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第96話 五里霧中 ❶

烈は安曇が指定したホテルへと出向いた ロビーに向かうと堂嶋正義が待っていた 「烈!此処だ!」と言うと烈とレイは堂嶋に近寄った そして無言のまま堂嶋と共に安曇が用意した部屋へと向かう 堂嶋はこんな時の烈は危険だと…………本能で感じる だから何も言わず………部屋へと案内する 部屋に入ると応接間には安曇勝也と妻 登紀子が座っていた 烈とレイはソファーに座るとクーは烈のポケットから出て大きくなり、ソファーに座った 安曇と妻 登紀子は烈を見ると深々と頭を下げた 足を組み、肘掛けに肘を置き唇の端を吊り上げて嗤う姿は……康太そのモノだった だがこの子は康太の様に甘くはなかった……… 烈は開口一番「家 地上げ屋に盗られたでしょ?」と言う 安曇は顔を青褪めさせ「何故………それを………」と問い掛けた 「あの家は、人を喰らう家なのよ! 安曇総太郎の怨念が籠もった家なんて捨てて、別の場所へ住めば良かったのよ! 勝也、貴方が登紀子を妻にした時に捨てておけば運命も変わったのよ! あの家に縛り付けられ家族と距離を取ったのは貴方なのよ! そして真贋が間に入られ何とかなったけど……… やはりあの家に住んでる以上は貴方達は家に食われ続けるしかないのよ! だからある意味盗られて良かったのよ!」 安曇は「え?ひょっとして………あの家が盗られるのは解っておられたのですか?」と問い掛けた 「そうよ、まぁそれが解ったのは貴之がイギリスに来た時、彼の星を詠み解ったのよ 家が盗られるならば盗られれば良いのよ! ねぇ登紀子、もう父の亡霊から解き放たれなさいよ! あんな怪物に仕えて来たんだから、登紀子は凄い女よ! でももう良いのよ!もう捨てて良いのよ! 父に囚われた日々なんて………ボクが綺麗に浄化してあげるわよ!」 「烈…………」 登紀子は泣いていた 父に囚われて生きて来た 父が死んだとしても………死しても尚、父に囚われて生きていた 烈は呪文を唱えると、登紀子は失神した 安曇が慌てて登紀子を抱き寄せ、ソファーに寝させる クーが登紀子の額に印字を斬ると猫パンチで封印した 烈は安曇を視て「貴也は地上げ屋に今夜、殺されるわよ!まぁ一度殺された方が良いのよ! 根性腐ってるし、一度叩き上げてあげるわ! 飛鳥井暦也と言う男はね裏の世界も表の世界も熟知して、繋がりもある男なのよ その男に貴也の捕獲を依頼してあるわ! 捕獲した後、殺してあげるわよ!ボク自ら! あ、ボクには命乞いも嘆願も効かないから! 母しゃんは優しい男だけど、ボクは優しくないからね!貴方達の要望は何一つ聞いてはやらないわ!まぁ貴方達も動けば死ぬしか無い魔法陣でも出してあげるわ! だから見てなさいよ! それは貴方達が作った罪なのよ! 自分達が犯した罪なのよ!」 と吐き捨てた 安曇は何も言えず顔を覆って泣いた 気は失っても、聞こえる声に登紀子は腹を括った 甘くはないのは………飛鳥井宗右衛門の噂を聞けば………良く解る 冷酷非情になれる存在との噂 表の真贋 裏の宗右衛門 宗右衛門に睨まれたら最後だと………… 烈は「ねぇ、お茶も出ないの?此処は?」と姑バリの事を言う 堂嶋は慌てて内線でお茶を頼み運ばせた レイはニコニコと笑い 時折 蒼い瞳が安曇と登紀子を視る レイは「れちゅ、まっきゅろよ!」と言う 「あら、困ったわね! 正義ちゃん お水を頂戴!」 堂嶋は冷蔵庫からミネラルウォーターを2本取り出すとレイに渡した レイは呪文を唱えると、ミネラルウォーターの水が創世記の泉の水と入れ替わる 「正義ちゃん、さっさと飲ませるのよ! 貴也が毒撒き散らしたのね、染まりまくってるわ!」とボヤく 堂嶋は安曇に水を渡すと、気絶した登紀子を起こし水を手渡した 二人はレイの水を飲むと……真っ黒な涙を流した 烈の携帯が振動すると、烈は携帯を取り出し嗤った 「正義ちゃんは還っても構わないわ! 出来るならば毒撒き散らす貴也には会わせたくないのよ! ユキちゃんは弱いから影響受けたら困るからね!」と言う 其処まで言われたら堂嶋は帰るしかなかった 安曇に深々と頭を下げて、堂嶋は帰って行った 烈は「さぁ覚悟は出来たかしら?」と問い掛けた 安曇と登紀子は「「はい!」」と答えた 烈とレイが立ち上がるとクーは烈のポケットに入った そして部屋を出て行った 烈とレイが安曇夫妻を連れて大黒ふ頭へと移動を始めた頃 榊原は「烈からのラインは何だったのですか?」と問い掛けた 「あぁ、馬鹿な兄弟の軌道修正掛けるってお知らせだ!」と言いラインを見せた 榊原は「帰還して直ぐに動かねばならない程の状態だったのですか?」と問い掛けた 「遅い位だよ、魔界に行ってた2週間が後を引いて………ギリ何とかなれば御の字って所だからな!」と言い秘書に明後日、烈とケントの分の飛行機のチケットを用意させる様に頼んだ 「レイは行かないのですか?」と問い掛ける 「レイは五通夜目前だからな、これ以上のロスタイムは許されねぇだろ?」 「あぁ、五通夜やるって竜胆気合い入れてましたからね!」 「オレの視ていた果てが悉くと狂ってるからな………烈が軌道修正掛けてくれている 魔界もな………もうオレの視ていた果てじゃねぇかんな………問題山積だけどやるしかねぇかんな!」 「やはり法務庁が今後のキーなのですかね?」 「だろ?青龍が法皇になると言われても、魔界の奴等には、あ~そうなんだ!程度の認識だからな 正式に法を制定してその上に君臨するならば、ある程度の線引きは必要になるし……… 法をもっと浸透させねぇとならねぇからな……… 今後の話し合いはその事になるだろうな………」 「詳しいですね?」 「一生が帰還した時に閻魔も着いて来て、その話を菩提寺でしていたからな! その時に今後の課題は結構難儀します!と話していたんだよ!」 「え?君は五通夜の鍛錬に付き合っていたじゃないんですか?」 「鍛錬中に閻魔が来たんだよ! 妻に会うのと、オレに今後の課題を話に来たんだよ!烈は法が是正されないなら、青龍が魔界に戻ったとしてもお飾りの法皇にしかならないわ! それなら木偶の坊でも案山子でも立たとせとけば良い訳じゃない!とかキツい事を突き付けられた………とボヤいていたな……」 「それ、私が常に感じていた事です 魔界に法律なんてない! 弱い子を山に捨てに行っても取り締まる法はない 聖神の妻を寝取り蹂躙してたとしても、それを取り締まる法はない! 今は魔界の秩序の元………何とかなっていますがね 私が魔界に戻り、法皇になったとしても、あ~そうなんだ〜程度の認知度では困りますからね って事をずっと烈と話していました その案山子や木偶の坊発言は私もされました!」 スッカリ意識が青龍になり言う 康太は「直ぐには何ともならねぇけど、少しずつオレ等も魔界に顔を出し正して逝くしかねぇよ! オレの蒼い龍は弱音吐いても立ち向かう強い男だからな!絶対に聖神に報いる法皇になるさ!」と笑って言う 「頑張ります!奥さん!」 チュッと口吻け 康太は嬉しそうに笑った 「あ~!デカチゴに砂糖ぶっ放して食べた様な甘さは………帰ってからやりやがれ!」 と秘書の西村がやって来てボヤく 康太は「デカチゴ食ったのかよ?」と尋ねる 「あぁ、鬼に用が有って行った時に素戔嗚殿がご馳走して下されたのじゃよ! その時薄緑と濃い緑のストライプの果物見たんだよ!バランスボールよりデカいの見たんだよ 今度はアレを食わしてくれ!と言うと何時でも来るがよい!と約束してくれたからな 今度食いに行くんだよ!」 康太は薄緑と濃い緑のストライプを描くと、あの果物しか思い付かなかった バランスボールより大きい………… 「今度食いに行くしかねぇな!」と康太は言った 榊原は「何をしに鬼に会いに行ったのですか?」と問い掛けた 「そりゃ、お前、地獄の抜け道のない世界に放り込むヤツの下見に行ったんじゃねぇかよ! 甘ちゃんが何処で使えば耐えられるか? 下調べに行って来たんだよ!」 「それってひょっとして…………」 「まぁ杞憂に終われば良い! 態度次第だな、それより人を喰う家って……知ってるのかよ?」 西村は身震いして問い掛ける 「何よそれ?怖いって! 人を喰う家?それはどの家よ?」 「安曇総太郎のお宅らしい!」 「あ!!怨霊となったか………」 家までは視てなかった そんなの宗右衛門しか視えない世界だ 康太は「家が人を喰い始めたか…………地上げ屋に盗られるのは運命か………… 総太郎が死した時に………跡形もなく更地にしてやれば良かったな……」と倭の国に君臨した偉大な総理を頭に描いた 国に君臨し、家に君臨し………固執し………思い通りにして来た暴君は今………怨霊となり住人を食い始めたのか………… そう想うと家なんて………もっと早く解体させてやれば良かったなと想う……… 西村は「今頃はバカ息子との対面か………甘ちゃんが失禁せずに烈と対峙出来るかね?」とボヤく 「殺されるだろうから……失禁で済まねぇだろ?」 「あ~本気で怒らせたな!」 「イギリス行きのチケット取れたか?」 「あぁ、夕方には渡せる!」 「イギリスの地にいるバカ息子も泣く羽目になるかんな………」 「今のアイツは優しさを百万光年果てに置き忘れているからな……近寄るだけで火傷しそうだな!」 「まぁ泣こうが叫ぼうがオレはノータッチだかんな!総ては烈任せだからな、どうなろうと静観するしかねぇんだな」 「適材適所、宗右衛門が配置されるなら間違いはないだろ! それよりイギリスに行くのかよ! 免震構造の話、しねぇとならねぇのに!!」 「イギリスは明後日、それまでに会社に顔を出し話を進めてくれるのを期待するしかねぇやんか……」 「………アイツも体が3個欲しいとボヤいていたのが解るな!」 「オレは何時だってそれ思ってる!」 榊原は苦笑した 「この会社も変革期なんだろ? それがヒシヒシと伝わって来てるからな!」 康太は何も言わず果てを視ていた 榊原は社長の仕事を始めた 西村は社長室を出て秘書課に戻った 大黒ふ頭近くの倉庫街に【R&R】の機材を運ぶ倉庫がある その倉庫に………安曇貴也は黒尽くめのスーツに身を包んだ男達に捕まえられ運び込まれていた パット見………カタギの人間でないのが解る そんな男達に取り囲まれ………貴也は腰を抜かして引き摺られ荷物の様に扱われて連れて来られた 恐怖のあまり……思考は停止していた 其処へ烈がやって来ると、黒尽くめの男達は、その場を離れた 一人だけやけにイケメンで腕っぷしが立ちそうな男だけ残った 男は烈を見ると「間違いないか?」と問い掛けた 烈は男の顔を見て「間違いないわね!」と言った 「確かに引き渡したからな!」 「ありがとう暦也! 安曇の家、地上げ屋から奪い返して貰った?」 「あぁ、向こうも美人局みてぇな事をしてるから組長を出したら引くしかねぇからな! 此方は警察関係にも顔が利くし、どっちに突き出しても良かったんだよ!」 「引いてくれただけで良いのよ!」 「権利書は後で渡すとする!」 そう言う暦也は帰って行った 烈は呪文を唱えると、貴也の足元に魔法陣が現れた 慌てて駆け寄ろうとする安曇と登紀子の足元にも魔法陣を出す 「動かないで!動いたら死ぬわよ! 試しに服の先でもを魔法陣の外に出して見なさいよ!スパッと斬れるわよ!」 安曇は謂われた通りに服の端を魔法陣の外に出して見た すると服はスパッと斬れて…………地面に落ちた 「ボクは飛鳥井家真贋の様には甘くはないのよ! ボクをナメないで欲しいわ!」 そう言い冷徹に嗤う 背筋に冷や汗が流れる程………冷たい嗤いだった 烈とレイとクーは貴也の前に歩いて行った 烈は「下らない女に引っ掛かったわね! 地上げ屋の女に夢中になり、家の権利書を持ち出し、両親の預貯金や貴金属まで渡して……… 今 貴方には何が遺っているのよ?」と問い掛けた その質問に答えない貴也に呆れて、烈は草薙剣を取り出した 「呆けないでよ!殺すわよ!」 草薙剣を突き付け………その鋭利さを見せ付ける様に……少しだけ突き刺した 痛みが走り………意識が現実を告げる 恐怖に染まった瞳が烈を見る レイは創世記の泉の雨を降らせた 貴也の体が濡れて……黒い涙を流す……… 「自分が何をしたか?解ってる?」 烈が問うと、貴也は「君は誰ですか?」と問い掛けた 「飛鳥井 烈!」 と名を告げた 貴也は驚いた顔で烈を見た 「何?この……腑抜けのクズは………ゴミ以下の存在になったんだもの、消されても文句は言えないわよね? そもそも地上げ屋は土地の権利書を手にしたら消すつもりだったんだし、悔いはないわよね?」 草薙剣を突き付けられ問われる 貴也は「私を殺しますか?すると貴方は殺人犯になりますよ?」と言った 烈は冷酷に嗤うと宗右衛門の声で 「遺体も証拠も遺さずに、主を消す事など難なく出来る! 別に人に頼んでも良かったのじゃよ! どの道お前は地上げ屋が権利書を手にしたら消される命だったのじゃからな! 主の運命は今 分岐を始めている 腐ったゴミはゴミのように死ぬしかない! 主はどれだけ親を裏切れば気が済むのじゃ? あぁ、主の父親の岩崎は飛鳥井建設に何度も何度も嫌がらせして来て、今は刑務所暮らしじゃから………主はそんな父親を目指しておったのか?」と問い掛けた 貴也は唖然として言葉もなく項垂れた そして両親に目を向け………泣きながら土下座した 「済みません………母さん………父さん……… 家の権利書を持ち出したり、父さん……貴方の時計や貴金属、預貯金を奪い彼女に貢ぎました…… 今こうして彼女と離れて冷静になれば……… 自分のした事が………本当に愚かで……世間知らずでした………」と謝罪した 烈は溜息を着いて 「今更謝罪?遅いのよね…何、このゴミクズ 少しズレてるんじゃない? 今更謝罪しても貴方の運命は死ぬしかないのにね!」と突き放す言い方をした クーが「烈、始めろよ!こんなヤツに時間使うの勿体ねぇよ!」と言う レイは既に呪文を詠唱していた 烈も呪文を詠唱すると、クーは貴也位の大きさになると草薙剣で貴也を真っ二つにした 安曇と登紀子は……顔を押さえて蹲った 神の道を開くと、鬼達がやって来て貴也を担ぐとさっさと連れて行った 魔法陣を消すと「終わったわ!」と告げた 安曇と登紀子は顔を上げると貴也の姿はなかった 「さぁ貴方達を新しい家に案内するわ! ボクもイギリスに行くまでに仕事が山積しているのよ!片付けなきゃならない事が沢山あるからね!サクサク逝くわよ!」 と謂われるとやっとの想いで安曇と登紀子は立ち上がった 我が子の事を聞きたいだろうに………登紀子は何も聞かなかった 安曇もそんな妻を想い………何も言わなかった 烈は安曇夫妻を後部座席に乗せるとレイを助手席に乗せて、自分も後部座席に乗り込んだ ケントは行き先が告げられているのか、車に乗るとナビを操作して車を走らせた 烈は「真贋の詠まれていた果てが悉く狂って来ているのよ!此れは妨害であって、貴方達の運命の分岐点でもあるのよ! 4期総理を務めた貴方が辞任に追い込まれる辞め方はさせたくはないのよ!」と話す 安曇は「私は辞任に追い込まれる所だったのですか?」と問い掛けた 「息子が地上げ屋に殺され遺体で見付かれば、それは事件になるじゃない! そしたら痛くもない腹を探られ、そんな息子がいるなんて………と昔の不祥事も公に出て……… 総理に相応しくないと辞任・解散となるのよ そしたら次に逝く堂嶋もやはり独身者は信用ならんとかなりそうなのよ! そしたら自由民主主義党は崩壊の一途を迎えるしかないのよ そしたらまた幾つかの党に分散して、国民は政治に不安しか抱かない暗黒時代に突入しちゃうのよ! それをさせない為の堂嶋正義であって、今後は堂嶋正義を中心にして兵藤貴史、三木りゅーま、貴之とがその脇を固める政治家になる予定なのに頓挫しちゃうのよ!」 そんな壮大な未来の話をされ、軽率な総理の所為でそれが頓挫しちゃう……と話されているのだ 安曇は言葉もなかった 車は東京へと入り………閑静な住宅街へと向かう ケントは一軒の立派な門扉の家の前に車を停めると「着いたよ烈!」と言った 烈は「この家はね有栖院家翁がボクにくれた家なのよ、貴方達は家を無くした あの家の家具はもう穢れてるから、あの家にあるモノは何一つ持ち出す事は出来ないわ! だからこの家を貸してあげるわ! 固定資産税だけ支払ってくれるなら貸してあげるわ その代わりあの家の所有権はボクに譲渡して貰う! 飛鳥井宗右衛門を引き摺り出した対価があの家じゃ等価交換にも合わないけど、母の顔に免じて動いてやるのよ!」と言った 安曇は「こんな立派な家……飛鳥井の方々がお住みにならなれないのですか?」と問い掛けた 「ボクんち幾つかあるし、2年の内に新居建てるし、住めないのよね………」 「でもこんな立派な家…………」 「家無しよりマシでしょ? 貴之帰国してるんでしょ? ボクは許可してにゃいのにね 勝手な事ばかりするなら斬るわよって伝えといて!」 登紀子は「それは烈がお伝え下さい!嫁を大切に持て成してる最中ですので、私からは言えません!」と少し笑顔を浮かべ言う 「嫁と認めたの?」 「はい!貴之が選んだ女性ならば我等は気遣い寄り添おうと想っています!」 「そう、ならば貴之の果ても定めにゃいとね!」 滑舌の悪い喋りの時は、気が緩んでるのだと安曇と登紀子は知っていた 登紀子は「貴之は………政治家として生きられますか?」と問い掛けた 「そーね、妻を娶ったならば頑張るんじゃにゃいかしら? 後は……イギリスにいるお馬鹿な子、いるじゃにゃい その子の矯正に向かうつもりよ! 生意気で、愚かで、底が知れてるバカ息子に仕送りはしちゃ駄目よ! 親の金で遊び歩いてるバカ息子必要?」 登紀子は「…………我が子ではありますが、余りにも薄っぺらく………愚かで……目に余ります どの道、宗右衛門殿が出られるならば、我等は何も言えますまい!」と答えた 安曇も「そうだね……己を過信し過ぎて鼻に付くなって思い始めてからは………少し目に余る行動ばかりだった……… 愚かなバカ息子ではあるが……我が子なので命乞いしたい思いはあります ですが……その甘さが貴也を腐らせたのだと痛感しました 今思えば私は我が子を叩いた事さえない……… どう我が子に接すれば良いかさえ解らなかった 愚かな父です………」と後悔を口にした 「貴方達は家に喰われていたからね……… 家に愛も情も喰われていたのよ 安曇総太郎はそう言う男じゃなかったの? 己の政策の為ならば娘だとて駒として使い、体で籠絡させようと命令する、そんなヤツじゃなかったの? そんなヤツが怨霊となり家や家族に執着して喰っていれば、ロクな親子関係なんて築ける筈なんてないのよね…………」 登紀子は「あの家と土地は宗右衛門殿がお好きになさって下さい! 譲渡の書類は神威さんとお作り致します! どうせ地上げ屋に奪われた土地………使って戴けるならば、その方が良い…………」と言う 烈は嗤って「あの土地の価値の倍、この家は凄いわよ!譲渡は出来ないわ だってこの土地はボクが有栖院家の翁に貰い受けた屋敷だからね 国宝級の価値がこの家にはあるのよ! 貸してあげるけど、あげられない事情付きなのよ それで良いかしら?」と問う 登紀子は笑って「はい!十分です!元華族、有栖院子爵邸ですよね?此処は………」と聞く 「そうよ、国宝級の保存されてる家屋だからね この家は住む人間を正しい道に導く神が宿りし家なのよ! 離れには毘沙門天が住んでて恵比寿や弁財天も十二支天もやって来る特別な神の家でもあるのよ まぁ呑兵衛達が来るから少し五月蠅いかもだけど、そこは愛嬌よ! 離れと本宅の間に結界あるし玄関入り口も別々だし相手は神だから………其処まで警戒しなくても大丈夫よ!」 安曇は「中々住めませんね……そんな家には……」と言う 「貰い受けてね、誰を住まわせようかと考えていたのよ、登紀子達が住んでくれるなら安心ね! 固定資産税だけお願いね!」 安曇は笑顔で「承知しました!」と答えた その顔は憑き物も落ちて晴れ晴れとしていた 烈は鍵を渡した 鍵は………こんな古くて大丈夫?このクオリティで?? と言いたくなる程古びた手回しの鍵だった 「この家は神がいるから不浄なモノは近づく事さえ出来ないのよ! だから、ぶっちゃけ鍵掛けなくても神と言うセキュリティあるからね大丈夫なのよ! でも取り敢えず、この鍵で施錠出来るからね!」 と謂れ古臭い鍵を受け取った 家の案内してると中庭の先の離れから毘沙門天が出て来て「烈!」と名を呼んだ レイが「びちゃー!」と笑顔で言うと毘沙門天は境界をすり抜け庭にやって来てレイを抱き上げた 「レイ、元気だったか?」 「びちゃ あいたきゃった!」 「俺も逢いたかったぜレイ!」 と抱き上げスリスリする 烈は「今日から此処に住む住人よ!」とご挨拶した 毘沙門天は「勝也か、たまには俺等にお酒を奢ってくれ!」と言う 「あぁ、毘沙が住んでるならセキュリティは少し不安だけど、今夜から此処で住むから宜しく頼むよ!」と言う 毘沙門天は「何だよ!それは!」と文句を言う 烈は「だって飲兵衛だからね、言われるのよ!」と辛辣な事を言う 毘沙門天は「俺が飲んだくれでも神聖は働いているから大丈夫なんだよ!」と拗ねて言う 「この人達、下手したら貧乏神いるかもだから目を光らせといて!」 毘沙門天は安曇夫妻を目にして 「貧乏神はいねぇが………微妙に魂薄くね?」と言う 「やっぱ解る………この人達家に喰われていたのよ」 「何処の家よ?それ?」 「東京の霞ヶ浦にある敷地面積凄い家って言えば解るかしら?」 「怨霊となった安曇総太郎の家か………あ、安曇! そうか………家に喰われていたか………」 「この薄くなった魂、戻るかしら?」 「安定した磁場の処に滞在すれば、そのうち生気に満ち溢れ戻るだろ?」 「なら安心ね、毘沙、飛鳥井へ来る? そしたら父しゃんに頼んで宴会にするわよ!」 「うし!行く!」 「ならば、夜に飛鳥井へ来るのよ! ボクとさ血を交わしたから、何処に住んでるかは神の道通れば解るわよね?」 「おー!解る!その前に大歳神に場所なら聞いておるし、大歳神に乗せて行けとせがむから構わぬよ!」 とご機嫌で言う 「なら頼むわね!」 「おー!任しとけ!」 そう言い毘沙門天はレイを下ろして離れへと帰って行った 烈は「ね、セキュリティはこれ以上なく安心出来るでしょ!」と言う 安曇は笑って「そうだね、烈……本当に有り難う!」と礼を口にした 烈は「御礼を謂われる筋合いはないわよ! 明後日にはイギリスに行き、貴方の息子の鼻っ柱をへし折り、死ぬ目に遭わせてやるんだから!」と言う 「私達がやるべき事だった…………それを君にさせてしまった 真贋が………正してくれた時に私達はもっと我が子に向き合うべきだった………」 「そうね、でも家が親の愛も喰ってたから、それは仕方がない事なのよ! 成るべくしてなった……だから今後は地獄の果てに突き落とし、這い上がるしか道はないのよ! 本当に地獄に突き落としてやるからね 血反吐を吐く苦痛とネジ曲がった精神を鍛え上げてくれるわよ! ボクはね聖神と言う神なのよ! それは勝也も知ってるわよね?」 「はい、存じてます!」 「だからね地獄に突き落として、って言うのは魔界の地獄なのよ! あの年で地獄体験出来て、ある意味人生経験豊富になって良い経験なのよね!」 いやいや………そんな人生経験………出来れば豊富にはなりたくない………です とは言えなかった 元有栖院家の屋敷を後にすると、車に乗り込んだ 烈は母に「今夜は毘沙が来るのよ、多分神威も来るのよ! 登紀子と勝也もいるから宴会して貰えませんか?」とラインを送った ラインを受け取った康太は即座に榊原にラインを見せた 榊原はラインを見て「それでは腕を奮いますか!」と言いサクサク仕事を片付けた 康太は『伊織が腕を奮ってくれるそうだ!』と返信すると烈は嬉しそうな顔をした 烈は【R&R】のスタッフにホテルを取らせた 部屋を確保するとスタッフはホテル名と部屋番を伝えた 「ケント、リーガロイヤルホテルへ行って!」と言うとケントはホテルへと向けて車を走らせた そして鳳城葵にラインしてホテル名と部屋番を伝えた 「このホテルに今すぐに貴之と共に来るのよ!」 ラインを送信すると直ぐ様返信があった 『解りました!今直ぐ向かいます!』 そのラインを目にして「ボク、イギリスに行くまで結構時間押しているのね! ある程度片付けて軌道に乗せないと、少しのズレが手の打ちどころがない程のダメージを食らう時があるからね!」と言う それが痛い程に解る安曇は何も言えなかった リーガロイヤルホテルに着くと、ケントはバレーサービスに車を預けフロントへと入って行く 烈達はその後を追いながらホテルへと入って行った ロビーで少し待つと鳳城葵が安曇貴之と共にやって来た 二人はすっかりお似合いのカップルになっていた 鳳城は烈を見ると深々と頭を下げて挨拶した 烈は一瞥しただけで何も言わなかった ケントがフロントにキーを貰いに行くと、烈は何も言わずにスタスタ歩き出した レイは何も言わずに烈と手を繋ぎ歩いていた 何も話さない烈程………怖いモノはないのだ 口数が少なるなる………それは冷静に見定めている時と怒っている時がある 怒れば怒る程に烈は何も話さず、距離を取る 下手したら………このままお目に掛かれず人生終える………なんて事もあるかも知れない ケントは予約した部屋に行き部屋を開けると、皆を部屋に通して自分は最後に入りドアをロックした 烈はソファーに座ると何も言わずに冷たい瞳を鳳城に向けた 貴之は鳳城に変わり饒舌に事情の説明をした 烈は溜息を着くと「貴之は地獄送り、貴之は女を孕まし、貴教はその鼻っ柱をへし折られ生きてるのに絶望………本当にロクデナシね 安曇の家の子供達は!」と吐き捨てた 貴之はグッと詰まり、奥歯を噛み締め耐えた 鳳城はガクガクと震えていた こんな時の烈が一番怖いのを身を持って知っているから………… 烈は「総てはボクがイギリスから帰って来てからね!ヨニー©ウッズスタンの副社長の座をどうするかも、その時に話し合いましょう!」と言った 貴之は「イギリスに何をしに行かれるのですか?」と尋ねた 「いるじゃない、イギリスに行きボクよりも早く大学卒業して飛鳥井真贋の子を笑い者にしようとした馬鹿が! で、自分は留年決めて、今は仕送りで堕落した生活送ってるクズがいるじゃない!」 何とも熾烈な言葉に貴之は言葉を失った 「貴也は家の権利書や預貯金や貴金属持ち出して、地上げ屋の女に騙されて身ぐるみ剥がされ殺されそうだったから、ボクが始末したのよ! 本当に安曇の家の子供って親の足を引っ張るしかないのね! 下手したら総理をやってる親の名に泥を塗るの解ってなくて笑えたわ!」 貴之は言葉をなくし、鳳城は絶望した 「で、葵、産休はまだ先なのに、どうして倭の国にいるのかしら? 有給申請かしら?誰が許可したの?」 「竜馬が一ヶ月、溜まった有給消化して来なよ!と言ってくれので来ました!」 「安定期前に飛行機に乗ったの?馬鹿じゃないの!それで一ヶ月倭の国にいる予定なの? ならばボクが時間とれる様になる、一ヶ月後にヨニー©ウッズスタン社で役員総会をして決めるとするわ!」 烈が言うと葵は「え?私は………解雇されるのですか?」と問い掛けた 「それも含めての役員総会よ! その前に何処で産むの?ビジョンは? 産後は政治家の妻になるならば、貴之はそんなに余裕ないわよ! 年齢的にもそろそろ打って出るしかない ならば葵、貴方は夫を支えて後援会とかの管理をしたりサポートをしないとならない! 政治家の妻はそんなに簡単には出来ないのよ 況してや仕事の片手間に後援会とが夫のサポートを出来ると思ったの? 貴方達も甘くて……頭痛がして来るわ!」 現実を突き付けられる…… 烈の蒼く光る瞳が貴之を射抜く 「貴方さ子供を作ったんだからキッチリ責任取りなさいよ!責任を取るならば葵の両親にもちゃんとご挨拶して籍を入れなさい! 政治家になるならば、身はキッチリと固めておかないと、何処で綻びが出るか解らないからね!」 貴之は「はい!葵とは入籍します!そして我が子にはちゃんと責任を取ります!」と潔い返事をした 烈は「登紀ちゃん 祖母になるんだから、厳しくね!勝也は好々爺になって大丈夫よ!」と言う レイはニブルヘイムの声で 「覚悟なければ、私が朱雀に頼み腹の子を取り上げてやります! 虐待され育つ子供の苦労を知らない大人が子供を傷付けるのですから!」と言う 「そーね、レイたんはね親に育児放棄され、八つ当たりで暴行加えられていたのよ 好きでそんな親の元に生まれた訳じゃないのにね…………だからレイたんと同じ目にさせるならば容赦しないわよ!」 烈が言うと鳳城が 「腹の中で日々育つ子を私は愛しいと想う 貴之もそう想い私を妻に認めてくれ………私達は腹の子の親になる覚悟して来ました!」と言葉にした 「葵は病院で定期的に診てもらい元気な子を生むのよ!今はそれしか考えなくて良いわ!」 「はい……母に孫が出来たと知らせたら……あの人泣いて喜んでくれました……… その時、やっと烈の想いが解りました!」 「葵、貴之の母の安曇登紀子と言う女はね 誰よりも芯が強く、強かで、才媛な女なのよ! でも不器用でね………我が子に恨まれても言い訳一つせずに耐え忍ぶ そんな女なのよ! さっき登紀子の子を真っ二つにして、地獄の鬼達に取り残させ地獄へ落としてやったのよ それでも顔色一つ変えず………耐えてる女なのよ 葵は嫁いだのならば、そんな義母を支えなさい! そして義母から学び、元気な子を産むのよ! ボクからの話はそれだけ! 後はメンバーと話し合い決めるわ!」 そう言うと「取り敢えず伝える事はそれしかないから、終わりよ」と言った 貴之は「お手数お掛け致しました!」と謝罪した 「貴之、此れから貴方達は両親と新居へ行きなさい! 其処へ葵を連れて無理させない様にするのよ! そしたら貴之は明日から鷹司緑翠の所へ通いなさい! ボクが獅童には課題を出させて見させるから、取り敢えず通いなさい! その後、貴方には何が足りないかボクが視て血反吐を吐いて貰うから!」 「………っ!!!解りました!」 「と言う事で話し合いは終わりよ! 登紀ちゃん、勝也、貴之夫妻を連れて家に置いて来たなら、夜は飛鳥井記念病院まで来たら電話かラインして!そしたら迎えに行くからさ! 夜は何もかも忘れて飲みましょう!」と言った 安曇は「それは楽しみです!」と言いタクシーを呼び貴之夫妻と登紀子を連れて帰って行った 烈はそれを見送り竜馬にラインした 「良くも葵の有給申請許可したわね!」と怒っていた 烈のライン気付いた竜馬は 『仕方ないじゃない!葵妊娠してるし、俺ではどうも出来ないから!』 「来月、グッズスタンの役員総会を開くわ! 場所と時間を決めたら連絡してね! スケジュール立てないと駄目だから!」 『了解っす! それより烈、アメリカのイベントの時、エミリア王女来てたの知ってた?』と問い掛ける 「知ってたわよ、でも危ないから寄らないように言っておいたのよ!」 『そっか、それで烈に分厚いファンレターとプレゼントの山あるから、イギリスに来た時持ち帰ってね!毎日届いているんだよ!』 「……え?それは困ったわね あ、そうそう、ボク明後日イギリスに行くからね! その時捕獲して欲しいヤツいるから、頼むわね! そしてソイツを捕獲する前にナイトの称号着けて、ちゃんとスーツ着てイギリス公爵の称号を与えられた者として格差を見せてやるわ!」 『うわぁ〜、それやられるヤツ御愁傷様だね! でも仕方ないね、多分烈怒ってるよね?』 「そーね!」 『なら仕方ない、我らがリーダーを怒らせる奴が悪いから! なら用意しておくよ!』 「頼むわよ!」 ラインを終える頃、車は飛鳥井の家の傍になっていた ケントは烈を病院の前で降ろすと、待機所へと戻って行った 烈はマンションのエントランを潜り、何時もの様に管理人室に入り着けてる者がいないか?確認して後ろの自宅へと向かった 家に帰ると兄達が既に帰宅していて【烈!レイ!お帰り!】と弟とレイの帰宅を喜んだ 烈とレイは疲れた顔をしていた 烈は「着替えたら免震構造の宿題見るわ!」と話す 流生は「それはある程度僕等がチェックしておいたよ!だからさ烈とレイはお風呂入って着替えて大丈夫だから!」と言い兄達と階段で上に上がる 太陽が「僕はレイの着替え取って来るね!」と言い3階に着くとレイの着替えを取りに行く 烈と兄達は4階へと向かった 取り敢えず烈の着替えを取り出すと、風呂場へGOした 兄達は烈とレイを洗ってやる レイはシャンプーハットを着けて頭を洗ってやっていた 湯船にお湯をためて皆でお風呂に浸かった 湯船のお湯はその後洗濯に使われ、節約に励んでいた お風呂から出ると烈とレイは着替えて髪を乾かして貰っていた 気持ちよくリフレッシュした烈は部屋からパソコンを持ち出すと応接間に向かった 烈がチェックを始めると、大空が 「皆 イマイチ免震 耐震 制震の違いが解らないみたいなんだよね…………」と伝えた 「講師呼んで図式で叩き込むしかないのかしら? 地震大国なのにね、危機管理薄いわね 自分の住んでる家がどんな構造なのか? 気にならないのかしら? 台湾の地震見ても心配にならないのかしら? あれビル、べシャッとなっていたじゃない! せめて建築屋の社員ならば、気にして欲しいのよね…………」 烈が言うと兄達は、うんうん!と頷いていた 今後の事を兄達と熱く話し合う どんな風に講習を開くか? 話し合ってると神威が毘沙門天を連れて尋ねて来た 携帯が震えると烈は携帯を見て 「あ、登紀ちゃん来たわ!」と言い迎えに行こうとする 聡一郎が「僕が行ってあげるよ!」と言いお迎えに行ってくれた ……………その時………何故か?義泰と久遠を連れて戻って来た 久遠は烈を見ると「お前退院した後も留守にしてたんだろ?傷の具合とか見せろよ!」と怒った 大空が「さっきお風呂に入ったんだけど、怪我膿んでたわよ!」と言う 久遠は烈の皮膚の弱さを想う………顔とか頭とかの怪我は治りつつあったから油断していた その横のレイもまだあっちこっち傷があり治りきってはいなかった 「まだ治ってねぇなら一番に病院に来やがれ!」 と怒っていた 烈は気まずそうな顔をすると 「………中々治らなくてね、ゴメンせんせー」と謝った 義泰は眉を顰め「譲、話しなさい!どうやったらこんな怪我をするのか!」と怒りを滲ませ言う 久遠は「暴動が起こり、集団で暴行受けたのから俺が秘密裏に行き治療していた! でも其処ではロクな治療器具もないから、治せれなかったから秘密裏に入院させたんだけど、膿んだか……」と言い烈の服を捲り上げた すると体中黒い痣があっちこっちに出来ていて………酷い怪我は膿んでいた 「明日、朝イチでレントゲン撮らねぇとな! 肋骨のヒビも酷いなら処置しねぇとな」と久遠は呟いた 康太と榊原は帰宅して直ぐ応接間を覗き、烈の怪我が相当酷い事を知った 久遠はレイの服を捲り上げた すると………やはり黒い痣が少し薄くなって、怪我をしていた痕はカサブタになり治りつつあった だが烈はまだまだで、烈の鳩尾辺りの真っ黒で少しだけ黄色くなりつつある痣を押してみた すると烈は呻いた 「お前、やっぱ痛みを隠してやがったな!」 「折れてはないのよ、折れてたらこんな風に話せないからね ヒビは入ってるかも………倒れた所蹴り上げられたからね それはせんせーも言ってたじゃない! でもやらなきゃならない事があるから仕方がないのよ!」 それを聞いていた康太と榊原は言葉もなかった 久遠は烈の頭を撫でると「明日は検査してやる!」と言った 「レイも、検査だからな!」と謂われ、レイは手を上げて「はい!」と答えた 「良い子だ!」と言い久遠はレイの頭を撫でた 康太と榊原は魔界で暴動が起きた事は知っていた だがこんなに酷い目に遭ってたなんて……… そりゃ暴動だから理性を無くした相手ならば遣って当たり前か………と今更ながらに想った 烈は「あ!母しゃん!父しゃん!」と両親の姿を見て笑った 榊原は「烈、レイお帰りなさい!お疲れ様でしたね!」と言った 烈とレイは頭を撫でられ笑らっていた 榊原は「それでは着替えたら料理を作って来ます!」と言い康太と共に自室へ戻った 烈は「せんせー!神威はまだ治ってないわよ!」と言う 神威は慌てて「あっ!ちょ!余計な事を言うな!」と慌てた…………が、久遠の手が容赦なく神威の服を捲り上げた かなり酷い怪我をした神威の怪我は今も尚、包帯に血が滲んでいた 「お前は家に帰ったら消毒して怪我の様子を見てやる!」と言う 神威は「儂は痛いのは嫌なんだ!気合で治すから大丈夫じゃ!」と言う 久遠は「気合で傷は治らねぇよ!」と一蹴した 兄達は烈とレイの手を引き「さぁ準備するわよ!」と言い連れ出した 太陽は「あ、クーちゃん!足拭いたの?」と問い掛けた 明後日の方を向くクーに怒りつつも太陽は、クーをキッチンに連れて行き、温かいタオルで顔を拭いてやり、手を拭いて足を拭いてやった 「今夜はお風呂に入れてあげるからね!」と謂れクーは喜んだ 流生が「なら乾かしたらブラッシングしてあげるね!」と言ってくれる クーは嬉しそうに笑っていた 来客は皆、客間に通し、料理が出来るまではお茶と茶菓子を乗せて運び込む 着替えを終えた康太が客間に姿を現すと、安曇と登紀子は深々と頭を下げた 康太は「今回はオレはノータッチだから、オレに詫びる事はねぇよ!」と言った 登紀子は「宗右衛門殿を出させてしまいました!」と言う 「それは宗右衛門が果てを詠み動かれた事だ! オレは宗右衛門がやる事にはノータッチなんだよ!口も手も出しちゃならねぇ! オレが出たらそれは宗右衛門を愚弄している事になる! だからオレに詫びる必要は一切ない!」と言った 飛鳥井家真贋と宗右衛門は同等の位置に座する 真贋は宗右衛門がやる事は一切手も口も出しはしない そんな事を聞いた……と登紀子は思い出していた 毘沙門天が「此れから飲む時に謝罪は不要だ! 悲しみも喜びも飲み干して、我等はそれでも逝くしかないのだ!」と言う 神威は「たまにはお前も凄い事を申すのだな!」と揶揄する 「五月蠅い!大歳神!」 と毘沙門天は拗ねた レイが毘沙門天の膝に座ると、毘沙門天は上機嫌で飲み始めた 凛と椋も毘沙門天の横に座り、仲良く話す 神威は椋と凛を膝の上に乗せてスリスリする 烈はご飯を食べている最中に寝落ちした レイも疲れてるのか毘沙門天の膝の上で寝た 義泰はレイを抱き上げると、久遠は烈を抱き上げ 「神威、お前もだ!」と言い神威を引き摺り、飛鳥井の家を後にした 瑛太は「烈とレイと神威はどうしたのですか?」と尋ねた 榊原が「あの3人は怪我しているので、久遠先生と義泰先生が連れて行かれたのですよ!」と言う 安曇と登紀子はさっき見た酷い怪我を想う 満身創痍だったのに……… そんな事さえ感じさせずに動いていた 言葉もなかった 榊原は「明後日、イギリス行けますかね?」と呟いた 康太は「行くだろ?もう竜馬には連絡取ってるだろうし、行くしかねぇんだよ!」と言う 「ですが……今回も強行軍ですよね? 2日で帰国して会社で対策考えないと駄目なんですから………」 「仕方ねぇよ、それが宗右衛門の立場だかんな! でも烈には兄達がいる、一生や聡一郎も手伝ってくれるだろ?」 康太が言うと聡一郎は「無論です!」と言う 一生は「俺は烈風サンダー、疾風サンダー、金風サンダーのサンダー三兄弟が成果を上げてくれているからな! 今の所、牧場も落ち着いて来ているから、付きっきりで仕上げて行ってやるさ!」言ってくれる 烈の考案したイギリス式の飼育方法や、新しい厩舎は馬の飼育に特化した育成牧場となった 馬は最適の環境で育てられ、サンダー三兄弟を育て上げ白馬調整牧場へ送り出せている! 種馬となったアスカイサンダーも今はふれあい牧場で幸せな余生を送っている 子馬が生まれ活気付いた牧場は、次代へ引き渡せる程に安定していた そんな今だからこそ、一生は自由に動けると言うのだった 久遠と義泰に連れられて烈とレイと神威は、手当を受けていた 朝イチでレントゲンを撮り様子を見る それまでに化膿している怪我の手当をしていた そして点滴を打ち、様子を見る 義泰は「しかし酷いなどうやったらこんな全方向打ち身を食らうのだ?」と言う程にボコボコにされていたのだった 久遠は義泰に魔界に烈が暴動に巻き込まれ怪我をしたから呼ばれた話をした 義泰は「そう言えば神であられたな宗右衛門は…………」と口にした 飛鳥井の人間ならば皆知っている事だった 神の末裔ではなく、神本人、転生して飛鳥井を護る為に生まれたのだと………… 久遠は「本格的に治癒するまで入院させたいが、このお子様は多忙なんだろ? レイにしても五通夜が近くにあると言うし、んとに寝ててくれねぇかな?」とボヤいた 「仕方あるまいて……我等は見ているしか出来ぬ…… その歩みを止めてはならぬからな…… 真贋だとて、宗右衛門の動きを止める事は出来ぬのじゃから仕方あるまいて!」と言う 久遠は何も言えなかった その夜は烈とレイは入院させた 神威は二人を見ていると言うから、手当てをしてやった 神威は烈のベッドの横に座り頭を撫でた 「んとに無茶しやがるよな………」とボヤいた そこへ一生がやって来て「神威、お前怪我してるんだろ?なら俺が付き添うから大丈夫だ!」と言った 神威は「なら頼むな、明日も儂は訴訟案件たんまり抱えてるから寝るとするわ!」と言い帰って行った 神威がいなくなると烈はムクッと起き上がった 「カズ、魔界へ行き安曇貴也見て来てくれないかしら? 力はない、脳もない、才もない、全く使えない男だから何処へ配置するか? 木花咲耶姫に頼んで探って貰ったのよね でも……彼女って性格男じゃにゃい……… きっとめちゃくそ大変な所に配置したんだろうな……って想うのよ」とボヤキつつ頼む 一生は「え?安曇貴也?ひょっとして魔界にいるのかよ?」と問い掛けた 「そーよ、本当に地獄に落としてやったのよ!」 と嗤い、事情を話した 地上げ屋の女に骨抜きにされ………家の権利書を勝手に持ち逃げした……と聞けば、あぁクズだわ………ソイツ………と理解した 「草薙剣でね悪縁は断ち切ってやったのよ! 真っ二つになり一度死んだからね 今後の道筋を立てるまで、地獄に落としたのよ 良くも悪くも甘ちゃんで世間知らずなのよ…… あんなのが政治を作り上げたら、ロクな政治なんて出来やしないじゃない!倭の国終わるわよ!」 一生はあまりの事に言葉も無く……… 「今後は本人次第か………腐った根性は治ってねぇか………」とボヤいた 「それって過去に貴之が友達使ってゆーちゃんに性的暴行した事かしら?」 「何で知ってるのよ?」 「今回貴也の運命を占った時、過去を詠み知ったのよ まぁアイツ等はあの時からあんまり変わってないクズでゴミクズって事よ! 母しゃんが苦労して閻魔に寿命握らせたのに……… えんちゃん喜んで「回収しときます?この際全員!」と言っちゃってるのよ 回収しなくて良いから、鍛え上げてって言ったら残念そうだったのよ! あれ程脅して効果は薄れちゃうなんて……ってね!」 閻魔なら言いそうで一生は苦笑した 「まぁ俺も安曇の兄弟がどうなろうと知った事じゃねぇからな!別に構わねぇけど……… 生かしておかねぇとならねぇ訳有るんだろ?」と問い掛けた 「基本は母しゃんの描いた果てへ近付けたいのよ 母しゃんの描いた果てが悉く狂って来てるから………だからあまり手を加えるつもりはないのよ あくまでも軌道修正を掛ける! まぁゴミクズを人に戻す作業は大変だからね 鬼ちゃんに引き取りにこさせちゃったけど、其処で這い上がろうとしなければ………人の世に戻しても使えないのよ! そのまま転生の道を辿らせ、今度は少しでもマシな人間になった方が世の為ってものよ!」 「えらく、今回は辛辣で、厳しい沙汰を下すんだな?烈!」 「人の上に立つ人間ならば、人は踏み潰しちゃ駄目よね? 当然、自分も踏み潰されちゃ駄目よね?」 あぁ、そう言う事! 一生は納得した 「明後日は俺もイギリスに同行する! で、そのゴミクズは此れから見て来てやるよ! だからお前は眠れ!」 と言い一生は病室を後にした 烈は瞳を瞑り眠る事にした

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