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和樹×透 1-2

「……っ、ばか……だ、だめだって……」 「大丈夫。キスだけ、ちょっとだけだから」 「大丈夫じゃない!」 声を大きく上げるわけにもいかず、シートベルトで固定されている身体は思うように動いてくれない。 手で口を隠そうとしたがすかさず指を絡め取られてするりと頬を寄せて来た。 「マッスーってキス、好きでしょう?」 「そ、それは………っでも、時と場合を考えろって言ってるだろ」 「こっそり隠れてするのも本当は好きなくせに」 「好きじゃない! いつもお前が勝手に……って! 話を聞け、っんん!」 透の抵抗を無視して強引に口づけてきた和樹に文句を言おうとすれば、舌でこじ開けられてそのまま口腔内に侵入して来た。 熱い舌で歯列を舐め上げられ、逃げようとする透のそれを捕らえて絡ませて来る。 「っ、ふ……ぅっ」 角度を変えて何度も貪られ、この一瞬、誰かが通りかかったらどうしよう? と言う不安と背徳感とが混ざり合って妙な興奮を覚えた。 このままではいけないと分かっていても、和樹のキスが気持ち良くてつい受け入れてしまう。 その時、ポーンと言う機械音と共にもうすぐ到着すると言う飛行機のアナウンスが狭い室内に響いて、ハッと我に返り慌てて和樹の胸を押し返した。 名残惜しむように唇を離すと、透明な糸が引いてプツリとそれが切れた。その瞬間を見てしまい、ブワッと顔が熱くなった。 「あーぁ、残念。もう少し楽しみたかったのになぁ……。続きは夜に、だね」 「……っ、ば、ばか……っ」 二ッと笑う和樹に何も言えなくなり、火照った顔を誤魔化そうと慌てて窓の外に視線を移した。 眼下には美しいマリンブルーの海が広がっており、水平線の彼方には鮮やかなエメラルドグリーンが広がっている。 透は無意識のうちにゴクリと喉を鳴らした。 ―――今度こそ、絶対に流されない。 透は決意を新たにすると、大きく深呼吸をして座席に深く座り直した。

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