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バトンタッチ 3
「あら? 理人は興味ないの? すっごくイイって話よ? ねぇ、アキラ君」
「そうなんですよ。うちの可愛いツレがすっかりハマっちゃってて……」
ナオミが同意を求めると、アキラが呑んでいたウイスキーのグラスをことりと置いて鼻息を荒くする。そしてその後でニヤッと悪戯っぽく笑って見せた。
「へぇ。面白そうだな。良かったら僕達も聞いていいですか?」
「お、おい瀬名っ! 何言ってんだお前はっ!」
突然の発言に慌てる理人に対し「本当は気になるんでしょう?」と瀬名が耳元で囁けば、理人はふいっとそっぽを向いてナオミがタイミングよく差し出したウィスキーに口を付ける。
(あ、めっちゃ気になるんだ。理人……)
その様子を見ていた透は思わず吹き出しそうになったが、ここで笑ってしまうと間違いなく彼が拗ねるので必死に堪えた。
「……俺、あの人苦手なんだよなぁ。何考えてんのかわかんないし、何となく怖くて」
「何言ってんだよ。理人は悪いやつじゃないぞ。……まぁ、ちょっとばかり目付きも口も悪いけど……」
自分の横で珍しく和樹が弱音を吐いているのが意外で、思わずフォローを入れてしまう。
確かに無愛想だし言葉遣いはぶっきらぼうだけど、根は優しい奴だと知っているから、あまりそういう風に思った事は無かった。
「……と言うか、和樹。家帰ったら説教な。お前だけは許さん!」
アキラの猥談をなんだかんだで耳を欹てて聞いている理人の姿に苦笑しつつ、和樹を睨み付ければ、彼はビクッと身体を震わせて顔を青ざめさせた。
「まっすー~ごめんってば。ちょっとうっかり口が滑っただけなんだって」
「……じゃぁ、今すぐにその口縫い付けてやろうか?」
ドスの効いた声でそう言って凄めば、和樹はブンブンと首を横に振った。自分のパートナーは悪いやつじゃないが、お調子者だから本気で困る。
透はひっそりと息を吐きながら、アキラの猥談に聞き入っている理人の姿を眺めた――。
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