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第2話
「そうだ、夏紀は俺から離れちゃ駄目なんだぞ?」
先に食い終えた周防が、俺の肩を抱き寄せてそう言った。
「は? ああ、そっか、またお祓いに行くんだっけ、今日、どこ?」
親父は眼鏡をかけ直しながら、タブレットを操作して、
「五丁目の新山さんのおばあちゃんが、孫の美代ちゃんにまた妙な霊が憑いてるから祓ってほしいそうだ」
「孫の美代ちゃんて……あの子だろ?」
俺は美代ちゃんを思い出した。
同じ地区だから中学までは同じでその頃は普通の女子だったけど、私立の高校に行ってから出来た友達が悪かったらしく不良化してしまい、今じゃ立派なヤンキー少女だ。
金髪ヒョウ柄、口が悪い、親子喧嘩でプチ家出もざら、近所でも評判だ。
けどおばあちゃんだけは美代ちゃんを心配して、本当は心の優しい子、だと今でも信じているらしい。
「何回目だっけ、定期的にお祓いするけどあの子の素行が悪いのは悪霊のせいじゃないんじゃない?」
と俺は言ったが、
「それで新山さんのおばあちゃんの気がすむならいいんだよ。お祓い料金、ちゃんともらってこいよ」
と親父は言った。
「あのさぁ、親父が行けないんだったら断るか、行ける日を調整しろよ。俺、お祓いなんて出来ないんだからさ」
「周防が側にいるだけでたいていの霊は怯えて離れていくからいいんだよ。お前は拝むふりだけしてろ」
と親父は飯を食いながら事も無げにそう言ったが、
「だから! 周防に迷惑だろ! いつも一緒に来てもらって! だいたい周防の手に負えないような霊だったらどうすんだよ! よその息子さんと実の息子を危険に遭わせていいのかよ!」
と俺は言った。
まったく非常識な親だ。
親父は一瞬驚いたような顔をしたが、ぶっはっはっはと笑って、
「周防の手に負えない悪霊なんかいない」
と言いきった。
「あのなぁ」
「夏紀、俺は平気だ。夏紀といっしょならどんな悪霊にも負けないし」
と周防が言った。
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