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アキラ×拓海 0日目
アキラが修学旅行の引率で沖縄へ行ってしまって早3日。
新妻である拓海は、ソファに座り鳴らないスマホをジッと眺めていた。
普段、仕事中でもメールや電話は頻繁にしてくる癖に、どうして旅行に行った時に限って連絡してこないのか。
忙しいのはわかっているけれど、せめて部屋に戻って来てから一言メッセージを送る位は出来るはずなのになんの音沙汰も無いなんてどう言う事だろう?
別に自分は寂しくない。断じてそんなんじゃない。
ただちょっと、いつも鬱陶しい位に絡んでくるヤツが隣にいないと落ち着かないだけだ。
ソファの上でクッションを抱えて顔を埋め、はぁと大きなため息を漏らす。
こっちから電話してみようか? いや、でもそれじゃまるで、こっちが会いたくて仕方がないみたいじゃないか。
たった3日しか経っていないのに。って、からかわれるのは何となく癪に障る。
どうせ明日には戻って来るのだ。それまで我慢すればいいだけの話。
アキラに限って他の人と浮気とかそう言う事は絶対に無いと思いたいけれど、でも、万が一と言う事もあるかもしれない。
そう考えただけで、なんだか胸の奥がモヤッとする。
「何してるんだよ……。アキラ……っ」
誰も聞いてないのは判っていても、つい口にしてしまう。普段は意識していないのに、こんな風に一人になるとどうしても考えてしまう。
自分がこんなにも女々しい奴だったとは知らなかった。
改めてそんな自分の一面を知った事にショックを受けながらも、やっぱり会いたい気持ちの方が勝ってしまう。
もう一度大きく溜息を吐いて、再びスマホに視線を落とす。
時刻は夜の9時過ぎ。
さすがにまだ起きている時間だと思うのだが、一向にスマホが鳴る気配はない。
「……電話くらい……寄越せっての。ばーか」
ソファに寝転んでクッションに顔を埋めると、もう何度目かもわからない溜息を洩らした。
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