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橘×雪哉 7
「雪哉、可愛い……」
「っ、ひゃうっ」
耳元で甘く囁かれて、思わずビクンと身体が跳ね上がる。しまったと思った時には既に遅く、橘はクックックっと肩を震わせて笑っていた。
「耳、弱いよなぁ? なんだよ、今の可愛すぎる反応」
「う、うるさいな……。別に良いじゃないですかっ」
「よくねぇよ。つか、耳真っ赤じゃん。照れてんの?」
「うっ……。て、照れてませんっ! いきなり耳元で囁かないで下さいっ!!」
耳を押さえて睨みつければ、橘は悪戯っぽく笑ってみせる。
やっぱり橘は意地悪だ。わかっていてわざと言ってくるんだから。
「ま、今日はここまでにしておいてやるよ」
「えっ……」
本当にコレで終わり? 散々期待させるだけ期待させといて、何もなし?
「言ったろ? これはお仕置きだって。あ、言っとくけど5日間はオナ禁な。じゃ、お休み」
「んな……っう、うそでしょ……」
あっさりと身体を離して布団に潜り込み、雪哉に背を向けた橘を信じられない気持ちで見つめる。
続きは明日な。なんて言われてしまえば、生殺しも良いところだ。中途半端なまま放置されて、昂った身体が疼いてしまう。
「嘘なわけあるかよ。ほら、寝ろよ」
ポンと軽く頭を叩かれるが、とても眠れるような状態ではない。
「あ、あの……。本当にこのまま寝ちゃうんですか?」
「当然。どうせ明日も練習あるしな。それとも、もう我慢できないわけ?」
「は、はぁ!? そ、そんなわけ無いじゃないですか! 馬鹿な事言わないで下さい!」
「ふぅん? ま、いいけど」
そう言うと、橘はごろりと寝返りを打って雪哉の方へと向き直った。そして、おもむろに腕を伸ばしたかと思うと、そのまま雪哉の身体を抱き寄せた。
「ちょ……っ、千澄さ……」
「大丈夫。手は出さない。ただ、こうして抱き締めるだけだ」
鼻腔を擽る柑橘系の香り。密着した肌の温もり。耳に掛かる吐息。背中に回された力強い両腕。
ドクンドクンという鼓動が、直接肌越しに伝わってきて、雪哉の頬が紅潮していく。
「雪哉、あったかいな……」
「~~ッ……」
恥ずかしくて、居た堪れない。それでも、この体温が愛しくて、離れ難いと思ってしまう。
「おやすみ、雪哉」
「……おやすみなさい」
優しく髪を撫でられて、額にキスを落とされる。
どうせするなら、額じゃなくて唇にしてくれたらよかったのに。
キスを自分から強請るのはなんだか恥ずかしくて、もどかしい思いを誤魔化すように雪哉は少しだけ唇を尖らせて橘の胸に顔を押し付けた。
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