80 / 100
第80話 我 逝く先に…
ヨニー©イギリスが行った記者会見は世間を騒がせていた
ヨニー©イギリス 副社長 三木竜馬が放った言葉が波紋を呼んていた
デトロイトの記者は同僚として仕事をしていた今枝浩二に連絡を取り
「どうして飛鳥井烈が記者会見に参加出来なくなったか教えて下さい!
そして彼が置かれた立場と状況も出来るだけ詳しく教えて下さい!」と詳細を教えてくれと頼んだ
今枝は独自に調べ上げていた報告書の総てを、即座にPCで送信した
それを受け取った元同僚は、イギリスのパパラッチも大概に酷いが、こんな子供相手に………やり過ぎだ!と思った
その事を新聞の特集で乗せると、新聞は飛ぶように売れた
【R&R】の関心度の高さを物語っていた
竜馬は記者会見の翌日 烈にお説教のラインを送られていた
ロードの修行を終えて帰国したならば、精神修行のやり直ししようかしら?と送られれば、ひたすら謝るしかなった
3月も中旬に差し掛かろうとした頃
一生は朝早く、烈に「沢山の爆弾おにぎり欲しいのよ!」と頼まれて、朝からニギニギしていた
烈は「カズこめんね……」と謝罪した
一生は笑って「おにぎりなんて別に苦でもねぇから気にすんな!」と言った
「此処の生活は飛鳥井と違い不便でしょ?」
「俺等は何処へ逝こうとも、皆でいられれば構わねぇし、気にもしねぇよ!」と笑い飛ばしてくれる
烈は顔を引き締めると一生の瞳を射抜き
「此れより衝戟が来るからね、カズはにーに達を護って貰いたいのよ!」とだから前もって謝ったと言った
一生は「元より、手が届く総ては守るつもりだ!」と笑ってくれた
一生がおにぎりを袋に詰め終わると、兄達とレイと凛と椋が烈の傍へとやって来た
烈は唇の端を吊り上げて嗤うと呪文を唱えた
すると目も開けてられない目映い光に包まれ、身動き一つ出来ない状況になった
自分を包む光がなくなると、怖ず怖ずと目を開けた
其処は見た事もない……………場所だった
康太は先に来ていたのか?
「遅せぇよ!」と文句を言う
烈は「カズにおにぎりニギニギして貰っていたにょよ!」と答えた
康太と榊原の横には耀が立っていた
そして魔法陣を取り囲む様に………閻魔大魔王、素戔鳴尊、転輪聖王、建御雷神、天照大御神、釈迦、大歳神が立っていた
魔法陣の前には恵方、源右衛門が既に立っていた
烈は源右衛門に「この子が源右衛門を継ぐ者よ!
源右衛門が来世転生する時にもう一度共に転生するから、その時は教育お願いね!」と言う
源右衛門は「烈、主が宗右衛門であったか……」と何故に解らなかったか?と残念がった
宗右衛門は「儂は消されかかっておったからな、気配も変わったし、主がいた頃はまだ儂は小さかったからな、真贋だとて気づいてはおらぬよ!」と笑い飛ばした
榊原が転生者を魔法陣の前に立たせると、クーが凛を咥えて中央に立たせた
康太も転生者の場に立つと恵方が「この後少し話がしたい……」と言った
康太は「当然だ!話をしようぜ!」と言った
宗右衛門は「赤龍、主は翔達を護れ!そして翔達よ、完全覚醒の儀の見届人となれ!」と言った
兄達は頷いた
プーは兄達を護る為に翔の肩の上にいた
天照大御神は「さぁ始めるがよい!この地は天高原、この地には我が許した者しか来れはせぬ!」と宣言した
烈は「此れより完全覚醒の儀を始める!」と言い呪文を詠唱し始めた
烈が呪文を唱えるその後をレイが呪文を唱える
かなり長い間詠唱は続いた
その間中 竜胆は嗤っていた
烈が指を切り裂き血を魔法陣に流すと、稀代の真贋 恵方 源右衛門 次代の稀代の真贋、次代の源右衛門、次代の宗右衛門も血を魔法陣に垂らした
その血は竜胆の方へ吸い込まれる様に引き寄せられ………竜胆の体内に吸い込まれた
「竜胆よ!此れで主は完全覚醒をした事になる!」と言い烈はゼウスの杖で大地をドンッと響かせると宣言した
竜胆は「此れで俺の欠けた部分が一つになったぜ!」と受け止めた
血気盛んに燃え滾り皆の前を駆け抜ける竜胆となった瞬間だった
烈はゼウスの杖を消すと、クーに魔法陣を消させた
そして一生の所へ来ると「おにぎり欲しいにょよ!」と訴えた
が、それを榊原が止めた
「食べたら寝てしまうでしょ?
さぁ閻魔の執務室にある来賓室へ招かれて恵方と話をせねばなりません!」と言った
そしてポケットからウィダインゼリーを取り出すと、渡した
「ボクのおにぎり……」
無常にもおにぎりは榊原が手にしてサクサク移動する
天照大御神の手により、天高原から閻魔の執務室にある来賓室へと飛んだ
眩しかったのは一瞬で終わり、目を開けると来賓室だった
恵方は果てを見つめ「飛鳥井の未来は繋がりました!其処にいる宗右衛門の兄達が果てへと繋げ、飛鳥井は宗右衛門が敷いた1000年続く果てへと繋がりました!
だけど時代も変われば、人間も変わる
家に縛られた形態が何時まで続けられるかは………視えては来ませんが、我等は負けない!
そして私も来世では次代へ託さねばならないでしょう!」と言った
宗右衛門は「常に時代に置き去りにされる転生者では、繋げる意味などないからな!
アナログがデジタルになり、時代は進化の一途を遂げておる!
この先 何処まで逝くかは解らぬ
そのうち建築事態がなくなるやも知れぬ
じゃが幾ら時代が進歩しようとも、我等は人間である事までは辞めはせぬ!
人が人として出来る事は些細な事でも、果てへと繋げる為に力を合わせれば、それは強大な力となるであろう!
我等はそれを信じて今を繋いでおるのじゃ!」と言った
恵方は「やっぱ宗右衛門の言葉は重いよ……私は貴方に蹴飛ばされ修行を着けられた日々を忘れません!不撓不屈の精神でこの先も逝くと約束します!」と言う
宗右衛門は笑い「視ておるからな、情けない事をしておったら蹴り飛ばしに行ってやるわ!」と脅す
恵方は「あぁ………飛鳥井の明日が………光り輝いて視えて来る……」と言い泣いた
源右衛門は「主の後継者は東矢であるか!」と言った
康太は「おっ!じいちゃんすげぇな!解るのか?」と問い掛けた
源右衛門は「何処をどう見ても東矢であろうて!」と言う
そして耀を見て「儂の後継者は……高貴な御方ではないか………よいのか?源右衛門を継がせて……」とその身分を知り問い掛ける
源右衛門の【眼】は未だに現在の様だった
康太は「宗右衛門が敷いた1000年続く果てだかんな!」と言う
源右衛門は「そうか………この子等が1000年続く果てへと逝く子達なのじゃな……」と呟いた
竜胆は「今世は本当に過酷な現場に置かれ、忘れ去られた様な日々を送らねばならなかった
だが俺は負けねぇ!絶対に負けねぇ!そう心に決めて………やっと此処まで来た………この先も俺は負けねぇぜ!」と熱く語る
竜胆はこうでなくては!
榊原は烈に「どうして天照大御神の領域で完全覚醒の儀をやると決めたのですか?」と問い掛けた
宗右衛門は「天界ではもう覚醒の儀は行えぬ故、場を探しておったのじゃよ!
で、天高原に目を付けた
あの地は神聖な女神の領域、不浄な輩は近寄る事など出来ぬ聖域!
それ故に天照殿にお頼み申し了解を得たのじゃよ!まぁこの魂は多少の融通を得られる立場がある故………それを駆使して烈が祖父に泣き付き頼み込んだのじゃよ!
天照殿が了承して下さり、成功させられた
これでやっと飛鳥井の流れの悪い障害を取り除いたのじゃから、後は滔滔汨汨と逝くだけじゃろ!
竜胆の完全覚醒の儀を終えねば、烈は打って出る事も出来ぬからな……これでやっと今世紀最大の喧嘩を売れるじゃろうて!」と言う
榊原は言葉もなかった
そして「黒いのは不浄なのですか?」と真面目な突っ込みして聞いた
「不浄じゃろ?幾人の人を殺めたのじゃ?
幾人の人を誑かし、弄び、人生を狂わせたのじゃ?
そんな輩……あの地には逝けぬであろうて!
女神の力は伊達ではない!
未だに信仰されている女神なれば、その力は衰えてはおらぬからな!」
そう言い宗右衛門はバタッと机に突っ伏した
榊原は慌てて紙袋から一生特製 爆弾おにぎりを取り出した
そして烈に渡し、兄達やちっこちのにも渡す
素戔嗚尊はデカメロンを取り出すと、サクサクと切り分けて皆に振る舞った
そして大歳神が弥勒と共に豪快な漢の料理を運び込む
素戔嗚尊は孫を膝の上に乗せ、レイも乗せた
ついでに大歳神の膝の上に凛と椋を乗せた
トキは烈の傍に来て「今日は泊まれるのか?」と問い掛けた
烈は「今日は帰るわ、でも近い内に閻魔庁の仕上がりを見に来なきゃなのよ!」と言うと喜びスリスリした
源右衛門は久し振りに孫に逢えて嬉しそうだった
お腹が膨れると眠くなる
力を使うと余計に眠くなる
が、まだ仕事があるのだ
烈は大歳神を見ると「とぅしゃん、びしゃと共に行き、閣下と唐沢を連れて来て下さい!」と頼んだ
大歳神は「うし!毘沙を呼び寄せて閣下とやらと、唐沢を連れて来れば良いんだな!」と言う
「オマケで良いから堂嶋正義が釣れたらラッキーなんだけどね………」
「うし!総てお前の望みは叶えてやるさ!」
と何故かマサカリを肩に担ぎ言う
烈はそれを見て「闘いに逝くんじゃにゃいわよ………」と言うが聞いちゃいない
大歳神は「伯母上、儂を毘沙の所へ送って下され!」と言うと天照大御神は八咫鏡を向けて呪文を唱えた
すると大歳神は消えていなくなった
榊原は康太と烈の傷の具合を見て、素戔嗚尊に止血草はないか?問い掛けた
素戔嗚尊は懐から風呂敷を取り出すと、その中から止血草を取り出し渡した
烈はそれを見て「じぃさんもサコッシュみたいなの作らないと駄目ね!」と思案する
榊原は止血草を手にすると、康太と烈の傷口に貼った
そしてレイと耀と椋の傷の具合を見る
レイは皮膚が弱いから今も血が流れてて、止血草を貼った
椋と耀の手は既に乾いて血が止まっていた
暫くすると大歳神と毘沙門天が閣下と唐沢と堂嶋正義を連れてやって来た
閣下は「魔界に生きている間に来ようとは……」と苦笑した
堂嶋は閻魔大魔王には逢った事があるし、桃源郷近くならば行った事もあったし、hellにも一緒に行ったから、然程驚きもしなかった
唐沢は………此処………何処ですか?骸骨一杯いた道………何故に平気で通れるのよ?と想っていた
あ~もぉ仕事上通常では考えられない現象は対処せねばならない仕事はしてるが……それはあくまでも人間に対しての仕事で………此れは流石にキャパオーバーになっても良いよな?
唐沢の胸の内は気絶したい程だった
毘沙門天はテーブルの上に置いてあったデカメロンを食べ、漢の料理に飛び付いて食べていた
榊原はお茶を淹れに向かった
だが閻魔の執務官にそれを止められた
だが榊原は「私以上に美味しいお茶が淹れられるのてすか?」と謂れ………うっ!と詰まった
榊原は執務官に給湯室を聞き、お茶を淹れに向かった
閣下がソファー座ると、康太は烈を見た
だが烈は一生の爆弾おにぎりを美味しそうに食べていた
モグモグと食べていた
康太は「烈………」とボヤく
烈は仕方ないから爆弾おにぎりを食べるのを止めた
そしてガス欠なのに宗右衛門を出し
「我等は転生者 竜胆の完全覚醒の儀を執り行った!此れで飛鳥井の果ては繋がった!
悪意により潰されている【眼】を授けられし一族として他の力を授けられた一族が、減っているこの現状は耳に入れねばと思っておった!」と不敵に嗤い言い捨てた
閣下は「嘆かわしい現状は私もお聞き致しております!我等はこの先何をしたら良いのか?………
どうしたら……良いか………解りません
皇族も直系男子は数を減らし…存続の危機です
倭の国事態の存続の危機に繋がりかねる………この現実をどうしたら良いか?解り兼ねています!」と訴えた
「どの道国も力持ちの家も変革期を迎えておるのじゃよ!
どんな衝戟にも耐えて守り通すしか術はない今………互いに踏ん張ろうではないか!」
「はい………此処命続く限りは踏ん張り悪あがきしてみます!」
烈はクーを閣下の眼の前に置いた
「彼が烈君の猫さんですね!
何か凄い能力をお持ちなんだかとか?」
クーは「眼から光線が出て口から炎を吐いて、触れたら破壊する能力とかないから、普通の猫に毛が生えただけの猫だぜ!」と言った
閣下は唖然となった
普通の猫は喋らないって…………
クーが言うとトキが「だよな、儂らなんて可愛いモノだよな!爪に刃ないし!
でも烈なら刃あるならリンゴむけとか言いそうだよな」とボヤく
閣下は「この方は?」と問い掛けた
素戔嗚尊が「此奴は烈のトリ、聖鳥 朱鷺である!」と教えた
閣下は「成長?………どんな字を書くのですか?」と問い掛けた
素戔嗚尊はテーブルの上に水を垂らし「聖鳥 朱鷺 」と書いて教えた
遥か昔に読んだギリシャ神話に………そんなのが出てた記憶がある
榊原は仕方なく「オリンポス十二神が一柱 ヘルメース殿に仕えたトリです!」と教えた
閣下は「オリンポス十二神………何故にその様な聖鳥が?」と呟いた
康太は「話せば長くなるかんな、簡潔に言う
宗右衛門の魂は一度冥府の闇に落とされた事があるんだよ!
その時 宗右衛門の魂を救ったのがオリンポス十二神が一柱 ヘルメース殿で、彼は宗右衛門の魂を救って消滅する前に宗右衛門の魂と融合された
以来 ヘルメース殿は烈の中で生きていて、聖鳥 朱鷺は烈に仕えた、今は祖父に当たる素戔嗚殿の所にいるんだよ!」と教えた
閣下は「唐沢からは聞いていました、こうして改めて目にすると…現実を突きつけられるものですね!そして素戔嗚尊………古事記に出て来る存在だと想っていました」と謂う
康太は「名のある神は殆どが存在している!」と言った
烈は閣下を呼び寄せた件に関し、悪意に満ち溢れすぎている現状を話した
閣下は「黒いジャガーはこの場には現れないのですか?」と尋ねた
すると閻魔は「この部屋には不可侵領域な細工がしてあるので侵入は不可能です!
聖神が地獄界の山で貴重な石を採掘させたのを、技術提供する見返りに貰い受けたモノで創られた空間ですから、あの爪でも切り裂けはしません!」とキッパリ言った
閣下は「我等もその技術提供を受けたいのですが……無理ですか?」と問い掛けた
毘沙門天は「其処の腹減りで真っ黒のおにぎり食ってるお子様に言えよ!」と言い漢の料理を食べていた
烈は「今日は無理よ、長い詠唱してて、眠くて使い物ににゃらないから!」と言う
「ならば今度で良いのでお時間を取って下さい!」
「今度にゃらいいわ!
ボク達ね今 飛鳥井の家にも還れにゃいのよ
家族はこの前から不便な生活を余儀なくされているにょよ………」
「その話も今後させて下さい!」
「了解にゃのよ!」
眠くて呂律もハッキリしてない烈だが
「正義ちゃんはボクと少し来て欲しいにょよ!」と言う
堂嶋は「え?俺?良いけど、閣下と唐沢はもう帰られるのか?」と問い掛けた
唐沢は「はい、還ります!ですが年末の頃 骨が撒かれた事件の時に名が上がった、大仏とか言う奴の目星が付いているので、その話も今度させて下さい!」と切り出した
「良いわ、今度ね!もっと切り込んだ話をしましょうね!」
「はい!出来ましたらお願いします!」
「今日は力を使い過ぎて話も出来にゃいのよ!」
「万全の体調になられた頃康太にラインします!
康太、今度はラインを返してくれると嬉しいんだけど!」と少し弱気で言う
ラインの返らぬ日々は本当に胃の痛い日々を送らさせられた
康太は笑って「なら本人にラインしろよ!」と言った
「携帯変えてますよね?」
烈は「あ、そうだったわ!今度教えるわね」と言う
話が着くと大歳神が
「儂と毘沙が閣下と唐沢を連れて還る!
んで儂らはカード下で飲んで来る事にする!」と言いサクサクと閣下と唐沢を連れて毘沙門天と共に、弥勒と釈迦を連れて人の世へ帰って行った
飲む気満々な奴らを見送り、康太は
「オレは少し兄者と話をしてから還る!赤いの子供達を頼むな!」と言うと、榊原も残る事にした
一生は「了解、任せてけ!」と答えた
烈は一生に「赤いのになって!」と頼んだ
一生は「はいはい!」と返事をした
するとレイに脛を蹴り飛ばされた
「はい、は いちろ!」と烈の教えが良くて言う
兄達は頷いていた
一生は「ちぇっ!了解!」と言い外に出ると赤い龍に姿を変えた
烈はレイと堂嶋を連れて外に出ると、さっさと赤いのに乗った
兄達はちっこいのを連れて乗ると、全員乗ったのを確かめてから飛び上がる
烈は「正義ちゃん赤いのも格好いいでしょ?」と言った
堂嶋は「ええ、本当に色が兄弟でも違うのですね!」と感心した
あっという間に崑崙山の八仙の屋敷に辿り着くと、屋敷の前に降りた
烈は堂嶋を連れて八仙の屋敷の裏に立つ自分の屋敷の方へ連れて行った
一生はちっこいのと兄達と共に烈の屋敷の方へ向かった
烈は堂嶋をソファーに座らせると
「これを、正義ちゃんにあげるわ!
倉庫を探して見つけたのよ!」と言い巻物を差し出した
一生は「此れはあんだよ?」と問い掛けた
「此れはね【指揮】の気を孕む巻物なのよ
兵藤きゅんが【覇気】りゅーまが【闘気】なら正義ちゃんはこの先政治家として皆を纏める指導力が必要となるのよ!
何かないかしら?って探しててね、この巻物見つけたのよ!
これは絶対に正義ちゃんに渡さなきゃ!と取っておいたのよ!
だからこの巻物を開いて見て!」
堂嶋は何だか怪しい古い巻物を開いて見た
すると煙の様なモノが現れ、堂嶋の体内に吸い込まれて行った
烈は嗤っていた
「此れで果ての政治屋は面白い動きしてくれるのよ!覇気と闘気背負った政治屋を纏め上げて稀代の総理大臣になってね!」
堂嶋は「烈ぅ〜!おじさんはそれなりの政治屋で良いんだよ!」と言うが聞いちゃいない
「正義ちゃんが総理になるまで、ボク生きてるかしら?」
「おい!縁起でもない事を言わないでくれ!」
「内閣総理大臣 堂嶋正義!と聞く日も近いわね!って事で力を使い熟せる日まで、ボクの特訓受けて貰うわよ!
獅童に今一度鍛え上げる様に言わにゃいと!」
と果てを詠み呟く
堂嶋は「獅童って誰ですか?」と問い掛けた
「鷹司緑翠よ!
かなりハードル上げて意識改革やらにゃいとね
何にも動じにゃい不動の漢になってもらわなきゃ!」
とワクワク言う
一生は「正義……こうなったら烈は引かねぇから耐えるんだ………!似たもの親子は、んとに何処までも似てるんだよ!」とボヤく
堂嶋は「我が友烈の言う事なれば…何でも聞きますとも!ほんの少し貴史と竜馬が羨ましかったってのが本音だからな………それに近付けるなら何だってやるさ!」と言う
烈は「さぁ還るわよ!正義ちゃんは飛鳥井の会社か、飛鳥井の新しい家で良いかしら?それとも菩提寺が良いかしら?」と問い掛けた
「ならば会社で、雪哉の好きなカフェに一度行きたいから!」
「なら会社に繋げるわね!」
と言い神の道を開くと、皆で入り会社へと向かう
烈は一生に「家の側まで赤いので飛べば、家を知らせちゃうからね……」と謂う
皆で歩けば髑髏の沢山いる道だって……
耐えて歩けるモノだ
飛鳥井建設の宗右衛門の部屋に出ると、堂嶋はカフェに寄ると言い、秘書の西村に玄関まで送られ帰って行った
兄達は疲れて宗右衛門の部屋のソファーに座った
烈はもう限界なのか?うたた寝を始めた
兄達は烈をソファーに寝かせ、ソファーに掛けてある膝掛けを掛けてやった
宗右衛門の机には馬の調整のスケジュールと予算の書類が山の様に積上げてあった
その横に薬局の月間の経過報告書
飛鳥井建設のローテーション部署異動の成果報告
飛鳥井施工と設備の事業計画書等などが山積みにされていた
一生は馬の調整のスケジュールと予算の書類を手にして見た
新しい地に移り【横浜牧場】となった牧場の管理もしてくれているのか?と改めて想った
一生と慎一は共同で横浜牧場の経営者になっている
だが実際の実務は別の会社に移し管理運営をしてくれるからこそ、直向きに馬の育成に専念出来るのだ
細かい実務は顧問をしている康太と宗右衛門がやっているとは聞いた
真贋の印は押されているから、康太も関わり二人でやってくれているのだろう………
翔達も山積みの書類を手分けして片付けて行く
烈は突然起き上がると「あ、そうだ!カズ、これ、こんなに費用掛かるのかしら?」と書類の山の中から目当ての書類を探して一生に見せる
馬の餌の高騰は否めないが………このままだと七割が馬の餌に消えるのだ
「此れだと収支が合わなくなるのよ………考えないと駄目ね!」と言い書類を見せた
翔達もその書類を覗き込み
流生は「だね、このままじゃ維持は難しくなるわね!」と言った
翔が「此れは不正を調べるべきだね、不正がないなら、改善しないと詰むね!」と的確な事を言う
烈は「にーに、実践教育よ!これを調べ上げて改善お願いね!」と頼んだ
音弥は「了解!暦也使って良いかしら?」と問う
「良いわよ、ライン入れてくから、にーにの頼みは全力で聞いてって言っとくわ!」
流生は「馬の餌も値上げラッシュなのね………不正なかっとしたら、何か対策必要ね!」と謂う
兄弟は話し合い、動き始めた
烈は兄達に実践教育の場を与え、それを見守っていた
烈は「んじゃ帰ろうかしら!」と言うと兄達は頷いた
疲れ果てた凛と椋を気遣い、ヘロヘロのレイを一生は抱っこして会社を後にした
マンションへ戻ると着替えて、食堂へと向かう
其処はもう飛鳥井の家の応接間兼キッチンとなっていた
ワン達を屋上に連れて行き運動させ、日課を熟す
腹減り烈はソファーに座りうたた寝をしていた
その横でレイと凛と椋もうたた寝をする
康太と榊原が帰って来ても、四人は寝たままだった
榊原は着替えて来ると、夕飯の準備を慎一と共に始めた
料理が出来上がる頃 家族が帰って来た
皆 部屋へ行く前に食堂を覗く
この日は烈もちっこいのも寝ていて、玲香は
「大丈夫かえ?」と心配していた
着替えて来た康太が今日竜胆の完全覚醒の儀があった事を告げた
それは寝てても仕方ないか……と想う
玲香は部屋に戻るとスーツを脱ぎ捨て、ラフな普段着に着替えて食堂へと向かう
瑛太も清隆も京香も皆 着替えてやって来ると、烈とちっこいのを起こして夕飯を食べた
その日の烈はご飯を食べてるのか?寝てるのか?解らなくて、早々に部屋へと連れて行き、パジャマに着替えさせ寝かせた
ちっこいのも全員で部屋に連れて行き、パジャマに着替えさせて寝させる
飛鳥井の家は、やっと一つ大きな難問を乗り越え、未来へ繋ぐ事が出来た
その第一歩だった
飛鳥井の日常に大きな変化はなかったものの、やっと軌道に乗せた今、烈は精力的に動いていた
会社にも顔を出し、兄達の教育をする
そして夜は鷹司緑翠の邸宅にて、堂嶋正義の教育に余念がなかった
ビシバシ鍛えられダメ出しされる
頑張らねば!と踏ん張ると叱咤が飛ぶ
「そんな便秘みたいに踏ん張るんじゃないのよ!何か違うにょよ!あ~もぉ!!
身体が覚えて動けるまで精神修行させないと駄目かしら?堅さが抜けないわね!
泰然自若、自然と動ける精神と身体必要ね!」
烈がボヤくと緑翠も「だな、こんなに凝り固まっていたか?俺の元に通っていた頃はもっと柔軟な考えじゃなかったっけ?」と不思議がる
烈は「この未熟者めが!」と言い教育を始める
国会が閉会されたタイミングで堂嶋をイギリスのロードに預け、徹底的に叩き上げてと頼んだのは言うまでもなかった
イギリスへ行かせる時 烈は「ユキちゃんは倭の国でボクと仲良くお茶してるから、さぁ正義ちゃん一人で行くのよ!」と意地悪されたのは言うまでもない
堂嶋はイギリスへと飛び兵藤貴史と三木竜馬と共に厳しい実習を受ける日々を送る事となった
堂嶋が許された期間は短い
国会の審議がない間しかイギリスにいられないからだ
堂嶋はロードに叩き込まれ、寝る間も惜しんで【R&R】の意識改革の講義を受ける
メンバーは喜んで堂嶋を預かり、みっちり叩き込むと決めた
兵藤は「正義抗うな…抗うだけ無駄だからな、コイツ等は………リーダーが言うならば地球の裏側だって行っちまえる奴等だからな!」と言い聞かせる
夜になると堂嶋の教育が何処まで進んだかZoomで確かめられる
Zoomの間中会話は総て英語となる
時にはロードも交えてZoomで熱く語り合う
時々 烈は雪哉と一緒に仲良くお茶してる所を動画に撮り飴を与える
兵藤は、飴と鞭………上手く使ってるな!と感心した
兵藤は烈とラインで「何故、今、正義の教育なんだよ?」と問い掛けた
兵藤達の教育も残り僅かとなり、かなりの練度を上げての実践教育となって来た
その練度を上げた状態なのを知っていて、其処へ堂嶋正義を放り込んだのだ
既に政治家をしている者を改めて教育するって事で、ロードはめちゃくそ頑張って烈の期待に応えようとしてくれている
烈は『今だから正義ちゃんの意識改革と練度を上げた実践教育を叩き込む必要があるのよ!
長らく政治屋をやるとね、固定概念に凝り固まってしまうのね
現役の政治屋って自負もあるから、それは余計に視野を狭めるのよ
だから【今】叩き込み泰然自若な動きが出来る漢になる必要があるのよ!』と返す
竜馬は兵藤の携帯を覗き込み
「正義さん烈が何かしたっすね!
あの気……雰囲気……変わったよな?」と言う
兵藤も「お前も気付いた?俺も前の正義と違うと思っていたんだよ!
でも何処が?……と聞かれれば答えられねぇけど、明らかに前より違うよな?
そして今更の実践教育、もう政治屋になってる【今】敢えてやる意味を考えていたんだよ!」と言う
竜馬は「そりゃぁ………もぉ………内閣総理大臣 堂嶋正義、目指しているんすかね?」とボヤく
兵藤も「あと一歩足らねぇと康太は言ってたけど、あと一歩足らねぇ分の帳尻合わせしやがる気か?烈は………」と言う
「俺も負けてられないっす!
俺は烈の描く政治屋にならねばならないっす!」
「俺も負けてられるか!
俺は康太の果てへと逝かねぇとならねぇんだからな!」
燃える漢は更に精進を誓う
其れこそが狙いだと知らずに、心に火を点す
切磋琢磨して磨いて逝けば良い
康太は烈を視て、それを知り笑う
康太はあの日、堂嶋を魔界に呼んだ日
巻物を渡し、更なる教育を施す気でいるのを視ていた
堂嶋正義は母である、飛鳥井康太が育てた政治屋だから、止めるならば余計な事はしない気でいた
だから母に解りやすく視せていた
康太は笑って送り出してくれたから、叩き上げると決めたのだ
鉄は打てば打つ程に、その鋭さを増し強くなる
堂嶋正義と言う刃も叩いて叩いて叩き上げて、稀代の政治家、そして内閣総理大臣 堂嶋正義にする為に、其の布石を打ち磨き上げているのだ
総理になる男が兵藤や竜馬より劣っては立場がないから鍛えて磨き上げているのだ
康太の果てが悉く狂ったが……
其の果てを正し、更に練度を上げて繋いでくれているのだ
我が子の愛だった
母に贈る、我が子の愛だった
康太は我が子の愛を受け止め、送り出すのだった
厳しい戦場の地へと、送り出す
それが飛鳥井康太が出来る最大の愛だから……
康太は烈を視て「ならばお前も逝かねぇとな……」と言った
今世紀最大の喧嘩を売る為に…………
その日 烈はカフェにいた
康太と榊原がカフェを覗くと烈がいて、傍へ行くと雪哉がいて
康太は「珍しい取り合わせだな!」と言った
烈は「ユキちゃんはね、りゅーまがまだいた頃に知り合った子にゃのよ!
ボクとりゅーまが声を掛けて知り合い仲良くなったのよ!」と言う
雪哉は「飛鳥井の会社の近くにカフェが出来たと聞いたので来たのが始まりでした
一階の椅子に座り過ごすのが好きで来てました
そしたら烈君と竜馬君が声を掛けてくれて、それで知り合い仲良くなりました!」と笑顔で言う
烈は「母しゃん良い所に来たのよ!」とカメラを向けた
「おっ!それ正義に送るのか?」
「飴を与えておかないと、帰国されたら台無しにゃのよ!」
康太は笑い榊原と共に烈の携帯を手にすると、雪哉の肩を抱いて仲良く撮影
雪哉は凄く嬉しそうに笑っていた
烈は「我 逝く先に………お前がいればいい……か」とボヤく
雪哉は驚いた顔で烈を見た
康太は「その言葉、何処で知ったのよ?」と問い掛けた
「釈迦に一度 正義ちゃんの精神に入って貰ったのよ………その時に釈迦に聞いたのよ!
今後何があっても曲がらない政治屋になるなら、操られたら溜まったモノじゃないからね!
精神をプロテクターで護って貰ったのよ!」と説明
そして更に「ボクは母しゃんみたいに人の果ては視えないのよ!」とボヤいた
康太は「なら総理になるのも近くだな!」と笑い動画を撮っていた
烈はその動画をPCに取り込み送信
竜馬には別の動画を撮って送信
烈と雪哉が仲良くお茶して
雪哉が「竜ちゃん あと少しでまたお茶出来るね!待ってるね!」と言い手を振る動画だ
竜馬はその動画を見て『ズルいっす!』と拗ねて一言
兵藤は横にいて「え?お前達雪哉と知り合いなのかよ?」と驚いたのは言うまでもない
烈は「竜馬、チャンスは一度、抜かりなくお願いね!」と釘を差した
竜馬は『了解っす!俺も雪ちゃんとお茶したいっす!』と言う
「なら近い内にユキちゃん連れてイギリスに行くわ!そしたらお茶しようね!」
『頑張って烈の出した課題をコンプリートするっす!』
総ては果てへと繋がる為の布石を打つ為
明日の飛鳥井の礎になるため
我等は只管 その道を逝く
康太は大地に足を確りと着けて踏ん張る
もう揺らぎはしない
どんな衝戟でも、揺らいだりはしない
宗右衛門が繋げた果てへと逝く為に……歩き出す
3月も終わりに差し掛かる頃
【R&R】のオーディションを控えていて、イギリスへ逝く時が迫りつつ在った
烈は兄達を連れてイギリスへ行きたいと申し出た
康太は「え?翔達と共に行くのかよ?」と驚いた
烈は「アメリカも、にーに達と共に逝くわよ!
それが見聞を広め視野を広げ国際社会を知る勉強になるからね!」と言う
実践教育を日々施し鍛え上げている事は知っていた
本当ならば康太がやらねばならない事を、烈が日々鍛え上げ磨いてくれているのだ
康太は「翔達………中学入学やんか?入学式はやっぱし出られねぇか………」と苦難な今を想い言う
「入学式………やっぱし出るべきだから、其の前に逝くつもり……」
「先が見えねぇ現実だかんな………狙われねぇか心配だけど……出て大丈夫なのか?」
「その為のプーだからね、プーが頑張ってくれるわよ!その日はクーも共に行っても良いのよ
なんならトキを呼び寄せても良い位だからね!」
「其処まで………」
「他の子が危険に晒される可能性は排除しないと、飛鳥井の子が学園に来ると人が死ぬ
なんて噂が立ったらどうするのよ?」
「…………ならば、お前が入学式を無事に完遂させてやってくれ!
兄達が中等部に上がる今 お前も学園生活始めるんだろ?」
「そうね………今世紀最大の喧嘩売った後になるけどね……」
此れから怒涛の日々となるのだ
それを想定すれば学園生活は後回しにするしかない
【R&R】と共存すると烈は決めた以上は一蓮托生、【R&R】も揺らがない明日へ導かねばならないのだ!
「イギリスのオーディションの為に、だっけ?」
「そう、先行でイギリスでオーディションをやるのよ、その後に倭の国、次はアメリカでやるのよ
本当は香港でやりたかったけど、期間が足らないから省いたのよ!
ボクが家の為に停止ていた期間が長すぎたわ!」
「そのオーディションに兄達連れて逝くのかよ?」
「ちっこいのも逝くわよ!
大移動となるからサポートお願いします!」
「了解した!思いっ切りやって来い!」
「来月からしづちゃんが副社長の椅子に座るから!遼太郎達をサポートに付けて仕事して貰うわ!
しづちゃんは了承してくれたからね、忙しくなるわよ!
女性目線の建売住宅、目指そうかしら?」
「ヨニー©イギリスに清和下ったんだろ?
ならば期待出来る釘や螺子が出来るし、それは良い考えだな!
そして女性目線のマンションも売り出そうぜ!」
「えーちゃんの夢 北欧の材木で作られた暖かい部屋、目指しちゃう?母しゃん?」
「おっ!それ良いな、今の飛鳥井ならば夢じゃねぇ、現実に叶えられるかんな!
新しい戦略バンバン打ち立てて逝こうぜ!
果てへと繋ぐ為に【今】下地を作っとこうぜ!」
盛り上がり熱く語る
最近の康太は瞳を輝かせ物語る日々が多い
榊原の股間がそれは大変な事になるのに………
妻はそれさえ気づか付に夢を物語る
そして、それは夢じゃなく現実になる
連日 会議に上げられ広報宣伝部は、連日連夜 宣伝の戦略を考えさせられ多忙を極める
他の部署も活気に満ち溢れ、創り出す楽しさを噛み締めていた
3月終わりの週末 烈は兄達とちっこいのと、堂嶋雪哉を連れてイギリスへと向かった
イギリスに兄達を連れて行くとオリヴァーに伝えると「オブライエン家が完全サポートをするから!安心して来てね!」と言ってくれた
イギリスに到着するとオブライエン家のお迎えの車に乗る
大人数と謂う事でリムジンバスで執事がやって来た
「烈様 お迎えにあがりました!」と深々と頭を下げられ出迎えられる
烈はそれに笑顔で答えバスに乗り込む
リムジンバスの上には時計塔の魔術師が立っていた
完璧に護り通す姿勢が伺えられた
バスに乗り込むとオブライエン家へ招かれる
その夜はパーティーが開かれる予定だった
ロザリーの親族の皇族も招かれる予定だった
長い長い道程をリムジンバスが走る
オブライエン家の門を潜っても辿り着くには、歩いてだと30分は掛かる道程を走り、やっと玄関に辿り着く
玄関にはクリストファー・オブライエンが出迎えてくれた
烈の姿を見ると抱き上げてスリスリする
そして兄達もちっこいのも、雪哉も抱き締めて、家の中へ招き入れる
ただただ広い応接間へ通されるとメンバーと兵藤が来ていた
竜馬は烈を見掛けると飛び付いて抱き締めた
そして兄達とちっこいのと雪哉を抱き締め、再会を噛み締めた
応接間には堂嶋正義も招かれて座っていた
烈は「正義ちゃん、頑張ってるからユキちゃん連れて来てあげたわ!」と言い雪哉を堂嶋の傍へと逝かせる
ヘンリーは「今宵はパーティーだから、デービットがトンプソンのカクテルスーツを全員分用意してくれたよ!」と笑顔で言う
オリヴァーが「今宵は母様の縁者の方々も烈に逢いたいと参加されます!」と言う
烈はニャッと嗤った
竜馬は「コンプリートするからね!」と気合を入れた
ダイニングに通され、烈と兄達とちっこいのは軽食を取る
夜までは長いから軽く食事をして、与えられた部屋へと案内された
烈と兄達とちっこいのは一番広い部屋を与えられた
堂嶋と雪哉は戸浪達が一度使った部屋を与えられた
烈と兄達とちっこいのは与えられた部屋で寛いでいた
夕刻を少し回る頃 皆 バスルームに向かい軽く体を洗い身なりを整える
兄達はちっこいのを先に着替えさせていた
竜馬と兵藤が手伝いカクテルスーツに着替えさせて行く
宗右衛門は「社交界デビューであるから、皆 頑張るのじゃぞ!」と言う
皆 頷き 身なりを整えた
飛鳥井の男児たるもの、人より劣るマナーはしてはならない
それを叩き込まれて来た日々の実践教育の一環だった
今後 社交界デビューしたならば、こう言う窮屈な機会はどんどん増える
それを倭の国ではなくイギリスで初めてを迎えるのだから、かなりハードルは上げられている
オブライエン家のバンケットルームでは晩餐の準備で使用人は上へ下への大騒ぎとなっていた
ヘンリーは「総てはリーダーの想いの儘に……事が運ぶと良いね!総ての舞台は整っているからね!」とこっそり耳打ちする
「賽は投げられたのね、ならば後は見守るしかないわね!」
竜馬はうんうん!と頷いた
今宵 今世紀最大の出逢いをする
ヘンリーとオリヴァーはワクワクしていた
クリストファーもロザリーもワクワクしていた
そして始まる晩餐
この日、烈は予想外の出逢いをする事になった
それをまだ烈は知らなかった
兄達とちっこいのは堂々と異国の地にいても、見劣りしない程に輝いていた
【R&R】のリーダーの兄弟と言う事を聞き、興味を持った来賓達が話し掛けて来る
完璧なクィーンイングリッシュで返し、場を壊さない対応にロザリーの親族達も目を輝かせる
烈は「ヘンリー!」と言うとヘンリーは動き出す
ヘンリーが動くとロザリーとクリストファーも動き出す
兵藤はロザリーに手を捕まれ親族に逢わせる
第3王女のお子 成人を迎えられ皇室のお仕事をされてるエミリア・ドワーズ・バルボヤージュが退屈そうにパーティーに参列していた
だが次の瞬間 エミリアは一目見た瞬間 全身を雷で撃たれた様な衝戟を覚えた
瞳は完全にその人に注がれ………一瞬で恋に堕ちた
その日 その場には第1王女のお子 シャルロット・ボワージュ・フィリップスもお越しになられていた
シャルロットも一目見た瞬間 雷に撃たれた様な衝戟を受けた
瞳はその人だけを見て、完璧に恋に堕ちていた
ロザリーはドキドキしていた
さぁタカシを選びなさい!と祈っていた
エミリアは烈に走って駆け寄り、話し掛けた
クリストファーは「Oh!」と衝撃を受けていた
ロザリーも「えぇぇぇぇ!!」と仰け反る
シャルロットは兵藤の傍へ行き
「お話をしませんか?」と問い掛けた
兵藤は「はい、私で良ければ!」と卒なく熟す
エミリア王女は【R&R】の大ファンで、特にリーダーには興味を持っていた
…………それだけだった
「りゅーまとくっつかないかしら?」と烈は言う
竜馬は「俺はまだ修行中っすから!」と遠慮した
この日、この時、この出会いは大きかった
運命を掛けた出会いがある日だった
烈は「恋って難しいわね………人を愛したのは遥か昔過ぎて……忘れちゃった所為かしら?」とボヤく
エミリア王女は興奮して「今世紀最大の喧嘩、私も楽しみにしてます!」と言う
そして少し前のイベントを熱く語る
「セーシロー・サカキ夫妻は私の憧れです!」
「なら今度紹介するわ!」
「Oh!最高に嬉しいデース!」と喜ばれた
そして年の近い兄達と話をして盛り上がっていた
シャルロット王女は兵藤に恋する瞳を向けていた
兵藤は日頃烈から叩き込まれたレディーファーストの精神で対応する姿に王女は夢中になる
烈は少し予定は狂ったけど、よし!とガッツポーズをした
クリストファーとロザリー夫妻は、予定は大幅に狂ったが、よし!とガッツポーズをした
オリヴァーとヘンリー兄弟も、よし!とガッツポーズをした
シャルロット王女は積極的に兵藤を口説き始めた
兵藤は「身分違いですから!」と言う
だが王女は「ならばこんな立場など、すて去ってやるわよ!」と一歩も引かない
クリストファーは「相手は違ったけどタカシの相手が我が親族の中から出て良かったです!」と喜んでいた
第1王女も「異性に全く興味を示さなくて、このままだと貰い手がないかと諦めていたから、貰って貰えるならばクリスが選んだ相手だ、申し分はない!」と言う
その夜は大盛り上がりでクリストファー夫妻は来賓と喜びを分かち合った
ロザリー夫人の出産したお子のお披露目も兼ねて、盛り上がりまくったのは言うまでもない
「りゅーま、結婚まで気を抜いちゃ駄目よ!
美緒たんには許可貰ってるんだからね!」
「了解っす!でもお相手シャルロット王女で良いんすか?エミリア王女の筈じゃなかったんすか?」
「相手は解らなかったのよ!
ボクは未来を視る眼はないからね
でも今日 この日 この時 兵藤きゅんは永遠の相手を見つけるのよ!
まぁエミリア王女辺りが一番身分的に良いとクリスは言ってたけど………ね」
「第1王女のお子ですからね、嫁に貰えるか………解らないっすからね!」
「そこなのよね………愛は国境も身分も乗り越えにゃいかしら?」
「俺も愛はまだ知らないっすからね……
身を焦がす愛、一度はしたいっすね!
俺の親からは身を焦がす恋愛、感じられないんだよな……」
愛は確かにあるが、身を焦がす様な激しさは感じられなかった
「あぁ……繁ちゃんは愛した人いたからね………」
「それ俺知らない!」
「りゅーまは桜林に行ってないから知らないかもだけど、桜林は昔は完全全寮制だったのよ
思春期に男子寮に閉じ込められた子は同性に恋をするにょよ………三木も愛した人は同性だったからね………政治屋になるならば……斬り捨てなきゃならない愛だったにょよ!
でも繁ちゃんは、ちゃんと妻を愛しているわよ!
其処はちゃんと認めてあげるのよ!
燃える様な愛じゃないけど、二人の間にはちゃんと愛はあるのよ!
繁ちゃんはそんな器用な男じゃないでしょ?
思いを残したまま妻なんて愛せないわよ!
繁ちゃんはりゅーま達も愛しているし、妻も愛しているわよ!」
「………知ってるよ!そんな事は………そうか親父もそんな哀しい恋愛した事あるのか………」
「詳しい事は母しゃんしか知らないわ!
ボクはりゅーまの星を詠んだ時に繁ちゃんの想いを少しだけ詠んだだけだから………」
「良いさ、親父は親父の人生を歩んでいる
それで良い、俺は身を焦がす様な愛……したいな
出来なかったら、烈と結婚するさ!」
「ボク?ボクも今世は身を焦がす様な愛したいわよ!相手がりゅーまじゃ身は焦がれにゃいわよ!」
「ひでぇえな!」
「酷くにゃいわさ!」
笑顔で話す二人には愛以上のモノがある
メンバーは皆 そう想っている
兵藤はシャルロット王女に必死に食い下がられ、連絡先を交換した
相手に誠実になれば………の言葉が脳裏に過る
ブルーの瞳が………愛した人を呼び起こす
もしもこの人と結婚したら………レイに良く似た子が生まれたりして………
兵藤は笑っていた
だが身分違い過ぎる
堂嶋は烈に「良くも飴を武器にしてくれたな!」とボヤいた
烈は笑って「効果てきめんでしょ?」と笑う
良い面構えになって存在感を顕にしていた
烈はクリストファーに「この男は次代の内閣総理大臣になる男よ!」と紹介した
倭の国とより良い関係になりたい者は、堂嶋に話しかけに行く
堂嶋は「烈ぅ〜」とボヤくが聞いちゃいなかった
翔達とちっこいのは存在感をアピールして社交界デビューは成功した
オブライエン家に存在感バリバリの【R&R】のリーダーの兄弟がお披露目した
と謂う話はイギリス全土に轟き、烈の思惑は見事に成功した
唯 エミリア王女は【R&R】にご執心で只管応援しているのだった
もぉ愛は愛でもファンとしての愛だった
メンバーや烈とどうにかなりたい愛ではない……
エミリア王女の両親はガックシ気落ちしていた
倭の国の将来有望な青年との出会いは期待大だったのに………
愛よりファン愛に比重が傾いて、逃してしまった
第3王女は「【R&R】のサブでも良いわ、嫁に貰ってくれないかしら?」とボヤく
男勝りで勝ち気、恋に恋するより、好きなモノに囲まれて生きていたい
探究心盛大な王女は………まだまだ恋より楽しい日々が大切な今どきのレディだった
パーティーが終わるとヘンリーが堂嶋にマンションの鍵を渡した
「リーダーの部屋は兄弟やちっこいのに占拠されるし、竜馬の部屋は貴史が使ってるからね
僕の部屋を使うと良いよ!
どの道翌朝にはオブライエン家のメイドが来て掃除や洗濯してくれるからさ!」と言う
堂嶋はリムジンバスに乗りマンションへの還った
マンションに着くと竜馬がヘンリーの部屋に案内してやった
イギリス滞在中は堂嶋は竜馬の部屋を、兵藤と共に使っていた
だけど雪哉が一緒ならそうはいかない
早々に堂嶋を部屋に案内すると、烈の部屋に戻り、兄達と共にちっこちのの世話を焼いて寝かせた
烈は疲れ果てて早々に眠りに着いた
兵藤は竜馬に「どう言う事よ?」とあのパーティーが仕組まれている匂いがするから問い質した
竜馬は「リーダーに聞きなよ!」と言い烈の寝室に行き眠りに着く
兄達はベッドに入ると疲れてるのか眠りに落ちてしまった
レイも凛も椋も疲れて寝てしまい、兵藤も寝る事にした
翌朝 少し遅めに目が醒めると、皆起きていた
烈はトンプソンのスーツに身を包み支度をする
堂嶋には「ユキちゃんはイギリスとか来た事ないって言ってたから、この機会に色んな所を案内してあげるのよ!」と言い送り出し
兵藤には兄達とちっこいのと共にオーディション会場に来て控室で見届けてね!と頼んだ
烈と竜馬とメンバーは夏に行うイベントのオーディション会場へ入り、準備を始めた
兵藤は兄達とちっこいのを控室に連れて行き、オーディション風景をモニターで見る事にした
オーディション会場に入り、オーディションが始まる
有名人から無名の者まで書類審査を通った100名が今日と明日開かれるオーディションを受けるのだった
オリヴァーが今日は「50名だから!」と言う
ヘンリーが「オーディションに何と隼人が上がって来ている!
RODEOÑも最終審査通過したよ!」と報告
竜馬が「凄く対戦を楽しみにしていたStrong Hiのバンドは早々に辞退の声明を発表したよ
RODEOÑの勢いに負け気味なバンドだから、今の実力じゃ相手にさえして貰えないだろう!
だから今一度、這い上がるから、その時は対戦して下さい!ってアメリカの地から声明があった」と報告
「声明を出そうとも、引摺り出してやるのよ!
男なら一度吐いた唾を飲み込む事は無理だと解らせてやるわ!」
オーディションは視聴者投票も受付けて、TVをリアルタイムで見ている者は参加が出来る
オーディションの審査員は鳳城由香里以外は、総てが外国で活躍している者達が占めた
映画監督のリチャード・ハーマン
世界的に有名なプロデューサーのジョアン・バーグマン
オペラ歌手のシルビア・ジョーンズ
イギリスの俳優 ダグラス・ウィリアムズ
総合司会者のジョセフ・オルゴ
由香里を入れた計6名が審査に加わる
彼等は【R&R】と一度仕事したいと、オリヴァーを通してオファーがあり協力を願った
プロデューサーのジョアン・バーグマンと総合司会者のジョセフ・オルゴがテレビ局に掛け合い、審査員のギャラはテレビ局が持つと謂う異例の放送となった
2日掛けて選出する様子を総て放送する
その日とは別に特番として、オーディション前からの様子を流す事は決定していた
無論 会場入りする所からの風景が撮影されると謂う事は兵藤や兄達やちっこいのの顔が映し出される事となるのだ
逃げても隠れても護っても、アイツはやって来るならば、もう逃げ隠れするのは止めた
人を使い、人を弄び、駒のように動かされた人間の妨害は当然あるだろう!
だが審査員席に座る存在は皆 綺麗が考案したカメラの前を通り会場へと入るのだ
細工してあったとしたら?
それは直に解る様にして、此方も対策して迎え撃つ気でいた
電磁波と超音波を流しつつ、ゲートを潜らせ、オーディションを見学する観客を通す
自爆目的の客は此処で間引かれ会場入りさせる
エミリア王女がオーディションを特別席から見学したいと申し出たから、王室関係者は最善の手を尽くし、出席させる事にした
エミリア女王は2日間のオーディションを見学されると早々に公表された
エミリア女王が【R&R】のファンなのは、メディアでは有名な話題として上がっていた
そして始まるオーディション
一条隼人はこの日の為だけに鍛え上げ、剥き出しの闘志を燃やし参戦した
咲楽我空もオーディションに応募していた
皆と同じ条件で申し込み書類審査を通過して、動画選考を通過してやっとオーディションへ参加出来るのだ
だが今回のオーディションは、審査員がいて、其の人達の合格ラインに達せねば、イベントの舞台にも上がれない
またオーディションで満場一致で合格しても、【R&R】の感性に合わねば使われない可能性もある
だから【R&R】も参加して選出するのだった
厳しいプロの目が光る
その人達の目の前に現れるだけでも緊張する
烈達がそんな緊張感の中にいる頃
堂嶋と雪哉はオノボリさんツアーバリの観光スポット巡りをしていた
誰の目も気にせずに過ごせる時間は何者にも代え難い幸せな時間だった
セント・ポール大聖堂に足を伸ばして、神聖な地を見上げている雪哉に「また倭の国へ還れば一人にさせる……」と言った
雪哉は「大丈夫だよ!僕はそんなに弱くないよ!
烈君とお茶したり過ごす時間は本当に楽しいんだ
だから悔いなく勉強して来て下さい!」と告げた
堂嶋は「雪哉………」と名を呼んだ
我 逝く先に………お前がいればいい
その想いは今も心の中に強く根付き、二人の絆を強くしていた
ともだちにシェアしよう!