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第30話

ふと、胸元からも泣き声が聞こえた 赤ん坊が再び空腹を訴え泣き始めたのだ 陛下から離れてソファに座り、涙を拭いて乳を与えてやる コクコクと静かに乳を飲む赤ん坊 陛下は向かいのソファに座りその様子を見つめていた 「難産だったと聞いた」 赤ん坊が乳を吸い終わり眠りにつくと、陛下は静かに語り始めた 「時間が掛かり、切る寸前だったと。側に居てやれずすまなかった」 「いえ、ルキーノが居てくれましたから」 「何、あいつ立ち合ったのか」 「?ええ、」 「なんて奴だ。立ち合いは父親がするものだろう…!」 「そう、いうものですか?ですが、出産時に医師以外が居る経験は初めてで、とても励まされたのですが」 「何、初めて?」 「え、ええ」 「記憶がないのか…!」

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