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第一部 英雄の凱旋

鼻歌を歌いながら、オルガは風呂で自らの身体を清めていた。 湯を溜めた風呂桶から、手桶で湯を掬って下肢にかける。 足を大きく開いて、柔らかく熟れた秘部の穴に指を挿れて掻き回す。 「ンーンン、ははは、あー、ンン~」 くぽっと指で穴を開けば、さっき朝食を運んできた下男がついでに出して行った精液が溢れた。 精液を掻き出して湯で綺麗に流し、中を洗う。 毎日綺麗に洗って、オルガの身体を使いに来た人をもてなせと、デイトリヒに言いつけられている。 だから毎日暇を見ては綺麗にしていた。 指がたまたま前立腺を掠めれば、その度に鼻歌をやめて喘いだ。 腰がピクピクするが、自慰はせず我慢する。 「あー、んあ、はぁ、早く欲しい、今日は何人だろうか、昨日は三人だったか、ああ、少ない」 そんな独り言を言って、身体を清めたオルガは風呂から出てベッドに倒れこむ。 天井には惚けた顔の男が一人、細い手足を放り出して仰向けに寝ているのが映っている。昨日の男がつけた赤い吸い跡が点々と首から胸元についていた。 その男は童貞だと言っていた。夢中で腰を振り甘い睦言を吐き、オルガの中で果てた。その熱い精液を思い出して、オルガの性器は立ち上がり腰が浮く。 今のオルガには、まともな思考は殆ど残っていなかった。ただデイトリヒの言い付けを守り、快楽を貪る事だけがオルガを支配している。 他の事は考えようとしても霞みがかったようになって、考えがまとまらないのだ。 犯されるのが待ちきれなくて、ベッドの上で枕を股に挟み騎乗位の真似事をして遊んでいると、ガチャリと扉が開いた。 やっと男が来たと期待に満ちた目でそちらを見て、欲に逆上(のぼ)せたオルガの頭が凍りついた。 「……おお、本当にローレンスタ将軍だ。たった半年でえらく変わっちまったもんだ」 そう言って部屋に入って来たのは、赤い髪の熊のような風貌の武人だった。 鎧を身につけ剣を携えたままで、最後に合間見えたままの姿だ。荒々しい戦場の匂いを纏ったその男を見て、オルガはガタガタと身体を震わせる。 今まで考えることを辞めていた、様々な想いが蘇ってきた。 「……ひ、……ディ、スター准将……み、見るな……私を見るな……」 「おいおい、どうしたローレンスタ将軍、顔色悪いぜ」 「将軍、将軍だと?……違う。私は、私は……見るな、貴殿には見られたくないっ」 ベッドに蹲り顔を伏せて呻いた。 ギシッと重いものがベッドに乗る音がして、ゴツゴツした手がオルガの背中を撫でる。硬い掌が、するすると腕へと滑っていった。 「細くなったな、この腕じゃあ剣は握れねぇな」 「……剣……そんなもの……違う、違う、わ、私の手は、もう違うものばかり」 「ああ。噂は前から聞いてたんだ。あんたがここで何をしてるか」 「う、ぐ、止めろ!言うな!」 耐えきれず、オルガは胸を押さえ唸りながらディスターを仰ぎ見た。 いそいそと鎧を外し、ベッドの下に置いていたディスターと目が合う。 そうか、彼もオルガの身体を使いに来たのか。 そう気付いて、目の前が真っ暗になる。 「帰ってくれ、頼む、せめて貴殿は、私を武人として覚えておいてくれ。今のこの私の、汚い姿など忘れてくれ」 しかし、ディスターは首を傾げて困ったように頭を掻く。 帰るそぶりはなく、オルガをじっと見つめている目には熱が灯っていた。 「帰らなきゃダメか?俺はあんたに会うのを楽しみにしてきたんだが?」 拒む腕を簡単に押しのけて、ディスターはオルガをその逞しい腕の中に引き寄せた。 男らしい厚い胸板を肌に感じ汗の匂いを嗅ぐと、また頭が霞みがかってしまう。ああ、駄目だと抵抗するが、抗えずまた思考が欲に飲み込まれた。 「ん、はあっ……なら、私で気持ちよくなっていって下さい。好きなように犯して……」 ディスターの股座に顔を寄せ、ズボンの布地の上から性器を食む。 すぐにむくむくと膨らみはじめた一物を、前を寛げて取り出した。まだ半勃ちなのに、かなり巨大だ。 「ああ、大きい……早く、これで深いところを突いて、いっぱい出してくれ」 「うわ、はは。凄いな……思った以上に、いやらしい」 関心したような声に気を良くして、オルガは性器に口付ける。汗と性器の匂いと味を楽しみながら、丹念に舌を這わせていく。 完全に勃起したそれは、今まで相手した男の中でも一番の大きさだった。 咥えようとしても先端しか入らない。それでも入るだけ挿れて、喉奥で扱いた。 「んぶ、……ン、……んあ」 「はぁ、気持ちいい。上手いなローレンスタ将軍」 将軍と呼ばれると、胸がざわつき息が苦しくなった。だが、性欲にいかれて娼婦に戻ったオルガは、一瞬後にはそんな事を忘れてしまう。 「う、は。駄目だ、出ちまうから」 「あ、ンっ…ン、飲ませて、くれ、早くぅ、ンあ、口に出して」 「 待て待て。ほら、いっぺん口離せ」 太い指が口を無理矢理にこじ開けて、中の性器が引き抜かれる。 名残惜しくて舌を出して強請るオルガを抱え上げると、ディスターはオルガを膝立ちに立たせ勃起した性器に口付けた。そのまま一気に口の中に招き入れられる。 「う、なあ!?」 ディスターのような雄々しい男が、汚い自分の一物を咥えてしまった事に驚いて、オルガは腰を引いて逃げようとするががっしり抑え込まれままならない。 「やめ、そんなこ、と。しないでくれ、私が、するから」 オルガを使いに来る男達は大体前戯もなく好き勝手に挿入するだけで、口淫なんてしてくれる男はいなかった。昨晩のようにキスマークをつけるような男が珍しいほどだ。 久しぶりの性器への深い愛撫に、蕩けそうになる。 「あ、つい、ちん×溶けるっ……ディスターっ……」 「んぷ、気持ちいか?初めてなもんでな、あんたほど上手くはねぇが……感じてくれてるなら良かったぜ」 「ンあ、どうして、あっ!んんっ」 大きな口に飲み込まれて吸われると、放置され過ぎて敏感になった性器がじんじんして、たまらない快感に腰が勝手に揺れる。 同時に太い指が後孔に押し当てられ、つぷりと突き入れられた。 「ああ、ふあっ、そこ、同時はぁ」 「んんんっ?んーんんぷ?んぶぶ」 「そ、そのまましゃべ、ひ、聞こえな、ああ」 犯されすぎて緩み柔らかくなった中を指が探り、ぐちゅぐちゅと音を立て掻き回した。 前立腺をゴリゴリ弄られて強い射精感がこみ上げる。赤毛に指を絡め必死に頭を引き剥がそうとするが、全くビクともしなかった。 「でる、出るぁ、はあっああっ」 結局ディスターの口の中で達してしまい、熱い肉に包まれ射精する快感にオルガは陶然となった。 指を抜かれると支えを失い、腰が抜けてベッドに沈み込む。 ディスターは掌に白濁を吐き出し、にかりと笑った。 「はは、悪い。飲むのはちぃと、勘弁な」 「……なぜ、こんな事を……私は性奴だ、私が奉仕する側なのに」 「そりゃ、するだろ普通は」 その掌の白濁を自らの剛直に塗り、ディスターはオルガに覆いかぶさった。 熱くて巨大なものがオルガの後孔に触れると、そこは早く欲しいとパクパクと口を開く。 「……はあ、挿れてくれ、早く、ちん×を私の中にくれ……」 「ああ、ローレンスタ将軍」 耳元で優しく名前を囁かれ、ゾクゾクした。 太い性器は慣れたオルガの尻でも簡単には入らず、じわじわ少しずつ押入られる。まるで慣れていなかった頃のように、痛みと圧迫感を覚えて呻いた。 「う、うう~」 「イテェか?ゆっくりヤるから我慢してくれよ」 「ん、ぐう、い、いいから、うぐ、貴方のいいように、犯してくれ」 「なんでだよ。一緒に良くなんねぇと意味ねぇだろ」 そう言って、ディスターはオルガの手を指を絡めるようにして握り、オルガの唇に口付けをした。 訳がわからなくて、オルガは唖然とディスターを見上げる。 あまりの衝撃に、欲に浮かされていた頭が冷めてしまった。 「汚いぞ、そんな。貴方が汚れる」 「汚い?なんで。ああ、俺の舐めたからか?お互い様だろ」 「違う、私のこの口は、何人もの男を」 「ああ。ンなことどうでもいいだろ」 「良くない!ディスター准将、駄目だ、駄目だ!ああ、抜いてくれ、それか、殺してくれ!貴方にまで、うう、性処理に使われたら、もう……」 「挿れてだの抜けだのうるせぇなあ」 呆れた顔でそう言いながらも、少しずつ性器を押し込むディスターは、オルガの手を固く握ったままだ。抵抗したくても出来なかった。 このままでは、かつての好敵手にこの身に精液を排泄される。それは百人の男に犯されるより、もっと辛かった。 武人として戦った尊敬すべき相手に、性欲の処理の為に使い捨てられるのは耐えられない。 「なぜ、……殺して、くれなかった、あの日……貴方の剣で、武人として……う、うっ」 眦から涙が零れるのを、ディスターの唇が拭った。彼の風貌に似合わない優しい口付けだ。 「なあ、あんたなんか勘違いしてんじゃねぇのか」 「勘違い……とは?」 再びディスターの唇がオルガのそこと触れ合う。今度は舌が歯列を割り中に入り込んできた。ディスターの舌が逃げるオルガの舌を絡めとり、ディスターの口の中に引き摺り込まれてしまう。 「ン、ふっ……」 優しく噛まれたかと思うと今度はすぐ強く吸われて、軽い痛みと快感に翻弄された。鼻から抜ける息が熱く濡れる。 キスなどは何年ぶりだろうかと、頭の片隅で思う。戦で忙しく結婚どころか恋人も中々作れない。オルガが最後にキスをした女は、顔すら思い出せないほど昔の恋人だった。 それが今、オルガの唇を貪っているのは愛した女でも、オルガを性奴に調教したデイトリヒでもない。 「んあ、あ、ディスター、あっ……んああ」 なぜか胸と腹の奥がきゅうっと苦しくなって、身体が芯から熱く燃える。 そして、ガチガチに勃起していたオルガの性器は、ぴゅくっと少量の精子を吐き出してディスターの腹を汚した。 「う、うっ、あー」 「なんだよ、キスで軽くイッたのか?可愛いなあローレンスタ将軍」 「ひ、か、可愛いだと」 「そうだな、可愛くなった。前の格好いいあんたも好きだが、今のあんたもかなり好きだぜ。やらしいの好きなんだ、俺ぁ」 「す……き?好きとは……まて、ディスター准将、そんな、私は、私はただの性奴隷だ。そんな価値は」 「なあ、好きな奴抱きに来てな。性奴隷がどうとか言われちゃ悲しいぜ……俺はデイトリヒ陛下の性奴隷をヤリにきたんじゃねぇ、ローレンスタ将軍を抱きに来たんだ」 ズンッと最後に強く突き入れられて、根元までずっぽり飲み込まされた。 今まで触れられた事もなかった最奥まで押し上げる巨根に、オルガは思わず背を反らし悲鳴をあげる。 「ひぐ、ああぁっ!」 「すご、絡みつく……熱くて、気持ちいいぜローレンスタ……オルガ」 「あ、あ、ディ、スター」 「ずっと好きだったんだぜ。馬鹿だろ。敵将によ……しかも俺ノン気だぜこう見えて。よくホモだと思われっけど」 ゆっくり抜けるギリギリまで引き抜かれ、排泄感に情け無い声を出し身体を震わせる。そして、またゆっくり押し込まれ、激しい快楽に唇を噛んで射精を堪えた。 ディスターの巨根は、オルガのいい部分全部を一気に擦る。動く度に強く快感が迸った。 そして、それだけではない。 ディスターの優しい声が、胸を満たす。今まで感じた事のない喜びが、繋がった場所から溢れていた。 「んあ、くぅっ、うぅっ」 「な、あんたも、憎からず思ってくれるか?」 突き上げが徐々に早くなり、ズドンズドンと腹の奥を巨根が打つ。その度に視界が明滅するほど感じた。 指を絡めたディスターの手をぎゅうと握って、強すぎる快楽に耐える。 「はあっ、あっ!んあー、わ、たし、は、わから、ない!あっ、わからないぃっ!で、も、ああ、ディス、ター!こん、なに、感じたこと、ない!ああ、こんな、気持ち、いいのは、知らないっ、貴方だけっ、があっ」 「はっ、オルガっ、そんな殺し文句……手加減できなくなっちまうだろ」 握っていた手を離され寂しく思ったのは一瞬で、今度は両腕で強く抱き締められた。そのまま、ギシギシとベッドが悲鳴をあげるほど強く揺さぶられる。 「んああ!んぐ、あ!あぐ、うぅっ、はっ!げし、い、あ!ああ!」 オルガもディスターの背中に腕を回ししがみついた。 奥を突かれる度に、オルガの性器からはダラダラと精液が漏れる。ずっとイキっぱなしのような状態で、気持ちが良すぎて訳が分からなくなりそうだった。 「あー!い、いい、すごっ!ンあぁっ、こわれ、るっ」 「すまねぇ、止まれないっ!オルガ、もう出る、中に、いいか?」 「あ、ああ、出してっ、出し、てくれ、ディ、すた、ああ、洗って、あなたの、精子で、私の中をっ、ンふあ、ぁああっ!」 「ん、く!」 ディスターの腰に足を絡めて、身体を密着させる。胸にディスターの激しい鼓動を感じた。 体内のディスターの巨根もどくどくと激しく脈動し、大量の熱い精液をオルガの中に放つ。 同時にオルガも身体を戦慄かせ絶頂した。ぶるぶると震える身体を大事そうに抱き締められ、何度も口付けられる。 全身が蕩けそうなくらい心地よい。 快楽だけではない。今まで空虚に穴が空いていた部分が満たされたような感覚で、オルガはここに来て初めて心から満足していた。 天井の鏡には、オルガに覆いかぶさるディスターの赤い後ろ姿と、その肩に顎を預けて幸福そうに中出しを受けているオルガが映っている。 自身のこんな表情は初めて見た。 「……ぁ……はぁ……熱い……」 「ははっ、すげぇ出た。……オルガも良かったか?」 「ああ……ディスター。とても……良かった」 「そうか、そうか!なあ、ルイスって呼んでくれよ」 「ルイス……ありがとう。私は幸福だ。貴方のような男に好かれて、幸福だ」 そう言って、オルガはルイスの頬を撫でる。誰かを愛しく思う感情なんて、久しく失っていた。 人間らしく思いを交わしてセックスをする事なんて、二度とないと思っていた。 幸せだった。 「だから、今ルイスの剣で殺してくれ。貴方のものになった今、このまま終わりたい」 もう、この後別の男には抱かれたくない。たとえ、デイトリヒにでも。 そう思い、喉を晒して目を瞑る。 「馬鹿。なんで惚れた男を殺さにゃならねぇんだよ。……大丈夫。俺に任せろ」 「なに……?」 目を開けると、自信満々に笑うルイスの顔が目の前にあった。 意味を問う前に、繋がったままの身体を持ち上げられて、対面座位の格好で座らされる。 硬いままの巨根が、オルガの自重で深く刺さり、一気に強い快楽に襲われた。 「ひ、ンアぁあ!?」 「なあ。もうしばらく我慢してくれ。迎えに来るからな。そしたら、俺があんたを鍛え直してまた剣を振れるようにしてやるよ」 「深、いい、腹が!ああ、破けっ!い、もうっ!駄目、ぁ、ああ、ルイス、うっ、あ」 「俺を信じて、耐えてくれるか?なあオルガ」 「う、うあっ、あぐ、ぐぅっ、イ、イクっ、んぁ、あーっ」 下から容赦なく揺さぶられ、頷きながらあっけなく射精しまった。 ひくひくと収縮する内壁の感触を楽しむように緩く腰を動かしながら、ルイスはオルガの絶頂の波が過ぎるのを待ってくれる。 「……次に来る時は、あんたをここから連れ出す時だ。オルガ。だから今日は、本気で抱いていっていいか?」 「ああ……そうして欲しい」 心からそう答え、オルガは自らルイスの唇にキスをした。 その後すぐ、オルガは後悔した。 ルイスが想像以上の絶倫だったからだ。 あらゆる体位とあらゆる責め方で何度も抱かれた。今までこの身を使った男達とした事は、あらかたルイスともしただろう。 途中様子を見に来た下男がまだ抱かれているオルガを見てそっと扉を閉め、その後昼食の時間にやって来てまだ続いている事に驚きお盆を落としていた。 「あ゛ーー……ぁ、……イッ………ぁ……」 「普段は一日で何人も相手してんだろ?これくらいでぐったりすんなよ、ほら、可愛い声出せって」 「んひ、あ、無理……もう、無理……うあ、あー……」 もう何回目なのかも分からない。 もはや出すものもないのにイき続けて、最後はルイスにしがみついたまま気を失った。 意識が戻った時には既にルイスはいなかった。 まさか全て夢だったのかと思ったが、そうではない証として腹の奥の精液と身体中につけられた赤い痕が残されていた。 天井の鏡を見て、その向こうの自分に微笑みかける。 彼が戻るまで、信じて耐えよう。きっと耐えられる。 そう、鏡の中の自分に言い聞かせた。

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