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和樹×透 3日目
翌日は、ひたすら素数を数えて煩悩を振り払うという方法でなんとか乗り切った。
アキラや和樹には何をブツブツ言っているのかと不思議がられる羽目になったが、まさか本当の事を言うわけにもいかない。
適当に誤魔化して、その後はなるべく二人きりにならないように努めた。
だが、夜は流石にそういう訳にはいかない。
夕食後、明日の自由行動の予定を決める為のミーティングを終えて部屋に戻って来るなり和樹に後ろから抱きしめられた。
「ち、ちょぉおまっ、な、なんなんだ!」
「……マッスー……なに怒ってんの? 俺、なにかした?」
「……っ」
不安そうに訊ねられ、言葉に詰まる。別に怒っているわけじゃなかった。うっかり変な気を起こしてしまわないように離れて過ごしていたのだがその行動自体が裏目に出てしまったらしい。
「……別に、怒ってる訳じゃ」
「嘘。だって俺の事ずっと避けてんじゃん。今も目ぇ合せてくんないし」
「それはっ……」
図星を指されて動揺する。
和樹は暫く黙っていたが不意に身体を離すと、透の身体を無理やり反転させて正面からぎゅっと抱き締めてきた。
「わ、ちょっ……和……っ」
「何を怒ってんの? もしかして、俺の事嫌いになった?」
「ち、違……っ! そんなんじゃないからっ! なんでそうなる!?」
予想外の展開に焦る。確かに和樹を避けてはいたが、決して嫌いになったとかそうゆう訳ではない。慌てて否定すれば、和樹はほっとしたように息をついた。
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