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第92話 日常へ そして魔界へ
今世紀最大の喧嘩を売るイベントは大盛況で幕を閉じた
スタジアムを借りた費用とか人件費を差し引いたお金は【R&R】の事務所に入金される事になっていた
やっと大きなイベントが終わった
そして打ち上げも盛り上がりホテルへ移動して盛り上がっていた
烈はシェリーを部屋に招き入れた
部屋に入ってソファーに座ったシェリーに、烈は自分の両親は同性だと告げた
だからこそ父の両親が、母の為に子を産んだ
その子が兄達と烈、3人
その他にも両親の違う兄がいる
そう言い烈は兄達の写真を見せた
シェリーは「何故……私に………それを見せるのですか?」と問い掛けた
「それはねシェリー、貴方が同性の恋人がいるのを恥に想っているからよ!」とズバッと謂う
シェリーは顔を青褪めさせた
「まぁね同性の恋人がいたら世間からは弾かれるし、気持ち悪いとか言われるわね
だからと言って隠していたら………何時か自分は壊れるわよ!」
「貴方に何が解る?両親が同性だから分かった気でいるのか?」
「ボクは人を愛さす四半世紀来たわ
妻は………ボクの目の前で………ボクを潰そうとする奴等に犯され甚振られた
ボクはそんな妻と子を奪還し一緒に消える気で復讐した
復讐は未遂でボクは………人の世に堕とされた………
それからは誰も愛さずに来たわ!
それこそが妻への贖罪だと想って………何時の間にか………妻はか弱き存在となりボクの記憶を書き換えてしまっていた
ボクは人は愛さなかったけど、男も女も抱いたわ
素人には手は出さなかったからプロとね
まぁ本気になられて殺傷沙汰に良くなったわね真央たん………」
阿賀屋は話を振られ笑って
「だな、一緒になってくれないなら貴方を刺して私も死ぬ!って謂われたな……
まぁ俺もお前も下半身ユルユルだったからな仕方がないが………本当に刺されて病院送りに何度もなったよな……」
と、遠い目をして謂う
「セックスなんて愛がなきゃオナニーと一緒よ!
シェリーは誰を愛して抱いてるの?
愛した人を腕に抱き多幸感を感じる時、それはセックスとなるのよ!
ならその相手を大切にしないと、何時か貴方は誰からも愛されなくなるわよ!
占い師のボクが視た結果、貴方は今、分岐点に立っているのよ!
それを決めるのは貴方でボクじゃない!
だけど言えるのは後悔しない人生を送って!
それだけよ、話は終わりよ!
自分の部屋に帰って貰って良いわ!」
シェリーは図星を指されて動けずにいた
一生は「飛鳥井宗右衛門と謂う御人は星を詠み、運命を占う占術師でもある御方だ
宗右衛門に占って欲しくて申し込み、本当に占って貰えるまで3年以上掛かる
そんな宗右衛門に占って貰えただけでも、ラッキーだと思え!」と言い部屋から追い出した
一生は「おめぇも康太と同じお節介な奴だな!」と笑った
「分岐点に来てる人はそれに気づかない………気付いた時にはもう、手遅れで後悔しか残ってない
そんな子が多いのよ…………だから自分の知り合いになった子には分岐点に来てるって教えてあげるのよ!全部は救えなくても、少なくとも手の届く範囲の子は気付かせてやれるわ!
でもどう動くかは………本人次第だからね………」
「アドバイスはしてやったんだ!
聞かねぇ奴はそれまでだ、気にするな!
それより撤収完了を確認した後、球団に礼を言いに行ったり、インタビューが入ったとかで帰国が1日伸びただろ?
だから聡一郎に頼んで皆が乗る飛行機の手配してくれる様に頼んでおいた
目立つだろうから【R&R】のメンバーとは時間をズラて飛ぶように手配してくれた
【R&R】のメンバーと神野達はお前たちより早い便で帰国し
お前と竜馬と貴史と阿賀屋と真矢さんと清四郎さん、清家はその後からだから、午後からになる!
俺はお前と一緒に帰国する
それで良いんだよな?
結構大移動になるから慎一がバスを出すと言ってくれてる!」
「それは助かるのよ
やっと帰れるのよ…………」
烈はやっと帰国出来る事が嬉しかった
約一ヶ月アメリカにいたのだ
父の料理が恋しくなっても仕方のない事だった
烈と竜馬と【R&R】のメンバーはヤンキースタジアムの撤収作業に全力を注ぎ
全てを撤収した後 球技場を貸してくれた本部へ礼を述べに向かった
球団関係者は【R&R】のファンで特別席で見ていたという
また今度機会があれば始球式に出て下さい!と謂れ
今度はヤンキースタジアムで始球式をやる時には必ず出ると約束した
そして特集を組んでくれると謂うアメリカの雑誌のインタビューを何社か受け、イギリスの雑誌のインタビューも受けた
東都日報の今枝が「インタビューさせて下さい!
それで貴方の今世紀最大の喧嘩を売るイベントは完成します!」と申し出てくれたからインタビューを受けた
全ての撤収を見届け、インタビューを全て終わらせ、烈はやっと倭の国へ帰国する事になった
飛行機は昼少し前に【R&R】のメンバー、神野達が先に帰る事になった
一緒に還れば目立つから【R&R】のメンバーは先に帰国して、烈達はギリギリまでインタビューが入ってるから昼からの便だった
一生は慎一に【R&R】のメンバーの搭乗時間と、自分達の搭乗時間を告げた
倭の国へ来る時間を図り迎えに行くと言ってくれた
一生は「何事も無ければ良いんだけどな………」と言った
康太と榊原は事故に遭い下手したら死んでいたかも知れない大惨事となる所だったからだ……
烈は「大丈夫よ!カズ!飛行機の上、トキたんが乗ってくれるから!」と言った
トキはラスボスが一番警戒すべき存在だから………下手に手出しはして来ないだろう……
烈達はギリギリまでインタビューが在り、車をめちゃくそ走らせ、空港まで向かい飛行機に乗った
アメリカ特殊部隊の隊員達は、無事アメリカの地を旅立ってくれて安堵していた
無傷で還せれたのだ…………
飛行機に乗った烈は直ぐに寝た
やっとの想いで倭の国へ到着すると空港を出ると慎一が迎えに来てくれていた
バスに乗り込むと、バスの中にはトキが既にいた
慎一が「彼は検問もないのでかなり早く来てましたよ!」と謂う
そして皆で乗り込み飛鳥井へと向かった
慎一は「久遠先生が待ってます!」と言った
烈は「………!!ヘルシーなのしか食べてにゃいから大丈夫だわ!」とドキドキしながら答えた
飛鳥井記念病院の前に着くと、皆は降りて病院へと向かう
烈は「皆は慎一くんと一緒に帰ってて大丈夫よ?」と謂う
竜馬と兵藤は「俺等は新居は知らんから後で良い!」と答えた
久遠がやって来て、全員を連れて越させて検査をする
検査の場には【R&R】のメンバーと神野達もいた
烈は「え?帰ったんじゃないの?」と問い掛けた
神野は「先に空港近くで昼食べて病院の駐車場に車を停めたら久遠先生と出くわして『久し振りだな、よし!検査してやるよ!』と連れて来られたんだよ!」とボヤいた
【R&R】のメンバーも戦々恐々で検査されていた
烈が検査に入ると一生も竜馬も兵藤も真矢も清四郎も清家、阿賀屋までもが検査される事になった
皆 一通り検査され、烈が終わるのを待っててくれていた
慎一と一生は夕飯の買い出しに出ると出掛けて行った
久遠は「烈、背中の傷治ってねぇのか?」と問い掛けた
「毎日消毒に行ったわ、でも暑くて直ぐ汗かいちゃうから…悪化してる!と朝も怒られたわ………」
「治療はされてるからそれは解る
暫くは消毒に通え、良いな解ったか?」
「解ったわせんせー!」
「うし!帰って良いぞ!」
「せんせー話もあるから、今日義泰としづちゃんと一緒に飛鳥井へ来てよ!」
「解った、後で向かわせて貰うわ!」
烈は待っててくれた皆と共に飛鳥井の家へと帰った
兵藤は横のマンションのエントランスに入って行くから、上に住んでるんだと思った
が、エントランス入って直ぐに管理室に入り、監視カメラを作動して着けられてないか?確かめて奥へと向かう
兵藤は「え?上へ行くんじゃねぇのかよ?」と問い掛けた
「飛鳥井の新居は裏よ!」と言いマンションを抜けて出る
すると5階建てのビルが建っていた
烈は認証コードを入れロックを解除すると中へと入って行った
シューズクロークに入り靴をしまい応接間へと向かう
応接間に入るとレイが「れちゅ!」と飛び付いた
兄達は「お帰り烈!!」と出迎えくれた
そして祖父母に抱き着き「ばぁちゃん、じぃちゃん!」と抱き着いた
烈は「兵藤きゅん、竜馬と共に源右衛門の部屋で寝ると良いわ!
みかかちゃが使ってない部屋があるからね!
にーに、二人を源右衛門の部屋に案内してね」と言った
そして荷物を手にして自分の部屋へと向かう
竜馬は烈の荷物を持ってやった
4階までエレベーターで上がり自室へと向かう
ドアを開けると其処は寝室とリビングと切り離された広々とした空間だった
フローリングにソファーとテーブルが置いてありリビングとして使われているのが解る部屋だった
烈はドアを開けて寝室へと入った
竜馬は「今度の家は大きいね!」と言った
「2年間住めたら御の字なのよね」
と言い着替えて、洗濯ネットに洗濯物を入れる
持って行った着替えもネットに入れ洗う準備をする
洗濯室へ行くと、大空と流生が待ってていてくれた
流生は「洗濯するんでしょ?」と謂う
大空は「烈は洗濯物を溜めるの嫌いだもんね!」と言い、烈の洗濯ネットを洗濯機の中へ入れ、洗濯を始める
其処へ音弥が来て「烈の部屋、僕達が順番で掃除していたからね!
今朝も掃除したから大丈夫よ!」と謂う
「にーに、ありがとう!」
翔と太陽がやって来て「そっち終わったらお手伝いよ!」と呼びに来た
流生は「乾燥までセットしておくから、後で干せば大丈夫よ!」と言い客間へと向かう
竜馬と烈がエレベーターに乗ると、兄達は階段を下りて行った
其処へ瑛太が帰って来て、烈を見ると鞄を放り捨て、烈を抱き締めた
「お帰り烈!」
「ただいま、えーちゃん!」
「会社は今 免震構造の講義を御影がしてくれているので、講習会の日々です!
君が帰国すれば動き出す様にしてあります!」と謂う
「それだと地震に強いを売りにビルが建てられるわね!」
「1000年続く果てへ逝く為ですからね!
我等は日々努力して学び宗右衛門に続くと決めています!」
「ボク、今週は会社に顔出すけど、来週から2週間位はまた留守にする予定なのよ
帰って来たら本格始動するからね
御影もそろそろ配置しないと駄目だし………布石を打っておかないとね!」
「君の留守は私達が護るので安心して行って下さい!」
「ありがとう!えーちゃん!」
仲良く抱き合う二人に、会社から帰って来た康太と榊原と清隆は苦笑していた
康太は「仲良い所悪いけど、ここ玄関だぜ!」と謂う
烈は「母しゃん!ただいま!」と抱き着いた
「お帰り烈!」
と康太は烈を抱き締めた
榊原は「ほらほら玄関ですよ!」と応接間へと烈を入れた
「父しゃん ただいま!」
「お帰り烈!」
「ボクね来週また留守にするから!
今週は飛ばして会社に顔を出すわ!」と謂う
「解りました!やらねばならない事があるのですね!飛鳥井は烈が発破を掛けて行けば大丈夫な程にしておいて下さいね!」
「了解なのよ!」
榊原と康太は着替えに向かった
清隆は「烈 お帰り!」と言い抱き締めてから着替えに向かった
クーは「お前、背中の傷治ってないのか?」と心配して聞いてきた
「そうね、細工してあったのか?治らないのよ」
「八仙が塗り薬をくれたからな後で塗ってやるよ
それと神髄師の薬 飲んでねぇんだろ?
今日から忘れずに飲め!良いな!」
「クーたん!」と烈はクーに抱き着いた
クーは烈の背中を擦り「ほら宴会の準備しねぇと怒られるぞ!」と謂う
客間ではもう既に酔っ払いが隅っこで飲みまくっていた
榊原が夕飯やツマミを作るとテーブルに乗せ、皆で夕飯を食べる
久し振りの光景だった
夕飯を食べ終わる頃、久遠が志津子が義泰と神威を連れてやって来た
神威は烈を見ると「お帰り!」と抱き締めた
「ただいまなのよ!」と嬉しそうに笑う
客間に通されると慎一に「夕飯食べましたか?」と尋ねられた
すると久遠が「まだだ!」と謂うと榊原は用意していた夕飯を4人の前に並べた
義泰は烈に「お帰り烈、話があると聞いたんだけど?」と問い掛けた
「ただいまなのよ義泰!
そうなのよ、話があるのよ
で、話ってのはやっとこさ元飛鳥井の家の騒動も落ち着いて彷徨く人間いなくなったとかで、警察も引き上げたのよ
だから飛鳥井の家リフォームしたのね
で、表札は【久遠】と入れておいたから引っ越してくれて良いわ!
でもね………条件があるのよ……」
「え?儂等は元飛鳥井の家に住めるのか?
で、条件は何なんだ?無理難題じゃなければ聞けるが、無理難題なら、それは聞けない話となる!」
「神威と有栖をあの家で引き取って欲しいのよ
有栖は必死に神威に報いようと頑張って家の事も、勉強も必死にやってるわ!
自分の存在理由を探しているのよ、有栖は……
神威がさ、最強に忙しくなると有栖は一人きりなのよ、だから面倒見て欲しいのよ
だから一緒に暮らす事を許可してくれたならば…………有栖の生い立ちを話すわ!」
烈が言うと神威は「烈、それは辞めろ!」と怒った
「怒られようが、殴られようが、ボクは正しい道に導かなければならない死命があるにょよ!
況してや同居となるなら事情位話すべきよ!
それが共同生活をする上でのルールよ!」
「ならば一緒に暮らさなくても構わない………」
何時になく………弱気な神威にトキはクチバシ攻撃をして突っ突いた
「トリ臭くなるじゃろうが!」
と怒る
トキは「お前、人の感情の機微に疎いから、有栖がどれだけ精一杯なのか………解らねぇんだよ
アイツに必要なのは………人の愛だな」と謂うと神威は顔色を変えて
「お前………有栖に逢ったのかよ?」と問い掛けた
「烈に頼まれたから一度会いに行った!
慎一が一緒に動いてくれたから助かったよ!」
グビグビ酒を飲み謂う
ショックを受けた神威は放っておいて
「で、今 元飛鳥井の家はリフォームしてるのよ
ドアも施錠出来る様に防犯上の心配もバッチリにしてあるわよ
食事は順番の当番制で、洗濯は各自でって感じでルールを設け共同生活して欲しいのよ」
と話す
義泰は「別に同居など構わぬよ!で、その有栖とは誰の事だ?」と問い掛けた
烈は唖然とした顔をした
「ゆって………にゃいの?
会わせても……にゃいの?」
「…………」
神威は黙った…………
烈は言葉を失った……
こんなに不器用だったのだ……この男は…………
康太が見兼ねて口を開く
「神威、おめぇは必死にやってるのは解る
おめぇは良い父ちゃんなのは実証済みだ!
だから此処がお前と有栖の分岐点になる!」と言った
重々しい沈黙が流れ、烈はどう切り出そうか??と悩んていた
そんな時 志津子は「吐きなさい!神威!姉はお前をそんな卑怯者に育てた覚えはありません!」と言い切った
神威は仕方なく…………重い口を開いた
「有栖って謂うのは儂が養子にした子の事だ………」と言った
義泰は「妻もおらぬのに養子じゃと!!それじゃ世間的には………同性婚と思われてしまうではないか!」と驚いて口にした
ピキッと額に怒りマークを貼り付け志津子は
「お前が養子を貰ったと謂うなら、何故私達に知らせなかったのですか!
忙しいお前に子育てが出来るとは想いません!」
と言い放つ
その迫力と怖さに………思わず烈はチビリそうになる
烈は………「ばぁたんと同じね………怒ると怖いのよ………レイたん、椋、凛、漏らしてないわよね?」と問い掛けた
凛と椋とレイはあまりの怖さに涙を浮かべ、ぷるぷる震えて「「「ちびった………」」」と泣いた
兄達は慌ててちっこいのを連れて行った
そして北斗達は漏らした床を拭いていた
義泰は「志津子………お前が怒ると次代がチビる!
止めておきなさい!」と叱った
志津子は「すみません!何も言わない神威にイラッと来たんです!
これじゃ烈が案じて当たり前じゃないですか!」と謂う
烈は「有栖の話しして良い?」と問い掛けた
義泰と志津子は居住まいを正して頷いた
「有栖はねルビアンカ連邦共和国の幼く亡くなった王子の歹を用いて作られた傀儡なのよ!
あの白の聖教団とか謂う教団が作った傀儡なのよ
それを暦也が知り、理不尽さに有栖と謂う名を着け、麻莉亜に託したのよ!
そして有栖院 有栖として有栖院家で暮らしていた、でも次代の翁の誕生に居場所を無くした有栖を一旦 神威に引き取って貰ったのよ
そしたら神威が養子にしてくれて今に至るのよ」
と全部話した
義泰は「その話は私たちが聞いても大丈夫なのかい?」と問い掛けた
「もうこの世の何処にもルビアンカ連邦共和国なんて国はないから大丈夫でしょ!」
志津子は黙って聞いていて決意を決めた様な瞳をして
「神威、私達にその子を紹介なさい!
多忙な貴方では手が回らない事も多々とあるでしゃう!その子の今 幾つなの?」
それには康太が話した
「有栖院に貰われて直ぐに家庭教師を着けて、一般常識や教育を施した
その後、容姿的に幼稚舎から始め、神威が引き取って今 初等科の4年か?その位になる
何だって烈と同級生かもだけど、烈はマトモに学校に通ってねぇからな解らねぇんだよ、其の辺は!
有栖は………嬰児の躰に歹を入れ作り上げた傀儡として生まれた
誕生して、数年は眠るだけの生活していたと謂うからな正式な年齢は解らねぇんだよ!
暦也が連れて来た時、有栖は何もわからない赤子のようだった……と栗栖は言っていたから正式な年齢は解らねぇんだよ!」
何とも過酷で重い荷物を背負わされた子なんだろ?と志津子は思った
「ならば尚更、私達の手を借りねばならないのに………何をしてるんですか!この馬鹿弟は!」
と怒る
神威は「有栖はええ子なんじゃ!
部屋の掃除だって綺麗にやる!
儂が埃で死なん!と言っても綺麗に掃除して洗濯して、ご飯も作るええ子なんじゃ!」
「神威!」
「はい!姉さん………」
「同居は決定のようね!良いわね!」
「……はい!」
萎れる神威が可哀想になり久遠は
「母さん、其の辺にしておきましょう!
ちっこいのがチビる程怖いんですから!
辞めておいて下さい!
烈も危うくチビっていたかも知れないんですよ?」
と止めた
烈は「前にばぁたんに怒られて………怖くてボク………チビッたもんね………
しづちゃんの迫力、それに似ててヤバかったわ」とボヤいた
真矢は「あら烈、ばぁたんは怖くないわよ!」と、ほほほほと笑っていた
「しづちゃん、明日また飛鳥井に来てくれないかしら?
そしたら有栖と合わせるわ!
物凄く頑張る良い子なのよ
でも何時も悲しげな顔が気になっていたのよ
それと…………此れが本題なんだけど、有栖の健康状態を気にしてやって欲しいのよ!
有栖と同じ安倍晴明と蘆屋道満の歹を使って生み出された子達は、今も元気で子沢山の生活してる
誕生の仕方が特殊だっただけで、何も変わらない【人間】なのよ!
お願い出来るかしら?」
義泰は「あぁ任されよ!宗右衛門!」と言ってくれた
久遠も「あぁ家族が増えるのは別に構わしねぇよ!生まれ方がどうであれ、神威の子なんだろ?
ならば栗栖と纏めて面倒見ても構わねぇし!」と言ってくれた
義泰は「栗栖って飛鳥井で子どもの世話してる子か?それがどうしたんだ?」と不思議そうに言う
「有栖と栗栖はお前の子になったんだろ?」
「何でそれを?何処で知った?」
神威は驚いて聞いた
志津子は「お前は養子を二人も取ったのですか!」と怒る
久遠は「トキが烈がいねぇのに慎一と動いていたから、珍しくて話をしていた時に慎一が教えてくれたんだよ!
どうせ近い内にその話が出るから構わないと、俺の知らなかった事を教えてくれた!」と話す
康太は「有栖院家は飛鳥井と同じで【翁】となるべき存在が転生して【翁】になる
有栖院家は百年次代が生まれなかった
次代が生まれねぇって事は、家は終わる
って事なんだよ、そして次代が生まれなきゃ現【翁】は黄泉の旅路へ逝く事は出来ない
それを烈が配置して次代が誕生した
誕生した次代の【翁】は、やはり特別に教育しないとならない…………
そして何より他を負かしてしまう強い生命力を持つ
暦也は二人の子を失ったんだよ……
げっそり痩せて苦しむ暦也は総てを、宗右衛門へ託したんだよ
そして栗栖は飛鳥井栗栖となり、神威の戸籍に入った、と謂うのが総てだ!」と話した
志津子は「なら栗栖も元飛鳥井の家で暮らせば良いのです!」と言った
神威は姉の想いが嬉しかった
志津子は玲香と仲良く飲んでいた
烈は美緒に連絡を入れた
「時間あるなら飛鳥井へ来ない?」と。
美緒は『行きたい!何処へ行ったら良いのじゃ?』と問い掛けた
「飛鳥井記念病院まで来てくれたら新居案内するわ!」
『直ぐに参る!』
とラインを終えた
烈は立ち上がると客間を出て行こうとした
康太は「何処へ逝くのよ?」と烈の手を掴んだ
烈は「美緒たん来るのよ!ばぁしゃん女子会やりたいでしょ?だから!」と優しい事を言う
一生が立ち上がると「俺が迎えに行くから、お前は山盛りの野菜くっとけ!」と言ってくれた
暫くして美緒が飛鳥井へやって来た
「玲香、真矢、志津子!」と美緒は嬉しそうに言い抱き合った
女子会に突入すると烈は「真央たん、婦女子が喜ぶスィーツ奢って!」と謂う
阿賀屋は「よし!奢ってやるよ!」と携帯を取り出すとスィーツを検索して婦女子が喜びそうなカロリー低めで綺麗なのを注文した
烈にはカロリーが特別低めので、後は人数分適当にカード決済で注文した
暫くして飛鳥井記念病院の前に来たと連絡が入り、一生と慎一が取りに向かった
何か………物凄い沢山の紙袋を渡され、デリバリーのお兄さんは帰って行った
その紙袋を家に運び込み一生は
「蒼佑、どんだけ注文してますの!」とボヤいた
阿賀屋は笑って「沢山あれば婦女子は喜ぶだろ?」と謂う
実際、真矢、玲香、美緒、志津子は阿賀屋のチョイスしたスィーツに大喜びだった
美緒は「阿賀屋蒼佑?………」と問い掛けた
阿賀屋は極上の笑みを浮かべ
「玉藻の君にお会い出来るとは光栄です!」と謂う
「今世も宗右衛門とは悪さをされているのか?」
「まだ烈は小さいからな、悪さはしてないですよ
少し前に声優やってる愚か者が俺んちを破壊してくれたんで、リフォーム終わるまでは烈の所で避難しているんですよ!」と笑ってサラッと言う
「難儀だわな、でも主がいるなら、我等を歌舞伎にエスコートして貰いたいわいな!」
と美緒が言うと阿賀屋は「喜んでエスコート致しますとも!」と約束した
女子に囲まれ阿賀屋は卒なく会話する
【R&R】のメンバーもそれに加わり仲良く話をして盛り上がっていた
烈は母に「ボク来週、2週間近く留守にするわね!レイたんは連れて逝くから大丈夫よ!」と言った
「2週間で帰れるのかよ?
お前、めちゃくそハードスケジュールになるぜ?
やる事は沢山有るんだろ?」
「そうなのよ、アメリカからじゃ神の道も開けなくて、クロスと新作も頓挫しちゃってるし
金ちゃんちの建築状況も見てこなきゃだし
金ちゃん達お引越ししたから、その地をどうするかも決めないとだし、でも一番の目的は竣工式ね!やっと建ったみたいだからお祝いしないとね
だから行って来るわ!」
「おー!行って来い!」
「そろそろ御影も在るべき場へ戻さないとだからね…………帰ってからも大変な事は沢山あるわよ」
「…………想定外は……常に起こる
況してや……相手が人間なら仕方ねぇだろうが!」
「やっぱ母しゃんは視えたのね
この前計算してた時の事…………」
「おー!バッチリな!
でも俺は運命だったと想うぜ!
それによりアイツは生まれ変わる
お前は全く憎い配置をしやがるぜ!」
康太はそう言い笑って烈のジュースと乾杯して楽しそうに飲んだ
阿賀屋は「ほら超ヘルシーなのお前のな!」と皿に取り渡してくれた
神威は「儂にも寄越せ!」と阿賀屋に言う
「お前は好きなの取れば良いやんか!」
「儂にも優しくしろ!
じゃねぇと毘沙と一緒にイジメるぞ!」
「何時もイジメてるじゃねぇか!
人の金で飲む酒は美味いって何時も俺に奢らせるクセに!」
「ちいせぇ事言うなよ!
ほらほら飲むぜ!
ほらほら貴史、おめぇも飲むぜ!」
と絡み酒しながら飲む
プーは「それは絡み酒言うんやで!神威!」とボヤく
クーは「神威は何時もあんなもんだろ?」と謂うが、トキが「いやいや、姉に絞られて落ち込んでいるんだよ!それを誤魔化してるから無理してテンション上げてんだろ?」と謂う
兵藤は苦笑して「この酔っぱらい連中なんとかしろよ!」とボヤく
家族は笑って楽しい時間を過ごしていた
欠けていた家族が帰って来たのだ
その夜は夜更けまで楽しい声が響いていた
翌朝早く烈はレイと共にベランダに出ていた
烈の留守の間に夏野菜を植えてくれたのだ
それを水やりに来ていた
クーもジョウロを手に水をやっていた
烈がいない間に流生はクーのジョウロをプレゼントしていた
流生のお小遣いで買ってくれたのだと言う
朝の楽しい時間が戻って来た
烈は会社に精力的に出勤して社内を見て回った
そして打ち出した免震構造の講義やその違いの宿題を、宗右衛門の部屋に積み上げられているから、それを確かめて、宗右衛門の仕事をした
精力的に動き、的確に仕事を進めていく
魔界から帰ったら午前中は学校に登校する予定だ
長瀬には既にそれは伝えてあった
煌星と海にはZoomで伝えた
美知留と匠にはゲームのチャットで伝えた
笙にはラインで伝えた、だからまた奢ってよ!と言うと、喜んで奢るよ!と返って来た
笙はまだ新居は知らない
其れ等も総て還って来たから動かして逝くしかなかった
翌日の夕方 神威は有栖と栗栖を連れて飛鳥井の家へとやって来た
皆で夕飯を食べて過ごしていると、志津子が清隆や瑛太と共にやって来た
一生は病院まで久遠と義泰を迎えに行った
一生は「飯食ったのかよ?」と問い掛けた
久遠は「今日は急患凄すぎてまだだな!」と言った
一生は「飯食ったら話し合いだな!神威が有栖と栗栖を連れて来ている!」と言った
皆で夕飯を食べて、食べ終わると客間へと行き話し合いとなった
神威はビシッとスーツを着ていた
その横には栗栖と有栖が座っていた
飛鳥井の家族も【R&R】のメンバーも阿賀屋も見守る中、神威は志津子と義泰に
「この子が俺の倅の栗栖と有栖だ!」と言った
有栖は……飛鳥井の人間も初めて目にする子だった
有栖は「飛鳥井有栖です、宜しくお願いします!」と言った
見た目は烈より幼く感じる子だった
顔は…………外人………だった
レイと同じ金髪碧眼で容姿はレイより儚げな少年だった
一生は「え?レイと同じ外人?」と思わず呟いた
烈は「ルビアンカ連邦共和国の元王子様なんだから、見た目は外人に決まってるじゃない!」と今更何を言ってるのよ!とボヤいた
とても静かな子だった
下手したら存在感さえ消して………いる事さえ解らなく過ごしちゃえる子だった
其処を烈は危惧していたのだった
志津子は「飛鳥井志津子です、私は神威の姉にあたります!
なので貴方達の叔母になります!」と自己紹介した
有栖はペコッと頭を下げた
あぁ………この子の瞳………死に染まっていた悟に良く似た瞳をしている………
志津子はいたたまれなくなり、有栖を抱き締めた
義泰も有栖を抱き締めた
烈は栗栖を抱き締めた
「栗栖は良い子!」
烈が言うとレイが栗栖を撫でる
栗栖は嬉しそうに笑っていた
ヘンリーは「美少年だね、彼!」と言う
烈は「うちのレイたんも美少年よ!」と言った
【R&R】のメンバーは【確かに!】と笑った
烈は「レイたんは母さんに似たらもっと美少年だったのにね………」と残念がった
兵藤は「おい!」と謂う
そりゃそうだけど………
レイは「くりちゅ いいきょ!」と言っていた
志津子は烈の前に居住まいを正すと
「有栖と栗栖は我が家の全員で面倒見る所存です!」と告げた
烈は有栖の傍に行き手を取ると
「もっと我儘言って良いのよ!
もう好きな事を遣って、好きに生きて良いのよ
笑って泣いて怒って………幸せな気分になったりして良いのよ!
有栖は有栖として生きて良いのよ!」
「烈………」
「そのうち安部春葵と蘆谷貴章って子達と合わせてあげるわね!
彼等は今 妻を娶り子を成して幸せに暮らしているわ!
彼等は安倍晴明と蘆屋道満の歹を使い無理矢理この世に誕生させられたのよ
運命に弄ばれたのは………苦しんだのは君だけじゃないわ!って教えてあげるからね!
だから有栖は毎日楽しく過ごすと良いのよ!」
「え?妻………子もいるの?
嘘…………僕らはにん……」
言い掛ける有栖を烈は止める
「有栖もさ、何時か大恋愛して子沢山目指すのよ!
神威がもう孫の子守は大変だわ!って言う位、子沢山目指すのよ!」
「そんなの無理だよ……」
「有栖の人生は無限の可能性を秘めてるのよ!
無理なんて事は何一つ無いのよ!
それをボクが教えて上げる!」
「烈…………僕は生きてても……良いの?」
「良いに決まってるじゃない!」
有栖は烈に抱き着いて泣いた
涙なんて枯れ果てたと想っていたのに………泣けて泣けて………涙が止まらなかった
でも泣くと疲れて……寝てしまった
神威は有栖が泣いてる姿なんて一緒に暮らして一度も見た事がなかった
泣けるんだな………お前……
ちゃんと泣けるんだな
神威は安堵した
神威は「有栖と栗栖を受け入れて下さりありがとう御座いました!」と礼を口にした
志津子は「宗右衛門が私達家族に託した子ですから、今後は皆で育てねばなりません!」と言った
康太は「家の引き渡しは烈がやる!お前等は引き渡しをしてもらった後、速やかに引っ越ししろよ!」と言った
志津子は「飛鳥井の皆様が………バラバラに生活なさってなくて………安堵いたしました!」と胸の内を吐露する
ニュースでは家族はバラバラと聞き胸を痛めていたのだった
義泰はその横で頷いていた
そして楽しく飲み明かした
烈は魔界へ行く前に元飛鳥井の家の引き渡しをした
元飛鳥井の家の表札は久遠になっていた
烈は凛太郎と孝太郎と共に引き渡しに立ち会った
元飛鳥井の家の中は………もう住んでいた面影もなかった
「この部屋は応接間として使うと良いわ!
総代の部屋は久遠が住んだら、どう?
志津子と義泰は玲香と清隆が住んでた部屋でどうかしら?
神威は慎一が住んでた部屋で、拓人と拓海、有栖と栗栖は適当に部屋を決めれば良いわ!
3階は使い道が今の所ないわね
あれなら3階に住んでも良いわよ!
好きに部屋を選び住めば良いわ!」
と部屋を案内しながら言う
応接間の床にはガレージのシャッターのリモコンがあり、家のカードキーや部屋の鍵などが並べられていた
「家の名義は久遠がなるのよ!
固定資産税は家族で割って支払うのよ!
そして生活費は収入が有る奴はちゃんと支払わせて、プールしといてそれを使う
この家の電気は屋上のソーラーパネルで賄えるわ!
オール電化だから光熱費はかなり安くなるけど、天気の悪い日とかは、やはり電気代は掛かるからね、それを見込んでのお金をプールさせとくのよ!」
と生活に関わる事をアドバイスして行く
そして引き渡し印を貰い正式に譲渡して渡す
志津子は引っ越しの為に3日休みを取った
志津子達が引っ越したマンションは何かあった時の為にリフォームして持っておく事に決めていた
烈はやらねばならぬ事を済ませ、精力的に会社の仕事を上げて、社員達に更なる宿題を出した
週末を忙しく過ごし、週明け【R&R】のメンバーと竜馬と兵藤は、イギリスへと還って行った
皆を空港まで見送りに行き別れを惜しんだ
今度は兵藤と竜馬は、終了までは帰国は出来ないだろう………
烈は皆を見送った足で菩提寺に行き、レイとクーと共に魔界へと向かった
家族には前日の夜 2週間位留守にするからね!と伝えた
兄達は「淋しいけど烈の留守は僕達が会社を守るからね!」と言ってくれた
そうして送り出して貰い烈達は魔界へ旅立って行った
魔界へ旅立つ前に烈はヘンリーに
「ボク2週間位魔界へ行かないといけないから行くのよ!
で、還って来たらヨニー©ウッズスタンの今後を話し合わないと駄目だから葵を倭の国まで越させてくれないかしら?」と言った
ヘンリーは「了解したよ!リーダー!
その時は僕達も見届けに来るからね!
貴史と竜馬は来られないだろうから、僕達が見届けるしかないからね!」と言う
流石とこれ以上はロードは許可してくれないだろう………
8月で1年だけど、抜けた時間の帳尻は取ると謂われているのだ………
「ありがとうヘンリー!なら頼むわね!」
そう言いヘンリー達はイギリスへ旅立って行った
烈とレイとクーは神の道を通り崑崙山へ出た
烈は崑崙山へ出て直ぐにアル君を呼ぼうとした
が、八仙がプカプカと浮いてやって来て
「羅刹天殿と神髄師が主に会いたいそうじゃ!」と呼びに来た
烈は「何か用かしら?」と八仙の屋敷へと向かった
八仙の屋敷に行くと神髄師と羅刹天が座っていた
八仙は「話なら烈の屋敷へ逝くがよい!」と言うから烈は「裏へ来て下さい!」と言い八仙の屋敷を出て、裏の烈の屋敷へと向かう
ドアを開けて中へ入ると、クロウの弟のタロウが家の掃除をしていた
「タロちゃん お茶お願いね!」
「了解しました!」とタロウはお茶を淹れに行く
暫くしてお茶を淹れて来ると、皆の前に置いた
お茶を淹れ終わるとタロウは
「俺は素戔嗚殿に烈は八仙の所で話をしていると、伝えに行きます!」と言い屋敷を出て行った
烈は「で、話は何かしら?」と問い掛けた
羅刹天は苦渋に顔を歪め………
「地獄界で会議中に………会議に参加していた神が自爆した………明らかに俺を狙った自爆であった…………が、烈殿は………星を詠まれたのか?
七賢人八賢者が爆破の少し前に現れ、我等を護ってくれたから無傷だったが………彼等が現れねば、我等は消滅していた………」と切り出した
烈は「ボクは常に手の届く範囲の者達の、星を詠むのよ
星を詠み、運命を詠み占うのよ!
そんな中………らーくんの命の危機を知ったのよ
でもねボクは、少し前までアメリカにいたのよ!
アメリカからはとてもじゃないけど飛べなくてね
星詠みの結果を師匠達に告げて動いて貰ったのよ!
倭の国にいたならばボクは、らーくんとは血を交わした【親友】となるからね飛べたんだけど…
流石とアメリカの地で飛ぶのは無理だったのよ
えんちゃんに頼むと魔界の地獄界への干渉か?と思われるでしょう?
だから師匠達に頼むしかなかったのよ
天照大御神に声を届け、天照大御神は八仙にそれを伝え、八仙は師匠達に伝えてくれた
一時はどうなるかと焦ったけど間に合ったのね
間に合わねば、中華圏内のバランサーが不在となる!それはね避けねばならない事態だったからね!」と淡々と話した
神髄師は「烈はアメリカにいると閻魔殿にお聞きした!還られて直ぐに何しに魔界へ行かれるのじゃ?」と尋ねた
「閻魔庁の建設祝に逝くのよ!
ボクが還るのを待ってて、祝いはしてなかったからね
だから行って祝賀会を開かなきゃならないのよ!」
羅刹天は「烈………目の前で大勢の者が爆破に巻き込まれ……消滅した者もいる………
俺はそれがショックでならなかった…………」と苦しい胸の内を吐露した
烈は冷たい瞳を羅刹天に向けて嗤った
そして宗右衛門の声で
「羅刹天よ、神の仮面を被った者は………魔界に腐る程おった!
地獄界は特別だと想っておったのか?
地獄界だとて洗脳に近いのとか、脳を弄られたのとかはおるであろうが!
此方がせっせと頭のチップ対策しても、次から次へと手を変え品を変え嫌がらせをして来る!
烈はオーディションの最中、銃を向けられ発射された、まぁクーが銃弾を弾き飛ばして銃口の中へ返したから暴発したが………クーがいねば烈は死していた!
その意味が解るか?
相手は人間だった
………主は頭の中を弄られ人生を狂わされた者を目にした事がないから現実味がないのかも知れぬのかも知れぬが………人生を狂わされた者達は確実にいるのじゃよ!
主等が知らぬだけで…………
人生を弄ばれ狂わされた者達は確実にいるのじゃよ!
そんな人生を狂わされた者達がいると謂う現実に目を向けねば、バランサーとして約不足だと言うしかないぞ!羅刹天!」
と厳しい言葉を放った
羅刹天は深々と頭を下げ「お許しを!」と言った
「近い内にらーくんに会わせてあげるわ!
人生を狂わされて………今も日々自分が解らなくなり苦しんでる子を………!
ボクは魔界に人の時間で2週間滞在するわ!
そしたら人の世に還るから、らーくんはその頃来るのよ!」
「はい!神髄師殿の許可を取り、必ずやご一緒させて戴きます!」
「ならボクは魔界へ行かなくっちゃ!
らーくん、明日にでも詳しい話を聞くわ!
天ちゃん、その後で良いなら、明日 畑を案内するわ!」
「よいのか?烈?」
神髄師は不安げな瞳を烈に向けた
「地獄界も変わりつつあるならば、食文化はその中心となりその世界を支える重要な位置を占めるわ!あ~もぉボクはもう行かなきゃならないから!また明日ね!」
と言い羅刹天達と一緒に外に出て、烈はアル君を呼ぶ
レイはタカシを呼び仲良く飛び立った
クーは烈の肩の上に乗っていた
クーは「自爆って古くないか?」とボヤく
「今まで自爆とかなかったのかしらね?」と烈もボヤいた
レイはニブルヘイムの声で「あのお二人は闇には染まってはいなかった、それはクーの眼でも解ったのでは?」と問い掛けた
クーは「あぁ、不安に染まっていたが、闇には染まってなかったな!」と謂う
ニブルヘイムは「地獄界は平和ボケし過ぎてて、気付いた今、大慌てで何とかせねばと慌ててるんでしょ?」と言う
烈も「そーね、でもボク等は介入してはならない領域だから………ね」手も口も出してはならない!領域なのだ
閻魔の屋敷に向かうと、厩舎にアル君とタカシを入れて執務室の方へ向かう
執務室を開けると受付には素戔嗚尊が座っていた
当番の鬼が「閻魔様に怒られますぅ〜」とボヤくが何のその!
素戔嗚尊は烈が来ると「おぉぉ!烈、待っておったぞ!」と言い執務室へと引っ張って行った
執務室には閻魔も金龍も黒龍も建御雷神もいた
閻魔は「烈、遅いです!」と急いで烈とレイの支度を手伝う!
烈達が来る時間を見越して予定を立てていたのだ
まだか?まだか?と待っていたのだった
烈は「八仙んとこに羅刹天と神髄師いたのよ!」と言う
閻魔は眉を顰め「何の用だったのですか?」と尋ねた
クーが事情を説明した
閻魔は「自爆………それが初めて目にする光景なれば………ショックは大きいでしょうね……」と羅刹天のショックを鑑みて口にする
クーは「相当、平和ボケしてたんだろ!」と容赦のない言葉を吐く
閻魔は「烈の事だから明日にでも約束して来たのでしょ?ならば私もその場に付き添います!」と言う
そして気を取り直して
「凄く立派な閻魔庁が完成しました!
今じゃ仕事終わりの職員や来庁した者達の観光スポットになりつつあります!」とご機嫌だった
素戔嗚尊は「儂も観たが立派な建物じゃったな!
特に庁舎前の噴水と女神の像は皆の目を惹いておったな!」と言う
閻魔は「烈、閻魔庁の前の噴水と女神の像は何か意味があるのですか?」と問い掛けた
「あの女神の像は、あまちゃんがモデルなのよ!
九曜神に母しゃんが頼み込んてくれ、創らせた品物なのよ!
そして噴水はレイたんが特別に創世記の泉から泉湧き上がらせ、霧状に撒き散らし闇に染まった者を入口でシャットアウトさせるのよ!
そしてあの女神の像は天空神に特別に頼み込み、創世記の涙を用いた結晶で石を創って貰ったのよ、その石を九曜神が彫刻してくれた特別製なのよ!
それで邪な奴は閻魔庁へは入れない様にしたのよ!」と説明した
閻魔は感激していた
正装に着替え、人の世で言うならレセプション式典へと出向く
世界樹の前の広間には魔界中から祝う者達が集まっていた
そして閻魔庁へと行くに従って魔族でごった返していた
閻魔は、閻魔庁入口に設けられた壇上に上がり
「皆様の協力のお陰で閻魔庁は完成致しました!
この閻魔庁を建てた功労者の聖神には、最大限の感謝を込めて、ありがとう!と伝えます!」
と閻魔はマイクを持つと言葉にした
そのマイクの音声は放送鳥のスピーカーに飛び、世界樹の前の広間にも響き渡った
烈はニコニコと笑ってマイクを取らなかった
素戔嗚尊は「今宵は皆、閻魔庁の竣工式じゃ!皆で祝い、今後の魔界の発展を祝おうぞ!」と大きな声で皆に語りかけた
歓声が上がる
皆のお気に入りは女神の像と噴水だった
斬新な創りの閻魔庁は正門の横に女神の像とコンクリートで固められた池が有り噴水があった
その女神の像を眺めながらカフェテラスがある
デートスポットになる事間違いなしだと黒龍は言う!
黒龍は烈の横に立ち、顔を引き締めた
何も言わない烈程………怖い事はないからだ………
黒龍は龍族の長になり、龍族の引越しに尽力を注いだ
それと並行して………烈と共に龍族の者等と話し合いを幾度も重ね、龍族の今後の在り方や教育の見直しを話し合い決めて行った
それに伴い赤龍を除いだ、次代の四龍、そして虹龍は一旦人の世へ逝かせ教育を施す事となった
次代の存在が急務となり、蛇から成長する年月をすっ飛ばして次代を誕生させてしまった
それは後々 弊害が出ると烈は想っていた
頭だけ挿げ替えれば良い訳ではないのだ
黒龍に烈は、次代の四龍と虹龍に逢わせてと申し出た
やはり其処へ来るのか…………と黒龍は想いつつ快諾して会わせた
烈は虹龍と次代の四龍を目にすると溜息を着いた
「この者達からは理性も知性も品性も感じられない!中身が全く詰まっていない存在を作り上げたいのかしら?
次代は急務だけど………中身が詰まってなければ、傀儡よりも劣るわよ!」とキツい言葉を投げかけられた
龍族の関係者は……烈にの言葉に………何も言えなかった
黒龍だって何処かで感じていた事だった
金龍だって感じていたから…………より厳しく次代を育てていたのだろう……
だが図星を刺されると………言葉は出ないのだと痛感する
「龍族の道はこのままだと潰えて消えるわよ!」
そう言われれば、烈からアドバイスを貰い、その通りにするしかなかった
虹龍と四龍の兄弟は人の世で小学生1年からスタートさせ、ある程度の知識、教育やマナー、常識や人との付き合い方等を学ばせる事にした
其れ等は魔界でも通ずる事だから、それをまずは叩き込む
菩提寺の寮に入り、寺の職員達が気に掛けて、皆で育てる事になる
青龍も炎帝もそれには異論はないと申してくれたから、実現出来た事だった
「変わりゆく魔界に特別な存在など要らないのよ!」
虹龍に突き付けられた烈の言葉は………虹龍が今まで生きて来た過程さえ覆す言葉だった
「皆で力を合わせ、皆で創る魔界に英雄も勇者も要らない!
誰か一人強くても魔界は成り立たないから、皆と協力出来ない存在は要らない!」
そう言われ………自分の全てが壊された
絶望しかない虹龍に烈は
「だから虹くん、貴方はさ人の世で常識を学び、仙界で知恵と才覚を学びなさい!
此れよりは龍としての人生をスッパ抜かして生まれて来たツケを払わなねばならないのよ!」と言った
そして生まれ始めて人の世に連れて来られた
初めて見る人間はおっかなびっくりだけど………
烈や兄達や、ちっこいのは虹龍と次代の四龍の兄弟が菩提寺に来ると、厳しく接し、優しく共にいて、笑い合い……共に修行した
そんな時間なんか知らない虹龍は………初めて人の温もりや優しさを知った
そして人の世に次代の閻魔と金龍と天龍がいて驚いた
彼等は人の世に慣れているのか?利発に生き生き過ごしていた
虹龍の人の世の名前は七生
次代の青龍は海(かい) 黒龍は昇(のぼる)地龍は陸(りく)、康太が名付けたのだった
烈が何時もの如く「虹龍はね、虹くん、次代の青龍はBLUEちゃん、次代の黒龍はBLACKん!次代の地龍はBROWNちゃん!で、どうかしら?」とニコニコ言う
ネーミングセンス悪いと言われたから、それなら英語でそれなりにどう?と言う事なのだろう…
兄達からは即座に「却下!」された名前だった
ちっこいのからは「ねぇよにゃー」と謂われた名前だった
仕方なく康太が着けたのだった
そして魔界の龍族も変わりつつ在る現在
龍族は誓約の地に家を建て始めていた
金龍の家は地下にシェルターの役割を持つから建つのに時間が掛かる
今もまだ建ってはいなかった
シェルター部分が完成すれば、後は家の部分をコンクリートで創って行く
着実に龍族は移転を進めていた
誓約の地の区画割りは烈がした
区画の中央に相談役、左右、前後に四龍の兄弟の家が建つ
龍族の長の家は本人たっての希望で、一夜で育つ木を大量に植えて作られた木造の平屋だった
水回りはコンクリートを使用して源泉を探り当て龍族に水路を開いて源泉を家に引いて造られた湯殿は黒龍の拘りが詰め込められていた
金龍、相談役の家は2階建てで、一階は宴会が出来る程の広さの応接間兼客間で、その横はキッチン、そして妻の洋裁の部屋にした
そして2階に寝室にして、結構こじんまりとした家だった
そして湯殿は屋敷の裏に小さな風呂場を作り、金龍拘りの家となる予定だった
地龍も平屋で、水回りはコンクリートを用い、一夜にして育つ木をふんだんに使い作られた家だった
青龍の家は一応建てておいて、好きな方で暮らす様にする
湖の前の青龍の家は、烈の別宅にする予定たった
黒龍は龍族の場に家を持つが、朱雀んちの横にも家を建てるつもりでいた
話がトントン拍子で進んていく
龍族の区割りの地にはカリウスと廉の家も区画を充てがわれ建てる事になっていた
夏海と雅龍は、次代の天龍の両親と言う事で、結構良い区画を貰い2階建ての家を建てると決めていた
2階には子供部屋を2部屋作ると決めていた
残りの区画は皆 平等に話し合い、時にはジャンケンで、時にはアミダクジで決めた
決めてる間中、皆笑って「何処でも良いぜ!」と言い楽しんでイベントとして決めて行った
そして全区画決まり、次は龍族が越して行った後を決めねばならないのだ
この機会に素戔嗚尊の屋敷を龍族の区画に建てたら?と言う話も出ていた
元々 素戔嗚尊の住んでる地は、誰も住めない地、禁足地として線引きした場所だった
何故なら………多くの者が其処で血を流し息絶えて行った天魔戦争の合戦跡地だったから…………だ
大量の血を含んだ地は長い年月、誰も寄り付かぬ土地だった
合戦跡地と言うだけ在って、それは広い広大な土地が使われないでいる現実が在った
だから敢えて素戔嗚尊はそんな皆が忌み嫌う地に家を建て、暮らし始めたのだ
建御雷神は止めておけ!と止めたが、新しく家を建てるならば、あの地が良い!と言ったから仕方なく家を建てたのだった
天馬戦争で多くの命を落とした
その闘いの中心にいた者の死命だと素戔嗚尊は想い、今も魑魅魍魎と化した者達の弔いをしている
この魔界で朽ちていく自分に相応しい土地だと………素戔嗚尊は想ったのだ
烈は祖父の想いを汲み取り、禁足地となった広大な土地に畑を作り、工場を建て、団地を建て、市場も整地して拡大化させた
今では魔界の再開発の重要な拠点となっていた
たが未だに絶対に足を踏み入れられない土地もまだ遺っている…………
素戔嗚尊の弔いの日々はまだ終わらない……………
そしてそんな地に朱雀も来ると言う
司禄もこの近くが良いと、最近烈に設計図を引いてもらい基礎に取り掛かったのだった
巡り巡る魔界は目まぐるしい
黒龍は歓声を上げて喜ぶ魔族を見て…………目まぐるしい日々を思い出していた
烈は何時の間にか、祝賀会がされてる閻魔庁の前から消えていた
素戔嗚尊に「あれ?烈は?」と問い掛けると
「烈なら畑じゃろ!」と言う
「烈………どうしたのさ?今日は何も話さない……」
「あぁ、そんな所は倅にソックリじゃな………
烈は怒っているのじゃよ!
怒れば怒る程にアヤツは無口になるのじゃよ!」
「え?俺………何かした?」
「………主ではない、平和ボケした地獄界に怒っておるのじゃろ!」
と素戔嗚尊は閻魔の執務室での話をした
黒龍は言葉を無くしていた
………ならば………嵐の前の静けさか?
んとに…………そんな所は炎帝………お前にソックリじゃねぇかよ!
お前は何時だって静かに怒る時が一番怖かったよな?
殴られる時はまだマシだ
怒りが深くなる程に無口になり………
後で手痛い竹箆返しされるのだ………
「界界戦争になったりしねぇよな?」
想わず黒龍は呟いた
「諍いがあやつは誰よりも嫌いじゃからな………それはなかろうて!」
でも嵐は来る
絶対に嵐は来るだろう………
戦争にはなりはしないが…………嵐は来る!
「なら衝戟に備えねぇとな…」と黒龍はボヤいた
素戔嗚尊はそれを聞き苦笑した
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