12 / 50

第12話

弘の指が、シャツのボタンにかかる。 一番上のボタンを外されたところで、弘の手を軽く押しのけた。 「自分で…脱ぎます」 「ええ。これも楽しみの一つなのに」 「いいです、自分で。脱ぎます」 少し残念そうな顔をする弘を横目に、 急いでシャツのボタンを下まで外し、 袖から腕を引き抜いた。 「やっぱり良い身体。程よく鍛えられて…」 人差し指の第三関節の背で、腹筋の凹凸を撫でられる。 腹に力が入り、腹筋が意図せず盛り上がる。 「身体…大分力入ってるね」 何せ、これから男と寝るんだ。 予測出来ない恐怖が、今は押し寄せてきている。 「どうして、ネコ、選んだの?」 「ネ、ネコ?」 「抱かれる方、ってこと。君なら抱く方も出来そうなのに。」 「分からない…」 「初めてで、ゲイじゃなくて、入れられる方選ぶって、中々すごいと思う」 入れられる。 そうか。 そうだった。 おれは、女役をやるんだ。入れられる方だった。 最終的にはそうなることをすっかり忘れていた。 途端に、背筋の筋肉がピンと張り詰める。 弘は呆然としている俺の顔を、心配そうに見つめていた。

ともだちにシェアしよう!