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第12話
弘の指が、シャツのボタンにかかる。
一番上のボタンを外されたところで、弘の手を軽く押しのけた。
「自分で…脱ぎます」
「ええ。これも楽しみの一つなのに」
「いいです、自分で。脱ぎます」
少し残念そうな顔をする弘を横目に、
急いでシャツのボタンを下まで外し、
袖から腕を引き抜いた。
「やっぱり良い身体。程よく鍛えられて…」
人差し指の第三関節の背で、腹筋の凹凸を撫でられる。
腹に力が入り、腹筋が意図せず盛り上がる。
「身体…大分力入ってるね」
何せ、これから男と寝るんだ。
予測出来ない恐怖が、今は押し寄せてきている。
「どうして、ネコ、選んだの?」
「ネ、ネコ?」
「抱かれる方、ってこと。君なら抱く方も出来そうなのに。」
「分からない…」
「初めてで、ゲイじゃなくて、入れられる方選ぶって、中々すごいと思う」
入れられる。
そうか。
そうだった。
おれは、女役をやるんだ。入れられる方だった。
最終的にはそうなることをすっかり忘れていた。
途端に、背筋の筋肉がピンと張り詰める。
弘は呆然としている俺の顔を、心配そうに見つめていた。
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