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後日談 3

「なんだか、悪い事聞いちゃったかな?」 「別に大丈夫だろ。アイツは元々ああいう奴だから気にすんな」 瀬名が少し申し訳なさそうな顔をするので、くしゃくしゃっと頭を掻き混ぜてやる。 「そう、ですけど……」 「大丈夫だつってんだろうが。大体なぁ、例えパートナーが居たとしてもアイツがポリネシアンなんてするわけ無いだろ」 呆れたようにため息を吐きながらそう言うと、瀬名は不思議そうに首を傾げた。 まるで、なんでそんな事がわかるんだとでも言いたげな表情だ。 「アイツはな、一見無害そうに見えるが、中身はガッツリ肉――」 「あらぁ、理人。何楽しそうな話してるのかしら??」 「――ッ!?」 突然聞こえてきたドスの効いた声に、ギクリと身体が強張る。 「やぁねぇ、理人ってば。何を瀬名君に吹き込もうとしてるのか知らないけど……わかってるわよね?」 ニコニコと笑ってはいるが、目が全然笑っていない。一体どこら辺から聞いていたのだろうか。空になったグラスを引き上げゆっくりと近付いてくるナオミの迫力に気圧されて冷や汗が流れた。 「別に何も……って、いつから聞いてたんだよ」 「さぁ? 忘れちゃった。ところで瀬名君。世の中には、知らない方が幸せって事もあるのよ。言ってる意味、分かるでしょう?」 「は、はい……わかります」 蛇に睨まれた蛙のように大人しく首肯した瀬名を見て、ナオミは満足したように微笑むと、タイミングよくドアベルが鳴り響いて新たな来店者の存在を告げる。 「あらぁ、いらっしゃい。あら、久しぶりねぇナギ君。今日は一人なの? あぁ、彼は後から来るの。ふぅん」 コロッと声色を変えたナオミが出迎えに駆け寄っていく姿を横目に見ながら、理人は瀬名と顔を見合わせズルズルと椅子に沈み込んだ。 「――俺らは帰るか」 「……ですね」 このままここに居たらナオミの矛先が再びこちらにも向きかねない。 「ナオミ、会計を頼む」 「あら、もう帰っちゃうの? ……あぁ、でも……。そうね、その方がいいかもしれないわね」 「……?」 少し考えて、ウンウンと一人納得した様子のナオミに首を傾げつつ会計を済ませると、瀬名と連れ立って店を出た。 入り口に居た小奇麗な顔をした青年に軽く会釈をしてすれ違う。 その際、何処かで嗅いだことのあるような香りがしたような気もしたが、単なる偶然かと思い深く考えなかった。

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