94 / 100
第94話 暴虎馮河
頑張ってる我が子はピンチを迎えていた
魔族に集団で取り囲まれ、魔法陣まで出されていた
その魔法陣は捕縛の魔法陣だった
閻魔庁の者が犯罪者を取り締まる時に出す魔法陣だった
だが闇に染まりし魔法陣では、烈は捉えられはしなかった
悪しき力を弾くエンジェルリングを授けられたのだ、闇など弾いてしまうのだ
そしてやはり烈の体は今もヘルメースと共存する為に冥府の闇に染まっているのだ
闇になど絶対に蹂躙などされない
魔法陣を破った烈に集団を焚き付けた男は、さらに躍起になり
「謀反者だ!閻魔庁の捕縛の魔法陣を割りやがった!」と叫んだ
烈は取り囲まれた者達に口汚くに罵られ、暴力を振るわれていた
殴られ血を流す烈を見ていられなくて、閻魔は前に出て
「冷静になりなさい!何故貴方達に聖神を捕らえる権利があるのですか?
そして此れが魔界の法の魔法陣だと言うならば、貴方達の中に閻魔庁の職員がいると言う事になる!
ならばその職員は上司である閻魔に刃を向けていると言う事になりますよ!」と問い掛けた
「そうやってゴリ押しで魔族をまた従える気ですか?」
男が言うと、そーだ!そーだ!とヤジが上がる
ヤジが上がれば閻魔にも石が飛び、棒みたいなモノを掴むと殴り掛かって来た
金龍と黒龍が烈を護る
建御雷神と素戔嗚尊が閻魔を護る
だがチャンスとばなりには木刀で殴りかかり、大きな石を投げつけた
その石が烈に当たり、烈は血を流していた
それでも民衆は収まらない
「魔界追放だ素戔嗚尊も閻魔も建御雷神も黒龍も金龍も罪人を庇うならば同罪だ!」
と言い集団催眠に掛けられた様に暴徒と化した集団は己の主張だと言わんばかりに暴力を振るう
血を流して更に殴られボコボコにされる烈を、レイは見ていられなかった
黙っていないと絶交だと謂われたレイだが…………
黙ってられなくて………レイは「すじゃくぅ………」と鳴きながら名を呼んだ
貴史じゃなく朱雀と呼んだ
呼んじゃ駄目なのに………
動けないから………助けてくれそうな者の名を呼ぶ
横に立っていた天照大御神は、確か朱雀は烈から魔を跳ね除ける八咫鏡の欠片を持たされていたな?と、思案してレイの助けの声を朱雀へ届けた
イギリスにいる朱雀に八咫鏡が声を届けてくれるかは?解らなかいが………
この状況を何とかしたいのだろう………
素戔嗚尊は孫や閻魔に投げ着けられる石を、弾き飛ばして応戦していた
天魔戦争の覇者は今 閻魔や孫の為に命を懸けて闘っていた
大歳神も「儂の倅に触るんじゃねぇ!」と根っこで応戦しているが………
狂った様な輩の相手は難しかった
羅刹天と神髄師は………暴徒と化した魔族を唖然として見ていた
集団になれば秩序や理性は何処へ行ってしまうのやら………
此れは地獄界でも起こると烈は言った
ならば我等は……こんな無秩序な集団を相手せねばならないのか…………
声を上げて叫んでも、それが真実だと話しても耳に届きはしない
暴徒と化した集団は洗脳されているのか?
先導している者の声しか聞かなかった
良いように誤魔化されないぞ!とばなりに聞く耳を持たなかった
此れが現実なのだ
そして現実は非情にも………集団となった暴力に為すすべさえない
クーは羅刹天と神髄師を守る様に闘っていた
が、かなり怪我して痛いし、耐えて闘うには相手が悪過ぎた
言う事を聞かない輩に辟易して、クーは最終手段として呪文を唱えた
呪文を唱え、魔族総てに闇が視える様にした
魔族は一瞬、動きを止めた
自分達を先導している者の顔や身体が………黒い靄で覆われていたからだ…………
すると静まり返った空間を破る様に頭上に声が響いた
「ソイツ等は闇に囚われ、テスカトリポカに体まで闇に支配された傀儡だ!」との声が響いた
見上げると真紅の赤を纏った朱雀が姿を現した
「輪廻転生は朱雀が務め!
輪廻の輪から外れた者達よ!消え去れ!」
と命じると……キィー!と鳴いた
すると集団を先導していた者達はバタバタと倒れた!
朱雀は地上に降り立つと、烈を掴む男を振り払った
そしてレイを抱き上げると「大丈夫か?」と心配した
閻魔はチャンスとばかりに
「貴方達は闇に染まった者達に先導され、魔界の為に骨身を惜しまず皆の食を安定させようと努力してきた聖神と妖精達を愚弄したのですよ!
だから聖神は市場から食べる物、全ての供給を止めた
そして工場の稼働も止めた
工場で働いている者達も聖神と妖精を愚弄したも同然ですよ?
此処にいると言う事は、聖神を糾弾し魔界から追放する気だったのでしょ?
ならばもう貴方達は工場で仕事はさせません!
聖神はもう蔑ろにされた以上は、野菜や味噌、醤油、ワイン、お酒や味噌の供給も止めるでしょう!
その道を選んだのは貴方達だ!」
と毅然とした声で告げた
烈は血を流し過ぎて……クラクラだった……
こんなに暴徒が狂人化させられるなんて…………想定外だった
そして烈はレイを見た
レイは「ぎょめん………れちゅ………」と謝った
約束だったのだ
動かない、呪文を唱えない約束だったのだ
「大丈夫よ!レイたん………レイたんは約束を守ったわ」
そう言いニコッと笑った
そして限界を超えたのか?バタッと倒れた
烈の崩れる体を大歳神は抱き上げた
「倅は魔界に2度殺され消される所じゃった!
烈に何かあったら………こんな魔界などぶっ潰してやるわ!」と言い姿を消した
建御雷神は大歳神が烈を連れて行ってしまい………
皆に「誰が骨身を削って野菜を作ったか考えてみると良い!
モノに溢れかえった魔界は誰の努力の上に成り立っているのか?
考えられよ!聖神を追放したいのじゃろ!
ならば魔界大法廷で正義の議論をやるべきじゃな!我等は聖神が手当をして来るまで話し合いをせねばならぬな!」と告げた
天照大御神は「朱雀………済まなかったな、レイが主を呼んでおったから………呼び出してしまった……」と謝罪した
朱雀は「俺はレイの声が聞こえたから飛んで来ただけです、なので事情は解らないので話して下さい!」と言った
素戔嗚尊が朱雀に全てを話した
朱雀は羅刹天と神髄師を見た
「烈がアレだけ酷い怪我を負っているのは、お二人の怪我も肩代わりしたからですか………」
と言い烈の髪の毛で作られた式神を手にした
羅刹天と神髄師は唖然としていた
そう言えば………殴りかかろうとする暴漢はいた
投石は自分達にも飛んで来てはいた
なのに無傷なのは…………可笑しい
烈が身代わりになっていてくれたとしたら………
全ての傷を負って烈は倒れた事になる!
閻魔は魔族達を家へと還らせた
魔族達は茫然自失となり……何が起こったのか?
理解が追いついていない状態だった
が、目の前で……閻魔や建御雷神、素戔嗚尊、聖神、金龍、黒龍は血だらけで悲惨な状態だった
自分達がしたと言うのか??
何が何だか解らなかった
素戔嗚尊は「我が家に来て手当をされよ!
多分………倅もまだ魔界におるであろう!」と言い皆で素戔嗚尊の屋敷へ向かった
朱雀は「何で大歳神がいるって想うんだ?」と問い掛けた
素戔嗚尊は「其れは烈が望んでいる事じゃからな!
『何が在っても人の世には行かない!
両親に知らせるのは許さない!
この場に炎帝を引きずり出したい者の思惑通りには絶対に乗りはしない!』と言ったのじゃよ
なれば八仙を呼び付けて手当をしておるじゃろう!まぁ八仙の手に余るなら人の世に逝かねばならぬが……それもこの騒動が終わらねば…………身動きなど取れぬじゃろうで!」と言った
建御雷神は「我等も手当を受けねばなりませぬから、素戔嗚の屋敷へ行かせて貰ってもよいか?」と問い掛けた
素戔嗚尊は「あぁ構わぬよ……狭い家じゃが皆でお越しくだされ!」と皆を快く招き入れる事にした
素戔嗚尊の家に行くと………鬼がいた
八仙は皆を見ると「ほらほら怪我人は増えておるぞ!」と言う
「怪我したヤツは順番で見るから待ってろ!
んとに、おめぇは怪我ばかりしやがるな!
背中の傷だってまだ治ってねぇのによぉ!」
「せんせー、ごめんね」
「お前の両親には解らねぇ様に出て来たが、真贋だからな………親父は戦々恐々だって言ってる!」
「大丈夫よ、母しゃんはボクに任せた
任せた以上は約束は守ってくれる!
絶対に魔界には来ないから!」
「病院の中を八仙がプカプカ浮いて俺を探しているのを見た時…………めちゃくそ驚いたぞ!
烈達が怪我してるから来てくれ!と強引に引っ張られ魔界へ連れて来られた!
来たらワンサカ怪我人は増えやがるし!」
八仙に連れられて久遠医師がやって来たいた
久遠は「他に怪我したのとかいねぇのかよ?」とと言いかけた
閻魔は「ええ、標的が私と烈でしたからね……後は巻き添え食って怪我したのです!」と答えた
八仙に「烈達が怪我している!」と聞き、取り敢えず詰め込まれるだけの怪我の手当の準備はして来た
久遠は全員上半身裸にさせ整列させた
流れ作業で消毒をして手当をしていく
八仙も手伝い手当てをしていく
その手際の良さに八仙はやはり感心するのだった
久遠は烈に「烈、極秘にしたいなら内緒にしてやるから、お前は人の世で治さねぇと治らねぇよ
打撲も酷いし、多分呼吸を聞けば肋骨、折れてはいねぇけどヒビ入ってるぞ!」と言った
烈は「やっぱりね、息すると痛いからね」と答えた
「レイもかすり傷着いてるし、そこの猫はもっと重症だろうが!」と言う
大歳神は「ならば倅とレイとクーは儂が連れて行こう!」と言う
久遠は「連れて行くなら金龍、黒龍、閻魔、建御雷神、素戔嗚尊も連れて行ってくれ!
彼等も全身打撲で、素戔嗚殿に至っては鋭利な何かで切り裂かれている!
どの道病院へ行かねぇと縫えねぇよ!」と言う
大歳神は「ならば皆で暫し行くしかなかろうて!」と言うと久遠は「神威、おめぇも満身創痍だぜ!背中斬り付けられてるの解ってるか?」と問い掛けた
大歳神は「まぁ血は流れてるとは思っておった!」と雑な返しをする
閻魔は羅刹天と神髄師に
「貴方達は八仙と共に崑崙山へと出て地獄界へお帰り下さい!
我等は少し傷付き過ぎたので治療をして参ります
皆に沙汰を渡すのは治療の後になるので、貴方達とは此処でのお別れとなります!
気を付けて地獄界へお帰り下さい!」と告げた
八仙は羅刹天と神髄師を連れてその場を後にした
取り敢えず大歳神は神の道を開くと、久遠の病院まで向かった
病院の中に神の道を繋ぎ出ると、久遠は即座にスタッフを呼び出して治療を開始した
治療を終えた後、取り敢えず感染症とかの様子見で2日は入院しろ!との事で個室にベッドを運び込ませ入院する事になった
建御雷神は「この点滴っちゅーのは何時やっても泣けて来るな!」とボヤく
烈とレイは一つのベッドで寝ていた
クーは体を小さくしてカゴに入れられテーブルの上にと置かれて寝ていた
朱雀は人の世に一緒に帰り、その足でイギリスまで飛んで還った
心配だが、今自分にはやる事があるからだ!
時を遡り飛んで行くと、ほんの数時間のズレで戻れた
竜馬は「あ、貴史どうしたんだよ?何処行ってたんだよ?」と探したのか?心配して問い掛けた
兵藤は「すまん、腹具合悪くてトイレの住民になっていた!」と返した
「病院行かなくても大丈夫?」
「俺も久遠にしか診せねぇ事にしてるからな
倭の国へ帰国したら診て貰うわ!」
「それ………無謀な事だって解ってる?
俺等は11月までスケジュール詰まってるんだよ?ロードの終了過程の認定証貰えるの12月だから、その前に体調悪いなら医者に掛かりなよ!」
「なら帰国するまで健康管理するさ!」
兵藤は笑った
兵藤と竜馬の卒業行程が明らかにされた
年末までスケジュールが目白押しで、本番さながらの実戦訓練へ突入する
企業の中へぶち込まれ、実戦訓練が始まるのだ
今後は少しのロスタイムも許されない事となる
烈は熱が出て魘されていた
久遠は用心して烈をICUに入れた
素戔嗚尊、閻魔、大歳神、建御雷神、金龍、黒龍、クー達も必死に痛い治療に耐えていた
3日目に烈は個室に戻された
熱も下がり、食事も食べれる様になって来た
入院して5日も経つと、やっと明日には退院しても良いと謂れた
そしたら魔界へ行って後片付けして来ないとならない
烈は窓から裏の飛鳥井の家を眺めていた
家に帰りたいにゃー
こんなに近くにあるのに…………
と想い家を眺めていた
すると部屋にいた一生と目が合った気がして、即座にしゃがんだ
「ヤバいわ!カズに見られてないわよね?」
暫くすると一生が個室にやって来た
「やっぱ烈だわ!どうしたのよ?
家族に内緒で入院してるのかよ?」
と問い掛け………固まった
烈達は広めの個室に全員寝かされていたからだ
まさか病室に烈だけじゃなく、閻魔に建御雷神、素戔嗚尊、金龍、黒龍、大歳神までいるとは………
想いもしなかった
「何が在ったんだよ!」と一生は問い掛けた
それに答えのはクーだった
何と…………クーも包帯を巻いていた
魔界での一部始終を話され………一生は「俺も魔界へ行くわ!んで烈のサポートしてやるよ!」と言ってくれた
「え??明日退院したら直ぐに魔界へ行くのよ?」
「おー!解ってんよ!んな事は!」
「カズ、母しゃんに内緒で入院してるのよ!
視られちゃったら……解っちゃうじゃない……」
「大丈夫だろ?お前は康太と約束したんだろ?
ならば康太は絶対に約束は守るさ!
そうと決まれば、飯作って来てやんよ!
其処のオッサン達は退院しても良いんだろ?
なら飛鳥井に来て飲んでから帰れよ!」
建御雷神は「おー!命の水じゃな!」とご機嫌だった!
素戔嗚尊は「なら聖王呼んで貰おうかな?」と盟友で飲もうじゃないか!と言う
一生は「うし!弥勒に連絡して迎えに行ってやんよ!」と言ってくれた
オッサン連中を引き連れて一生は還って行った
烈は窓の外を眺めながら「あんな数秒見ただけで解るなんて目が良すぎよ!龍ってどんな眼してるのよ!」とボヤく
「それは父に喧嘩を売ってますか?」と突然声が聞こえ、振り向くと榊原が立っていた
その横には康太もいた
烈は「父しゃん、母しゃん!」と叫び泣いた
康太と榊原は我が子を抱き締めた
康太は「また怪我させちまったな!」と言い怪我にそっと触れた
「怪我はらーくんや天ちゃん傷付けさせる訳にいかなかったから、身代わりになったから仕方ないのよ!でも、母しゃん、あの傀儡は何処から紛れて来たのかしら?」
今 魔界は傀儡が紛れ込める様な環境になかった
「だな、それオレも不思議に想った
閻魔庁の前には創世記の涙を用いた結晶で作った水が霧状になり噴霧されてるんだろ?
ならば………ただの傀儡なら………あの霧に掛かれば倒れるのにな、って想った」
「なら…………」
「想像したくねぇけど、女神像は他の石にコピーしたのを置いてるんだろ!」
「触れれば……溶けるわよ?」
「だから闇に染まってない者達を洗脳させた、って事なんだろ?」
「許せないわね!
って事はレイたん、あの女神像見た時に解っていたのね!」
レイは頷いた
「なら何で言ってくれなかったの?」
レイはニブルヘイムの声で
「あの場で言っても既に収拾が付かない状態でしたし、君は【約束】だって言ったじゃないですか!だから僕は敢えて言わなかったのですよ!
君が傷付いてるのに………見ているしか出来ないって………凄く辛かったです
でも君は何でもかんでも気合でゴリ押しした教育の間違いを教えたかったのですね
私だってゴリ押しは無理だと思う時はありますよ!本当に意地が悪いんですから!」
とボヤいた
康太は「ならアレは偽物だって言うのか?」と問い掛けた
「ですよ、上手く似せて作らせてますが、九曜神が像に魂を入れない筈がない
あの女神像には魂が入ってませんでしたからね!
まぁこんな事があるかと危惧して、九曜神にはもっと濃度の高い女神像を依頼してあります!
創世記の涙なんて生易しいのは駄目だと想い、僕自ら創世記の泉に出向き、創世記の雫を創り、かなり濃度が高いのを九曜神に依頼済みです!
それで魔界に存在する神程度のヤツは触れる事さえ不可能ですよ!」
と言いガハハハハハッと嗤った
その顔でガハハ………は、合わないってば!と康太は想った
が、言うだけ無駄だから黙っていた
榊原は「当初の2週間で帰還して下さい!
飛鳥井建設では新しい仕事が舞い込んで来ています!その仕事はヨニー©イギリスが打ち出した免震構造システムの使用込みの依頼なので、君がいなくば、進められない仕事ばかりなので、キツいですが、残り一週間一寸でお願いしますね!」と情け容赦のない事を告げる
「え?僕、魔界に行って2日経ってるのよね?
そして入院して5日………残り一週間しかないわ!
ならある程度の話の道筋を着けて、後は通いで何とか出来る様にするわ!」
烈は頭の中で計算してスケジュールを立てる
康太は「あ、鳳城葵と安曇貴之が来たぞ!
妊娠してたわ、葵!で、その配置も頼むわ!」と話す
「そろそろ貴也………命取られるわよ!
お金が引っ張れないなら、用はないし、足が付くから消すに限るのよ!
暦也に探らせてるけど、不動産屋と女はグルよ!
地上げ屋の仕業ね、安曇の家の一帯は再開発地区でね、土地がバク上がりしてるのよ
土地さえ乗っ取れれば、用はないからね
本当に素人の女しか知らないからテクある女に翻弄されちゃうのよ!
まぁテクばかり追求してロクでもないのにもなっても困るけど、何かにつけて世間知らずなのよ
貴之も貴也も貴教も敦之も!
だから道を見失ってロクでもないヤツに成り下がるのよ!」とボヤいた
康太は「オレの見立てた果てが悉く狂ってるかんな……そのツケを払わせる事になる、済まねぇな宗右衛門!」と謝罪した
「まぁ、此れからは本当の地獄を見て貰うだけよ
楽に朝日は拝めない場へ放り込むわ!
それもボクが帰還して追々ね!」
「追々でも頼むな!」
「頼まれるから絶対に母しゃんは魔界に来ないで!落ち着いて【大丈夫よ!】と言うまでは来ないでよ!」
何でもかんでも【炎帝】の所為にさせられてるのだ!
どんな無理難題言い出されるか解ったモノじゃない!
康太は「お前の導く果てにオレがいれば良い!
だからお前が良いと言うまでは行かねぇよ!
それにしても数秒でお前が解るなんてな、龍って凄い視力持つよな………」と感心した
「そーなのよ!直ぐに隠れたのに視えてる方が怖いのよ!龍って凄いわ!
あ、黒ちゃん怪我させてゴメンね!父しゃん
母しゃんも……えんちゃんとたけちゃん怪我させてごめん!」
榊原は我が子を抱き締めて
「謝らなくて良いです!
父は君を師として心酔していますからね
兄も君の為ならば命を擲る覚悟はしてます!
君と共に魔界を発展させると決めたのです!
何度も何度も膿を出さねばならない
その作業は辛いモノがあるでしょう!
それでも共に行くと決めたのです!
君はきっちりカタを取って来なさい!」と言う
烈は何度も頷いた
康太は烈の頭を撫で
「明日 魔界へ行くんだろ?
ならば今は休め、後で一生が何か持って来てくれるだろうからな!」と言う
烈は頷きベッドに横になった
それを見て康太と榊原は病室を後にした
康太と榊原が飛鳥井の家に帰ると、弥勒が一生に連れられ来ていた
帰宅した清隆と瑛太は飲兵衛連中に混じって酒を飲んでいた
包帯だらけなのが少し気になるが………
それでも楽しく飲んでいた
翔は母を視て「烈に会いに行って良いですか?」とコッソリ問い掛けた
康太は「あぁ、明日からまた一週間、留守になるからな元気つけて来てやれよ!」と言った
弟が何処へ行って何をしているかは?
一切視えないし、詠めない
だが一生が還って来た時に、烈の姿が視えた
近くにいるならば愛する弟に会いに行きたい
その思いで一杯だった
翔達は両親に烈を見舞って来ます!と言い飛鳥井の家を出た
プーが付き添い外に出る
そして病院へ向かい受け付けは………閉まっていたから久遠に連絡を取り、特別に面会させて貰った
病室に行くと弟がモリモリ山盛りのサラダを食べていた
「烈!」と名を呼ぶと、烈は嬉しそうに笑った
「にーに達!」
兄達は弟の傍へ行き、弟を抱き締め
そしてレイを抱き締め、クーも抱き締めた
烈は「プーたん、そろそろ警戒レベル高め設定にしないと駄目かもね!」と言った
プーは顔を引き締め「そうか、ならば即座に応援が出られる様にしとくわ!」と言った
「地獄界では、羅刹天の目の前で自爆した者がいたわ!
師匠達が巻き込まれ………怪我をしたのよ
せんせーに聞いたら師匠達はボクと入れ違えで退院して行ったみたいだけどね
中華圏のバランサーを狙ったのよ!
許せない想いならあるわよ!
羅刹天を推薦したのはボクだからね!」
「そうか、なら朱雀はんは無事なのか?
あの人もバランサーになりはったんやろ?」
「朱雀はね、イギリスの皇族の王女と交際中なのよ!暇を見つけては心温まるデートをしてるってニュースで見る程にね、兵藤きゅんは誠実に王女との交際を育んでくれている
その間はイギリスは国を上げて婚約者の命は守るわ!だから其処まで心配はしてないのよ!」
「だから嫌がらせの為に羅刹天はん狙われたんか?」
「でしょ?あの強固な精神と正義を貫く存在は邪魔だからね、あわよくば狙ったんじゃない?」
「ならば、次の嫌がらせはイギリスか、にーさん達に向くしかないか…………
土台皇帝炎帝には立ち向かえんから、回りの大切な存在を消して行きたいんやろうけど、やってるの其処いらへんの嫌がらせして来るおばちゃんレベルやで!」
「小さな諸国は今、崩壊させられているわ!
内部分裂により戦争が勃発して互いで互いを削らせてる…………果ては互いの消滅しかないのにね……
そうやって潰して行き焼け野原にしたいのよ
倭の国も焼け野原になるか?生き残るか?の瀬戸際だわ!
無論、魔界もね………瀬戸際なのよ!プーたん」
「世界は守れんけど、にーさん達なら護り通すに決まってるやんか!」
「頼むわねプーたん!」
何だか怖い話を弟がしている
兄達は弟を強く抱き締めた
烈は兄達と楽しい時間を過ごした
そして一生が兄達を呼びに来て、兄達は還って行った
朝 烈は退院した
退院した足で魔界へと向かう
病室から神の道を開き行くつもりだった
退院間際に一生が来てくれ、一生は
「なら魔界に行くとするか!
屋上に行ったら俺が龍になるからお前達は乗れよ!」と言ってくれた
屋上へ上がると一生は赤龍になった
烈とレイとクーは赤龍の頭に乗ると、天高く昇り気流に乗った
「カズありがとうね!」
「俺は魔界の者でもある!
龍族の長になった兄貴を助ける立場もあるからな
魔界の為に動くのは当然やんか!」
「魔界は………何処までも腐ってて、腐敗を取り除いても、腐ってくのよ………本当にウンザリする程に…………ね!」
それは康太が何時も言ってた事だった
何度も膿を出しても、別の場所が膿んで腐ってくんだよ………と。
烈は同じ事を言うのだ
それでも烈は「真面目にやってる子が馬鹿見る魔界は間違ってるからね、正して正しい道へ軌道修正掛けないとならないのよ!
ボクは母しゃんと父しゃんが進むべき道の、石ころとなるべくモノを取り除く死命があるからね!」と言うのだ
親を想い、親に報いる為に動いて行く
一生はそんな烈の想いが痛くて………頑張って飛んで行った
魔界へと着くと烈は「えんちゃんの所へお願いね!」と言った
そして「トキたん、じぃさん連れて来てね!」と大きな声で叫んだ
閻魔の邸宅の前の庭に着くと、一生は烈とレイとクーを下ろし、人の姿になった
閻魔の執務室へ行くと、黒龍が待ち構えていた
黒龍は烈に近付き抱き上げると
「烈、怪我は大丈夫か?
神髄師殿が心配してて、お前の皮膚が少しでも強くなれる様に還ったら漢方を作ると約束して下された!」と伝えた
「黒ちゃんの怪我はどう?」
「俺は龍って事もあり結構早く治癒してるから心配しなくて大丈夫だ!」と安心させる
そして黒龍は一生を見ると「赤いの御苦労だったな!」と労いの声を掛けた
黒龍は烈を下ろすとレイを抱き上げ
「さぁ行くぞ!」と言ってくれた
閻魔の執務室のドアをノックすると閻魔がドアを開けた
「烈、皆か困ってます………何とか食料だけでも供給は出来ませんか?」と相談して来た
烈は椅子に座ると足を組み、唇の端を吊り上げて嗤うと、閻魔は顔を引き締めた
「それは妖精に対しての謝罪をした後なら考えても良いわ!
絶対に済し崩しに供給なんてしない!
ケジメを着けたら次の段階に入りましょう!
それと閻魔庁の女神の像、偽物は撤去してくれないかしら?」と容赦のない事を言う
閻魔は驚いた顔をして烈を見て
「女神像………偽物だと仰られるのですか?」と問い掛けた
「九曜神は必ずや像には魂を込めるのよ!
あの女神像に魂入ってたかしら?
それにあれは創世記の涙の結晶の塊を彫刻させたのよ?
閻魔庁の前に悪しき者が近寄れなくする為に、閻魔庁に入る前に手が打てる様にしたのよ?
なのに蓋を開ければ洗脳か傀儡か解らない愚かな者の手により破壊され跡形もなく消された!
こんな事を許していたら………魔界は焼け野原になるしかないわよ!
草木一本生えない焼け野原になりたいのかしら?
ならボクが一度壊して天界の様に" 無 ”に還そうかしら?
貴方達はそれ程、失礼な事を口にしてるのよ!
解ってる?」
烈が言うとニブルヘイムは
「無に還すのは得意なので何時でも無に返して差し上げます!
貴方たちは妖精や聖神に謝罪もなしに、野菜や食料の供給を口にされるのか?
皆 飢えて消えればよかろうが!
閻魔、あまり失礼な態度をとるならば、私も黙ってませんよ?」
と誰に何も言わせぬ迫力で放った
閻魔は深々と烈とレイに頭を下げた
烈は「ボクに頭を下げても仕方ないのよ
クロスは?ボクが魔界に来てるのに………彼の気配がない………
ならばボクはこれ以上、魔界の為に尽力は出来ないわ!
ボクは来世は冥府に堕ちるから、魔界がどうなろうと知った事じゃないし!」
と拗ねた様に言う
金龍は烈を抱き上げると
「そんな意地悪を言うでない!」と窘めた
「だって金ちゃん、妖精が魔界を見限ったら……
誰が種の品種改良をしてくれるのよ!
クロスが魔界にいてくれるから、じぃさんがクロスと一緒に頑張ってくれてる
でもクロスが魔界からいなくなったら無理よ
ボクはもう何も作れない………作る気もない
ヴォルグが願う魔界は、母しゃんの希望でもあるのに…………妖精がいなければ……
七色に輝けない!」
そう言い烈は泣いた
閻魔は「そう言えば……魔界から妖精が消えてますね………クロスにも逢ってない………」と言う
黒龍が「俺がクロスを呼んでくる!だから烈は待っていてくれ!」と言う
黒龍が慌てて出て行くと一生も「俺も一緒に探す!」と言い出て行った
黒龍と一生が出て行くと烈は
「魔界大法廷での議論はどうなったのかしら?」と問い掛けた
閻魔はやはり其処を突っ突くか………と想い口を開いた
「我等は一足先に魔界へと来ました!
冷静になった魔族達は、この現状を住民達で何度も話し合ったそうです
時系列に書き出して何が起こったのか?問題のすり合わせをして、何度も何度も話し合い、現状どうせねはならないのか?を話し合い謝罪に来ました
ですが私に謝罪されたとしても市場は開かない事を話しました
魔界大法廷で議論をすることが最善だ!と父者は申し立てましたが、誰一人議論の余地はないと申し入れ謝罪して来たのです!
聖神を傷付けて申し訳なかった………と申しております!」
と言い閻魔は深々と頭を下げ謝罪した
烈は何も言わなかった
レイも何も言わなかった
能面みたいな冷酷な表情で座っているだけだった
すると其処へ妖精王が姿を現した
その後ろには黒龍と一生が立っていた
妖精王は閻魔に頭を下げると、烈の前の席に座った
「閻魔殿、暴動が起きた時、妖精もそれに加担している者がいた故、一度妖精達は戻らせました!
そして魔界にいた妖精皆に問いかけた所、洗脳されていたのか?
皆 その時の事は意識はあるが………何故かその場にいて暴動に加担していた………と話すのです
クロスはずっと正気で事のあらましをしっかりと話してくれたので、クロスの話の元協議を開いておりました!」
閻魔は妖精王の言葉を聞き、深刻な顔をした
「妖精は……もう魔界を見切りましたか?
クロス殿はもう………魔界に戻っては下さりませんか?」と問い掛けた
妖精王はニコッと笑って
「クロスは魔界が大好きだと言います
魔界の皆は優しく接してくれると言ってます
ですが………今後………魔界で起きた事が妖精国でも起きない事はないので、しっかりと話を聞かせて貰いました!」と話す
烈は妖精王に「ならば創世記の泉の水を借りれば良いだけの事!
まぁ借りしていても………手を変え品を変え来るので、此方も対策を練るスパンが短くなってる気がするけどね…………更地になるのが嫌ならば頑張るしかないのよ!」と告げた
妖精王は「創世記の泉の水?それはそんなに簡単に引く事は出来ません………」と言う
烈は「レイたん無理なの?妖精国では?」と問い掛ける
レイはニブルヘイムの声で
「そもそも私は妖精国知りません………
永い時を私は冥府の地下で過ごしたので………妖精国が何処にあるかさえ解りません!」と答えた
妖精王は冥府の地下で………の発言に「ニブルヘイム?」と呟いた
するも目が座って少し怖いお子様が
「そーですけど、何か文句でもありますか?」と言う
妖精王は「いえ!文句などありません!」と言った
怖いよ…このお子様……
烈は「今回、クロスが正気だったのは多分、レイたんの水を飲んだり浴びたりしてるからなのよ
畑には魔界に珍しいスプリンクラーが設置してあるのよ!
その水はね、世界樹の木の元から流れ出ている創世記の泉の水なのよ!
だから畑関係で飛んでた子達は闇の影響は受けてないと想うのよ!
まぁ総ての妖精が畑を手伝ってくれてる訳じゃないからね………ボクも把握は無理だけどね!」と言う
妖精王は「妖精国は冥府の上に位置します………
冥府の上の広大な敷地が仙界、賢者、賢人、妖精国となってますなら!今は賢者と賢人は桃源郷近くへ越してゆかれたので……屋敷だけ在る、そんな感じですけどね!」と詳しい位置を話す
ニブルヘイムは「確か妖精国にも世界樹の木は通っていた筈………何故世界樹を活用されないのか?」と問い掛けた
「…………我等は職務放棄している時期がありました………各国で妖精達が災害に遭い死に絶えました
なのに我等は…………そんな妖精達を見殺しにしたのです………
それを皇帝炎帝が軌道修正掛けて下さり、我らは再生して蘇った
以来、妖精王としての職務は全うしていますが………我等が職務放棄した時に世界樹の木は枯れました………」
ニブルヘイムは驚いた顔をして
「え?妖精国の世界樹の木が枯れていると言うのですか?」と問い返した
妖精王は「はい!」と答えた
「世界樹はこの地球(ほし)の生活動線と言っても過言ではない存在なんですよ?
それが妖精国で循環されなかったら………正常に廻ってなんかいないじゃないですか!
あー!もぉー!!本当に!!何ですか?これ?
謂わば糞詰まりみたいモノじゃないですか!
一箇所詰まってました!じゃ話か通りませんよ!
何故もっと早く言いに来ないんですか!
消しますよ?総て無に!!」
妖精王は震え上がった
ニブルヘイムが天界を更地にしたのは有名な話だったからだ
ニブルヘイムと聖神が天界を更地にした話は………この地球(ほし)を駆け巡って行ったのだ
烈は「レイたん!消すのは手の打ちようがない時だけよ!」と此方も恐ろしい事を平気て言う
そして「困ったわね、妖精国まで手が回らないわね………」とボヤいた
閻魔も困った顔をしていた
建御雷神は「クロスは………もう二度と魔界へは来られないのか?」と問い掛けた
妖精王は「いえ、一緒に来たので今頃は畑にでも言ってるかと?」と言う
建御雷神は「ならば我が迎えに行くとする!
クロス殿が来たら今後の話をさせては貰えぬか?」と切り出した
烈は「そーね………ならば話をしましょう!
でも何時も折れてくれるとは想わないでね!」と先手を打たれた
建御雷神は「話し合いをしてくれるだけでよい!
もぉ話も聞かないと言われたらお手あげじゃからな!」と烈の頭を撫でて執務室を出て行った
レイの機嫌は氷点下以下になり、ブリザード吹きすさんていた
烈は「父しゃんじゃにゃいのよ!」とレイを窘める
黒龍は笑って「青龍は何時だってブリザード吹き荒ぶ中にいるよな?」と言う
青龍が聞いたなら『冗談は辞めて下さい!その口縫われたいですか?』と言わそうだけど………
レイは「れちゅ………」と言った
暫くすると建御雷神がクロスを連れて来た
クロスは「烈!レイ!クー!」とパタパタと羽根を羽ばたいて飛んで来た
烈とレイとクーは「「「クロス!!」」」と抱き合った
仲の良い4人は再会を分かち合い、喜んでいた
クロスは「また皆で野菜や果物を作りたいです!」と言った
烈は「魔界嫌いになってない?」と問い掛けた
クロスは「なってないよぉ〜!僕は魔界が大好きだよ!烈や素戔嗚殿との作業は楽しいよ!」と答えた
ニブルヘイムは「仕方がないですね!出血大サービスしてあげます!」と言った
妖精王は「え??」と事態が良く解らなかった
ニブルヘイムは「烈は忙しいんです!
さぁ、妖精国へ行きますよ!
それで糞詰まりしてる世界樹を正常にして、創世記の泉の水を引いて差し上げます!
クロスがもう魔界にはいたくない、と言った瞬間消し去ってやろうかと想いましたけどね!
此れよりは、よりはもっと緻密に情報提供し合い行くしかありませんね!
解ってますか?妖精王?」と問い掛ける
妖精王は「はい!解ってます!」と答えた
ニブルヘイムは「閻魔、今日は話し合いは休みにしましょう!
だから今から妖精国へ行きますよ!
さぁ、私を妖精国へ連れて行きなさい!」と命令する
妖精王は「解りました!」と言い直ぐ様、妖精国へ行く呪文を唱えた
部屋がグニャッと歪むと光の速さで妖精国へと向かう
烈は「妖精国って妖精が飛んで美しい国なんてしょうね!」と物語の世界の妖精国を創造する
妖精飛び交い、光り輝く世界には花が咲き乱れ、とても美しいんだろうな………
と烈もレイもクーも思っていた
気持ち悪い時空の揺れが収まると、烈、レイ、クーは辺りを見渡した
とても美しい国だった
妖精が飛び交……ってない世界だった
烈は「妖精は世界樹の光の中、好きな世界に行き来出来るのよ?知ってる?妖精王?」と問い掛けた
妖精王は「はい………クロスから聞いてます、なのに全く行き来してないので不思議に思ってました
それで………世界樹は枯れてしまったのだと……」と話す
レイは「私を世界樹の前に連れて行きなさい!」と言うと妖精王がレイを抱き抱え世界樹の木の前まで連れて行った
烈は金龍の背に乗せて貰い世界樹の木の前まで連れて行って貰った
烈は「金ちゃん ありがとうね!」と喜んでいた
金龍は「烈の為ならば何時でも乗せてやるさ!」と嗤っていた
龍の背中に乗りたがるお子様は滅多といない
龍を嫌悪する存在は多い
畏怖する存在の方が多い
なのに背中に乗れて喜んでくれ、礼まで言ってくれるならば何度もでも乗せたい、いや、乗ってくれ!と言う気分だった
世界樹の前まで行くと、金龍は烈達を下ろした
閻魔はレイに「どうですか?まだ、生きてますか?」と話し掛けた
レイは烈に手を伸ばした
烈はレイの手を取り「どうしたの?死んでるの?」と問い掛けた
ニブルヘイムは「枯れてますが、新芽が横に出てるのでその子を軸に新しい世界樹を換えます!」と言った
「死んでなかったのね!」
烈はそう言いレイの手を離すと、小さく少しだけ芽が出た子を優しく包みこんだ
「生きててくれてありがとう!」
烈はそう言い新芽に口吻た
烈の優しい想いに世界樹の木は応えようと、みるみるうちに成長を始めた
烈は育ちゆく世界樹を撫でながら
「君は死命を持った子なのよ!
此れから先、妖精国を護り輝かせ最も大きな木になり花を咲かせるのよ!」
木々は烈の言葉に応える様に揺れた
ニブルヘイムは「私の呪文……要りませんでしたね
烈の優しい想いに世界樹は応えようと成長を始めました!此れよりは本来の世界樹の役割をさせる様にますは創世記の泉から水を貰い受けます
妖精王、泉の水を流す水路を作り湖を創りなさい!」と言う
妖精王は「え!私にはそんな力ありませんって!」と嘆く
ニブルヘイムは「なら烈、天地創造 開闢の書を頼みます!」と言う
烈は「疲れるけど仕方ないのね!」と言い
妖精王に「水路はどうしたい?何処に湖を創りたい?思い描いて!そしてしゃがんでくれたら助かるわ!」と言う
妖精王は地面に座ると水路と湖となる場所を思い描いた
この妖精国に水路はない
水路があったら?とずっと思い描いていた光景を想い浮かべる
「思い浮かべた?」
烈が問うと妖精王は「はい!」と答えた
烈は妖精王の頭に手を置くと天地創造 開闢の書を唱え始めた
すると世界樹が光り輝き、創世記の泉の水を溢れさせた
溢れた水は水路を創り流れていく
大きな水のうねりは波を創り押し流して行くのが解る
そして水は一点に流れ集まり………やがて大きな湖を創り上げた
3時間ちょいの呪文を唱え終わる頃、世界樹は立派な大木になり創世記の泉の水を霧状に噴き上げていた
烈は疲れて倒れそうになり、一生が慌てて背負った
世界樹の光に乗り妖精達が移動を始めた
やっと開通した光の道に妖精達が喜び空を飛ぶ
レイは「やっと妖精達が行き来出来ます!
此れで妖精国は闇に囚われる事はなくなりました
だが油断はなされない様にして下さい!
魔界や地獄界は手を変え品を変え、崩壊させられそうになっているのです
妖精国だけ特別に何もされないなんて有りませんからね!」と厳しい事を言う
妖精王は「出来ましたら地獄界の方々ともお会いしたいのですが?」と言う
閻魔は「ならば八仙を通して予定を立てます!
予定が立ちましたら連絡致します!」と伝えた
レイは「ちゅかれた………」とヘタって地面に座り込んだ
黒龍がレイを背中に背負うと「なら帰るか!」と言った
妖精王は深々と頭を下げ
「今後はより密なる連絡の擦り合せを致しましょう!」と言った
閻魔は「そうですね、我等は地獄界、冥府、冥界、Hellとは協定を結ぶ情報交換しています
是非とも妖精国もそれに参加される事を願います!」と言った
金龍が龍に姿を変えると烈が「道案内するからね金ちゃん!」と言った
閻魔は「道が解るのですか?」と尋ねた
「師匠達は魔界全土、冥府、妖精界、仙界の土地と場所を把握されてるのよ!だなら弟子のボクもその情報は貰ってるから道案内なら出来るわ!」と言った
閻魔はだから何処の山に何が採れるのかを理解していたのか?と納得した
烈の道案内で魔界へと還る
烈は崑崙山へと流れる気流を詠むと
「その気流に乗って、そしたら崑崙山へと黙ってても行けるから!」と言うと金龍は烈の言う気流に乗った
そして気流に乗っていると崑崙山へと出た
崑崙山へと出ると知った道だから、金龍は閻魔の邸宅まで飛んで行った
そして皆を降ろすと、烈は食堂へと出向いた
食堂はガラーンとして休業状態だった
烈が行くと食堂のおばちゃん達は泣いて烈を抱き締めた
「明日から食堂を稼働させるのよ!
クマ獣とウサ獣、そして猪ワンとかじぃさん達が狩りに行くから仕込みやるのよ!
野菜と果物も持って来るから、さぁ動き出すのよ!」と言うと、おばちゃん達は涙を拭い動き出した
烈は「じぃさん、家で酔って寝てるとーさん起こして、弥勒を連れて狩りに出るのよ!
飛来クラゲでも何でも捕まえて来るのよ!」と発破をかけた
烈は「さぁクロスお仕事よ!」と言う
クロスは「ならタロウ兄弟に動いて貰います!」と言い飛び出した
烈は閻魔の執務室へと向かうと
「何か食べさせて!」と言った
閻魔は「母者に言って何か作って貰います!」と走って行った
建御雷神は「主達がおらねば何も食べ物がない状態なのじゃよ!
皆は反省しまくりで、聖神に何とか野菜作りを再開して貰えぬか?と申し入れしておる
そして皆からの謝罪の文が……止まらぬから」
と言いドサッと謝罪の文を烈の前に置いた
烈は「謝罪は要らないのよ!唆され馬鹿げた行動に加担するな!と言ってるのよ!
次に加担して暴動を起こすなら消すわよ!
其れ位の覚悟で謝罪されなきゃ、受ける気もないのよ!」と容赦のない言葉を投げる
建御雷神は「それは承知の上じゃよ!彼等は余りにも愚かな生き物だと………炎帝も何度も何度も嘆いておった………
そして愚かな奴等は何度も繰り返す………」と悔いた言葉を謂う
「たけちゃん、女神像、あれ撤去してよ!
あまちゃんがあんな不細工だなんて夫として許しておけるの?」と問う
「許しはしないよ!我が妻を愚弄されたも同然じゃからな!許しはせぬよ!
即座に撤去してして………と言いたいが、…壊したくはないな………妻の姿を形どった像を………壊すのは辛すぎる……」
「……たけちゃんなら…そう言うと思っていたのよ
九曜神も、もしたけちゃんがそう言うなら、あんな雑い女神像は許せないから、彫刻し直してからプレゼントしてと良いと言ってくれてるのよ!
そしたら湯殿にでも飾る?」
「良いのか?そんな事………許してくれるのか?」
「たけちゃんちに在った方が女神像も喜ぶわ!
そしたら撤去したら九曜神の所へ運び込ませるわね!
その後、黒ちゃんとカズと金ちゃんと雅龍とで、濃度の高いレイたん特製の女神像を設置してね!そしたら誰も踏み込めない様に結界張るから!もう二度とあまちゃんの像を壊させないわ!
ボクの大好きなあまちゃんに何かさせたりしないのよ!」
建御雷神は感動していた
烈の優しさに………建御雷神は烈を抱き締めた
するのレイが「じゅるい、れいは?」と謂う
建御雷神はデレデレでレイを抱き締めた
クーも「俺も!」と謂うからクーも抱き締めた
閻魔は「父者………いつの間にそんな好々爺になったのですか?」とボヤいた
建御雷神は「儂は何時だって烈とレイとクーの祖父でいたいと思っているからな!
炎帝の子なれば、儂の孫でもあるからな!」と嬉しそうに謂う
クロスが「烈、洞窟に避難した野菜と果物、全部運び込みました!」と謂う
烈は「おばちゃん達、腕によりをかけてお仕事よ!えんちゃんは食堂が再開したと放送鳥で流すのよ!」と謂う
そして「トキたん、工場地区の結界を解除して!」と謂う
コッソリ来ていたトキは再びクェェェェェェ!と鳴いた
やはり八仙が「儂らを気絶させる気か!」と怒る
烈は「ごめん八仙!」と謝罪した
クーは閻魔に「世界樹の広間の前に魔族を集めろよ!このまま済し崩しに再開なんてさせねぇ!
聖神とレイと傷付いた閻魔、素戔嗚尊、建御雷神、金龍、黒龍に対しての謝罪を聞かねば、総ては再開はさせない!」と言った
閻魔は「当たり前じゃないですか!済し崩しをするならばレイに消されるじゃないですか!
無論、謝罪をさせます
魔族は一丸とならねばならない!
それが聖神の意向なのですから、それに背く事は許されない!
何の為に金龍、黒龍が日々魔族の皆に武道を教え込んているか?
やがて来る脅威に一丸となり闘う、それには些細な亀裂さえ許されないのですから!
無論、謝罪はせます!
そして改めて皆の想いを口にさせます!
その為の魔界大集会を開きますから!」と言い切った
閻魔の決意は固かった
烈は「魔界大集会を開くのは女神像を設置した後、女神像の前でしてね!」と言った
「解りました!その様に手配します!」
着々とケジメを取る算段が筋道を立て、決まり始めていた
此処が分岐点となる魔界の分かれ道となった
ともだちにシェアしよう!