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和樹×透 きっかけ 3

「言っておくけど浮気じゃないから!」 「……じゃぁなんだ?」 じっと見つめてくる瞳から逃げるように視線を逸らすと、逃がさないとばかりに両手で顔を挟まれた。 そのまま強引に引き寄せられると、唇が触れ合う寸前の距離で問われる。 「浮気じゃないんなら、なに? 隠すなよ気になるだろ」 真っ直ぐに見つめて来る瞳からは逃れられない。観念して小さく息を吐いた。 「そ、その……ポリネシアンセックスって言うのを……してみたいなぁ……って」 言った途端透の表情が固まった。瞳だけ器用にくるっと一回転させて、引きつった顔を向けて来る。 「お、おま……っ何言って……っ」 「だって、橘先輩がすっげぇ良かったって言ってたから……」 正直、かなり興味はある。先輩が思わず自慢したくなるようなセックスなんて一体どんなものなんだろう。 「お前なぁ……。たく、人の事ほおっておいて飲みに行ったと思ったら、変な知恵付けて帰って来やがって……」 透は大きな溜息をつくと、ガシガシと頭を掻いている。やっぱりダメなんだろうか。不安になって様子を窺うと、透は困った様な顔でこちらを見ていた。 「――だめ?」 「当たり前だ」 即答されて思わずしゅんと項垂れた。わかっていたけど、即答されると辛いものがある。 「大体、それってマンネリ化を打破する為のモンだろうが。俺は別に……るし……」 言葉がどんどん小さくなっていき、最後の方は虫の羽音の様な小さな声しか聞こえなかった。 「え、何?」 聞き返すと、透は不機嫌そうに睨みつけてから再び大きな溜息をついた。 「ッ、だから!  俺は今のままでも十分満足してるって言ってんの! 言わせんな馬鹿っ」 そう言うと、透は顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまう。 (――ああ、もう……) この人はどうしてこんなに可愛いんだろう。 「この話は終わりな。ほら、早く風呂入って来い」 「わ、ちょっ……」 グイグイと背中を押されて浴室に押し込まれる。 扉が閉まる直前、透が「……部屋で待ってる」と恥ずかしそうに囁いてきたものだから、思わずその場で悶絶してしまった。 「……」 その場にずるずると座り込み、思わず口元を押さえた。 (……やばい、今のはちょっと……) 反則じゃないか。あんな可愛い事言われたら我慢出来るわけがない。 「うわぁ……ヤバい。何アレ、ヤりたい。滅茶苦茶ヤりたい……っ!!」 「っ、うっさいばかっ! 声大きすぎるんだよっ!」 聞こえているぞとばかりに扉をドンと叩かれて、ハッと我に返る。 「ご、ごめん……」 慌てて謝るが、一度火のついた欲望はなかなか収まらない。 「あーもう! マッスーのバカ! 大好き!」 そう叫ぶと、頭を抱えてうずくまった。

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