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第79話 滔滔汨汨 ❺

その夜 飛鳥井は久し振りに楽しい宴会へ突入したが………… だが烈は榊原の祖父母を宴会に誘う事はなかった ラインで心配しないでね、と安堵させる言葉は送信したが、宴会には呼ぶ事はなかった 飛鳥井の家には沢山の人がお仕掛けて来ているから、家を特定されたら困るからね近寄らないでね!と言ってるから、それも仕方ない事なのだが…… 兵藤と竜馬、【R&R】のメンバーは翌日 慌ただしくイギリスへと飛び立った また離れて暮らす事になるが、後 数ヶ月で帰国出来るのだ! それさえも良い経験となるだろう 烈は兵藤と竜馬とメンバーを空港まで見送り、会社に戻ると社長室のドアをノックした 社長室に招かれソファーに座ると、母に「ボク少し離れて暮らそうかと想うにょよ……… このままだと……榊原のばぁたん達にまで流れ弾飛ぶだろうし………」と申し出た 飛鳥井から離れた散歩コースにはまだ彷徨く存在が少なからずいた 飛鳥井の家の近くは警察が定期的に立ち寄り、警告し無視する様なら署まで同行を願われるから、近付きたくても近付けないのだろう… 此処まで訴えて警察まで介入してるのに……止まらないのは他の要素を考えるしかなかった 康太は「それしかねぇか………でも離れて暮らせば家族は寂しがるだろうな………」と呟いた 榊原は「何処で生活する気なんですか?」と尋ねた 「保育園移ったじゃにゃい、あの上のビルの上の方まだ誰も入居させてないからね 其処で住もうかな?と想ってるのよ!」 「其処は家族全員住むのは不可能なんですか?」 「え?………皆で住めるの?良いにょ?」 「皆で住めるのであれば、皆で移動しましょう!」 「あのビルは会社の寮だったビルなのよ 不景気で寮の維持が難しくなって売りに出されていたのよ 6階建てのビルで1階を保育園とカフェとレストランの運営会社を立ち上げて入れてあるのよ 2階と3階は保育園でね、かなりのセキュリティー上げて作られているのよ 4階へは別の場所に入口があり、エントランスがあってね、上へ上がるエレベーターがあるから、それに乗って上がるのよ! マンションとしてはまだ機能してないのよ 4階が家族用住居で2DKあるのよ 5階がワンルームにゃのよ 6階は食堂や洗濯室が入っていてね、皆でそこで食べても良いわね! 食堂と洗濯室以外は手付かずで、部屋は有るけど住むのは無理なのよ 2年間其処で生活出来なくもないけど、会社には5分で行けるわよ………近すぎじゃにゃい?」 会社まで5分……近いが車で移動がない分ゆっくりしてられそうだ 榊原は「仕事終わりにでも部屋見られませんか?」と切り出した 「良いわよ………」 烈が言うと、康太は「ならこの話を父ちゃんにもしねぇとな……」と言い立ち上がると烈の手を引き相談役の部屋へと向かった 榊原は慌てて二人の後を追った 相談役の部屋のドアをノックすると清隆はドアを開けた ドアの前には康太と榊原と烈がいて、何かの話だと部屋に招き入れた ソファーに座ると「何かありましたか?」と問い掛けた 康太は「やっぱ飛鳥井の家に住み続けるのは無理だかんな………移動を考えている!」と切り出した 清隆はやはり………と哀しい顔になった 「で、今日仕事を終えたら保育園の入ってるビルの上のマンションを見に行くつもりなんだよ! 父ちゃんは母ちゃんに連絡して、瑛兄は京香に連絡して部屋を見に行こうぜ!」 康太の言葉に清隆は「バラバラにならなくても良いのですか?」と信じられない………と言う顔になった 榊原は「ちっこいのも今は【家族】と言う絆を味わっている大切な時期ですから、家族でいたいのは当たり前じゃないですか!」と言った 清隆は内線で瑛太を呼ぶと榊原は清隆に話した話を、もう一度した やはり瑛太も今の状況であの家に住み続けるのは無理を感じていた……と話した でも離れないで済むならば、皆で移動すれば良い!と言った 仕事を終えると清隆は玲香を、瑛太は京香を連れて、康太と榊原と烈と共に保育園の入ってるビルへ歩いて向かった 保育園のビルは会社から程近く、尚且綺麗な景観に保育園の文字が可愛らしく書かれていた 一階がカフェや、レストラン、保育園の運営管理の会社になっていた 事務所の横に保育園へ上がれる階段がある 事務所の中へ入るには専用のIDを配られた者しか入れないシステムになっていた 其処を通過しても保育園へお迎えに来る保護者は、保育園へ入るには専用のIDがあり翳して認証番号を打ち込み許可されなくば上へと上がれないシステムになっていた 人様のお子様を預かるのだから、強固なシステムとセキュリティは必要となるのだ 保護者はその警戒されたセキュリティに我が子を預けるに値するかを選択し託してくれるのだ そして上の住居へ上がるには、道路側にマンションの玄関ホールがあった 玄関ホールへ向かい、オートロックのタッチパネルにIDを翳し、自動扉を開かせるとエントランスへと入る 広々としたマンションのエントランスには管理人室もあるが今は無人だった エレベーターのボタンを押すと直にドアが開き、エレベーターに乗り込むと上へと向かう まずは4階 ファミリー層の部屋から 烈はビルを管理していた英太郎から渡されたカードキーが入った袋を父に渡すと、榊原は部屋番の書かれたセキュリティカードを受け取り、入り口近くの部屋を開けた オートロックのドアはカードキーで開けて入っても、ドアが閉まれば自動的にロックが掛かる 家族向けの部屋は全部で8部屋 総て綺麗にリフォームされていると言う 榊原は「どの部屋もリフォームされ、同じ間取りの部屋なのですか?」と問い掛けた 「そうよ、2DKの全室フローリング張りの部屋なのよ」 皆同じ間取りと聞き康太は「なら皆が来た時に部屋を選べば良いか、んじゃ上の部屋を見に行くとするか!」と言う 皆は5階へと階段で向かった 5階はワンルームの部屋が16部屋ある どの部屋もリフォームされ綺麗だと言う 一部屋開けて見てみると綺麗にリフォームされている部屋だった 寮と言う事でワンルームでもキッチンとかは着いてはいない 7畳の部屋にユニットバス・トイレ、洗面所がある簡素な感じの部屋だった その部屋の気密性を見て榊原は 「ちっこいのは一部屋与えても怖くて住めないんじゃ………」と心配していた すると玲香が「寝る時は誰かの部屋で寝かせるのも可能じゃよ!我だとてちゃんと面倒は見るつもりじゃからな!」と心強い援護射撃をする 京香は「我も見てもよい!我にはママと懐いておるし、皆で面倒を見ればよいだけであろうて!」と笑い飛ばした 清隆は「烈の猫、一匹増えてましたね、猫も一部屋要りますかね?」と思案する 康太は「…………要らねぇだろ?アイツ等は常に傍にいねぇとならねぇ存在だからな………」と言う 榊原は「取り敢えず6階見に行きましょう!」と言い階段で上まで上がった 6階には半分が食堂であと半分が洗濯室と部屋だった 烈は「6階の部屋はまだリフォームしてにゃいのよ!ゆくゆくは食堂は潰して部屋にして貸し出すつもりだったからね!」と説明 康太は「立派なソファーと、あんだよこのテレビ、めちゃくそデカいやんか!」と応接間ばりのソファーに座り大画面テレビを見て言う 「それはぜんちゃんちの寝室や他の部屋に置いてあったソファーなのよ テレビはぜんちゃんの寝室に置いてあったのにゃのよ! 貴賓室にあった絨毯とソファーは飛鳥井の会社の来賓室に置いたけど、捨てるのは勿体ない上質なソファーだから此処に置いたのよ! テレビもね買い替えたばかりだと聞いたからね 此処に置いておいたにょよ! キッチンテーブルもぜんちゃんちのテーブルと椅子持って来たからね、何か重厚感あるでしょ?」 と説明 最後の晩餐の絵画に出て来そうな長いキッチンテーブルを見て康太は笑い 「此処広いし宴会出来るな!」と喜んで言う 食堂の横には大きなテレビとソファーと机が置いてあり飛鳥井の客間より広くて宴会が出来ると喜んでいた 清隆は「ならば此処に住みますか!では部屋割りをせねばなりませんね!」とソファーに座り言う 瑛太も「洗濯機は部屋に一つずつ置いた方が良いですかね?」と言った 烈は「ボク達は食堂の横が洗濯室だから其処に洗濯機置いて洗うのよ!そしたら洗濯機は2台は必要かしら? 洗濯機……飛鳥井から運ぶと引っ越し先に着けて来られるから嫌かも………」とボヤく 榊原は「安い洗濯機ならば家電売場に逝けばありますよ!ハイブランドじゃなくても洗えれば十分なので買うしかないですね!」と前向き発言だ 玲香は「ならば我も安い洗濯機と冷蔵庫とカーテンを買わねばな、TVは今部屋にあるのを置くとするかのぉ〜!」と謂う 京香も「そうですね、必要なの買いに行かねば!!」とやる気満々だった 康太は「ちっこいのの部屋はどうする?あ、慎一呼ぶか?」と言った 榊原は「ならば僕が連れて来るので待ってて下さい!」と言いマンションのIDを持って食堂を出て行った 烈は「ばぁしゃん達同じ部屋で大丈夫?」と問い掛けた 飛鳥井では別々の部屋だからだ 玲香は「2DKならそれぞれ一部屋ずつにすれば問題はあるまいて!」と言った! 京香もうんうん!と頷いていた 暫くして慎一がやって来てソファーに座ると榊原が詳細を話した 慎一はそれを聞き「ちっこいのは俺の部屋で面倒見ます! まだ幼稚舎なんだし一部屋与えて其処で過ごせ………はあまりにも過酷です! 飛鳥井の家ならば泣けば誰かが駆け付けられますが、個室なれば泣いてても解りませんからね その代わり俺の子は1部屋ずつ与えて下さい!」と話した 清隆は「頼めますか?慎一」と頭を下げた 慎一は「ならば俺は家族向けの部屋を貰います!」と言った 康太は「家族向けの部屋は8部屋、オレと伊織、母ちゃんと父ちゃん、瑛兄と京香、悠太と聡一郎、一生と力哉、慎一とちっこいの 何とかなりそうだな! ワンルームの方はオレの子6人と北斗、和希、和真、永遠、何とかなりそうだな 隼人は家族部屋かワンルームで住みたいのか?選ばせて部屋を決めるか! うし!飛鳥井から服や貴重品を持ち出して、トランクに詰めて出勤して、此処に住むとするか!」と謂うと清隆と玲香と瑛太と京香は頷いた 烈が「施工のトラック借りるから慎一きゅん、洗濯機とかカーテンとか父しゃんと買いに行ってくれますか?」と言った 慎一は「了解しました!安く見積もって買ってきますとも!」と言った 玲香は「個人の部屋のテレビは持ち込んでも大丈夫かえ?」と問い掛けた 烈は「各部屋のテレビも差し込めば見られると想うわ!此処のテレビが見えるんだからね ボク達は此処のテレビ見て部屋に行ったら寝るだけだから構わないわ! 此処は屋上もあるからワン達は屋上で走らせて散歩の変わりさせておくから!」と言った 清隆は「それは良いですね、ならば私もワンとニャン達を屋上で遊ばさせます!」と喜んだ 烈はワクワクと「洗濯物、ベランダに干せるわ!」と喜んだ 慎一は「飛鳥井の電気とか解約しますか?後新聞も……」と問い掛けた 康太は「新聞は解約してくれ!電気やガスは少し様子を見る………半年を目処に、それ以上留守にするならば解約しねぇとならねぇな!」と長期戦になるなら本格的に考えねぇとならねぇ………と謂う 榊原は「烈が飛鳥井記念病院の近くに家を建ててくれるそうです! 2年経てばそちらへ移れるので2年間は我慢して貰わねばなりませんね」と告げる 玲香は「家族揃っていられるならば、2年なんてあっという間に過ぎるであろうて!」と笑い飛ばした 清隆は「病院の近くですか?家になりそうな土地ありましたかね? 何処ら辺の土地を考えてるんですか?」と問い質した 榊原は烈に聞いた土地や構想を話した 康太に話したと言う事は、絶対に変わらない未来となると信じて疑わないからだ! 清隆と玲香は其処まで遠くへは行かないでも良い現実に安堵していた 京香は「我は皆といられるならば、何処に移ろうとも構わない!」と言う 瑛太も「真矢さん達があまり遠くへ逝くと悲しみますからね それと兵藤の家と遠くなると、母さんは哀しいでしょ?」と笑う 玲香は「そうじゃな、人生の半分以上を共にした友であるからな………離れたくはないな でも歩いて行ける距離ならば構わぬよ!」と言う 皆 前向きに現実を捉えようとしてくれていた その夜、一生や聡一郎、隼人達を呼び出し部屋を決めた 翔達も北斗達もその時は一緒に来て部屋決める事にした 部屋が決まると子供達はフローリーングにお布団は敷けないからベッドを欲しがった 清隆達もベッドが良いと言うから安いベッドを買い入れる事にした 毎日 その部屋で暮らすのだ 少しでも快適に暮らしたいと想うのは当たり前の事だった 翌日から飛鳥井の家族は、会社へと出勤する時に、トランクに荷物を入れて貴重品を入れ、詰めるだけの荷物を積み込み出勤した 康太達が出勤すると、遼太郎が家族全員のマンションのIDパスを用意して来たと手渡して来た 烈の分は既に本人に手渡してあると言う 榊原は遼太郎からIDを貰い受けると、烈以外の家族にマンションのIDパスを手渡す事にした 烈もケントの車に詰めれるだけ服や荷物を詰めて虎之助と小虎をキャリーに入れてマンションへ向かう マンションの前で車から下ろして貰うと烈は、虎之助と小虎の入ったキャリーを持ち自分の部屋に連れて行った マンションの地下駐車場に車を停めて来たケントが、台車に荷物を乗せて上がる ケント達SPは護衛の為にエレベーターのIDは渡されていた それを使い烈の荷物を運び込む 烈はケントから荷物を受け取ると、虎之助親子のトイレやお水や餌を用意して、部屋で過ごせる様にした そして飛鳥井の家からワン達も連れ出されて来ていた 清隆がガル親子を玲香が金太郎を連れて来てくれ、餌やトイレを聡一郎達が運んでくれたから、その日からワンは6階で暮らす事になった 翔達の荷物は慎一が学校の帰宅後ヴェルファイアに詰め込み持って来る事になった 北斗や和希と和真、永遠の荷物もせっせと詰め込み準備する 一度では運べないから何度かに分けて運ぶつもりだった 後を着けて来る車はリック村上が妨害してくれ、追跡がない事を確かめて、マンションの地下駐車場に車を停め、台車を使い部屋へと荷物を運び込んだ 隼人は一生に頼み、家族向けの部屋に荷物を運び込む事にした 飛鳥井の家を出る時、常に後ろを車が着いて来ていて、家族は遠回りしたりせねばならなかった 慎一は車を追跡して執拗に居場所を探ろうとする辺り、ファンではない事が明らかだと康太へ報告した 会社近くのマンションへ引っ越してから、兄達も学校に通うのは少し様子を見る事にして休む事になった 桜林学園から飛鳥井の子が消えた………… 烈は元々 通ってるのか?さえ解らない状態だったが、兄達まで通えない現実に…… 学園長や教師はショックを覚えていた だが身の危険がある以上は……強くは言えなかった 飛鳥井の家から家族が消えた そうなると今度は会社近辺へ彷徨く人間が出て来つつあった 何が目的なのか? まぁあわ良くば………飛鳥井の子をこの世から消したい輩が動いているのだろう……… 烈が消えれば飛鳥井の果ては潰える 翔達が消えれば、飛鳥井の果ては歪む 1000年続く果てなど夢のまた夢になる 堂嶋正義や三木繁雄はこの異常な事態を察して…… 何が起きているのか?唐沢を使い調査させる事にした 唐沢は康太に良く似た背格好の部下を使い、飛鳥井の周りを彷徨く輩の実態を掴む事にした 康太の許可を取り、飛鳥井の家の鍵を借り、あたかも康太が飛鳥井の家に還ったと見せ掛ける 家の前に車を停め、再び車に乗り込み車を走らせる すると見事に康太が乗ったであろう車を追いかけ着いて来る その車の周りを唐沢の部下が取り込み、強制的に車を停めさせ運転手に事情聴取する すると車を運転していた運転手はバイトでやっている!と答えた またもや闇バイトで人を募り、騒ぎに乗じて事故に見せかけて殺っても良いと謂れ、やったと言う カーチェイスを楽しめて尚且お金まで貰えるのだ そんな美味しい話はないと飛び付き実行したと言う 唐沢は頭痛を覚えた そんな軽い気持ちで………まるでゲームか何かの延長線的な軽さで人が死ぬと思わなかったのか? …………まぁ想ったら実行はしないか……… また別の日には烈と背格好が同じ子を捜査員の家族から選び、烈の好きな桜林学園 初等科のジャージを着せてガルと同じ種類の犬を借りて来て散歩をさせた 烈の逝く散歩コースを辿り散歩に出ると、背後を何人もの男が着いて来て……白昼堂々 烈を拉致り車に押し込めようとした……所を唐沢の班の捜査員と地元の警官とで取り囲み逮捕した 拉致られた子は無事開放され、恐怖で泣く子を見れば………烈だってこんな恐怖の中日々行きていかねばならぬのだと痛感した 康太だって小さな頃は誘拐されたと謂う 飛鳥井の子供は常にそんな恐怖と隣り合わせでいなければならないのだろう……… そして烈を拉致ろうとした犯人も闇バイトで借金800万円をチャラにしてやるからやれ!と言われたと話した 犯人は「俺を直に捕まえてくれ!でなければ殺されてしまう!」と怯えていたと謂う 後日 留置所で犯人は死んでいた 誰も入れぬ留置所で首をへし折られ死していた…… どう調書を書こうにも不可解すぎて………表向きは自殺と報道した この難局な事件は唐沢の処へと回って行った だが不可解な案件を扱う唐沢だとて、どう説明して良いか?さえ解らなかった イタチゴッの捕物は飛鳥井の家から家族が消えても続けられる事となる……… この頃になると真矢と清四郎も家を出て様子を見てくれと、連絡を入れた 流れ弾で付け狙われるのは目に見えていたからだった 飛鳥井の会社の周りを彷徨く人間が増えて……会社に無断で入り込もうとした人間を捕まえて警察に連絡する…………を、繰り返す様になった どんどんエスカレートして逝く現状に……… 長期戦を覚悟するしかない ……そんな時 留置所に入っていた犯人が次々と殺される事件が続いていると連絡が入った 唐沢はほとほと困り果て、この難局をどうしたら良いのか? サッパリ手掛かりすらつかまえられず煮詰まっていた その日、唐沢は飛鳥井建設に出向き、表向きは康太に状況報告事にして、大半はボヤきをする為にやって来たのだった 『表向きは自殺だが、誰も入る事が不可能な留置所に入り首をへし折り殺すなんて……不可能だろ! だから自殺と報道するしかなかった 何故死んだ?俺に解明する能力なんてねぇって何故に解らねぇんだよ」とボヤいていた 康太は「不可能じゃねぇとしたら?……可能性があるって言ったら?どうするよ?」と言う 唐沢は「幽霊でも使いますか?」と問い掛けた 康太は烈を社長室に呼び寄せると事情を話した そして康太は「不可能じゃねぇよな?黒いヤツならば!」と問い掛けた 烈は「そうね、不可能じゃないわね!」と謂う 唐沢は「それ……証明出来ますか?」とヤケクソで聞いた 烈は唐沢に「留置所ってどれだけの警備があって、どれだけのコンクリートの厚さで、結界は張ってあるの?」と問い掛けた 唐沢は唖然となり「留置所に結界なんてないだろ?普通…… それにどれだけの警備って警察署の中だぞ? 警備必要ないでしょ? コンクリートの厚さも普通の部屋より分厚いだけだろ? そんな厚さ要るのかよ?」と変な事を言うなって想い聞く 烈は「何処の警察署に運ばれたのですか?」と問い掛けた 唐沢は「橘区の警察署だよ?」と言う 「其処のコンクリートの厚さはどれぐらいですか?」 「厚さ??それは解らないけど簡単に破れない事だけは確かだよ!」 唐沢はボヤく 康太は「オレと烈をその留置所に連れて行き閉じ込めてみろよ! 烈が誰の目にも止まらず牢の外に出たならば、不可能じゃねぇって事を解明出来るかもよ?」と嗤って言う 唐沢は「その警察署に連れて逝けば騒がれるので同じ条件の留置所を用意させてるので、其処でお願い出来ますか!」と言う 康太は「いいぜ!連れて逝けよ!」と言った 唇の端を吊り上げて親子は嗤っていた 唐沢が部屋を出ようと背を向けると、クーは大きく伸びをして、時空に消えた 唐沢はそうとも知らず康太と榊原と烈と共に会社を出て、部下の用意した車で3人を最強と言われた場所へとお連れした 唐沢が用意したのは元アメリカ軍の基地があった場所だった その建物は今は唐沢達、内閣調査室が管轄していた その建物には頑丈な収容施設が併設してあった 元を辿れば旧日本帝国 軍事施設跡地でもあるのだ………… それを更にアメリカ軍が手を加え強固な収容施設にしたのだった 唐沢は「この場の収容施設は警察署にある留置所なんて可愛いレベルの警備システムを導入しています! どうですか?此処で文句はありませんよね?」と挑戦状を叩きつけた 康太は「ほれ、烈入って来いよ!」と言う 烈は扉の開いた牢の中へと入って行った 唐沢は「え!!!烈君入れちゃうの!!」と驚いた 康太は「オレは牢獄破りなんて趣味はねぇんだよ!非力なオレに何を期待しているんだよ!」とボヤき嗤った 唐沢は「貴方は非力でも弥勒付きじゃないですか…………」とボヤく 「烈は弥勒以上の猫付きだかんな!」 康太はさっさと烈の入った牢獄の扉を足で閉め 「ほら鍵掛けろよ!」と言う 唐沢は牢獄の扉の鍵を部下に指示を出してロックさせた 康太は防犯カメラを見て「ちゃんと牢獄写ってるか?」と問い掛けた 唐沢は部下に「映像問題ないか?」とインカムで問い掛けた 部下はチェックして『問題ありません!』と返す 康太は「んじゃ、始めて良いぞ!」と言う 脱獄不可能な牢獄だった 唐沢と康太と榊原は黙って事の成り行きを見ていた 静まり返った牢獄は息遣いさえ響いて聞こえる程に静まり返っていた 耳が痛くなる程の静けさの中、突如…異変を察知した警報音が鳴り響き、施設内は騒然となった 『班長!防犯カメラが移動させられました!』 部下が何が起こったのか解らなくてパニックになっていた 次の瞬間、烈は白い猫を肩に乗せ、康太の横に立っていた 唐沢は牢獄の中を見た 扉は締まったままだった 唐沢は驚愕の瞳を康太に向け、部下に 「警報音を止めなさい!ロックは解除してないのですか?」と指示を出し問い掛けた 直ぐ様、警報音が止められ 『ロックは掛かったままです! 電流も流れたままで触れた形跡すらありません!』 部下の言葉に唐沢は深呼吸をして、自分を落ち着かせ問い掛けた 「…………橘区の留置所に拘留した者の首をへし折った犯人と同じ手法なので驚きました…… 犯人は押し入る前に…防犯カメラを移動して……って俺、それは言いませんでしたよね?」 烈の肩には白い猫が乗っていた 白い猫は「押し入るならばまずはカメラの視線を背けるのは定石だろ!」と当然だと言う 唐沢は「貴方は……何処から来たのですか?」と尋ねた クーは時空を唐沢の眼の前で切り裂いて 「我等は自由自在、何処へでも逝ける!」と言った 時空を切り裂いて………… それならば………密室で殺しは可能じゃないか! クーは「あ!俺は悪さはしない猫だからな! 悪さをするのは黒いジャガーだ!」と訂正した 唐沢は「解ってますよ………時空………時空を切り裂き来るならば我等は手は打てない………」と言った 烈は「近い内に綺麗の研究室に来てくれるならば、犯人を入れる留置所に仕掛けをしとけば、黒いのが来られないかも知れないの授けるわよ! 後、アイツは銃弾でもスカッドミサイルでも死なないわ でもね傷を着けられそうな素材は見つけて来たからね、対抗する手段は考えているのよ! だからクーたんと闘わせようかと想っていたけど、クーたんの前に来ないのよね……」と至極残念そうに呟く 唐沢は「それを教えて下さるのですか?」と問い掛けた 「良いわよ、場所と日時はボクが決める! それで良いならね………」 「はい、それで良いです! 貴方には言ってませんが、此処の牢獄は警察署の留置所よりも強固で鉄格子には微弱な電流が流してあり、触れれば気絶する程度にはダメージが与えられる場所でもあったのです 難攻不落の収容施設でしたが………時空を切り裂きやって来られるならば敵いませんね」 「クーたんは無理だけど、黒いヤツなら、この程度の壁ならば切り裂き壊せるわよ」 「……っ!!そんなチートな存在、全人類が束になって掛かっても負けますって………」 「ボクも母しゃんも父しゃんもレイたんも、絶対に負けない!」 烈は言い切った その横で康太も榊原も嗤っていた その自信………唐沢は………弱気になっている自分が恥ずかしい………と想う 康太は「さてと還るとするか!」と言う 烈は「そうね、父しゃん今夜の御飯何かしら?」と夕飯のおかずを想う 榊原は「烈の好きな冷奴です!」と言う やったー!と喜び唐沢を見た 早く連れ帰れと視線が物語る 唐沢は部下に康太達をお連れしろ!と命令した 部下が丁寧に烈達を連れて逝こうとする クーは「幾つもの防犯カメラをチェックしたとしても、俺の姿はカメラには映りはしないぜ!」と言い不敵に嗤った 唐沢は「ならば何故カメラを移動させたのですか!」と叫んだ 「心理戦だよ!カメラに映るから移動させたと思い込ませる為にな!」 白い猫が唇の端を吊り上げて嗤う 飼い主に良く似た猫だった 元を正せば康太に良く似た猫だな……… んとに食えねぇな!と唐沢は痛感させられていた 康太と榊原と烈を唐沢の部下が連れ帰る 唐沢は事の詳細を警視総監や内閣総理大臣へと伝達した 今後の手を打つ為に情報の共有はせねばならないからだ! 閣下は「近い内に……烈君とその猫さんに逢わせては貰えぬかな?」と申し出た 唐沢は「康太に聞いてみます!」と言った だが康太に聞いたとて、諾と申さねば梃子でも動きはしない、その強靭な精神を想う 康太も烈が嫌だと申せば無理強いなど絶対にしないだろう……… ズーンと気が重くなるが唐沢は康太のラインに 「閣下が近い内に、烈君と猫さんに逢わせて貰いたいそうだ!」と送信した 既読に直ぐになったのに、返信は中々返って来なくて…… 「康太?烈君に聞いて貰えないかな?」と何度も送った だが返信はなかった 唐沢は「どう言う事よ?」と不安になり飛鳥井建設まで出向く事になったのは言うまでもなかった アポを取り、指定された日に戦々恐々で飛鳥井建設へと向かう 受付け嬢にアポを撮っているので、面会させて貰えないか?と尋ねると、エレベーターのドアを開けられコードを打ち込むと 「最上階までお願い致します! さすれば宗右衛門が出迎えてくれるそうです!」とスムーズに面会か許可され困惑する エレベーターが最上階へ止まりドアか開くと、烈が目の前に立っていた 「どうぞ、此方へ!」 烈の案内で共に逝く 社長室のドアを開けて部屋に入る………と、其処は見た事もない所だった え?????今 【社長室】と言うプレートの部屋に入ったよな???? 唐沢は何が起こったのか?サッパリ解らずにいた 烈は困惑している唐沢を八仙の屋敷の裏の、自分の屋敷まで連れて行った 屋敷の中に入るとソファーに康太と榊原が座っていた 烈は「お連れしました!」と言いソファーに座ると、榊原が立ち上がりお茶の準備を始めた 康太は唐沢に「ラインの返信せずに悪かったな!」と謝罪した 唐沢はソファーに座り「此処は何処なのですか?」と尋ねた 康太は「此処は崑崙山、仙界と呼ばれる場所だよ!」と答えた 何故にこんな場所に連れて来られたのか?唐沢には理由が解らなかった クーが「何処に【目】があるか解らねぇからな、此処へ呼ばさせて貰った!」と言った 「此処ならば……その【目】とやらが届かない………と言うのですか?」と問い質した 榊原は「この聖神の屋敷なれば覗き見る事さえ不可能なのですよ! 何故ならばこの屋敷は七賢人八賢者の知恵と才を結集し、ニブルヘイムの創世記の泉の水で浄化され、オーディンの【光】で護られた地ですから 覗き見る事すら不可能なのです なので、覗き見たくば、本体が出て邪魔するしかないのですよ!」とサラッと言う 唐沢は「え?それって……何を指します?」と問い掛けた 烈は「まぁ気にしにゃいのよ!で、閣下に逢えって?ボク逝くと閣下にまで流れ弾行かないかしら?」と心配して言う 気にするな……と謂われても気になるのが人間の性だ だが………聞いても答えを得られないのならば、気にしない事にする それが理解を超える職場で培った現実なのだ 「一度閣下とお逢いして下さい! この異常な現実を共有させて下さい!」 「解ったわ、閣下に逢うわ 飛鳥井の他の【眼】を授けられた家が悉く狙われているわよ!と現実を伝えないと………だからね!」 唐沢は「え??それは本当ですか?」と思わぬカウンターパンチを受け、ヨロっとなりそうな自分を立て直し問い掛けた 宗右衛門は「主要な家は狙われておる、それを予言した者がいる家ならば……地下へ潜るしかない! 我等受け継がれし者達は、そうして戦火を逃れ災厄から身を隠し生きて来た一族じゃからな! その一族も数を減らし根を断とうとされ次代の子を間引かれて来た 有栖院の家が翁を継ぐ子が生まれなかったのも、そんな策略があればこそじゃろ! じゃが次代は生まれた、倭の国の礎になる企業の果ては繋がった じゃから今、人を操り強硬策に出たのであろうて! 倭の国……嫌 この世界を混乱に巻き込み、どす黒く染め終焉を迎える日を楽しみにしているのであろうて!」と説明した 康太は何も言わず、優雅に紅茶を飲んでいた 榊原も「崑崙山で珈琲に似たのが飲めるなんて最高ですね!」と優雅に珈琲を飲んでいた 現実だから何も言う事がないのだろう…… 烈は「閣下に逢う日、毘沙門天と大歳神が閣下の元に現れるわ!そしたら二人と共に来て欲しいのよ!」と言う 唐沢は「了解しました!」と答えた 「その日が迎えられる事を願っているわ………」 烈は遠い果てを見て………そう言った 康太と榊原と遠い果てを見ていた 唐沢は何も言えなかった 烈は唐沢に「ねぇ唐沢、これで話は終わりなのよ、悪かったわね………こんな所へ呼び寄せたりして………」と謝罪した 唐沢は「構いません!それだけ事が難局に来ていて、話を聞かせる訳にはいかなったと言う訳なのですか?」と聞く 康太は笑って「違げぇよ、おめぇをこの地に呼んだのはお前に死んで貰おうかと思ったからだよ!」と、とんでもない事を言う 「え!!それは!!!」 唐沢が問い掛けると同時に鋭い刃が唐沢を襲った 襲われる瞬間 唐沢は身を翻し避ける 長年培われた俊敏さがトドメを刺す鋭利な刃から逃れるが…… 一歩及ばず腕を切り裂かれ……よろけるとクーが支えてくれ、庇って立っていた そしてもう一匹の白い猫が黒い猫と闘っていた 烈は「来ると想ったのよね!」と言っていた 康太は「あれが黒いジャガーだ!黒曜石で創ら爪には鋭い刃を仕込んでやがるんだよ!」と説明した 黒いジャガーはプーの爪に切り裂かれ………叫び声を上げて消えた その場には血溜まりが出来ていた 烈は「プーたん怪我した?」と問い掛けた プーは「やられてしもたわ、畜生やわ!んまに!」と怒っていた 八仙がプカプカ浮いてやって来ると、唐沢の腕を見て止血をした そしてプーの怪我の手当をする 八仙は「血は止めた、じゃがその者は人の子! 人の世で縫って来るがよい!」と言い屋敷を出て行った 康太は立ち上がると「んじゃ会社に戻るとするか!そしたら久遠んとこに連れて行ってやるかんな!」と言った 唐沢は痛みにクラクラしつつも、何故この地に呼ばれたのか?理解が出来ず 「話して下さい!」と言った 康太は「久遠の所へ逝く時に話してやんよ!」と言い社長室へ戻り、その足で地下駐車場へ向かう エレベーターに乗り地下駐車場まで行くと、会社の社用車に乗せ病院へと車を走らせた 唐沢の横に座った烈が「ごめんね、怪我させる気なかったけどね………やっぱり出て来たのよね」とボヤく 唐沢は「来るの解っていたのですか?」と問い掛けた 「解っていたわ、だってずっと唐沢………付け狙われていたわよ! そしてあの日、あの瞬間、唐沢は死ぬ運命だったのよ」 だから一度死んでもらおうと想ったからだよ………と謂う台詞なのか………と痛感した 「俺、何処らへんでジャガーに付け狙われてたんです?」 「飛鳥井に連絡を取る唯一の存在だからね 接触を図るならば、出て来るしかないのよ ………しかも殺す気満々で来てるからね 唐沢は死ぬ運命だったのよ!」 「……運命を変えたのですか?」 「変えたんじゃないわ!捻じ曲げたのよね?ねぇ母しゃん!」 烈が言うと康太は「未来と言うのは不確定要素を含んでるからな、多少捻じ曲げられるんだよ! 未来は己で掴み取る【今】だ!と謂うのが宗右衛門の考えだかんな! でもお前の運命捻じ曲げた反動が来てるから、久遠に見せねぇとならねぇんだよ!」と言った 唐沢は「え???烈君大丈夫なの?」と問い掛けた 烈はとても具合が悪そうで、2匹の白い猫を膝の上に乗せて座っていた 「プーたん ごめんね怪我させちゃったわ」 と、怪我した所を撫でて言う プーは「んなに酷ないから心配しなや!」と安心させていた クーは「治らなかったから俺がプー連れて治して貰いに逝くから大丈夫だ!」と烈を励ますように言う 烈は「母しゃん気持ち悪い……反動モロに食らったわ!」と言いクーの身体に顔を埋めた 唐沢はオロオロとして「烈君大丈夫???」と心配した だが烈が動く事はなかった 康太は「気絶したんだよ!運命を捻じ曲げれば己の身体に反動が来るからな………仕方がねぇんだよ!それでも、烈はお前を死なせる気はなかった だから崑崙山へ繋いで運命を捻じ曲げ生かした 生かされた意味を受け止めて、果てへと逝けよ唐沢!」と言った 唐沢は「俺は………烈君の犠牲の上に………生かされのですか?」と呟いた 「それは違うぞ!唐沢! 烈はお前は此処で死ぬ人間じゃねぇと判断した お前みたいな貴重な人間は死なれたら困るんだろ!だから富士の樹海の時もお前を助けに行ったし、今も助けたんだろ?」 富士の樹海の時も絶望に染まりそうになった時、助けに来てくれた……… 唐沢は言葉もなく………助けられた今を噛み締めていた 康太はそれで良いと想っていた 多少怪我はさせたが、死の影は祓ってやったのだ 榊原は何も言わず、飛鳥井記念病院へと車を走らせた 病院へ着くと康太は後部座席のドアを開けて、烈を抱き上げると唐沢を車から下ろした 榊原は康太から烈を受け取ると、康太は2匹の猫を抱き上げた そして唐沢と共に病院の中へと入って行った 受付に急患を知らせると即座に鈴木泰地がやって来て、烈をストレッチャーに乗せて、唐沢はもう一人の看護師の手により車椅子に乗せられて処置を受ける為に連れて行かれた 康太と榊原は待合室のソファーに座ると、烈を待った 榊原は「本当に黒いのが来るとは想いませんでした………」とその眼で黒いジャガーを見て言う 康太は「烈が言うには付け狙われていたらしいかんな、だから準備が整うまではラインの返信も返せなかったんだよ! 会社に黒いの来たならば当てつけに社員切り裂いて行きそうやんか………それは避けたかったんだろ?」と話す 唐沢の運命を捻じ曲げ助けたのは確かだが…… 出るタイミングを図り、無難な崑崙山へ繋いだのは被害者を出さない為の苦肉の策だった まぁ一度死ぬ運命の唐沢が縫う怪我程度で収まっている時点で、烈にはかなりの衝撃が返っているのだろう…… 暫くして唐沢は腕から包帯を巻き付け、腕を吊り戻って来た 烈の姿はなくて、それを見て康太は 「ひょっとして数値悪いのか?」と心配して呟いた 案の定、暫くして鈴木泰地がやって来て康太の耳元で「烈は入院しました!」とコッソリ告げて行った 康太は「パジャマとか用意しねぇとな……」と言うと慎一がレイを連れて荷物を持ってやって来た 康太は驚いて「え?病院にいるって知らせてねぇよな?」と呟いた 慎一は「レイが『れちゅ にゅちんしたから、おきぎゃえ!』と言ったから用意して来たんです!」と答えた レイはずっと烈の眼で事の状況を視ていたのだろう…… そして視界がブラックアウトしたのを察して、慎一に言い入院の用意させて来たのだろう 康太は「んじゃ個室に逝くとするか!」と言い移動を始めた 榊原は「唐沢さんはどうします?」と問い掛けると、唐沢は「様子を見なきゃ帰れねぇでしょ?」と言い共に個室へ向かった 個室に逝くと烈はまだ戻って来てはいなかった レイはソファーに座りプーに「きじゅ、いたいにょ?」と問い掛けた プーはレイの手を舐めて 「少し深いねんから痛いけど気にせんでもええで!」と言う 「ちゅぎは、じぇったいに、ちとめる!」 とレイは怒っていた クーは「ほらほら物騒な事言ってる暇に、烈が戻ったら添い寝してやれよ!」と言った 「くーたん………」 プーは「なら吾輩は翔達の所へ還るとするわ! 離れてたら心配やからな!」と言い窓を開けると、ヒョイとビルの上を駆け抜け消えた 響くして烈が病室に戻された ベッドごと個室に入れられ点滴を吊るして様子を見て看護師は個室を出て行った 久遠が個室にやって来ると 「コイツ寝てねぇから衰弱してより数値悪くしてやがった! 何でこうも弱ってるんだよ!全部吐きやがれ!と言ったら『5日徹夜してたせいかしら……』とか抜かしたから眠る薬入れていたから!」と説明した 康太は「5日も徹夜?何を調べていたのよ?」とクーに尋ねた レイがニブルヘイムの声で静かに話し始めた 「この停滞した流れの悪いが運命を、どうやったら流れ出すか? 毎日 毎日 暇があれば星を詠み、ホロスコープを駆使して調べてもどん詰まりな現状に成す術がない………だから余計躍起になって寝ずに調べていたんですよ! 僕はあんなに無理しないで!と頼んだのに………」と泣きながら話した 康太はこの総てが停滞した様な流れの悪さに、やはり悪意を感じずにはいられなかった 康太はレイの頭を撫でると「お前も烈が個室に戻ったんだから一緒に寝ろや!」と言った レイは頷いた そして康太に腕を伸ばし抱き着くと、耳元で何やら呟き、離れ烈のベッドに潜り込んだ 康太は何も言わず、軽く頷いた 榊原は唐沢に「総ては烈が起きて話が出来ねば始まりません! 気絶した烈は目を醒ましません! なので唐沢さん、今日はお帰り下さい!」と告げた 唐沢は康太と榊原に深々と頭を下げると、帰ろうとした クーは唐沢の肩に飛び乗ると、ガブッと耳を齧った 唐沢は「痛い!」と眉を顰めた 猫は肉球の手の上に光り輝くピアスを2個乗せ 「着けとけよ!闇に染まらぬ為のレイの水を圧縮して創った結晶と、闇が手を出せねぇ為の御守だ!」と言い差し出した 榊原は胸ポケットから携帯用のウエットティッシュを取り出すと、血を拭き取りピアスを手にした そして情け容赦なくブスっとぶっ刺してやった 痛い!!と文句すら言えない早業だった 「どうです?痛みは直ぐに収まります! 定期的に消毒して外さない様にして下さいね!」と言った そして呆然としている唐沢を個室をから追い出した 慎一は康太と榊原に「会社へ行って下さい!後少ししたら一生が変わってくれるので、そしたら俺は買い物に出かけます!」と言う 康太と榊原は会社へと向かった 康太は榊原の運転する車に乗り込み 「やっぱ烈が社内を見回りしてくれねぇと、社員の士気が下がるんだよな 今は2年間ローテーション移動の始まりみてぇなモノだかんな、部署とか目を光らせとかねぇとならねぇかんな………」とボヤく 榊原は「夏が来たならば……烈は本格的に動き出すのですよね?」と問う 「だろ?今世紀最大の喧嘩売らねぇとならねぇだろ?」 「ならば夏までに流れを少しは良くする気ですかね?」 流石父親な言葉に康太は顔が綻ぶ 総ては今世紀最大の喧嘩を売る日の為に……! 運命の流れを少しでも良くしようとしているのだろう……… その夜、小さなニュースが報道番組を飾った 【倭の国の潰れかけた会社が社員と共に起死回生のチャンスに挑む!】と言うタイトルで清和鋼業の【今】を放送された 清和鋼業の元社長は熟練された職人と共にイギリスへ渡り、ヨニー©イギリスと契約した 以後の名称は「YonÏ©Steel iodustryとする!」と正式社名を公表した ヨニー©イギリスの社長 オリヴァー・オブライエンは記者会見に同席した その横には副社長の三木竜馬も同席し、竜馬の後ろには兵藤が立ち圧巻とも言える記者会見をやってのけた 清和和実は自分の声でそれを表明した 「清和鋼業はその永きの歴史に幕を閉じました 私が不甲斐ないばかりに……会社の経営を妻の親族に良いようにされ破産の道を辿るしかなかった だが、飛鳥井宗右衛門の出してくれる助け舟に乗り、総てを清算した後、あの方の指し示してくれた道に逝く事にしました 私は死守した特許と熟練された職人達と新天地に立ち、今後はヨニー©イギリスの為にその腕を奮いたいと想います! 本当に宗右衛門殿にはお世話になりました! 私は宗右衛門殿が切り開いて下さった道の果てへ行くと、此処に誓います!」 堂々とした表明だった 後はオリヴァーの独壇場だった 其処にいるだけで存在感バリバリの竜馬と兵藤を傍に置き、語れるなんて最高だよ!リーダー とオリヴァーはリーダーに思いを馳せながら物語る 清和鋼業は新しく用意された道を逝く事が決まった 記者会見のラストに記者会見に参加した記者から 「ヨニー©イギリスの副社長であられるもう一人、飛鳥井烈君は参加されていませんね? 何故なのか?お教え下さい!」と質問が飛んで来た 竜馬はその顔を強張らせ、鋭い目付きで記者を射抜くと 「リーダーは命を狙われているんですよ? こんな公の舞台に出たならば、即座に銃口はリーダーを捉えるでしょう! その事は世界的に公表しているのに、敢えてそれを聞きますか? 貴方達の心無い報道の所為で、リーダーは平穏な生活さえ手放さねばならなくなった! 軽率な発言は控えられよ!」と蔑む瞳で見下し吐き捨てた 記者は何も言えず……その場も凍り付いた 兵藤の「記者会見は以上です!皆様お疲れ様でした!」との言葉でお開きになった 三木竜馬と謂う男は何時も柔和で優しい雰囲気があった なのに………今 皆に見せた顔は想像を遥かに超え、冷徹で情け容赦もない瞳をしていた オリヴァーもリーダーがいないと竜馬はこんな顔しちゃうんだね………と痛感していた メンバーなれば、竜馬の色んな顔を知っていただろうが…… 後から【R&R】の裏方になったオリヴァーは、中々竜馬のそんな顔には、お目に掛かる事はないからだ……… 兵藤は、んとにコイツは烈が絡むと、とことん冷静で、冷徹で、とことん厄介になる………と痛感していた 記者会見が終わると兵藤は竜馬に蹴りを入れた 「烈が見たなら減点だぞ竜馬!」と駄目出しする 竜馬は「だって!!」と反論しようとしたが兵藤がそれを許さなかった 「漢たる者如何なる時も………取り乱すな!竜馬!」と言う 竜馬は「ごめん貴史、オリヴァー!」と謝罪した オリヴァーはリーダーを欠かした竜馬って本当に厄介だな………と知る事になって良かったと想っていた まぁ、それは【R&R】のメンバー全員そうなのだ仕方ない 裏方だけど、多分自分も…… だからオリヴァーは許す メンバーもこうして許して先へと進んで来たのだろうから……… その記者会見は翌日 倭の国で流された TVを見ていた家族はそれを見ていた 烈は「まだまだね、りゅーまは!」と怒り 康太は「良い面構えになって来たやんか!貴史!」と御満悦 榊原は「こんな疲弊する記者会見をしたのだから、またオリヴァーを癒やしてやらねば!」と言いラインを送信 「何時でも美味しい鍋を食べに来ると良いです!」と送った これから暑くなって来るけど、直ぐには来ないから良いか………と安易に考え言うが………後に後悔する事になるのを、その時の榊原は知らなかった 川の流れは何時も規則正しく流れる訳では無い 誰かが水面に石を投げれば、水面は波紋を広げ……投げ掛ける様に……… 其処に障害となるべきモノがあれば、流れは偏り 最悪滞る そして何時か氾濫し……天災となり人々に爪痕を遺す事になるだろう…… 障害が行く手を阻む今の現状は、正常とは言えない だけど………我等は逝くしかない 例え血反吐を吐こうとも……… 引き返す道などないのだから……… 我 逝かん この道は険しくとも 我等の前に道はない 我等の後に道は出来る 明日を信じて その歩みは止まる事はない

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