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後日談 8

「理人さん、凄く月が綺麗ですよ……ほら」 「ん? あぁ、本当だな」 見上げる先には、雲一つない夜空に輝く満天の星。その真ん中に大きな満月が煌々と辺りを照らしていた。 「たまには、のんびり歩きましょうか」 スッと差し出された手を躊躇いがちに握り返し、夜道を二人で歩く。爽やかな夜風がアルコールで火照った身体に気持ちが良い。 「ねぇ、理人さん」 「なんだ?」 「あの人、あんな風に笑えたんですね」 「……」 確かに、先ほど見た蓮は、今までとはまた違った雰囲気を醸し出していた。 恐らくまだ、他人に自分の恋人を紹介すると言う事に抵抗が 有るのかもしれない。 理人だって、瀬名を堂々と自分の恋人だと紹介できるようになったのはつい最近になってからだ。 どこかぎこちない彼の顔を思い浮かべると、何だか可笑しくて思わず笑ってしまいそうになる。 どうせなら今度4人で飲む約束を取り付けてしまえばよかっただろうか? 今の彼となら、上手く打ち解けられるような気がする。 「ちょっとだけ、あの二人の馴れ初めを聞いてみたい気もしますけど……」 瀬名は冗談めかす様に言ってクスリと笑う。彼とは色々あったから、余計にそう思うのかもしれない。 「今頃は、ナオミさんから例のヤツ勧められてるんじゃないですか? あの二人」 「……あり得そうなところが怖いな」 ナオミならやりかねない。 いや、恐らく勧めているに違いない。 「ところで……。今度またリベンジしてみます? アレ」 悪戯っぽく笑う瀬名に思わず面食らう。一体なにを考えているのかと呆れ、ぎろりと瀬名を睨みつけた。 「嫌だ」 「即答ですか。まぁ、確かに理人さん我慢できませんよね」 「っ、それはお前の方だろ!」 ニヤリと笑われたのが何となく悔しくて反論してみるものの、思い当たる節がありすぎて言葉に詰まる。 「とにかく! 絶対に嫌だからなっ!」 ふいっとそっぽを向くと、瀬名はクスクスと笑いながら肩を寄せて来た。 「冗談ですって。また職場であんな事されたら堪りませんし……。アレはあれで結構興奮しましたが……」 「ッ、馬鹿、もう忘れろっ」 「あははっ、理人さん真っ赤になって可愛い」 「うるさいっ、黙れっ」 バシバシと背中を叩くと瀬名は嬉しそうに更に身を寄せてくる。

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