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第89話 今世紀最大の喧嘩 序章 inアメリカ
烈がアメリカへやって来るとメンバーは空港まで迎えに行った
久遠はアメリカへ行くのは許可したが、久遠の知り合いの医者の所へ毎日消毒へ通え!との条件を守るなら!だった
烈の怪我はまだ完治していなかった
顔中絆創膏貼ってるし、包帯も巻いてる状態だから………メンバーや竜馬や兵藤は何があったんだ!と心中穏やかではいられなかった
アメリカには何故か阿賀屋蒼佑も同行して着いて来ていた
阿賀屋の家は今 壊された家の修繕をしていた
箕輪カズノリと名乗る声優は阿賀屋の家に車で突っ込み門扉を破壊し玄関も破壊して押し入って来たから今は修理中だった
お館様である阿賀屋は修繕の間は、何処かでお過ごし下さい!と謂れてるから烈と共にアメリカで過ごすか、と着いて来ているのだった
阿賀屋は「今回は命を助けられたからな渡米費用や滞在費は奢ってやるよ!」と言う
烈は「滞在はアメリカ側の計らいで宿泊所も決められているのよ………」と言う
何か息苦しい滞在になりそうで………
「なら飯は奢ってやるさ!」と言う
烈は「ならば竜馬が探しておいたデカパフェ、食べに行くから奢ってね!」と言う
「それは楽しみだな!」と阿賀屋はニコニコで答える
烈は一ヶ月はアメリカに滞在する予定だった
会場の設営、リハーサル、そして半月のイベント
トータルすると約一ヶ月の滞在になるのだった
あれからメンバーとは何日位のイベントにするのか?と話し合った
ヘンリーは「流石と一ヶ月は無理だね、出し物が尽きる!」と言うと他のメンバーも頷いた
烈も「一ヶ月の長丁場は飛鳥井の家族のサポートがあればこそ実現出来たけど、アメリカじゃ無理なのよ………」とボヤく
メンバーは頷いた
ダニエルも「そうだね、どれだけ疲れ果てても飛鳥井の家族のサポートがあったからこそ、成り遂げられたんだと僕も想うよ!
このアメリカの地で……心の拠り所もなく続けるのは無理だよ………」と言う
イーサンは「それでも!我等は今世紀最大の喧嘩を売らなくっちゃだからね、前のイベントより劣るのは許されないんだよ!」と言う
デービットは「解ってまんがな!我らが手を抜くなんて事はないよ!」と言う
フレディも「【R&R】此処に在り!と大きな足跡を遺さなきゃ!だからね!」と言うと竜馬が
「あ、足跡で思い出した!
【R&R】のメンバー全員の足型をドルビー・シアター近くのハリウッド映画産業の中心地とも言える地に、セメントタイルで遺さないか?と言う話が来てるんだよ!
リーダーに聞いたら『OKしとくのよ!りゅーま!』と言ったからOKしといたよ!」とサラッと話す
ヘンリーは「それは凄いよ!リーダー!!」と感激していた
烈は「大きな足跡を遺す以上は妥協はしない!
イベント会場は20日確保して設営とリハーサル込で3日
イベントは半月15日間、5日日イベントして中休み入れ正味13日間のイベントになるのよ
前半5日、後半5日 余りの3日
そして撤退に2日
こんな感じでどうかしら?」
設営 ❶ ❷ ❸
前半 ① ② ③ ④ ⑤ ㉁⑥
後半 ⑦ ⑧ ⑨ ➉ ⑪ ㉁⑫
余り ⑬ ⑭ ⑮
撤退 ❶ ❷
と言う案を皆に送信した
竜馬は「それで良いと俺は想う、で出し物の案は出来てるの?」と問い掛けた
「前半と後半はイギリス 倭の国 アメリカでオーディションした子を使うしかないのよ
由香里が今特訓させてるからイベントはもう始まったも同然なのよ!
で、余りでタイバンドさせようかしら?と思っているのよ!」と話す
竜馬は「なら俺は3日貰いたい!真矢さん、清四郎さん、清家、シェリー・レイ、使いヘンリーと話していたのあるからやりたい!」と申し出する
イーサンは「なら僕はダニエルと共に中村翔太、宸睿(チェンルイ)アレクセイ・アンダーソン、エリオット・高崎を使い、共に3日欲しい!」と言う
デービットは「なら残りのジョシュア・ミラー、クロード・ティラー、一条隼人、マジシャンハリーを使い4日間貰いサムエルと考え尽くすよ!」と言う
フレディは「なら僕はリーダーと対バンドの構成を考えるとするよ!」と言うとメンバー全員からブーイングが上がった
ヘンリーは「リーダーは皆のリーダーだから!」と難癖をつける
烈は「僕はオリヴァーを使い対バンドは勿論だけど企画構成も考えるからね!」と皆を宥める
オリヴァーは大喜びで「ヨニー©イギリスの全勢力を掲げてリーダーに報いるよ!」と言う
烈は「イーサンは中休みを入れるから4日目が、中休み前と全く同じは許されないわよ!
全く違うのにしないと観客は喜ばないわよ!」とキツい一撃をかます
イーサンは「解ってるよリーダー」と気を引き締めた
そして「デービットは4日間やるのならば同じなのカマしたら足跡消えるわよ!」と更にキツい一撃をかます
だがメンバーは口を揃えて言うのだ
リーダーと話してるとイメージが湧いて来るんだよ!
絶対にリーダーをガッカリさせないから!と!
そんな想いで皆がアメリカに集結したのだった
兵藤は「此方の方は?」と阿賀屋蒼佑を見て問い掛ける
「この方はね………」と兵藤に屈んで貰いヒソヒソ話をする
そして「阿賀屋蒼佑氏よ!倭の国の芸道を護るへき存在なのよ!」と教える
兵藤は阿賀屋に手を差し出す
すると阿賀屋はその手を取り「宜しく朱雀!」と小声で言う
「真央たんちね暴漢に襲われて半壊状態なのね!だから家にいたら危険だとボクに着いて来たのよ!まぁボクは命の恩人だから、暫くは真央たんに奢って貰えるのよ!」とニコニコ言う
兵藤は「で、お前はその怪我か………」と呟いた
「じぃしゃん達はもぉ治ってるわよ、ボクはほら皮膚が弱いから治りが悪いのよ!」と謂う
兵藤は「蒼佑で良いか?年も近いみたいだし!」と謂う
「…………俺………フケ顔してる?
俺はもう少し若いかな!竜馬位には若いって!」
阿賀屋が言うと竜馬は「俺も初めて逢った時年上かと敬語だったけどタメだって聞いて敬語止めたっす!」と言う
阿賀屋は「なら俺は貴史で良いのか?」と聞く
兵藤は「おー!好きに呼べよ!」と言う
阿賀屋は「なぁ烈、何でイギリスの王女なのさ、貴史ならモナコの女王でも婚姻は可能なのにさ!」と聞く
「倭の国に睨みを効かせられなきゃ婚姻の意味がないのよ!
釣り合いってあるじゃない!」
「成る程!」
阿賀屋は兵藤に向き直ると
「阿賀屋の家は君の敵にはなりはしない!
この先何があろうとも、それは約束する!」と笑顔で言う
烈と竜馬は阿賀屋の笑顔に「りゅーま、天変地異あるかもね!」と話す
「そうっすね!でもイベントの後にして欲しいっすね!それは!」と身勝手な事を言っていた
阿賀屋は「おい!」と言うが聞いちゃいなかった
「りゅーま、何かあったらボクを担いで逃げるのよ!」
「解ってるさ!烈!何があっても俺は烈を真っ先に助けるっす!」
「りゅーま!」
「烈!」
その仲の良さに阿賀屋は「お前等出来てる?」と言う程だった
メンバーや兵藤は大爆笑した
ヘンリーは「この二人に恋仲は一切ないよ!」と言う
阿賀屋は悲しげな顔をして
「だよな………今世もお前は誰も娶らねぇのか?」と問い掛けた
「大恋愛してやるわ!
もうね、悔やむのは止めたのよ!
悔やんで時を止めて四半世紀独身を貫いて来たけどね、もう贖罪に縛られるのは止めたのよ
愛していたのよ………だから悔しくて堪らなかった
でも………あの人が今のボクを見たならば、お前何悔やんでるんだよ!ウジウジする奴は嫌いたって言ったよな!って殴り倒されるのよ!
だから…………あの人と全く正反対のおなごをGETする気なのよ
でもね…………ボクの周り………元奥さんみたいなヤツばかりなのよね………」
烈がボヤくと阿賀屋は泣きながら爆笑した
「お前の近くにお淑やかな女性は来れねぇって!
お前………気づいてねぇだろうけど何でもかんでも、出来ちまうヤツだからさ、嫁、要らねぇんじゃね?って思われて傍にいるの辛いだろうしさ………結婚は諦めろ!烈」
烈は本当にマメな男なのだ
掃除 洗濯 料理まで完璧に出来るのだ
今は小さいから料理はしないが、その腕前は遺伝なのだろうプロ並みだった
大歳神もガサツだが何でも熟せる奴だった
ガサツだから埃では死なん!料理は目分量で漢の料理なのだが………
烈は「失礼ね!真央たんは!」と怒っていたが………共に生きて来て感じた感想だから仕方がない
アメリカに来た日は皆で飲んだり食べりして楽しく過ごした
翌日から精力的に動き始めた
Strong Hiの事務所が全面的にサポートに入ってくれ、会場等の手筈も整えられて行った
神野、須賀、柘植の事務所が全面的に間に入ってくれ調整をしてくれる
アメリカでのイベントに向けて烈は精力的に動いていた
烈のガードにはケント・マクガイヤーとニック・マクガイヤーが着いて来た
クーとプー置いて来たから、ケントの兄のニックを烈の護衛に康太が送り込んだ
それで解ったのだが………どうやらStrong Hiのボーカル ジョージ・マクガイヤーはケントとニックの従兄弟だったのだ
ジョージはニックは知っていたがケントはあまり知らなくて、烈の警護にあたっていた時、見た事あるけど違うよな?的に想っていたが、ニックを見て父親の兄の子だと理解出来たのだった
両親に連絡を取るとニックとケントは倭の国へ行ってるから会えないのよ……哀しげにと伝えられた
ひょっとして今アメリカにいるかも?と言うとジョージの両親はニックの両親と連絡を取りやって来たのだった
ジョージは烈に言い少し時間を……と言うと烈はニックとケントに両親に会いに行くと良いよ!と言い送り出してくれた
連日スタジオで映像の編集や収録ばかりで、アメリカ軍の精鋭に守られてるんだし、少し位ならば離れても大丈夫だからだ
烈は連日メンバーと話し合い、少しずつ進めて逝く
阿賀屋はそんなメンバが創り出す映像を見て、的確なアドバイスを送る
それを聞きメンバーは手直しをして行くと、じっくりと来て、阿賀屋に感謝する程喜ばれた
芸道を極めた者の眼は誤魔化しを許さなかった
手厳しい意見も謂われる時もある
だが直して行くにつれ、マトを得てると納得した
調整に調整を重ね日程とイベント会場が決定した
ヤンキースタジアムが20間ならばスタジアムを貸し出しても良いと言ってくれ
6月1日から20日までの期間、借りる事が出来た
その期間は遠征に継ぐ遠征でスタジアムにはいないからだった
その変わりStrong Hiと【R&R】のメンバーが始球式に出て投げる条件を出して来た
しかも【R&R】はリーダーを指名して来ていた
烈は「ボクは野球出来ないわよ!」とボヤく
しかも………ドジャーススタジアムでの始球式と来たから………
「ねぇ、誰か野球経験ないの?」と問い掛けた
メンバーは全員、野球とは縁のないヤツばかりだった………
グラウンドで汗を流して友と勝ち取った青春して来たヤツはいなかった………
ヘンリーは「どっちかって言うと僕達はインドア派だもんね!」と笑う
家でポチポチ何かしてる方が多かった…………オリヴァーは、うっ!!と胸を押さえた
烈は「困ったわね………ボクが投げてもミットに届かないわよ………」と嘆いた
ジョージは「カタチだけで大丈夫だから!」と慰めた
【R&R】はトンプソンのスーツを着て全員参加して……からの烈の投球
なんてハードル高い要求出して来ますの?
とメンバーは思った
だが球場を借りる条件なら仕方ない
烈は「盛り上げるしかないわね……それまでに顔の怪我治ってるかしら?」と呟く
ジョージはアメリカに来た烈の顔を見て……驚いた
絆創膏だらけだし……酷い所はガーゼ貼ってあるし、包帯も見えてた
何が在ったの?
少し前に公園で寝てるってニュースを見た
世界的に命を狙われている………と聞いたのはその頃だった
何故狙われてるかは……調べても解らなかった
だけど烈の背負わされている途轍も無い荷物は垣間見た気分だった
烈はアメリカ軍の特殊部隊の隊員達に連れられ、毎日久遠の知り合いの医者に消毒して貰いに行っていた
医者は毎日せっせと消毒して治療をしているが………治癒の遅さは……老人並の悪さだった
皮膚が弱過ぎるのだ………
ドジャーススタジアムでの始球式の日
烈はトンプソンのスーツに身を包み、身嗜みをする
鏡に映る自分は…………もうスッカリ………
「治ってにゃいのよ!」とボヤく
まぁ顔のガーゼが絆創膏になっただけマシかしら?
と烈は想う
メンバーは今回もバッチリ変装をキメて、同じくトンプソンのスーツに身を包んでいた
始球式前は撮影があり、パシャパシャとフラッシュがたかれ撮影される
ポーズを取らされ撮影
始球式前に疲れるが、Strong Hiの生演奏の中、烈と【R&R】のメンバーが姿を現す
烈がボールを手にしてマウンドへ向かう
合図と共に烈はボールをミット目掛けて投げた
ヒョロヒョロの球が………何とかミットで受け止められ、烈の大役は何とか成し遂げられた
歓声が上がり、イベント楽しみにしてます!と大弾幕が掲げられる
烈は全米に顔を売った瞬間が絆創膏だらけの顔だなんて…………屈辱だわ
と嘆いていた
【R&R】のメンバーはリーダーを迎えると、スタジアムに向かって深々と頭を下げた
そしてリーダーが先に歩き出すとメンバーはその後に着いてスタジアムから消えた
その統制の取れた動きに淀みはない
歓声と拍手は試合が始まるまで鳴り止む事はなかった
翌朝 倭の国でもその映像は流された
康太や榊原、家族達は始球式の前に烈からのラインが届いていた
「始球式やるのよ、でも顔の傷……治ってにゃいのよ!顔に絆創膏貼って始球式なんて屈辱よ!」と言うラインに家族は言葉をなくしていた
そして翌朝のニュースでその映像を見た家族は………烈の苦悩を解って苦笑した
そして「みかちゃん ドジャースの選手 アルク・シュワルツ選手のサインボール貰ったからプレゼントするからね!」と送られて来て御影は感激していた
康太は「やっぱ治ってねぇか………」と呟いた
榊原は「烈は皮膚が弱いですからね、人の倍の時間は掛かります………」と我が子を思い言う
「叔父貴が言ってたが、漆黒の羽根には人の世のモノで細工されていたらしいからな………
しかも老人並の治癒の烈じゃ………治りは遅いだろうな………始球式あるなら治してやりたかったな………」
「それにしても我が息子は遠くへ行ってしまった気分です…………」
「だな……でも会社の社員達はアメリカまで応援に行くつもりで時間差で有給申請を提出して来やがってるからな……物凄いスピードで仕事も仕上がってるらしいし、効果は絶大なんだよな………
社内ニュースにも烈の顔写真付きで翔達が載せてるからな、盛り上がりはすげぇんだよな」
「社内ニュースの写真は烈が兄達に送ってるんですよね?
『みかちゃんの大ファンのアルク・シュワルツ選手とのツーショットよ!サイン貰ったからね!みかちゃん!』と載せた写真は貴史が撮ったとか………
そして即兄達に送信し、社内ニュースが更新される
東堂御影も今じゃカフェで大人気ですからね……
グッズスタンへ戻る時泣く子も出ますね……」
「だよな、会社の活気は宗右衛門が齎す効果絶大なんだけどな………」
それにしても……我が子が雲の上の存在になってしまった様で…………両親は何だかやるせなかった
だか康太と榊原もアメリカへ逝く為にせっせと仕事を上げていた
副社長に就任した志津子は玲香とも連携して、女性が活躍出来る会社を作る基礎を築く為に、連日忙しく動き回っていた
現場に工業高校卒業の女性社員を配置して、工事現場監督の資格を取らせる為に日々勉強となる
女性に限らず、社員皆に積極的に資格の習得のサポートをする
男性ファーストな世界ではなく男女平等な会社を目指して、女性の進出にも応援していた
変わりつつ在る飛鳥井建設だった
栗栖が副社長補佐として働き始めた
補佐として働きつつ、翔達やちっこちののサポートに当たる
飛鳥井栗栖として顔を売る為に、連日社内を観て回り、違和感を感じたら即座に宗右衛門へ報告する、を徹底していた
翔達も会社に出て仕事を覚え始めた
会社の備品の管理は翔達が管理する事から始めた
経費の流れ、備品の消耗頻度
削れる部分は削る………を徹底的に見直しをする!
それが宗右衛門から出された宿題だった
ホームページ、社内報も兄達の管轄で、兄弟は手分けして仕事をしていた
瑛智は宗右衛門の見立ててでは、飛鳥井建設 社長にはなれない………と謂われた
幼い内に将来を決めていた所為か、自分を追い込み過ぎる性格に、このまま逝けば待ってる将来は己の手で己の人生の終焉を迎えてしまう………瑛智の心が壊れる未来しか出て来ない………
瑛智は自由に己の道を決めさせる、決めかねていたら宗右衛門の事業のどれかの社長をやらせる
そう家族に謂われた
瑛太は心の何処かで………それを感じていた
ギチギチに自分を追いやる性格は自分と酷似していた
だが瑛太には護るべき弟がいたから………何とか己を保てた
だが瑛智には執拗に固執する何も無い
心は何時も虚構を抱き、己を律し、己を戒め……
視ている方が辛くなる程に孤立していた
宗右衛門が瑛智を飛鳥井建設の社長の座から外してからの瑛智は、よく笑い朗らかな性格になっていた
伸び伸びと生きる姿に……両親は救われた
宗右衛門は「総ての配置は儂がやる!儂が繋ぐべく1000年続く果てじゃからな!
誰にも何も謂わせぬよ!
まぁ飛鳥井家 宗右衛門の儂に何か言える者がおるとすれば、それは真贋だけじゃが、真贋が儂の見立てる果てに文句など着けぬわ!」と謂われたならば従うしかなかった
瑛智は悠太と共に製図を引いて、良く話をしていた
二人はよく似た容姿をしていた
柚は日舞や花や茶を習い始めた
精神修行の一環だが、柚は力持ちだと宗右衛門は言った
「柚は下手したら次代の巫女より力が強い力持ちじゃ!ゆくゆくは会社の為、一族の為に動く存在!それまでは伸び伸び育てねばならぬ!」
瑛太の子は柵から外され、違う道を歩み始めた
だが、無関係にはなれなどしない…………
決められた将来から外されただけで、家の為にならねばならぬ理からは外れはしない
だが瑛太も京香も気が楽になっていた
我が子を愛して育てて良いのだと、謂われたも同然なのだから…………
その分 翔達の肩に重い荷物が伸し掛かったのは否めない
だが兄達はそれを受け止めて生きていた
愛すべく弟の為に生きていた
そしてちっこちのの為に生きていた
ヤンチャな子は手が掛かるのだ
性格はバラバラだし、手を焼くのだけど、皆で育てているのだ
北斗や和希や和真や永遠も手伝い育てる
家族一丸となり育てる
そんな日々は結構楽しいから、最高だよ烈
兄達はそう想っていた
兄達は今世紀最大の喧嘩を売る弟に思いを馳せる
頑張れ!烈
アメリカには翔達も着いて行って良いと謂われた
飛鳥井の家族、一生達、北斗達も着いて逝くから大移動となる
だが皆 ワクワク日々を楽しんでいた
オーディションで選ばれた子達が鳳城由香里と共にアメリカにやって来た
由香里の所で血反吐を吐くトレーニングとレッスンを受けた者等は皆 シャープで鋭利な身体つきになっていた
その日から本番さながらの演出で動きをする
寸分違わす動かぬ者には、宗右衛門の容赦の無い怒号が飛ぶ
歯を食い縛り、それに耐える
耐えられなくなった者は脱落するしかない
まるで………見えない崖の上に立たされている感覚だった
何時落ちるか解らないギリギリの気持ちだった
宗右衛門は「今 此処で堪えられぬ者には、明日は来ない!
耐えた者だけが迎えられる明日じゃからな!
辞めたければ辞めれば良い
決めたのはお前たちじゃ!
挑戦して儂の前に立っているのもお前達じゃ!
辛くて逃げたいなら逃げればいい
もぉ辞めたいと想うならば辞めれば良い
この血反吐を吐く程辛い日々に、耐えた者だけが迎えられる明日が来るのじゃ!
スポットライトが当たるのは、そんな日々を耐えた者だけの特権じゃ!
辛い日々に耐えて掴む明日でなければならぬ!
その辛さが主達の明日への糧と必ずやなるのじゃからな!」との言葉を贈る
そんな事を聞けば………何としてでもスポットライトに当たってやろうじゃないの!
と想い闘志を燃やすのだった
清家は榊原に「君の息子……容赦の無い鬼だね………性格は伊織を数千倍強烈にした感じだよ!」と泣き言が入る
己の自信はあった
歌舞伎の世界では、そこそこ名もある
だが宗右衛門の前に引き出された清家は………無名の新人より劣る動きしか出来なかった
悔しい
何で……己の培った日々が崩壊する
シェリー・レイのジャッキー・チェンばりの動きや殺陣に負けてる感満載だった
それでも歯を食い縛り立ち上がり踏ん張る
でなきゃ………己の自信も矜持も崩れ去ってしまうから!
「本当に鬼 鬼畜だよ君の息子……」
毎日入る清家からのラインに榊原は苦笑していた
榊原は康太にラインを見せた
康太は「静流は己を過信していたのかもな……
烈の前に引き摺り出された瞬間 素っ裸にされ己の培った名声も総て叩き壊される
何も無い所からスタートさせて己の足で立ってる者だけが行ける場へ導く
それが飛鳥井宗右衛門の基本だからな
会社でも【R&R】でもそれは変わらねぇだろ?
伊織、烈の事を詳しく送ってやれよ」と言う
なのに榊原は嗤って
「そんな親切は静流には要りませんよ!
烈にはもっとスパルタで良いとラインを送っておきます!」と言った
康太は………お前どんだけ清家に厳しいんだよ………と想った
「アイツはサドな性格なので治って良いかも知れませんね!」と付け加えちゃうから……
康太はもう何も謂わない事にした
そんな頃 清家は宗右衛門にキツい一撃かまされていた
「今まで何やって来たのじゃ?
主の表現力はまるでオナニーやってるレベルの自己満足じゃよ!
自分が気持ちいいだけの表現力は……視てる側は視たくもないオナニー見せられてる様なモノじゃ!」
とまで謂れ………清家の我慢の限界が来た
「僕は頑張ってるじゃないか!
何が悪いの?って聞いても教えてもくれない!
それで自己満足って、なら何処を直せば良いか教えてくれても良いじゃないか!」
と叫んだ
だが宗右衛門は顔色一つ変えず
「教えて貰わねば解らぬから、何も出来ないのじゃよ!主は………今日は使い物にならぬな!
気分転換して冷静になり少し考えてみると良い
己を客観的に見て、何が足らなかったのか?
己の全てを曝す事もせすに、人々を魅了するパフォーマンスが出来ているのか?
冷静になって考えて来るがよい!」
そう言ったきり烈は清家を視界に入れる事はしなかった
清家は絶望した顔で立っていた
動く事さえ忘れた木偶の坊みたいに立っていた
見兼ねた兵藤は清家を連れ出して、ニューヨークの街を共に歩いた
清家は泣きながら「本当に容赦がないね……伊織の上を行くね、あの子……」と言った
兵藤はカフェに入り外のテラスで清家とお茶をした
兵藤は「アイツはまだ小学校4年生のお子様だって解ってる?お前?」と言った
清家は驚いた顔をして兵藤を見た
そして……今更ながらに現実を思い知り
「そっか……あの子………そんなに小さいんだ……」と呟いた
「アイツは転生者だからな、生きて来た歴史が在るんだよ!
だから【R&R】の連中は烈をリーダーと慕っている
しかもアイツは命を狙われているからな………顔の傷見たかよ?
何度も何度も殺され掛かって、それでもアイツは立ち上がり己の死命を全うしている
今だって油断は出来ねぇから、アメリカ軍が全面的にアイツの護衛に当たっているんじゃねぇかよ!少し前にアイツは意識を奪われ殺されかけた
アイツが殺せないならば、と……阿賀屋蒼佑が狙われた
アイツは阿賀屋を助けに行き怪我をした
それが今の顔中の傷だ、体の怪我も治ってねぇから毎日消毒に行ってるんじゃねぇか!」
「何で…………あの子はそんなに狙われているの?」
「其れは………話せねぇ、話したらお前も狙われるかも知れねぇからな!
俺等もイギリスで命を狙われた
オックスフォード大学の襲撃事件知らねぇのか?
あの時俺等は学内にいた
烈から今直ぐロードの教室に逃げ込め!って連絡があったから助かったが、学内にいたら確実に死んでいた!だから聞かない方が良い
俺も竜馬も命を狙われている、この先も狙われる事があるだろう!
烈はそんな俺等の星を詠み助けてくれている
自分は怪我してるのにさ………助けるんだよアイツは…………まるで康太じゃねぇかよ!
性格は伊織の上を行く
でも伊織は烈には何も謂わない
飛鳥井の家の者ならば宗右衛門には逆らえない
だけど伊織は悪い事したらお尻ペンペンするんだぜ!烈は父しゃんのお尻ペンペンは痛いにょよ、と言って恐れてるからな」
「何でそんな話を?」
「烈を血も涙もないヤツだと思うな!
アイツは斬る痛みも涙も知っている
そして投げ掛ける言葉の重さも知っている
それで終わるならば…………其れまでだと言うのは、辛さに耐えられない者は、辿り着けないと知っているからだ!
血反吐を吐いて、泣いて耐えて………それでも歩き出す者だけが掴める明日を知ってるからだ!
宗右衛門は挫折した人間ならば腐る程視て来ただろうさ!
だが宗右衛門は挫折しても良いと言う
挫折したって明日は繋がっている
違う道へ逝くだけだと、俺に言った
だけど、挫折する前に悔いを残して止めるなら、何で少しだけ踏ん張らなかったのかな?
其れだけが残念なのよね………と烈は言った
お前は此処で挫折して良いのか?
それを決めるのはお前だ!俺じゃねぇ!
だけど少し冷静にならねぇと……副会長をやってる時からお前は感情のまま動く事があったからな
少し頭を冷やす為に連れて来たんだよ!」
「ねぇ、君は何で烈と共にいるの?
ニュースでイギリスの第一王女のお子様と正式交際が発表されたんでしょ?
イギリスにいなくても大丈夫なの?」
「俺は鷹司緑翠から正式に宗右衛門に託され、今は宗右衛門の処で修行中の身だ!
だから教えを乞うてる身だからな、烈と共にいる
そしてその女王との交際も烈が俺に相応しい相手として選んだんだよ!」
「……何か底知れないね飛鳥井宗右衛門………
ねぇ………烈の横にいる人、阿賀屋蒼佑氏だよね?
何故にあの方が………烈と共にいるの?」
「お前、蒼佑知ってるのかよ?」
「そりゃ歌舞伎は芸道に重きを置くからさ、宗家を継いだ時に阿賀屋の家に正式に襲名のご挨拶に伺わせて貰った時に顔を見たんだよ
偉く若く男前だなって想ったんだよ!」
兵藤は、あぁ成る程!と想った
清家は携帯を取り出すとラインを見せた
清家の愚痴に対して榊原の親バカ発言を兵藤に見せた
『静流、うちの子が怪我しない様に見張ってなさい!』
から『我が子には正しい道を教えています!
間違った事など何一つ有りません!耐えなさい静流!』
『烈に会いにアメリカに行きます!
烈の為に血反吐を吐いても頑張りなさい!』
等など親バカ発言満載だった
兵藤はそのラインを見て「伊織は何処の誰よりも親バカだからな!」と言った
清家は「あの伊織が子育てなんて出来るのかしら?と想っていたけど………子育てしてたんだね」と呟く
「アイツの子は綺麗好きで朝早くなら掃除して洗濯して、って生活をしてるんだよ!
今は家を転々としているらしい
もう前に住んでた家には住んでないって言うし………今は俺も知らないんだよ!
でもアイツ等は何処へ行っても朝早く掃除して洗濯して、ってやってるんだろうな
綺麗好きでマメな男だからな、烈を嫌う奴は滅多といねぇよ!
まぁ宗右衛門だから敵は多いが、味方ならば心強い奴だ!」
「本当に良い両親してるんだね、康太と伊織は………」
「今は飛鳥井は3人転生者がいて、ちっこいのも加わり賑やかだぜ!」
兵藤はそう言いちっこいのの写真を携帯のフォルダーから出して見せた
凛と涼とレイが笑ってる写メだった
清家はレイに目が釘付けになった
「……この子……君に良く似てるね……」
似てるレベルじゃない、コピーだった
金髪碧眼だけど……顔の造作は兵藤だった
兵藤は其れには答えず
「その子は飛鳥井レイモンド、次代の真贋となるべき子だ!」
「次代の真贋……まぢで………凄い子なんだね
この子が康太を継ぐ子なんだ……」
「そしてこの子が次代の宗右衛門を継ぐ子で、この子は竜胆だ!」
「あぁ…真贋と…宗右衛門は轍から外れるんだ
だからこその次代なんだ………なら今世は顔見せの為?」
「お前 詳しいんだな!」
「飛鳥井は真贋と宗右衛門を継ぐ家だから、芸道に生きる家はその歴史を知らねばならないんだよ
失礼な態度を取ったら………終焉に向かうしかないからね………実際………前世の宗右衛門を怒らせ………血が途絶え廃業した家もあるからね………」
叩き込まれたのだろう………それが家元を継ぐ人間の死命だから………
清家は「僕の根底にある柵視えてたのかな?
ぶった斬って………粉々にしちゃったよ………あの子…………やっぱ康太の子は怖いね
僕は僕を壊そうとオーディションに参加したけど……まさか、跡形も無くぶっ壊されるとは思わなかったよ……」と言いスッキリとした顔で笑った
兵藤は「続けられそうか?」と問い掛けた
「僕は血反吐を吐いても耐えて耐え抜いてスポットライトに当たる!
それがこの先生きて逝く僕の糧となる筈だから!」と言い切った
「なら、今日は気分転換して明日に備えようぜ!立ち上がったならば止まるなよ!静流!
そのまま突っ切ってスポットライトに当たりに行け!」
「解ってるよ貴史、ありがとう
君がいてくれなきゃスーツケースに荷物詰め込んで倭の国に還っていたよ………」
兵藤は笑って何も謂わなかった
そして明日、また立てるように………今を楽しむ事にする為に歩き出した
その頃 竜馬は「大丈夫?帰っちゃわない?清家?」と心配していた
烈は「兵藤きゅん後を追っかけたじゃない!
大丈夫よ、兵藤きゅんだもん、立ち直らせてステージに立たせるわよ!」と言う
竜馬は「なら待てば良いね!ならば清家抜きだと無理だし、今日は此処までにしようよ!」と言う
烈は「そうね、今日は此処までにするわ!」
竜馬は皆に向かって「皆も思わぬ休息時間だからさ、好きに過ごしてよ!解散!」と言った
阿賀屋は「ならデカかき氷を食べに行こうぜ!奢るぜ!」と言うとメンバーは喜んだ
……………が、流石アメリカ………たらい桶みたいな大きさのかき氷だった………
big Shaver iceと言うと出て来るのが、それだった
人数分で容器が決まる
竜馬を入れた【R&R】のメンバー7人、烈、阿賀屋 9人プラス、ケントとニックを入れれば11人だからたらい桶ばりの大きさで出てきたのだった
皆でヒーヒー言いながらかき氷を食べる
うぅ〜!!と頭を抱える者、悶える者………かき氷は案外凶暴だった
半分食べた頃には………溶けてジュースをなりつつあった
渡されたストローで啜るが「溶けた氷は不味いのよ……」とボヤいた
何とか皆で手分けして食べる
その後 阿賀屋は皆にディナーを奢った
途中で兵藤が合流して一緒に食べる
楽しい夜だった
翌日 また再び厳しい練習に突入して
今回は由香里が主体となりバックダンサーの動きを合わせていた
由香里は何度も何度も間違えた所からやり直す
一人………微妙にズレている奴がいた……
皆の動きと微妙にズラして踊る
何度注意してやり直しても、その男は……止めなかった
烈は男に「それ、わざとやってる?」と問い掛けた
ダンサーの男は怪訝な顔をして
「わざと?此れがわざとに見えるんですか?」と問い掛けた
「わざとじゃなきゃ……モノを覚えられない馬鹿なのかしら?」
「人を侮辱しています?」
「皆のやる気なくさせてます?」
男の口調を真似て言う
竜馬は「そうだね、リーダーが言う通りだね
君が間違う度に皆がピリピリしてるの解らない?
解っててやってるならばタチが悪いよ!」と苦言を呈した
「頭の中をある日突然弄られ別人になったヤツじゃあるまいし、オーディションで出来てて何故今出来ないのかしら?
自爆でもしろって謂われた?
あわよくば………殺せって脳を弄ったヤツに謂われた?」
ケントとニック兄弟が烈を護り前に立つ
男は「何の事を言ってるか?サッパリ解りません!」と嗤いながら言う
烈は笑顔で「Go home right now
Never come again!」と言った
男は顔色を変えた
家に帰りなさい
二度と来なくて良いから!と謂われれば誰だって顔色を変える………
男は目を真っ赤に血走らせ嗤っていた
その光景は…………皆の目には異様に映し出されて……恐怖を抱かせた
直ぐ様 アメリカ軍の特殊部隊が男を拘束し
「取り敢えず軍の方で事情聴取致します!」と言い連れて行った
烈のレッスンに使ってる場所はヨニー©イギリスの系列会社が用意したスタジオだった
烈は何も言わず見送る事にした
竜馬は気を取り直してリハーサルに突入する前に
「さぁ、気を取り直してやるよ!
本番は待ってはくれないからね!」と言い発破を掛けた
由香里は全員揃った動きをさせる為にレッスンを再開させたした
皆 必死に食らいつき踊りと言うパフォーマンスをする
男を連れて外に出た特殊部隊は、エントランスを抜けて外へ出た
護送の車の要請をして待つ為に拘束具を用意しようか?と思った瞬間………男が自爆した………
その爆破の衝撃で特殊部隊の隊員がバタバタと倒れ………男は……死んだ
外で爆発の爆音が鳴り響くと
烈は「やはり仕込んでいたのね………」と呟いた
竜馬は「下手したらこの場で自爆するつもりだった?」と問い掛けた
「そうね、この空間が護られた場でなくば、自爆して跡形もなくなっていたわね!
最初からオリヴァーに頼んでスタジオを借りた時点で、此方は小細工されないように手は打つわよ!」
外は救急車や火事になったのか?
消防車も駆け付けて騒然としていた
そんな中 由香里は本番さながらのリハーサルをさせていた
プロならば、どんな状況に陥っても仕事は完璧に仕上げる!
そんな気心で余所見など一切させず、続けた
烈は仕上がりを見て「やっぱ由香里ね、最高の仕上がりだわ!」と言った
どんな妨害も許さない!
それが鳳城由香里のプロとしての矜持なのだから!
そうして本番に入るカウントダウンを送る日々が始まった
6月1日 ヤンキースタジアム
収容人数 五万人
【R&R】のメンバーと竜馬と烈は設営に目を光らせて指示を出していた
今回は球場と謂う事で壁に投影するのは不可能だから特殊スクリーンを使用する
その特殊スクリーンの調整をさせ、微妙にズレの指示に余念がなかった
烈の厳しい瞳が特殊スクリーンを見て、映像を投影させ調整する
特殊スクリーンが設営された後は、本番さながらのリハーサルに余念がなかった
RODEOÑとStrong Hiにはお題が出され、用意する曲も吟味を重ね決めて行った
対バンさせるのだから、一日ずつ演奏させ、ラストの日に同時に演奏させる
二組のグループは曲の間誰をスクリーンの前に立たせるか?
連日話し合った
そして決めて行き曲も決まった
2つのバンドのリハーサルは一切ない
当日 ぶっつけ本番だと謂われた
RODEOÑのボーカルは「まぁリーダーならそれやるの………解ってたけどさ………」とボヤく
Strong Hiのボーカルは「それ………まさか前のイベントでやらされてたの?」と問い掛けた
アーネストは「あのリーダーだぜ?出来て当たり前だし、無理難題も当たり前のリーダーだぜ?
その癖、何小節の音がスレてたわよ!とか言い出すリーダーだぜ?
まぁ俺等は慣れてるけど、お前等は初めてだからキツいだろうけど、あのリーダーに喧嘩売ったんだ………諦めろ!」と謂う
ジョージは其処まで話が届いてるのね………と苦笑した
ジョージは「俺等………辞退したんだけど、許されず引き摺り出されたんだよ!
あの時の俺等は怖いもの知らずで………持ち上げられていたからな………現実が見えてなかったんだよ
だが引き返す道はないから、仕上げてリーダーに報いる仕事するつもりだ!」と返した
「あのリーダーだからな、言った言葉は有言実行の男だから死んでも引かねぇ!
今世紀最大の喧嘩を売ってやる!と言い出して………やり遂げるイベントだもんな
ハードル上がりまくるのは必須だな………」
「ねぇ、脅すなよ…俺等はそこそこ売れてて、そこそこ落ちぶれた……しがないバンドなんだからさ!」
「あの人は有名 無名関係ないんだよ!
あの人に手掛けて貰いたい奴は金を積んても出たいと謂うが、金は幾ら積まれても動かねぇよ!
既にそこそこの資産を持ってるし、その資産は総て会社や次の事業の為に使うとかで、金に固執してねぇらしい
俺も竜馬にその話聞いて………嘘だろ?と想った
金で動かねぇ人間がこの世にいるなんて思ってもいなかったさ!」
「あの人………まだ子供だよね?
なのに資産持ってるの?子供なら新しいゲームが欲しいとか………お金は幾ら貰っても嬉しいとか………ないの?」
「ゲームはしてるみたいだぞ!
従兄弟としてるゲームがあるとかで、やっていた
両親からはお小遣い貰って、そのお小遣いで両親に旅行プレゼントしたとか聞いた
でも総てが、子供らしさを百万光年先に置き忘れたような生活してるんだよ………」
「公園で寝てたってニュースになってたよね?」
「ファンと名乗るヤツ等が自宅の周りを彷徨いて、犬の散歩にすら出掛けられなくなったと聞いた………無断で侵入されたり誘拐未遂されたり………
家族はバラバラに過ごさなければならないと聞いた………酷い話だよな…………
その上命狙われてるんだもん………俺なら正気無くして暴れそうだけどな………」
リハーサルしてる時は厳しいが、休憩時間は竜馬にSwitch渡して携帯で何やらやっている
時々 物凄い笑顔でテレビ電話してる
あぁ言う顔は子供だなって想う
設営2日目
この日は立ち位置と特殊スクリーンとの距離を測る
そして本番さながらの動きを見る
あれから清家は変わった
何もかも壊して、全部無くして、丸裸にされ………
冷水ぶっ掛けられ正気に戻された
正気に戻った自分は………考えた
色んな事を考えて………柵に縋り付いていたのは自分なのだと気付いた
そんな自分が嫌で嫌で仕方がなかった
誰も愛さない様に心に鍵をかけて………冷酷な愛しか出来なくて榊原にはサドと言われた
自分も傷つけ………人も傷つけ………痛みこそが愛だと………想おうとした
そんな柵も想いもぶち壊し、残ったのは自分だけだった
何も持たない弱い自分だけだった
脆い自分だけだった
鎧を着ていない自分は……崩れて粉々になりそうだよ…………
そんな想いを総てパフォーマンスに紡いで踊る
そうだよ、僕は…………誰かになれる舞台が好きだったんだ
自分じゃないモノになれるから………
頑なな心がボロボロ崩れ落ちる
烈はあの日以降、清家に対して何も謂わなかった
真矢と清四郎とシェリー・レイと共にパフォーマンスをする
竜馬は頭の中のイメージを投影させる為に、駒を動かす
竜馬のキツい叱責が飛ぶ!
それでも誰一人弱音など吐く事なく、仕事を仕上げていく
己の持ち分の責任を完遂する為に動く
竜馬は「最高だよ!烈!」と言い大喜びだった
次のリハーサルはイーサンとダニエルだった
無言でリハーサルを見てるだけの二組に………パフォーマンスしてる側は心配になる
叱責が飛ぶ竜馬の後ってのが………違和感を感じちゃうわよ………と烈はボヤく
気難しく寡黙な二人が組むなよな………と烈は想う
烈は「デービッド、ヘンリー、竜馬、フォーロしないと空中分解起こしちゃうわよ!」とサポートしろと指示を出す
ご指名の3人はモニターを見てサポートする
そして暫し休憩
烈はイーサンとダニエルを殴り飛ばした
「誰のパフォーマンスの番なの?」
リーダーに怒られ、イーサンは慌てた
「リーダー、僕等が組むのは早かった………
相手が何か言ってくれる待ちしてたから無言だった!」
ダニエルも「ごめんリーダー、どうやって注意しよう?と想っていたら……言葉なくしていたわ!」と謝罪
「一番組んじゃ駄目な二人なのよね
でも成長したから………大丈夫かな?と黙認したのが間違いだったわ!
良いわ、此処からは皆でやる事にするわ!」
プンプン怒るリーダーは怖い
だがまだ怒られるのはマシだと皆は知っている
本当に怒る時 リーダーは何も言わず外に出て行ってしまうから…………
ダニエルはリーダーに抱き着きスリスリしていた
それを竜馬がバリッと引き剥がし
「さぁ時間の無駄だからやるよ!
今度は僕等が見てるからどうぞ、初めて下さい!」
メンバーは竜馬が【僕】呼びする時、静かに怒ってるのを知っていた
その日のリハーサルはかなり荒れて………皆 涙目になっていた
ヘンリーが「今日のリハーサルは此れで終わります!明日は通しでリハーサルしたら後は本番です!気を引き締めて行きましょう!」と言い解散となった
解散となると烈は真矢と清四郎と隼人の方へ駆けて行った
「ばぁたん、じぃたん、隼人!」と抱き着いた
真矢は烈を抱き締めて「烈、ばぁたん頑張ってるからね!」と謂う
清四郎も「じぃたんだって頑張ってるからね!」と謂う
隼人は笑って「清四郎さんは夜はかなり湿布臭いのだ!」とネタバレする
清四郎は「あ、それは内緒にしてこそ、なのに………」と肩を落とした
解散したけど、まだ残っていた皆は………言葉もなく烈を見ていた
ニコニコ笑う顔は………幼くて……何処から見ても子供だった
皆の前で絶対の迫力で聳え立つ姿は………大人顔負けの迫力なのに………
清家は真矢と清四郎に近付いた
「清四郎さん、真矢さん………」
真矢は「あら?静流ちゃんどうしたの?」と笑顔で言う
流石女優だ
隼人は烈を抱き上げると、さっさと歩き出し行ってしまう
「烈、オレ様も頑張っているのだ!」
「隼人ぉ!何かまた写真集撮りたい程に男前なのよ!」
「オレ様は烈の兄貴だから、烈に誇れる男でいたいのだ!」
烈は隼人の首に腕を回して抱き着いた
清家は烈と隼人を見送り……言葉をなくしていた
真矢は「あなた、私達も帰りましょうか」と夫の寄り添い歩き出す
清家はその場から動けなかった
兵藤は「静流、還るぞ!」と言われ正気に戻り歩き出す
「あの子………あんな顔も出来るんだね……」
「そりゃお子様だからな」
「やっぱ本当の母親は………違うのかな………」
「それは関係ねぇよ!アイツは幼稚舎に上がってすぐの年に、翔達は小学校に上がる年に本当の事を告げられた
他の誰かから聞かされるよりは良いだろうって、親の口から真実を聞かせた
たがアイツ等は総て知っていたよ
兄達も烈も………総て受け止めて、両親を親と認め今に至るんだよ!
烈にとったら祖父母なんだよ!
アイツの母は飛鳥井康太、父は榊原伊織
それ以外は認めてねぇんだよ!
因みに隼人は康太の長男として兄弟に接している
烈は隼人も兄だと慕っているんだよ!」
何か重い話だった
なのに………あの屈託のない笑顔は……反則だよ
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