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第83話 苦難を超えて ❷

烈は入院中だが、倭の国のオーディションの選考に余念がなかった 時間がないのだ 本当ならこんな風に寝ている時間などないのだ 自分の運命は詠めない 詠めないから何があるのか?解らない が、まさかテレビ局で刺客に刺されるとは…… 烈の衝撃も大きかったけど、神野達から話を聞いた康太の衝撃も結構大きかった 康太は烈が入院した後に、一緒に行動していた神野達に、一体烈がどんな状態で刺されたのか?気になり、詳しく話を聞く事にした 神野達は康太に当日の出来事を詳しく話して聞かせた 会談を終えて還る時、烈と共にテレビ局の通路を歩くと、収録待ちの人なのか?何かの番組の観客なのか?解らないが、やけに人が多く固まっていた 「何か今日、人が多いのね?」 烈が言うと神野は「何かあるのかな?」と不思議がった 須賀は「テレビ局は何時も人が多いけど、今日は何かあるんですかね?何時もより多いね!」と言う それでもカフェでお茶でもしましょう!と言う柘植の言葉に………烈は嬉しそうに歩いていた そして人集りの横を通り過ぎようとしたら…突然襲われ刺された 後は何度も連日もTVのワイドショーで防犯カメラの映像を流している通りだと話した 一通り話を聞き康太は「ったく……何処までも…京極と同じかよ!」と吐き捨てた まるで当てつけの様に此処までもなぞられた様に、やられる現実…… 思い知らされている様で………腹立たしかった 烈がされている事は、康太がやられて来た事ばかりだった ならばテレビ局でも…………と想像は出来た筈だ 康太は何故止められなかった?と悔いた 何故………烈の果てが視えなかった? 榊原は康太を抱き締めた テレビは連日 テレビ局内にナイフを持った者が出入り出来る杜撰な管理体制を問題視されていた あの日 あの時 その場にいた者達は、撮影に何の関係もない者達だった 何故入れたのか? 手引した者はいるのか? 徹底的に洗われる事となった 家族は病院へは行けなかった 当然 神野達も病院へ顔を出さないでくれ!と言われてるから見舞いにすら行けずにいた だが神野、須賀、柘植のショックは凄く、責任を感じていた あの記者会見の場を作ったのは自分達なのだ……… そして……あの日、あの時、傍にいたのに………と言う想いが………自分達を責め……三人は衰弱し入院した………と小鳥遊から連絡が入った 相賀も烈がテレビ局で狙われたと聞き、過去に康太を目の前で銃弾に倒れさせてしまった後悔が………再燃して相賀も入院する程だと………小鳥遊は言う 神野達や、相賀は総合病院に入院したと小鳥遊から聞いた康太と榊原は4人の見舞いに向かった 4人は四人部屋に入院していた 病室へ見舞いに行くと酷く衰弱した四人の姿が目に飛び込んで来た 康太は驚き「どうしたんだよ?お前達の責任じゃねぇってば!」と言う程に悲惨な程に窶れていた 神野は康太を見ると「済まなかった………俺等があの場を用意しちまったから……」と謝罪した 須賀も「ケントは血だらけだった………烈も刺されて血だらけだった………なのに私は動けなかった………」と泣いた 柘植も「会談の後カフェに逝くつもりでいたので、私達も烈も無防備にいたので………何が起こったのか?理解出来なくて私も動けませんでした」と悔いて涙していた 康太は「オレ等家族も烈の見舞いには逝けねぇんだよ………烈も来るなと言うかんな………傍に逝く事さえ叶わねぇんだよ」と告げた 柘植は「ならば烈君は一人で入院しているのですか?」と問い掛けた 「あぁ、報道陣が病院の前にはワンサカいるかんな、そんな場に逝くなと警察からも通達が来てるんだよ! その報道陣の中に刺客がいたならば……次のターゲットは必ずや家族になる!と言われたかんな……」 あぁ………連日の報道は烈が入院してる病院の前から中継をしている……… かなりの報道陣が詰めかけているのだ その中に刺客が潜める環境ならば当たり前だな、と想う 神野は「烈は大丈夫なのか?」と問い掛けた 「来るな!と言える程には大丈夫なんだよ! 其れが言えねぇなら、家族は命懸けでも連日病室に駆け付けているかんな!」 その言葉を聞き、三人は安堵した 「あの日、あの時、烈だって先は詠めてはいなかった!まぁ星詠や占い師は己の運命は詠めねぇかんな、烈はまさか刺されるなんて思ってもいなかった、ケントは刺されこの病院に入院している クーは咄嗟に烈を庇ったが……同じく弾き飛ばされたらしいからな、頭にチップでも入った輩なのかも知れねぇ……でなくばケントやクーまで弾き飛ばすのは不可能だかんな!」 そう聞き言葉もなかった 神野は「クー、あの時、いたのかよ?」と今更ながらに問い掛けた 「姿消して傍にいたんだよ! だから咄嗟の事で出遅れたと言ってた! まぁテレビ局で刺客が送られているなんて誰も想像してねぇって! オレだって………烈を送り出しちゃった後悔はある 烈はイギリスでの怪我が完治した訳じゃねぇんな!皮膚の弱い烈に取ったら傷を治すのも一苦労なんだよ! それなのに…………怪我しちゃうから……オーディションは間に合わねぇかもな……… 【R&R】のメンバーで頑張って貰うしかねぇのが現状なんだよ! だから晟雅、直人、恭二も寝てる暇なんでねぇんだよ! 烈の変わりに三社共同事務所が主軸になって倭の国のオーディションを成功させてくれ! と、烈からの伝言だ!」 「え?烈……連絡取れるのですか?」 神野は驚いて問い掛けた 「あぁ入院した翌日からラインは出来てるぜ! ただ、通話は無理だな、喉を斬り付けられてるかんな、声を出しちゃいけないと謂われてる 些細な衝撃でも痛みが凄いらしくて、ラインを打つにも一苦労らしい……」 「そんな状態で………一人で入院って………不安じゃないんですか?」そう須賀は訴えた 「でもな家族は傍には行けねぇんだよ! それは警察もそう通告して来てるかんな、レイでさえ傍には行ってねぇんだよ!」 柘植は「レイちゃんは傍には逝けないのか………泣いてないですか?……」と心配した 康太は「まぁ淋しくて泣いてるけど、家族や兄達も想いは同じだ!どうも出来ねぇんだよ! それよりも、烈がさっさと治してオーディションの準備をしやがれ!との事だから、頑張って治せ!」と謂う 神野は泣きながら「治すよ!治す………」と言った 須賀も「私も寝てなんかいられません!直ぐに退院します!」と言い寝間着を脱ごうとするから、榊原は慌てて止め 「体が治ってからで大丈夫です! 烈は『責任を感じる暇になんかにゃいのよ! オーディション成功させにゃきゃ! 寝る暇にゃんかない位に動いて貰わなきゃ!』と言ってましたからね 本当に忙しくなるので、これからはガス欠や体調不良ならば即座に久遠医師に点滴を頼むとします!」と冷徹に嗤った 神野と須賀と柘植は何度も頷いた 康太は相賀にも目を向け 「相賀、おめぇもあんまし長く入院して寝てたらボケるわよ!と烈が言ってたから早く体調整えて退院しやがれ!」と言った 相賀はボケるわよ!と烈に言われ相談役となり、忙しく働く【今】を貰っていたから…… 涙を浮かべて「あぁ………そうだったね、安徽したらボケるって烈ならば尻を蹴り飛ばすからね 私も寝てる暇に頑張らねば!! エージェント契約も成立させねばならなかったからね………」と言い笑った 康太はポケットから白い猫のぬいぐるみを取り出すと「此れでどうよ?」と問い掛けた 白い猫のぬいぐるみはヌーっと大きくなると 「あぁ、やる気になってくれたなら、烈も満足するだろうさ! 本当になこんなに窶れちまって、齧ってやろうかと思ったぜ!」と言った 4人はクーの姿に「「「「クー!」」」」と名を呼んだ クーは二本足で歩きながら神野達に近付くと、おでこをペシッと叩いて歩いた 肉球がペシッとおでこにパンチする 「点滴打つ暇に書類審査しやがれ!」とボヤく 須賀は「烈の傍を離れて大丈夫なの?」と問い掛けた 「あぁ烈の病室にはトキが来てくれてるからな、その間だけ行って来て肉球パンチお願いね!と謂われてるんだよ! で、丁度タイミング良く、烈の両親がお前達の病院に見舞いに行くと聞いたから一緒に連れて行ってくれ!と頼んだんだよ!」 肉球パンチされた四人の瞳には輝きが取り戻されていた 柘植は「今回私達は久遠先生の所へ診察に行ったんですが、不具合が出て病院は閉院中だったので、義泰先生が私達を総合病院へ連れて来てくれたのです!」と事情を話した 康太は「機械系統の不具合だったらしくてな、ケントでさえ総合病院に来てるんだよ! ケントは大部屋で入院中だ!でも結構治りが早くて、退院間近だ!」と説明した 四人は烈の護衛のケントでさえ総合病院なんだと痛感する ケントに逢って来た康太と榊原は、ケントの状態を心配していた たがケントは退院間近だと言う え?嘘………血塗れで烈を庇いかなり切り裂かれたと聞いたのに? と康太と榊原は驚いた ケントは「俺は聖鳥 朱鷺とやらに輸血されているので、その後からは怪我しても異様に早く治癒するのです! ぶっちゃけ腸が飛び出す怪我したとしても、自己修復してるのか?医者が首を傾げる程の速さで治癒して逝くのです! もぉね……人間の領域超えちゃったみたいで……… 烈なら凄い!超合金になったの?と謂われそうです………」と力なく笑いを漏らし言う 康太と榊原は言葉もなかった ケントは寝間着を捲り傷跡を見せた 縫ったのか盛り上がった皮膚は薄っすら赤いが…………消えかかっていた 想わず康太は「え?嘘…………」と叫びそうになった 榊原は「人の世終えても……烈と共に逝く存在になりそうですね………閻魔ならば喜んでスカウトしそうです!」とボヤく 大部屋だから、小声でひっそりと言うのだけど……… ケントは「俺の事は心配無用です!退院したならば烈の所へ行きます!」と言った 榊原は「それは無理ですね、烈は当分退院出来ませんから………親でさえ近付けませんから………」と言う ケントはそんな警戒態勢の中入院しているのか……と言葉もなかった 康太と榊原はケントの面会を先にさせ、無事を確かめてから神野達の面会に来た………と言う理由だった 康太は「早く体調を整えてくれ!でねぇと烈の果てが狂うかんな!倭の国のオーディションは絶対に成功させねぇとならねぇかんな!」と言う 榊原も「烈の名代を務め上げて貰わねばならないので、もうこの先は寝てられないと想いなさい! もう十分寝ましたからね、後は馬車馬の様に働かねばなりません! そして柘植さん、白石真紀医師とは出逢われましたか?」と言い、柘植に問い掛けた 柘植はあの恐ろしい女医を思い浮かべ 「あの方は久遠先生の紹介で健康診断して貰ってますから、かなり前から出逢ってますよ!」 柘植はボヤいた 榊原は極上の笑みを浮かべ 「貴方の妻となるべく人なので『そろそろ接近して子を作って欲しいにょよね!』と烈がボヤいてましたので、早速口説いて孕ませて下さい!」 と無常にも言い捨てた 柘植は「嘘………私は………優しい方が……」と言うが……… 聞いちゃいない康太が 「お前は優しいだけの女じゃ堕落するんだよ! 過去の恋愛を思い浮かべてみろよ! 心底惚れた女に貢いで言いなりになり、ATMにされただけやんか!  烈はお前の星を詠んだ時に『正しい道に配置せねば常軌を逸脱する運命を持ってるのね………』と嘆いていた だから敢えて引退セレモニーに引き摺り出し、観衆の目に晒し事務所社長と言う責任の重さと自覚を植え込んだんだよ! そして次は嫁となる存在、嫁にするならお前の管理をさせねばならない! それにはATMにされない自立した経済力を持つ女性でなくてはねらない! そしてお前の運命の盤上に上げたのが白石真紀医師なんだよ! さぁ必死こいて口説き落とせよ! 向こうはお前が相手していた女じゃねぇぞ!  お前は手頃で愚かなバカ女しか相手にして来なかったかんな! 才媛で経済力も持つ存在は相手にして来なかったろ?だがそれを続ければ、お前は潰れるしかねぇんだよ! 此処がお前の分岐点だ! 共に生きて、共に闘ってくれるパートナーを手に出来るか? 軽薄な男のまま、それなりの仕事して、廃れ行く事務所の経営して人生を終える それなりの人生を送るか? 己の手で共に闘ってくれるパートナーを手に入れるか?の分岐点なんだよ!」 と告げた それなり仕事して、廃れ行く事務所の経営をして人生を終える………それなりの人生……… 康太に出逢う前の自分はクソだった 天狗になり人を蹴落としてトップに立とうとした それで堕ちて………藻掻き苦しみ這い上がって来た だが………芸能事務所の仕事は普通のサラリーマンよりは給料は良かったから……… 相手を満足させるのが恋愛だとでも言う様に……貢いで利用されポイ捨てされて来た そんな人生をこの先も送るのか? それなりの人生 人に良いように利用されATMにされて生きる人生で良いのか? 嫌!嫌だ!!そんなのはもう嫌だ!! 柘植は「共に闘ってくれるパートナーを絶対に手に入れます!」と宣言した 康太は笑って「我が子が苦戦してるかんな! 少しだけ背中を押してやらねば、報われねぇもんな! 愚鈍なお前では出会っていても、何時までも避けて通りそうだから、現実を突き付けてやんたんだよ!でねぇと烈の描く果てが狂う! お前等【R&R】のビルに事務所貰うんだろ? ならば下らない低俗なスキャンダルを事務所の社長が起こせばどうなるか?解るよな? お前のネームバリューは金になるからな! 須賀の事務所の我空と同じ目に遭いたくなければ、覚悟を決めろよ! オレは我が子の逝く果てが歪むのはぜってぇに許さねぇ! お前等は烈と共に逝く気ならば、己の身辺は綺麗にしとけよ! でねぇと……お前は再び相賀を裏切り……今度は死なせるって事を自覚して生きて逝けよ!」 と、かなりキツい言葉を投げ掛けた 柘植は康太の言葉を胸に刻んた 己の人生は一度失敗した 相賀をその時裏切り傷付けた そんな自分に再生の道を与えてくれた相賀と康太を……再び裏切る事なんか絶対にしないと決めていた だが安易な恋愛をしていけば……何時か騙され事務所の名を汚す事になる日が来ると言うのか……… そんな日は絶対に在ってはならない! 烈に見捨てられ見向きもされなくなれば…… 本当にEffort芸能事務所は終わるしかない 果てを結んでくれた烈を裏切る? そんな日は絶対に在ってはならないのだ! 柘植はギリッと奥歯を噛み締め 「その様な日は絶対に在ってはなりません! 私はもっと自覚を持ちパートナーを手に入れたいと思います!」と言った 榊原は「貴方は多分苦手な方だと想います 言葉は久遠先生と同じキツいですし、的確な事を言う姿勢は女版久遠譲です でもあの方は絶対に間違った事は言いません! 烈と同じで常に最適解を考え、冷静に判断を下させる方です! そして何より患者さんの目線で対応されるので、人気は高いです! 嫁に!とプロポーズされる方は後を絶たない  そして息子の嫁に!と申される親御さんも後を絶たない程の人気の医師ですからね!」とニャッと嗤う 貴方で手に入られますかね? と謂われてるみたいで、柘植の胸に闘志の炎が燃え上がる 康太は「オレは我が子がめちゃくそ可愛いんだよ!我が子の描く果てが狂うのがこの世で一番許せねぇんだよ! それは烈の兄達にしても、ちっこいのにしても、同じ気持ちだし、アイツ等はオレの宝物だかんな!許せねぇんだよ!」と言う 立派な母ちゃんだった 母なれば、我が子の描く果てが狂うのが一番許せないのだ  だから解らせて無理矢理でも盤上に上げてやる! 盤上に上がれば、後は運命の流れに乗り果てへと逝くだろうから、まずは盤上に蹴り飛ばしてやるのだ 康太は総てを終えるとニコニコと笑っていた 神野は「本当に烈とソックリだな……」とボヤく 血が繋がっていないのが嘘の様に、烈と康太は良く似ている 榊原は「そうでしょ?本当に烈と康太は似たもの親子なんですよ!」と言う 須賀は「時々烈といても康太といる様な感覚がします……え?康太??となる時あります」と笑って言う 神野は「ボク困ってるの!にはデジャヴ覚えましたからね!」と笑って言う 相賀は「烈は可愛い、まるで孫の様に儂に寄り添っていてくれる………」と涙ながらに言う 康太は「って事で早く治せよ!」と言い榊原と共に仲良く帰って行った その3日後、ケントと神野達は退院した 真矢と清四郎は今、飛鳥井の家族と共に暮らしているから、烈の病院へ駆けつけられなくても、何とか自分を保てていた プーは音弥と流生達以外にも力の使い方、式神の飛ばし方、術の放ち方等を日々訓練していた 兄達は生傷が耐えない日々を送っていた その訓練はちっこちのにも向けられ、ちっこちのも練度の高い訓練をする様になっていた そんな頃 飛鳥井神威が菩提寺にやって来た 神威はレイを見ると抱き上げて「元気だったか?レイ!」と問い掛ける 「げんきらったよ!」とレイは答えた 神威は一頻りレイを撫で、凛と椋も撫でた そして兄達も撫でて「あんまし頑張り過ぎるなよ!プーも、そんなに倍速で逝こうとするな! と烈からの伝言じゃよ!」と言う プーは「なら怒られてしまうから、少し速度を落とすとするわ!」と言った 神威はそんなプーを撫でて「儀式の間に逝くぞ!」と言った 翔は「全員ですか?」と問い掛けた 「そうだ、全員儀式の間に逝くんだよ!」と言った 強引に皆を儀式の間に連れて逝く 音弥は「母さんに言ってありますか?」と問い掛けた 「当たり前やんか!レイだけなら謂わねぇけど、お前等全員なら謂わねぇと、おめぇの母親に殴り飛ばされるやんか!」とボヤいた 儀式の間に入ると神威は呪文を唱えた 神威は「んじゃ、逝くとするぜ!」と嗤った 神威が呪文を唱えると辺りは真っ暗になった そんな真っ暗の中歩いて行く 神威は「クロス、少し明るくしてやれよ!」と言うとクロスは神威のスーツのポケットから顔を出し光り玉を放った すると辺りは少しだけ明るくなり「どうです?僕の力だと此れで限界です!」と言った 太陽は「クロス!久し振り!」と言い神威のポケットからクロスを貰い受けると掌の上に乗せた レイは「くろちゅ!」と呼ぶとクロスは「お久し振りです!皆さん!」と言った 少しだけ明るくなると、不安はなくなり歩きます  神威は「おー!後少しだぜ!」と言うと皆頑張った そして真っ暗の空間を抜けると………其処は荒廃して何も無い場所だった ポツンと寂れた屋敷があり、その裏に立派な屋敷があり、倉庫まである 神威はその立派な屋敷の方へ向かって歩いて行った そして屋敷のドアを開けると「連れて来てやったぞ!」と言った 神威が歩いて逝く先に烈がソファーに座っていた レイは泣きながら駆け寄り抱き着いた 兄達も凛も椋も駆け寄り抱き着いた 烈は掠れた声で「あんまし、まだ話せないにょよ!」と言う 烈の横にはトキがいて、クーもいた そして素戔嗚尊と閻魔と建御雷神と弥勒がいた そして何故か康太と榊原もいた 康太は「お疲れ様だったな神威!」と労い言う 神威は「儂等は此処で好き勝手してる故、主等は家族の対面すると良い!」と笑ってソファーのある部屋の隣、人の世で言うならばダイニングキッチンみたいな所へ逝く 机と椅子が置いてあるから其処に座って、酒を飲みつつ盛り上がる 翔は泣きながら「烈………無事で良かった!」と言う 流生も「逢えないから余計心配だったのよ!」と訴え 音弥は何も言わず、そっと烈を抱き締めた 烈は今も痛々しく喉に包帯を巻いていた 顔の傷は治っても薄っすら赤く残っていた 大空は「もう傷は大丈夫なの?」と問い掛けた 烈は百均で売ってるボードを取り出すと 「天ちゃんが今回の怪我を知って漢方増やしてくれてるから、少しずつ治ってるわ!」と書いた 太陽は「まだ話せないの?」と心配してい聞く 烈はボードの字を消すと 「まだ沢山は話せないのよ 話せば激痛が襲って来るからね!」と書いた 康太はそれを見て「鎖骨まで斬り付けられていたかんな!骨はそんなに簡単には治らねぇんだよ 況してや烈はイギリスで受けたボーガンの矢の怪我さえ完治してなかったからな……… まだ話すのは無理だけど、皆に逢いたいと言ってたかんな、だから神威に頼んだんだよ!」と説明した 烈は兄達やちっこいのに逢えてニコニコ笑っていた 翔は「横浜牧場の件、キッチリとカタを取ったから!」と説明 流生は「裁判しても負けないと神威さんに太鼓判貰ってるからね!」と話す 音弥は「会社の方も烈が刺された事により不安がっていたけど、僕達が顔を出して何とか不安取り除いているから!」と会社の事を話す 太陽は「流生と音弥の修行の練度も上がって来たからね、今度は僕達も引っくるめて修行に入るわ!」と言う 大空は烈のカニパンとウィダインゼリーをサコッシュから取り出し、烈に渡した 烈は笑顔でそれを受け取り、カニパンを食べ始めた 「かなにー!」掠れた声で烈が呼ぶ 「ウィダインゼリー飲めるかな?」 と心配そう聞くと烈はお口を大きく開けて、ウィダインゼリーを絞って見せた 吸わなくても押せば出る! プーとクーとトキは呑兵衛の傍に行き飲んでいた 烈はボードに「傷は開かないから外出許可出たのよ!」と書いてみせた 兄達はほっと安堵した 竜胆は「連日連夜、お前の入院する病院が映し出されていた!俺等はテレビを見て……無事ているのか?不安しかなかった……」と言う 烈は「あの病院にはいないわよ! ボクはね、誰も知らない場所に搬送され入院させられたから、母しゃん達だって来られなかったわ!」と伝えた 飛鳥井記念病院にいると知れば来ようとするだろう 兄達が動けば狙われてしまうから、教える訳にはいかないのだ! 竜胆は「そうか……まだ退院無理なのか?」と問う 「まだ無理ね、傷が治らないと退院しても迷惑になるからね、退院する方がリスクとなるのよ!」 と書く  流生は「待ってるからね!だけど………こうして時々会ってくれたなら嬉しいのよね………」と本音を吐露する 「長引くならまた此処に来て皆で楽しい時間送りましょうね!」 兄達は「うん!そうだね!」と泣きながら頷いた その日は時間を忘れて楽しく過ごした 本当に時間を忘れた様に楽しい時間だった だが…………飛鳥井の家に還ると………何と1日半過ぎてた 時間の流れが違うから……ほんの少しで数日の違いが出て来ちゃうんだと………思い知る だけど弟に逢えて良かった 兄達はそう思っていた ちっこいのも烈に逢えて良かった!と思っていた 烈が病院に運ばれて半月過ぎる頃 飛鳥井烈君が極秘裏に退院していた と言うニュースが流れた 静養する為に家には帰らず、自衛隊の基地にある保養施設で過ごす事になった……と報道された コメンテーターは「其処まで警戒しないと身体も休められないんでしょうね……」と異常なこの現状が鎮火しない限りは警戒は怠れないんでしょうね………と司会者は呟いた 烈はその間 魔界で過ごしていた 閻魔庁の完成を見届けて、人の世へ還る予定だった 人の世では、宗右衛門が持っているビルの一つで過ごすと決めていた そのビルは飛鳥井の人間でさえ知らない物件だった 其処で誰にも邪魔されずに片付けねばならない仕事が山の様にあるのだ! そして迎えるオーディション3日前 【R&R】のメンバーは倭の国へ来日して来た 自衛隊の特殊部隊が【R&R】の警護に当たる オブライエン家の御子息に何かあったら国際情勢に亀裂が走る!からだった 【R&R】のメンバーの来日は絶対に世間には知らせてはならない だが着々と倭の国会場の準備がされて逝く 今回は入場者は総て排除して、大きなホールでのオーディションとなった 倭の国のオーディションは1日 10人を選出してのオーディションとなる 合格者は0かも知れないし、全員かも知れない だが皆平等で同じ条件でのオーディションとなる と告知された そして【R&R】のリーダーがオーディションに出るのか?と騒がれたが……… リーダーの不参加は早々に発表された まだ喋る事さえままならない状態である事を告げられ、烈の怪我の重さを物語っていた そんな頃 世界の殺し屋に 【飛鳥井烈の殺しを成功させたら報奨金は1000万円!我こそはと謂う殺し屋は参戦されよ!】 と謂う殺し屋なるものに、大々的な依頼が掛けられた事を告げられた それを知ったクリストファー・オブライエンは激怒した だがオーディション会場にも会社にも、飛鳥井烈は姿を現さない そればかりか……この世の何処にも存在していないんじゃないか? と騒がれていた ならば誘き出すしかない とばかりに飛鳥井建設の正面玄関 入って直ぐの受付け嬢を狙い狙撃 だが防弾ガラスに変えられた窓ガラスは銃弾を弾き返していた そればかりか………狙い撃ちした瞬間 ラグナロクの戦士に瞬殺される事となった 世界の殺し屋がこぞって倭の国へ来日して来て、銃口を向けるが……… ターゲットを捉えられないばかりか? 銃口を向けた殺し屋は……即座にラグナロクの戦士に狙い撃ちされるのだ ならば会社にいるであろう家族を報復に…………と狙う が、飛鳥井建設の社長室も会長室も相談役の部屋も、総てのガラスが防弾ガラスに変えられていた ならば社員を………と社員を狙う だが……どの窓も防弾ガラスに変えられていて、狙い撃ちは無理だった ならば出勤して来る相談役や会長、社長を、と銃口は狙う だが幾ら待とうか、会社に出勤して来なかった 殺し屋は焦る ターゲットを仕留められなきゃ、報奨金はGET出来ないのだ そんな殺し屋の焦りを知ってか?知らずか? 飛鳥井建設 社長室で康太は印をポンポン押しつつ 「殺し屋までソックリ同じか………でも今回は相手が悪いよな?土地転がしが得意な烈相手じゃ居場所さえ解らずじまいだろうな…」とボヤいていた 榊原は仕事の手を止め 「本当に腹立たしいです! 僕の子が殺しのターゲットにされ、狙われるだなんて冗談じゃない!」と怒りを顕にした こうなる日を予知していたのか?と言いたくなる程に、用意周到な烈の根回しにより、上の道を歩かずとも、地下の通路から会社へと繋がる道を通り、社内へと通勤していた 康太は「腕利きの殺し屋が束になっても、ラグナロクの戦士相手じゃ手も歯も立たねぇよな!」と嗤い言う 「賢い殺し屋は早々に戦線離脱したのでしょ?」 戦線離脱した殺し屋は『今回のターゲットは少し違う、ずっと違和感を感じていた 我等が相手にしているターゲットは………神憑り過ぎる! こんな相手に銃口を向けた瞬間、此方が命を落とす結果は見えている! よって今回の仕事は、辞退する そして今後は我等殺し屋を名乗る者達は、絶対に飛鳥井と名がつく者を相手にしない! それを此処に宣誓する!』と表明をして倭の国から撤退した 唐沢達は出国するのであれば、今回に限り見過ごす事にした と康太に報告があった だがまだ残った殺し屋が血眼になり烈を探しているのだと言う まぁそれもターゲットが見つからないのならば………手立てはないだろう 倭の国のオーディションは、そんな物騒な雰囲気を孕み始められる事になる 来日して来た竜馬と【R&R】のメンバーは政府が用意したホテルに缶詰となっていた 殺し屋は烈関係の者を殺せば半額は貰える、と早々にターゲット変更がなされた事により、ターゲットを【R&R】のメンバーと三木竜馬に搾っていた だが来日した筈の【R&R】の姿は……何処にもなく 空港に到着すると同時に、政府要人の警備をしている者達により隠され近づく事さえ出来ない敷地に移されていた 近隣のビルから狙撃を狙うが、近隣のビルは既に屋上は閉鎖されており、警官が見回りする程に警戒態勢は敷かれていた それでも………殺し屋のプライドに掛けて……… 会社から出て来るイベントスタッフを狙い撃ちをしよえとする ………が、即座にラグナロクの戦士がソイツの銃口がトリガーを引く前にトドメを指した 数を減らしつつある殺し屋は、キッパリ今回は仕事を放棄して帰国しようとした が、殺し屋を見逃すのは最初の一度だけ! 居座っていた殺し屋は唐沢達がキッチリと捕まえて、その殺し屋の国で刑に服させる為に連絡を入れ、強制送還させたのは言う迄も無い 【R&R】のオーディションが始まる リーダーは声がまだ出ないからチャットでの参戦となる 審査員は映画監督の村松康三  新進気鋭カメラマン神城きらら  三社合同事務所 神野晟雅 須賀直人 柘植恭二 そして絶対に人前には出ない阿賀屋蒼佑氏が初参戦となる 阿賀屋氏は「江戸の世からの旧知の友人 飛鳥井宗右衛門殿が今回暴漢に襲われ入院したと聞き、何か力になれないか?と考えて今回の参戦となりました!」と表明した もっと老人が現れるかと思ったら………まだ若い二十代の青年が現れたから……… 芸能関係者はビックリしていた 絶対に表に出ない存在 芸道を極め 芸道に生きる者を支え 芸能界と謂う世界で重鎮とされるべき存在 名を受け継がれ今も尚 芸能界でその名を知らぬ者はいない存在 名は…………知ってても、その人、本人は絶対に知らない存在 それが出て来たのだ………皆 唖然となり言葉さえ出て来なかった そして稀代の色男は今も健在で、俳優顔負けのイケメンだから余計言葉を失っていた そんな緊張が広がる中 倭の国オーディションは始められた 竜馬は烈に逢い無事を確かめられたから、落ち着いてオーディションに挑めていた 【R&R】のメンバーは警備体制が整い外部を遮断したホテルに連れて来られると既に烈がいて、その夜コッソリ飛鳥井の家へとメンバーを連れて神の道を通り向かった そして鍋で饗され大満足のメンバー達だった オーディション会場には厳重な警備がなされていた そしてオーディション会場にはラグナロクの戦士が一個中隊で備えているから、時空を超えて狙って来ても即座に返り討ちにされる事となる 幾重にも警戒したトラップを張り巡らし、行われたオーディションは台湾から応募した青年に注目が浴びせられた 竜馬はインカムで「彼どう?」と問い掛ける 返事は眼の前のタブレットに文字として返される 『そうね、歌って貰えないかしら?』 そう返されると竜馬は「宸睿(チェンルイ)さん、何か歌えますか?」と問い質した 宸睿と呼ばれた青年はアカペラで絆を歌い始めた 喋る声とは全く違う声域で歌われる歌は圧巻と言える歌だった 烈は『彼は合格に入れといて!』と竜馬に言う 竜馬は「了解っす!」と返し合格とメンバーに送る メンバーはそれに異論はなく頷いた そしてもう一人光る存在がいた 歌舞伎役者の清家静流だった 彼は歌舞伎の世界に身を置くのに、ダンサー並みの俊敏さで踊り歌いアピールしていた 5分の持ち時間が終わると烈は竜馬に 『ボクの声、清家に聞かせられる様にして!』と頼んだ 竜馬は「了解っす!」と言い烈のマイクをオンにした 烈は宗右衛門の声で『清家静流、貴方は歌舞伎の世界では知らない者はいない程の実力も家も持つ! なのに今、何故、このオーディションに参加されるのだ!』と問い掛けた 清家は「名がどうした?家がどうした? 僕は己の挑戦出来る可能性に掛けたいと想い参加した! それだけです!忖度や配慮なしで僕を見て評価して下さい!」と返した 宗右衛門は「我等【R&R】が忖度や配慮をするとお思いか? 我等【R&R】は何者にも囚われない!をコンセプトにしているパフォーマンス集団である! どんなに頼まれようとも我等は動かぬ! 況してや我が母の学友だとて配慮などせぬよ! そんな事は期待せずともよい! 合否はメンバーとコンセプトを伝えてある審査員とで出す!其処に忖度など存在はせぬよ!」とズバッと切り捨てる言い方をした 清家は笑って「なら良かった!」と言った メンバーはチャットで「彼はネームバリューある人なの?」と問い掛けた 烈は『歌舞伎と謂う倭の国の文化的な世界に生きる歌舞伎役者なのよ、彼は!』と教える メンバーは納得した 烈は『ネームバリュー必要ないからね!我等の感性に合うか?合わないか?だからね!』と釘を刺す 竜馬は「解ってるっす!リーダー!我等がそんなネームバリューで選ぶなんて事は有り得ないっすから!」と笑い飛ばす 10人全員のパフォーマンスが終わると審査に入った 阿賀屋蒼佑氏はやはり芸道の厳しい目を持つ存在と謂う事で辛口な採点だった が、宸睿(チェンルイ)と清家静流に合格点を着けていた 阿賀屋は「烈、お前の感性にドンピシャだろ? 俺の目に狂いはねぇ筈だ!」と言った 烈は『真央たん凄いわよ!』と言った 阿賀屋は「今回は本当に真矢さんと清四郎さん使わねぇんだな!」と問い掛けた 『…………今回は……使えないのよ………』 「それって猿芸だの抜かしてるヤツとかの言い分聞いてるからか? 俺は使えばいいと想うぜ! 後何十年も舞台に立てねぇんだし、ドンドン孫ならば祖父母を表舞台に立たせてやれよ!」 『真央たん……』 「変わる事は良い事だ! だが絶対に変わらねぇ思いもある! 歌舞伎の世界もそうだ、柵や仕来りがある世界にいるってのは結構息苦しい世界なんだよ! だから歌舞伎役者って奴が俳優したり他の役に挑戦したりするんだよ! 己の力がどの位通用するのか?知りたくなるんだよ! 挑戦するのは良い、だけどお前達にとって大切にしたい存在は誰なんだよ? 丁度清家が出るなら祖父母出してやれよ! アメリカのオーディションに併せて出してやれよ 合否は審査員がするからチャンス与えてやれよ!」 『真央たん………ありがとう……… 表舞台に出ない存在なのに……出てくれてありがとう!そしてボクの背中を押してくれてありがとう!』 「良いって事よ!礼は巨大パフェ食いに連れて行って奢ってくれればOKだからな!」 『奢るわよ!店に頼んで超巨大パフェ頼むわ! それをメンバーとで飽きる程食べるにょよ!』 と烈は笑って言う 審査結果を発表する 司会者の久家龍二が発表の紙を受け取り開く 「それでは合格者の名を呼びます! まずは宸睿(チェンルイ)さん、そして清家静流さん、以上2名の合格者です! 次はアメリカ会場でのオーディションとなります そしてアメリカで開かれるイベントへ繋がる どんなイベントになるか、今から楽しみで仕方ありません! 残念だった方々もこのオーディションに参加して、目に止まったならばチャンスはまだまだあります!頑張って下さい! 以上が【R&R】イベント オーディションでした!」 と終わりを告げた 烈は真矢と清四郎に「アメリカのオーディションに応募してくれないかしら? オーディションだから合格出来るか?不合格になるかは?解らないけど、ボクの祖父母ならば……… どんな苦難も乗り越えてボクの眼の前に現れてくれると想うのよ! アメリカのオーディション会場で待ってるわよ!」とラインした 真矢と清四郎はそのラインを見て……燃えた 即座に柘植にラインして「私と清四郎をアメリカのオーディションに応募出来る様になさい!」と半ば脅しで強気でラインして来た オーディションを終え、控室に戻って来た柘植は笑って烈に「これ見てよ!」と言い真矢からのラインを見せた 烈は笑って「流石ボクのばぁたんなのよ!」と言った その夜は政府が用意した完全警備体制の敷かれたホテルで烈は阿賀屋蒼佑と【R&R】のメンバーと竜馬と食事をしていた 阿賀屋は「ホテルの飯って味気ねぇよな!神威とガード下で飲んでる方がマシだな………」とボヤいた 烈は「仕方ないなぁ………なら真央たん飛鳥井の家で良いかしら?」と聞く 阿賀屋は「おっ!鍋食いてぇよ!」と喜んだ 烈は阿賀屋と【R&R】のメンバーと竜馬を連れて飛鳥井の家へと神の道を通り向かった 両親にはラインで阿賀屋蒼佑を連れて逝くわね!とラインしてあったから大丈夫だろう 阿賀屋蒼佑は接待を受ける側だから料亭だのホテルでの会食だのはウンザリしていた 【R&R】のメンバーもホテルの豪華な料理より飛鳥井のご飯を食べたがった 飛鳥井の家のキッチンに神の道で出て来ると、康太は「飯出来るぞ!」と言った 皆喜び キッチンテーブルに座った 全員座ってもまだ席がある………どんだけ長いのよ………と言うテーブルでも、今は重宝していた 皆 キムチ鍋を食べて喜び、夜更けまで飲んで騒いで、盛り上がる 飛鳥井の家族は久し振りの賑やかさに、お酒も進んだ 真矢と清四郎も喜びその輪に入る 烈は真矢に「ばぁたん、真央たんがね、使えばいいって背中を押してくれたのよ!」と言う 真矢と清四郎は阿賀屋の傍に行き、礼を言い、感謝しつつ盛り上がり飲みまくった クーもプーも喜び飲みまくる 【R&R】のメンバーのヘンリーは 「近い内にまた食費払います!」と言った ダニエルもイーサンもフレディもデービッドも竜馬も 「「「「「払いますから、お世話になります!」」」」」と言った 慎一は「ならばお酒代だけお願いしますね!」と言う メンバーは喜んで!と言いご機嫌だった 楽しい宴会は夜が白み始めるまで続けられ、客間にと、作られた部屋で全員が泊まって寝た 飛鳥井の家から運ばれたお布団が役立っていた 今は屋上に布団干しを置いて、其処でお布団を干していた お日様の匂いのするお布団に包まれて、眠る夜は最高だった 翌朝 阿賀屋はお迎えの車がホテルに来るからと、烈とメンバーと共に帰って行った 竜馬は烈の部屋で帰国する時まで過ごす事にした まぁ殆どがキッチン兼応接間で過ごすのだけど……… 真矢と清四郎は燃えていた レッスンに入り、鳳城由香里に連絡してレッスンに参加させてくれ!と申し出た 由香里は喜んで!と来日して自分のレッスンスタジオで真矢と清四郎にレッスンを着けた 時は5月 殺し屋の一件が落ち着き、烈はやっと飛鳥井の家に戻った 家族は喜び涙した 家に戻った烈は精力的に会社に顔を出し 姿を消していた間に何度も何度もラインをくれていた戸浪海里とアポを取り会ったり 蔵持善之助と和華子と逢ってお食事に行ったり 堂嶋正義がイギリスから帰国したから会ったりしていた そんな時、安曇貴之が烈に逢いたいと康太に訴えて来た 康太は貴之から申し出があると烈に話した 「烈、安曇貴之がお前に逢いたいそうだけど?」と問い掛けた 烈は「え?ボクと?何だろ?ボク政治屋のお育て人と違うわよ!」とボヤいた 康太は「んなん百も承知してるやろ?まぁ憎きライバルの竜馬の成長に心穏やかじゃねぇんだろ?」と笑う 「もう巻物………ないわよ………」 早々巻物がある訳ないのだ 康太は爆笑した 「当たり前やんか!んな都合の良い巻物が早々あるもんか!」 「ボク、今世紀最大の喧嘩あるのよね………」 「んなん解ってんよ! でも逢いたい言うんやから会ってやれよ! 今回はオレの顔を立てて頼むわ!」 「解ったわ、ホテルの予約も支払いも母しゃんなら逢うわ!」 「了解!伊織、部屋取ってくれよ! それで支払ってくれよ!」 康太の頼みに榊原は即座に動き、部屋を予約して、安曇貴之との場を作り上げた理由だった ホテルの部屋番を烈に告げると 「安曇貴之の処遇もボクに任せてくれるのかしら?」と聞く 康太は「あぁ!好きにやれよ!オレは何一つ言う気はねぇよ!宗右衛門が導く明日こそが、正しい道だとオレは信じてるかんな! オレは何も謂わねぇよ!」と言う 「ならば逢ってみるとするわ!」 康太はホテルを予約したとラインで、部屋番と日時を伝えた 安曇貴之はその予約したホテルに、約束の時間少し前に部屋へとやって来た………… 三木竜馬がドアを開けて貴之を部屋に招き入れる 貴之は招き入れられた部屋を見渡した が、部屋には康太の姿はなく、兵藤貴史と三木竜馬と【R&R】のメンバーがいた そしてその中央に飛鳥井烈がトンプソンのスーツに見を包み座っていた 烈は肘置きに肘を着いて、足を組み唇の端を吊り上げて嗤っていた 一瞬 飛鳥井康太かと?想うその雰囲気に、貴之は息を飲んだ 烈は「ボクね忙しいのよ!用は何かしら?」と掠れた声で尋ねた 貴之は眼の前の兵藤と竜馬に目にやる 明らかに変わった姿に「私に足りないモノは何でしょうか?」と単刀直入に尋ねた 烈はじーっと貴之を見て、そして「紙とペン!」と言うと竜馬は即座にバックからルーズリーフの束を取り出して烈の前に置いた そして筆箱からペンを取り烈に渡した すると物凄い速さで計算を始めた 物凄い集中力で、【R&R】のメンバーも竜馬も兵藤も物音一つ立てずに黙って座っていた 貴之は動かずにそれを見ていた 計算を終えると烈は貴之の前に紙を並べ 「此れが過去、そして此れが現在、そして此れが未来!安曇貴之、貴方は今分岐点にいるわ! どっちに転ぶか?まだ解らない分岐点にいるのよ 母しゃんはそれを視ていたから、ボクに放り投げしたのよ!」 とプンプン怒りながら掠れた声で言う まだ怪我は完璧には治ってはいなかった 声もまだ掠れ沢山は話せなかった 烈は喉を潤す為に飲み物を飲み 「りゅーま!」と言った 竜馬は「このお子様はまだ無理は出来ないんですよ!殺し屋に狙われたりして、落ち着かない日々を送らざるを得なかった 家族にも逢えなくて姿を消していましたからね! 今も安全な訳ではない、だけど我等がリーダーは今世紀最大の喧嘩を売るので、我等もそれなりに心掛けて来ているのです! そんなリーダーに貴方は何を聞きたくて来たんです?」と問い掛けた 貴之はそんな竜馬の皮肉に臆する事なく……… 「堂嶋正義変わったよね? そしてこの前の記者会見、貴史と竜馬は凄く変わっててビックリした……… 康太に聞いたら宗右衛門が教育していると聞いた だから僕も………アドバイスが欲しくて来ました!」 兵藤は「烈は今 この通りあんまし喋れない状態なんだよ! だから無理出来ない……解ってて言ってる?」と謂れた 「………チャンスだと思ったんだ……… 逢いたいと言って会える人じゃないからね」 烈は何も言わず何やら書いていた そして「クーたんお水!」と言った クーが現れると手にはお水が握られていた 「おらよっと!」 ペットボトルを兵藤に渡し、早く飲ませろ!と催促する 貴之は「猫が喋った………」と唖然とする 兵藤は受け取った水を貴之に渡し 「この水を早く飲め!」と言った 貴之は水を受け取り飲み干した すると黒い涙が流れ……… 「え?え????何これ???」と焦った 烈は「心の中に湧き上がる焦燥感、焦り空回りする努力………藻掻いても何かに搦め捕られ気分になる、其れ等は心の中に血溜まりの花を咲かせていたからなのよ!」と説明した 兵藤は「もう喋るな!烈!」と止めた 兵藤は心配しまくるロードに頼まれ、烈の無事を確かめる為に倭の国に遣わされたのだった 丁度 竜馬も倭の国にいるから、確かめて行き、無事な姿を教えてくれ!と謂れ帰って来ていたのだった 兵藤だとて飛鳥井の家のニュースはイギリスにいても解る程に騒がれていたから耳に入っていた そんなニュースをロード・ペンバートンが知らない筈などないのだ 刺された事件でも大事なのに、その上殺し屋まで来たなら………心穏やかでいられなかったのだ 兵藤を倭の国に還して、烈の無事を知らせてくれ………と頼まれたのだ 兵藤もまさか………飛鳥井の家が無くなっているとは……想像も出来なった程だった 兵藤は「お前……何そんなに焦ってるんだよ?」と問い掛けた 貴之は透明の涙になり落ち着いた顔になり 「僕は………皆より劣ってる………そう感じて焦ってました……」と答えた 烈は「クーたん頭にチップないよね?」と問い掛けた クーは貴之の匂いを嗅いで「ねぇよ!この男は真贋の気を纏ってる以上は下手なのは近づけねぇだろうが!」とボヤいた 烈は考え込み紙を視て指の先でコンコンと現在の部分を叩いた 「獅童の所へは行ってるのよね?」と問い掛けた 貴之は「獅童?それは誰ですか?」と問い返した 兵藤が「鷹司緑翠だよ、前世の名前で呼んでるんだよ!」と説明 あぁ成る程、と貴之は納得して「はい!」と返事した 「ロードじゃにゃいのよね………」と思案する 兵藤は「それはどう言う事よ?」と問い掛けた 「その人の持つ感性や素質を視て配置するのよね 貴之はロードに預けても成果は出にゃいわ……… ロードと貴之は似た者だから……打っても響かにゃいのよね…」 「え?そんな事あるのかよ? あのロードはキツいけど真髄は突いてるぜ!」 「タイプで考えてみてよ!」 兵藤と竜馬は「「タイプ……タイプかぁ〜」」と思いを巡らした そして「「あ!!!」」と叫んだ 同じ気質の者ならば、打っても吸収しちゃいそうだ まぁ吸収は良い事だが………コピーの様に完璧にはなれても、それだけと言う事だ 「どうせアメリカ逝くし、その前にクリスにアメリカの議員にツテはにゃいか聞いてみるわ!」 兵藤は「なら俺はロードに話し通しとくよ!」と言った 「ならば、りゅーま、今夜は寝かせないのよ!」 竜馬はニカッと嗤い「了解っす!貴之、今夜は寝れると思わない方が良いっす!」と吐き捨てた 貴之は「え?え????えーぇぇぇぇ!!」と叫んだ 【R&R】のメンバーが指をポキポキ鳴らして、貴之に近付いた 烈は竜馬に淹れて貰った紅茶を優雅に飲んでいた 貴之は内心ハラハラドキドキしていた 僕…………犯されて回されちゃうの!!!と思う程 メンバーの目は座ってて怖かった 兵藤は「耐えろ!貴之!」と祈るだけだった 貴之の長い長い夜の始まりだった 【R&R】のメンバーによる意識改革は朝になり、ようやく終わりを告げた だが無情にも「【R&R】のアメリカ公演中はスタッフと共に働くのよ! そして夜はお勉強なのよ! そうして兵藤きゅんも正義ちゃんも日々勉強をして来たのよね! まだ甘いからアメリカのイベントまではオリヴァーに託すとするわ!」と言うとヘンリーは 「任せといてよ!兄さんの所へちゃんと届けるから!」と言った 「と言う事で【R&R】のメンバーも兵藤きゅんも、りゅーまもイギリスに行くから、貴之はパスポート持って来するのよ! その時着替えも用意するのよ! 兵藤きゅん頼めるかしら?」 「あー!任しとけ!」 「ならどデカいパフェ、レイたんと真央たんと一緒に食べようね!」と笑った あれから阿賀屋蒼佑と言う存在が話題に上がりかけた が、各方面から規制が掛かり、その名を一言も口にする事は叶わなかった まぁ江戸の世ならば色事師並の色男で、芸子なんかはお金払っても良いから寝たい!と言わせた漢だから、騒がれて当たり前なのだが……… 阿賀屋の名を口にするならば、芸能界から抹消されても仕方のない権力は未だにあるのだ そんな阿賀屋真央は烈にたかり、奢らせる日々が大好きだった その夜 ひっそりと【R&R】のメンバーと竜馬と兵藤はイギリスに戻った 当然 安曇貴之もパスポートと着替えを用意させられ飛行機に乗る事となった イギリスに到着した足で即座に竜馬とヘンリーは貴之をオリヴァーの元へ届けた

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