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第25話

「おいおい、皇帝はどれだけ時間が掛かってんだ。もう産まれちまうぞ」 男、ルキーノの元に来てから六月と少し 膨らみを見せていた腹は足元が見えないほどの大きさになった ルキーノが定期的に医師を連れてきて僕を診せていたので子は順調に育っている 子どもが産まれるまであと一月ほどだと言う ルキーノが焦りを見せ始めたのは先月ごろ ここでは検診はできても出産はできないようで、このまま産気づいたらどうしようかと医師と話し合う姿を見るようになった 「ティト、明日ここを出る」 「え、」 「ここから少し山に入ったところにあの医者の病院がある。そこなら子どもも産める」 ルキーノは僕の着替えやら何やらを纏めながら言う 腹の中で元気に動き回る赤児を撫で、夜空を見つめながらその日は眠りについた

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