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第13話
「ごめん、怖がらせてるつもりはないよ。
何となく、気になっただけ。
どっちだって、良いじゃないね」
弘に悪気がない事は分かっている。
今更フォローされた所で、この緊張が解けることはない。
とにかく、早く最初の一手が欲しい。
始まってしまえば、あとはもう、流れに身を任せるだけだ。
「大丈夫。絶対怖くしないから。
ほら、俺、”ママ”だからさ」
「…また混乱するようなことを言わないでください…今自分が女役をやるっていう事で、頭が一杯なんです」
「あはは、そっかそっか、ごめん。でもほら、”守られてる”って思えば、怖くないでしょ」
守られている。
金で買った男に守られている感覚なんて、持てるんだろうか。
だけど何故か不思議と、弘の落ち着いた風貌と優しい声に危機感を感じることはなかった。
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