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第36話
脱力した拍子に、しがみ付いた弘ごとどさりとベッドに崩れ落ちた。
顔のすぐ横に、弘の頭が落ちてきた。
その重みに、軽く呻き声を上げる。
2人の男の荒々しい呼吸の音が、暫く部屋中に響き渡った。
息を吐くたびに互いの腹が上下し、腹筋が微かに触れ合う。
両腕を回した弘の背中は汗でじわりと湿っていた。
ようやく弘が重い頭を持ち上げると、
薄茶色の長い前髪が汗で額にぴたりと張り付き、表情が伺えない。
視線を傾けると、わずかに見える白い頬と耳が、仄かに赤らんでいるのが見えた。
「…髪…張り…付いてる」
そう言って、両掌で弘の顔を覆うように前髪をまとめて持ち上げた。
少しだけ口を開いて息を整える弘の端整な顔立ちが、露わになる。
潤んだ薄茶色の瞳をこちらに向けると、
ゆっくりと顔を近づけてきて、唇を重ねられた。
最初キスをされた時はそれなりに動揺していたのに、いつの間にか慣れてしまっていた。
「…大丈夫…?」
口を開いたのは、弘だった。
小さく、何度も頷いた。
弘の右手の指が、目尻を優しく撫で上げる。
掬い上げられたものは涙なのか、汗なのか、分からなかった。
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