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第90話 今世紀最大の喧嘩 渾身の一撃だ!イベントだ!
イベントリハーサル3日目
その日はデービットとサムエルの番だった
ジョシュア・ミラー クロード・ティラー 一条隼人 ハリーの四人が立ち位置を決められ、特殊スクリーンに映る姿を確かめる
そして本番さながらのリハーサルをする
リハーサルを確認するように視るリーダーの目が蒼く光る
その眼はちょっと怖かったりする………
ジョシュア・ミラーの透き通る歌声が響き渡る
ダンサーのハリーは特技はマジックだった
ダンスがしやすいをスーツを着て、踊りながら得意のマジックを披露する
生き生きと笑顔で今か一番楽しい!そんな顔をしていた
ハリーは苦労人で家が貧しいから、兄弟を養う為に働いて来た
兄弟が学校を卒業して自立したから、好きな事をしようとダンサーとなり、それでは食えないから、バーでマジックを見せたりと、下積みを重ねて来た
その腕前はかなり凄く、烈は気に入って
「おーちゃん、倭の国でイベントさせたら?
踊ってマジックも出来るなんてめちゃくそ凄いのよ!」と言う程だった
が、残念な事に今 マジックは廃れていた
最盛期のお子様達は大人になり………今の子はマジックよりマジックの種明かしに興味があるみたいで、種明かしされたマジックを再びやればヤジが飛ぶから………細々と続けるか?辞めるか?で数を減らしていた
相賀は「今更………マジックなんか誰も見向きもしませんよ………」と悲しい現実を突き付けた
「本当に夢がないわね………心ばかり貧しくなってどうするのよ?
紙芝居を心待ちにしていた子はいなくなったのね」
相賀は何時の時代の話ですか…………と想った
「ネタなんてどうでも良いのよ
皆が楽しめれば、それで良いのにね………」
本当にそうだと相賀は想う
「私は………かなり田舎で育ったのでアイスクリンとかロバのパンとか売りに来るの心待ちにしてましたよ!
時々来てくれるポンハゼの為にお米持って行きましたからね!
無論 マジックも仕掛けなんて気にならない程に楽しみにしてましたよ!」
どんだけ昔話をしてるのよ?と皆は思った
だが烈は、相賀の心遣いが嬉しかった
「やっぱ引田天功バリじゃないと駄目なのかしら?」
「それも………もう古いんじゃないんでしょうか?」
「そうなの?引田天功の脱出ショーなんて凄かったわよ!
まぁボクが老衰で死ぬ少し前に見た話なんだけどね」
何か話が微妙にズレてる気がして
「女性の?引田天功?」と問い掛けた
「なにそれ?男性よ……女性の引田天功…なにそれ??怖いわよ!」
相賀はやはりそっちですか…………と納得した
神野や須賀や柘植は、本当に意味が解らなくて????状態で話に参加出来なかった
兵藤は「おい!じぃさん達リハーサル見とけよ!」と謂う
相賀は苦笑して、烈は「失礼にゃー!視てるわよ!」と謂う
視てないフリして、ちゃんと視てるのだ
烈は「由香里、中央右の子、ズレてるわよ立ち位置!」と叱る
由香里は確かめに行き「あー!ズレてるわな!振り幅大きいのか?」と問う
「体の中心軸ズレてるのよ、微妙に踊る時ズレ出るのよ!」
「おー!それなら整体師にズレ直させるか?」
「捻挫してるわよ!その子!
だからズレるのよ!本番まてに直らないなら注射打ってテーピングするのよ!」
「了解!捻挫したなら言えよ!
己の体の管理は本番を迎えたお前達が一番やらねぇとならねぇ事だろ!
プロの自覚を持てよ!
ステージに上る以上はお前等は全員プロなんだよ!解ったな!」
【はい!】
元気な返事が帰って来る
この日は早目に練習を切り上げた
明日の本番に差し支えたらいけないからだ
そしてこのは日、【R&R】のメンバーはセメントタイルで足形の作成をするのだ
足型を取ってサインを入れる
烈は足型を取り終えると書道の道具を取り出し、竜馬に水入れに水を汲みに行かせ、墨を擦り始めた
ヘンリーは「リーダー何してるの?」と問い掛ける
烈は「サインいれるんでしょ?ならばやはりボクは、この遣り方でサインするのよ!
その為に持参してアメリカへやってきたのよ!」と言う
竜馬はニコニコして
「やっぱ烈のサインって言ったら書だよね!」と言う
デービットは「サインの意味履き違えてますがな………」と言う
烈はサイン転写の紙に墨を着け筆を上手く動かし達筆な字で【烈】と書いた
そして次の転写の紙を取り出すと文鎮を乗せて髪を固定させ
【何者に囚われない
何者にも干渉しない
我等の世界
それが【R&R】で在る】
と此方も達筆な文字で書き記す
烈は「乾いたら皆のと同じに提出するのよ!」と言う
竜馬は「了解っす!これぞ【R&R】っすね!」と言う
どんな風に仕上がるのかは解らないが、楽しみである
そして宿泊施設に戻り早めに眠る
目が醒めたら今世紀最大の喧嘩を売る当日だ!
イベント開始時間は午後7時
1時間半掛けて披露するプロジェクションマッピングが始まろうとしていた
照明 全てを消した暗闇の中 一発花火が上がりイベントは始まる
初日は竜馬からだった
竜馬は渾身の一撃を与えるつもりて挑んていた
演奏はこの日はRODEOÑが担当する
それに伴い倭の国から篠笛奏者を招いての演奏となる
篠笛奏者は阿賀屋が手配してくれて、アメリカへとやって来てくれたのだ
基本 【R&R】はノーギャラだから阿賀屋もノーギャラを提示してみた
すると篠笛を広める為に、と言う名目でノーギャラで篠笛奏者 笹生 が来てくれ竜馬の演出をもっと重たく華麗に彩ってくれたのだった
そして阿賀屋は殺陣師の方にも声を掛けてくれた
倭の国文化を知ら示す為に、とかの大義名分を掲げ阿賀屋の家の権力を最大限に利用してノーギャラでアメリカまで越させたのだ
まぁ渡航費用と宿泊費は阿賀屋が持つが、箕輪の事務所からは慰謝料と言う名目の封筒を渡されたから、有り難く受け取り烈に協力している、と言う訳だった
阿賀屋はたった一日の為に殺陣師を用意して全面協力してくれたのだった
阿賀屋家の修繕費用は声優の箕輪カズノリに請求した
あれから………どんな手を使ったのかは定かじゃないが………箕輪カズノリは運転を誤り郊外の屋敷に突っ込み即死、と言うニュースを正式に事務所から発表され、世間は少しだけ騒ぎとなった
車の保険金、事務所が掛けていた生命保険等を使い箕輪が壊した家の復旧に全力を注ぐと、箕輪の所属事務所の社長は記者会見で皆に告げた
そして事務所は声明も出した
【箕輪カズノリを応援して下さった皆様へ
皆様もニュース等で御存知の事と思いますが………箕輪は飲酒運転の末、郊外に在る立派な屋敷を破壊して………即死でこの世を去りました
その日は箕輪は大きな仕事のオーディションで合格し、祝杯をあげて………帰宅した
との事でした
タクシーに乗って帰宅してくれれば………この様な事は起きなかった
酔ってドライブに出なければ………この様な事は起きなかった
誰も箕輪を止められなかった………事が悔しくて堪りません
我等も同罪と受け取り、謝罪や賠償に当たる所存です!
箕輪は……志半ばで逝かねばなりませんでした
迷惑を掛けた皆様には………誠意を持って対応させて戴きます!
皆様に飲酒運転の怖さ、危険さを熟知して貰う為に今後も箕輪の死を皆に伝えて逝くつもりに御座います
ファンの皆様
応援して戴いてありがとう御座いました!
零治プロ代表取締役 煤谷 零治
尚 箕輪が死した場所は非公開とさせて戴きます!
箕輪が破壊した家の方々にこれ以上御迷惑をお掛けする訳には逝きませんので、お別れをしたい者は事務所入り口の献花台へお願い致します 】
箕輪の献花台は事務所の前に設置した
阿賀屋家を誰にも知らせる訳には逝かないからだ!
別れを惜しみ、献花台へ来た子達は………若くして命を散らした声優を惜しむ
ファンは続々と集まり…………献花台の前で集団自殺され…………事態は更に大きくなり………
献花台の設置は取り止められた
そのニュースはアメリカの地にいる烈も目にしていた
だが阿賀屋への謝罪や慰謝料で篠笛の使い手や殺陣師を貸し出してくれたのだから、烈は有り難くそれを受け取っていた
イベントが始まるとシェリー・レイが脇差しを持った役人に追われて走る様が映し出された
プロジェクションマッピングには江戸の街並みが映し出されていた
中央スクリーンには全体が解るスクリーンを設置した
そのスクリーンには実際の街並みを必死の形相で走るシェリーが映されていた
走るたびにプロジェクションマッピングは映像を切り替える
シェリーは必死に追っ掛けて来る役人との攻防戦を繰り広げ剣捌きを見せ付けた
シェリーは長い髪を後ろで束ね着物生地の様なリボンで結び、忍者の様な漆黒の服に身を包んでいた
闇に染まる様に立つ姿は殺し屋みたいな………鋭さを秘めていた
シェリーを追うのは役人の着物と袴を着た男達だった
その身の熟しはプロだと誰でも解る動きをしていた
逃げるシェリーは息を切らしていた
其処へ清家が姿を現し助太刀する
暫く続く剣捌きは圧巻の迫力があり、観客は息を呑み……両手を前に組み力を込めて見ていた
奉行の姿をした清四郎が清家とシェリーとで攻防戦を続ける
烈は「りゅーま………此れがやりたかったの?」と問い掛けた
竜馬は笑って「だって玲香さんも美緒さんが俺に時代劇勧めるからさ、もぉ俺はスッカリ時代劇ファンなんだよね!」と呑気に言う
「3日間演目違うんだよね?」
「そう、今日は思いっ切り時代劇を堪能したいっす!」
剣の靭やかさ、鋭さ、其れ等が伝わる剣捌きだった
そして突然、漆黒の長い髪を靡かせ真矢が姿を現す
真矢は着物を捲くり挙げて、袖は襷で結わえ槍を持つ
日舞で鍛えた足腰が槍をクルクル回して、奉行を翻弄する
「ばぁたん………嬉しそうね………」
「最初は敵同士なんて嫌ですね?と聞いたんだよ
でもあの人は女優だね、私はどんな役だとて遣り遂げて見せますとも!と笑わって言ったんだよ
めちゃくそ美しい笑みに俺は釘付けになったっす!」と謂う
「ばぁたんは美しいからね」
「烈の言う美しさが解った気がしたっす!
生き様が美しい……それがあの人を支え更に美しく輝かせている!」
竜馬がそう呟くと烈は嬉しそうに笑った
プロジェクションマッピングには美しい月が映し出されていた
槍を持った美しい女と奉行の一騎打ちに相応しい舞台だった
RODEOÑが烈と竜馬が作った新しい曲【 焔 】を演奏し歌う
プロジェクションマッピングは真っ赤な世界を投影する
真矢が槍を掲げ奉行に掛かって逝く
奉行は槍を避け一太刀浴びせようと応戦する
美しい………それでいて哀しい……世界に観客は飲み込まれていた
シェリーと清家の殺陣も凄く光っていた
和の美しさが醸し出され……映画を見ている世界観に惹き込まれていた
奉行は………血を流し槍を持つ女剣士の姿に……トドメを刺す
何方かが…………倒れねば終わらない闘い
と謂うのを描きたかったのだ、竜馬は…………
倒れ行く真矢は美しかった
人は死する時が一番美しいのだと想わせる光景だった
プロジェクションマッピングは……静かな夜更けを映し出していた
やはり月が美しく其処に在る、そんな………なんでもない光景だった
シェリーと清家は涙ながらに奉行に掛かって逝く
そして場面は暗転する
少しずつ明るくなる先には誰もいなかった
人と人が戦う様は哀しい事だと想いませんか?
スクリーンにその言葉が投影され………
烈が作りオリヴァー、ヘンリー兄弟が編曲した曲【別離】を演奏し一条隼人が歌う
隼人の嗄れた声が………物悲しさを響き渡らせる
RODEOÑのボーカルのアーティストの声がコーラスとして入り涙が出る程に…物悲しく…感動を覚える歌となった
歌が終わるとイベント初日は終わりを告げた
【これで【R&R】サブリーダー竜馬のイベント初日は終わります!
皆様 お気を付けてお帰りください!】
そのアナウンスをするのは早瀬頼朝だった
彼は何でも良い関わらせてくれませんか!と烈に頼み込んで来た
修行の一環になるし、何度も烈は早瀬と電話で話して決めたのだ
ならば司会者をやってね!と約束して出しているのだ
皆は控室に戻って来た
烈が「じぃたん、ばぁたん、せーけ、シェリーお疲れ様です!」と言った
真矢は泣いていた
清家もシェリーも………清四郎も泣いていた
その舞台裏を東都日報の今枝浩二が撮影する
密着したいと申し出があったから烈が認めたのだった
だが条件がある、ボクといるって事は何時命狙われるか?解らないって自覚して密着するなら良いわ!と謂われた
その条件を飲み、密着しているのだった
真矢は未だ役が抜けずにいた
「ばぁたん!」と言い抱き着くと、真矢はやっと現実に戻り烈を抱き締めた
清四郎も烈を抱き締めていた
隼人がやって来て「烈、どうだった?オレ様の歌?」と聞く
烈は「最高よ!隼人にー!!」と笑顔で返す
清家は放心状態だった
烈は清家の前に行くと手を握り締め
「来たわね、ボクの目指す所まで!」と言った
「烈君………」
「せーけは一度壊す必要があったのよ
でないと殻から出られないからね!」
「…………ぶち壊されたよ、それで解る自分ってのが情けないけどね!」
「己を知れたならば良いわ!
また迷ったら来ると良いのよ!
ボク等は留まってなんかいない!
常に果てへと逝くからね!」
「あ〜そんな所、康太にソックリだよ!」
「ボクは母しゃんの子だからね!」
ニコッと笑われ謂われれば何も言えなくなる
烈は清家から離れるとメンバーの所へ行った
メンバーは先に保養施設へと向かう
真矢達は護衛が来たらホテルへと向かう
明日の為に体を休めねばならないからだ
兵藤は清家達とホテルへと向かう
ホテルのレストランで皆で食事を取るからだ
それは烈に託された兵藤の仕事だった
ホテルへ行くと先にレストランへと向かう
其処で食事を取り、兵藤もホテルで宿泊するのだ
兵藤は清家に「何か吹っ切れた顔してるやんか!」と声を掛けた
「まぁね、あの子やっぱ康太と伊織の子だね
どっちの性格も上手く受け継いでいるんだね」
血は繋がらずともコピーの様に似ているのだ
兵藤の携帯が震えると携帯を胸ポケットから出して見た
「たかちー いべんちょ どーらった?」
レイからのラインだった
兵藤は優しい笑みを浮かべそれを見る
兵藤は「大成功だったよ!」と書いて送信した
清家は「彼女から?」と問い掛けた
「いいや、レイからのラインだ!」
レイと言われ清家はあの兵藤のコピーの子を思い浮かべる
「その子、貴史の従兄弟か何か?
良く似てるね…………」
「まぁそれは倭の国に還ったら烈にでも聞いてくれ!真贋を継ぐべき者の事を気安く口になど出来ないからな!」
「倭の国へ還ったら伊織に文句言ってやるつもりだからさ、飛鳥井へ逝くよ!
でも家………何処にあるか解らないんだよね?」
「それは烈と共に還れば連れて行ってくれるかもな………」
「なら残ろうっと!還るのは皆と共で良いや!」
清家が言うと真矢は「あら、静流ちゃんも遺るの?私達も遺って烈と共に帰るのよ!」と謂う
清四郎はニコニコ頷いていた
シェリーは「【R&R】のリーダーはお二人のお孫さんなんですよね?」と尋ねた
真矢は「ええ、そうよ、でもちゃんとオーディション受けてだから縁故じゃないからね!」と言う
シェリーは「解ってます………でもあの子………祖父母でも容赦なく檄飛ばすんですね………
イベント終わった時は年相応の顔して祖父母に抱き着くのに………リハーサルは鬼だった………」と嘆きに近いボヤきをする
兵藤は爆笑して「当たり前じゃねぇかよ!親族や仲間しかイベントに起用しない猿芸とまで貶され、今世紀最大の喧嘩売ってるんだからな
私情は一切入れないに決まってる!」とキッパリ言う
シェリーにはそれが理解出来なくて………黙っていていた
兵藤は「飛鳥井烈は宗右衛門と言う転生者なんだよ!宗右衛門は飛鳥井の家では絶対的存在として一族の規律と秩序を護るべき存在なんだよ!
秩序や規律を乱す者は例え親兄弟でも斬らねばならない!
そして宗右衛門は顔色一つ変えず………斬れる存在なんだよ!
祖父母は大切にしているが、【R&R】と言う世界では演者と奏者として、情は一切入れてはいない!それが烈なんだよ!
だからこそ、あんなクセの強い奴らを引き連れてイベントが出来るんじゃねぇかよ!」と言う
シェリーは「何か……少しだけ…彼を知れて良かった、そしてもっと彼を知りたいと想う!」と言う
隼人は「オレ様の弟は世界一可愛いのだ!そしてオレ様の弟を虐めるのは許さないのだ!」と言う
真矢は隼人の頭を撫でていた
兵藤は「話すと長くなるし理解し難いかもだけど、烈の母親の長男的存在が隼人なんだよ!
あの家族の絆は強い、まぁ烈見てれば解るかもだけどな!」と言う
シェリーは羨ましく想っていた
その夜は本当に楽しく、本音で語らい、部屋へ戻り眠った
イベント2日目
竜馬のイベント2日目だった
その日は演舞の演目を掲げ、竜馬は烈と共に気合を入れる
控室は急遽着付けの者を増やし、着付けをしていた
清四郎も無論着付けされた
………が、辺りを見渡しても、どうやら男性は自分一人と言う立場に………冷や汗モノだった
真矢、清家、シェリーは着物を着ていた
清家は「僕、男だよ?」と文句を言うが、烈がニコッと笑って「せーけはそこら辺のおなごより美しいじゃない!」と賛辞を贈る
清家は少し照れて納得して着付けられていた
竜馬は本当に人誑しだと何時も想う
本番前には全員整い着物を着せられていた
バックダンサーも着物を着ていた
髪を結い、苦しい着物を着せられていた………
開演早々 清四郎はスタジアムの中央に立っていた
殿様の姿をして立っているから、観客はその似合って堂に入った姿に歓声を上げた
開演のアナウンスが入り照明は全て消される
観客は静かに座っていた
パッと辺りが明るくなると、プロジェクションマッピングは長い長い廊下を映し出した
その奥から豪華絢爛な着物を着た真矢を中心にシェリーと清家が左右に並び、後ろに大奥女中バリの着物を着たダンサーが続いた
烈は「ばぁたんが御台様かしら?そして左右が側室……りゅーまは大奥やりたかったのね……」と笑う
【R&R】のメンバー達はあの着物で踊れるのかしら?
と想っていた
だが予想に反してキレキレの演舞を披露する
清四郎は殿様で御台所と側室の間に囲まれて踊る
「私は真矢一筋なのに……」
とボヤきながらも完璧に踊りを披露する
竜馬は「清家って美しいんだね」と側室の姿は誰の目に留まるであろう美しさだった
踊りは清家のお家芸なのだ
ソロパートがあるから誰よりも頑張って踊って魅せた
あぁ……僕は踊りが好きなんだ…………
父に厳しく叩き込まれた踊りが嫌いだった
愛人の子なのに………と陰口叩かれ………過ごした日々に踊りが好きだって忘れていた
清家は泣きながら踊っていた
憎しみも哀しみも化粧で隠し踊って来た………
それさえも僕の…………総てなんだ
圧巻の踊りだった
だが真矢もシェリーも負けてなんかいられない
女の闘いなのだ!
バックダンサーが悲鳴を上げたくなる程に、キレっキレの動きで魅了する
これぞ大奥 此処に在り!と謂わせるべく女の闘いだった
竜馬は嗤っていた
「女の底意地、女の底力、見させて貰いました!」
この日はStrong Hiが烈とヘンリーとで作った【闘い】と言う歌を演奏していた
ジョージの声がまるで喧嘩をしている様に捲し立てた様な歌声が響き渡る
プロジェクションマッピングは季節の移り変わり、美しい光景を映し出す
冬の凍てつく寒さ 灼熱の太陽の下 落ち葉が堕ちる様に……堕ちる哀しさ
そして春の微睡みの中 殿様は御台所に手を差し出す
Strong Hiは【微睡み】と言う歌を歌う
この歌はタイトルが決められた時にジョージが、烈と共に作った歌だった
優しい、さっきとは全く違う歌声が安らぎさえ覚えさせる
御台所は殿様の手を取り、二人はその場を去って行く
静かに…………二人の姿は消えて……
側室二人はビシッと着物の裾を直すと踵を返し、大奥女中を従えて………その場を後にした
今回も映画を見させられているかのような出来栄えに、スタンディングオベーションが贈られた
一頻り 熾烈な女の闘いを繰り広げた後は…………
一条隼人とアーネストが出て来て蒼也と共に【想】を歌う
特別参加で蒼也が出たいと言って来たからノーギャラで参加を認めた
蒼也は「ギャラは貰おうなんて想っていないよ!【R&R】からギャラが貰える日が来たら、僕は裸足で逃げて逝くしかないじゃないか!」と言う
【R&R】のノーギャラは有名な話だった
だがギャラを貰う以上に効果は絶大で、彼等と仕事はしたいと言う者は後を絶たない
その歌が終わると、早瀬頼朝がその日の公演の終了を告げた
早瀬頼朝は修行している身だった
修行の一環として、何か役に立ちたい!と烈に申し出たら、なら司会をやって!と言われたから初めての経験だがやっているのだ
場の空気を壊さない………それていて好印象を与えて名を売れ!と言われた
ゴテゴテの漫才も良い、だが自分が時代に合ってるか?
この先どんなコメディアンとして生きたいか考えなさい
と謂れ、烈にダメ元で相談したのだった
そしたら返事が来て……電話で何度も相談に乗って貰い……司会として出させて貰ったのだ
「自然体になれたら貴方は光り輝かける場に行けるわ!」と謂れ肩に力が入り過ぎてる事に気づいた
今は何をやっても楽しかった
食う為にバイトも始めた
今はイベント中だけ設置した【R&R】のアメリカ支部で仕事をさせて貰っているのだった
イベントが終わったらイギリスへ帰る、その時はヨニー©イギリスでバイトしたら?と謂れ、食う為に、仕事をして視野を広めようと思っていた
そして迎えるイベント3日目
竜馬最後のイベントの日だった
この日の演奏はRODEOÑだった
かなりハードル上げられてしまっていたが……それでもこの日の為に頑張った
辺りは真っ暗になり、パッと明るくなると…………
其処は古い文化を再現した様なセピア色の映像が映し出されていた
鹿鳴館のダンスホールを再現した豪華絢爛な映像は、少しだけセピア色に色褪せてても、煌びやかに輝いていた
真矢は漆黒のドレスを着ていた
清家は艶やかな着物地で作られた、上半身は真紅の着物、下半身は漆黒の袴に似たスカートを履いていた
シェリーは白い大正時代に流行ったシンプルなドレスを着て、バックダンサーも男子は燕尾服、女子は大正ロマンのあるドレスを着ていた
輪になって、ドレスの裾を持ち会釈してクルクル回り始める
ダンスなのに手を繋いだりしない
これは烈が昔の男女はダンスだとて手を繋ぐのは公序良俗に当たるからやらなかったのよね………
とボヤいた発言をアイデアにして考えたのだ
軽やかなワルツに似せた音楽が流れRODEOÑが歌う
まるで………其処は大正時代にタイムスリップしたかのように………
古き良き時代があった
エリオット・高崎を借りて、咲楽我空とで体の柔らかい者のダンスを披露する
咲楽我空は、やはり少しでも【R&R】のイベントに顔を出したいよ!
遊びに行く感覚で良いからさ、駄目かな?と言って来たからノーギャラで参加して貰った
エリオット・高崎は軟体動物ばりの踊りを披露する
我空は俺負けちゃう?絶対に負けないけどね!
と己に発破をかけて踏ん張る
2人は場を壊す事なくクルクル回る人波を縫って踊る
そしてイベントも終盤に差し掛かると、皆は散り散りに広がった
広がった先にタップ板があるから、その上に立つ
一斉にダッダッダッ!と靴音を揃えタップを踏むと………プロジェクションマッピングも様変わりを始めクルクル映像が切り替わる
ソロタップは隼人が何時の間にか参戦して披露する
その横にオマケのリーダーを見付けると、皆は歓声を上げた
淑女達は蹴り上げる様に大胆にタップを踏む
スカート捲れますよ!お嬢さん………
そう想いつつも、場を入れ替わりタップを踏む
それは見事な音と踊りのハーモニーだった
途中で隼人は烈を背中におんぶしてタップを披露!
まるで子連れ狼みたく、その姿がほんわかして観客は喜んだ
そして盛り上がり、イベントは終わりを告げる
烈は「よりちゃん!」と言うと早瀬頼朝がタップを披露して「それではサブリーダーのイベント日程は本日で終了となります!
皆様 お気を付けてお帰り下さい!」とマイクを持ちながらタップを踏み言う
その姿はかなり印象的に皆の目に遺っただろう………
【何者に囚われない
何者にも干渉しない
我等の世界
それが【R&R】で在る】
竜馬のイベントが終了したから流され終わりを告げる
観客は余韻浸り、暫し動けなかった
やっぱり【R&R】のイベントは生に限るわね!
スタンディングオベーションが巻き起こり
【ありがとう!】と歓声が上がった
五万人 連日満席のイベント3日目は終了した
控室に引き上げる烈は、ケントとニックに頼み「飛鳥井建設の子が団体で来てたのよ、こっそり連れて来てね!」と頼んだ
依頼されたケントとニックは、サングラスをして漆黒のスーツを着てスタッフ証をポッケに隠して、社員を迎えに行った
その日は城田と愛染、瀬能、栗田と陣内と社員数名が来ていたのだ
突然 帰宅しようと球場を出た城田達の目の前に…
金髪でサングラス、漆黒のスーツを着た男が現れ…………「Follow me!」と謂れ…
チビる程の恐怖を味わった………
城田達が固まるとサングラスを少しだけズラシ、ケントはウィンクをした
それで「あっ………」と理解して後を着いて行った
パッと見………球場関係者に連行されていく倭の国の人間風に映ったろう………
ケントとニックは御一行様を烈のいる控室まで連れて行った
控室に行くと烈が素足を冷やして椅子に座っていた
久々のタップの靴に靴擦れしたのだった
隼人はそれに気付き烈を背負いタップをしていたのだった
烈のお兄ちゃんは頼もしく弟を担いでタップを披露なんかしちゃってくれたのだ!
城田は「足………どうしでんですか?」と問い掛けた
烈は「靴擦れしちゃったのよ………最近タップの靴履いてなかったからね
久々にタップの靴履くと靴ズレしちゃうのよ!」と言い笑う
そして「しろたん、愛ちゃん、せのちゃん、一夫と陣内と社員の皆、来てくれてありがとう!」礼を言う
愛染は「凄く良かったです!俺等は竜馬さんの3日間をもぎ取り来ました!
明日から続々と社員が入れ替わりで来ます!」と言う
「それは嬉しいわね!
でも控室に呼ぶのはしろたん達だけだから、他言は無用よ!」
瀬能は「え?………他の社員は呼ばれないんですか?」と問い掛けた
「だってボクの為に死んでくれそうな人じゃないと呼べないのよ!
何処で見られてて、付け狙われるか解らないからね!母しゃんの駒の一夫と陣内なら良く解るわよね?」
それはこの命を持って良く解るから……陣内と栗田は一瞬黙った
が、陣内は「まぁ誰に狙われようとも俺は飛鳥井建設の社員としての覚悟なら出来てる!」と言う
「怪我しでもしたら榮倉泣いちゃうのに?」
「………ぅ!!それを言いますか!!!」
烈は笑っていた
「ほらほら、顔の傷もやっと目立たなくなって来たからさ写メ撮ってよ!
だけどその写メ他には見せたら駄目よ!」
「解ってます、妻に見せるのは大丈夫ですか?」
「それなら良いのよ!」
烈が言うと城田も栗田も陣内も社員達もパシャパシャ写真を撮り始めた
其処へメンバーが加わり、Strong Hiが加わり、RODEOÑが加わり、早瀬頼朝も加わった
何か集合写真ぽくなり、ならばと言う事で城田達や社員も入りシャッターはニックが押してくれる事になった
思い出の写真が出来て城田達は喜んで帰って行った
今夜はホテルに泊まり、明日帰ると言う
烈は「何処のホテル?」と聞いた
「◯◯ホテルです!」
「あ、其処はお料理美味しいからね!
還ったら直ぐにレストランに行くと良いわ!」と言った
城田は「なら是非レストランへ直行します!」と言い皆と共に帰って行った
だがホテルのレストランは高くて………うっかり入る勇気はなかった………
烈の手前……そう答えたけど皆で目配せすると、皆頷いた
烈は竜馬に「城田が言ってたホテルのレストランのコースを人数分ボクのカードで支払っといて!」と言う
竜馬は「了解っす!」と言いホテルへ問い合わせた
ホテルの宿泊名簿を告げてレストランの予約を入れ人数分コースを頼んだ
料金はカード決済し、全てを終えるとカードをしまった
烈達は宿泊施設へと送られ帰る
真矢達は兵藤に連れられてホテルへと戻った
ホテルへと戻った城田達はフロントに声を掛けると支配人に「レストランで先にお食事をされては如何ですか?ご案内致します!」と言われ支配人に案内され
社員達はホテルでの食事って高くないですか?とやはり内心思う
でもご案内されれば断れないから………逝くしかなかった
コース料理が出され、皆カード支払いでボーナスで返そうと心に決める
が、食事が終わり精算を………と向かうと給仕をしてるスタッフに「飛鳥井烈様からのプレゼントと言う事で、既にお支払いされております!」と謂われた
此処まで優しい心遣いに皆は烈を思い浮かべ、後で礼を言おうと心に決めた
この夜の烈は保養施設に神野達を招き入れて、結構楽しく飲み食いしていた
明日から観戦に来てくれる飛鳥井建設の社員の為に、烈はお土産を贈ろうと思い人数分用意しようと奔走していた
【R&R】全員のサインを色紙に書いて貰ったり、RODEOÑのCDを無料で提供して貰いサインを入れさせたり、当然Strong HiのCDも提供して貰い人数分サインしてせっせと社員分用意する
それをケントに渡し、応援に来てくれた社員に手渡して貰う事にしたのだ
母からの報告された通りの人数、用意して応援に来てくれた社員に報いる
イベント 四日目
この日のイーサンとダニエルの番だった
和に染まる竜馬に対してイーサンとダニエルはどんな世界を披露してくれるのか?
観客は楽しみで仕方がなかった
イーサンとダニエルはアメリカの地にいるだから、自由にやろうと決めていた
花火一発打ち上げられ
早瀬頼朝が「此れより【R&R】のイベントを始めます!これから3日間はイーサン・ダニエルのターンとなります!それではイベント開始です!」と開始を告げる
すると…………汚いホームレスみたいな格好した中村翔太がゆったりとした足取りでグラウンド中央まで歩いて逝く
パット見………汚い
皆は………え?ホームレスが迷い込んだ??
と困惑する
だが翔太が観客に向かい
「チャンスは一度きりだ!さぁ掴み取れ!」と叫び………踊り出す
するとさっきの汚かった姿は…………何処にもなく
目の前には………物凄く研ぎ澄まされた体で踊る男性が一人…………
目の錯覚???
観客は唖然となった
宸睿(チェンルイ)の歌声が球技場中に響き渡る
その耳障りの良い声に………皆安らかな気持ちになっていた
その日のイベントはアメリカと言う事で、楽しく笑いがありユーモアがあり笑い声が響き渡るイベントとなった
そんな感じで中村翔太、アレクセイ・アンダーソン、エリオット・高崎を使い大成功を収めた
今回のイベントでやはり………注目を集めたのは中村翔太だろう
汚かったのに……ホームレスみたいに汚かったのに………
踊り始めたら、何?このイケメン?何?この洗練された動き……と唖然となってしまった
イーサンとダニエルは初日3連発で竜馬がかまして飛ばして来るイベントはインパクト強過ぎて………どうやっても負けてしまう………と想った
竜馬の構想はかなり早い段階で知っていたし、力を入れているのも知っていた
それが初日に来るんだから、後からやる方は堪らない
だから二人はより自由に、より楽しく、軽やかに心躍るイベントを目指してみたのだ
そして獲得した中村翔太が良い仕事してくれ、エリオット・高崎が中国雑技ばりの動きをしてくれ
そして何より宸睿(チェンルイ)が予想以上に観客の心を掴んでくれたから、納得の3日間を創れた
イベント前半戦 終了して遺すは後半戦
デービッドとサムエルの番となる
花火一発上げられると、早瀬頼朝がマイクを持ち皆の前に出て来た
その頃になると早瀬頼朝の周知度はかなり高くなり、倭の国では早瀬ってどんな人?と特番を組まれる程には人気になっていた
「それではイベントも後半戦へ突入致しました!
皆様 デービッドとサムエルが織りなす世界をどうぞご覧ください!」と言い捌けていく
初っ端からジョシュア・ミラーのパンチの効いた声が観客を圧倒させる
クロード・テラーとダンサー ハリーが登場して歌と踊りとマジックの饗宴を見せつける
そして隼人が登場して………ん??萎れてる!!
覇気のない一条隼人………登場しちゃった???
覇気のない、やる気のない一条隼人を元気付けようとハリーは頑張り踊ってマジックしちゃっうけど、萎れた隼人は戻らない
隼人はでよ~ん、でろ~ん、と言う擬音が似合う動きしかしなかった
デービッドは「Oh!No!」と頭を抱えた
由香里は「俺が今から蹴飛ばして来てやるわ!」と言う
そんな時、観客席から「隼人!シャキッとしねぇなら還って越させねぇかんな!」と怒声が送られると、隼人はシャキッとした
るんるんと楽しくキレキレっの動きを披露しちゃう!
烈はデービッドに「狙ってやったの?こんな演出リハーサルの時なかったよね?」と問い掛けた
サムエルは「なかったよ、まさか萎れた隼人が出て来て……やる気皆無になっちゃうなんて………誰が想像出来るのさ………」とボヤく
「あの声は母しゃんね!
やっぱ隼人は母しゃんが大好きなのね!」と笑う
デービッドは「笑えないよ!烈!!康太さん来てなかったらアウトだったじゃないか!」と訴える
「まぁ隼人は萎れてても仕事はちゃんと仕上げるわよ!
でよ~んでよ~んでも仕事はしたわよ………
でも何であぁも萎れていたのかしら?」
烈は理由が解らなくて呟いた
竜馬は「何時までも腑抜けていたら僕が張り倒しに行く所だったよ!」とニコッと笑う
兵藤と阿賀屋は台詞と顔が………釣り合ってねぇじゃねぇかよ!と想った
しかも一人称【僕】が出てるって事はかなりのお怒りモードなのだ
何はともあれ、その日の公演は無事に終了した
控室に戻ると烈と竜馬と【R&R】のメンバーは控室にはいなかった
隼人は怒ってるんだ………と理解した
控室に遺った兵藤は「アイツ等ならいねぇよ!
お前の顔を見たら竜馬が飛び掛かりそうだから保養施設へ連れて帰った
でも隼人、その理由解るよな?」と少し怒って問い掛けた
隼人は「済まなかったのだ………オレ様もまだまだ未熟と言う事なのだ………」と呟いた
其処へ康太が一人でやって来て
「済まねぇ、許してやってくれねぇか?」と言った
兵藤は「理由による、本番でやっちゃぁいけねぇ事をしたのは隼人だろ?それなりの理由話せよ!」とキツい言葉を投げかけた
「音弥が水疱瘡になり、兄弟全員、そしてまだ水疱瘡やってなかった北斗達も……渡米どころか学校も休みだよ!」
兵藤は「え??水疱瘡………レイもか?」と問い掛けた
「あぁちっこいのも水疱瘡やってる
だから皆が応援に逝くのは無理になったと隼人に言ったんだよ!
隼人は皆が見てくれるんだ!と楽しみにしていたからな………その衝撃は凄くてな………
済まなかった、本番前に言う事じゃなかった……」
康太は謝罪した
ちっこいのが水疱瘡になる……それは結構大変な事なのだ
掻いちゃ駄目って言っても無意識に掻いちゃうから………そしたら下手したら痕が残ってしまうのだ
兵藤は「それ烈は知ってるのか?」と問い質した
「言ってねぇよ………それより烈どうしてる?
連絡が着かねぇんだけど?」
兵藤は意外な顔をして
「え?烈……連絡が着かねぇって?」と問い掛けた
「ラインは此処3日既読すら着かねぇし、電話もねぇ………」
「あ、アイツの携帯……海外では使えないのが多いらしくてラインはPCからしてたな
そのPCは不具合が出てるからなスタッフが修理に出してるわ
それが3日前の事だから連絡着ける手段なかったんだろ?
それでも今日皆が来ると想ってたから言わなかったのかもな……」
烈の携帯、そう謂えば…………海外で使える仕様にしてなかった……
と今更ながらにその事実に直面する
何度も何度も海外に行ってて、それでも連絡は着いたから忘れていた
康太は「失念していたわ、アイツ………謂わねぇからな……そう言う事…………」と悲しげに呟いた
兵藤は「烈に何かあれば俺の方から連絡するから大丈夫だろ?竜馬もいるんだし!
それより伊織は?お前一人で来たのかよ?」と問い掛けた
「伊織と一緒に来てるから大丈夫だ!
ニックが来てくれ入れてくれたから控室に来られたんだよ!
でもニックはイベント終わったら来てくれた社員達にプレゼントがあるから配らなきゃ、と言ってたから伊織はそっちにいるんだよ!」
成る程、二手に分かれて来たのかよ、と想った
「オレ等は最終便でトンボ返りしねぇとならねぇかんな、お前………烈を頼むな!」
「大丈夫だろ?真矢さん達も神野達も遺っているるからな!
お前は気にしなくても大丈夫だろ?」
「烈に謝っておいてくれ!」
「烈なら許してくれだろ?
まぁあのクソ面倒臭い竜馬やメンバーは少しだけ恨むだろうけど………な」
「まぁ下手したら足跡消えちまう失態だからな、恨まれようが仕方ねぇよ!
オレ等の軽率な行動で大きなイベントが消えちまう所だったんだ!」
隼人は反省しまくりで「済まなかったのだ!」と謝罪していた
康太は忙しそうに話をすると控室を出て行った
阿賀屋は「プロならば明日はちゃんと仕事して下さい!それが烈に報いる為になる!」と言い遺して還って行った
兵藤は皆をホテルへ連れて行き、食事をさせて部屋へ戻った
隼人は反省しまくりだった………
まぁ実際 動かないタレントならば、マネキンでも置いておいた方がマシってものだから仕方ない
康太達は大慌てで帰国して行った
飛行機の中で「隼人に言うんじゃなかったな……まさか家族が見に来ねぇだけでデロンデロンになるなんてな……あんなの観に来た観客への冒涜じゃねぇかよ……」と後悔する
榊原は「またしても私は失念してましたね…………烈の携帯海外仕様ではなかったのですね……
PC調子悪くて修理って何があったんですかね?」心配して言う
父の心配は尽きないのだ
康太は「烈関係は視えねぇからな……解らねぇな……でも相当な危機ならば星は赤く光る
そしたらオレは烈の星に導かれアイツの元へ飛んてやるさ!
オレに報いる為だけに何度も何度も転生してくれたアイツを………オレは見捨てる気はねぇかんな!
アイツがオレの為に命を賭す気ならば、オレだって同じ気持ちだかんな
伊織も………そうだろ?」と問う
「ええ、死して魔界へ還ったとしても私達の為に、身命を賭しても完遂する!とまで言ってくれましたからね
私達もあの子の想いに報いねばなりません
それよりも帰国したら直ぐに海外仕様の携帯にせねば………なりませんね!
あぁ………どうして君が海外に行った時に後悔したのに………忘れていたりしちゃったんでしょう………」
榊原は悔いていた
「PC直らねぇと………連絡取れねぇのかな……」
「竜馬がいるんだし、何とかしてくれるのを期待したいんですがね………
竜馬は案外根深い性格してるので………今回は許してくれるか?
解りませんね…………また許しても少しだけ恨んだりするんでしょうね…………
未だに戸浪も恨んでいるんでしょ?」
「だな………ヨニー関係の人間だって少しだけ恨んでるさ!烈が指示さえしなきゃ動きたくない程に………な!」
愛する大切なリーダーなのだ
愛する大切な副社長なのだ
愛する大切な社長なのだ
そりゃ少しだけ恨んだりするだろう………
だが恨んでいても何も始まらない
歩かねば明日へと繋げられない、と言う烈の為に彼等は動くのだから…………
康太と榊原はこのまま………何もなくイベントが終わり烈が帰国してくれる事を祈っていた
烈………ちゃんと還って来い!
イベント会場を後にした【R&R】のメンバーは怒っていた
竜馬はリーダーが遺す足跡が消えてしまうのを懸念して………怒り狂っていた
だから隼人には会わずに保養施設へと還って来たのだった
神野は隼人に何故あんな事をした!
と怒って事情を聞いた
すると隼人はイベントの前に飛鳥井の家族が来れなくなった事を康太が会いに来てくれ聞いたと言う
何でも兄達も北斗達もちっこいのも、皆水疱瘡になり飛行に乗れない状態だと康太から伝えられたと隼人は話た
皆が来てくれる、そんな思いで頑張った想いが一瞬で途切れた
本番まで引き摺るのは………プロに在るまじき行為だった………と隼人は反省して神野に話した
神野は隼人から聞いた事情を話し「本当に済まなかった!」と【R&R】のメンバーと竜馬と烈に謝罪した
兄達や他の子も水疱瘡に掛かっていると聞き【R&R】のメンバーは少しだけ心配した表情を見せたが…………烈の表情は変わらなかった
冷たい…………まるで能面みたいに表情のない顔だった
烈は「舞台に上がったら親の死に目にも会えない!それが演者としての死命だと………隼人は理解出来ない程に未熟だったのね……
ならば我等は今後は隼人を使うのは考えないとね!親が死んだと聞いて木偶の坊になる演者は要らないのよ!
涙も喜びも哀しみも………全て飲み込み糧として演者は生きねばならないのよ!
それが出来ないお子様は……要らないのよ!」とハッキリと言い捨てた
竜馬はこんな時の烈は………血も涙もない………と何時も想う
飛鳥井の為になるか?ならないか?
それを使えるか?使えないか?
烈の思考のベクトルは総て飛鳥井へ向かう
こうして【R&R】として立っている今も、親に誇れる自分で在らねばならない、と自分を律して行きているのだ
必要ならば親兄弟でも斬らねばならない
未練も情も掛けずに斬り捨てねばならない
隼人を斬り捨てるのは容易いのだろう………
兄と慕っていたとしても………
神野は言葉もなかった
一緒に来た須賀や柘植………相賀も………何も言える言葉なんてなかった
阿賀屋が「今 此処に一条隼人を呼べよ!明日のイベントに禍根を遺しては大きな足跡なんて残せねぇぜ!宗右衛門!」と言った
烈は嫌な所をやはり突いて来るな………と腐れ縁を見る
阿賀屋は嗤っていた
芸道を極め、今も芸道を護るべき存在が嗤っていた
神野は阿賀屋の言う通り、兵藤が隼人を保養施設にまで連れに向かってくれた
アメリカ軍の特殊部隊の隊員と兵藤がホテルまで隼人を迎えに行く
隼人は仰々しいお迎えに唖然となりつつも、兵藤と共にお迎えの車に乗った
そして連れて来られた先は………アメリカ軍の中だった
幾つもの厳重なゲートを潜り連れて来られたのだ
隊員の中で一番偉い人間が「中へどうぞ!扉を開けば行けるので!」と言い還って行く
兵藤は来た事があるから扉を開いて中へと入った
保養施設の中はホテルばりの造りだった
外は軍の中に在っても遜色ない殺風景な建物なのに、中は豪華なホテルみたいな感じで………そのギャップに隼人は唖然となった
そして皆がいるであろう部屋をノックするとヘンリーがドアを開けてくれた
一歩中へ足を踏み入れると………其処はシベリア並みに冷え切った瞳をした奴等の溜まり場だった
隼人は「れ…………」烈と近くに行こうとした
が、其れを阿賀屋が阻止してソファーに座らせ
「君さ、なにで食ってるのさ!」と問い掛ける
隼人には意味が解らなくて………首を傾げ
「オレ様は演じて生計を立てているのだ!」と何とか言った
「でもさ君、あんなパフォーマンスしか出来ないなら、マネキン置いておいた方がまだマシだよ?
今日のお前はそんな仕事しかしてないじゃないか!」
キツい一撃を食らわされ……隼人はまるで横っ面を張り飛ばされた様な痛みを覚えた
「済まなかったのだ………」
と隼人は謝罪した
烈は何も言わない
竜馬も何も言わない
本当ならは飛び出して殴り飛ばして、此れで遺恨は残さねぇからな!とやりたい
だが烈が怖すぎて………其れは出来ないから黙っていた
ヘンリーは「謝罪はさ面目潰されたデービッドとサムエルに言いなよ!」と言う
リーダーが能面の様に冷静過ぎて怖くて………
其れしか言えなかった
隼人はデービッドとサムエルに深々と頭を下げ
「本当に済まなかったのだ!」と謝罪した
デービッドはやはりリーダーを見る
サムエルもリーダーを見る
リーダーは微動だにしなかった
耐え切れずデービッドは烈に抱き着いた
「リーダー!俺等は少し恨んで終わりに出来るんや!やから明日のイベントの為に何か……言ってくれんと………皆不安で寝られへんやんか!」と言う
サムエルは泣いて烈に抱き着いた
烈は「ボクは今、PC修理中で家族とは一切連絡取れないのよ!」と的外れな事を言う
隼人は「え?烈は海外でもラインしていたのだ!」と何度もラインで連絡していたと訴えた
「だってさ父しゃんボクの携帯を海外でも使える様にしてくれなかったからね
飛行機に乗ったら連絡OUTなのよね
だからPCで遣り取りしてたけど………回線に割り込もうとした馬鹿いたから回線焼き切れたのよ
PCの修理じゃなく高スペックで尚且色んな機能着けたPCを竜馬がプレゼントしてくれたから、其れ待ちなのよ!」
烈が言うと竜馬は
「烈が色んなスペック追加し過ぎて時間が掛かっているのに、壊しちゃったから連絡ツール無くしちゃったんじゃないか!」とボヤく
「そうか、にーに達もレイたん達も水疱瘡か………ボクまだ掛かってないのよね………
前世で掛かってカユい想いしたのよね………
其れじゃ疫病だからアレは飛行機乗れないわね」
「烈、知らなかったの?」
「連絡取ってないからねボク
連絡手段何もないからね、知らなかったのよ………
多分 母しゃんボクに何度も連絡してくれたわね
って事は…………母しゃんが危ない!!」
烈は顔色を変えて叫んた
今頃は飛行機に乗っているかも………
烈は首に下げた勾玉を手にすると
「あまちゃん、母しゃんと父しゃんが危ないのよ!何とかして!!」と訴えた
すると勾玉から天照大御神の声が響き渡った
『主は何も心配せずともよい!
総ては妾に任せるがよい!』
天照大御神の声を聞き烈は安堵の息を吐き出した
「そっか………レイたん達が来たならば諸共で消されたからね!
回線を乗っ取って情報を抜き取ろうとしたのも、その所為ね
だからボクのPC狙われたのね……」
烈の呟きに兵藤の顔色は青褪めた
兵藤は「見て来るか?」と尋ねた
「逝かなくて大丈夫よ!兵藤きゅん!
あまちゃんが何とかしてくれるわ!
それより、もぉ寝ましょう!」
阿賀屋は「隼人はどうする気だ?」と問い掛けた
烈は冷酷な笑みを浮かべ、唇の端を吊り上げ
「プロ意識在るならば、同じ鉄は踏まないわよ!
もし同じ鉄踏むなら………明日へと続く道ごと消し去ってやるわよ!
母しゃんの子として生きているなら、母しゃんの顔に泥を塗るのは止めるのよ!
でなくば、即座に息の根止めてやるわ!
飛鳥井家真贋はボクのやる事に文句は言わない
文句を言った瞬間、ボクは飛鳥井を切り捨てる
そしたら1000年続く果てなんか消え去るしかないのを知ってるからね!」
と吐き捨てた
その言葉の重さを………飛鳥井で生きた日々を送った者ならば思い知るのだ
隼人はもう言い訳も何も言わず、深々と頭を下げた
烈はそれを見て何も言わず部屋へと戻った
竜馬がそれに続き等メンバーもそれに続き出て行った
【R&R】のメンバーと烈が消えると重々しい空気はやっと消えた
神野はふうっーと息を吐き出しソファーに座った
「烈は康太以上に手厳しいな、やっぱし……」と呟いた
須賀も「本当にどうなるやら………あんな烈はあまり見たくはないですね………」と言う
柘植は「この場に相賀がいなくて良かったです!
年寄りは早寝早起きよ!と寝させられ……今は良かったと思います
あんな能面した烈の顔は……見たくはないですからね………」と言う
烈の………瞳には何が映ってるよ?と聞きたくなる程に…………冷たく…冷酷な空気を纏っていた
どんな状況でも冷静沈着で、曲がるならば親でも兄弟でも家族でもさえも…………斬らねばならぬ存在
飛鳥井と言う家の秩序と規律を護るべき存在
兵藤は「烈……お前の背負う荷物は重すぎだろうさ………」と呟き一生にラインを送信した
「康太が危ないって烈が言ってたけど、大丈夫なのか?」
直ぐ様一生からラインがあり
『黒いのと金運が上がる奴が爆撃を受けた飛行機を持ち上げて運び、無事に飛行機を不時着させたって言ってたから、俺と慎一は迎えに来てる所だ!
飛行の乗客は全員無事だそうだ!』
と返って来て兵藤は安堵した
一生は『其れよりも隼人やっちまったな………飛鳥井の家は衛星放送を【R&R】のイベントを見る為にだけに加入してリアルタイムで見てたんだよ!
そしたらデロンデロンの隼人が出て来て……レイが『なぐりとばちゅ!』と怒って止めるのめちゃくそ大変だったんだぜ!』
兵藤はその光景が思い浮かべられ笑った
「烈が能面みたいな顔で………隼人を見ていた
俺等は何も言えねぇからな……ドキドキだった
あまりにも表情が変わらないからメンバーは泣いて収拾がつかなくなっちまった程だった」
『俺は朝イチで飛行に乗り烈のサポートに当たる!今回、京香が家の事は任せろ!烈のサポートをしてやってくれ!と言ってくれたからな、俺がアメリカに行く事になったから!
烈の携帯、海外仕様じゃねぇんだろ?』
「みたいだな、PCも回線焼き切れて壊れたらしいって言ってたから、音信不通になったみたいだな
それより………康太と伊織は無事なのかよ?」
『だから無事だって言ってるやんか!
無事じゃなきゃ烈の所へ行く事はまず無理になるからな………』
「解った、待ってる!」
『ヤンキースタジアムだったな、ケントに言いパスを貰ったら烈のサポートに入る!なら向こうでな!』
そう言い一生は電話を切った
康太と榊原が無事だと聞き、何とか安堵の息を吐いた………
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