93 / 100

第93話 苦心惨憺

黒龍は祝賀の場を離れて、烈を探して畑へとやって来た 烈は畑にクロスとトキとクーとレイとで野菜の出来を見ていた クロスは「皆 デカメロンとかの甘みに慣れてしまっているので、売り上げも落ちてるんですよ!」と近況の状況を伝える 「あぁ、味に慣れたら食べ方を変えて工夫しないと飽きられちゃうわね!」 「カフェテラスが出来るから食堂が見切られて来ているとの噂も出ています……そして売り上げも影響が出て来てます………」 「え?カフェテラスのメニューってもう決まったの?誰の考案なの? ボクはそんな相談受けてないわよ?」 「え?烈、考案のスィーツが目玉の売り何じゃないんですか?」 「いやいや、ボクつい最近までアメリカにいたからね、アメリカだと神の道開けないから魔界に来てないわよ! なのに誰が考案して商品にしていると言うのかしら?………此れは下手したら閻魔庁の失墜狙ってる者の作戦だとしたら? それは一寸違う話にならないかしら?」 烈の台詞に黒龍は「それは本当の話か?」と問い掛けた 烈は黒龍を冷ややかな眼で見ながら 「本当よ?其れはえんちゃんも知ってるんだけどね……… ならば何処からそんな噂が流れたのよ?って話になるのよ!」 「アメリカって所だと神の道は開けないのか?」 「そうよ、大陸が違うからね! 神の道は伊弉諾と伊弉冉が黄泉の旅路の為に開いた道だからね、あれは倭の国限定の道なのよ! ボクはアメリカと言う大陸の方に行ってたからね 倭の国とアメリカのニューヨークまで直線距離で約11000Kmも距離があるのよ 流石のボクでも無理なのよね!」 「………それは誰かの悪意なのか? お前がアメリカに行ってるって知らなかった者の悪意なのか? それともアメリカから還ってる事を知らない者の愚行なのか?」 「さぁ、それは解らないのね 時を同じくして不穏な空気が魔界と地獄界で起きてるのよね………さてと、それはどうしたものかしら? それにしても皆の為に、日々改良をしてくれてる妖精達に失礼な振る舞いね……… もう野菜を売るの辞めようかしら? 当たり前にあるモノなんて何一つ無いのよの! それを解らせないと………馬鹿に着ける薬はないかもね………… そうと決まれば明日からの出荷は停止させないとね!クロウ、タロウ、ゴロウ、シロウ、畑の野菜を全てミネルバの森の奥へ持って行ってくれないかしら?この畑は更地にして何も植えないのよ!」 タロウ達は即座に烈の命令に従い動き始めた 黒龍は「何故森の奥に持って行くんだ?」と問い掛けた 「ミネルバの森はね許された者だけが入れる森でね、多く取れすぎた野菜やフルーツは森の奥深くの洞窟に入れておくと痛まないのよ! だから一旦避難させるのよ!」 成る程、と黒龍は思った 「黒ちゃん、魔界が腐るか、持ち直すか? その瀬戸際だと想うのよ! そして市場に野菜や果物が消えたら? どうなると想う? そしてそれを狙ってる者の仕業だとしたら? 誰かが下手したらボクとえんちゃん………諸共消せれるチャンスと見て、好き勝手やろうとしてるのよ、多分 そしたら必ずと言って言い程に、暴動が起きるからね、奪略されない為に避難させる必要があるよよ! ボクは工場総てを閉鎖して、誰も入り込めない結界を引く事にするわ! 黒ちゃんはえんちゃんにその事をコッソリと伝えに行くのよ!」 黒龍は即座に動いて閻魔の元へと駆けて行った 烈とクーとトキとレイは嗤っていた 「黒ちゃんには悪いけど、素直なあの子が一番使いやすいのよね!」と言う トキは「黒龍はお前の死命を必ずや果たしてくれるさ!」と言う 「ならばトキたん、工場の地に誰も踏み込ませない様にしてね!」 祝賀のムードで魔族達は世界樹の木の前の広間に集まるか?閻魔庁の前に集まっているだろう! その今だからこそ、出来ると踏んで、トキに指示を出した トキは「承知した!」と言うと 天を仰いてクェェェェェェェェ!!!と叫んた 八仙から「儂等を気絶させる気か!」と怒りの声が飛んで来る! 「ごめん八仙!!!」と謝罪し 烈は閻魔が来るのを待った 「えんちゃんが悪い訳じゃないんだけどね………」 烈はボヤいた 崑崙山へ足を踏み込んだ時点で羅刹天がいる事に不穏な空気を感じていた それがずーっと後引き、何かしっくり来ないのだ 総てが仕組まれているかの様に……… お決まりの不穏な空気を添えてくれたりするから……疑っちゃうのよね 「やる事成す事ワンパターンなのよね………」 辟易してボヤく レイは「れいも ちょーおもった!」と言う 「よねぇ〜レイたん! 何かボクこんなに若いのに人間不信になりそうよ! あ、魔界だから魔族不信になりそう、か」 「れいも!れも、れちゅいるきゃら!」 烈なら信じられるとレイは言う 「謀反の罪かしら? それとも反逆罪? どれも言い方変えただけよね?」 「にゃら けちてやりゅ!」 ふんふん!と鼻息荒くレイが言う 暫くして黒龍が閻魔を連れてやって来た 建御雷神と素戔嗚尊と……何時来たのか?大歳神もいた 閻魔は「烈!暴挙に出る前に私に話して下さいってば!」と言う 烈は「どう?あの中に傀儡、チップ、洗脳、いたりする?」と問い掛けた トキは「いねぇだろ!」と言う クーも「アイツ等傀儡にするとか、無理だと思うぞ!」と言う 烈はレイを視た レイは「じぃたん!」と素戔嗚尊に手を伸ばした 素戔嗚尊はレイを抱き上げ「どうした?レイ!」と優しく問い掛けた トキとクーは、烈は魔界に来た瞬間から抱く不穏な空気を感じていると話した 建御雷神は「それは何故じゃ?」と尋ねた 「ボクが魔界へ行くと決めたのは倭の国へ帰国したその日、そして来るまでに一週間ないのよ なのに、羅刹天が神髄師と共に崑崙山にいた、ってのが引っ掛かるのよ えんちゃんは誰かに話した?」 「私ですか?私は烈に来る日を聞いたので、秘密裏に今宵の祝賀会の準備をしていました! その間、聖神が来る事は誰にも話しておりません!我が父 建御雷神にでさえ話してはいません!タロウから崑崙山へ到着したと素戔嗚殿に連絡が入り、皆は知ったのですから!」 閻魔が言うと黒龍は「ならば羅刹天は何故烈が来るのを知っていたんだよ?」と想わず呟いた 烈は「それと閻魔庁の前のカフェテラスに出すメニュー、ボクは何一つ考案してないわよ! 一体、何を出す気なの?」と問い掛けた クロスは魔族の間で誠しやかに流れる話をした 「烈考案のスィーツが目玉だと我等は聞きました!」と話す 烈は「ボク、アメリカに一ヶ月行ってたのよ! そしてアメリカから還って雑務片付けてから来たんだけど?何時スィーツの考案の話し……したのよ? こんな噂流れてたら下手したら閻魔庁の失墜よ! ケチが付いちゃうのよ!解ってる?えんちゃん!」と話す 閻魔は「その噂が流れているのは知っています…… 何度も直ぐには出ません!と訂正しても……勝手に流れて逝くのです……」と苦悩を浮かべて話す 建御雷神は「土台無理な話が、何故真実みたいに話されるのだ?」と不思議がり素戔嗚尊を見た 素戔嗚尊は「烈を陥れようとしておる者の仕業か? ついでに閻魔庁の失墜狙っておるのか? は、定かじゃないが……… その噂はどうやら………儂の耳を微妙に避けて流されているのじゃよ! 儂はそんな噂など知らなかった………」と哀しげな顔をする 烈は「それとそんな噂に惑わされ、日々妖精が改良してくれてる野菜や果物を……味に慣れたら見向きもしない………そんな魔族にも嫌気が差してるのよ!溢れかえっているから? だとしたら市場から消えたらどうなるのか? 見たかったのよね? どの道………賽は投げられたのよ! ボク考案のスィーツがこの先出て来なければ、閻魔庁の失墜にも繋がるこの現状が正常だと思ってるの?」と問い掛けた 建御雷神は「異常じゃろ!魔界の為に身を粉にして働いてくれている妖精を蔑ろにした時点で…… 魔界は聖神を敵に回した事になる!」と言い切った 閻魔は「工場の敷地に何かしましたか?」と問い掛けた トキが「停止させたのじゃよ!あの地は儂の許可なくば踏み入れる事は許されぬ! 此れで魔界の市場はストップするな! さぁどう動かれる?閻魔よ!」と問い掛けた 閻魔は覚悟を決めた瞳を烈に向けた 「それはもぉ、ストップするしかありませんね! そもそも………あの禁足地だった地は、創造神が素戔嗚殿に下賜された地でもある! ずっと創造神が血で穢れた地を封印していた その地に素戔嗚殿が敢えて家を建てられた 孫である聖神はその禁足地の広大な土地に畑や工場を開かれた その成り立ちは魔界の者ならば誰もが知っている筈なのに、当たり前になって、当然の様になったら、日々働いている妖精の努力は報われません! 其れこそ、妖精王への侮辱に値する! 好きにやりなさい烈! 私は君の思う通りにする事を応援します!」 閻魔がそう言うと烈は嬉しそうにニコッと笑った 「えんちゃんは、やっぱ凄いわ! なら好きにやらさせてもらうわ! 市場から野菜も果物も姿を消す! そして市場全てがストップして、工場の稼働もストップするわ! まぁ味噌とか醤油とかお酒とかワインは見てなきゃ全滅だからクロウ兄弟に管理して貰うわ! そしたらチャンスとばかりに暴動ね! その主犯格が……残念だけど、もう脳弄られているとか、傀儡レベルの存在だと想うのよ で、えんちゃん、たけちゃん、クーの眼を借りてそんな輩の捕り物と行きましょうか!」 と言うとクーが閻魔と建御雷神の眼に前足をピタンと押し当て肉球パンチした 大歳神は烈を抱き締めて 「倅よ、主が…………魔界から追放される事があれば………父は……」と泣きながら言う 「ボクは炎帝が護る魔界から追放される気ないから!ボクは炎帝が護るこの魔界を……正す為にいるのよ! そしてじぃさんが暮らす魔界を………より良いモノにする為にいるのよ! ボクは……消される瞬間までボクの死命を全うするつもりよ!」 「烈……」 「何かね、羅刹天を見た瞬間からモヤモヤが取れないのよ………あのタイミングは…………悪いけど悪意を感じずにはいられないわ!」 大歳神は「モヤモヤするなら八仙に聞けばよかろうが!そして羅刹天を呼び寄せ話をすれば良い! 主は話の奥に悪意が含まれているのか?見抜き、真意が何処にあるのか探ればよい!それだけじゃろ!」と言う そうと決まれば即決行! 大歳神は倅を小脇に抱えると全力で走り始めた 素戔嗚尊は慌てて「倅よ!暫し落ち着かれよ!」と言うが聞く耳持たず、馬よりも速く駆けて行く 建御雷神は「流石は倭の国に根付かれし豊穣の神じゃな!大地が大歳神の為に畝り手助けしておる!さぁ、儂らも逝かねば真意は何一つ見えはせんぞ!」と言い愛馬を呼び出し後を追った クロスとレイとクーはちゃっかり素戔嗚尊の馬に乗り楽させて貰っていた トキはバサバサと大きな翼を広げ、珍しく飛び始めた 魔界ではトキは歩くか走るかしか見た事がないから……… 閻魔は「飛べるのですね………」と想わず呟いた 黒龍は「鳥だろ?あの方は?なら飛べるだろ?」と言い愛馬に乗り後に続いた 閻魔はその後ろに乗り 「あんなに強烈な風を起こすのに木々は折れたりしないのが不思議ですね、やっぱり聖鳥だからですかね?」と呑気に言っていた 黒龍は「炎帝は知っていたのか?今回烈が魔界に来る際に起こり得る事案を……」と想わず呟いた 「滅多と烈は視ないとは言ってますがね、レセプション式典にいなかった時点で烈に全面的にお任せしてるんでしょうね!」 「やっぱそうだよな…………」 「炎帝の為にこの魔界を正そうとする存在ですからね……そして祖父の為により良い魔界を目指しているのを知っているなら…… 魔界に灯された不穏な空気も知っていたのかも知れませんね」 「あの二人………本当に良く似てるよな………… 皇帝閻魔でさえ、絶賛したお子様なんだろ? 血は繋がっていないのに…………コピーだろ?あれは?」とボヤく 閻魔は「烈の導きは炎帝の意志ですから! 私は本当に血は繋がらないけど、炎帝の魂を与し子を見てると本当に親子だと思えます 炎帝は母になり変わりました…… 青龍と駆け落ちして、幾千年……………愛を得て成長した炎帝は、子を得て母となり強くなった そして大人しくなりました! 前なら本人が必ずや出て来たのに、今は全て烈に委ねて託していますからね! 絶大な信頼関係と絆があるのでしょう!」と言う 建御雷神が「おい!早くせねば着いた頃には大変な事になっていたらどうするのじゃ!」と言う 大歳神が崑崙山の八仙の屋敷に到着した時、羅刹天と神髄師はまだ八仙の所にいた 烈は「帰らなかったの?」と問い掛けた 羅刹天は「八仙がどうせ直ぐに来るであろうから待っておれ! また来ねばならないのは面倒であろう!と言われたので待ってました!」と言う 大歳神は「羅刹天殿よ、主は烈が崑崙山へと来るのを誰から聞いたのだ?」と問い掛けた 羅刹天は「今回は絶対に烈に自爆の相談に乗って貰う為に、星詠みの婆婆にお願い致しました!」と言う 烈は「あ~婆婆使えば正確な日時まで解るわね! なら婆婆は………ボクの星を詠み、魔界に来る日を告げた、と言う事なのね………… でも時を同じくして…………ってのがきな臭かったのよ、そっか………婆婆は一石二鳥狙ってぶつけて来たのね………本当に食えないわよね あの婆さんは!」とボヤいた 閻魔も黒龍も建御雷神も、食えないのは烈も同等だと想ったが、口にはしなかった 烈は「後ろのボクんちに来て、八仙、ゴロウにお茶淹れさせて!」と言い後ろの屋敷へ向かった 屋敷の中へ入るとソファーに座った 烈は羅刹天に「自爆の映像とか有るかしら?」と問い掛けた 羅刹天は「地獄界は……映像とかの技術は追いついてなくて………ないかな?」と言う 烈は屋敷の奥へ行くと、見た事もない程の大きな濁りのない水晶を手にしてやって来た 下手したらバレーボールよりも大きいかも知れない水晶の球体だった 水晶を漆黒のバスタオルサイズの布を折り曲げて、その上に置くと 「らーくん、手!」と言った 羅刹天は烈に恐る恐る手を差し出した 烈はその手を取ると、羅刹天の手を水晶の上に置いた クーがその手の上に手を置き、呪文を唱えた すると水晶に地獄界の閣議室が映し出された 白熱する議論と討論する場が映し出されて、羅刹天は「え?此れはあの時の映像!」と驚いて呟いた 一人の男が羅刹天の前に出て呪文を唱えた その瞬間、七賢人 八賢者が姿を現しバリヤを張った 爆破の衝戟が羅刹天と神髄師を避けて吹き荒ぶ 爆破の衝戟で壁は吹き飛び、瓦礫が飛び散る 七賢人八賢者は血を流しながらも、羅刹天と神髄師を護り、姿を消した 烈は自爆前の男の顔を紙を取り出し念写すると 「この男はもう自分の意志もなければ、意識もなかったと思うわ! 何故なら白目を剥いて、淀を垂らしている存在は………もう操り人形でしかないからね」 と言い念写の紙をテーブルに置き、自爆した男の顔を指先でコンコンと示した 「八仙、師匠達は大丈夫でした?」と遺った八仙の一人に問い掛けた 八仙は「奴等は炎帝を頼って人の世に向かった 炎帝は即座に久遠医師に診せて入院させた!と赤いのに連絡を入れさせて来たから…… 今も戻っておらぬならば、入院と言うのをさせたのじゃろうて!」と言う 烈は師匠………と、動いてくれた師匠達に思いを馳せた そして羅刹天に「地獄界の改革は思ったよりも急務かもね………此処までやられて悠長な事やっていたら、地獄界が消えるわよ! ボクら魔界の者は口も手も出せない! 何故ならば、全面戦争を所望している輩の思惑通りになるのは避けなきゃだからなのよ! 愚かな事をするならば……創造神の手により………… 地獄界ごと消えるわよ! 此れは警告であり、現実に起こる未来だと………ボクの占いが告げている! だから師匠達は今回動いてくれたのよね?婆婆?」と言う 星詠みの婆婆は姿を現した 「そうじゃ!聖神よ、一人の愚かな行為が…………戦を生むのじゃよ! じゃから慎重に事を進めねばならぬ!」 姿を現した婆婆はそう言った ニブルヘイムは「烈に血を一滴でも流させたら…………更地になると想いなさい!」と怒って言う  烈は「レイたん、其処までの話じゃないから!」と止める 「言っておかねば気が済みません! 言っておいて血を流そうものならば、その時は大義名分出来るじゃないですか!」 と嗤う 背筋も凍りつく………笑みだった 烈は「さてと、婆婆、どうしたら良い?」と問い掛けた 婆婆は「聖神は出てはなりませぬ! そのやんちゃな子が大暴れされては、全てが台無しですからな!」と爆笑する 烈はレイを見て「めっ!」と怒った レイは泣き出して素戔嗚尊が抱き上げて、外に出てあやした 羅刹天はショックから抜け出せずにいた 烈は「この神、当然だけど知ってるわよね?」と聞いた 羅刹天は頷いた 「もう対岸の火事じゃないわね! 放っておいたら丸焼けの焼け野原になるわよ 魔界もね今、不穏な空気を孕んでて……… 今 炙り出してる真っ最中なのよ!」 「八仙からお聞きしています! だから気持ち悪くて烈は来るから待っていろと言われました!」 「さぁ、らーくん気を引き締めて捕り物よ! らーくんは地獄界の為に、ボクは魔界の為に! 正しい道へ下方修正しないと、ならないのよ! と言う事で、クーたん、らーくんと天ちゃんに、闇が視える眼を貸し出して上げて!」 烈が言うとクーが、羅刹天と神髄師の眼を猫パンチしていた レイが素戔嗚尊に抱っこされたまま、呪文を唱える 羅刹天と神髄師が闇に染まらない様に、創世記の光の守護を授ける 烈は髪の毛2本抜くと、ふうっーと息を吹き掛け式神としての役目を与え、羅刹天と神髄師の中へと紛れ込ませる そして作戦を立てる 烈は水晶の上に神髄師の手を置かせ 「ねぇ天ちゃん、地獄界を思い描いてくれないかしら?」と言う 水晶に神髄師が思い描く地獄界が映し出される 神々と神々を支える為に存在する者、生前名のある者が地獄界で名のある者として暮らしていた 神髄師の描く世界はコロコロ変わる その中に必ずや混ざっている存在に目を止めた 「あ、解った? そうよ、もうソイツ等は神でもなきゃ、英雄でもなく、覇者でもない! ソイツ等はテスカトリポカに操られ人形にされた成れの果てなのよ!」 とズバッと言った 羅刹天も神髄師も言葉もなかった 「どう動くかは、貴方達が決めて動かねばならない!そうでなくてば魔界の介入とされ、果ては界界戦争に突入するからね! 闘い………それはどれ程の者が血を流し……どれ程の者の命を奪うのか? 知らねばならない 地獄界は平和ボケしてるって言われても………仕方ないわよ?」 羅刹天は「俺が死して地獄界へ行ってからは、戦などない平和な世界でしたから………」と言った 「魔界はね天魔戦争が在ったのよ 長きに渡る闘いで、どれ程の天使が、魔族が死したか…………解るかしら?」 「……………」 天魔戦争は知っていた 地獄界は傍観を決め………動かなかった闘いだった 「そして合戦場となった地が今………どうなっているか?知っているかしら? 貴方達は戦を軽く考え過ぎよ……… だから教えてあげるわ 天魔戦争の合戦場に遣われた地が今どうなっているか? あの地は未だに………魑魅魍魎が蠢く地として封印され、禁足地となっている場所があるのよ! 多くの血を吸い過ぎた地は、未だに血を求め………死んだ事さえ解らぬ者達が蠢き彷徨い…………熾烈な戦いをしているのよ 天魔戦争が終わって幾万年………その魂は昇華されてると想っているのかしら?」 黒龍は「え?それはどう言う意味なんだ?」と黙って見ていて初めて口を開いた 「今、素戔嗚尊が住んでいる地は禁足地よ! その意味が解る?って言ってるのよ! 闘い死した者達が血を流し死に絶えた あの地は多くの血を吸い込み、死した者の亡骸は弔われる事なく山のように積み上げられ、その果てに埋められた 幾千年の天魔戦争はどれだけの死者を出したと思っているのよ だからこそ、創造神はあの地を禁足地とした! 血を吸い過ぎ、屍の山が出来た土地ってのはね、そんなに簡単なモノじゃないのよ!」 そう言い烈は水晶に手を置き、禁足地を映し出した 天使……………だった者 魔族…………だった者 それらが今も闘い血を流し啀み合う 繰り返される闘いは死しても尚…………続けられていた 黒龍は唖然となった 閻魔と建御雷神は苦渋を浮かべた顔で水晶を見ていた 「らーくん この者はかっては天使だった者よ そして此方は魔族の戦士だった者よ 彼等は死しても尚…………闘っているのよ こんな風に地獄界も屍の山を築き、大地は血を吸い込み、穢れた土地を作りたいのかしら? 闘いは何も生まない そして尊い命を奪い…………死んだ事さえ解らない者は今も闘うしかないのよ」 羅刹天は「烈!!我等はこんな事は望みはしない!」と涙ながらに訴えた 「素戔嗚尊はね、禁足地となった地に呪縛された哀れな魂を解放する為………一人で長い月日……… 只管供養する日々を送っているのよ! 孤独で長い日々は今だって終わっていない! 戦いの中心に身を投じた自分の責任だと………今も弔いの日々を送っているのよ! 天魔戦争は再び起こしてはならない! それと同じで界界戦争もね、決して起こしてはならないのよ!罪のない者達が死す 苦しみ藻掻き呪いの呪詛を吐いた地は穢れ………死者しかいない地になる そんな風景を見た事がないから………貴方達は平和ボケしちゃってると言われるのよ!」 閻魔は「それを…………何処で知りました?」と問い掛けた 「えんちゃんもたけちゃんも………じぃさんが何故あの禁足地を創造神に申し下賜されたかは知らないでしょ? 亡者蠢く地に………素戔嗚尊は毎夜毎夜、その魂を鎮めるために闘って、何度も死にそうになった……… それでも死者を弔い………供養の日々を送った…… じぃさんの想いは知らないでしょ? 天使も魔族も………互いの大義名分の為に命を落として行ったわ……… 今世………聖神として魔界へ行った時、宇迦之御魂神はボクに全てを教えてくれたわ 宇迦之御魂神が、何故謀反を起こしたのか? 何故ボクの口車に乗り………父を撃とうとしたか……総て話してくれたわ 毎夜毎夜、亡者と闘い血を流し苦しむ父を楽にしたかった……… その想いだけで………謀反を起こし…………何かを変えようとした 魔界を変えようとした! 素戔嗚の腐った一族を崩壊させようとした! そう教えてくれたわ ボクは復讐する為だけに素戔嗚尊の一族をぶっ潰す事しか考えてなかった 宇迦之御魂神は父を思う想いの為に…… ボク等は互いの思惑は違えど………魔界と言う大きな柵に立ち向かい木っ端微塵にされた ボクは人の世に堕ち、宇迦之御魂神は父を支えて生きて来た ボクは宇迦之御魂神に謝ったわ うーちゃんは許してくれた ボクはそんな懺悔の元、魔界を発展させ、じぃさんが住む世界を豊かにしようと思った ボクはじぃさんの様な苦しみを誰にも抱えて欲しくないのよ………… それが地獄界であっても、間違った道に行って欲しくないのよ………」 羅刹天は耐え切れず烈を抱き締めて泣いた 神髄師は水晶の中に映る魑魅魍魎の姿に……… 「絶対に………曲がった道へ逝く事は許されぬ! それを心に刻みたいと想う…………」 烈は血で染まった天使が映ると水晶を手にして抱き締めた 「我等は正しい道を逝かねばならない! 罪のない者達に血を流させない為に……」 閻魔も黒龍も建御雷神も頷いた 素戔嗚尊がレイを抱っこしたまま部屋に戻ると水晶を覗いた レイは烈を抱き締めた 素戔嗚尊も烈とレイを抱き締めた 大歳神は「親父殿、老体に鞭打ち魑魅魍魎と闘うのは止めて下され!」と父を抱き締めた 建御雷神は「我等だとて未だに夢を見る………… 闘いとは命の奪い合いじゃ……殺らなきゃ殺られる奪い合いじゃが………… 散っていった命だとて……明日はあった 我等は………多くの者を殺め過ぎた それが闘いじゃったが…………未だに我らだとて悪夢となって苛まれる! 羅刹天殿と元始天尊殿は………こんな辛い想いなどせずに………いて欲しい…… そう願わずにはおれぬ………」と心の澱を吐露する そんな告白を聞けば………言葉なんて無くす しーんと静まり返った屋敷に沈黙が訪れた 烈は紙の束を手にすると計算を始めた 天を仰いで、星を詠み、計算をする そして星詠みの婆婆と話をし、大体の時間を計算する 星詠みの婆婆は「夜明け前には動きがあろうて!」と告げた 烈は「そーよね、それでボクは殺されるのかしら?」と問い掛けた 「聖神を殺めれば……この蒼い地球(ほし)が潰えてしまう………それを解っておるならば、痛め付け謀反の罪で永遠に魔界追放でも狙いたい、とかじゃろうて!」と婆婆は言う 「夜明け前か……ならば此方も対策を練らないとならないわね! らーくんと天ちゃんは今夜は泊まって行くと良いのよ!」と烈は突然言った 羅刹天は「え?泊まるのは構わないけど、何故ですか?」と問い掛けた 「その眼で視せてあげるわ、集団心理はこうして逆手に取られて暴動が起きるって事を!」 「え!暴動!!」 「今 魔界は閻魔庁の竣工レセプションでお祝いムードなのよ! それがね、誰かの一言でパニックに陥った集団は暴徒と化すのよ! まぁ市場閉鎖して工場も閉鎖したからね なら今後は何を食べたら良い!となるのは解っているのよ! 当たり前の日々を壊すのなんて簡単な事なのよ!」 神髄師は「何時の世も…………正常な判断が出来ぬ暴徒が事を大きくして煽って行く……… それをリアルタイムで見ろ……と?」と問い掛けた 「そうよ、夜が明ける前に暴徒は焚きつけられ騒ぎ出すわ! それが闇に操られた奴らだと、その眼で確かめると良いのよ! そしてそれは確実に地獄界でも起きると思い知ると良いのよ!」 「「………………」」 羅刹天も神髄師も言葉なんてなかった 烈は立ち上がると「それじゃ、夜明けと共に動ける為の準備をするわよ! サクサク片付けないとね! これからじぃさんちに移動して待機するわよ! じぃさん、あまちゃんに【羅刹天】を絶世の美女にして貰える様に頼んで、連れて来てくれないかしら? そしてとーさんは天ちゃんに、じぃさんの服を着せて、農家のオジサン風の格好をさせて! ご飯を食べて、夜明けまで待機なのよ!」と言った 烈は皆と共に屋敷の外に出ると、素戔嗚尊は即座に動き、愛馬を走らせ天照大御神を呼びに行った 素戔嗚尊を見送ると、烈は「黒ちゃん龍になってじぃさんちに連れて行って!」と頼んだ 黒龍は龍になると皆を乗せて、素戔嗚尊の屋敷を目指した 一足先に素戔嗚尊は天照大御神に会いに屋敷を訪れた 天照大御神は当然現れた弟に 「何かあったのかえ?」と心配して尋ねた 素戔嗚尊は「烈が姉上に羅刹天を絶世の美女にしてくれる様に頼んで来てくれ!と申したのでお願いに来ました!」と伝えた すると天照大御神は「暫し待たれよ!」と言い荷支度をして行く 化粧道具を籠の中に入れ、若かりし頃着ていた派手目の着物は、捨てるには惜しくて再利用を考えていた 今役に立つではないか!と大喜びで派手目の着物を風呂敷に詰めて、素戔嗚尊に持たせていく おなごの支度と言うのはこんなにも…………面倒なのか?と素戔嗚尊は今更ながらに思った 素戔嗚尊は両手に沢山の荷物を渡され、馬に横付けし、片手に持ちながら、愛馬の前に天照大御神を乗せて走らせる 大歳神は素戔嗚尊の屋敷に到着すると、素戔嗚尊の農作業用に着ていた服を用意して神髄師に着せた なんかボロそうな作業着を着ると、大歳神は「うむ!何処から見ても、素戔嗚尊の使用人に見えるではないか!」と納得した そして神髄師の高貴な衣装は風呂敷に包んで 「これは無くしては大変じゃから八仙の所へ届けておく!」と言い愛馬を駆けて渡しに行った 大歳神と入れ違えに、烈の屋敷に到着すると天照大御神は 「おぉ!羅刹天、主は奥の部屋に行き着替えるのじゃ!」と言い、強引に引き摺り連れて行った ぎゃー!ぎょえぇぇ!と羅刹天の叫び声が響く そんな声などなんのその、天照大御神は派手目の着物を着せて、化粧を施す 神髄師は農作業の服を着て寛ぐと 「農作業はこう言う作業着が快適に過ごせますな!」と意外に動きやすく丈夫な布に感激していた 羅刹天は天照大御神の手により、綺麗な女性に変貌を遂げられた 羅刹天は出来上がると鏡を見せられた 鏡の中の自分はまるで別人で「…………嘘でしょう………」と情けなく呟いた 神髄師は笑って「美しいおなごじゃ!」と言う 烈は「ありがとう、流石あまちゃんね!」と礼を言った 羅刹天の高貴な衣装や宝飾品は、タロウに八仙の所へ持って行く様に渡した タロウは即座に荷物を片手に八仙の所へ、羅刹天の高貴な衣装と宝飾品を預けに行った 大歳神が八仙の所から戻ると、素戔嗚尊は 「さてと、支度も終わったから、儂と倅とで何か作るとするか!待っておれ!」と言い炊事場へ向かった 大歳神は「親父殿、此方へ来て直ぐにウサ獣捕らえたから、それを焼けばよかろうて!」と言う 宇迦之御魂神は「毛皮は冬にマフラーにすると言うので剥いで乾かしてます! 取り敢えず調理しやすいように血抜きしといたから!」と言う 大歳神は「儂もマフラー欲しい!儂の分も用意するんだ!宇迦之御魂神!」と言う 宇迦之御魂神は笑って「そう言うって烈が言ってたので乾かしてありますよ!」と言う 漢の料理を素戔嗚尊と共にして作っていく 烈と宇迦之御魂神は漬物を切って、小皿に並べていた レイとクーがそれをテーブルの上に並べる 何時もやってねば出来ない動作だった 皆で楽しく夕餉を食べ、他愛もない話をし、夜明けを待つ 烈はレイに「此れから、何が在っても呪文は禁止よ!良いわね!」と小指を出した レイは頷き烈の小指に自分の小指を搦めた 「何が起ころうとも、動いちゃ駄目よ! 動いたらレイたんと絶交しちゃうからね! 指切った!」 と約束した 夜明け前に金龍が素戔嗚尊の屋敷にやって来て 「暴動が起きておる!どうしたら良いのじゃ!」と素戔嗚尊に問い掛けた すると待ってました!とばかりに皆は外に出た 金龍は閻魔や建御雷神、黒龍までいる事に驚き 「皆揃っておいでか………」と呟いた 閻魔は「夜明け前に暴動が起きると聖神の占いのお告げがありました!」と言う 金龍は烈を抱き締めた 「主は………我がこの命を賭したとしても護る!」と言った 「金ちゃん………」 「暴動の標的は聖神、魔界を好きにしようとしている炎帝の手先と言う事で皆が狙っている!」 と告げた 閻魔は烈が崑崙山へと着いた時から抱いていた不穏な空気を総て金龍に話した 金龍は「儂は聖神を心酔しておるから、そう言う噂話は素戔嗚殿と同じで耳には入る事は皆無なのだな……知っていれば……もっと早く動いたのに……」と悔しげに呟いた 烈は「金ちゃんちのシェルター、とーさん来たから完成出来るわね、そしたら後はコンクリートだから建つのに時間は掛からないわ!」と言う 金龍は烈の想いが嬉しかった そして「さぁ逝くわよ!道を誤れば………魔界は更地になると想うと良いのよ!」と言う 金龍は「そんな事は絶対にさせんよ!」と言う 皆で閻魔庁へと向かった 誰一人話す事はなく………沈黙のまま閻魔庁へと向かう 閻魔庁に到着すると、世界樹の方にいた者達も一つに集まり、扇動されるかの様に 「聖神が来たぞ!」と声が掛かった 魔族達は烈達の姿を見ると周りを囲んだ 「市場が閉鎖されたと聞くが?」と一人の男が問い掛けた 烈は何も言わなかった 何も言わないからボルテージが上がる 魔族の皆は騒ぎ叱責した 「我々を飢えさせる気か!」 「市場を私物化するな!」 等など好き勝手な事を叫ぶ 閻魔が警戒していると………烈の足元に魔法陣が浮き出た 烈は魔法陣の上に立たされ呪縛される レイはそんな烈を約束だから黙って見ていた 一人の男が前に姿を現すと 「この魔界の市場が一人の子供の手により操作されている事が可笑しいと何故解らないのだ?」 と揶揄した様な話をする 閻魔や建御雷神や羅刹天、神髄師の眼には……… 漆黒の靄を纏う男が得意げに話している様にしか見えなかった 建御雷神は「骨の髄まで………闇に侵されたか………」と悲しげに呟いた 魔法陣がクルクル回る 烈の体はキラキラと光だし………魔法陣をパリーンっと割った そもそもエンジェルリングを授けられた烈が、闇に囚われた者の繰り出した魔法陣に囚われる筈などないのだ そして冥府の闇が烈の半分を占めるヘルメースの存在がいる烈が闇に何とかされる理由などないのだ 康太は『2週間で帰れるのかよ? お前、めちゃくそハードスケジュールになるぜ? やる事は沢山有るんだろ?』と言った あの時、烈はやる事が山積みだからだと思った こんな展開視えていたのね………母しゃん 暴動あったら2週間では厳しいわ 況してや閻魔庁の完成後が大変だって解ってて………送り出したのね!母しゃん! 烈は心の中で母に毒づいていた もぉ〜!母しゃんのイジワル! 烈の心の叫びが…………虚しく響く頃 康太は会社に出勤していた 人の世の時間では烈が魔界へ向かって2日目になるのだった 烈が夜明けと同時に襲撃され、大変な目に在っているのを康太は知っていた 「烈、今頃怒ってるだろうな!」と康太は言う 榊原は「そりゃ怒りたくもなりますよ!暴動起きてるんでしょ?」と呟く 「だろ?謀反の罪とかで、魔界追放狙ってるんだろうさ! でも聖神を魔界追放したら妖精は二度と種の品種改良に協力なんてしないだろうからな……… それを良く知る閻魔が聖神を追放なんてする理由ねぇし、闇に囚われたモノに烈が負ける訳ねぇやんか! 烈の半分は未だに冥府の闇で出来ているし、天空神からエンジェルリングが施された今、闇など弾き返すだろうさ! どんな強烈な魔法陣だって、烈なら弾き返せるだろうからな、送り出したんだよ! 今回はオレは出ねぇ! 烈が絶対に出るな!と言ってるからな!」 「その真意は?」 「何でもかんでも災厄は炎帝の所為 そして炎帝は聖神を使い魔界を我が物にしようとしている! そんな噂が流れ始めていると妖精が耳にしたと言ってた 妖精はどんな些細なコソコソ話だとて拾う聴力を持ってるからな 魔界中の噂ならば妖精に聞けば一発なんだよ! 烈は速い段階からそれを危惧していた そしてタイミングさえ合えば暴動が起きる事も掴んでいた でもまさか、閻魔庁の完成祝いレセプション祝賀会の後に暴動起こされるとは思っていなかっただろうけどな!」 と康太は嗤っていた 「今回の暴動は聖神が魔界へ来たら発動する様に仕組まれていた……と言う理由ですか?」 「だろうな、こんなタイミングの良いのは狙ってなきゃ出来ねぇだろうが! そしてレイは知るんだろ………【約束】した以上動けない悔しさを……… これはレイの心の情操教育の一環でもあるだろ? 何でもかんでも力押しで行こうとしていた烈の行動をスッカリ真似してゴリ押しやろうとするレイを諌める為に連れて行ったんだろうな………」 「ならばレイは辛い想いをしますね………」 「…………レイは赤子みたいなモノだからな 見ているモノ総てが許されると思っちまった まぁ烈と竜胆の気合だ!気合で乗り切れ!精神の影響大だからな…… 気合で乗り切れるのは、それは根底には強い心がなくてはならないのを知っていなければならない ゴリ押しで何とかなるのは、解っているヤツだけだと知らねぇとならねぇ! ツケの回収が…………暴動だからな………」 榊原は我が子とちっこいのの直面してる状況を想い図り 「本当に行かなくても大丈夫なのですか?」 「逝けば油に火を注ぐだけだ! オレは面倒クセェ事は、んとに嫌いだかんな…… 耳を貸さねぇヤツとは対話もしたくねぇんだよ! 烈は対話が出来ねぇ龍族の奴等とだって根気強く対話して、間違いを正す行動を取っていた 寝る間を惜しんで魔界に行き対話して、会社に出て、イベントの準備して……なんてのは烈だから出来る事だろ? オレは石頭と無能と耳を貸しもしねぇ理不尽な事は大嫌いなんだよ! だから青龍と結婚してゴリ押しで認めさせようとした 軋轢や不平不満が出るのを解っていて……通して来ちまった事を、烈が正して正しい道へ導いた 魔界で龍族は不動の位置を手にした もう誰も龍族に文句なんて謂わねぇだろう オレが間違った道へ行っちまったのに、烈は軌道修正掛けて正してくれた! そんな烈が来るなと言うなら、オレは行かねぇよ!それが烈の愛だからな! 両親へ送る愛を台無しに出来ねぇだろ?伊織!」 榊原は康太を胸に抱き 「ええ、親孝行な息子を持ちましたね僕達は! この繋がりは今世に限らずだと言ってくれましたからね! 僕達は我が子を信じて待ちましょう!」 と言う 其処へ西村が入って来て 「んとに、お前等は仲が良いな! さぁ仕事してくれ!来賓室にヨニー©ウッズスタンの鳳城葵氏が来ているが、どうする?」と問い掛けた 康太はそれを聞き 「烈は今 魔界で大変な目に遭ってるかんな 2週間は帰還しねぇからな………困ったな……」 とボヤく 西村は「暴動起きてるんだろ?毘沙が駆り出される前にボヤいて行きやがったからな! んとに、おめぇは倅に大変な仕事押し付けやがって!」と言う 康太は笑って「まぁ孝行息子が来ちゃ駄目よ!言うかんな!オレはノータッチなんだよ!」と言う 「羨ましい親子愛だぜ! それよりどうするよ?お帰り願うか?」 「嫌、逢いに行く! それより西村は久遠に聞いて産院探しておいてくれ!」 「え!!!妊娠してるのかよ!」 「だろ?烈の星詠みの結果を見たからな!」 「了解した!即座に久遠に会いに行き産院を聞いて来るよ!」 「電話で構わねぇぞ!」 「アイツが電話でホイホイ話してくれるタマかよ!此方が出向かなきゃ話すらしねぇだろ!」 西村がボヤくと康太は久遠の頑固さを想った 康太と榊原は取り敢えず来賓室へと出向いた 来賓室に行くと…………艶の出た鳳城葵が安曇貴之と共に座っていた 康太はソファーに座ると足を組み唇の端を吊り上げて笑った 鳳城はそれを見て、あ、烈だ!と想った 康太は「烈は2週間位不在だとヘンリーから聞かなかったか?」と問い掛けた 鳳城は「聞きました……けど、その前に話しておかねばならない事があるので………」と切り出した 貴之は腹を決め「真贋!」と話し掛けた 康太は「鳳城葵、烈の希望通りに妊娠した気分はどうよ?」と問い掛けた やはりお見通しか……鳳城は想った 「烈がお前の運命を計算して、オレはそれを視て知ったんだ! お前は烈の希望を叶えたんだ! まぁ烈がお前を妊娠させたかったのは、由香里の為だけどな、やはり娘の子は特別なんだよ! だから由香里に娘の子を抱かせて遣りたかった 良かったやんか! お前も今後はスキャンダル出そうなんて考えねぇだろうし、オレは何も言う気はねぇよ! だがな貴之、おめぇは違う、ちゃんと責任取るんだろうな?」と少し脅す様に問い掛けた 貴之は「正式に婚姻致します!お腹の子も僕の子なので認知して共に育てて行きます!」と言う もう何かに焦った貴之ではなかった 責任を伴う人生の伴侶を得て、責任と重責を背負う覚悟の瞳をしていた 康太は「火と油………と言っても過言じゃねぇ程に相性最悪だったのにな…………」とボヤく 貴之も「はい!彼女を初めて見た日は絶対に合わない!と断言出来ました! ですが彼女の弱い部分を垣間見て、僕が支えてやりたく想いました! なし崩しで関係を持ちましたが、僕の心は決まっていました! 僕は遊びや冗談で女性と寝る趣味は持ち合わせてはいません! 関係を持った以上は………責任は取ります! それを烈君に話す前に………真贋にお知らせをせねばと想い参りました!」と告げた 覚悟と意思を感じて康太は何も言う事はなかった 鳳城は「彼は………真贋が視た果てへと逝けなくとも………私と腹の子は護って行くと約束してくれた!ならば私も彼の想いに沿わねばならないので………真贋に先に会う事にしたのです!」と告げた 康太は「烈は今、オレの変わりに闘ってくれている!だから2週間は還らねぇよ! 命が有れば………2週間後に烈が連絡入れると思う!だからさ葵、おめぇは此れより西村に連れられて病院へ行きやがれ! まだ医者にも診せてねぇんだろ! それなのに倭の国へ来やがって………すぐに行け! そして診て貰え!良いな!」と言う するとタイミング良く西村がやって来て 「久遠が、病院まで来たら総合病院へ連れて行き、一緒に見立てするって言ってるからな行くぞ!おめぇ保険証は?」と問い掛けた 鳳城は「倭の国で診てもらえる保険証はない……」と言う 康太は兵藤に国際電話をした ワンコールで出た兵藤に康太は 「竜馬に倭の国でも使える保険証がないか、聞いてくれねぇか?」と問い掛けた 兵藤は『自分で聞けばええやろが!』とボヤいた 「だって烈と出逢う前にオレがスパルタで叩き上げすぎて竜馬は少し恨んでるからオレの電話は出ねぇんだよ!」 『…………お前……何やってるのよ?』と呆れつつ竜馬に 「お前さ康太の電話出ねぇのか?」と問い掛けた 「だって……こーちゃんからの電話はロクな事ないから出ないに限るんすよ!」と返す 「少し恨んでるのか?」 「少し前は少し恨んでた、でも今は烈が知ったら絶交されるから恨んでない……… でも、こーちゃんの電話はロクな事ないから出ない!」 埒が明かないから兵藤は康太に『用件は何よ?』と問い掛けた 康太は「鳳城葵の保険証はどうなってるのよ? 烈は今魔界に行ってるから、訳が解らねぇんだよ!」と言う 兵藤は「葵、今倭の国に行ってるのか? どうした?体調崩したのか?」と問い掛けた 「妊娠してるんだよ!烈の見立てでは4ヶ月は行ってるだろうって、なのに病院にすら行ってねぇんだよ!」とボヤく 兵藤は「えー!!!妊娠してるのか!! 竜馬ぁー!葵妊娠してるって!保険証どうにかしろよ!」と言う 竜馬は電話の向こうで「嘘!葵が妊娠とか………嘘だろ!相手は宇宙人とかか!」とトンデモ発言する  「相手は知らん!でも妊娠してる! 保険証どうにかしろよ! 康太が困ってるやんか!何とかしろよ! お前んとこの従業員なんだろうが!」 ほぼ難癖に近い事を言う 電話から聞こえる声に康太は、たらーんとなった 竜馬が電話を変わり 『鳳城は今 倭の国にいるのですね! ならば【R&R】のスタッフを動かし保険証を届けます!どの病院へ逝けば良いですか?』 と丁寧に話す 康太は「此れから久遠の所へ連れて行くから、取り敢えず久遠の所まで保険証を頼む!」と告げる 『了解っす!所で今何ヶ月ですか?』 「………烈に聞け!2週間経てば烈とは電話は繋がる!」 『了解っす!それでは葵の事を頼みます! 御影を動かし葵のサポートさせます! 今後の事は烈が軌道修正を掛けるので、俺等は烈が帰還せねば動かないつもりです!』 「それで良い!ならラストスパート掛けて頑張れ!」 と言い電話を切った 康太はどっと疲れて「取り敢えず病院へ行きやがれ!」と言った 榊原も「今 烈は命懸けの大変な想いをしているのです!帰還したら話し合いになると思うので体調を整えて過ごして下さい!」と言葉を掛けた 康太は「取り敢えず安曇には伝えとく!倭の国に滞在中は安曇の家に泊まるが良い 登紀子にはそう伝えとく!」と言った 貴之は康太に深々と頭を下げ、鳳城を気遣い久遠の病院へ向かう為に来賓室を後にした 康太と榊原は二人を見送り 「中々のお似合いカップルやんか!」とボヤく 榊原も「鳳城は流石由香里の子ですね、子を孕み美しさが倍増していましたね! そうなると……ヨニー©ウッズスタンの副社長が不在となりますね………どうしますかね?」と今後の事を考えて呟く 康太は安曇登紀子へ電話して「登紀子、貴之が妻を連れて今夜行くから饗してくれ! 妻は孕んでるから、気遣ってやってくれ! 多分、烈が帰国しないと話し合いは出来ねぇから2週間は倭の国に滞在する事になる」と告げた 登紀子は『貴之と奥さんは今何処に?』と問い掛けた 「妊娠したと言うのに病院にも行ってねぇみたいだから久遠の病院へ行かせた!」 『了解しました!ならば私は貴之が来ましたら、嫁となる子を大切に気遣おうと思います!』 「頼むな!今 烈は留守だからその間は世話になると想う!」 『烈君 留守なのですね 私達、【R&R】のアメリカでのイベント、お忍びで見に行ったのですよ! 本当に最高の出来で私達も泣いてしまいました 近い内に貴也と貴教に会わせろと言われてますので、宗右衛門殿に一任する所存です!』 「あぁ、貴教……あれはオレの果の詠み違えか? とまで思える体たらくだからな頭を抱えていたんだよ そうか、宗右衛門はその事も詠んでくれていたんだな! 貴也は性の悪い女に引っ掛かっているらしいから………家には絶対に入れるなよ! 下手したら家の権利書持って行かれるかも知れないって烈が言っていた」 『え?この前強引に来てました……まさか……』 「オレの果てが悉く狂わされていたんだよ! それを今 宗右衛門が軌道修正掛けてくれている 命懸けで今 正してくれている 今も………その為に出向いてくれているんだ! 兎に角気をつけろ! 宗右衛門が帰国したら、追々話し合いになるだろうからな! 今後の方針は宗右衛門が還ってからだ! それまでに身辺警戒して整頓しといてくれ!」 康太はそう言い電話を切った 康太は果てを視て 「こんなにもオレの果てが狂わされていたんだな…………」と呟いた 榊原は妻を抱き締めて 「宗右衛門が軌道修正してくれます! その第一歩が貴之でしょ? そのうち三木敦之も正さねばならなくなるんてしゃうね!彼の噂は良い話を聞きませんから!」 と現実を告げる 「だな、平和ボケした成れの果てなのか? この飽和した世界に……生きる指針を見失ってるのは確かだな………」 「さぁ我が子が頑張ってるので僕達も頑張りますよ!」 気合を入れなおして康太と榊原はエレベーターに乗り最上階の社長室へと向かった

ともだちにシェアしよう!