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第13話

「もうそんな時期かー」 凪咲がそう呟くと律と佐野先生は目を見開ききょとんとした。何に対して言ってるのか分からなかったからだ。すぐに凪咲が佐野先生の持っている雑誌を指して2人は同時に雑誌の表紙を見た、そこには… 『クリスマス』と書かれていた。 「ああ、確かにクリスマスか…」 「ケーキに…プレゼントに…雪が降ったら最高だね!!」 「残念、今年のクリスマスは雪降らなそうだよ」 スマホで天気予報の画面を見せてきた律に凪咲はガーンと落ち込んでしまった。 楽しそうに話す2人をジーッと見つめてくる佐野先生の視線に気づき、2人とも佐野先生の方を向いた。 「何ですか、先生、そんなに僕のことを見て…!」 「先生、須藤さんが悲しむ様な事と凪咲をそういう目で見るのはちょっと…」 「なに勘違いしてんだよ!こういう時に協力しやがって…!ちげぇよ!あー…お前らさ年末年始って暇?」 後頭部を荒々しく掻きながら問い掛けてきて、2人はきょとんと目を見開くとそれぞれスケジュールを確認しだして2人とも家にいるだけだったので暇だと伝えた。 「ならよ、31日から1月2日までの2泊3日で俺らと旅行しねぇか?」 「誰と誰と誰?」 「俺、如月、七条、あと俺の恋人の岬」 一瞬何が起きたか分からなかったがすぐに理解をすると凪咲は勢いよく立ち上がって目をキラキラ輝かせながら「行きたい!!」と叫んだ。 律の方を見ると悩んでいたが、ニッコリ笑うと「僕も」と手を挙げながら答えた。 「んじゃ、親御さんの許可が出たら一緒に行くか」 「…お金は!?」 「…流石に俺が出すわ、だからお前らは自分達が使う分だけ用意しとけ」 やったー!と喜ぶ凪咲を見て律は嬉しそうに笑うと、佐野先生に近寄って耳打ちをした。 「良いんですか?こんなに贔屓な事をして」 「良いんだよ、お前と如月は俺のお気に入りだし」 顔を見合わせると佐野先生は悪戯っ子の様な笑みを浮かべて律の頭をわしゃわしゃと撫でてきた。 律は驚いたが、すぐに嬉しそうに笑ったのであった。 「あ、そうだ!クリスマス、その時に4人でお祝いしません?どうせ、クリスマスの日は佐野先生は恋人さんとズッコンバッコンでしょうし!」 「おい、言い方!」 「良いんじゃないかな、じゃあ凪咲へのプレゼントはその時に渡すね」 「じゃあ僕もその時に渡すね!」 こうして決まった2泊3日の旅行。 凪咲はルンルン気分で帰って親に話すとOKと許可が出てすぐに律に連絡をすると律も許可を得たとの事で…年末年始は古民家をお借りして4人でお泊まりをする事に決まったのであった。 ----- そして12月31日。 凪咲は律、佐野先生、佐野先生の恋人の須藤さんと一緒に古民家に来ていた。 古民家と言っても内装は綺麗で、和室にベッドが置かれていたりして凄い良い場所だった。 「わーい!律、楽しみだね!」 「楽しみだね、近くに神社があるらしいから初詣行く?」 「行くー!」 キャッキャと騒ぐ凪咲と律に、佐野先生が「おーい!」と声をかけてきて2人は佐野先生の方へ向かった。 そこはシングルベッドが2つある綺麗な和室だった。 「わー、めちゃくちゃ良い!」 「ここお前らな、1階の和室は俺と岬が使うから」 「えっ…あー…」 何か考え出した律に凪咲も佐野先生も首を傾げると、律が言いづらそうな表情をしてゆっくり口を開いた。 「あの、僕…凪咲と同じ部屋はちょっと…」 「え、えーーー!!??」 まさかの言葉に凪咲は驚き、佐野先生も声には出さなかったが驚いていたのであった。 断られてショックを受けた凪咲はリビングでしゅんと落ち込んでいた。 (夏休みの時は同じ部屋で一緒のベッドで寝たのに…) 「あのー、如月さん?」 後ろから声を掛けられて振り返るとエプロン姿の須藤さんが立っていて「何ですか?」と凪咲は問いかけた。 「今から夕飯の後に出すケーキを作ろうと思うんだけど、如月さんも手伝ってくれるか?」 「手伝います!!」 手をピンと上げながら答えて、エプロンの準備をすると2人はキッチンに立った。 手際良く作っていく須藤さんに凪咲は「おー!」と感心な声を上げながら、手伝っていった。 「…えっと、如月さんって七条くんと付き合ってないのか?」 「つ、付き合ってないです!」 「諒汰は早くくっつけーっていつも言ってるけどな、如月さんは好きじゃないのか?」 佐野先生の適当さに凪咲はイラッとしたが、すぐに須藤さんからの問いかけに答えた。 「僕は、律のこと特別だと思ってます…恋愛感情とはちょっと違うかもですが…」 「それは何で?」 「…それは……」 ----- 凪咲と須藤さんがケーキを作っている中、律と佐野先生はダイニングで向かい合うように座って話をしていた。 「なーんで如月と同じ部屋は嫌なんだよ」 「嫌じゃないですよ、寧ろ嬉しいですが…」 そこで言葉が途切れて佐野先生は黙って待っていると律が口を開いた。 「…男と女が同じ部屋は駄目じゃないですか」 「はぁ?いや、確かに如月は女みたいに可愛いが…あいつは男だぜ?」 「違います、凪咲は女の子です…女の子になりたがっているんです、だから僕は……」 そこで律は黙ってしまい、佐野先生はため息をつくのであった。

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