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第32話

皇帝には幼い頃から婚約者とされ、婚期に入って婚姻した皇后がいた 皇后とは性格が合わずどうしても愛せなかったが、皇帝は皇族に産まれた宿命だと受け入れ過ごしてきた それを捻じ曲げたのはある日の宴でのこと 余興で踊る一人の踊り子を見た時、皇帝はどうしても踊り子を手に入れたくなった 踊り子の属する芸者集団の団長に金を握らせ、踊り子を召し上げる様に仕向け 嫌がる踊り子にリルの実を仕込んで孕ませた そうすれば離れられないと思ったから 子どもはすくすく育ってこの世に生を受けた 一部の人間は皇子の誕生に歓喜した しかし、それを黙っていなかったのは皇后と皇太后だ 元々皇后は皇太后の親族の子で、結婚してから早く子を成せとせっつかれていた そんな中で皇后より先に子どもを、しかも皇子を産んだ踊り子の存在を二人は見逃すことはなかった 本来皇帝は踊り子を側室として迎え入れようとしていたが、二人の様子に危険を感じ自身の息のかかった者で固めた屋敷に踊り子を閉じ込めた 自身にそっくりな産まれたばかりの赤ん坊を引き取ってから

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