛の語らいしてますの?と黒龍は想った 黒龍は「少し前に朱雀が竜胆を連れて来てたな!」と謂う 烈は竜胆の魂に混ぜものがされていると調べに来た事を告げ、覚醒の儀をやらねばならない事が発端で色んな事が重なり問題が次から次へと湧き出て来てる事を話した 聞いてる黒龍は、それは炎帝も暴れるわ………と想った 黒龍は「で、堂嶋正義に掛けられた呪いを調べに来たのか?」と問い掛けた 「そうなのよ、クーは飛鳥井に遺り正義に逢うと言ってるからより詳しく解るんじゃないかしら? ボクは魂まで食い尽くそうとする呪いを誰が掛けたのか?が気になるから来てるのよ」 「その呪い………厄介なのか?」 「人間に掛かれば厄介かもね じわじわとその人間の魂の養分を吸い取る呪いみたいだからね そんな呪法、ボクは知らないから聞きに行くのよ」 「まるで寄生虫だな、その呪い」 「……っ!!!寄生虫! にゃんで其処に辿り着けなかったのかしら?」 「え?本当に寄生虫の可能性あるのかよ?」 「それも聞きたいのよ それと魂を分割出来るのかも聞いときたいのよ」 「何か……お前大変だな………」 話してるだけでも、その大変さが伝わる 話をしていると桃源郷近くには、真新しい屋敷が何件も建てられていて、その中で一番大きな屋敷の前に烈を下ろすと、黒龍は人の姿に戻った 賢者ラルゴは烈が来るのを知っているかの様に、外に出て待ち構えていた ラルゴは「やはり来られたな………地獄界の羅刹天殿と神髄師殿も起こしじゃよ!」と言い家の中へ招き入れた 屋敷の中へ入ると大きな会議室の様なテーブルが並べられ、その前に七賢人八賢者が座っていた 烈はラルゴに案内された席に腰を下ろすと、ラルゴもその横に座った 「んじゃ烈の用を先に聞くとするか?」とラルゴは烈に問い掛けた 「ボクが聞きたい事は2つ 魂を分割する事は可能なのか?と謂う事と、人間の魂を吸い取る呪いはあるのか? それが聞きたいのよ!」と言った 八賢者の一人が「それは竜胆の魂か?」と問い掛けた 「そう、飛鳥井の転生者 竜胆よ!」 七賢人八賢者は考え込む様に黙った その中の七賢人の一人が「不可能ではない、その魂が球体で保管されている頃ならば、好き勝手に出来るであろうて!」と言った やはりその頃なのか………と烈は想った ラルゴは「それは烈も何となく想像しておったのじゃろ?」と謂う 「そうね、魂を分割する事が出来るのは、球体の頃じゃないと不可能だからね! 何たって相手はボクの魂を冥府の闇の中へ放り込んだヤツならば、好き勝手していたんじゃないかって想うわ!」 星詠みの婆婆は「ならばその欠片………今は何処に在るかも存じておるのじゃろ?」と聞く 「何分割かにしたと聞き、多分竜胆の魂は何人かの背格好の良く似た子に埋め込められたと想うのよ、でも竜胆の魂は強いから負けて何人かは他界して一人だけ残った それが竜胆と共に蔵の中に入れられていた律と謂う子なのだと………解ってるわ!」 「移植された魂の欠片はもう………竜胆に戻りはせぬ……その子を殺して戻したとしても完璧には戻りはせぬじゃろ!」 「覚醒の儀を執り行うつもりにゃのよ 初代竜胆の魂を呼び起こし、竜胆に定着させた後に完全覚醒の儀を執り行う それで竜胆の欠けた魂は補え、本来の力を取り戻せると想うのよ!」 一人の賢者が「子供の魂は柔軟性がある故 不可能な事ではないな! そして完全覚醒の儀を行うと謂う事は転生者の【血】を使い力を呼び起こし力を与えるつもりなのであろう! ふむ、間違ってはおらぬな!懸命な判断じゃ!」と言った 七賢人八賢者は頷いていた 「ならば七賢人八賢者に、人の魂の養分を吸い取る呪いはあるのか?お聞きしたい!」 その答えには皆が口を揃えて【そんなモノはない!】と答えた ないなら何故、堂嶋正義の魂は翳りを見せてるのか? 振り出しに戻った状況に烈は何とか打開策を………と考え込んだ 羅刹天が「それは蠱虫じゃないのか? 蠱(まじる)、蠱(まじこる)、蠱(まどわす)、蠱(まじない)、蠱なうら(そこなう)と謂われる呪術に使われる虫を謂う 蠱道(こどう)蠱術(こじゅつ)巫蠱(ふこ)等と呼ばれ虫を使う呪術は幾多とある その中で生き残った虫を寄生させる術も中にはあると聞いた事がある その蠱虫は人に宿り魂を養分として吸い付くし廃人にする………その手法に良く似ておるから口を出してしまった」と申し訳なく謂う 七賢人八賢者は「それはあまりにも残忍な手法だと禁止にされたのではないのか?」と謂うと「禁断の術がまだ使われていたと謂うのか?」と其々が言い、驚愕した瞳で羅刹天を視た 烈は「その蠱虫、どうやったら消滅させられるのかしら?」と問い掛けた 「その虫ごと一突きで殺すしかない 一度死なせてその体から虫が飛び出るのを捕獲する!そして飛び出たその蠱虫を息の根を止め殺す、それしか生き残る法はない! 直ぐ様蘇生しなければならない手法故、誰も手を出さぬ呪術で、今は廃れている筈なのに………」 と羅刹天も信じられない想いで呟いた 「その蠱虫ってどうやって寄生させるの? 呪文とか?死体に入ってたとか? 正義は葬儀に行った時にどうやら影響を受け魂が翳ったみたいなのよ なら?何時?何処で?と其処がどうしても解らないのよね!」と問い掛けた 羅刹天が「それは憶測でしか言えぬが死した遺体から蠱虫が飛び出て堂嶋正義と謂う輩に寄生したのではないと想う」と説明した 烈は「その遺体って衰弱したと言ってたけど、蠱虫に魂食い尽くされた………と謂う事なの? そして死した体から飛び出て次に寄生する そんな感じなのね…………」と唖然として、それでも状況を確認する為に呟いた 羅刹天は「そう言う事になるな!」と言った 「なら体内に入って何ヶ月位生きるのかしら?」 「人それぞれだな、何年も体内に飼ってるのもいるが、弱っていたりしたら数ヶ月位かな? 寄生が長かったり、相手が弱ってなかったりすると体内から出すのは無理になるから、一度殺すしかないのだ 死した体内に生息は出来ないと即座に蠱虫が飛び出すから、それを捕獲して息の根を止める それしか助かる道はない!」 羅刹天はキッパリ言った 「ならば、魂が翳りを見せている時はどうなの? まだ寄生して何日も経っていないのよ?」 「魂の翳りがあるならば、それは蠱虫が危険を察知し、体から抜け出る為に、倍速で魂に影響を出しているのだろう! どの道……このままだと日々魂を吸い取られている様なモノだから当然魂は翳るしかない!」 「……なら時間はあまりないって事?」 神髄師は「魂が翳りを見せているならば、あまり時間はないと想った方がよいじゃろ! 即座に其奴を連れて来るが良い! 我等が其の者の中の虫を一突きし、直ぐ様蘇生するとする! だが蘇生が遅れれば、どの道危ない事には変わりない………だがやらねば総ての養分を吸われて死ぬしかない!本人に選ばせよ! 我は此処で待つ故、連れて参れ!」と言った 烈は黒龍を見て「朱雀にその事を話して、堂嶋正義を説得して連れて来てくれる様に話して! 赤いのを此処に呼び出せば、朱雀の居場所が解るわ、朱雀が堂嶋を説得してくれると想うからお願いね!」と言った 黒龍は「解った、今赤いのを呼ぶとする!」と言い思念で赤龍を呼び寄せた 呼ばれた赤龍は自分が何処にいるのか?解らないまま呼ばれて「あんだよ!兄貴!此処は何処なんだよ!」とボヤいた 黒龍は「時は一刻を争う!今直ぐ俺を朱雀の元へ連れて行け!」と言った 一生は威厳ある大人の中に混じって烈を見付けると「烈………お前は行かねぇのか?」と問い掛けた 黒龍は「これは烈からの命令なんだよ!今直ぐに此処に堂嶋正義を連れて来ねぇと、堂嶋正義は近いうちに死ぬぞ!」と言った 一生は顔色を変えると「なら人の世に逝ったなら貴史に連絡をする!」と言い黒龍と共に屋敷を出て行った 羅刹天は黒龍と一生が出て行くと烈に向き直り 「魔界は電磁波なるモノを常に流しているとお聞きした、それはどんな対策を取っておいでなのかお聞きしたいのですが?」と問い掛けた 烈は羅刹天に超音波や電磁波は頭にチップを入れたヤツが紛れ込んでいるから、その対策だと教えた 頭にチップを入れられた奴は人間の力じゃ考えられない力を出したり、自爆する 火の気もない場で爆破が起きたらそれは頭にチップを入れた奴の仕業と考えた方が良いとも説明した 羅刹天は真剣に話を聞き、神髄師と顔を見合わせると「まさか!」と叫んだ 烈は「其れ等の対策を取っていても、頭のチップの対策が出来ちゃったら、次はマインドコントロールした奴使って内側から食い破らせるか、不穏因子を植え付ける等と手を変え品を変え嫌がらせして来るのよ 少し前に羅刹天に濡れ衣着せようと来た奴いたでしょ? あんな風に火種を常に仕込み、疑心暗鬼にさせ不安で周りが見えなくなった者から掌中に陥る 黒いジャガーは人間を操るのが好きだから、孤独にさせ孤立させ、そこを狙わせる! 多分………羅刹天それやられてるでしょ?」と謂う 羅刹天は「何故解る………」と驚いて問い掛けた 「ボクもやられたからね 母しゃんもやられたそうよ! 全くね、使い回しの能無しは同じ事を何度もやるのよ!バカの一つ覚えとも謂えるわね! 周りに危害を加えればダメージ受けるとでも思っているのかしら? 我等は人を何の躊躇もなく斬れる様に教育されているのにね!本当に愚かで馬鹿ね!」と言い嗤う その時空気がピキッと音を立て、ヒビの入る様な音を響き渡らせた 屋敷の中の者は誰一人眉一つ動かさず、事の成り行きを見ていた その時、時空の間から黒いジャガーが姿を現した 「戯言を言ってる暇にお前の知り合いが次々と死ぬのを知っているか?」と黒いジャガーは烈に言った 「別に構わないわよ 知り合いを100人殺そうが何千人殺そうが、ボクは何の感情も抱かない!」 「お前が愛する父でもか?」 「父?それはどっちの?父なのかしら? 青龍の父なのか?大歳神の父なのか? まぁどの道ボクが逝く道に続かないならば、それだけと謂う事よ! 眼の前で殺されとしても別に何とも思わないわ」 黒いジャガーは悔しそうに眉根を寄せた 「白いジャガーがいないから強気ね! でも本当にいないと思ってるのかしら?」 「何!!」 黒いジャガーが謂うとクーが時空から姿を現し、黒いジャガーに飛び掛って行った 「クーたん屋敷から離れた場でやるのよ!」と言い呪文を唱えて吹き飛ばした 「お前は人として欠落している! 人ならば近しい人を思わぬ筈などなかろうが!」と叫んでクーと共に吹き飛ばされて行った 烈は「ラルゴ……何でこんな弱い結界の屋敷で話し合いをするのかしら?と想っていたらアイツが覗いていたの知っていたのね」とボヤいた ラルゴは「良い機会じゃろ!」と笑い飛ばした 羅刹天は「本当に君は近しい人が………親が死しても何とも思わないのですか?」と問い掛けた 「…………それがボクが生きて来た道だからね 飛鳥井の儀式の中には親や親しい人達の容姿で出て来るのもあるからね……それ等を斬れねば儀式は失敗してしまう そんな生易しい道なんて歩んでいにゃいのよ! 斬らねばならないと判断したならばら親でも兄弟でも斬らねばならないのよ! 友人でも知人でも………情をかければ命取りになる事を知ってるから、斬るならばバッサリと禍根を断てとの教えなのよ! その相手が親でも………ニブルヘイム……でもね トドメを刺してあげる事こそ愛だとボクは想っているからね!」 羅刹天は言葉もなかった 神髄師は「烈殿は誰よりもご両親を愛しておいだ そしてレイ殿を愛しておいだ……だが道を違えるならば………貴殿は誰よりも冷酷に判断を下すしかない、それが飛鳥井と謂う家に生きて来た証……だと仰るのですね!」と烈の想いを汲み取り言葉にした 出来るならば………切りたくなどない だがそうせねばならない定めならば、やるしかないのだ 「主の道も荊の道を逝かれるのであるな」 神髄師は心底険しい道を想い言葉にした だが烈は聞いてはいなかった 長い長い呪文を詠唱していた そしてビリビリ蒼い光を放つ釘を宙に浮かべて、只管呪文を唱えていた 羅刹天が「その蒼い光の物体は?」と問い掛けた 当然詠唱中の烈が答えられる訳もなく、ラルゴが  「あれは閻魔大魔王の電磁結界を織り込んで呪文を巻き付けた釘じゃよ! 今の所、魔界随一の結界となる!」と謂う 烈は天高く両手を広げると 「釘よ!四方に飛び散り結界を張れ!」と指示を出した 釘は四方に飛び散り消えた 烈は天高く掲げた手を下ろすと、ドスンッと大きな音が鳴り響いた 八賢者の一人が烈に「烈殿、その耳の高貴な輝きは何時着けられたのじゃ?」と問い掛けた 「これはね少し前に着けたのよ」 「この世の物質ではないな、それ?」 「銀河系宇宙の最強なアイテムだって言ってたわね!」 誰が、言ってたのか? 聞くのも憚れる だがラルゴは「誰が申しておったのじゃ?」と聞いた 「創造神がね下手な呪い位は弾き飛ばすってくれたのよ!」 其処へヘロヘロで血を流したクーがやって来た 「逃げられたぜ!畜生!」とボヤきながら烈の膝に飛び乗った 「治療しなくて大丈夫?クーたん」 「返り血だ、拭き拭きしてくれたら綺麗になる!」 「なら還ったらにーに達に拭いて貰おうね!」 クーは烈の膝の上で丸くなっていた ラルゴは何度もクーには崑崙山で逢っていた だから七賢人八賢者にもクーの存在は告知してあった そして神髄師もクーとは仲良しだった 神髄師は薬湯を作り、そのお湯でクーを拭いてやった 返り血を拭き取ると小さい怪我をしていた 神髄師は「この傷は放っておいたら治るのか?」と問い掛けた 「還ったらオロナイン塗って貰う!」と謂うと七賢人八賢者は爆笑した 羅刹天も笑っていた 神髄師は薬草で作った軟膏を取り出すと、クーの傷に塗った 烈は「やっと直接攻撃に出たわね……あの黒いジャガーを殺らないと姑息な事案はなくならないわね」とボヤいた ラルゴは「あれがラスボスの下僕と謂う黒いジャガーなのか?」と問い掛けた 「そうよ、ボクも初めて見るから本体なのか?コピーなのか?は解らないのよ……」 羅刹天は「本体じゃない!!そう言ってしまえる根拠はあるのですか?」と問い掛けた 「姑息な奴だからね、それを調べる手立てもないのよ!でもこんな場所に噛ませ犬みたいに出させる理由ないからね、ひょっとしたらコピーなのかしら?と想っただけよ!」 烈が言う敵と謂うのは…………七賢人八賢者は息を飲んだ 羅刹天は「此の場所へ本体は飛ばさない……としたら、コピーは何体もいると考えた方が懸命ですか?」と問い掛けた 「そうね、世界各国に飛ばせるコピー位は作ったと想った方が良いわよねクーたん?」 と烈はクーに問い掛けた 「嫌がらせの為ならば手間暇惜しまず作ってるらしいからな 我等は天使や各国の神々や政府要人を使い、世界各国と手を結び、絶対にテスカトリポカの祭祀をやらせない為に目を光らせ禁止している! テスカトリポカの祭祀は徹底的に潰す事にしている!」 「テスカトリポカの祭祀……それはどの様なモノなのですか?」 神髄師は尋ねた 想像がつかないからだ 「テスカトリポカの祭祀は アステカ太陽暦の5番目の月である Toxcatl (トシュカトル、乾燥)の期間に定め、一年を掛けて準備を始める! まずは贄となる、テスカトリポカに良く似た若い男を選び、宝石で身を飾り8人の従者を付け、神の如く崇め奉り…神のような生活を送らせる  四人の若い女性と結婚させ至福に満ちさせ多幸に身を染め生かする 祭り当日男性は神本人となり自ら神殿の階段を昇る、男は此れで本当の神になれると信じて疑う事なく神殿の階段をあがる だが神官は男の胸を切り裂き心臓を取り出し太陽への生贄とした 生贄の死の直後、翌年の祭りの為に新しい犠牲者が選ばれる 9番目の月の祭りMiccailhuitontli (ミッカイルウィトントリ、死の小祝宴) 15番目の月の祭りであるPanquetzaliztli (パンケツァリストリ、旗の掲揚)において、祭られる それがテスカトリポカの祭祀となる!」 あまりの残酷さに……言葉をなくす だがクーは続けた 「我等は祭祀が絶対に行われない為に、アステカ太陽暦五番目の月には特に行方不明者を出さない様に気をつけてはいる だが地下深くに潜られたら……目の届かない場所は必ずやある……… そして残念な事に黒いジャガーの姿は……俺と互角だったから、祭祀は何処かで続けられているんだろうと想う…………」 烈はテスカトリポカの祭祀の様子を紙に書いて皆に見せた ラルゴは「此れは真実か?」と問い掛けた 「色々な文献とマヤ文明を知る神々に聞いて導き出した祭祀だから間違いはないわよ そして………世界各地で行方不明者は後を絶たない状況ならば、その中で贄になっている者もいると考えた方が辻褄が合うのよね」 と烈は答えた 神髄師は「ならば我等の国でも国家を掛け合い行方不明者を出さない様にせねばならぬな! 贄となる存在が入れば……あの黒いジャガーに力は降り注がれると想った方が懸命だと謂う事なのだな?」と問い質す 「そうね、でも行方不明者は後を絶たない……… 何処かで生きている者もいるし、逃げて生きているのかも知れない、だけど贄となった者もいる…………此ればかりは手立てがにゃいのよ」 皆が言葉を失った 沈黙さ当たりを包むと、耳が痛くなる程の静けさか襲って来た

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