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第98話 五里霧中 ❸

竜馬は外で話す話じゃないと想い 「オリヴァー、マンションに還ったら詳しい話をしようぜ! ウッズスタンの話もしないと駄目だからさ!」と切り出した オリヴァーは「了解!なら直ぐ帰るよ!でもリーダー、お茶飲んで帰ろうよ!」と言う 「オリヴァー仕事は?」 「このまま上がって竜馬の車で帰る! 明日の朝はオブライエン家から車を出して貰うから大丈夫だよ!」と言い車に乗り込んで、秘書にこのまま帰宅する旨をメールで送信しておいた 烈と竜馬が後部座席に乗り込み、オリヴァーが助手席に乗り込むと、ケントは車を走らせた 一寸お洒落なカフェでお茶をしてひと息ついた カフェに偶然居合わせた客は、ナイトの称号を着けた貴公子然とした竜馬と烈の姿に歓喜あふれる声を出してチラチラ見ていた そんな視線には気にも止めず、楽しくお茶をしてカフェを後にしてマンションへ還った マンションの地下駐車場で車を停めると、ケントは車から降りた 烈と竜馬のオリヴァーも車から降りた IDを翳しエレベーターを呼び出し、来たエレベーターに乗り込んだ 最上階まで到着するとエレベーターを降りて一番奥のリーダーの部屋を目指した ドアをノックすると、イーサンがドアを開けてくれた 烈と竜馬は自室へ向かい正装を脱ぎ、称号をケースに入れ保管庫に入れると鍵を掛けた そしてジャージに着替えるとリビングに行った 一生は「どうなった?」と問い掛けた 烈は、はぁ~と溜息を付き 「本当にどうしよもないクズに成り下がっていたわよ!あの子は安曇の血を引く子よね? でも何で岩崎並のクズになるのかしら?」 とボヤいた どんだけ計算しても貴教は安曇勝也の子だった 一生は「勝也は不器用な父親だったからな、上の二人はかなり父を恨み………挙げ句悠太を巻き込んで飛鳥井に喧嘩を売ったりした事がある……… そんな兄貴を見て来たから………あぁなったのか? 登紀子は何処か子供に一線引いていたし…… 俺からしたら歪な親子だなって想っていた」と当時を思い出し言葉にした 「安曇登紀子と言う女はね、父親の安曇総太郎の切り札だったのよ! あの議員を骨抜きにしろ!と父に謂れ、登紀子はその男を籠絡して骨抜きにしたわ! 父親は娘を道具の様に扱い、娘は父親に縛り付けられ生きて来た 多分だけど…………総太郎は登紀子と寝てたわよ 男を籠絡する仕方も父親の手管で教わり道具のように生きて来たのよ 感情は総て殺し………囚われて生きて来たからね この前、その柵を切ってやったのよ!」 「登紀子には何度も会ったけど、あの人って一切感情を表に出さないよな?」 「その様に調教されて生きて来たからね それと………安曇の家ってのがちょっと………なのよ」 「ちょっとって?」 一生は想像出来ないから問い掛けた 「勝也達が住んでいた家って言うのがけ、人を食う家なのよ! 安曇総太郎は怨霊と化して、家に棲み着き人を喰っていたからね………感情も愛情も……全て食われてしまっていたのよ だから歪な家族になるしかなかったのよ ずっと登紀子は父に囚われていたからね、感情は一切表に出さない生き方しかさせて貰えなかったのよ あの家は暦也が地上げ屋から取り戻してくれたから、所有権はボクのモノなのよ あの家は取り壊すにしても……一筋縄には逝かないのよね! 鷹司兄弟が祓ってくれ、安曇総太郎コレクションの数々も除霊した後、展示出来る様にして貰うのよ! 貴重な骨董品は獅童が買い取ってくれないかしら?と目論んでるのよ! そして更地にした後 ビルを建てるのよ! まぁ安曇総太郎の怨霊が、そんな簡単には祓えるとも思えないんだけどね………… でも放っておいたら、あの家は傍を通っただけの人間でも誘き出して喰い始めからね…… 還ったら手を打たないとならないのよ!」 「何かお前大変だよな…………」 「大変でもやらないとね………」 「俺は最大限お前のサポートをしてやるからな! 何かあったら言えば必ずお前を護ってやるよ!」 「ボクよりもね、今後はにーに達や、そーちゃん達が危険度は上がるわよ! 当然………カズもね………だから今回はクーたん付けたんだもん!」 「え?それって?どう言う事よ?」 「炎帝の大切な存在を一人ずつ消し去りたいのよ だから………カズは気を付けるのよ……… 多分………ボクを狙うのは成功率低いからね 成功率高い方から消し始める気なのよ!」 「…………やってる事………本当にクズの極みだわ!」 「そーちゃん非力だから心配なのよ………司録位ムキムキなら心配しなくて良いのにね………」 一生はムキムキの聡一郎を想像して……… 「ムキムキの聡一郎は………少し嫌かな?」 「そーよね、昔はウィーン少年合唱団にいそうな美少年だったもんね!」 「なんてそれ知ってる?」 「四季ちゃんが写真見せて話してくれるのよ! ボク、四季ちゃんの茶飲み友達で、桜林学園の経営指南役やってるからね!」 「え?嘘………お前ただでさえ多忙なのに、そんなのもやっていたのかよ?」 「経営戦略なくして学園の運営なんて出来ないのよ!理事長にもボクと母しゃんと父しゃんが名を連ねているから!仕方ないのよ!」 「大変だなお前………」 「それよりピンハネした餌代は片付いたのかしら?」 「あぁ、翔達が事細かく調べ上げてくれたから、裁判になっても圧倒的な資料の多さに、有無を言わせる事なく、横領していたヤツは実刑判決食らったよ!」 「そう、警戒レベルを上げて防犯カメラを増やして様子を見ているのよ! 何か不審な動きあったら暦也から知らせ来るから!」 「何かな人間不信になっちまう程に………何度もやられるんだよな…」 「カズ、ボクなんてね薬局を好き勝手にされ横領されて被害総額一億ちょいよ! 一人の店長が一億ちょい横領して刑務所に送り込んだら、店長の娘に轢き殺されかけてクーたんが骨バキバキに折れて、ボク入院した事あったのよ…………その時に本当に人間不信になりそうだったわ!」 その話は康太から聞いた 「それでも果てを信じて己を信じて家族や仲間を信じて逝くしかないのよ!」 それは康太が良く言う言葉だった 一生は「さぁ夕飯食うぞ!」と言い、ヘルシーな料理と山盛りサラダを烈の前に出した メンバーも久しぶりの一生の料理に大喜びして食べていた 夕飯が終わるとヨニー©ウッズスタン社の副社長はどうするか?の話になった 烈は「ウッズスタン©JAPANを作るの言う構想は少し早めて逝くしかないと想うのよ! 綺麗の所の子が葵と同じタイプの技術屋で引き継いで貰える話は着いているのよ! 葵も特別顧問にして技術と研究を手伝わせるつもりよ! まぁ政治屋の妻になるし、子も産むから暇なんて中々作れないだろうけど、葵は根っからの技術屋なのよ!大人しく政治屋の妻に収まる筈がない だから適度にガス抜きさせる意味でも働かせ、研究させる気よ まぁ葵の姑がやり手だから、指示通り動けばサクサク動けるから、時間はどうでも使えるわ! って事で葵は特別顧問にして遺す そして御影を©ウッズスタンJAPANの社長に据えるわ! って事でヨニー©ウッズスタンの副社長と専務は誰にするか? 実質 経営はボク等がするのは変わらないけど、手足となり動いてくれる存在を誰にするか? 決めないとならないのよ!」と現状を口にした オリヴァーが「葵が妊娠したと発覚した時から、葵のポジションを誰にするか? 御影のポジションを誰にするか? 考えていたんだよ! で、竜馬が当時の研究馬鹿と言われた学友に声を掛け、それと同時にヨニー©イギリスの方でも相応しい人材を探していたんだよ!」と現状を口にした 何人かの候補を【R&R】企業向け調査会社で調べ上げている最中だと報告した 烈は「ならば、その報告書待ちと言う事ね! 【R&R】はアジア圏も視野に入れ欧米諸国も視野に入れ戦略を練りたいのよ だからアジア圏を見据えたウッズスタン©JAPANなのよ! 今後はイギリスと倭の国が独自の開発を繰り広げ伸びて行ってくれると有り難いわ!」と言う ヘンリーが「【R&R】系列のビルはテロも視野に入れた保険に入り直そうと思っているんだよ! でないと、今回の莫大な修理費用……自腹になるからね! 会社としても………自社負担じゃやって行けないから保険の見直しをするつもりだよ! 倭の国でも無論保険を見直してテロに備えねばって思っているんだよ!」と熱く語る 烈は「そーね、地震もテロも視野に入れた保険を掛けないとね!」と口にした デービッドが「地震!我が社の免震構造システムを、我等に成り代わり発表した馬鹿な詐欺会社は訴える事にしたよ! 【R&R】法律事務所は国際弁護士も増やして、部署を作り対策に当たらせるつもりやねん! 我が社を語る者は何人たりとも許せんからな!」と怒りながら口にした 「あんな免震構造じゃちょっとした地震でも揺れて凄い事になるわよ!」 と烈も怒りながら口にした 竜馬は「この前のアメリカのイベントの収益金がかなりあったから、倭の国のウッズスタンの株式に投資する事にしたよ! 土地は烈が検討着けてくれてるんだろ?」と問い掛けた 「神威が使っていたビルを神威が出たから解体作業させてるのよ! 解体作業が終わったらビルを建てるわ! ボクが倭の国へ帰国した後、正式に南雲建設と宮瀬建設に依頼に行くつもりよ!」 「1年位掛かるよね? それまではどうするの?」 「それまでは、もうじき蔵持の家だった所にビルが完成するから、其処に事務所を構えるつもりよ!本当なら蕪村建設を、其処へ入れたかったけどね…………叶わなかったからね 事務所として使える様に設計してあるから、其処へ入る事にするわ! そしてビルが建ったら移転する事にするわ! どの道、【R&R】のビルが建ったら一つに纏めるから、そっちのビルへ移った方が早いかもだけもね……」 竜馬が「まぁそれは追々考えようよ!今夜はリーダーと一生がいるんだからさ! 楽しく過ごそうよ!」と提案すると、皆は賛成してくれ、楽しく過ごす事にした 食事を終えると一生は薬を烈に飲ませた そして眠そうにしてる烈を寝室に連れて行き寝させた リビングに戻って来るとメンバーは一生に 「リーダーの怪我酷いの? どうしたらあんな怪我するのさ! 竜馬が烈の服着替えさせていたら体の傷も数か所あったと言ってるじゃないか! 教えてよ一生……」と訴えられた 一生は【R&R】のメンバーは魔界に行ったのを知っていたから、魔界での出来事を話して聞かせた 竜馬はその時レイが朱雀を呼んだ……と聞き、だからあの時、数時間探してもいなかったのか……と理解した その時、兵藤が帰宅して来て、烈が来てるからって事で烈の部屋へとやって来た ヘンリーがドアを開け、兵藤と一緒にやって来る リビングに烈の姿がなくて「あれ?烈は?」と問い掛けた 一生が「烈は寝ている、魔界での傷も中々治らねぇからな、少し熱が出てるから薬を飲ませて寝させたんだよ!」と伝えた 兵藤は眉を顰め「あの馬鹿なお子様はどうしたよ?」と問い掛けた 「あぁ、アイツか………アイツも貴也同様地獄行きだな………」 「え?貴也、地獄送りになったのかよ?」 「烈が草薙剣で貴也の柵を断ち切って地獄送りにしたみたいだ 俺は魔界へ貴也が生きているか?見て来てくれって頼まれたから魔界へ行き、この目で見て来たからな………」 「烈は鬼ちゃん達のアイドルだからな 烈が頼めば貴也をサクサク連れて行ったんたろうな………」 兵藤はそれが手に取る様に解るから苦笑して言う 「あぁ、聖神からの頼まれ事だって、張り切っていたし、素戔嗚殿も出て来て鍛え上げると言っていたからな、まぁ何とかなるんじゃねぇかな?」 兵藤は皮肉に嗤って 「己を慢心しているから道を見失うんだよ! まぁ宗右衛門が鍛え上げるって言うならば、マシな存在になるんじゃねぇか?」 と吐き捨てた 「康太に安曇三兄弟が道を逸れて大丈夫なのか?って聞いたんだよ! そしたら康太は『烈が堂嶋を中心に貴史と竜馬を鍛え上げたから、俺としては貴教も敦之もどうでも良いと烈には伝えた………』って言ってた まぁ真贋だとて宗右衛門には何も言えねぇからな……総ては烈が軌道修正を掛けるしかねぇんだよ!でも………まだ傷も治ってねぇからな………」 「思ったより酷いのか?烈………」 「肋骨もヒビ入ってるから咳するだけでも激痛があるらしい……… 仕方ねぇよな?羅刹天や神髄師の傷も自分で身代わりで受けてるんだから……」 「地獄界の重鎮を怪我させる訳にいかないからか………何にしても背負い過ぎだろ?」 「俺も精一杯のサポートをする! 聡一郎や隼人もサポートをするって決めている! でも次に狙われるのは俺等か翔達みてぇだからな 気をつけろって言われてるから、傍にいて良いのか?って想うけどな………」 「何でお前等が?」 「烈は手を出しにくいから、炎帝の大切なのを一つずつ消して行くつもりだろうって言ってた 今日の買い物もクーが着いて来てくれていたからな!」 一生が言うと兵藤はクーを見た だがクーは知らん顔して飲んでいた 何も言う気はない様だった 本当に食えない猫だった 今の兵藤は聞いても何もしてやれないから、一緒に楽しく食事をして飲んでいた 翌朝 烈やメンバーはビシッとスーツを着ていた メンバーは変装もバッチリでスーツを着ていた 烈の部屋にやって来た兵藤はその姿に 「どうしたのよ?」と問い掛けた 一生は「おい、貴史飯食えよ!」と朝の準備をしてやる メンバーはもう食べたのか?珈琲を飲んでいた 烈も紅茶を飲み「今日なエミリア王女と楽しい時間を送らなきゃ!なのよ!」と告げた そしてそのまま帰る烈は凄い荷物を出口付近に置いていた 兵藤は「ひょっとしてあの荷物、烈のか?」と問い掛けた 烈は「そうよ、エミリア王女からの貢物なのよ! ちゃんと持って帰らなきゃなのよ!」とボヤく 竜馬は「基本、ファンからのプレゼントは事務所が確認して無事にクリアしたのは烈に渡してるんだよ!でも女王からだから烈が一応見て無事そうだから持って帰るんだよ!」と伝えた 烈はド高そうなピアスをしていた そしてド高そうな高級車腕時計もしていた 烈は「取り敢えず戴いたモノは身に付けてるのよ でもボクは質素倹約が身に付いているからね あまりブランドとか興味ないのよ ボク、ジャージ大好きだし、高級車腕時計より、りゅーまがくれたゴムの腕時計の方が大好きだし!」と言う 竜馬は感激して「それ一緒に行ったネズミーで買ったんだよね! 烈に高い品物をプレゼントして飛び蹴り食らってからは、好きなのをプレゼントしてるんだよ!」と嬉しそうに言う 一応 プレゼントは戴いた以上は身に付けて感謝を述べる そして家に帰ったらサイドボードに飾ってコレクションに加える……… 一生は「俺は荷物番してようか?」と言う 「カズも行くのよ! エミリア王女の馬は国際大会で優勝してるのよ! そして彼女は泥臭い馬の飼育を自らしてるのよ きっとアドバイスと最高のスタッフでも貸してくれるかもだから行くのよ!」と言う 何処までも抜かりのない男だった そして烈は兵藤にも「兵藤きゅんも今日はロードの許可取ったから一緒に行くわよ! シャルロット王女もご一緒されるみたいだからね ついでにデートするのよ!」と言う 兵藤は「なら着替えて来るよ!」と言うと、烈が「りゅーま!」と言い竜馬も共に向かった 一生は「俺も一緒で良いのかよ?」と信じられずに問い掛けた 「だから良いって言ってるのよ!」 「俺等は危ないんじゃないのか?」 「あー!此処はイギリスよ!時計塔の魔術師が護ってくれるわよ! でも何かするなら死なば諸共、悔いなんてないから大丈夫よ! あ、此れは母しゃん達には内緒よ! お前だけ、そんな早く楽になんてさせるかよ!って怒られるからね!」 あ~康太ならば言うだろうな………と一生は苦笑した 兵藤がキッチリとしたスーツに着替えてやって来るとヘンリーはオブライエン家から車を呼んだ そしてリーダーの大荷物をメンバーが持つと、地下駐車場へと向かった 地下駐車場へ行くとオブライエン家のリムジンバスが停まっていた 執事が降りて来て、使用人と執事とで烈の荷物をトランクに詰め込んだ 烈とメンバーと兵藤と一生が車に乗り込むと、執事はドアを閉め助手席へ乗り込んだ 車は…………中世の街並みを抜けて………何と、バッキンガム宮殿へと入って行った お迎えの者がオブライエン家の車を見ると大きな門を開き、リムジンバスはバッキンガム宮殿の中へと入って行った リムジンバスを降りると宮殿関係者に連れられて、宮殿の裏側 西向きの庭園ファサードの後ろにある一階のピアノ・ノビーレへと案内された 音楽室へ通されるとエミリア王女とシャルロット王女が笑顔で出迎えてくれた エミリア王女は烈の顔を見ると 「本当ならば街へと繰り出して楽しみたかったのですが………母様に混乱を招く事態になるからお辞めなさい!と止められたので此処へ御招待致しました!」と言う 烈は「こんな機会でもないと、バッキンガム宮殿は離れた場所で眺めるしか出来なかったので、御招待戴けて大変光栄です!」と流暢な英語で話した エミリア王女は「何故音楽室へ来て戴いかと言うと、アメリカのイベントで大変ピアノが上手だったので、是非身近で聴きたいと想いましたの!」と微笑む 竜馬は「何をお聴きしたいですか?」と尋ねた エミリアは「貴方達のお好きな曲を聴かせて戴きたいわ!」と言う それが一番プレッシャーなのよね………と烈は思った 烈は「なら、りゅーま、ラ・カンパネラ弾くわよ!」と言うとピアノの前に座った 椅子はちゃんと2つ用意されていた 烈と竜馬は椅子に座ると音を確かめ、互いを見つめ頷くと弾き始めた 二人は息ピッタリで互いのパートを入れ替えながら、楽しく弾き始めた その腕前は昨日今日弾き始めた……とかじゃないのが良く解った 六分ちょいの演奏は終わると次々に弾き始めた そして2時間位弾いてラストは戦場のメリークリスマスを弾いた エミリア王女は感激しまくりだった シャルロット王女も兵藤の隣で微笑みつつ音楽鑑賞をしていた ピアノを終えるとエミリア王女は隣の応接室へと皆を案内した そして夕刻まで楽しく談笑した やはりエミリア王女は馬を愛するイギリス人だった 一生と馬の話に花を咲かせ 「私に貴方を合わせたと言うのは、貴方はリーダーにとって大切な存在なのでしょう! そんな貴方の役に立てるかは?解りませんが、是非我が家に仕える調教師を1年間向かわせましょう!その間に貴方の所のスタッフの底上げになれば……と想います! 我等は長い歴史の中、馬と共に生活をしていた 馬のお家芸は今もイギリスで根付いて受け継がれている なので、貴方のファームの底上げの協力が出来れば嬉しいですわ! チャンピオンを輩出して来て、幾度も優勝をして来た歴史がきっと貴方のお力になれます!」 と言い、一生達の横浜牧場にスタッフを派遣してくれると約束してくれた 一生は大変恐縮して喜んでいた 烈はニャッと口の端を吊り上げて嗤っていた 夕刻になると執事がやって来て「烈様お帰りの時間となります!」と帰宅を告げた エミリア王女は「烈、首相が中国へ外遊するので、その飛行機に乗せて貰える様に頼みました 烈を倭の国へ降ろし、首相は中国へと向かいます なので此れから空港へお送り致しますので、政府専用機でお帰り下さい! そして、これ、プレゼントです! 飛行機の中で開けて下さい!」と言い大きな箱を手渡した 烈では持ちきれなくて………竜馬が持ってやった エミリア王女は「あら?竜馬には他のプレゼントを用意してますわよ!」と少し意地悪して言う 竜馬は「違いますよ!王女!烈は小さいのでこんな大きなプレゼントは持てないのですよ!」と言う 「解ってますよ、竜馬! 【R&R】のメンバーの方々もプレゼントがありますからね!」と言い大きな箱を一人ずつに渡した 「家に帰ってから見て下さいね!」と言う 烈はエミリア王女の前でしゃがむと、エミリア王女の手を取り、手の甲に口吻けた 「有り難う御座います、王女! この喜びは次にイベントする時に返したいと想います!」 と感謝の意を伝えた エミリア王女は「それは楽しみですわ!」と喜んだ 烈は政府専用機の時間があるからバッキンガム宮殿を後にした メンバーも大きな箱をバスに詰め込み、空港までお見送りに来てくれる事になった 兵藤は烈からシャルロット王女とご一緒にいて下さい、なので、此処でまたね!と言われたからバッキンガム宮殿で別れた 空港に到着すると、政府専用機のスタッフがお出迎えに来てくれ、カートに積んで烈の荷物を飛行機の中へ運んでくれた 飛行機に乗り込むと首相が大歓迎してくれた そして結構踏み込んだ話を所望され話す 首相は【R&R】のリーダーとして烈を見ていなかった 飛鳥井と言う特殊な家の宗右衛門と言う立場の人間として見ていた そして倭の国の空港に到着すると首相は 「近い内に君とは会えると想う 世界会議がイギリスで開かれる事が決定したからね!その時、君は倭の国の政府と共に来るのであろう?君の母上や父君と共に! ならばその時はまた語り明かさせて貰おう! 君と話していると時間を忘れる! 楽しい時間だったよ!飛鳥井烈君!」と言って烈と堅い握手をして別れた 飛行機から降りると烈はどっと疲れて……意識を手放した 一生は烈を背負い、大量の荷物はケントがカートで押して空港の外へと向かった クーは烈のポッケに入り駐車場へと向かう すると慎一がお迎えに来てくれていた バスに乗ると、何と飛鳥井の家族総出でお迎えに来てくれていた 康太は一生に背負われた烈を見て 「烈……どうしたんだよ?」と問い掛けた 一生はバッキンガム宮殿で王女の相手をして、その後政府専用機で首相の相手をして、精神的に限界を迎えて意識を手放した、と話した 榊原は一生の背中から烈を貰い受けると、大切に膝の上に乗せて抱き締めた 愛する我が子なのだ 康太は烈の頭を撫でた 飛鳥井記念病院の前でバスを停めると皆はバスから降りた 榊原は烈を抱っこしたまま、病院の中へと入って行った 受け付けが榊原の姿を確認すると、直ぐ様久遠へ連絡を入れた 連絡を受けて久遠がやって来ると、榊原に抱っこされた烈を見て、久遠は烈を受け取り検査へ向かった 榊原と康太は待合室のソファーに座った 聡一郎と隼人がやって来て 「伊織、烈が帰ったので美味しい料理を作って下さい!」 「そーなのだ!オレ様が弟の面倒は見るから、お前達は宴会の準備をするのだ!」 と口々に言った 榊原は苦笑して「ではお願いしますね!」と言い康太を連れて食事を作りに行った この日は烈が帰国すると言う事で、家族全員で迎えに行く事になった そして皆で夕飯を食べると、準備はしていた 皆 何も食べずに烈を待っていた事になるのだった 検査が終わると烈は意識を取り戻し、自分の足で聡一郎達が待つ待合室まで歩いて来た 久遠は「精神的に限界で倒れたんだよ! 明日、もっと本格的な検査するから今日は帰って良いぞ! 明日の朝は朝食を食べずに来る様にな!」と言った 隼人は烈を抱き上げて、聡一郎は「ならそう伝えます。そして明日支払いします!」と言い烈と共に飛鳥井の家へと帰った 家に帰ると兄達が心配して烈を待っていた レイも「れちゅ!」と泣きそうになり名を呼んだ 聡一郎はレイを抱き上げて「烈は疲れてるからね!」と言う レイが頷くと聡一郎はレイの頭を撫でた そして客間で、皆で夕飯を食べた 久し振りに家族全員揃い、清隆と瑛太と玲香は嬉しそうにお酒を飲んでいた 一生は寝そうになる烈を何度も起こし、食べさせ怪我の手当をして薬を飲ませると、背負って部屋へ連れて行った 康太は「唐沢から連絡があったって………明日で良いか……」と呟いた 聡一郎は「貴教って子の事で烈はイギリスに行ってたんだよね?」と問い掛けた 榊原は「そうです!」と答えた 「それって康太の果てが歪んでいたから使える様に仕込むって事?なんだよね? でも其処に何で唐沢が関係するのさ!」と問い掛けた 康太は「オレはもう貴教も敦之もどうなっても良い!軌道修正なんて掛けなくても良いと言ってるんだよ! オレの視ていた果ては大きく歪んで狂っているかんな………それに近付けようとしなくても良いと告げた もう貴教と貴也はクズに成り下がってしまったからな………切り捨てて良いと言ったんだよ! 後は…………宗右衛門がどうされるかは?関与は一切出来ない、オレの口を出せる領域は超えてしまったと言う事だ!」と説明した それを聞き一生は「クズになって竜馬を刺したって言うからな…………血反吐を吐いたって許されねぇ世界へ落とすしかねぇだろ?」と言った 聡一郎はそれは聞いてなくて「竜馬を刺した!!何それ!そんなクズなど僕が消し去ってあげるって!!」と興奮して言った そんな聡一郎を何とか宥め落ち着かせる 榊原は「其れよりもヨニー©イギリスを語り免震構造を発表した詐欺集団が一斉に摘発され訴えられたから、ニュースやワイドショーはその話題で持ち切りですね その火の粉が飛んで、また飛鳥井が標的にされなければ良いのですがね………」と言う 康太は「其れは政府から圧力掛けて、あくまでもヨニー©イギリスの問題だと言い くれぐれも関係者の家へ迷惑をかける行為はお辞め下さい! そうすれば即座に逮捕となりますので、慎重な行動を。と、言ってるからな………どうだろ?」と言う 家族全員、より一層防犯カメラでチェックして入らねば!と思ったのは言うまでもなかった 翌朝 烈は朝食を食べる前に久遠の所に連れて来られていた 一通り検査をして、検査を終える頃……昼近くになっていた 久遠は「あまり数値に変化はねぇが、傷は相変わらずまだ治ってねぇから消毒に通え!良いな!」と言った 烈は「はい!せんせー!」と答えた やっと検査を終えると烈は飛鳥井の家へ帰った 今の所 防犯カメラにはマンション近辺を無駄に彷徨く奴はいなかった 闇バイトの裁判が連日行なわれ、お金が入らないのに罪だけ着せられた犯人達の嘆きと叫びが法廷で響き渡った………と聞けばお手軽には手は出せないと皆は思っただろう 高額バイトと銘打っても、そのお金は誰も受け取ってはいない そればかりか数名は留置所で殺されて消されたのだ そんなヤバいバイトに手を出す奴はいなかった 世間は猛暑の日々に突入して、子供達は夏休みになっていた 烈はヨニー©イギリス ウッズスタンから送られた荷物を受け取り本格的に免震構造の講習会を開く準備をしていた 烈は政府専用機で帰国したが、ウッズスタンのスタッフは普通にピザを取り来日して来ていた そして連日 綺麗の研究所の隣に建てた地震体験装置に社員を押し込めて、地震の怖さや恐怖を体験させていた 部署により時間を決めてやって来る お腹の大きくなった綺麗が「おらおら!早く乗りやがれ!」と社員を押し込む 烈は「そんなに踏ん張ると生まれちゃうわよ!」と注意する 綺麗は「大丈夫だ!そしたらポンッと産んでくる!」と嗤う 腹は大きくなっても男前な綺麗だった そして烈はウッズスタンの葵のポジションを継がせるべき存在と対面した 「フィヨールド・洋子・ドストエススカヤ・ド・山本ですねん! 長いからヨーコと呼んでくれて構わないねん!」 と、とても美しい………ロシア女性なのに……… 銀髪、銀の瞳(灰色の瞳)、色素の薄い感じのグラマラスなお嬢さんは………パンツ丸見えになっても構わず………研究熱心な綺麗のコピーの様な女性だった 烈は「年は幾つ?」と聞く 「はぁ?俺か?俺は21になったばかりだぜ!」と言う 綺麗は「ヨーコはロモノーソフモスクワ州立大学をスキップしまくりで卒業した後、両親の離婚で倭の国へ父親と共に来て帰化したんだよ! 父親が倭の国の人間で、母親がロシア人なんだよ 母親って人はヨーコにソックリで研究バカだったらしく家庭を顧みなかったそうだ! 父親は倭の国へ帰って来て再婚したらしく、今は絶縁している まぁ俺も宗右衛門がいなきゃ飛鳥井に戻ろうとは思わなかったさ! 誰よりも憎くて……嫌いだったからな!」と嗤って言う 「綺麗、お腹の子に悪いから毒は吐かないのよ!」と注意すると綺麗は烈を抱き締めてスリスリした ヨーコはそれを見て「うし!烈、俺はお前の会社で働いてやる! そして俺の才能を全て使いお前の為になってやるさ!」と言い烈を綺麗から取り上げると抱き締めてスリスリした 烈は「別にボクの為に使わなくて良いのよ! ヨーコはヨーコの好きな仕事をして構わないわ!」と返した  「俺は……全てが憎い……だけど………綺麗から聞く烈とソーエモンとの話を聞いて………一歩踏み出すと決めた!で、ソーエモンと言う方は何時紹介してくれるのだ?」 烈は宗右衛門の声で「儂が宗右衛門じゃよ!」と話し掛けた ヨーコは唖然となり………え?え?え?え!!!!と驚いていた 綺麗が宗右衛門について話す 飛鳥井と言う一族の為に何度も何度も転生され、一族の為に生きて来られた経緯を話す ヨーコは感心していた そして思い出す ロシア…………嫌 ソビエト時代には転生者として何度も転生され、国を支えた存在がいた事を……… だが転生者が暗殺され一人、また一人と消され………ソビエトは崩壊し再びロシアと名を変えた ヨーコはそんな考えを振り払い、ソーエモンと言う御人の重い生き様を垣間見る 宗右衛門は「主とは対話と意識改革が必要じゃな!明日から儂と共に行動するがよい! そしたら何かが………見えるし解るやも知れぬな」と意味深な事を謂われた 綺麗は「でしたら西村と連絡を取り、ヨーコは明日より暫くは飛鳥井建設預かりと言う事にする、で宜しいか?」と問い掛けた 烈は「それで構わないわよ!なら明日から宜しくね!」と言い帰って行った そして翌日からヨーコは烈の傍で一緒に働いていた……… 住む家は飛鳥井の2階にある使われてない部屋に押し込んた 飛鳥井の家にはまだ使ってない空部屋があるのだ 何かに使うのかと?想っていたが、家族や康太の仲間は何も言わなかった 御影は源右衛門の部屋を既に自分の部屋の様に使い、毎日毎日源右衛門のお仏壇の花の水を変えたり掃除をしてくれているのだ だからヨーコもそっちに入るかと想いきや、自分の部屋を与えるとは想いもしなかった ヨーコの面倒はもっぱら兄達と一生兄弟がしていた 育てられなかったヨーコは礼儀作法を知らない それを根気強く教えて叩き込んていた 康太は出勤して来た烈を社長室に呼ぶと単刀直入に 「おい!烈!あんな美人どうしたのよ?お前の妻にでもする気で連れて来てるのか?」と問い掛ける程だった 烈は「妻!冗談やめてよ!ボクはあんなグラマラスな女性は遠慮するわ! ヨーコは母親がロシア政府の研究員をしていてね、超天才な血筋を引いているのよ でも、両親が離婚して不必要になった娘を父親に押し付けて、父親は仕方なくお金を貰いヨーコを引き取り、倭の国で暮らし始めた でも父親は直ぐに再婚して家庭を持ったからね、育てられなかった子は再び親から見放された だからウッズスタンの副社長をさせるにしても、少し家族と言うモノを教え込み礼儀作法も教え込みたかったのよ! 飛鳥井ならば、にーに達が世話を焼いてくれるでしょ? 後 女性ならば、ばぁしゃんも世話を焼いてくれるでしょ? それを狙って空き部屋に放り込んだのよ まさか、御影と同室にさせられないじゃない!」と説明した 康太と榊原はやっと目的が見えて安心した 榊原は「ならば義父さんと義兄さんと義母さんに話して来ますね!」と言い社長室を出て行った 康太は「しかし美人だな、彼女は!」と言う 「KGBへ売り込み美人スパイにさせ、超天才の頭と色香を駆使した存在になれると母親は目論んでいたけどね だけど東洋の血を引く事だけが汚点で、母親の足を引っ張るしかない存在と烙印を押されて見捨てられたのよ 純血栽培ならトップスパイになれていたでしょうね! 本人は知らないけどね、暦也からの経歴の報告書に書いてあったわ!」 「KGB………追って来るか?」 「追っても来ないわよ!使えないって烙印押したのだからね! だからスンナリ倭の国へ来られたのよ! 父親もいい加減な奴で、再婚するなり捨てたのよ 腹を空かせて歩いている所、悪い男に連れて行かれそうな所を綺麗が見掛けて、男をボコボコにして連れ帰り仕事の手伝いをさせてたそうよ そしたらかなりの天才で綺麗はちゃっかり研究所に入れ、研究所に住まわせていたのよ だから大丈夫じゃないかな? それにヨニー©イギリスを敵に回そうなんて想う国は今はいないわよ! ヨニー©イギリス ウッズスタンJAPANの副社長になる存在だからね! 下手に手出ししたらイギリスも敵に回しちゃうからね、大丈夫だと想い副社長に据える事にしたのよ!」 「そーか、母ちゃんはヨーコの境遇を聞けば頑張って世話してくれると想うぜ!」 「それは嬉しいのよ!」 「其れよりも烈………地震体験って……めちゃくそ過酷って社員は言ってるけど?何してるのよ?」と問い掛けた 「あぁ、なら明日 相談役、会長、社長、真贋、秘書全員、地震体験して貰うとするわ!」 康太は慌てて「え?オレらもか!良いって!」と下手こいた!と思って言う 「本当ならば母しゃん達を真っ先に乗せるべきだったわね! そんな事も忘れて、ボクってドジっ子だわ〜!」 「おい!話を聞け!」 「ならば震度7体験して貰わなければ! 社員は震度七で死ぬ思いして、恐怖のあまり吐いたわ! それでやっと地震の怖さを解るなんて情けないわよね!母しゃん!」 おいおい………其処で同意を求めるな………… 其処へ榊原が戻って来て 「震度7………立ってられない恐怖と城田と栗田は言ってました!」 と呟いた 「明日、朝から綺麗の研究所へ行こうね!」 「…………烈、お手柔らかに……」 「この会社の社員はナメてるのよ! 建築に携わるのに……地震は来ないとでも思ってるのかしら?」とボヤく もう何も言えなかった…… 烈は「じぃしゃんは………震度4で頭打ちにするわ 心臓麻痺起こされたから困るからね! でも父しゃんやえーちゃんは震度7を是非体験して欲しいわ! 此れも意識改革の一環だからね!」と言う 榊原は腹を括り「ならば父は震度7を体験してみせますとも! でも康太はギブしたならば許してやって下さいね!君の母を労ってやって下さいね!」と言う 「父しゃんも少し体験して駄目なら言ってね 無理して体験する事もないならね でもね南海トラフの予想震度は7以上だから……他人事じゃないって事だけは覚えておいてね!」 「解ってます!我等は人々の生活の根幹を担う建設の仕事をしている! そんな我等が………今後起こり得る災厄を考えなくてどうします? 僕も康太も免震構造の話があった時に、沢山話し合い勉強しました 飛鳥井建設が生き残りを掛けられる、それは他の建設会社より秀でた何かがなければ……無理だとの結論も出ました! なので我等飛鳥井建設のトップを担う者が地震の怖さを体感せずにして語るな!と言う事ですね! 烈は頷いた 話が着くと康太は唐沢からの連絡を伝えた 「唐沢から連絡があったぞ、貴教の身柄は即座にヤードが引き渡してくれたそうだけど、どうやって国内に連れて来るか? と、一応ナイフ隠し持ってたお子様だから、捕縛して乗せるか?で少し帰国が遅れてるそうだ! まさか政府専用機に乗せる訳にはいかねぇからな そして倭の国へ帰国したならば、何処へ連れて逝けば良いか?とも聞いていた」 「なら唐沢に、【ヤードから身柄が倭の国に移るだけで、犯罪者なのは変わらない だから不審な行動をしたならば、即座に射殺する事になる!それが嫌ならば大人しくしている方が賢明!】だと伝えておいて! そして貴教は倭の国へ帰国しても、留置所に1週間位ぶち込んでいてくれると助かるのよ! ボクは7月中にある程度片付けないと地獄界へ逝けないのよ そして地獄界へ行ったら無傷じゃ還れないからね そしたら仕事はストップしちゃうから……… 免震構造対策打ち出して体験させるまで留置所に入れといて欲しいのよ そしたら貴教は即座に地獄に落とすわ!」 「なぁ烈、んなまだるっこしい事してなくて良い! お前は忙しいだろうから、倭の国へ着いたならば即座にオレが地獄に突き落としてやんよ!」 「母しゃん、それはしなくて良いのよ! 生意気だけど、まだ子供だからね、母しゃんに地獄に落とされたら………生きていたくなくなるのよ………だからしなくて大丈夫よ!」 「ちぇっ、お前の手を煩わせる事もねぇだろ? って思ったのによぉ…………」 「筋道を立ててやらないと心はポッキリ折れちゃうわ 心が折れたならば、地獄では存在すら儘ならない亡者になるしかないのよ 這い上がれる可能性を遺してこそ、突き落とす側としての死命が成り立つのよ! だから母しゃんはノータッチでお願いね!」 「解ったよ、なら唐沢には1週間は留置所に勾留しろ!って伝えとくよ! それよりも烈、地獄界に行ったら無傷じゃ還れないって………暴動があるのかよ?」 「多分ね………その時黒ちゃん連れて逝くけど、怪我させたらゴメンね!」 榊原は「それは構いません!兄は納得して行くのでしょう?」と言い烈の頭を撫でた 「黒ちゃんの未来が変わったのよ 新しく歩み出した龍族の長になった瞬間から、もう母しゃんが視ていた果てにいる黒ちゃんの果てじゃなくなった だから正しい道に逝く為に地獄界へ逝くんだけど………覚悟しなくちゃ逝けない本当の地獄巡りなのよ………ボク生きて再び母しゃんと父しゃんに逢えるかしら………」 其処までの覚悟をして逝くと謂うのか………… 康太と榊原は言葉をなくした 康太は「オレも地獄界に逝こうか?」と謂う 「地獄界には炎帝が存在するのよ 名前被りは何方かが負けて消える………負けるのは地獄界の炎帝になるから来ちゃ駄目よ!」 「地獄界って五帝とか龍族天賦衆とか存在するんだよな………そうか……名前被りは危険なんだよな……」 康太が呟くと榊原は「ひょっとして、四龍も存在するのですか?」と尋ねた 「するわよ!龍族天賦衆の中に四龍は存在するから、父しゃんも来ちゃ駄目よ! 多分………向こうが負けちゃうからね…… 魔界の派生は皇帝閻魔が中華圏と亜細亜圏を分けた時に始まるのよ 魔界にも四帝が存在する様に、四龍も然り 創造神が役割を持つ神を双方に誕生させた まぁ龍族は天龍が龍族を率いて魔界へ下り魔界に根付いた経緯が有るけどね 素は一つの神だから名前被りは、強い方が弱い方を消してしまう だから魔界と地獄界は暗黙のルールにより、黙視して来たんだからね!」 そんな事は創造神か、それに仕えた者位にしか解らない経緯だった 康太は「それ誰に聞いたのよ?」と問い掛けた 「師匠達に魔界の成り立ちを叩き込まれ、今後地獄界と密に連携を取るならば、どんな支障が起きるか?叩き込まれのよ! 天地創造の時、創世記の神々に交じり、それを記録する為の賢者がいた それが師匠達の一人だからね!」 「あぁ………そう言えばいたな…… でも地獄界に四龍がいるならば、黒龍は地獄界に行って大丈夫なのかよ?」 「今 地獄界は神々の空白期間に当たるらしくてね、地獄界が出来た時にいた神々は天寿を全うされ再生の道を辿られているらしくてね 四神は1人ずつ再生の道を辿られて、今から100年間は【黒龍】が不在なのよ! だから不在だから【今】しかないのよ! そもそも閻魔は地獄界にいないわ! そして聖神も倭の国古来の神らしくていないのよ だから閻魔とボクなら名前被りはいないからね 大丈夫なのよ でも暴動が必ず起きるから…………無傷の帰還は出来ない事だけ先に言っておくわ!」 榊原はそれを聞き眉を顰め…… 「それを聞いたならば……行かせたくはないです………」と言った 「ボクもね行きたくはないのよ! でも逝かないとならない状況は、遠くない未来には必ずや作られ、逝くしかなくなるのよ 閻魔は腹を括っているわ、ならばボクも腹を括らねば……そのうち魔界に攻め込んで来るしかない 未だに禁足地の浮かばれない死靈がいるのに、増やしたくはないならね もうこれ以上………憐れな死者は増やしたくないのよ………」 康太は天魔戦争の時に死した者を指している事を知る 康太は「だな、オレも………もう魔界を血で染めたくはねぇな……」と言った 榊原は「ならば少しでも傷をしない工夫をして行きなさい!それが僕と康太に報いる為になります!」と言った 「解ってるわ!父しゃん! ボクもえんちゃんも何の工夫もなしには逝かないわよ!怪我したら………せんせーに拳骨食らわされるわ!それは嫌なのよ!」 康太は烈の頭を撫で 「ならば唐沢には伝えとく!」と言った 「母しゃん、この機会に全部纏めてカタを着けるわ!敦之、アイツも捕獲を頼んでいるのよ! 繁雄には泣いて貰うしかないけど……捕獲したら纏めて強制プログラムを発動するわ!」 「あぁ、それで良い……繁雄も手を余していたからな解ってくれるさ そして這い上がれないヤツは容赦なく切り捨てて良い………… そんなヤツまでオレの為に背負わなくて良いから…………オレに気を使って無茶するのだけは止めてくれ………」 「母しゃんはそう言うとけどね、ボクは生かされた死命を知っているから……宗右衛門として生まれた瞬間から………誇りを持って生きて来たのよ! それは総ては炎帝に救われたこの命を犬死にしてはならない!そんな想いで生きて来たのよ! だからボクはボクの出来る最大限で報いたいのよ!まぁボクの自己満足だから大目に見てよ!」 「馬鹿野郎!」 康太はそう言い烈を抱き締めた 「えんちゃんや黒ちゃんに言ったけど、母しゃんと父しゃんにも謂うわ! どうか、ボクと共に死んでくれないかしら?」 「喜んで死んでやるよ!」 康太が言うと榊原も「ええ、喜んで死なせて貰いますとも!」と言ってくれた この言葉があれば………背中を押してくれる力となる 仲の良い親子は抱き合い、互いの想いを伝えるように強く強く抱き締めた 絆を確かめ合う様に抱き締め合っていると、ノックが響き西村がドアを開けて入って来た 「んとにお前等は仲の良い親子だな!」とボヤいて「唐沢が来てるぞ!どうするよ?」と問い掛けた 康太は烈を離して「早くね?」と思わず言った 貴教を連れて来るのに梃子摺っていたんじゃないのか? そう想い榊原と烈と顔を見合わせた 榊原は「何処に通してあります?」と問い掛けた 「来賓室にお通ししてある!」 と言うと取り敢えず3人で社長室を出て来賓室へと向かった 来賓室のエレベーターのドアが開くと、ソファーに唐沢は座っていた 康太は「本物か?」と思わず問い掛けた 唐沢は嫌な顔をして「本物ですよ、ならば康太の嫌いなモノでも言うか? 康太は家族には内緒にしているが、らっきょが大嫌いなんだよな! その理由は、らっきょをケツから齧り中身が出て死ぬ想いをしたから、以来らっきょは食ってねぇ!で、本物だと理解戴けましたか?」と謂う 烈は「母しゃん……らっきょ苦手だったのね そう言えば我が家のカレーはらっきょじゃなく福神漬けなのよね、食堂はらっきょなのに何故って思っていたのよ!」と謂う 康太は顔を赤らめて「謂うな!唐沢!」と怒った 榊原は康太と烈をソファーに座らせた 康太はブスッとした顔で「梃子摺っているって言わなかったか?」とボヤいた 「ヤードが1日も早く倭の国へ連れ帰って欲しがっていたんだよ! でなくばエミリア王女の死客が息の根を止めに来そうで……早く連れ帰ってくれ!と飛行機用意されてて、それに乗り連れて来たんだよ! 今は近くの警察署の留置所に入れてある! 何でも烈が帰国して以来、エミリア王女がヤードに圧力掛けて来て「斬首刑になさい!」と言ってるらしくてな 流石に倭の国の人間を斬首刑には出来なくて………早く連れ帰れ!飛行機は用意してやるから!直ぐに連れ帰れ!と言われてな………先程帰国したんだよ!」と告げた 康太も榊原も烈も………たらーんとなった 唐沢は烈を見て「そして警察署へ行った時、ゲームセンターで知り合った友達に怪我させたてして三木敦之が刑事に連れられていたからな、同じく留置所へ突っ込んでおいた! 此れで貴方か手を焼く目的の二人は捕獲して置きましたので、速やかに連れて行って構いません!」と謂う 烈は驚いた顔をして 「どーして?知ってるの?」と問い掛けた 「飛鳥井暦也氏自ら追い込んでるのを見れば嫌でも解りますよ! しかもその友達も暦也氏の事務所のスタッフでしょ? 【R&R】企業系調査会社は有栖院家の息のかかっている人間と公表されましたから……… 我等は見掛けても黙殺を約束されたも同然ですからね………」 烈は嬉しそうな顔をして 「そっか、時短出来るじゃない! 唐沢 ありがとうね! ならばその留置所にいる馬鹿な子二人は菩提寺まで、誰でも良いから連れて来てくれないかしら? 御手数掛けするけどお願い出来ないかしら?」 と頼んだ 唐沢は「あの二人は貴方にとって必要な方なのか?」と問い質した 「そーね、必要か?必要でないか?と聞かれたならば………全く必要ないとしか答えられないわね でも一度もチャンスを与えずに用済みにするのは、あまりにも酷だからチャンスを与えるのよ! ほら、ボクって天使のように優しいからね!」 「貴方は天使と謂うよりも悪魔に近いじゃないですか………」 「失礼な!樹海で助けて上げたボクに謂う言葉かしら?」 プンプン怒り謂う 「貴方には助けられてました! 恩も感じてます……でも貴方は宗右衛門にしかなれない存在! そして俺は馬鹿な子供を捕獲したと連絡しに来た訳ではないのです!」 「世界会議がイギリスで開かれると謂うお知らせに来たのかしら?」 「詳しいですね………まさにその告知も兼ねて来ました! それ誰に聞きました?情報漏洩はヤバいんですけど?」 「イギリスの首相よ!政府専用機に御一緒させて貰った時に、イギリスで行われる世界会議でお会い出来ますね、って言われたのよ!」 「その話は誰かにされました?」 「してないわよ、両親にすらしてないわよ! でもボクが逝く訳じゃないからね 父しゃん、母しゃん、お留守は護るから行ってらっしゃい!」とニコニコして言った 唐沢は「いえいえ!今回はオーティーンたっての希望で飛鳥井烈を御指名して来ていますので、お願いしますね!」と容赦なく謂う 「えー!ボク地獄界にも行かなきゃならないのよ!そんな時間なんてないわよ!」とボヤいた 榊原は「世界会議は何時頃の予定なんですか? 烈の予定はかなり詰まってて8月の地獄界への訪問はもう決定しているのでズラすのは無理です!」と答えた 唐沢は「え?8月に地獄界に行かれるのです? 世界会議は8月に入ってます! 何とか調整取れませんか? どの道、中華圏からは羅刹天殿と元始天尊が参加されるそうなので………」と謂う 「8月の世界会議へは生きて参加出来るか解らないから何とも言えないわ! そうか……世界会議………ボクを地獄界に行かせない為に不戦で立てやがったのかしら? 予定被せて来やがったのね……… 地獄界へ逝かないと駄目なのに……でもこんなに用心してるならば……… クーたん、近々飛鳥井の家にミサイルでも撃ち込まれそうだから対策考えなきゃ駄目かもね………」 烈のポッケから顔を出したクーは 「ミサイル来たならば弾き飛ばしてくれるだろ? プーは今最高に血が滾って頑張ってるから、空から降ってくる系は心配しなくて大丈夫だろ?」と謂う 「なら安心ね、でもどうしよう………母しゃん、父しゃん……スケジュール被っちゃったわ」 康太は「貴教と敦之を直ぐに取り掛かり、今月中に地獄界へ逝くしかねぇだろ! まぁスケジュール的に大変になるけど………まだ半月あるやんか! 半月あれば皆で力を合わせれば何とかなるだろ?」と励ます事を言うしかなかった 烈はPCを取り出すと計算を始めた 運命に基づく日々の運気を詠み算出する それが終わり、ある程度見通しを付けると唐沢の運気を詠んだ 「唐沢………今直ぐせんせーに診て貰った方が良いわよ!ボクと警察署へ逝くんだから、引き渡して貰ったら病院へ行きなよ!」 康太は「え?唐沢の運気詠んだのかよ?」と問い掛けた 「その人今寝ずに仕事してるわ チームで仕事してるのに、部下に任せずに自分で動いているから大変になるのよ! ………その人、基本他人は信じないから、たった今、変革期に突入してるし………ボクはアドバイスと説教をかましたいと思っているのよ!」 榊原は笑顔で「そうですか、ならば烈の助っ人を呼ぶので待ってて下さい!」と言い来賓室を後にした 烈は「唐沢!」と名を呼んだ 唐沢は「はい!」と答えた 「あなたさ、この世で信じられる人いないでしょ?」 そんなズバッと聞かなくても……… 唐沢は言葉もなく唖然とした 「今の環境は自分が作っているのよ 部下をもう少し信用した方が良いわよ! 部下はあなたを信じて、あなたの背を追って来ているのに、それを拒絶しているのは………あなたよ 母しゃん………知ってて去年の年末からちょくちょくボクと唐沢を合わせていたのよね?」 烈は確信を持ち、ズバッと康太に問い掛けた

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