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後日談 7
何なんだ、コイツは。自分は名乗りもしないで……。これだから最近の若い奴は困る。
「あー……えっと……。この子は小鳥遊ナギ君。今撮影している番組で一緒に共演しているんだ」
「お兄さん、違うでしょ。そこは、ちゃんと恋人だって言ってくれなきゃ」
「ナ、ナギっ。何を……」
何か感じるものでもあったのだろうか? 蓮の腕に絡みついて甘えるようなナギの仕草は、まるで恋人にするそれだ。
だがしかし、理人たちにはそれが演技なのか素の行動なのかは分からない。
「恋人……?」
「理人……っ、あー……えっと……。まぁ、つまり……そう言う事なんだ」
気まずいのと、照れくさいのと半々と言ったような表情で蓮は頬を掻いた。
その反応は、暗に肯定を意味していた。
「そうか、恋人か。お前にもやっと春が来たんだな」
「……春って……。まぁ、そうなんだけど。とにかく! 僕はもう彼の事しか見てないから……」
蓮はそれ以上何も言わなかったが、何処か照れ臭そうにナギを見るその表情は嘘を言ったり、何か企んでいたりするようにはとても見えない。
「もー、ナギ君ったら……急にどこ行っちゃったのかしら……って、あら!? 理人! 貴方達帰ったんじゃなかったの!?」
ひょっこりと顔を覗かせたナオミがハッっとしたような表情で4人の顔を見比べる。
「もしかして修羅場ったり」
「してねぇよ。アホか」「してないから!」
同時に否定する蓮と理人の声を聞いて、ナオミはホッとしたように息をつく。
「さっき偶々会っただけだ。変な詮索すんな」
「行きましょう。理人さん」
これ以上ここに居ても仕方がないと判断した瀬名が、強引に理人の腕を引く。
「あぁ、そうだな。じゃぁな、蓮」
「うん、また……」
今度一緒に飲もう。なんて約束するような間柄でもないし、そんな雰囲気でもない。
後の事はナオミに任せておけば問題は無いだろう。最後にもう一度チラリと二人に視線を向けて、理人は踵を返すと足早にその場を後にした。
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