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第38話
バスルームから聞こえてくる水の音を遠くで聞きながら、
ヘッドライトに照らされた薄暗い天井をじっと見つめた。
本当に、男と寝てしまったんだな。
先ほどまで触れられていた唇の感触、下半身の感覚に意識を向け、その情景を思い浮かべる。
想像していたような嫌悪感はなく、むしろ僅かの間に快感を得た。
後味の悪さに絶望することもなく、それが不思議でもあった。
力の抜けた身体をゆっくりと反転させ、
ベッド脇のテーブルに埋め込まれたデジタル時計に目をやった。
文字盤を覗くと、時計は”20:30”を示している。
「まだ30分しか経ってないのか…」
弘と共にした時間は、ひどく長く感じられた。
「起き上がれる?」
バスルームから戻ってきた弘に声を掛けられた。
先ほどまで身に付けていたスラックスを脱いだのか、
バスローブに身を包んでいた。
「大丈夫、あ、た」
弘の呼びかけに応えるように勢いよく身体を起こそうとすると、
下半身に引きつるような刺激が走った。
伸ばしていた両膝がガクンと大きく揺れ、その痛みに身体を屈める。
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