16 / 50
第16話
「…明かり…消しても良いですか」
「もちろん。ヘッドライトだけにしようか」
弘は、枕元にある摘みを指で捻り、手際良く部屋の照明を落とした。
どこを見ていれば良いのか分からなくて、ただただ天井を仰ぎ見るしかなかった。
頭で考えてしまう癖のおかげで、この微妙な「間」に耐えられない。
沈黙がじれったい。
手汗がまだ、止まらない。
「話しながらでも良いよ。その方が、安心するなら」
「…すいません」
かゆい所に手が届くというか、
気にしている事を口にしなくても、汲み取ってくれる。
接客業のなせる業なのかは知らないが、それでも少しは、不安が解消された。
弘の唇が、鎖骨から胸元へと移動していく。
くすぐった過ぎて、身体に力を込めてしまう。
「大丈夫?」
「くすぐったくて…」
「くすぐったいの、だめ?」
「くすぐられるのは…苦手です」
そう言った途端、弘が脇腹を指の腹で軽く触れてきた。
思わず上半身を、跳ね上げる。
ともだちにシェアしよう!