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第47話

話をしている内に、時間はあっという間に過ぎていった。 長すぎる風呂を出た後も、弘にさっきの続きをさせろだのなんだのと言われたが、 真は何とかそれから逃げ切った。 もう、十分だった。 濃密な触れ合いは、十分すぎる程味わった。 真は身支度を整えて、弘をドアの前まで見送った。 律儀だね、と弘は笑っていた。 「今日は、ありがとうございました」 「こちらこそ。とっても楽しかった」 弘は部屋の扉を背にして立つと、微笑みながら真の瞳をまっすぐに見つめた。 何かを言いたそうに、ゆっくりと瞬きを繰り返している。 「話が出来て…良かったです」 「うん。そうだね」 薄茶色の瞳に射抜かれて、真は視線を横に逸らした。 妙に気まずい気分になる。 夢見荘の利用システムでは、男と客は同時に部屋を出てはならないことになっている。 男が先にホテルを出て、客は夢見荘からの電話連絡を待って、初めてホテルを出ることが出来る。 夢はあくまで、夢のままで終わる仕組みだ。 扉を一歩出れば、現実の世界に戻っていく。 「まこ」 「はい。……」 弘は一歩前に踏み出して、真に口づけた。 真の身体が一瞬強張るも、すぐに力が抜けていく。 ほんの少しの間口元を合わせた後、 ほとんど唇が当たるかどうかの距離で、弘が呟いた。 「最後、少しだけ笑ってくれたね…嬉しかった。 また、会えると良いな。」 真の答えを待たずに、弘は再びゆっくりと唇を重ねた。 「…”またね”」 部屋の扉は、優しく微笑みながら手を振る弘の姿を最後まで見せきった後、ゆっくりと閉まった。 一人残された真は、部屋の中央に位置するベッドのに仰向けに思いきり飛び込むと、間接照明に照らされる天井に向かって、思いきり叫んだ。 「あー、ほんっとに信用できない!」 両手で、頭を思いきり掻き毟った。 またねってなんだよ。 男娼の殺し文句なのか。 その気にさせて、何度も来させようとする常套手段なのか。

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