28 / 50

第28話

「…ホント…すいません」 気まずくなって、左手で顔を覆った。 「説明不足。ごめんね」 弘は身体を離し、ベッドの横にある小さなテーブルに手を伸ばした。 少しの沈黙の間、弘に背を向ける形で身体を部屋の窓側に傾けた。 身体に塗られたローションと自分の体液が乾いて、身体に張り付いている。 薄いカーテン越しに見える窓の外は、 夜なのに明るい。 無数にそびえるオフィスビルと商業施設の光が、せわしなくまたたいてる。 自分だけが、その世界から切り離された空間に置いていかれているようで、不安になる。 目を閉じながら、大きく息を吐いた。 「すごいため息」 「あ。…すいません」 「今日はずっと、謝りっぱなしだね」 慰められる様に、背中を何度かさすられた。 弘の大きく温かい掌に、安堵する。 弘が言うところの”守られている”感覚を、何となく感じている。 客だからということも、初めてだからということもあるとは思う。 今の所、ここに来て分かったことは弘が優しいということくらいで、 自分が確かめにきたものの答えはまだ、見つかっていない。

ともだちにシェアしよう!