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第14話

「キス、しても良い?」 軽く頷く。 首元につけているのか、顔を近づけられるとより一層、香水の香りが強くなる。 甘酸っぱい香りと縮められる距離感に、息が詰まりそうになる。 とうとう、男とキスをしてしまった。 弘の唇はケアされているのか滑らかで、少し冷たかった。 顔を見る勇気はなく、ひたすら口元に意識を向ける。 その内、弘の舌がゆっくりと滑り込んできた。 驚いて少し顔を引いてしまったが、それを追いかけるように、弘の顔が近づいてくる。 「もう、ちょっとだけ…」 そういうと、弘は顎を掴み、顔の角度を深くしてきた。 舌の付け根を絡めとられるようで、息苦しい。 しばらくそうした後、ゆっくりと口が離された。 気持ち良さとはまた違う、何ともいえないぼうっとした感覚に、身体の力が抜けていく。 内心、少し安心した。 案外、出来るもんなんだな。 嫌悪感もない。 頭で考えを巡らせている内に、座っていたベッドにゆっくりと押し倒された。

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