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第34話
「…まこ…?」
呼びかけられても、返事が返せない。
胸で呼吸を整えようとするも、意識が一気に下腹部に呑み込まれていく。
唇を噛み締めて、必死に声を殺す。
鼻で息をするのも、限界だった。
「噛んじゃ、だめ…血が出る」
弘の右手の親指が俺の唇に当てられた。
口の中に指を入れられたが、
今は何をされても刺激になる。
その手を軽く払いのけるように、顔を右に大きく振った。
「…弘…」
「うん…」
「弘、…」
「うん…」
「ヤ…バイ…」
溢れ出る涙の先に、ふっと、小さく微笑む弘の顔が映った。
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