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R18★番より恋人になりたくて【塁斗視点】(6/11改稿)
俺の部屋で並んでテレビを観る、その雰囲気は昨年と違った。
涼先輩が買ってきてくれたコーラを飲むタイミングさえわからないほどに、沈黙してしまう。先輩も炭酸水のペットボトルを手持ち無沙汰にいじっている。
画面には投打ともにずば抜けたセンスを持つイカつい選手。選手と言っても同世代、涼先輩と同じ三年生だ。
「あいつ、プロになるんだろうな」
ぽつり、涼先輩が呟いた。
「……でしょうね」
それは素人目に見てもほぼ確定されたことだった。
「こういうガチですげぇ奴見ちゃうとさ、ただの県予選ですら大事なとこでミスっちゃう俺って、運も才能もないし何のために野球やってきたんだろって思うけど」
ずっと画面か下を向いてばかりだった涼先輩が、やっと俺の方を見てくれて、
「塁斗とやる野球は楽しかったな」
そう寂しそうに笑った。
「お……おれだって……」
一緒にいてあんなに楽しくて、胸の奥が甘くせつなく鳴いて。これ以上の感情を持てる誰かにこの先出会えるかどうかなんて、せいぜい十七年しか生きていない俺にはわからない。
甲子園の舞台に立てた才能と努力の塊と、そこに届かないその他大勢の俺たち。
恵まれた体躯とパワーで豪速球を振るう未来のプロ野球選手と、発情期に悩まされて練習できないことも多かったΩの俺。
埋められない格差、抗えない運命。諦めることを覚え、すべてを受け入れて生きていく、涼先輩も俺も。
そう、何もかもは手に入れられない。
いつしか試合は佳境に入り、彼(か)の大エースは最後まで奮闘したものの準優勝に終わり、人目も憚らず涙を流した。
閉会式まで何となく見てしまって、そこからは何の関係もない番組が始まる。
薄いカーテン越しの陽射しは少し西に傾き始めている。野球を始めてから知った。意外と夏は短い。
俺は心が押しつぶされそうになりながらやっと心を決めて、テレビを消した。
「涼先輩」
「ん?」
「今までありがとうございました。特に今年はその……俺の発情期抑えるためだけに番になってもらって……」
涼先輩は何でもないような顔でフッと笑う。
「何を今さら。大会の『戦犯』の俺が言っていいのかわかんねぇけど、俺的にはいい想い出になったよ。……うーん、つーか想い出にはしたくないっつーか」
想い出にしたくない。俺と契ってしまったことなど忘れたいということだろうか。それを破棄する権利がαの涼先輩にはある。心臓がぐぅっと苦しくなる。
「先輩には感謝してもしきれません。ありがとうございました。……番、もう解消してください」
言えた。言いたくなくて、夏の終わりの終わりまで先延ばしにしてきた言葉を。
涼先輩の表情は見られなかったけれど、
「えっ、え、ちょっと待って」
慌てたような声にハッとなってこちらが顔を上げた。
「だってさ、もし解消しちゃったら塁斗はストレスっていうかすっげーしんどくなるんでしょ?発情期もまた起きるようになるし……」
「しんどいのは慣れてますから。大丈夫、です」
「あ、あとさ、一生他の誰とも番になれないから……あ、それはまぁいいか」
涼先輩が俺なんかを思いやってくれるのが嬉しい。この恋は間違いじゃなかった。でもきっとやり方は良くなかった。
「先輩が解消するって言ってくれたら、それで終わると思います。お願いします」
「……塁斗お前、マジふざけんな」
怒りに震えた声を聞いた次の瞬間、乱暴に抱き寄せられ唇を塞がれていた。
「んっ……んんッ!」
涼先輩らしい優しさは少しも感じられず、骨が軋みそうなほどに身体を抑えつけられ、口の中を執拗に貪られる。
息苦しさに涙が滲んだ。涼先輩を押し返そうにも力でも体格でも敵わない。
「んぁッ……ん、ぐ、ん……」
そのままずるずると体勢を崩され、床に押しつけられてしまった。そこでやっと唇を離されて、俺にのしかかる先輩の表情が見えた。Ωの俺の身体を欲したのではない、ただ何かが先輩の逆鱗に触れてしまったとわかった。
「ねぇ、俺嫌なんだけど。塁斗が俺のモノじゃなくなるの。だって俺らもう番になったじゃん」
そう言って、憤った表情とは裏腹の優しい手つきで俺の首すじに触れてくる。
「俺、塁斗のこと絶対放してやんねぇよ」
「あッ……!」
敏感なうなじに舌を這わされ、本能的に身体が緊張する。そこを噛んでもらったのはもう一ヶ月半も前のことで、とっくに跡はない。それでもあの時の悦びを心と身体が覚えている。
緩慢な舌の動きで、鎖骨から耳の中までねっとりと舐られる。
「あ……だめぇ……やめてよせんぱい……ちがうんです、聞いて?」
「あ?何が違うの?」
不機嫌な低い声が耳の中に直接吹き込まれ、抗いたいのにどうしても腰の奥がじんわりと熱くなってしまう。
「αは番のΩに独占欲とせ、性欲が湧いてしまうものなんです……だから先輩は、俺のせいでおかしくなってるだけなんです」
「俺なんて、どうせ最初からおかしいんだよ」
それはヤケになったような言い方だった。
ハーフパンツのウエストを引っ張り下ろされかけて、必死でその手を止める。
「……涼先輩は、俺のことなんて好きでも何でもないんだから……もう目ぇ覚まして……ちゃんと、ちゃんとした恋愛してください……」
言葉にしてみてそれは少しも本心でないことに気づく。
発情期を抑えたいから番になってもらった。番の効力で涼先輩を惑わせたままでもいいから、彼のモノでいたかった。
俺は人ひとりの人生を狂わせようとしている。本当に最低だ。
「ちゃんとした恋愛って……はぁ、何だよそれ……」
涼先輩が突然大きくため息をつき、俺の上から退いた。ごろんとすぐ隣に寝そべり、頭も身体も丸ごと抱き締められる。
「るいとぉ……」
「先輩……?」
「何が目ぇ覚ましてくださいだよ……とっくに覚めてんだよバカ」
抱えられていた頭を少し離され、頬に大きな手が添えられる。
「いや、逆だな。最初からおかしかったんだ俺」
やや自嘲気味に語るのに口を挟めず、黙ったまま涼先輩の話に耳を傾ける。
「お前は全っ然気づいてないだろうけど、初めて会った日から俺、ずっと塁斗のことが好きだったよ」
「え……」
先輩が俺を好き。初めて会った日から。初めて、初めてっていつだっけ。俺が野球部に見学行った時?
あの日俺はもう野球はできないと逃げ出して、初対面の涼先輩が必死に説得してくれた。
『片瀬くんを守るよ』
その誓いはこれまでずっと俺の心をたしかに支え、実際に先輩は俺の盾となり何もかもから守ってくれていた。
「……嘘、でしょ?俺がΩで頼りなくて可哀想に思って、それで優しくしてくれてたんでしょ……?」
「Ωとか関係ねぇし。そりゃきっかけは綺麗な子だなってめちゃくちゃ気になったからだけど、塁斗のさぁ、野球やりたくて上手くなりたくて頑張りすぎなとこ、明るくて気遣いもできてみんなから愛されるとこ、ぜんぶめちゃくちゃ好きなんだよ」
触れられている頬に熱が集まる。
俺、ずっと涼先輩にそんな風に想われて……。
「でもいちばんは、俺に懐いてくれたことかな」
涼先輩は嬉しそうに微笑む。俺も釣られて笑って、しばらくして先輩が真剣な面持ちに変わった。試合中にも見たことのない表情に胸がどきりと高鳴る。
「こんな寝っ転がったまんま言っていいのかわかんないけど……好きです。俺と恋人同士として付き合ってもらえませんか?」
「……え、うそぉ……おれで、いいんですか?」
「塁斗がいい。塁斗じゃなきゃやだ。乱暴にしてごめん。許せなかったら俺のことぶん殴っていいから、だから、お願いだから付き合ってください」
その想像を越えた必死さを感じて、心がしあわせに震える。そうしたら自ずと答えは決まっていた。
「……はい、よろしくお願いします、先輩」
驚いて、それからぱあっと笑った後の涼先輩の顔は見えなかった。たくましい胸にぎゅうと抱き寄せられてしまったし。
「ありがとね、塁斗。大事にする」
「もうずっと、大事にしてもらってますよ」
ひとしきり喜びを噛み締めたのか、寝そべりっぱなしだった身体を起こされた。少し乱れた髪を整えてくれる。
「番にしてほしいって言われた時は、塁斗とヤれんのかー、ラッキーって思った。けど、お前ほんとにただ大会に出られる身体が欲しいだけで、俺のことそこそこ信頼できて身近にいたαくらいにしか思ってないんだろうなって思ったら……番なんかより恋人にしたくなった」
Ωを取り巻く世の中には、番こそ最高の関係性という風潮がある。
けれど、そこに互いを恋い慕う想いがなければただ虚しいだけだ。実際のところ、俺たちには最初からそれがあった。気がつかないで、すれ違ってしまっていただけで。
「俺だって、ずっと我慢してたのに。涼先輩はカッコ良くてモテるから、もっといい相手を見つけた方がいいって思ってて……。でもほんとは、先輩のこと好きすぎてしんどかった。捨てられること考えたら心臓つぶれそうだった」
「捨てるとか絶対ない!それはない!大事にするって言ったじゃん」
しあわせと、気恥ずかしさと、あと触れたくて触れられたい気持ち。
そんなものにふわふわと包まれながら、ゆっくりと、少し長めの触れるだけのキスをされた。
心地良くて、もっととねだりたくなる。
「ねぇ、塁斗……もし嫌じゃなかったら、今……シてもいい?」
らしくない遠慮がちなお誘いが何だか可愛くて、からかってみたくなったけれど、
「……俺もシたいです」
そう俯いて答えるだけで精いっぱいだった。
キスされて、脱がされて、じぃっと身体の隅々まで見つめられて。胸が高鳴り下腹の奥の方がきゅうと疼いた。発情期が来なくなっても、俺の身体はαを受け入れるために濡れてしまう。
ベッドの上だからたいして痛いはずもないのに、涼先輩はそっと俺の頭を支えながら押し倒す。
大切だと、愛おしいんだと伝わってくるようなやさしいキスは、徐々に深くなっていく。身体ごと激しく求められていることに心が打ち震える。
「ン……んぅ……ぅ……」
ちゅ、くちゅ、と舌を絡め取られるから、俺も必死でそれを伸ばす。不器用に涼先輩の口の中に突っ込めただけの俺の舌はひたすらに嬲られて、身体の力が抜けるだけに終わる。
唇を放され、そのままうなじを軽く食まれた。
「別にもうココ噛む必要もないんだけどさ」
涼先輩が指でそこをなぞりながら言う。
「ココ、結構感じてるっぽかったよね、塁斗」
「は?えっ、あ!やっ、ひゃ、んんッ!」
不意打ちでそこの皮膚を強く吸われ、情けなく声をあげる。
「あッ……やだ、跡ついちゃうから……」
「ん、わかってる。今の季節じゃ隠すのムズいもんな」
俺はまだ高校生なんだ。誰かとのセックスの名残りを周りに、特に野球部の仲間に見られるのは絶対に良くない。その相手など詮索するまでもなくバレそうなんだから。
「じゃあココは?」
俺の顔をじっと見つめたまま、涼先輩の手がするりと下がって、
「んッ……!」
平らな胸を撫でる。それ以上は踏み込まれたくないけれど、涼先輩がさらなる快感を与えてくれるのはもう予想はついている。
「あ……や、ぁっ……んうぅッ……」
全体をやわく撫でまわしながら、指が胸のてっぺんをわざとらしく掠めて、腰が揺らめいてしまう。もっと、もっと決定的な刺激が欲しくなる。
「りょおせんぱい……やだ……やだ、もぉ、変……」
「んー?」
胸先をくにゅくにゅと弄られ、じわりと愛液が染み出る感覚がした。
「ンン……だめぇ……」
ダメになる、もうダメになっているのにもっとダメにされる。
まだ触れられていなかった方の乳首に、涼先輩が軽く唇で触れる。
「んぁ!やっ、やらぁ……!」
唇だけの感触なんてまだ生易しいものだった。しつこく舐られて、軽く吸われて、
「あッ、あッ、あッ……!んッ、あぁっ!」
ふやふやにとろけた身体にはもう声を堪えることなんてできなかった。胸への刺激は快感にしかならなくて、これから涼先輩を受け入れる身体のナカにじんわり響いてそこをとろけさせていく。愛液がくちゃりと太ももに染み出した感覚がした。
涼先輩が俺の胸から顔を上げて視線がかち合った。
「ふふっ……可愛い」
にやりと笑って、舌なめずりをする。
獲物として喰われているような感覚に、ぞわりと脳が快感を覚えた。それは涼先輩が俺の番のαだからでなく、誰にも渡せないくらいに愛おしい人だからかもしれない。
胸をちゅうちゅうと吸われ、腰がうねる。軽く歯を当てられ、頭まで仰け反らし呻きをあげる。
「も……だめッ……まって、まってぇ」
「ダメ、待たない。塁斗もうイきそうな感じするし」
だから待ってほしいのに、こんなのは意地悪だ。でも俺だって男だからわかる。涼先輩は俺のエロいところを見たくて、俺の敏感なところばかり触りたがるのを。
「はあァ……そ、それ……んあッ……!」
この前は触れさせなかったちんこを優しく握りこまれ、ぬるぬるに濡れそぼった先っぽを親指で擦られる。
「んんッ!は、あ、やだ、やだ、で、でひゃうからッ!」
腰がとめどなく揺らいで、身体中ぴくぴく震えて、こんなのははしたないと思うのに止まらない。
涼先輩の手、大きくて男らしい。そこに俺のはすっぽり包み込まれて、ぐちぐちぬちょぬちょと音を立てられながら高みに追い詰められる。
「ひぇんぱい……もぉ、ああッ!……あッ、も、もぉ……!」
ほとんど泣きながら、涼先輩の腕を掴む。
このまま扱かれていてもすぐにイッちゃう。それなのに、弄られすぎてぷっくり熟れた乳首にまた口元を寄せられ、さっきよりずっと強く、食べられてしまいそうなほどにぢゅるるっと吸われてしまって。
「ぅぐ!……くッ……ぁ、イっちゃ……うぅ、ぐ……んあああッ……!」
アッチとコッチへの強すぎる刺激に、ついにイかされてしまった。胸まで白いのが飛び散り、強ばっていた身体からはくったりと力が抜ける。
「大丈夫?休憩する?」
俺はふるふると首を横に振る。もうスタンバイができすぎてしまっている涼先輩の下半身を見て、俺ばかり気持ち良くしてもらっていて悪いと思ったのと。
「無理しなくていいよ。塁斗のザーメンまみれのおっぱい見てたら一生萎える気しないし」
「……おっぱいとか言わないでください」
身体が覚えている。この前、涼先輩に貫かれた時の悦びを。早く早くと欲している。
「あんなに敏感に感じちゃってる乳首のついた胸はもうおっぱいなんだけど。俺基準では」
「……先輩、ゴム、ベッドの下にあります」
猥談に不機嫌になったフリをして、続きを催促する。
「えっ、あ、ああ……とりあえずちょっと慣らそっか」
すぐ着けられる位置に個包装のゴムを置いて、涼先輩の手が俺の脚を大きく開く。
その真ん中がひくひくと侵入を待ちわびながら、とろりと愛液を垂れ流しているのが自分でもわかる。
「んんッ……」
指がつぷっと差し込まれて、鼻にかかったため息が押し出された。
「あ、すっげ……この前より濡れてる……」
とろとろをかき回しながら、指が奥に入ってくる。大好きな涼先輩が俺のいちばん恥ずかしいところ、他の誰にも触れさせないところを探ってくれている。それが恥ずかしくもしあわせで『恋人』になれたんだなと感じた。番よりも恋人になりたかった、まさか叶うなんて。
「塁斗、わかる?余裕で指二本入ってるよ?すっげーぐちょぐちょ」
「んァ……やだぁ、言わないで……」
「だって、ほら」
一旦引き抜いた指を俺の目の前に見せつけてくる。涼先輩の少し節くれだった男っぽい指に、透明のねちゃねちゃが少し泡立って絡みついている。
「うぁ……やだって、見せないでいいです!」
「そ?じゃあ俺が舐めとくわ」
そうしてその指を躊躇いもなく、ぱくんと咥えてしまった。
「ちょっと先輩!き、きたないから……!」
「んー、ちょっと苦味があって酸っぱさもある感じ?」
塁斗の味だ、とにやりと笑う。
「もぉ……意味わかんないし」
不機嫌に顔を背けていたら、突然、
「ひゃぁあぁあ!?」
わけのわからない衝撃に襲われ叫んでいた。涼先輩の顔は俺の胸の上で、いたずらっぽく笑っていた。
「イミフついでに塁斗のおっぱいについたザーメンも舐めときました」
「……涼先輩ってバカ?」
「あ?先輩にそんな態度でいいわけ?つーか、お前すげぇイイ声出すよね」
何だろう、この雰囲気。
ベッドの上でもからかわれっぱなしで軽口も叩き合えて、ただの先輩後輩だった俺たちのいいところは変わらずに、そのまま恋人同士として抱き合えるようになった感じ。
涼先輩で良かったな、バッテリー組んだのも、番になったのも、好きになったのも。
そんなほんわかした幸福感にひたっていると、目の奥に欲の火を隠した涼先輩が顔を寄せてきた。
キスされた。やわらかくて優しい。
でもそれでは終わらず唾液が混じり合うと、たぶん俺のアレソレのであろう不思議な味がした。
「は……ぅむ……ん、ん……」
甘えて媚びるみたいな吐息が漏れて、放置された下半身が悶えてうねる。
「ん!んぅッ!」
涼先輩の両手は器用に俺の胸を弄りだした。俺の精液や涼先輩の唾液でぬるついていた乳首を、指先でゆるくつまんだり、爪でやわく引っかいたり。
「んん……っ、む、ん、ぅ……」
ヤバい。俺、本当にココ弱い。
塞がれた唇の隙間からくぐもった声をあげて快感を散らそうとするけれど、延々と乳首に与えられるキュッとかカリカリとかコチョコチョとか。
ねぇ、好きな人とするセックスってこんなに、アツくてとろとろでジュワジュワなの?
頭がおかしくなる寸前で、どうにかどうにか俺より広い涼先輩の肩を押し返せた。
「はッ……何?」
「……は、ぁ……りょおせんぱい……、おれ、おっぱいいじられんのきもちすぎて変になってうからっ」
自分でもスゴいことを言っている自覚が多少ある。でもこれくらいしないと、
「はやく……はやく、おれんナカ挿れてください……」
感じまくりの無限地獄が終わらないかもしれない。おかしくなっちゃう。死んじゃう。
案の定、涼先輩はゴクリと生唾を飲み込み、獰猛なαのオスの目になった。
「塁斗ぉ?俺、お前をそんなエッチな後輩に育てた覚えはないよぉ?」
「あんッ……いいからもぉ、はやく」
ゴムの空き容器を床に雑に放った涼先輩が、その熱く滾った先っぽをようやくあててくれる。
俺にとってはまだ二回目のセックスだ。緊張はもちろんある。身体の方だって上手く受け入れられるかわからないのに。
「んんっ……!んーっ、ん、ん、んう……」
「塁斗、何これ……すげぇずるずるナカ入ってっちゃう」
無理やりに押し込まれなくても、俺のナカが涼先輩を引きずり込む。先輩のを包みこもうと、壁が勝手に収縮して、ねちゃねちゃの愛液も次から次へと溢れ出してくる。
「やっ、や、あ!は、あ、あッ、あ、ンンンッ!」
「塁斗、塁斗、腰揺れてる。エロい」
気持ち良くてもっとイイところにあててほしくて腰がゆらめくのか、快感を逃したくてそうしているのか、どっちだかわからない。わからないけれど、俺は涼先輩の腰に脚を絡めて必死で腰を振ってしまっている。
「この前気持ち良かったとこ、どこ?」
涼先輩の硬くて太いのが、俺のナカをぐるりと何度か探る。
「ひぃッ!ああッ!ああ……ッ、く、ううン……!」
あれから俺は調べた、ネットの少しえっちな記事で。あの時異様に感じまくってしまった場所はきっと前立腺というやつだ。
でもここまで気持ちイイなんてその記事からは読み取れなかった。
「あッ!?ンンンッ……そこだめ……!」
「ココ?」
見つかってしまった。もうそこばかりが涼先輩の硬く滾りすぎた熱を感じてしまって、頭が真っ白になりかける。
自分が、そして俺を抱いているのが誰なのかもわからなくなりそうで。
こわくなった俺は両手を伸ばし、涼先輩を求めた。
「せんぱい、りょおせんぱい……」
背中に手をまわしてくれて、身体と身体がゼロ距離になる。温かくて安心できて泣きそうにすらなる。
「あッ……すご……深いぃ……」
密着したら奥の奥まで挿入されてしまって、俺のナカは臍の下あたりまでみっちりになる。涼先輩のは大きい。
「うぁッ……塁斗の奥あっつい……」
「せんぱい……」
抱き合ったまま不器用に腰を振って、涼先輩の動きを促す。
「うわ、エッロ……」
ギラついた視線に舐めるように見つめられる。
一層強く抱き締められ、首すじに顔を埋められた。
「あぁッ!はッ、あ、あ、あ、ああぁ……あぁんだめぇ……!」
ナカが粘膜ごととろけそう。すごく奥に入ってしまっているのも、俺が涼先輩を食べているのか涼先輩が俺を食べているのか、わからない。それが心ごと身体を快感で満たす。涼先輩にしか見せない、恥ずかしくてえっちな身体。
「やあぁ……きもちッ、きもちいいぃ……!」
「えっ?え?あ、それならよかった……けど、塁斗ちんこ萎えてるよ?」
「うぅん……もぉわかんないよぉ……でもきもちいぃ」
身体が未知の何かを知ってしまうかもしれない。けれど俺はもうどうしようもなく快感を追ってしまっていて、涼先輩の腰が動くのも全然止まってくれない。
「あんッ!まって、まってぇ……あッ!くううゥん……!イッ……ちゃ……くぅ……!」
全身がしなってびくんびくんと震えた。萎えたちんこからは何も出てこない。ただずっと身体が快感を拾い続けて、潰れたような吐息が止まらなくなった。
「は……あぁ……は、は、はぁ……」
「……るいと、何?メスイキ?……ナカずっとぴくぴくしててヤバい……ごめ、俺もイってい?」
涼先輩は俺の返事は待たなかった。俺の身体をがっちりとホールドして、必死で突きまくってくる。
「あぁ!らめぇ……!まだびくびくしてうから!あッ!あッ!……うあああ!」
身体は完全におかしくなって、理性もとっくに飛んでいる。涼先輩が見たいエロくて魅力的な顔なんてできていないだろう。きっと、うつろな目に、懸命に酸素を求めるためにだらんと開いた口。
それでも涼先輩は激しい動きはそのままに、顔を寄せて、
「はは……かわいい……」
と荒い呼吸とともに呟いた。
俺のことが好きすぎて、セックスも気持ち良すぎて、もう一生放してやんねぇぞみたいな、そんな表情。
胸の奥がぐぅっと甘く苦しい。野球部での楽しく時に苦い出来事とともに、想い出に変えていくはずの片想いだった。
「ぅあッ、あ……!イくよ、イくよ塁斗……」
涼先輩の汗がぽたっと俺の顔に落ちて、でもそんなことを気にしていられないくらいに、責め立てられて、
「やあぁ!やッ!きゃ、う、やッ、やッ、やあぁん!」
その衝撃に甲高く叫ぶ。
涼先輩の身体がびくびくびくと何度か震えた。
ゴム越しに吐き出された熱を感じる。良かった、ちゃんとイってくれた。
俺の胸に顔を埋めて、
「ごめん、張り切りすぎた。しんどいからちょっとこのまま……」
涼先輩は荒い息を整えようと頑張っている。
その頭にそっと触れたら、これまでにないほどの愛おしさが胸に溢れた。
いつも守られてばかりだった。でも俺も涼先輩のことが大好きなんだから、俺だって癒して慈しんであげたい。
俺を好きになってくれてありがとう、涼先輩。
こんなしあわせでいいのかな。
一筋、涙がこめかみに流れ落ちた。
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