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第29話
「お願いします、この子だけはお許し下さい」
「ティト、」
逃走劇は長くは続かず、あっという間に騎士に回り込まれ捕まった
陛下の元へ連れて行かれてルキーノの小屋に連れ戻される
ソファに座る僕の元に陛下が近づくのが見えて、赤ん坊を抱えながら頭を下げた
「この子を連れて行くのならば、僕を殺して行って下さい」
「何を言う!子どもは連れて行くが、お前も共にだ」
「…え、」
陛下は蹲って頭を下げる僕を抱き上げ立たせた
「エリオとテオが母に会いたいと泣いている。叶えてやってくれ」
「っ、二人に、会えるのですか」
「当たり前だろう。あの子らは後宮に居る、元気に育っているよ」
陛下の言葉を聞いて堪えていた涙が流れ出した
僕を優しく抱きしめて慰めてくれる、懐かしい温もりに涙がいつまでも止まらなかった
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