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第45話

視界が閉ざされると、意識が一気に下半身に集中する。 与えられる刺激に、しならせていた背中は徐々に丸みを帯び、両膝が閉ざされていく。 押し殺した声を俯いて飲み込もうとすると、弘が後ろから覆いかぶさってきた。 左の頬に、唇を当てられる。 「…まこ…”触って”って言ってみて」 「もう…触って…っ…る…」 「まこにそう言われたら、俺も”ここにいる意味”を持てると思うんだけどな」 夢見荘の男は、ただ求められるままに、己の身を差し出す。 そこに自由はなく、全ては求める者の意志に委ねられる。 究極の奉仕。究極の、無抵抗。 どちらに偏ることもないこの理想郷は、 互いが互いを分け与え合うことを前提としていない。 真には、その無秩序なやりとりが恐ろしく感じられた。 思えば自分はどうだったんだろう。 恋人に求められることはしてきたつもりだった。 自分も同じように、求めたものを与えられると思っていた。 けれど現実は違った。 次第に相手の欲求はエスカレートし、 遂にはそれが重荷になった。 弘の顔が見たい。 すぐそばにいるはずなのに、なぜか急に弘の顔が見たくなった。 ”与え続ける”男の、生き方が刻まれたその表情はどんなものだっただろう。 確かめたくなった。

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